Title
那覇都心部消費者回遊行動および離島消費振興問題に関 する調査研究報告( おわりに )
Author(s)
沖縄消費問題研究班; 小林, 甫; 田村, 三智子; 國吉, 和子;
新城, 将孝; 川﨑, 和治
Citation
沖縄大学法経学部紀要 = Okinawa University JOURNAL OF LAW & ECONOMICS(7): 55-93
Issue Date
2006-10-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6028
Rights
沖縄大学法経学部
那覇都心部消費者回遊行動および離島消費振興問題に関する調査研究報告
5.おわりに
川崎和治
那覇市は、現在「第3次総合計画」(1998~2007)の最終段階を迎えようとしており、「第4次総 合計画」の策定作業に入っている。また、2007年度には新総合計画が策定されることになっている。
今、那覇市はその姿を大きく変えようとしている。天久地区は、米軍施設返還後の開発によって新 都心おもろまちとして生まれ変わり、今時総合計画の過程でその姿を整えつつある。次期総合計画 の過程では、那覇軍港の返還、那覇空港の沖合展開、西原インターと那覇空港との高速道路開通等 が予測され、これにより、都市の姿がさらに変貌するであろうことが予想される。
「第3次総合計画」では、都市計画マスタープランとして那覇市を9地域に区分し、それぞれの 地域区分毎に都市計画を策定している。2003年8月のモノレール開業に伴い、計画見直しによって、
モノレール沿線地域の開発に拍車がかかっている。我々の調査した那覇都心部3地点に限っていえ ば、新都心は、情報発信の中心となるインテリジェント・シティを開発目標に掲げ、旧都心部であ る国際通りを中心とした那覇中央地域は「であい」、「ふれあい」、「にぎわい」の活気ある国際・商 業・観光の中心を目指している。
新都心は、モノレールおもろまち駅を中心に、国道58号とバイパスを結ぶ縦横の道路沿いに大型 商業施設、各種商店、文化施設、公共施設、住宅区域が配置され、従来の沖縄には見られない整然 とした都市開発を展開している。県立博物館新館・美術館の建設も進み、また、インテリジェント・
ビル建設構想もある。流通・文化の'情報発信基地化の基盤整備が進んでいる。那覇軍港返還後開発 と連関してフリー・トレード・ゾーンの拡張強化が果たせるなら、それと連動した`情報ネットワー ク化により、商取引・商業,情報交換の場としての新都心の国際的地位も高くなり、消費者の集う場 としてだけではなく、内外から人が集まる可能性もある。
那覇中央地域として位置づけられている旧都心部の再開発計画も、モノレール沿線各駅を中心に 進められている。安全・安心を前提とした開発によるスージーグヮーによってつながれた古い町並 みと高層建築物との共存、その共存によって魅力を回復しつつある旧都心部への定住率アップ等が 図られつつある。また、国際通り等への集客率を高めるための取り組みも盛んである。すなわち、
エイサーをはじめとする様々なイベントトランジット構想の試み、観光地としての街並みや景観 に配慮した電柱の地中埋め立て計画、ベンチャー・ビジネス、コミュニティ・ビジネスを立ち上げ る際の支援策等、活気を取り戻すための取り組みが行われている。
交通網と地域の発達は、従来、先ず専用軌道が敷かれ、各駅間をバス等の補助公共交通機関がつ なぐという形態がとられてきた。また、モノレールも都市の短距離の補助公共交通機関として捉え られてきた。しかし、沖縄は戦後米軍の基地戦略とも関連して、自動車交通を主要輸送手段とした ために、結果的にそれに沿った戦後の都市の発展がもたらされることになった。それに対して、那 覇市のモノレール開業は、そのような特殊沖縄的な発展の成果の上になされたために、既存バス路 線との間で齪鶴を生じさせる結果となっている。
モノレールの年間利用客数は開業の2003年には750万人弱でしかなかったが、2005年には年間利 用客数が1,300万人となり、モノレールの市民への定着化が見られるのに対して、バス利用者は甚
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沖縄大学法経学部紀要第7号
だしく減少している。すなわち、2003年のバス利用者数は700万人ほどであったが、2004年には370 万人と、僅か1年間で半分近くまで減少している。旭橋駅からおもるまち駅までのモノレール各駅 と地域を結ぶバス路線として、おもるまち線の開通や、新都心回遊バス路線の開設等が見られるよ うに、現在ではバス路線の変更が余儀なくされている。バス路線をモノレール路線にあわせて組み 替えることによって、那覇市民の公共交通機関の利用頻度を高める必要がある。また、それによっ て、新旧両都心部をつなぐ地域における消費者の面的回遊行動の拡大にも大きな変化が見られるこ とが期待され、那覇市の心臓部としてのこの重要地域の復興と活気ある発展にもつながることにな ると考えられる。
古い革袋に新しい酒は盛れないの臂え通り、新しく変化しようとしている那覇市の計画には、市 民参加による新しいアイデアを取り込んだ斬新な発想が必要とされている。都市計画づくりには、
住民参加が求められるようになってきており、那覇市においても複数の地区で、住民参加の下で計 画づくりのワークショップがもたれている。地域住民参加での計画づくりは、先島、離島の開発で も同様に必要である。地域の特色と良さを生かした発展が特にその地域では求められている。県内 格差の存在解消は、それによってこそ可能となる。しかし、本報告書でも指摘しているように、先 島は、今後、移住者の増加が見込まれている。先住の居住者と新しく本土から移り住んだ者達との 軋礫も指摘されるところである。八重山では、長期に渡りそこでの生活を営んではいるものの、住 民票を移さない移住者が多数存在していることから、地域の税収等の面で深刻な問題を抱えている。
また、移住者を当て込んでなされた宅地開発による地価騰貴、環境破壊ということも問題となって いる。新石垣空港建設が着手された。また、沖縄振興計画では与那国空港へのアクセス整備も盛り 込まれている。これらは、先島、離島の発展を促すプラスの側面があると同時に、地域の調和ある 発展に対してマイナスの影響を及ぼす可能性も秘めている。先島、離島の抱える流通の課題を含め、
地域住民自身による発展の方向を目指すことが喫緊の課題となっている所以である。
今回の我々の調査・研究の成果を踏まえ、以上のような問題の提起をもって報告の結論にかえた い。
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