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「壁面後退規制が建築物の供給に与える影響に関する研究」

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壁面後退規制が建築物の供給に与える影響に関する研究

《 要 旨 》 自治体における規制導入などの際には政策目的や規制の意義としての便益面が主に強調 され、規制そのものによってどのような内容・程度の費用面が発生し得るかについてまで 論じられることは尐ない。 そのため本研究ではきめ細かなゾーニングの在り方として今後さらに重要性を増すこと が期待される地区計画の枠組みの中で定められる壁面後退規制が、建築物の供給にどのよ うな影響を与え得るのかについて埼玉県朝霞市を対象としたケーススタディーの形で実証 的手法を用いて分析を行った。その結果、壁面後退規制によって長期的には建築物が狭小 化・老朽化し、建築主に建て増しにより高い建築物を建てるインセンティブを与えている 可能性があることを指摘することができた。また、当該規制のこうした費用面に対する認 識が不十分な場合、自治体には最適な規制強度より高い水準の規制を掛けてしまうことが 懸念される点も経済学的観点から示した。 したがって今後は壁面後退規制に限らず都市計画行政に関る規制の影響を評価する際に は、規制の費用面を具体的に勘案した上で事前・事後の費用便益分析を実施することが不 可欠になると結論付けた。

2012 年(平成 24 年)2 月

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム

MJU11019 並木 努

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目次

第1章 研究の背景・目的 (1)研究の背景 ……… 3 (2)研究の目的 ……… 5 (3)壁面後退規制制度の概要 ……… 6 (4)先行研究 ……… 10 第2章 研究手法 (1)研究手法の概要 ……… 12 (2)調査対象地の概要 ……… 13 (3)利用したデータ ……… 16 (4)推計式 ……… 17 第3章 分析結果 (1)物件別延べ床面積を被説明変数としたDID 分析 ……….. 18 (2)年次別新築件数及び年次別平均階数を被説明変数としたDID 分析 ……….. 20 第4章 総合考察 (1)結果を踏まえた考察 ……… 22 (2)政策的含意 ……… 24 (3)今後の課題 ……… 25 第5章 おわりに ……… 26 参考文献 ……… 27 謝辞 ……… 29

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第1章 研究の背景・目的

(1)研究の背景 政策を策定・実行する行政の現場において政策が新たに導入される際、特に民間による 生産活動に対して都市計画上の種々の規制・制限が適用される時などには、例えば住民説 明会や広報等において、『平成○○年○月から、○○を対象に○○を目的とした○○規制が 掛かります。この制度の導入により○○になり安心・安全なまちづくりが進みます。』とい ったように、その便益の側面のみがとりわけ強調されることが多いように思われる。これ は都市計画に関わる規制は規模・質の両面で市民の日常生活に与える影響が他部門と比較 して相対的に大きくかつ直接的であり、それゆえに市民の関心、中でも当該規制によって 自分自身の生活にどういった影響が及ぼされるのかといった不安が強いため、そうした漠 然とした懸念を論理的に払拭し、非合理的かつ過剰な反発に関しては未然に防ぐためであ ると考えることができる。また、都市計画は他分野の政策と比べ個々人のライフサイクル よりも長いスパンでの視野が求められるため、目下の負担よりも長期的に見てよりよいま ちづくりに資する規制である点を市民一人一人に理解してもらうための手段であると捉え ているからでもあろう。こうしたことは、法律に基づき全国一律一斉導入されているよう な規制よりも、例えば地区計画の地区整備計画内において定められる壁面後退規制のよう に、都市計画法及び建築基準法においてはその定義・原則のような概括的な枠組みのみが 定められており、詳細な規制内容やその程度については各市町村毎の実情に応じて市町村 による効果裁量に任されているようなタイプの都市計画行政上の規制について特に言える ことである。 しかしN・グレゴリー・マンキューの著書『マンキュー経済学第2版Ⅰミクロ編』をは じめとした経済学や、政策策定及び運用の基本的な考え方に基づけば、行政の民間への介 入には ①外部性 ②公共財 ③独占 ④情報の非対称 ⑤取引費用 のうちいずれかの 「市場の失敗」が根拠として挙げられなければならず、また、それと併せてどのような政 策にも長所や便益面だけではなく短所や費用面があり、それらの比較考量を行うことと、 政策目的に対して本当に適切な規制手段なのか否かに関する慎重な判断が必要になってく る。例えば壁面後退規制は市場の失敗の一つである負の外部性を内部化することを目的と して実施されているものの、その一律的な規制が最適な水準を越えて過剰になり過ぎると、 図1に示したように不動産市場における一種の参入規制のような形で供給の抑制が働くこ とで死荷重が発生してしまい、むしろ「政府の失敗」の方が大きくなる危険性もあり得る。 実際に市役所の窓口や電話口で応対していると、地区計画の中でも特に壁面後退に関する 問い合わせが多く、後退部分にどういった物なら置いていいのか、路面の状態はどう整備 すればいいのか、建ぺい率及び容積率の算定はどうするのかといったような壁面後退エリ アの取り扱いについての相談や、アパートを作る予定だったが壁面後退規制のせいで当初

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- 4 - 図1.過剰規制による死荷重の発生 の計画より戸数を減らさざるを得ず採算が取れなくなるといった苦情が度々寄せられ、こ のようなことを長期間続けていては市街地開発の市場から見た魅力がかえって減尐してし まうのではという危惧を経験上抱いた。この規制により新築や改築といった建築行為にデ ィスインセンティブが働けば平均築年数が上昇し、長期的には市街地全体が老朽化するこ とも予想される。したがって市場原理を歪めずに政府の失敗を市場の失敗よりも縮小し、 適切な範囲で負の外部性を内部化するための枠組みが必要になるのである。 従来の主要な集団規定の一つである用途地域による建築規制は、ある程度広域的範囲を 建ぺい率及び容積率、そして建築物用途という形でまちづくりの骨組みをあくまでも概括 的に規定する枠組みであったと言える。地区計画自体はこうした既往の大まかな用途地域 規制などの穴を埋めるきめ細かな都市計画の在り方として今後さらに重要性が増していく ことが期待されているものであり、地方分権や中心市街地活性化、コンパクトシティなど まちづくり分野での大きな転換点の先を見据えた政策の考え方にも合致するものである。 このような特長を持つ地区計画は、「○○1丁目地区地区計画」といったような一つのパッ ケージの中に市町村単位よりさらにミクロな地域毎の実状に即した様々な規制を、住民に 最も近い自治体(=市町村)による都市計画決定で定めることができる点が強みであるが、 それゆえに地域毎に規制の内容や強度を精査する必要性が出てくると言える。キャピタリ ゼーション仮説(資本化仮説)によれば様々な政策の費用と便益のバランスは最終的には 地価という形で現れ土地所有者に帰属するとされているが、さらに詳細に規制の功罪を純 粋に評価するためにはDID 分析のような手法が必要になってくる。 こうした背景に基づき、本稿では壁面後退規制がまちづくり、特に建築物の供給にどの ような影響を及ぼし得るのかということに関する分析を行った。 死荷重 私的供給曲線(無規制) 社会的供給曲線(最適規制) 過剰規制時の供給曲線 需要曲線 建築物の取引量 建築物の取引価格

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- 5 - (2)研究の目的 本来、建築形態規制の一種である壁面後退規制は例えば隣地同士や道路との境界に対す る建て詰まりや、それによって引き起こされる災害時の延焼、通風・採光条件の悪化、そ して道路のラインから見て建築物群の形状が凹凸になり統一性に欠けるなど景観の悪化、 さらに道路幅員の狭隘な地域においては歩行者空間の不足など、様々な負の外部性を内部 化する手段の一つとして現在導入されている規制であると考えられる。しかし長期的観点 から見ると規制導入後一定年数が経過し建て替え等が進むにつれ、こうした便益面が現出 するだけでなく、一方で建築物の需要者(将来的居住者 etc.)と供給者(不動産業者 etc.) 双方の利潤を最大化する合理的な規模の建築行為が阻害されてしまったり、また物件によ っては従前の規模の建築物には建て替えられなくなってしまうため、建築のディスインセ ンティブが働いてしまい結果として延べ床面積の減尐という形で建築物の供給量が減尐し てしまったり、また平均築年数の上昇が発生したりという費用面も尐なからず現れてくる ことが予想される。最終的に当該地域の地価上昇を根拠に規制の正当性を結果論的に主張 することもできるであろうが、規制によって発生し得るこのような建築物の狭小化・老朽 化といった費用面の存在を実証的に分析・評価することで建築形態規制のより精緻な費用 便益分析の用に供することや、同様の政策目的を達成するための他の規制手段の実施も併 せて検討することも視野に入れる機会を提供することは今後の都市計画行政上意義深く、 これを本研究の目的とする。

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- 6 - (3)壁面後退規制制度の概要 壁面後退規制は各種建築行為(新築、改築、増築等)を実施する際に指定の範囲内に建 築物の部分が入らないように後退して建築しなければならないとする規制である。制度を 導入した時点で既に建築されている、若しくは着工されている建物については既存不適格 という扱いになり、すぐにセットバックする必要は無いものの次回の建て替え以降からは 規制に従い壁面後退線よりも敷地の奥方向へ下がることが求められる。また、道路のみか ら下がるのではなく敷地境界線全体(例えば長方形の土地なら四面全て)から下がらなけ ればならない内容の規制もあり、壁面後退距離も様々で自治体の裁量に任されている部分 も尐なくないのが現状である。当該規制の根拠法令としては様々なものがあり、まず私法 の一般法である民法では、 (境界線付近の建築の制限) 第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保た なければならない。 (※下線筆者、以下同様) 2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建 築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過 し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。 第二百三十五条 境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことの できる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けな ければならない。 2 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまで を測定して算出する。 (境界線付近の建築に関する慣習) 第二百三十六条 前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。 という規定があり、後退しなければならない建築物の一部として屋根や出窓は算入しない ことになっている。また任意規定であるため、隣家の同意があれば50cm 未満まで接近す ることも可能ではある。都心部などに多く見られる密集市街地では暗黙の了解や慣習とし て特に道路に面していない隣地境界については50cm も離すことが難しいため、既にあま り実効性を持っていない条文であるとも言うことができるだろう。 次に建築物の集団規定などを定めている建築基準法では、 (第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内における外壁の後退距離) 第五十四条 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内においては、建築物

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- 7 - の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(以下この条及び第八十六条の 六第一項において「外壁の後退距離」という。)は、当該地域に関する都市計画において外 壁の後退距離の限度が定められた場合においては、政令で定める場合を除き、当該限度以 上でなければならない。 2 前項の都市計画において外壁の後退距離の限度を定める場合においては、その限度は、 一・五メートル又は一メートルとする。 のように閑静な住宅街を形成することを目的とした特定の用途地域内においては任意に壁 面後退規制を定めることができるとしているほか、 (隣地境界線に接する外壁) 第六十五条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについて は、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。 といった防火・準防火地域にある特定の建築物の場合については壁面後退は適用除外とし ている。これら二つの条文の優先度については、平成元年9月19日の最高裁判所判決に おいて後者はあくまでも例外規定であり、基本的には前者の壁面後退規制が適用されると されている。また、 (景観地区) 第六十八条 2 景観地区内においては、建築物の壁又はこれに代わる柱は、景観地区に関する都市計 画において壁面の位置の制限が定められたときは、建築物の地盤面下の部分を除き、当該 壁面の位置の制限に反して建築してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する 建築物については、この限りでない。 一 前項第一号に掲げる建築物(公衆便所、巡査派出所その他これらに類する建築物で、 公益上必要なもの) 二 学校、駅舎、卸売市場その他これらに類する公益上必要な建築物で、特定行政庁が用 途上又は構造上やむを得ないと認めて許可したもの (市町村の条例に基づく制限) 第六十八条の二 市町村は、地区計画等の区域(地区整備計画、特定建築物地区整備計画、 防災街区整備地区整備計画、歴史的風致維持向上地区整備計画、沿道地区整備計画又は集 落地区整備計画(以下「地区整備計画等」という。)が定められている区域に限る。)内に おいて、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で当該地区計画等の内容と して定められたものを、条例で、これらに関する制限として定めることができる。 2 前項の規定による制限は、建築物の利用上の必要性、当該区域内における土地利用の

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- 8 - 状況等を考慮し、地区計画、防災街区整備地区計画、歴史的風致維持向上地区計画又は沿 道地区計画の区域にあつては適正な都市機能と健全な都市環境を確保するため、集落地区 計画の区域にあつては当該集落地区計画の区域の特性にふさわしい良好な居住環境の確保 と適正な土地利用を図るため、それぞれ合理的に必要と認められる限度において、同項に 規定する事項のうち特に重要な事項につき、政令で定める基準に従い、行うものとする。 といったように景観法に基づく景観地区や、都市計画法に基づく地区計画における地区整 備計画において壁面後退規制を必要に応じて定めることになっている。中でも特に広く適 用されている地区計画について定めた都市計画法の該当条文では、 (地区計画) 第十二条の五 地区計画は、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、 一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、 開発し、及び保全するための計画とし、次の各号のいずれかに該当する土地の区域につい て定めるものとする。 一 用途地域が定められている土地の区域 二 用途地域が定められていない土地の区域のうち次のいずれかに該当するもの イ 住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われる、又 は行われた土地の区域 ロ 建築物の建築又はその敷地の造成が無秩序に行われ、又は行われると見込まれる一定 の土地の区域で、公共施設の整備の状況、土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が 形成されるおそれがあるもの ハ 健全な住宅市街地における良好な居住環境その他優れた街区の環境が形成されている 土地の区域 2 地区計画については、前条第二項に定めるもののほか、次に掲げる事項を都市計画に 定めるものとする。 一 当該地区計画の目標 二 当該区域の整備、開発及び保全に関する方針 三 主として街区内の居住者等の利用に供される道路、公園その他の政令で定める施設 (以下「地区施設」という。)及び建築物等の整備並びに土地の利用に関する計画(以下「地 区整備計画」という。) 7 地区整備計画においては、次に掲げる事項(市街化調整区域内において定められる地 区整備計画については、建築物の容積率の最低限度、建築物の建築面積の最低限度及び建 築物等の高さの最低限度を除く。)のうち、地区計画の目的を達成するため必要な事項を定

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- 9 - めるものとする。 一 地区施設の配置及び規模 二 建築物等の用途の制限、建築物の容積率の最高限度又は最低限度、建築物の建ぺい率 の最高限度、建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度、壁面の位置の制限、壁面後退区 域(壁面の位置の制限として定められた限度の線と敷地境界線との間の土地の区域をいう。 以下同じ。)における工作物の設置の制限、建築物等の高さの最高限度又は最低限度、建築 物等の形態又は色彩その他の意匠の制限、建築物の緑化率(都市緑地法第三十四条第二項に 規定する緑化率をいう。)の最低限度その他建築物等に関する事項で政令で定めるもの 三 現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関す る事項 四 前三号に掲げるもののほか、土地の利用に関する事項で政令で定めるもの のように規定されており、地区整備計画の枠組みの中で壁面後退規制以外にも様々な規制 の選択肢を設けていることが読み取れる。例えばこれらの法律に基づいて地区計画で壁面 後退を定める場合、それ自体に強制力を持たせることはできず市町村当局としてはあくま でも「勧告」することしかできないが、併せて建築条例を改正することで建築確認の際の 審査事項に追加し、結果的に実効性のある形で運用するというケースが実務上多くなって いる。

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- 10 - (4)先行研究 壁面後退規制に関する既往の研究・分析としては、まず主なものとして高野ら(2008)によ る『地区計画によるデザインコントロールの可能性に関する研究』や上山(2004)の『地区計 画の策定に関する一考察:東京都江戸川区瑞江駅西部地区地区計画の策定』を挙げること ができる。高野ら(2008)は今後のまちづくりにおける地区計画の重要性を指摘した上で建築 物に対する具体的規制として「壁面後退」「高さ」「形態・色彩・意匠」の3つを挙げ、東 京23区内におけるそれぞれの規制の現状を概括している。壁面後退については地域によ って後退距離の程度や道路中心線及び隣地境界のどこから距離を測るかなどについて多様 性が見られる点、そして規制目的として街並み形成や防災性向上を挙げているものの実際 は道路環境の改善が重視されている点などに言及し、前述の3つの規制を単独でなく組み 合わせて運用することが肝要だとしている。上山(2004)は一つの事例として東京都江戸川区 の地区計画を取り上げ、50cm の壁面後退を定めると同時に3階建てあるいは5階建ての 建築物を許可するなど、住民の意見を反映した規制内容にすることで地区計画がうまく機 能していると述べている。この地区計画における壁面後退規制では建築物が面している道 路の幅員によって壁面後退部分の位置付けを「消防活動に配慮した空間」「緑を設ける空間」 「人が歩ける空間」などと区別している点で特徴的と言うことができる。 また、地区計画以外に基づく壁面後退を対象としたものとして、岡本ら(2002)の『積雪地 の緑豊かな住環境形成への計画的視点:札幌市の風致地区内住宅地にみる壁面後退空間の 利用実態と居住者意識』は地区計画ではなく風致地区条例の枠組みで定められている壁面 後退に注目した研究である。アンケート調査及びヒアリング調査によるあくまでも定性的 な分析に留まってはいるものの、庭の緑を確保することを目的に設定された3m の壁面後 退が現状では必ずしも植栽に利用されておらず、研究対象地の土地柄もあってかえって積 雪期の除雪負担を増やす結果になっている傾向があると指摘している。高津ら(2001)による 『建築協定地区における住宅外構の使われ方及び住まい手の意識』では名古屋市守山区に おいて当該地域住民の同意に基づいて締結される建築協定で規定された壁面後退(隣地境 界から1m 以上後退及び敷地外周は生垣)についてヒアリングを基に分析しており、同一 の規制内容であっても鉢植えや物置スペースとしての使い方や日照による便益の程度など 住宅によって一様ではないと述べている。 他に壁面後退による便益に特に言及したものとして、栗本ら(1995)の『京都市の街路空間 における壁面後退空地の都市空間への寄与性についての研究』では京都市中心市街地の壁 面後退を引き合いに出しつつ壁面後退規制の便益面のみに注目し、当該規制によって形成 される共用空間としての街路空間のアメニティー性のさらなる向上の為に、壁面後退距離 や空地開口距離及び後退空間同士の連担性等の重要性を利用者行動とも関連させて、街路 と後退空間の一体的な計画を策定することを提言している。出口ら (1990)による『高密市

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- 11 - 街地における壁面後退規制の有効性に関する研究:相隣環境の形成から見た形態規制の評 価』では東京都の高密市街地における日照確保に斜線制限が必ずしも寄与していないとし、 翻って壁面後退規制によって日照環境が改善される可能性を採光量を分析することで言及 しているため、地域によって望ましい規制の在り方に差が出るという示唆を得ることがで きた。加えて、東ら(2010)は『壁面後退空間の物的形状と誘因性:街路における壁面後退空 間の誘因性に関する研究』において壁面後退部分を多面的な誘因性を持つ空間と捉え、模 型空間知覚シミュレータを用いて様々な壁面後退の三次元モデルを作成して各々の誘因性 を実験的に測定しており、政策ではなく都市デザインの観点からの考察という点で独特の 切り口を提供している。 そして津田(2010)の『地区計画における地区施設道路等の整備効果に関する分析』では今 後のまちづくりにおける地区計画の重要性を指摘した上で、東京23区の既成市街地を対 象に壁面後退も含めた道路空間整備が地価に与える影響を実証的に分析し、壁面後退規制 によって低層住宅地及び商業地では有意に地価が上昇したことを示した。一方で中高層住 宅地では有意な結果を得られなかったため、規制が地価に与える影響の地域差があること が予想される。また、地区計画策定前後の時系列変化や敷地負担の有無による比較分析を 今後の課題として挙げている。 以上のように、壁面後退規制を特に取り上げた研究自体比較的尐ないものの、先行研究 は制度としての概観や規制の意義としての便益面について定性的に分析したものが目立っ たほか、地区計画以外の枠組みや政策面以外からアプローチした論文などがいくつか見ら れた。だがケーススタディーを通して地区計画における壁面後退規制が建築物の供給に具 体的にどういった影響を与え得るのかについて、特に規制の費用面に着目して実証的に分 析した研究は見受けられないため、その点で本研究は都市計画行政上の規制を分析する上 で一定の意義があると言うことができる。

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- 12 -

第2章 研究手法

(1)研究手法の概要 規制を始めとした様々な政策を経済学的アプローチから分析するには実証分析的手法が 不可欠であり、壁面後退規制が市街地形成に与え得る影響を建築物供給量の変化の面から 具体的に分析・評価するため、調査対象地域内の物件毎に壁面後退規制区域内外(トリー トメントグループとコントロールグループ)と規制導入前後でパネルデータを作成し、DID (Difference In Difference)分析を行った。その際建築物の建築面積や容積率、最高高さ といったような個別属性情報による影響もコントロールするため、これらのデータも説明 変数として推計式を構築する際に加えた。また、併せて規制の有無が今後の建築物の老朽 化にどのように作用するかを評価するため年次別の新築件数について、また規制に対して 建築主側が何らかの対策を取っているかどうかの一つの指標として平均階数についても共 にDID 分析を行った。 なお、規制の内容及び導入からの期間等の着目する規制の特性を極力統一した方が DID 分析の性質上正確に比較できるという観点から、本研究では対象地域を絞ってケーススタ ディーの形で分析した。そのため壁面後退規制を含めた地区整備計画を定めた地区計画が まず前提として存在し、かつ地区計画の種類が比較的尐なく、尐なくとも一つの地区が規 制導入から一般的な建築物の建て替えの目安とされる20~30年程度の期間が経過して おり、当該規制の有無以外の諸要素が建築行為に影響しない程度には十分限定的な小地域 といったような今回の分析に適合する複数の条件を満たす調査地として、埼玉県朝霞市を 対象として選定した。

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- 13 - 図2.朝霞市位置図 図3. 朝霞市都市計画図(2011 年 1 月現在) (2)調査対象地の概要 本研究において調査対象地として選定した 埼玉県朝霞市(図2・図3)は、埼玉県南部 の都県境にある人口約13.1万人(201 2年1月現在)、市域面積18.38km2の市 であり、うち市街化区域の面積は約58%の 10.64km2(2011年4月現在)とな っている。基本的に交通の便から東京都心部 のベッドタウンとしての役割を担い住宅地が メインであるが、東武東上線朝霞駅・朝霞台 駅と JR 武蔵野線北朝霞駅を中心に商業施設 が集中しているほか、黒目川流域及び市域北 東部をはじめとした市街化調整区域にはまだ 農地も多く残されている。 朝霞市における近年の都市計画規制の状況 を顧みると、2011年1月21日付で旧暫定 逆線引き地区(以下、旧暫逆地区とする)と 呼ばれる市街化調整区域の一部が市街化区 域に編入されるタイミングに合わせて新た に地区計画が策定され、その枠組みの中で建 築形態規制の一種である壁面後退規制が導 入されるという市の都市計画行政上重要な 政策転換があった。またそれに関連して、既 存の地区計画区域である北朝霞地区におけ る壁面後退規制についての地権者及び不動 産業者等からの窓口や電話での問い合わせ も比較的多かった。地区計画についてさらに 詳しく述べると、2012年1月現在市内に は6ヶ所の地区計画区域が存在する(図6) が、それらは対象地域及び地区整備計画の内 容によって主に「北朝霞地区地区計画」(1 地区)と「旧暫逆地区地区計画」(5地区)に分 類することができる。壁面後退規制も含め前 者は1991年1月18日、後者は前述の通

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- 14 - 図4.北朝霞地区の壁面後退規制 図5.旧暫逆地区の壁面後退規制 り2011年1月21日に導入された。特に壁面後退規制に関しては、前者は道路境界線 から一律1.5m の範囲内には建築物の部分(塀等も含む、以下同じ)を作ってはいけないと している(図4)のに対し、後者は地区整備計画に基づいて地区内に新たに作る地区施設 道路(区画道路)の敷地内には建築物の部分を作ってはいけないとしている(図5)よう な違いがある。したがって本研究においては、こうした開発行為や建築行為に対するコン トロールが適正なものなのか、規制によって便益を最大限実現することが潜在的に阻害さ れてしまっているといった影響が存在するのか、地区別ダミーを作成することで地区毎に 区別して評価することも試みた。

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図6.朝霞市の地区計画区域(左上のみ北朝霞地区。北朝霞地区は緑色及び青色、 旧暫逆地区は茶色で塗られた部分に当たる建築物に壁面後退規制が掛かる)

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- 16 - (3)利用したデータ 分析に利用したデータは、朝霞市の建築確認申請の際に建築主が提出する書類を元に作 成される建築計画概要書及びそれをデータ化したものであり、朝霞市都市建設部都市計画 課及び建築課から提供頂いた。対象期間は規制が導入される5年前(北朝霞地区では19 86年以降、旧暫逆地区では2006年以降)から2011年11月現在までで、対象区 域は壁面後退規制を定めた地区計画がある丁目内までとした。また、地区計画区域内にあ る物件でも必ずしも壁面後退に当たるとは限らないため、各々の建築物が壁面後退区域に 該当するか否かを把握するため、建築確認のデータと朝霞市ホームページで公開されてい る住民説明会などの際に配布された図面(図6)及び BLUE MAP(住居表示地番対照住宅 地図)を物件毎に逐次照らし合わせ位置を特定することで規制内ダミーを作成した。なお、 この際一般的な地図検索サイト(Google マップ etc.)ではなく BLUE MAP を使用したの は、建築確認の場合原則として申請時にはまだ建築物が無いため住居表示が定まらず、地 番による位置データしか存在しないためである。 これらを物件毎に分析に必要な属性情報を抽出すると同時にDID 分析のために新たに作 成したダミー変数を加え、推計式を作成して重回帰分析を行った。 また、規制による老朽化の指標としては当初は平均築年数を利用することを検討したも のの、データの制約の観点から代理変数として年次別の新築件数を採用した。本来『規制 の影響で築年数が増加した(=建て替えのディスインセンティブが働いた)』ことを直接的 に調べるには、建築時に実際に規制の対象になったか否かのデータに加えて建築してから 取り壊して建て替えるまでの期間のデータが必要になる。しかし、建築基準法に基づいて 市町村担当部局に提出される建築確認申請には「新築」「改築」「増築」などの工事種別の 項目があるのだが、今回使用した全808件のデータの中で「改築」は公衆トイレの1件 のみであった。この理由としては国土交通省等による「新築」及び「改築」の定義と一般 的に言われている両者のイメージに若干の乖離がある可能性を指摘できる。建築着工統計 調査に付記されている用語の定義によると「新築」は『既存の建築物のない新たな敷地に 建築物を建てる工事』とし、「改築」は『建築物の全部又は一部を除却し(略)これらと用途、 規模、構造の著しく異ならない建築物を建てる工事』としている。この定義に基づくと、 例えば老朽化した住宅を全て取り壊して更地にし、尐ししてからまた住宅を新しく建てる という場合などに新築と改築どちらに該当するのが必ずしも明確に区分できるものではな く、定義の曖昧さゆえこれまでの建築確認申請ではより広義な「新築」が便宜上選択され ていたためと推察される。

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- 17 - (4)推計式

Y

it

=

α

0

+

β

D

it

+ γT

it

+

δ

D

it

×

T

it

+ X

φ

+ ε

Yit:被説明変数(延べ床面積) Dit:規制内ダミー Tit:規制後ダミー Xφ:その他説明変数(北朝霞地区ダミー、敷地面積、建築面積、建ぺい率、 容積率、最高高さ、地上階数) ε:誤差項 本研究におけるDID 分析のために新たに作成したダミー変数 Dit及びTitとそれらの交差 項、そして被説明変数Yitに影響を与えることが想定される建築物の属性情報を他の説明変 数として抽出し、上記の推計式を作成した。 まず被説明変数には建築物の供給量を測る指標として延べ床面積(単位は㎡)を設定し た。これは壁面後退規制があるという理由のみでその地域での建築自体を断念する状況は 想定し難いため、最も直接的に壁面後退の影響が出やすいと考えられる延べ床面積が当該 規制の影響評価に適していると推察したためである。なお、新築件数を被説明変数とした 補完的分析については後述する。 次にDit(規制内ダミー)及びTit(規制後ダミー)については、前者は壁面後退区域内に 入っていれば1、入ってなければ0の値を取り、後者は壁面後退規制が導入された年以後 に建築された建築物であれば1、以前であれば0の値を取るダミー変数である。したがっ て実際に建築時に壁面後退規制が掛かりセットバックしている建築物のみ Dit及び Titの交 差項Dit×Titが1の値を取ることになる。 また他の説明変数については、北朝霞地区及び旧暫逆地区の規制内容の違いが延べ床面 積に与える影響の差をコントロールするため、北朝霞地区内であれば1、旧暫逆地区内で あれば0になる北朝霞地区ダミーを設定したほか、敷地面積及び建築面積の単位は㎡、建 ぺい率及び容積率の単位は%、最高高さの単位はm で入力し、分析に用いた。 これに加えて、被説明変数を年次別の新築件数にすることで規制の有無が建築物の老朽 化に今後どのような影響を与える可能性があるかを評価し、また被説明変数を平均階数に することで規制に対して建築主側が建て増しなど何らかの対策を取っているかどうかの一 つの指標になるかを実験的に検証するため、他の説明変数を除いた純粋なDID 分析を補完 的な位置付けとして実施した。

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- 18 - 表1.被説明変数(延べ床面積) の基本統計量

第3章 分析結果

(1)物件別延べ床面積を被説明変数としたDID 分析 収集できたデータ自体は全部で808件(うち北朝霞地区531件、旧暫逆地区277 件)であるが、物件によって一部欠損している属性情報があり、利用する説明変数に該当 するデータが全て揃っている物件のみを抽出する必要がある関係で実際に分析に供するこ とができるサンプル数は減尐した。 まず壁面後退規制が建築物供給量にどのような影響を及ぼしているかを調べるために被 説明変数を延べ床面積にして分析を行った結果、被説明変数の基本統計量は表1のように なり、DID 分析の結果が表2のようになった。分析に使用したサンプル数は239件で、 それらの延べ床面積の平均は約106.4㎡、最小の建築物で7.35㎡、最大で934.84 ㎡であった。平均値、中央値、最頻値がいずれも100前後で固まっていることから、極 端なバラつき等の偏向性は無いことが予想できる。 延べ床面積(㎡)の基本統計量 平均 106.3772803 標準誤差 4.822816732 中央値 (メジアン) 99.36 最頻値 (モード) 101.02 標準偏差 74.55893732 分散 5559.035135 尖度 66.91650097 歪度 6.806347081 範囲 927.49 最小 7.35 最大 934.84 合計 25424.17 標本数 239 信頼区間(95.0%) 9.500859623 表2.規制関連ダミー及び他説明変数を用いた DID 分析結果 回帰統計 重相関 R 0.984543509 重決定 R2 0.969325922 補正 R2 0.967980568 標準誤差 13.34155724 観測数 239 分散分析表 自由度 変動 分散 観測された分散比 有意 F 回帰 10 1282467.012 128246.7012 720.4986227 2.1053E-166 残差 228 40583.35013 177.9971497 合計 238 1323050.362 係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 有意水準 切片 -21.37569901 7.666198743 -2.788304834 0.005745857 -36.48135443 -6.27004359 *** 規制内d 2.414259603 5.514578815 0.437795829 0.661948744 -8.451794117 13.28031332 規制後d 5.306673886 2.501095355 2.121739931 0.034938781 0.378457716 10.23489006 ** 規制内×後 -6.015990611 8.173795058 -0.736009475 0.462481459 -22.12182556 10.08984433 北朝霞地区d -0.272799771 3.23758524 -0.084260259 0.932923445 -6.652212654 6.106613112 敷地面積(㎡) -0.007666332 0.001548886 -4.94957892 1.44568E-06 -0.010718292 -0.004614372 *** 建築面積(㎡) 1.144060976 0.015688974 72.92133754 5.3293E-160 1.113147058 1.174974893 *** 建ぺい率(%) -1.857845425 0.212890668 -8.726758417 5.61363E-16 -2.277330124 -1.438360727 *** 容積率(%) 0.853046808 0.120572908 7.074945961 1.82104E-11 0.61546716 1.090626457 *** 最高高さ(m) 7.297194192 1.307541442 5.580851174 6.76415E-08 4.720784275 9.87360411 *** 地上階数 7.783447003 6.231460026 1.249056717 0.212925186 -4.495166046 20.06206005 ※ ***、** はそれぞれ統計的に1%、5%で有意であることを示す

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- 19 - 次に規制関連ダミーも含め主な説明変数の分析結果を解釈していくと、規制後ダミーが 5%有意水準で係数が約5.3となっていることから、規制導入後であれば(壁面後退区域 内外の区別をしなかった場合)延べ床面積が増加したと言うことができることになる。た だしこれはあくまでも実際に壁面後退に該当したか否かを勘案していない点と、規制導入 そのものの影響で急に増加したというよりも、経年逓増的に市街地開発が進んだため規制 の前と後で二元的に判断すると規制の影響で増加したように観察されたという解釈も同時 にできる点に留意したい。これに関しては規制後ダミーの代わりに年次別ダミー(198 6年ダミー、1987年ダミー、・・・、2011年ダミー)を入れて別途分析したものの、 係数は多くの年次でプラスになったがいずれのダミーも統計的に有意にならなかったため 断定はできない。また規制内ダミー及び規制後ダミー交差項については、統計的に有意と は言い難いものの係数が約-6であったことから延べ床面積にマイナスの影響を与える可 能性があることが示された。これは基本統計量の平均値が約106.4㎡であったことを踏 まえると、壁面後退規制に延べ床面積を約5.6%減尐させる作用があると解釈することが できる。加えて分析結果の下限95%のところを見ると約-22.1であるため、最大では 延べ床面積を約20.8%減尐させると換言することができる。この説明変数が強く有意に 出なかった理由としてはサンプル数が不十分であったり説明変数同士の相関関係等が想定 される。次に北朝霞地区ダミーについてはt 値が小さく係数もマイナスとはいえ小さかった ことから、尐なくとも今回の事例に関しては壁面後退規制の規制内容による延べ床面積の 差は出なかったと考えられる。敷地面積及び建築面積についてはいずれも1%有意水準で 前者は延べ床面積にマイナスの影響、後者はプラスの影響を一定程度与えることが示され た。この理由として、まず敷地面積については元データと突合したところ敷地面積が広い 物件は比較的郊外に多く商業利用よりも農家等の住宅利用が見られたが、より大きな建築 物を建てるよりもより広い耕作地を確保しようとするインセンティブが働いているかまで は判断できなかった。建築面積については、建築面積が広いほど延べ床面積が増すのは2 階部分以上を極端に狭くしようとしない限り自然なことである。建ぺい率及び容積率につ いても共に1%有意水準で、前者はマイナス、後者はプラスの影響を延べ床面積に与える ことが示された。建ぺい率が高いほど延べ床面積が小さいというのは、データを概観した ところ駅周辺の商業地域及び近隣商業地域の方が建て詰まりのように建ぺい率一杯近くま で建築している物件が多く見られるためであると考えられる。容積率は基本的に高いほど (敷地面積に対して)延べ床面積が増えていくので、この分析結果は定義に矛盾しない。 そして最高高さ及び地上階数については、前者が1%有意であるのに対し後者は有意とは ならなかったもののいずれも延べ床面積にプラスの影響を与える結果となった。ペンシル ビルのような極端な形状の建築物でない限り高さや階数が増えるほど延べ床面積も増加す ることが理由として挙げられる。また、この分析では決定係数が約0.97と非常に1に 近い値となっているため、誤差項は小さく、推計式によって表される回帰モデル及び前 述の分析結果が現実のデータに正確に当てはまっていると解釈することができる。

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- 20 - (2)年次別新築件数及び年次別平均階数を被説明変数としたDID 分析 次に壁面後退規制が市街地の老朽化にどのような影響を及ぼしているかを調べるために、 年次別の新築件数を被説明変数としてDID 分析を行った結果、図7のようになった。この 分析では被説明変数が前節に示した延べ床面積のような物件単位ではなく年次単位である ため、規制が適用される前5年間と後5年間での変化を評価するため、2011年に規制 が導入されたばかりの旧暫逆地区はサンプルから除外し北朝霞地区のみを対象に行った。 また被説明変数が年次別であることと、特定年次に朝霞市内北朝霞地区のさらに壁面後退 に該当する部分に新築された物件等と条件が限定されると数が限られてくるため、サンプ ル数の尐なさ及びデータ上の制約から規制関連ダミーのみを用いた純粋なDID 分析という 形で分析を実施した。 そのため本研究においてはあくまでも補完的な分析という位置付けにはなるが、図7に 示したように規制の効果(影響)で新築件数が減尐するという結果を得ることができた。 分析の対象としたサンプル全体の平均が12.35件/年であり、そのうち規制による減尐 分が1.8件/年であるため、一年当たり平均で約14.6%の新築減尐効果が存在すると言 うことができる。したがって、今回の分析では規制導入前後5年間であるが、より長期的 な影響を考慮すると壁面後退規制により新築件数が減尐し、建築物更新のディスインセン ティブが働くことで経年的に市街地全体としては老朽化が進行する可能性があると評価す ることができる。 規制内 規制外 1986 4 12 (規制後・規制外) - (規制前・規制外) = 19.8 - 15.2 = 4.6 1987 8 17 (規制後・規制内) - (規制前・規制内) = 8.6 - 5.8 = 2.8 1988 7 15 (規制内の時間効果) - (規制外の時間効果) = 2.8 - 4.6 = -1.8 (規制の効果) 1989 7 18 1990 3 14 平均 5.8 15.2 1991 3 14 1992 4 35 1993 8 20 1994 18 17 1995 10 13 平均 8.6 19.8 ※1991年1月規制開始 規制の効果 新築件数 規制前 規制後 図7.壁面後退規制が新築件数に与える効果

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- 21 - また、壁面後退規制の導入に対して実際にどのような建築物が建築されているかを併せ て調べるために、年次別の平均階数を被説明変数として同様のDID 分析を行ったところ、 図8のような結果を得ることができた。 この分析によると当該規制には平均階数を増加させる効果があると言うことができる。 サンプル全体の平均階数が3.17階であり、そのうち規制による増加分が1.66階である ため、一年当たり平均で約52.4%というかなり大きな階数増加効果が存在することにな る。これは、壁面後退規制によって建築物をセットバックさせなければならず十分な建築 面積の確保が難しくなった分、その代わりとして規制が無い場合に比べ1~2階分上に建 て増しするような建築物を建てるインセンティブが働いている可能性があることが一つの 要因として想定できるだろう。 なお、年次数が限られサンプル数が十分とは言い難いため分析結果に対する正確な検定 は難しいが、新築件数については有意とならなかったものの平均階数については1%水準 で有意となった点を付言しておく。 規制内 規制外 1986 2.25 2 (規制後・規制外) - (規制前・規制外) = 2.41 - 2.42 = -0.01 1987 2.25 3 (規制後・規制内) - (規制前・規制内) = 4.75 - 3.1 = 1.65 1988 3.86 2.67 (規制内の時間効果) - (規制外の時間効果) = 1.65 + 0.01 = 1.66 (規制の効果) 1989 3.14 2.06 1990 4 2.36 平均 3.1 2.42 1991 3.33 2.29 1992 4.25 2.3 1993 5.5 2.47 1994 5.09 2.81 1995 5.56 2.18 平均 4.75 2.41 ※1991年1月規制開始 規制の効果 平均階数 規制前 規制後 図8.壁面後退規制が平均階数に与える効果

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- 22 - CG C* R* RG 規制強度 社会への コスト 総コスト 規制によるコスト 負の外部性

第4章 総合考察

(1)結果を踏まえた考察 以上の分析結果を踏まえると、朝霞市の事例では壁面後退規制によって延べ床面積が減 尐して建築物が狭小化し、また新築件数が減尐することで長期的には相対的に平均築年数 が上昇し老朽化する可能性があるといったような費用面が発生していることを指摘するこ とができる。加えて、壁面後退する代わりに新しく建てる建築物の階数を建て増しすると いったような形で「規制対策」がとられている実状も併せて明らかになった。ただし階数 が延べ床面積に与える影響をコントロールするために説明変数として地上階数も設定した ため、建て増しの発生自体を延べ床面積の減尐が必ずしも強く有意に出なかった理由の一 つとして考えることは実証分析上難しい点に留意する必要がある。 したがって当該費用面の性質上、新たに壁面後退規制を導入したばかりの場合よりも、 むしろ既に導入後時間が経過しているような場合こそ経年による建築物の狭小化・老朽化 が懸念されることになる。そのためどの程度の距離の後退であれば費用面を最小化し便益 面を最大化することができるのか、そしてその結果として規制による効用を最大化し市場 の失敗である負の外部性を最適な水準で内部化することができるのかを、本研究で実証し た費用面も対象に加えた精緻な費用便益分析の実施によって地域毎に明らかにすることが 今後は求められると言える。また、規制対策として新たに発生する1~2階分の建て増し による影響も考慮しなければならない。壁面後退をすることで平均階数が増加して相対的 に高い建築物が経年的に逓増していくと、長期的に市街地全体として日照環境、特に壁面 後退に該当しない部分(例えば本研究の事例のような道路境界線からのセットバックのみ なら隣地境界部分)の採光条件がかえって悪化する恐れがあると評価することができる。 そのため自治体による当該規制の採否の選択においては、建て詰まり解消による正の外部 性と日照権の担保による正の外部性の間のトレードオフに直面していることが指摘できる。 図9.壁面後退規制強度と社会へのコストの関係

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- 23 - これらのことをより詳細に考察すると図9のような関係が成立していることになる。な お、このグラフ内のR*は最適な規制強度、RGは実際に自治体が採用する規制強度、C 総コストが最小となる点、CGは実際に規制によって掛かる総コストをそれぞれ表している。 まず壁面後退規制は先にも述べた通り、規制が無かった場合に発生する建て詰まりや延焼、 景観の悪化、歩行者空間の不足といった様々な負の外部性によって社会に生じるコストを 改善するための手法である。そして同時にそれが当該規制の政策目的であり便益面でもあ ると言える。したがって負の外部性(によるコスト)を表すグラフは左から右に向かって 規制強度が高くなるほど、つまり無規制から1.5m 後退、3m 後退・・・となるほど基 本的に減尐していく。また、グラフには現れていないが新たに規制を導入するための住民 説明会や広報など周知に掛かる「規制導入のためのコスト」も別途初期投資として一定程 度生じることになる。ここまでは一般的に論じられていることだが、規制自体の影響で新 たにどういった費用がどの程度社会に発生し得るのかという「規制導入によるコスト」に ついては、尐なくとも壁面後退規制については今まで十分に議論されてこなかった。そこ で今回の研究で言及した建築物の狭小化・老朽化、そして建て増しによる一部での日照悪 化といった費用面が規制強度が高まるにつれ逓増していくことを「規制によるコスト」の グラフで表現した。以上を勘案すると規制強度によって変化する総コストが最も小さくな る最適な水準R*が存在することになる。しかし実際はこの「規制によるコスト」が認識さ れているとは言い難いのが実状であり、そのため負の外部性を尐しでも減らそうとする自 治体には壁面後退規制の実施に当たって最適よりも高い水準の規制強度RGを課すインセン ティブが働いてしまうことになる。これは社会に掛かる総コストを上昇させることにつな がり、経済学的には非効率的な状態になってしまっていると言うことができる。なお、今 回の分析では実証できなかったが、「規制によるコスト」は規制強度だけでなく時間経過の 影響も同時に受けることが予想される点にも留意しなければならないだろう。 規制導入後一定年数が経過した後に地価が上がっていれば適切な規制だった、地価が下 がっていれば不適切な規制だったか若しくは規制強度が最適な水準ではなかったといった ように、政策の効果は最終的に地価(土地所有者の得失)に帰結するというキャピタリゼ ーション仮説に基づいて地価変動から結果論的に規制の是非を問うだけではなく、今回の ような実証的手法を用いて明らかにされた当該政策にどのような種類・程度の費用面があ るかということを考慮した上で事前・事後に綿密な規制評価を行うことこそ、今後の政策 策定及び運用に際しては強く要請されるのではないだろうか。

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- 24 - (2)政策的含意 本研究では現在導入されている壁面後退規制が建築物の供給を抑制している可能性を指 摘することで建築物の狭小化・老朽化を招きかねない政策的コストが存在していることを 実証することができた。費用面が存在するからといってその点のみに言及し直ちに当該政 策の廃止まで論じることは不当であるが、政策目的として掲げられ規制の意義という形で 論じられやすい便益面との比較考量をする上で、その対照としての費用面に光を当て実証 的な検証を行うことは不可欠である。 また、本研究で示したような費用面があるとしても、壁面後退規制と同様・類似の政策 目的を達成するための他の規制手段を組み合わせて採用する方がより俯瞰的な政策として は適切である可能性を指摘することができる。具体例としては高度地区による建築物の高 さの最高限度の規制などがある。これは日照の確保を政策目的の一つとしている点で壁面 後退と類似した規制だが、当該規制を併用することで、先に述べたように壁面後退規制に よって階数の建て増しが起こり直接規制の影響を受けない別の部分の日照が悪化するとい ったような費用面を改善・補完することが期待できる。またこれと同様に、先行研究で触 れた建築基準法に基づく建築協定や景観法に基づく景観協定など当該地域住民のみで合意 形成を図ることで良好なまちづくりを担保する手法に見られるように、同じ壁面後退規制 を別の枠組み内で他の規制と併用することで費用面を減殺するという手段も挙げられる。 地区計画はあくまでも自治体によるトップダウンの要素が比較的強く「行政と住民の協定」 だが、建築協定や景観協定は行政はあくまで仲介・調整役であるため「住民同士の協定」 と言うことができ住民にとって内生的であるため、今回言及した費用面についても異なる 結果になることが期待できる。ただしその場合も住民間協定の実効性を保障するためにも、 民間のみに任せた場合に発生する市場の失敗の一つである過大な取引費用を縮減するため 調整役としての自治体が契約のひな型を事前に策定しておくことは求められるだろう。 一方で、例えば容積率規制は建築物が隣接する道路などのインフラに対する負荷を軽減 する手法の一つと言われているが、壁面後退規制も実質的道路幅員の拡幅により容積率規 制と同様にインフラ負荷軽減の便益面があるため、前述のように壁面後退規制を適正な水 準で運用するか他の規制と併用して費用面を補完する代わりに容積率規制を緩和・廃止し、 非効率な二重規制、三重規制を避けることで建築物供給によって生じる効用の最大化を図 ることができるのではないだろうか。 今回の分析は具体的事例における最適な壁面後退水準を明示するものではないが、政策 目的である「市場の失敗の改善」のための政策手段としての規制がかえって「政府の失敗」 につながり得るということが、今後重要な役割を果たすことが期待される地区計画の構成 要素である壁面後退規制に関しても示唆された点で、都市計画行政上の規制政策を実際に 策定・運用する者にとって些尐ではない意義を包含していると言うことができる。

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- 25 - (3)今後の課題 資材置き場や管理状態の悪い駐車場といったような相対的に負の外部性が高いと考えら れる非建築的土地利用の増加や、工業跡地の一部に住宅が侵入してくるといったような建 築物用途のモザイク化の進行のように、今後の土地利用を考えるにあたっては建築的・非 建築的を問わず様々な開発に対してコントロールを適切な内容・強度で運用していくこと が一層求められていく。実際朝霞市でも市街化調整区域内での資材置き場の増加が一部で 問題化しつつあり、また工業地域内の居住者からも住環境についての苦情などが出ている。 いずれも市街化区域及び市街化調整区域の線引きによる建築規制や、用途地域規制による 建築物用途の定めには違反していないため現行法上は問題無く建築確認が通るのだが、現 実問題としてこのような比較的網の目の粗い現行の規制のみでは負の外部性が顕在化しつ つあるのである。こうした中で地区計画の枠組みにおけるまちづくりの調整は今後更に重 要性を増していくが、例えば壁面後退規制にしても地域によってその規制内容は差別化さ れるべきであるし、またその効果についても適切に事前・事後評価する必要がある。 「結果を踏まえた考察」の節においても尐し言及したが、壁面後退規制が負の外部性を コントロールする手段である以上、理論的には外部性を内部化し最適な建築物の供給量を 実現するための最適な規制強度水準が地域毎に存在することになる。換言すれば、規制強 度を高くするほど負の外部性は低減させることができるが、その一方で本研究で触れたよ うに規制によって建築物の狭小化・老朽化が発生し建築行為によって得られる便益も減尐 していく(=建築コストが上昇していく)ため、規制強度はその途中のある点で最適にな り、さらにその点は地域の実情によって変わってくることが想定されるということである。 その最適な規制強度を明らかにするためには、地域によって他の条件を揃えた上で複数の 壁面後退規制(例えば後退無し、1m後退、1.5m後退、3m後退etc.)を課すような社 会実験的規制を一定期間実施し、その結果を評価するといったような手法を想定すること ができる。このような分析の実施は大規模かつ長期間に渡ることが予想されるため容易で はないものの、都市計画に関わる適切な規制の在り方を明らかにする上で重要であり、今 後の課題として挙げておきたい。 また、地区計画区域内において壁面後退規制が掛かっている場合、建築物の最高高さや 垣・柵の構造に関する制限、敷地面積及び建築面積、緑化率など他にも複数の規制の影響 も同時に受けることになるケースが多い。高野ら(2008)の研究でも触れられているように多 様な規制を組み合わせることで地区計画は実効性を持つと考えられるが、さらに言えばそ うした異なる種類の規制が重層的に掛かる場合にどういった市街地形成に帰結し得るのか、 単一の規制の影響のみを取り出して論じるのではなく、より俯瞰的・概括的に規制を分析 する新たな手法の開発が今後求められると言えるだろう。

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第5章 おわりに

今回の研究では、供給される建築物に対して壁面後退規制が狭小化や老朽化といった影 響を与え、同時に建築行為の施工者が対策として建て増しをする可能性を実証的手法を用 いて示すことができた。朝霞市の事例を対象とした今回の分析では有意とは言い難い値に なったが、別の調査対象地では当該結果がより強く有意に出ることも考えられる。また、 規制そのものによって生じるコストや効率性の観点から規制の費用面を踏まえた上で改め て規制強度を見直す必要性も指摘した。 朝令暮改の謗りを受けないためにも事前の綿密な政策効果予測・評価は当然不可欠であ るが、尐子高齢化人口減尐社会という大きな転換期にある今後の都市計画はこれまで以上 に長期的視野に立って変化を織り込んだものにしていかなければならない。国土交通省の 都市計画運用指針においても『土地利用の規制・誘導を行って、目指すべき都市像を実現 するためには、相当程度長期間を要することから、都市計画には一定の継続性、安定性も 要請される』としながらも『必要性の検証を行うことが望ましく、都市計画決定当時の計 画決定の必要性を判断した状況が大きく変化した場合等においては、変更の理由を明確に した上で適時適切に見直しを行うことが望ましい』と明記されているように、長期的視野 に立ってその都度の状況に合わせて計画する必要がある都市計画分野だからこそ、既存の 規制を見直す柔軟性が極めて重要になってくると言えるのではないだろうか。具体的には、 規制に対する住民の反応も織り込んだ上で政策を作る戦略的ゾーニングの在り方として地 区計画の枠組みを適切に活用するため、地区整備計画に含まれる壁面後退をはじめとした 各種規制の費用面をまず自治体が認識していかねばならないのである。 壁面後退規制の本来的性質として、建築物を建築する際にセットバックしなければなら ず、さらに建築後も歩行の妨げになるような構造物を設置してはいけないなどその空間の 活用には一定の制限が掛かるといった土地所有者にとってのデメリットが大きい。一方で 規制導入後に市街地更新が進み全体としての街並みが良好になるまで自分が受けるメリッ トが尐ないため、建築のタイミングや規制区域内外で不公平感が生まれかねない制度的問 題点がある。こうした不公平感を実証的・定量的に評価するのは容易ではないが、これも 本研究で言及したような壁面後退規制の費用面の一つと考えることができる。したがって 規制を掛けるのであれば、こうした費用を低減する対策も併せて検討する必要がある。例 えば壁面を後退させた場合に容積率の緩和などの配慮が必要に応じて受けられるなど、壁 面後退規制の費用面を補完できるシステムの構築が求められるだろう。 今後は本研究で取り上げた壁面後退に限らずまちづくりに関わる他の規制についても、 その政策目的としての便益面だけでなく費用面も勘案した上で緻密な比較考量を行い、必 要に応じて本当に採られるべき手段としての規制を取捨選択していくことが市場の効率化 の観点からも強く望まれる。

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参考文献

《 論文 》 1 )大沼邦雄・渡邊雄三・松岡恭子(2009)、『東京のアーケード商店街における都市環境と側 面建築物の研究:東京都内37ヶ所のアーケードを事例として』、(社)日本建築学会大会 学術講演梗概集p.1061-1062 2 )岡本浩一・野口孝博・眞嶋二郎(2002)、『積雪地の緑豊かな住環境形成への計画的視点: 札幌市の風致地区内住宅地にみる壁面後退空間の利用実態と居住者意識』、(社)日本建築 学会計画系論文集(552)p.101-107 3 )上山肇(2004)、『地区計画の策定に関する一考察:東京都江戸川区瑞江駅西部地区地区計 画の策定』、(社)日本建築学会関東支部研究報告集 p.213-216 4 )栗本美和・材野博司(1994)、『街路空間と壁面後退空地の関係についての基礎的研究:街 路空間における壁面後退空地の寄与性』、(社)日本建築学会近畿支部研究報告集 p.861-864 5 )栗本美和・材野博司(1995)、『京都市の街路空間における壁面後退空地の都市空間への寄 与性についての研究』、(社)日本建築学会近畿支部研究報告集 p.845-848 6 )高津良太・小松尚(2001)、『建築協定地区における住宅外構の使われ方及び住まい手の意 識』、(社)日本建築学会大会学術講演梗概集 p.437-438 7 )高野哲矢・野澤康(2008)、『地区計画によるデザインコントロールの可能性に関する研究』、 (社)日本建築学会大会学術講演梗概集 p.149-150 8 )津田あゆみ(2010)、『地区計画における地区施設道路等の整備効果に関する分析』、政策 研究大学院大学まちづくりプログラム論文集 9 )出口敦・山田学・渡辺定夫(1990)、『高密市街地における壁面後退規制の有効性に関する 研究:相隣環境の形成から見た形態規制の評価』、(社)日本建築学会大会学術講演梗概集 p.257-258 10 )東美緒・松本直司・舘ゆみ子(2010)、『壁面後退空間の物的形状と誘因性:街路におけ る壁面後退空間の誘因性に関する研究』、(社)日本建築学会大会学術講演梗概集 p.831-832 《 書籍 》 11 )グレゴリーマンキュー(2005)、『マンキュー経済学第2版Ⅰミクロ編』、東洋経済新報社 12 )国土交通省大臣官房総務課(2010)、『国土交通六法(社会資本整備編)』、東京法令出版 13 )スティーブンランズバーグ(1998)、『フェアプレイの経済学』、ダイヤモンド社 14 )スティーブンランズバーグ(2004)、『ランチタイムの経済学』、日本経済新聞社 15 )曽和俊文・山田洋・亘理格(2011)、『現代行政法入門(第2版)』、有斐閣 16 )地方自治法令研究会(2009)、『自治六法』、ぎょうせい 17 )福井秀夫(2007)、『ケースからはじめよう法と経済学』、日本評論社

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- 28 - 18 ) (社)民事法情報センター(2010)、『BLUE MAP(住居表示地番対照住宅地図)朝霞市 2010.10』、ゼンリン 19 )山口昭男(2010)、『セレクト六法』、岩波書店 20 )山本拓(1995)、『計量経済学』、新世社 21 )ロジャーミラー・ダニエルベンジャミン・ダグラスノース(2010)、『経済学で現代社会 を読む』、日本経済新聞出版社 《 ホームページ etc. 》 22 )朝霞市ホームページ、http://www.city.asaka.saitama.jp/index.shtml 23 )国土交通省・建築動態統計調査・建築着工統計調査、 http://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/chojou/kentyasetumei.pdf 24 )国土交通省国土政策局国土情報課・国土数値情報ダウンロードサービス、 http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ 25 )国土交通省・都市計画運用指針、http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/unyou_shishin/ 26 )国土交通省・土地総合情報システム、http://www.land.mlit.go.jp/webland/ 27 )SUUMOホームページ、http://suumo.jp/ 28 )判例検索システム、http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?hanreiSrchKbn=01

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謝辞

本論文の作成にあたり、主査を担当して下さった黒川剛教授、副査を担当して下さった 福井秀夫教授及び西脇雅人准教授からは度重なる丁寧なご指導を頂きました。深く御礼申 し上げます。また、ゼミにおける質疑や事前相談に応じて下さり貴重なご意見を下さった 安藤至大准教授、北野泰樹准教授、中川雅之教授、鶴田大輔准教授ら諸先生方にもこの場 をお借りして御礼申し上げます。そして本研究及び分析の実施に際して不可欠な資料提供 に快く協力して下さった朝霞市都市建設部都市計画課及び建築課にも深く感謝致します。 加えて密度の高い一年間を共有したまちづくりプログラムの同期生の皆様、貴重な研究の 機会を下さった派遣元にも併せて感謝申し上げます。 なお、本論文はあくまでも筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者の所属機関の 見解を示すものではないこと、そして本論文における見解及び内容に関する誤謬は全て筆 者に帰するものであることを申し添えます。

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