国立防災科学技術センター研究速報 第74号 1987年7月
550.34 (521,2/6)
関東・東海地域における「地震前兆指標」の 地域性と時間変化
堀 貞喜*・大久保 正*
国立防災科学技術センター
Regionality and Temporal Variation of the Earthquake Precur−
sory Indicator in the Kanto−Tokai District,Centra1Japan
By
Sadaki Hori and Tadashi Ohkubo
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Abstract
Regiona1ity and tempora1variation of theθαr肋卿α加ρrθc〃80rツ加出cω一
〇rs such as b−va1ue,1〃(difference between duration and amp1itude mag−
nitudes)and Vρ/Vs are investigated for eight high−seismicity regions in the Kanto−Tokai district,centra1Japan.Each region is defined in the three−
dimensiona1mamer by an assemb1y of many cubic vo1umes of5×5×5蝸。
The averaged va1ues of the three earthquake precursory indicators are ca1cu−
1ated from the NRCDP s data base for the period from January1981to Sep−
tember1986.We find remarkab1e regiona1ity in6−va1ues,which are significan−
t1y different from one another in some regions in the Kanto district.On the contrary,regiona1ity of∠〃and γρ/V8is weak re1ative to their variations in indMdua1regions.Tempora1variation of the three parameters are a1so investigated in conjunction with an earthquake o㏄urrence。わ一va1ues in some regions1arge1y changed with1ong periods(severa1months to years)、一 , in contrast,is very stab1e in most of the regions.No significant variation is detected for Vρ/ys because it strong1y f1uctuates,It is1ike1y that anoma−
1ous changes of b−va1ue and 」1レτbefore theルτ6.1event on October 4.1985 which occurred near the border between Chiba and1baraki prefectures are precursory ones。
*第2研究部地震前兆解析研究室
一1一
国立防災科学技術センター研究速報 第74号 1987年7月
1. はじめに
b値,地震波速度,あるいは地震波のコーダ減衰の変化等は従来から地震前兆を示すパラ メタ(以下r地震前兆指標」と称す)として指摘されている(Suyehiro,1966;Nur,1972;
Smith,1986;Sato,1986.1987) しかしこれまでの研究のほとんどは,特定の地震が発生 した後,震源域周辺について注意深く解析されたもので,定常監視を前提とするような,地 震前兆指標の地域性や変動のパターンなどについての系統的な研究結果の報告はあまり多く ない。その一方で,地震予知に対する社会的要請は強く,国立防災科学技術センター(以下
「防災センター」と略す)では,1986年から計算機システムが一新され,「地震前兆解析シ ステム」 (APEシステム)の開発が進行中である(Matsumura et a1.,1986)。APEシス テムの中でも,データの収録に始まり,震源決定を含む処理から,地震前兆の検出および地 震発生の危険度の評価に至るまで,すべて計算機が自動で行うというr自動地震前兆解析」
の部分は,世界でも例を見ない試みとして,重要な意味を持っている。今回の研究では,
r自動地震前兆解析」の予察段階として,地震活動に関係したいくっかの地震前兆指標につ いて,その地域性と時問変化を可能な限り主観を排した計算方法によって調べた。
2.資料と解析方法
防災センターでは1979年7月以来微小地震の観測を続けており,震源の決定された地震の 総数は約10万個に及んでいる。この問,観測点数も徐々に増大し,1986年9月現在,他機関 からの提供点も含めて69点がテレメータされている。これらの観測点は,関東・東海地域に おける,東西約400㎞,南北約300㎞の領域をほぼおおっている。本研究では,ユ981年ユ月 から1986年9月までのデータを用いて,地震前兆指標のうち,b値,振動継続時間マグニチ ュードと振幅マグニチュードの差(仏一p一狐〃p)及びP波と8波の速度比(吻/γs)の3 つについて解析した。解析の対象を198ユ年以降にしたのは,1980年6月に伊豆半島東方沖で 発生した〃6.7の地震後の群発地震活動が,当時の防災センターのデータ処理能力を上回る ほど活発であったため,しばらくの問,処理に際して特定の観測点における振幅に下限を設 けていたので,この間,地震の検知能力がかなり低下していたと考えられるからである。以 下にこれら地震前兆指標の言十算手順について述べる、
2.1 調査領域の設定
ここで求めようとしている地震前兆指標は,震源および読み取りのデータを用いて計算さ れるものであるため,特に,時問変化を調べるためには,地震活動度が高く,持続的に地震 が発生している地域が調査対象として好都合である。またこうした地震の「巣」は平面的な 形状をしていないため,3次元的な領域の設定が必要となる.そこでまず,前述した関東・
東海地域の400×300k而の領域を深さ方向にも100㎞とって直方体とし,その内部を一辺5㎞
一2一
関東・東海地域における「地震前兆指標」の地域性と時間変化一堀・大久保
の立方体に分割した。そして1981年1月から1986年9月までに発生した地震のうち,精度良 く震源が決定されているもの全体についてどの領域で起きたのかを調べ,各立方体ごとに発 生地震数を求めた。次に1立方体あたりの地震数が10個以上となった領域をほぼ機械的に連 結することにより,地震の巣を3次元的に識別した。その後各地震の巣について,地震活動 度の高さと持続性,さらに観測点の配置を考慮して,最終的に以下の8つの調査領域を設定
した。
領域1:長野県西部 領域5:千葉県北・中部 領域2:浜名湖から長野県恵那にかけて 領域6:霞ケ浦南方周辺 領域3:伊豆半島東方沖とその周辺 領域7:茨城県南部
領域4:山梨県東部 領域8:茨城県南西部(鬼怒川西側)
図1に各領域の外縁を真上から見た図を,図2に領域5〜8の外縁を深さ方向に投影した 図を示す。これらの領域は3次元的には重複していないコ
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図1 解析対象とした8領域の位置。
Fig.1 Location of8regions investigated in this study.
2.2 地困前兆指標の地域性の計算方法
今回対象とした地震前兆指標の中でb値は,地震の検知能力,即ちもれなく震源決定のな されている地震のマグニチュードの決定をしておかないと正しく算出できない一既に防災セ ンターの微小地震観測網の検知能力については,松村(1984)やPapanastassiou and
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図2 領域5〜8の南北断面図.
Fig.2Vertica1section of Regions5to8a1ong the NS direction。
Matsumura(工987)が詳しく議論している.また,年々観測点が増加していったので,そ の検知能力の向上にっいても大久保(1984)が報告している.しかし,今回の研究では特定 の3次元的形状をした地震の巣を対象としているため,その領域内で発生する地震の検知能 力を新たに評価してみた.今回は,最も単純な方法,即ちマグニチュードと積算個数の関係 を表わすグラフを領域ごとに作成し,直線関係からはずれる下限のマグニチュードを調べた 図3にそのグラフを示す.設定したマグニチュードの下限,即ちもれなく検出されていると 考えられる地震の最小規模は矢印で表わしてある.また,図には示してないが,各領域とも 半年ごとに同様のグラフを作って検知能力の変化を調べてみたが,若干の向上が認められる ものの,特に目立った変化は認められなかった.このようにして得られた地震の検出限界マ グニチュードは,1.9〜2.4となったが,当然のことながら,領域3のように,浅い領域で 周囲の観測点分布が密であるほど小さくなっている.また,防災センターの観測網は微小地 震を対象としているため,〃>5の地震にっいては,そのマグニチュードが正しく決定され なくなる傾向がある.そこで〃=5を上限として,モーメント法に基づくUtsu(1966)の 方法によってb値とその標準偏差を求めた.その言十算式は次の通りである.
一4一
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関東・東海地域におけるr地震前兆指標」の地域性と時問変化一堀・大久保
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−国立防災科学技術センター研究速報 第74号 1987年7月
b=O,4343(m−1)/Σ仁1.1〃ド㎜〃閉十〃1 σろ一〇.4343/(万・Σ仁1,1払/㎜一〃閉)
ただし,仏,〃1はそれぞれマグニチュードの下限と上限で㎜,1はそれぞれマグニチュード が〃吻,及び切以上の地震数である.ここでは全ての領域で〃1=5とした.
次に仏一p一μWの算出方法にっいて述べる.現在防災センターの定常処理では,振幅マ グニチュード〃〃pを,渡辺(1971)による式,
〃!〃P=1,181ogλ十2,041og7−0.81
を用いて,各観測点毎に求め,それを単純平均することにより決定している(鵜川他,1984)
ただし,λ,rはそれぞれ,速度振幅(mS−1),震源距離(m)である.一方持続時間マグニ チュード〃卜pは,振動継続時間チF−pから,
ハ1F_P=01+021ogチF_P
として,各観測点ごとに求めて,やはり単純平均することによって決定している.ただし,
C1,C2は,〃F一。が〃〃とほぼ等しくなるように,各観測点ごとにあらかじめ設定した係 数である.このようにして決定された〃F−pと〃〃の差(」〃=〃F−p一〃〃)を,先に 求めた下限の規模以上の地震に対して,前兆指標として求めた.しかし,振幅は,本来,観 測点の方位によって大きく変わり得るものであるから,平均値を算出するのに用いられた観 測点数によって,地震ごとの〃〃の持っている誤差に大きな違いが生ずる可能性がある.
そこで」〃の算出には少なくとも5点以上の観測点で〃〃pが決定された地震のみを用いた.
こうして得られた∠〃を1981年1月から1986年9月までに各領域で発生した地震についてそ れぞれ算出し,その平均値と標準偏差を求めた、
最後にγρ/y8計算方法について述べる.吻/γ8の算出方法には,1点法,2点法,多点 法が知られており,それぞれ一長一短があるが,ここでは和達ダイアグラムの傾斜を求める 多点法を用いた.多点法を用いる場合,観測点のとり方によっては,どこの異常状態が反映 されるのかわからなくなってしまう.そこで今回は,まず各領域とも,1981年1月の段階で 既に設置されてあった25観測点の中から,最も近い3つをr必須観測点」とし,下限の規模 以上の地震の中でもこの必須観測点でP,8ともに読み取りのなされているものだけを対象 とすることにした.それ以降に設置された観測点については,なるべく対象領域を囲むよう な観測点を選び出して,これを「使用観測点」とした.そしてこれらの使用観測点で1〕,8の 読み取りがなされている時は,その読み取り値も必須観測点での読み取り値と合わせて和達 ダイアグラムの傾きを求めるのに用いた.この必須観測点と使用観測点は領域別に表1に示 してある.和達ダイアグラムは,P時刻に対して8−P時問をプロットしたもので,両変量 とも誤差を含むため,そのグラフに直線をフィットする場合,通常の最小二乗法よりも,主 成分分析法が適していると考えられる(大内・奥田,ユ986).しかし,ここでは簡単のため
8−P時問にのみ誤差があるとして,重みつきの最小二乗法を用いた.重みは鵜川他(1984)
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関東・東海地域におけるr地震前兆指標」の地域性と時間変化一堀・大久保
表1
Tab1e1
yρ/Vsを計算するために用いた観測点、
Group A:必須観測点.Group B:使用観測点.
List of observation stations used for the ca1cu1ation of yρ/Vs.Group A:Key stations indispensab1e for the ca1cu1ation白Group B:Other stations used for the ca1cu1ation.
Region No. Group A Group B
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JI Z NRY NSI
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ICH SHM YKI MOT SHM IWT MOT IWT OHR
GER KGN ACH
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CDP FCH HRM KTU MIN YSK YFT CDP MOR NMT YST HAS
MOR CDP OHR YST CHS MOR SHM CDP YMI YST
にならって読み取り時刻のランク(A〜D,*)に応じて誤差を推定して決定した.表2に,
Pおよび8時刻のランクと8−P時刻の重みの関係を示す.こうして1981年1月から1986年 9月までに発生した地震について,各領域ごとに得られた吻/y8の平均と標準偏差を求め
た.
2.3 地震前兆指標の時間変化の計算方法
今回求めた地震前兆指標のうち,5値は,1つの地震だけでは計算できない.そこで1つ 地震が発生すると,その地震を含めて過去100個の地震のマグニチュードを使い,2.2で述 べた方法でb値とその標準偏差を計算した.また,∠〃および吻/γsは,1つの地震に対
しても計算できる量であるが,特に4〃は変動が激しいため,10個の地震における平均値と 標準偏差を用いて,最新の地震の発生した時点における値とした.またγp/γ8も領域5,
表2 P時間とS時問の読み取り精度のランクと最小二乗法に用いた S−P時間の重み.
Table2Weights of S−P time used for1east squares ca1cu1ation.
Rank of,8time
Rank of P time A B C D
A B C D
1,00 0,56 0,07 0,00
0,56 0,07 0,00 0,25 0,05 0,00 0,05 0,02 0,00 0,00 0,00 0.00
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7および8では,1つの地震ごとに,かなり値がばらつくため,やはり,過去10個の地震に おける平均値と標準偏差をとって平滑化を行った.
3.結果と考察
3.1 地震前兆指標の地域性
以上の様にして得られた各領域のb値,∠〃,そして咋ハらの,1981年1月から1986年 9月までの平均値と標準偏差を図4に示す.まず,b値は全体的に見ると1前後の値になっ ているが,個々に見た場合,かなりの地域性が認められる.特に,領域6の高い値と領域5 および8の低い値が目立つ.また,松村(1984)は,領域7と領域8を含むような,茨城県 南西部の比較的広い直方体領域についてのb値を調べ,0.92という値を得ているが,今回の 結果では,やや浅い領域8の方が約0.8,深い方が約0.9となって有意に異なる値になった.
一方,∠〃は領域3を除いて,全て負の値となった。これは,持続時問マグニチュードの方 が振幅マグニチュードに比べて,系統的に小さく求まっていることを示しており,持続時間 マグニチュードの計算式における係数01,02を再検討する必要もある.地域性も若干認め られるが,それぞれの持つ誤差は,領域2を除いてかなり大きい.咋/篶は,全体的にはほ ぼ1,75前後になっているが,これも領域1を除いてばらっきがかなり大きく,特に有意な地 域性というものは認められない.∠〃や咋/篶にあまり地域性が認められないのは,算出に 用いた観測点の分布が,対象領域の空間的な広がりに比べて大きすぎたためと考えられる.
3.2 地胆前兆指標の時間変化
次に,1981年1月から1986年9月までの期問における,地震前兆指標の時間変化を領域ご とに図5〜12に示す.各図とも,(a)〜lc)はそれぞれわ値,」〃及び咋/篶のグラフで,細線 で示したのは標準偏差である.また,地震発生との関係を見るために,(d〕に各領域で発生し たマグニチュードが3以上の地震について,発震時刻とマグニチュードが図示してある.以 下に,地震前兆指標と地震発生の関連にっいて,各領域ごとに述べる.
① 領域1(長野県西部) (図5)
ここでは,1984年9月に,M6.8の長野県西部地震が発生している.井元(1987)は,ベ イズ型統計モデルを用いて東海地域におけるb値の時空間変化を調べているが,この領域で M6.8の地震前に5値が低下したとしている.b値は,1983年3月頃から,それまで約1.2 であったのが,1.0近くまで低下し,1984年になると,再び大きくなっている、しかしその 変動量は,誤差範囲内であり,直ちにこれを長野県西部地震の前兆現象であるとすることは できない.Sato(1987)は,下呂観測点における地震記象を調べ,長野県西部地震に先立 って,コーダ波の継続時間が長くなったとしている.同様のことが,多くの観測点でも観測
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国立防災科学技術センター研究速報 第74号 1987年7月
されたとすると,今回求めた∠〃も,地震に先行して増大しているはずである.しかし∠〃
は,1981年から1983年の始めにかけて,ほぼ単調に減少しているが,1983年の中頃から 1984年の前半にかけては,むしろ非常に安定している.ただ,そのばらつき量は,1983年か ら1984年前半にかけて,他の期問と比べるとかなり小さくなっている. /篶には,特に目 立った変化は認められない.
② 領域2(浜名湖から長野県の恵那にかけて) (図6)
この領域では,1983年11月にM4.9の地震が発生している.6値には,かなり長周期で しかも大きな変動が認められる.とくに,1982年後半には,2に近い値をとっている.1983 年になると,値は,低下しているが,7月になってから再び上昇し,11月の地震の後は,再 び低下している.」〃の方は,地震発生とはほぼ無関係に単調減少しているが,そのばらつ き量は,1年半の周期で増減を繰り返す傾向が認められる.咋/篶にも前兆的変動のような ものは全くない.
③領域3(伊豆半島東方沖とその周辺)(図7)
この領域は,非常に地震活動度の高い場所で,解析期問中には,マグニチュードが5を超 えるような地震こそ起きていないが,1983年1月,1984年9月,そして,1985年3月と1O 月に比較的規模の大きい群発地震活動が発生している.しかし,今回求めた地震前兆指標に は,注目すべき変動が認められない.
④ 領域4(山梨県東部) (図8)
この領域では,1983年8月に,〃6.0の山梨県東部地震が発生している.この地震に先立 って,防災センターの地殼活動観測網では,傾斜言己録(佐藤他,1984),コーダ継続時問
(Sato,1986)やラドン濃度(吉田,1984)に異常変動が観測された.6値は,1982年11 月頃から地震発生時にかけて,単調に減少しているが,同様な変化は,1984年2月から7月 にかけても認められ,この場合は大きな地震の発生にはつながっていない.また,1986年3 月頃からも,わ値は低下し続けている.他の2つの地震前兆指標は,解析期間中はかなり安 定している.
⑤領域5(千葉県北・中部)(図9)
この領域は,地震活動度がかなり高く, ≧4の地震もかなりの頻度で発生している.5 値は,1981年後半から1982年中頃まで,かなり急激に低下し,その後ほぼ1年間,0.7程 度の低い値を維持していたが,1983年7月頃から翌年の初めにかけて,約1.0まで上昇した.
一方1〃にはほとんど変動がない.また,咋/篶は,前述したように,この領域では,ユO個 ずつ移動平均をとって平滑化しているが,それでも1981年の前半と,1985年中頃にかなり大 きな値になった時期がある.しかし,この領域には中規模の地震が頻発しているため,こう
した地震前兆指標の変動を特定と地震との関係を識別するのは困難である.
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関東・東海地域におけるr地震前兆指標」の地域性と時間変化一堀・大久保
⑥ 領域6(霞ケ浦南方周辺) (図10)
この領域には,特に大きな地震は起きておらず,〃4級のものは,1982年10月と1985年 7月に発生しているだけである.しかし,b値は1984年の終わり頃から,やや低下した後,
ユ985年7月の地震(〃4.2)の直前まで,約8ヵ月間増大し続けている.それまで非常に安 定していたことから,この変化は,地震の発生に関係した先行現象であるとも考えられる.
一方,」〃は比較的安定しており,また,咋/篶は平滑化していないため,そのばらつきが
目立つ.
⑦ 領域7(茨城県南部) (図11)
この領域では,1985年10月に,東京で震度5の揺れを感じた〃6.1の地震が千葉・茨城県 境付近で発生している(堀,1986).この地震に先行して防災センターの地殼活動観測網で は,ラドン濃度に異常変動が認められた(吉田,1986).今回解析した地震前兆指標の内,
6値と∠〃にも,前兆的変動と考えられるものが認められる.まず6値は,1982年の終わり からユ984年の中頃までO.9前後で非常に安定していたが,1984年の9月から12月まで,約
1.2という高い値となった。その後,1985年5月にかけて,値はもとにもどったが再び上昇 し,10月の地震発生に至った。また」〃も,1985年3月頃までほとんど変動がなかったもの が,やや値が大きくなった後,地震が発生し,その後もとの水準にもどっている。これは,
地震発生の半年程前から,コーダ波の継続時間が平均的に長くなったことを意味している。
一方,咋/篶は,1.75付近で,かなり安定している.
⑧ 領域8(茨城県南西部鬼怒川西側) (図12)
この領域も,非常に地震活動度が高く,中規模の地震が頻発している.しかし,今回調べ た3つの地震前兆指標には,特定の地震に関係するような変動は認められない.ただし,b 値は,1986年4月頃から,過去に例のない上昇を続けており,今後の地震発生の可能性も含 めて,さらに監視が必要である.
4. ま と め
領域を3次元的に設定し,各領域についてわ値,∠〃,咋/篶を調べた結果,以下の事実 が判明した.
① それぞれの地震前兆指標に地域性が認められた.なかでもb値は,霞ケ浦南方と千葉県 北・中部のように,接近した場所でもO.4程度の差が認められる.1〃と咋/篶は,領域 ごとの差に比べて,データのばらつきがやや大きい.これは∠〃の場合,使用する観測点 を限定しなかったことと,咋/篶の場合,和達ダイアグラムを作るために用いた観測点の 分布が,対象領域の空問的広がりに比べて大き過ぎたことが,理由として考えられる.
② あ値はほとんどの領域で比較的周期の長い時問変化を呈した.一方」〃や咋/篶には特 筆すべき変動が,認められない場合が多い。
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国立防災科学技術センター研究速報 第74号 1987年7月
③ 1985年10月4臼に千葉・茨城県境付近で発牛した地震(〃6.1)に先行するわ値と」〃
の変動は,前兆現象である可能性が高い.その他にも検出された変動の中には,地震発生 に関係していると考えられるものがある.
④ 領域8(茨城県南西部鬼怒川西側)では,1986年4月以来,6値が顕著に増大し続けて
いる。
今同の研究は,特定の地震に注目した,所謂r後予知」的な解析ではなく,APEシステ ムに組み込む予定の実践的な自動地震前兆解析のための,予察的な研究としての意味も持 っている.今後,その開発にあたって,今回の解析で得られた地震前兆指標の地域性や変 動パターンに対する知見を生かすことができると期待される.
謝 辞
本論文の作成にあたり,防災センター第2研究部の大竹政和主任研究官(地震予知総括)
は,有益な助言を与えて下さった.ここに深く謝意を表します.
参 考 文 献
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