フリーズパターン — 数の繰返し模様の不思議
黒木玄
2013 年 7 月 7 日
∗http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/LaTeX/20120810FriezePattern.pdf
目 次
1 Conway-Coxeterのフリーズパターン (A 型の場合) 2
2 B 型のフリーズパターン 7
2.1 Bn 型フリーズパターンの生成規則 . . . . 8
2.2 A2n−1 型からBn 型への折り畳み . . . . 9
3 D 型と C 型のフリーズパターン 9 3.1 Dn 型フリーズパターン . . . . 10
3.2 Cn 型フリーズパターン. . . . 11
4 E, F, G 型のフリーズパターン 11 4.1 E6,7,8 型フリーズパターン . . . . 12
4.2 F4 型フリーズパターン . . . . 12
4.3 G2 型フリーズパターン. . . . 13
5 整数性と有限反復性の初等的証明のアイデア 13 5.1 An 型(Conway-Coxeter)フリーズパターンの場合 . . . . 14
5.2 Bn 型の場合 . . . . 15
5.3 Cn 型の場合 . . . . 16
5.4 Dn 型の場合 . . . . 17 6 An 型フリーズパターンと多角形の三角形分割の関係 17
∗2013年7月7日: 第3.4版. A(1)1 型のK の定義の書き間違いを訂正した. / 2012年11月16日: 第 3.3版. 湧き出し口と吸い込み口での変換の箙の図による説明を追加した. /2012年11月14日: 第3.2版.
第10.5節でG4 を G2 に訂正した. / 2012年11月12日: 第3.1版. 第10.2節の(∗)から上に3行目の
「頂点j から出る矢線」を「その頂点k から出る矢線」に訂正した. /2012年11月8日: 第3.0版. 一般 の型のフリーズパターンの解説を追加した. /2012年9月5日: 第2.4版. hyperrefを使うようにした. / 2012年8月22日: 第2.3版. 微修正. /2012年8月22日: 第2.2版. 問題9.4におけるF(t)の定義を訂 正した. / 2012年8月22日: 第2.1版. 第8節と第9節 を大幅に訂正した. 第6節の位置を移動した. / 2012年8月20日: 第2.0版. 第9節を追加. / 2012年8月17日: 第1.5版. 第8節に2簡約の説明を追 加. /2012年8月17日: 第1.4版. 第6節の図を修正など. /2012年8月16日: 第1.3版. 「単項式」を
「係数1 の単項式」に修正. /2012年8月12日: 第1.2版. /2012年8月10日: 第1.0版.
7 フリーズパターンのさらなる一般化 19
7.1 初期条件の 1を変数で置き換える一般化 . . . . 19
7.2 有限反復性が成立しない場合への一般化 . . . . 20
8 A(1)1 型のフリーズパターン 21 8.1 初期条件が 1の並びの場合 . . . . 21
8.2 初期条件が変数に一般化された場合 . . . . 22
9 A(2)2 型のフリーズパターン 23 9.1 初期条件が 1の並びの場合 . . . . 24
9.2 初期条件が変数に一般化された場合 . . . . 24
10 一般の型のフリーズパターン 26 10.1 反対称化可能整数行列とそれに対応する箙 . . . . 26
10.2 一般の型のフリーズパターンの定義 . . . . 29
10.3 An 型の場合 . . . . 30
10.4 F4 型の場合 . . . . 32
10.5 箙の型 . . . . 33 11 さらに勉強したい人のための解説文献の紹介 34
1 Conway-Coxeter のフリーズパターン (A 型の場合 )
数学の世界ではとても不思議な面白い法則が成立していることがよくある.
このノートではその実例としてフリーズパターン(frieze pattern)について紹介したい. フリーズパターンは簡単なルールに基いて作られる数が並んでいる様子のことである. フ リーズパターンを生成するためのルールは一通りではない.
フリーズパターン生成のルールをある種のものに限るとフリーズパターンは繰返し模 様になる. その様子が装飾された横壁(図1.1) の様子に似ているのでそれを表わす frieze (フリーズ) という名前が付いているのだろう.
最も簡単なルールで生成されるフリーズパターンはConway-Coxeter (コンウェイ・コ クセター)のフリーズパターンと呼ばれている. Conway-Coxeter のフリーズパターンは 次のようにひし形に並べられた数 a, b, c, dが ad =bc+ 1という規則を満たすという条件 で生成される:
b
a d
c
ad=bc+ 1.
a, b, c から d を d = (bc+ 1)/a によって決めることができる1. (逆に b, c, d から a を a= (bc+ 1)/d によって決めることもできる.)
1A/B はAを B で割る演算を表わしている.
図 1.1: Frieze of Parnassus. Photo by DAVID ILIFF. License: CC-BY-SA 3.0.
http://en.wikipedia.org/wiki/Frieze of Parnassus
このことを使えば, たとえば最初に次のように1 を並べた状況から出発して最上段と最 下段の 1の並びのあいだの空いている部分をすべて埋めることができる:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 1
1 1
1
1 1 1 1 1 1 1 1
左から右に空いている部分を埋めていってみよう. 最初のステップは次の通り:
1 1 1 1 1 1 1 1
1
1 2
1 1
1
1 1 1 1 1 1 1 1
(1×1+ 1)/1=2
左端のa= 1, b = 1, c= 1 から d= (bc+ 1)/a= 2 を計算した. この手続きを同様に繰返 す. 次のステップ:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 3
1 2
1 3
1 1
1 1 1 1 1 1 1 1
(1×2+ 1)/1=3 (2×1+ 1)/1=3 さらに次のステップ:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 3
1 2 5
1 3
1 4
1
1 1 1 1 1 1 1 1
(3×3+ 1)/2=5 (3×1+ 1)/1=4
さらに次のステップ:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 2
1 2 5
1 3 7
1 4
1 5
1 1 1 1 1 1 1 1
(1×5+ 1)/3=2 (5×4+ 1)/3=7 (4×1+ 1)/1=5
同様に計算を続けると次のようになることがわかる:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 2 2 2 1
1 2 5 3 3 1
1 3 7 4 1
1 4 9 1
1 5 2 1
1 1 1 1 1 1 1 1
赤い1 の部分は青い1 の上下をひっくり返した形になっている.
Conway-Coxeter のフリーズパターンのルールは上下を反転しても変わらない.
したがって, 残りの部分は同じパターンの繰り返しになる:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 2 2 2 1 5 2 1
1 2 5 3 3 1 4 9 1
1 3 7 4 1 3 7 4 1
1 4 9 1 2 5 3 3 1
1 5 2 1 3 2 2 2 1
1 1 1 1 1 1 1 1
(1.1)
赤い部分は青い部分の上下を反転した形になっている.
上の例では左から右に計算して行き,繰返しのパターンを2つ書いたところで計算を止 めたが,もしも左右に無限に計算を続ければ無限に数の繰返し模様が得られる.
このようにして得られる数の並びを Conway-Coxeter のフリーズパターンもしくは
Conway-Coxeter フリーズと呼ばれる. (あとで An 型フリーズパターンとも呼ばれる
ことになる.)
このように Conway-Coxeterフリーズは小学生でも作成できる. この話のもとネタに なっている Coxeter と Rigby による共著の解説論文 [CR]の p.19 でも, フリーズパター ンの学校教育での利用が提案されている. フリーズパターンは「こどものあそび」の一種 だとみなせる.
実はこの「こどものあそび」は21世紀になってから発展した最新の数学理論2の特別な 場合になっている. フリーズパターンを紹介しようと考えたのは, 最新の数学理論のどれ かを紹介したいと思ったからである. しかし, 最新の数学理論の解説の多くは内容が難し 過ぎて, 自分自身の手で理論の様子を体験することが不可能になってしまう. それは避け たい. このフリーズパターンであれば誰でも自分の手で計算して遊んでみることができ る. さらに自分の家族や友人にフリーズパターンの作り方を教えて一緒に楽しむこともで きる. 数学も誰かと一緒に遊んだ方が楽しいだろう.
このノートの目標は最新の数学理論に関係しているフリーズパターンを通して数学研究 における以下の側面を読者に体験してもらうことである:
• 数学の世界では特別な法則が成立していること.
• その法則を具体的な計算によって発見できること.
2クラスター代数の理論.
• 計算結果の注意深い観察によって一般的な証明を発見できること. フリーズパターンの世界には実際に様々な法則が成立している.
フリーズパターンの解説に戻ろう.
縦方向の段数や左端の 1の並び方は自由に変えることができる. たとえば段数を2段に減らすと次のように計算はずっと簡単になる:
1 1 1 1 1
1 2 2 1 3 1
1 3 1 2 2 1
1 1 1 1 1
(1.2)
ただし,段数を数えるときには 1 だけが並んでいる最上段と最下段を含めずに数えるもの とする.
3段の例:
1 1 1 1 1 1 1
1 2 3 1 2 3 1
1 5 2 1 5 2 1
1 2 3 1 2 3 1
1 1 1 1 1 1 1
(1.3)
4段の例:
1 1 1 1 1 1 1
1 2 2 2 2 1 5 1
1 3 3 3 1 4 4 1
1 4 4 1 3 3 3 1
1 5 1 2 2 2 2 1
1 1 1 1 1 1 1
(1.4)
以上のような計算を実際に自分の手で実行してみると特別な感覚におそわれる.
まず,d= (bc+ 1)/a タイプの計算のすべてがきれいに割り切れることが不思議である.
なぜかきれいに割り切れる. そして割り切れることはとても気持ちが良い.
次に, 計算の途中では数が大きくなって行くことがあるのだが, どんどん計算して行く と左端にジグザグ並べた 1 の並びと同形の(ただし上下に反転した) 1の並びが現われる ことになる. それによって同じパターンの繰り返しになる。これも不思議である.
これらの性質を Conway-Coxeter フリーズの整数性と有限反復性と呼ぶことにする.
問題 1.1. 他のConway-Coxeter フリーズの例を作成し, その例でも整数性と有限反復性
が成立していることを確認せよ. たとえば, 次のような 1 の並びから出発してConway-
Coxeterフリーズパターンを作成してみよ:
1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 1
1 1 1
1
1 1 1 1 1 1 1 1 1
これは6段の場合である. 段数が小さい場合も段数が大きな場合も色々計算してみよ. ただし,このノートのこの段階では整数性と有限反復性は特別な場合に関して確認でき ただけであり,すべての場合に成立することは証明されていない. 証明のアイデアは次の 問題の中にある.
問題 1.2. フリーズパターンの段数を1段ずつ増やすことを考えたい. そのためのアイデ アを得るために以下について考えよ.
1. 2段のフリーズパターン(1.2)と似たような数の並び方のパターンを3段のフリーズ
パターン (1.3) の中に見付けることはできないか?
2. 4段のフリーズパターン(1.4)と似たような数の並び方のパターンを5段のフリーズ
パターン(1.1) の中に見付けることはできないか? (フリーズパターンを計算用紙に
並べて書き写して比較してみよ.)
3. 他にも Conway-Coxeter フリーズパターンを作成して, 段数が1段異なるフリーズ
パターンと比較してみよ. どのような法則が見付かるか? (ヒント: 左端に並べた 1 のジグザグの上端もしくは下端に 1を一つ追加した場合と比較してみよ.)
Conway-Coxeter のフリーズパターンはA 型のフリーズパターンと呼ばれる. 第2節以
降では B, C, D, E, F, G 型のフリーズパターンについて説明する. 最初にこのノートを読
むときには A 型のフリーズパターンの場合について書いてある部分を先に読むと良いか もしれない. A 型のフリーズパターンの整数性と有限反復性の証明のアイデアの解説が 第5.1節にあり, A 型のフリーズパターンと多角形の三角形分割の関係の説明が第6節に ある.
2 B 型のフリーズパターン
Conway-Coxeter のフリーズパターンは「すべてが割り切れる整数性」と「同じパター
ンを繰り返す有限反復性」を満たしているのであった. これらの性質を持つパターンの生
成方法は Conway-Coxeter のフリーズパターンだけではない.
実は Conway-Coxeter のフリーズパターンはある特別な方法で Bn 型 (n ≧ 2), Cn 型 (n ≧2), Dn 型 (n≧ 3), En 型 (n = 6,7,8), F4 型, G2 型と名付けられたフリーズパター ンに一般化可能である。Conway-Coxeterのフリーズパターンは An 型のフリーズパター ンと呼ばれる. ここで n はフリーズパターンの段数(最上段と最下段の1の並びを除いた 段数を数える)である.
この節では Bn 型のフリーズパターンについて説明しよう.
2.1 B
n型フリーズパターンの生成規則
B4 型のフリーズパターンの生成規則は次の通り:
B4 型ルール
1 1 1 1
a a′ . . .
b b′ . .
. c c′ . .
. d d′ .
aa′ =b+ 1 bb′ =a′c+ 1 cc′ =b′d+ 1 dd′ =c′2+ 1
(2.1)
最下段の 1 の並びはある理由があって省略した. (すぐ後で説明する A 型の場合との関 係を見れば理由が自然にわかる.) Conway-Coxeter フリーズのルールとの違いは最下段の dd′ =c′2+ 1の部分だけである. Conway-Coxeterフリーズにおいてその部分はdd′ =c′+ 1 になる.
一般の Bn 型のフリーズパターン生成規則も同様である. n 段の Conway-Coxeter フ リーズの生成規則の最下段だけを2乗の形に変更すればBn 型のフリーズパターンが得ら れる.
次は B4 型のフリーズパターンの例である:
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 2 4 2 1 3 2 4 2 1
1 2 5 7 7 1 2 5 7 7 1
1 3 17 12 3 1 3 17 12 3 1
1 10 29 5 2 1 10 29 5 2 1
(2.2)
実際にこの数のパターンが上のB4 型のルールを満たしていることを確認せよ. このでき あがりのパターンを見ずに最初からすべてを計算してみると楽しい. 不思議なことにすべ てが割り切れて, 同じパターンが繰り返される. しかもこの計算の場合には最下段に2乗 するというルールが入っているせいで途中の計算でそれなり大きな数が登場することにな る. それにもかかわらず, すべてが割り切れる. そして一時的に大きくなった数が小さく なって行き, 左端と同じ 1 の並び方が再度現われることになる. (この場合には再度現わ れた1 の並びの上下は逆転しない.) これはとても不思議である.
問題 2.1. 他の Bn 型フリーズパターンの例を作成し, そこでも整数性と有限反復性が成 立していることを確認せよ. たとえば, 次のような 1 の並びから出発して B5 型のフリー ズパターンを作成してみよ:
1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 1
1 1
(2.3)
これは5段の場合である. 段数が小さい場合も段数が大きな場合も色々計算してみよ.
問題 2.2. B4 型フリーズパターン (2.2)と(2.3)から出発して作ったB5 型フリーズパター ンを比較してみよ. 前者のパターンを適当に分割したものが後者のパターンにそのまま現 われていることを確認せよ.
2.2 A
2n−1型から B
n型への折り畳み
もしも Conway-Coxeter フリーズパターン(A 型のフリーズパターン)で整数性と有限
反復性が成立していることがすでにわかっているとすれば(このノートでは後の節で説明 する),B 型のフリーズパターンでも整数性と有限反復性が成立することを示せる.
そのことは次の A7 型のフリーズパターン(7段のConway-Coxeterフリーズパターン) と上の B4 型のフリーズパターンの例を比較してみればわかる:
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 2 4 2 1 3 2 4 2 1
1 2 5 7 7 1 2 5 7 7 1
1 3 17 12 3 1 3 17 12 3 1
1 10 29 5 2 1 10 29 5 2 1
1 3 17 12 3 1 3 17 12 3 1
1 2 5 7 7 1 2 5 7 7 1
1 3 2 4 2 1 3 2 4 2 1
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
(2.4)
これは A7 型の(Conway-Coxeter)フリーズパターンである. パターン生成のルールには2 乗が含まれていない. B4 型のフリーズパターン (2.2) がこれの上半分(4段目も含む) と 完全に一致していることが一目瞭然である.
このようなことになった理由は上下が対称な A7 型のフリーズパターンのルールを以下 のように書き下してみればわかる.
上下対称な A7 型ルール
1 1 1 1
a a′ . . .
b b′ . .
. c c′ . .
. d d′ .
. c c′ . .
b b′ . .
a a′ . . .
1 1 1 1
aa′ =b+ 1 bb′ =a′c+ 1 cc′ =b′d+ 1 dd′ =c′2+ 1 cc′ =b′d+ 1 bb′ =a′c+ 1 aa′ =b+ 1
(2.5)
このルールはB4 型のルール (2.1) と本質的に同値である.
このように上下が対称な A2n−1 型の(Conway-Coxeter)フリーズパターンを作成するこ とによって, Bn 型の任意のフリーズパターンを構成できる.
この手続きは A2n−1 型からBn 型への折り畳み (folding) と呼ばれている.
3 D 型と C 型のフリーズパターン
Bn 型フリーズパターンは A2n−1 型の(Conway-Coxeter)フリーズパターンの折り畳み で得られるのであった.
そのような折り畳みで得られないフリーズパターンで整数性と有限反復性を満たしてい るものはあるだろうか. この節ではそのようなフリーズパターンの例として, Dn 型のフ
リーズパターンを紹介する. そして,Dn+1 型のフリーズパターンの折り畳みで Cn 型のフ リーズパターンを構成する.
3.1 D
n型フリーズパターン
D5 型のフリーズパターンの生成規則は次の通りである:
D5 型ルール
1 1 1 1
a a′ . . .
b b′ . .
. c c′ . .
. d d′ .
. e e′ .
aa′ =b+ 1 bb′ =a′c+ 1 cc′ =b′de+ 1 dd′ =c′+ 1 ee′ =c′+ 1
(3.1)
n= 5 以外のDn 型フリーズパターン生成規則も同様である. 最下段付近の3段文の生成 規則を除けば A 型の(Conway-Coxeter)フリーズパターンの生成規則と Dn 型の生成規 則は同じである.
D 型のフリーズパターンの生成規則は一番下の2段の交換で不変である. ゆえにD 型 のフリーズパターンの一番下の2段を交換しても D 型のフリーズパターンは D 型のフ リーズパターンのままである.
以下は D5 型のフリーズパターンの例である:
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 3 4 2 1 3 3 2 4 1
1 2 8 11 7 1 2 8 11 7 1
1 5 29 19 3 1 5 29 19 3 1
1 6 5 4 1 2 3 10 2 2 1
1 2 3 10 2 2 1 6 5 4 1
(3.2)
この数のパターンが D5 型のフリーズパターンのルール (3.1)を満たしていることを自分 で計算して確認せよ.
この (3.2)を見るとD5 型のフリーズパターンは横方向に 5進むと一番下の2段がひっ
くり返ることを除けばもとのパターンに戻ることがわかる. したがってD5 型のフリーズ パターンは本質的に周期 5を持つ.
一般に, n が奇数のとき Dn 型フリーズパターンは横方向に n 進むと一番下の2段が ひっくり返り, そのことを除けばもとのパターンに戻る. そして, n が偶数の場合には, 横 方向に n 進むと一番下の2段はひっくり返らずにもとのパターンに戻る.
問題 3.1. 他の D型のフリーズパターンを作成し,整数性と有限反復性が成立しているこ とを確認せよ.
たとえば D4 型のフリーズパターンは次のようになる:
1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 2 3 4 1 2 3 4 1
1 5 11 3 1 5 11 3 1
1 6 2 2 1 6 2 2 1
1 2 3 4 1 2 3 4 1
(3.3)
問題 3.2. D4 型のフリーズパターン (3.3) を適当に分割したものが, D5 型のフリーズパ
ターン(3.2)の中にそのまま現われていることを確認せよ. 他の場合についても同様の法
則が観察できることを具体的な計算によって確認せよ.
3.2 C
n型フリーズパターン
一番下の2段が互いに等しいようなDn+1 型のフリーズパターンを考えることによって Cn 型のフリーズパターンを導入しよう. この手続きは Dn+1 型から Cn 型への折り畳み (folding) と呼ばれる.
たとえば一番下の2段が等しいような D5 型のフリーズパターンの生成規則は次のよう になる:
一番下の2段が 等しい場合の D5 型ルール
1 1 1 1
a a′ . . .
b b′ . .
. c c′ . .
. d d′ .
. d d′ .
aa′ =b+ 1 bb′ =a′c+ 1 cc′ =b′d2+ 1 dd′ =c′+ 1 dd′ =c′+ 1
(3.4)
一番下の2段が等しいようなD5 型のフリーズパターンでは最下段が重複することになる ので,最下段を省略して書きたくなる. 省略することによって得られたフリーズパターン を C4 型のフリーズパターンと呼ぶ. その生成規則は次の通り:
C4 型ルール
1 1 1 1
a a′ . . .
b b′ . .
. c c′ . .
. d d′ .
aa′ =b+ 1 bb′ =a′c+ 1 cc′ =b′d2+ 1 dd′ =c′+ 1
(3.5)
たとえば次は C4 型フリーズパターンである:
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 1 6 2 1 3 1 6 2 1
1 2 5 11 11 1 2 5 11 11 1
1 3 27 20 5 1 3 27 20 5 1
1 4 7 3 2 1 4 7 3 2 1
(3.6)
問題 3.3. C3 型のフリーズパターンでそれを適当に分割したものが, 上の C4 型のフリー ズパターン (3.6) の中にそのまま現われるものを構成せよ.
4 E, F , G 型のフリーズパターン
前節までに整数性と有限反復性を満たす An, Bn, Cn, Dn 型のフリーズパターンを構 成した. (まだ整数性と有限反復性を証明はしていない. 証明のアイデアを後の節で説明
する.) 整数性と有限反復性を持つフリーズパターンは有限型のフリーズパターンと呼ば れる.
実は An,Bn,Cn, Dn 型以外にも有限型フリーズパターンの生成規則が5種類存在する. それらには E6, E7, E8, F4, G2 型と呼ばれている. それらは例外型のフリーズパターンと 総称される. この節ではそれらについて紹介することにする. G2 型は D4 型の折り畳み (folding)で得られ, F4 型はE6 型の折り畳み(folding)で得られる.
4.1 E
6,7,8型フリーズパターン
E6 型フリーズパターン生成規則は次の通り:
E6 型のルール
1 1 1 1
a a′ . .
b b′ . .
. c d c′ d′ .
. e e′ .
. . f f′
1 1 1 1
aa′ =b+ 1 bb′ =a′c+ 1 cc′ =b′de+ 1 dd′ =c′ + 1 ee′ =c′f+ 1 f f′ =e′+ 1
(4.1)
E6 型のルールは真ん中の c と d の部分を除けば, A 型のルールと同じ形になっており, 上下対称である.
E7 型と E8 型のルールは E6 型のルールを上の方だけ(下の方だけでもよい)に 1 段と 2 段伸ばしたものになる. E7 型とE8 型のルールも (4.1) の c と d の部分を除けばA 型 のルールと同じである.
E6 型のフリーズパターンの例:
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 2 2 2 7 5 3 2 2 1
1 3 3 13 34 14 5 3 1
1 1 4 5 19 4 63 16 95 6 23 4 7 2 1 1
1 5 23 11 26 8 1
1 6 4 3 9 1
1 1 1 1 1 1
右端の1 の並びは左端の 1の並びを上下反転したものになっている. E6 型のルールは上 下反転で不変なので, さらに右側に向けて計算を続行すると, すでに計算した部分を上限 反転したパターンが現われる. このように E6 型でも有限反復性が成立している.
4.2 F
4型フリーズパターン
A2n−1 型のフリーズパターンに上下反転に関する対称性を課すことによって Bn 型のフ リーズパターンが得られたのと同じように, E6 型のフリーズパターンに上下反転に関す る対称性を課すことによって F4 型と呼ばれるフリーズパターンが得られる. その生成規
則は次の通り:
F4 型のルール
1 1 1 1
a a′ . .
b b′ . .
. c d c′ d′ .
aa′ =b+ 1 bb′ =a′c+ 1 cc′ =b′2d+ 1 dd′ =c′+ 1
(4.2)
F4 型のフリーズパターンの例:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 2 2 4 8 3 5 1
1 3 7 31 23 14 4 1
1 1 10 11 54 5 89 18 107 6 11 2 3 2 1 1
これの上3行(1 だけの行を含む)を上下反転させて下に連結すれば上下対称な E6 型フ リーズパターンが得られる. そのことを確認してみよ.
4.3 G
2型フリーズパターン
D4 型フリーズパターンの生成規則を上から1段目と2段目を交換したものは次のよう に書ける:
D4 型ルール
a a′ .
b b′ .
c c′ .
d d′ .
aa′ =bcd+ 1 bb′ =a′ + 1 cc′ =a′+ 1 dd′ =a′+ 1
(4.3)
このルールを下の3段がすべて等しい場合に制限したものがG2 型ルールである:
G2 型ルール . a a′ .
. b b′ .
aa′ =b3+ 1
bb′ =a′+ 1 (4.4) G2 型のフリーズパターンの例:
1 2 14 9 1 2 14 9 1
1 3 5 2 1 3 5 2 1 (4.5)
フリーズパターンの生成規則は左右対称なのでこのパターンを左右反転したものも G2 型 フリーズパターンになる.
5 整数性と有限反復性の初等的証明のアイデア
この節では A, B, C, D 型(古典型)の場合の整数性と有限反復性の初等的な証明のアイ デアを例を使って説明する3.
3F4,G2型はそれぞれE6,D4 型の折り畳み(folding)になっているので,残された例外型 E6,7,8, F4, G2
型の場合を証明をするためには E6,7,8 型の場合を証明すれば十分である. その場合にも満足できる初等的 な証明があるかもしれないが,これを書いている時点で筆者はそのような証明を知らない. もちろんすべて の場合をしらみ潰しに計算すれば証明できるのだが,もっと良い方法はないのだろうか? クラスター代数の 理論に頼ればすべての型で統一的に証明可能である.
X = A, B, C, D とする. そのとき Xn 型のフリーズパターンの整数性と有限反復性を n に関する数学的帰納法で証明することができる. すなわちXn 型のフリーズパターンの 整数性と有限反復性からXn+1 型のフリーズパターンの整数性と有限反復性を導く方法に ついて説明する.
この節で説明する A型の(Conway-Coxeter)フリーズパターンの整数性と有限反復性の 証明法は Coxeterと Rigby の共著論文 [CR] の第2節にある. B, C, D 型の場合も本質的 に同じアイデアで証明できる.
Xn 型のフリーズパターンを切って広げて, できた隙間を適切な方法で埋めると, Xn+1 型のフリーズパターンを構成できるのである.
5.1 A
n型 (Conway-Coxeter) フリーズパターンの場合
まず例として次のような A4 型のConway-Coxeter フリーズパターンを考えよう:
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 2 2 1 4 2 1 3 2 2 1
1 2 5 3 1 3 7 1 2 5 3 1
1 3 7 1 2 5 3 1 3 7 1
1 4 2 1 3 2 2 1 4 2 1
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
これを赤と青の部分に切り離して広げて隙間を作る. その結果は次の通り:
1 1 1 . . 1 1 1 1 1 1 .
1 3 2 . 1 . 4 2 1 3 2 . 1
1 2 5 . 2 1 . 7 1 2 5 . 2 1
1 3 . 3 1 3 . 3 1 3 . 3 1
1 . 7 1 2 5 . 2 1 . 7 1
1 . 4 2 1 3 2 . 1 . 4 2 1
. 1 1 1 1 1 1 . . 1 1 1 1
そして隙間を斜めに赤と青の数字を足した数字で埋める. その結果は次の通り:
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 2 3 1 2 4 2 1 3 2 3 1
1 2 5 5 2 1 7 7 1 2 5 5 2 1
1 3 12 3 1 3 12 3 1 3 12 3 1
1 7 7 1 2 5 5 2 1 7 7 1
1 2 4 2 1 3 2 3 1 2 4 2 1
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
これは A5 型のフリーズパターンである!実際この数の並びは次の条件を満たしている:
b
a d
c
ad=bc+ 1.
本当にこの条件を満たしていることを自分で確認してみよ.
上と同様の手続きで常に An 型のフリーズパターンから An+1 型のフリーズパターンを 作ることができる. そのことは次を見ればわかる: ad=bc+ 1 のとき
b
a b+d
a+c d
c
a(b+d) =ab+bc+ 1 =b(a+c) + 1, (a+c)d=bc+ 1 +cd= (b+d)c+ 1.
つまり隙間を斜めに赤と青の数字を足した数字で埋めるという規則で“ad=bc+ 1” ルー ルを保ったままフリーズパターンを拡張できるのである.
この方法を使えば左端の 1のジグザグの形が任意の An+1 型のフリーズパターンを An 型のフリーズパターンから作れる. さらにAn 型フリーズパターンで整数性と有限反復性 が成立していればそうやって作ったAn+1 型フリーズパターンも整数性と有限反復性を満 たす. このようなアイデアで A 型のフリーズパターンの整数性と有限反復性を証明する ことができる.
問題 5.1. 上の例とは別に An 型フリーズパターンから An+1 型フリーズパターンを構成 する具体的な計算を実行してみよ.
5.2 B
n型の場合
Bn 型のフリーズパターンが A2n−1 型のフリーズパターンの折り畳み(folding)ですべ て構成されることを使えば, A2n−1 型のフリーズパターンの整数性と有限反復性から Bn が導かれることがわかる.
しかし, 以下の方法を使えば Bn 型の整数性と有限反復性を, A2n−1 型の場合に帰着さ せることなく,直接に n に関する帰納法で証明することができる.
例として次のような B2 型フリーズパターンを考えよう: . ..
1 . .. 1 1 . ..
1 . .. 1 1 . .. 1 1 2 . .. 3 . ..
1 2 . .. 3 . .. 1
1 5 ... 2 1 5 ... 2 1
これを赤と青の部分に切り離して広げて隙間を作る. その結果は次の通り:
◦ 1 1 ◦ ◦ 1 1 ◦
1 ◦ 3 ◦ 1 ◦ 3 ◦ 1
1 2 ◦ ◦ 1 2 ◦ ◦ 1
1 5 • 2 1 5 • 2 1
そして ◦ の部分を斜め上と下にある赤と青の数の和で埋める. さらに • の部分をその左 上と右上の ◦ の部分の数の和で埋める. その結果は次の通り:
1 1 1 1 1 1 1 1
1 3 3 2 1 3 3 2 1
1 2 8 5 1 2 8 5 1
1 5 13 2 1 5 13 2 1
これは B3 型のフリーズパターンである. 実際この数の並びは次の条件を満たしている: 1
c c′ b b′ a a′
cc′ =a+ 1 bb′ =c′a′+ 1 aa′ =b2+ 1 たとえば 5·13 = 82+ 1, 13·2= 52 + 1 などが成立している.
上の構成が常にうまく行くことは以下を見ればわかる. . .. b . ..
a ... a′
aa′ =b2+ 1 のとき次が成立している:
b
a+b a′ +b
a a+a′+ 2b a′
(a+b)(a′+b) = b(a+a′+ 2b) + 1 a(a+a′+ 2b) = (a+b)2+ 1 (a+a′+ 2b)a′ = (a′+b)2+ 1 実際に aa′ =b2+ 1 のときこれらの公式が成立することを自分で確認せよ.
問題 5.2. 上で説明した方法を使って,B3 型のフリーズパターンの例からB4 型のフリー ズパターンの例を構成してみよ. さらに B4 型のフリーズパターンの例から B5 型のフ リーズパターンの例を構成してみよ.
5.3 C
n型の場合
Bn 型の場合と同様の方法で,Cn 型のフリーズパターンから Cn+1 のフリーズパターン を構成できる.
問題 5.3. 実際に Cn 型のフリーズパターンの例から Cn+1 型のフリーズパターンの例を 構成してみよ.
最下段付近の隙間を埋めるルールは以下の通り. . .. a . ..
b ... b′
bb′ =a+ 1 のとき次が成立している:
a
a+b2 a+b′2
b b+b′ b′
(a+b2)(a+b′2) =a(b+b′)2+ 1 b(b+b′) = (a+b2) + 1
(b+b′)b′ = (a+b′2) + 1 この事実を自分で確認せよ.
5.4 D
n型の場合
Cn 型の場合と同様の方法で,Dn 型のフリーズパターンから Dn+1 のフリーズパターン を構成できる.
問題 5.4. 実際にDn 型のフリーズパターンの例からDn+1 型のフリーズパターンの例を 構成してみよ.
最下段付近の隙間を埋めるルールは以下の通り. . .. a . ..
b ... b′ c ... c′
bb′ =a+ 1 cc′ =a+ 1
のとき次が成立している: a
a+bc a+b′c′
b c+c′ c′
c b+b′ b′
(a+bc)(a+b′c′) =a(c+c′)(b+b′) + 1 b(c+c′) = (a+bc) + 1
c(b+b′) = (a+bc) + 1 (c+c′)c′ = (a+b′c′) + 1 (b+b′)b′ = (a+b′c′) + 1 この事実を自分で確認せよ.
6 A
n型フリーズパターンと多角形の三角形分割の関係
Coxeter-Rigby [CR] の第2節で紹介されている結果の紹介に戻ることにしよう. 実は
n+ 3 角形の三角形分割からAn 型のフリーズパターンを構成することができる4. 1
2 3 1 1
1 0
0 1
2 1 2
3 1
1 0
1 1 3
5 2
2 1
0 1 4
7 3
1 1
1 0 1
2 1
2 3
4 1 0
1 1
3 5
7 2 1
0 1
図 6.1: 三角形分割された七角形の頂点に数字を割り振った結果
例で説明しよう. まず図6.1を見て欲しい. 図6.1はあるルールに基いて三角形に分割 された七角形の頂点に数字を割り振った結果である. その数字の割り振り方のルールは以
4Dn 型のフリーズパターンの穴の空いた円盤 (punctured disc)の三角形分割を用いた構成については [BM] を参照せよ. ただし, Lemma 5.5が Case (III)の場合にも成立するように,mii の定義を修正する必 要がある.
下の通り. まず七角形の頂点を一つ選び, その頂点には数 0 を割り振る. 次にその頂点と 線分で繋がっている頂点に数1を割り振る. 三角形の3つの頂点のうち2つにすでに数a, b が割り振られているならば残りの頂点に数 a+b を割り振る. このような手続きで 0を 割り振る頂点を一つ決めるごとに残りの頂点に数を割り振ることができる. 図6.1の数字 が実際にこのようにして割り振られたものになっていることを確認せよ.
図6.1の数字を各七角形ごとに0から時計回りに 0以外の数字を斜めに書き下す. ただ し, 一つの七角形に割り振られた数を全て書き下したら, 出発点の0 の位置を時計回りに 一つずらして,同じことを繰り返す. その結果は次のようになる:
1 1 1 1 1 1 1 1
2 2 1 4 2 1 3 2
3 1 3 7 1 2 5 3
1 2 5 3 1 3 7 1
1 3 2 2 1 4 2 1
1 1 1 1 1 1 1 1
(6.1)
左端と右端の数字の並びは図6.1の左上の七角形に割り振られた0以外の数字の列になっ ている. この結果をよく見ると A4 型フリーズパターンになっていることがわかる.
実は一般に以上のような方法で任意に三角形に分割された n+ 3 角形から An 型フリー ズパターンを構成することができる.
どうしてこのような方法で An 型のフリーズパターンを構成できるのだろうか. その理 由を理解するために, 図6.1から三角形を一つ外して三角形分割された六角形を作り, そ の六角形から構成される A3 型のフリーズパターンを書き下してみよう.
1 2
1 1
1 0
0 1
1 2
3 1
1 0
1 3
5 2
1 1
0 1
2 1
2 3
1 0
1 1
3 5
2 1
0 1
図 6.2: 三角形分割された六角形の頂点に数字を割り振った結果
図6.2は図6.1の七角形から右下の細長い三角形を外して作った六角形に数字を割り振っ たものである. 六角形に割り振った数字は図6.1の“同じ位置”にある数字に一致している ことがわかる. これは, 図6.2から構成されるA3 型のフリーズパターンを適当に分割した ものが,そのまま A4 型のフリーズパターン (6.1) の中にも現われることを意味している.
そのことがわかり易いように色を付けて二つのフリーズパターンを書き下してみよう:
1 1 1 1 1 1 1
2 1 3 2 1 3 2
1 2 5 1 2 5 1
1 3 2 1 3 2 1
1 1 1 1 1 1 1
(6.2)
1 1 1 1 1 1 1 1
2 2 1 4 2 1 3 2
3 1 3 7 1 2 5 3
1 2 5 3 1 3 7 1
1 3 2 2 1 4 2 1
1 1 1 1 1 1 1 1
(6.3)
フリーズパターン (6.2)は図6.2から得られたフリーズパターンに色付けしたものであり, フリーズパターン (6.3) は (6.1) に色付けしたものである. これらを比較すれば (6.2) と
(6.3) は第5.1節で説明した An 型のフリーズパターンの整数性と有限反復性の証明のア
イデアにおけるAn 型とAn+1 型のフリーズパターンの関係の特別な場合になっているこ とがわかる.
この観察を実際に証明することによって,三角形分割された n+ 3 角形からAn 型のフ リーズパターンを構成可能なことを証明できる.
問題 6.1. 上で登場したものとは異なる三角形分割された多角形を考え, そこから実際に An 型のフリーズパターンが得られることを確認せよ. 三角形を1枚外した場合との関係 も上の例と同様になっていることを確認せよ.
7 フリーズパターンのさらなる一般化
以上で解説して来た「全部割りきれて整数になる」という整数性と「あるパターンの繰 り返しになる」という有限反復性を持つ ABCDEF G 型のフリーズパターンたちについ て少なくとも二種類の一般化が存在する.
7.1 初期条件の 1 を変数で置き換える一般化
このノートではフリーズパターンは縦方向にジグザグに1が並んでいる状況(初期条件) から出発して残りの部分を生成規則で埋めることによって構成されるということになって いた.
初期条件の 1たちをすべて変数 x1, x2, . . . , xn に置き換えることことによってXn 型の フリーズパターンを一般化することができる. その結果は数が並んだものではなく, 変数 xi たちの有理式が並んだものになる.
クラスター代数の理論によって,そのように一般化された ABCDEF G型のフリーズパ ターンも有限反復性を満たし, さらに整数性の一般化であるローラン性 (Laurent prop-
erty)を満たしていることがわかっている5. ローラン性とは登場するすべての有理式の分
母が係数 1 の単項式になることである.
たとえば初期条件が変数に一般化された A2 型のフリーズパターンを計算すると以下の ようになる:
1 1 1 1 1
x y+1x x+1y y x+y+1xy x
y x+y+1xy x y+1x x+1y y
1 1 1 1 1
実際に「分母がすべて係数が 1 の単項式になる」というローラン性と「同じパターンを 繰り返す」という有限反復性が成立していることがわかる. 初期条件を 1 ではなく変数 x, y にしても有限反復性が成立することも分母がすべて係数 1 の単項式になることも非 自明である. たとえば (x+y+ 1)/(xy) + 1 を (y+ 1)/x で割ると余計な因子が分子と分 母でキャンセルして分母に y だけが残る(実際に計算して確認せよ). さらに分母が係数 1の単項式になるだけではなく,分子に引き算が出て来ないという正値性(positivity)も 成立していることに注意せよ.
これらの性質は ABCDEF G 型の他のフリーズパターンの場合も同様に成立している ことが知られている.
フリーズパターンの初期条件を 1 から変数に一般化したものはクラスター代数の理論 の特別な場合であり, しかもクラスター代数の理論の良い近似になっている.
問題 7.1. フリーズパターンの初期条件を1 から変数に一般化したものを上の A2 型以外 に色々計算してみよ. 特に B2, G2, A3 型の場合を計算してみよ. さらに次の初期条件を 持つ一般化された A4 型のフリーズパターンを計算してみよ:
1 1 1 1 1 · · ·
x y
z w
1 1 1 1 · · ·
それらの具体的な計算において,ローラン性,有限反復性,正値性が成立していることを確 認せよ.
7.2 有限反復性が成立しない場合への一般化
有限反復性を持つ ABCDEF G 型のフリーズパターンは有限型 (of finite type)と呼 ばれている. 有限型ではないようなフリーズパターンを考えることもできる. ここではそ のような一般化の詳細について説明しない. しかし, 第8節と第9節のそれぞれで例とし て A(1)1 型と A(2)2 型のフリーズパターンについて詳しく解説する. それらの型はアフィン
5ローラン現象 (Laurent phenomenon)と言うこともある.
型の最も簡単な場合である. アフィン型の場合には有限反復性は成立しないが, それとは 別の良い性質を持つ.
クラスター代数の理論によって有限反復性が成立しない場合であっても初期条件を変数 に一般化したフリーズパターンがローラン性(分母がすべて係数 1の単項式になるという 性質)を満たしていることがわかっている. そして広いクラスの一般化において正値性(引 き算が登場しない)が成立することもわかっている. この正値性は数学的にかなり深い結 果である.
8 A
(1)1型のフリーズパターン
次のルールを A(1)1 型フリーズパターンのルールと呼ぶ.
. a a′ . .
. . b b′ .
aa′ =b2+ 1 bb′ =a′2+ 1
このルールで生成される数を並べたものを A(1)1 型のフリーズパターンと呼ぶ.
同一の A(1)1 型フリーズパターンを上下両方向に無限に積み重ねると段数が無限大の Conway-Coxeter フリーズパターン(A∞ 型フリーズパターン) ができあがる:
. . . . .
. a a′ . .
. . b b′ .
. a a′ . .
. . b b′ .
. a a′ . .
. . b b′ .
. . . . .
bb′ =a′2+ 1 aa′ =b2+ 1 bb′ =a′2+ 1 aa′ =b2+ 1
この事実をA(1)1 型のフリーズパターンはA∞型フリーズパターンの2簡約(2-reduction) であると言う. 2 簡約も折り畳み(folding)の一種であると考えられる.
8.1 初期条件が 1 の並びの場合
左端が 1 の並びであるような右側に進むA(1)1 型のフリーズ・パターン:
1 2 13 89 610 4181 · · ·
1 5 34 233 1597 10946 · · ·
このように整数性は成立しているが, 有限反復性は成立しそうもない. しかし, この数の 列をじっと眺めると, 数列中の連続する3つの数字において両端の数の和は真ん中の数の 3倍に等しいという良い性質が成立していそうなことがわかる.
すなわち, 数列a0, a1, a2, . . . を
a0 = 1, a1 = 1, an+2 = a2n+1+ 1
an (n= 0,1,2, . . .).
という条件で定める. この数列は a0 = 1, a1 = 1, a2 = 2, a3 = 5, a4 = 13, a5 = 34, . . .と なり,上の A(1)1 型フリーズパターンで得られる数列に一致する.