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冷却水循環システムにおける電気分解を利用したスケール除去

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Academic year: 2021

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(1)

冷却水循環システムにおける電気分解を利用したスケール除去 

古賀 弘毅

*1

  南 守

*1

  磯村 飛太

*2

  石橋 正彦

*2  

Scale Removing Method Using Electrolysis in Cold Water System  

Hiroki Koga, Mamoru Minami, Hyota Isomura and Masahiko Ishibashi 

 

冷却水循環システムのスケール対策として,薬剤等を使用しない電気分解法を利用したスケール除去法を検討し た。電気分解法を利用したスケール除去では,水質により除去効果が異なることが経験的に知られていることから,

本研究では電気分解法によるスケール除去のメカニズムを明らかにするとともに,効果的なスケール除去を行うた めの電解条件の最適化を行うことを目的とした。検討の結果,電気分解法によるスケール除去はカルシウムへの効 果が最も顕著であり,マグネシウム,ケイ素に対して有効であることがわかった。また,スケール析出には共存す る炭酸イオンが大きく影響していることがわかった。循環水中の炭酸イオン濃度を事前に把握しておくことでスケ ール除去に有効な電解条件を設定できることを明らかにした。 

 

1  はじめに 

屋内空調設備などに利用される冷却水循環システム は,循環水中のミネラル成分が熱交換部や配管等に析 出し,熱交換効率の劣化や配管閉塞が問題となる。ま た,析出したスケールが雑菌等の繁殖の温床となるた め,レジオネラ菌などによる事故も発生している。こ うしたことから,平成11年に厚生省より示された新版 レジオネラ症防止指針

1)

をもとにシステムの設計やメ ンテナンスが行われている。この指針の中で,冷却水 循環システムのレジオネラ菌対策としてスケール対策 の必要性が指摘されている。 

従って,循環水中のスケール対策は重要であり,一 般的には薬剤添加による析出防止や定期的な配管洗浄 などが行われている

2)

。しかしながら薬剤を用いる手 法は環境負荷の観点やコストの点から必ずしも満足の いくものではない。薬剤を用いないスケール除去法と しては電気分解法を利用したものがある。この方法は 電気分解における陰極側に水中のスケール成分を析出 させるものであるが,水質によりスケール析出効果が 異なることが経験的に知られており,その原因がはっ きりとしていない。 

本研究では,電気分解法によるスケール析出のメカ ニズムを明らかにするとともに,本法による効率的な スケール析出を行うための電解条件の最適化を行うこ とを目的とする。 

2  研究,実験方法 

2-1  循環水及び電解スケールの組成の分析 

  循環水のスケール対策のためには循環水中のミネラ ル成分を把握する必要がある。そこで実際に使用され ている循環水及び補給水の組成分析を行った。循環水 はもともと補給水と同じ組成であるが,循環水が蒸発 により冷却水循環システム中で濃縮され,補給水と比 べて塩濃度が高くなる。循環水及び補給水のミネラル 成分の分析は ICP 発光分析装置(ICAP88 型 日本ジャ ーレルアッシュ製,以後 ICP-AES と略す。)により行 った。また,電解スケールの分析は蛍光 X 線分析装置

(RIX3001 型 理学電機製,以後 XRF と略す。)及び粉 末 X 線回折装置(理学電機製  RINT2500V 型,以後 XRD と略す。)を用いた。 

2-2  模擬循環水を用いたスケール除去実験 

電気分解における陰極電流密度とスケール析出量の 関係を調べるため,人工的に調製した模擬循環水を用 いて電流密度を制御した電解実験を行った。試験装置 の概要を図1に示す。陰極にはステンレス板(SUS304),

陽極にはチタン板を使用し,電極面積はそれぞれ10mm

×10mmとした。陰極電流密度は0.5〜20Aまで変化させ,

それぞれの全通電量が3A・h/m

2

となるように通電時間 を設定した。陰極電流密度の制御は電気化学測定装置

(東陽テクニカ製  SI 1280B型)を使用した。電解ス ケールの主成分となっているカルシウムとマグネシウ ムに着目し,この2元素を含んだ模擬循環水の調製を 行った。カルシウムは塩化カルシウム二水和物,マグ ネシウムは塩化マグネシウム六水和物を添加しそれぞ 

 

*1  機械電子研究所        

*2  (株)石橋製作所 

(2)

 

図 1 定電流電解試験装置 

Na K Ca Mg

全硬度 永久硬度 一次硬度

Si Fe

27.0 5.7 44.9 25.7 217.7 105.8 111.9 41.4 N.D.

22.9 5.1 39.7 22.1 189.9 107.8 82.1 31.7 N.D.

82.8 10.0 87.9 29.2 339.5 220.4 119.1 44.3 N.D.

7.7 N.D. 26.8 4.3 84.7 48.0 36.7 9.3 N.D.

159.6 22.3 233.8 46.2 774.0 182.0 592.1 40.4 N.D.

22.8 2.4 39.8 6.1 124.5 37.0 87.5 9.1 N.D.

129.2 19.8 157.6 46.8 585.9 304.5 281.4 N.D. N.D.

11.1 2.8 24.9 7.7 93.8 64.4 29.3 0.4 N.D.

55.7 3.6 84.2 27.2 321.8 190.1 131.7 43.6 N.D.

3.8 N.D. 11.9 2.5 39.9 20.8 19.2 6.5 N.D.

210.6 115.2 140.4 53.7 571.3 274.2 297.1 319.0 9.1

10.1 2.3 8.8 3.1 34.9 9.9 25.0 34.4 0.6

A社 循環水 A社 補給水 B社 循環水

E社 補給水

F社 循環水 F社 補給水 B社 補給水

D社 循環水 D社 補給水

E社 循環水 C社 補給水 C社 循環水

表 2 既存 SRS で使用されている冷却循環水及び補給水の組成分析結果(単位:ppm) 

                     

れ元素として200ppm,100ppmとなるよう調製した。多 くの循環水のpHが弱アルカリであったことから,水酸 化ナトリウムによりpH=8.5となるようにした。試験液 は1回の試験につき100ml用いた。なお,実際の循環水 中には大気からの溶け込みに起因する炭酸水素イオン が溶存していると考えられるため,試験液に空気を30 分間吹き込んで試験に用いた。また,炭酸水素イオン 量の違いによるスケール析出量の違いを確認するため,

炭酸水素ナトリウムをナトリウムとして100ppmとなる ように添加したものも併せて試験した。析出スケール 量は陰極に電着したカルシウム及びマグネシウムを希 塩酸100mlで溶解し,ICP-AESにより測定して算出した。 

2-3  循環式電解試験による循環水組成の経時変化    循環水をポンプで循環させながら電気分解を行い,

循環水組成の経時変化を観察した。循環水には直方市 上水をある程度蒸発濃縮したもの220Lを用いた。試験 液の組成を表1に示す。印可電流値は1.25Aとした。送 水速度は実際の冷却水循環システムと同規模の625L/h とした。電解時間は24時間とし,途中,循環水から一

 

部分析用試料を採取した。 

  結果 

電解スケールの組成の分析結果  を行っ た

pH

Na K Ca

125.0 13.1 89.2

Mg Si Fe

39.3 31.2 0.2

試験液

試料名 分析値/ppm

7.5

表 1 循環水組成 

3

3-1循環水及び

各地で使用されている冷却循環水の組成分析

。分析の結果を表 2 に示す。補給水にはナトリウム,

カルシウムなどが多く含まれている場合が多い。補給 水が循環水の元々の源水であり,補給水と循環水を見 比べると循環水ではミネラル成分が大幅に濃縮されて いることがわかる。これは熱交換により水分のみが蒸 発しミネラル分が濃縮するためである。循環水では,

ナトリウム,カルシウム,マグネシウム,ケイ素の濃 度が補給水と比べて大幅に増加している。個別の元素 を見てみると,補給水と比べて循環水中ではカルシウ ムが 3〜5 倍程度の濃縮であるのに対し,ナトリウム,

マグネシウム,ケイ素の濃縮率は 5〜15 倍と大きい。

全ての元素が均等に濃縮しないのは,一部の元素のみ が電気分解によってスケールとして除去されているた めと考えられる。一方,電気分解により得られたスケ ール成分の組成分析を XRF により行った。結果を表 3 に示す。最も多い成分はカルシウムであり,これにマ グネシウム及びケイ素を加えて主成分となっていた。

ナトリウムなどその他の成分についてはほとんど存在

しなかった。ナトリウムは水への溶解度が極めて高い

元素であるため,ほとんどスケール化しないと考えら 

(3)

れる。電析スケールの化学構造を XRD により分析を図

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

0.5 1 1.5 2 2.5 3 4 5 10 20 陰極電流密度/A・m-2

電着量/µg

Ca Mg

図 3 定電流電解によるスケール電着量  2 に示す。主成分として炭酸マグネシウムが検出され,

他に微小な水酸化マグネシウムのピークが検出された。

XRF によるマグネシウムの比率から考えると水酸化マ グネシウムのピーク強度は弱く非晶質の形態で存在し ているものが多いと考えられる。ケイ素についても結 晶性が悪く XRD では検出しにくかったと考えられる。 

CaO MgO SiO2 Fe2O3

強熱減量

A社 51.4 1.3 2.9 < 1 43.0

B社 39.3 13.9 2.3 < 1 42.3

C社 39.3 13.9 1.0 < 1 43.1

D社 27.0 1.3 13.8 9.0 41.2

E社 38.4 13.8 1.9 0.1 41.8

(試験液にNaHCO

3

を含まない) 

 

2 模擬循環水を用いたスケール除去実験   

,スケー ル

3

関係を調べる 表 3 電気分解によりスケールの組成分析結果(単位:%)

図 2 電気分解により得られたスケールの X 線回折結果

0 100 200 300 400 500 600

0 0.5 1 1.5 2 3 6 12

陰極電流密度/A・m-2 電着量/µg

Ca Mg

図 4 定電流電解によるスケール電着量

(試験液にNaHCO

3

を含む) 

3-

3-2-1  定電流電解による析出スケールの分析 -2-2  共存炭酸水素イオン濃度の影響  模擬循環水について電流密度を変化させて

を陰極に析出させる実験を行った。まず,炭酸水素 ナトリウムを含まない模擬循環水を試験し陰極表面に 析出したカルシウム及びマグネシウム量をICP-AESに より分析した結果を図 3 に示す。この結果,陰極電流 密度が 0.5〜1A・m

-2

についてはカルシウム,マグネシ ウムのいずれも電着しなかったが,1.5A・m

-2

以上では マグネシウムのみが大量に電着することが明らかとな った。一方,炭酸水素ナトリウムを含む模擬循環水で は図 4 に示とおり,陰極電流密度が 0.5A・m

-2

からカル シウムが析出しはじめ,2A・m

-2

で最も多く析出した。

さらに電流密度が高くなるとカルシウムの析出量は低 下した。マグネシウムはいずれの条件においてもほと んど析出せず,2A・m

-2

以上でわずかに電着した。 

 

  溶存する炭酸水素イオン量と電着量の

ために,炭酸水素イオン量を 0〜500ppmまで変化させ て析出スケール量の変化を測定した。なお,模擬試験 液調製は 3-2-1 の手順に準じた。陰極電流密度はカル シウムの析出が最も良好であった 2.0A・m

-2

とした。試 験結果を図 5 に示す。炭酸水素イオンの共存による条 件で は マグ ネ シウ ム は全 く 電着 し なか っ た。 こ れは 3-2-1 の試験結果と同一である。カルシウムの析出は 50ppm以上から確認され,200ppm以上で一定となった。

このことから共存炭酸水素イオン量を 200ppm以上と することでより効率的なカルシウムの電着を行うこと ができると考えられる。ただし,炭酸水素イオンはエ アバブリングのみでは数ppm程度しか溶存しないため,

本試験法などで用いた炭酸水素ナトリウムなどを添加

する方法が良いと考えられる。 

(4)

0 5 10 15 20 25 30

0 100 200 300 400 500

HCO3-

濃度(ppm)

電 着量(

µg

 ○:Ca  ×:Mg

図 5 炭酸水素イオン量と電着量の関係 

0 20 40 60 80 100 120

 

140

0 3 6 9 12 15 18 21 24

電解時間(hr)

濃度(ppm

0 1 2 3 4 5 6 7 8

pH

Na K Ca Mg Si 炭酸系Ca 炭酸系Mg pH

図 6 電解時間と循環水組成変化 

-3  循環式電解試験による循環水組成の経時変化  間

  まとめ 

より,以下のことが明らかとなった。 

(2) 行い,カルシ

(3) ける定電流電解におい

(4) 化を分

  文献 

生活衛生局企画課監修:新版レジオネラ症防

2)  

                      3

  直方市上水を処理した循環水を循環させて 24 時 電気分解した時の循環水組成の変化を測定した。結果 を図 6 に示す。時間とともにカルシウム及びマグネシ ウムが減少しているが,電解初期ではカルシウムの減 少が大きく 15 時間以降でマグネシウムの減少が大き くなっている。スケール析出は水中の硬度が大きく影 響する。硬度は炭酸塩硬度と非炭酸塩硬度に大別され,

炭酸塩硬度がスケール析出に影響している。炭酸塩硬 度にはカルシウムとマグネシウムによるものがあるが,

ここではそれぞれ炭酸系カルシウム,炭酸系マグネシ ウムと定義すると,まず,3 時間までに炭酸系カルシ ウムが全て析出し,その後炭酸系マグネシウムの析出 が発生して 15 時間までに全て析出した。一方,非炭 酸系硬度は 15 時間まではほとんど変化がないが,15 時間経過後から大きく減少傾向がみられる。このこと から硬度の低下についてはまず炭酸系硬度分が減少を 始め,これがゼロとなった時点で非炭酸系硬度が減り 始める,といった経過で電析が進行すると考えられる。

また,非炭酸系硬度の減少傾向はマグネシウムの減少 傾向と似ており,水酸化マグネシウムの析出が影響し ていると考えられる。水酸化マグネシウムの析出には 大量の水酸化物イオンを消費するが,非炭酸系硬度の 低下に伴い pH が低下しており,この時点で水酸化マ グネシウムが生成していると考えられる。なお,この 実験では陰極電流密度に変化はないことから,カルシ ウムの析出を狙った電流密度でも時間をかければマグ ネシウムの析出が期待できることが分かった。 

   

                      4

  本研究に

(1)電気分解法を使用した冷却水循環システムの循 水及び補給水について組成分析を行った結果,電 解法によるスケール除去ではカルシウムに対する 効果が顕著であり,マグネシウム,ケイ素につい ても有効であることがわかった。 

模擬循環水による定電流電解試験を

ウムの電解には炭酸水素イオンの共存が必要であ ることが分かった。この時,カルシウムの析出に 最も効果的な電流密度は 2.0A・m

-2

であった。一方,

炭酸水素イオンの共存がない場合,1.5 A・m

-2

以上 でMgを良好に電着した。 

陰極電流密度 2.0A・m

-2

にお

て,カルシウムの析出に有効な炭酸水素イオン量 を調査した結果,200ppm以上においてカルシウム の析出量が一定となることがわかった。 

循環水の定電流電解を行い経時的な組成変 析したところ,まず炭酸塩硬度に由来するカルシ ウムの析出が生じ,その後,炭酸塩硬度に由来す るマグネシウムの析出が発生,これが終了した後 に非炭酸塩硬度に由来するマグネシウムの析出が 発生していることが明らかとなった。 

5  1)厚生省

止指針,財団法人ビル管理教育センター (1999) 

冷却水系のレジオネラ症防止に関する手引き,抗

レジオネラ用空調水処理剤協議会(2003) 

参照

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