計量経済 II :期末試験
村澤 康友 2017 年 1 月 24 日
注意:3問とも解答すること.結果より思考過程を重視するので,途中計算等も必ず書くこと(部分点は大 いに与えるが,結果のみの解答は0点とする).
1.(20点)以下の用語の定˙義を式または言葉で書きなさい(各˙ 20字程度).
(a)棄却域(b)χ2統計量(c)適合度検定(d)決定係数
2.(30点)ある将棋の対局の中終盤50手の将棋ソフトとの一致率はX棋士が88%(22/25),Y棋士が 60%(15/25)であった.両棋士の(無限仮説母集団における)真の一致率をpX, pY,この対局の中終 盤各25手における一致率(=標本平均)をpˆX,pˆY とする.次の片側検定問題を考える.
H0:pX =pY vs H1:pX > pY.
各対局者と将棋ソフトの指し手の一致/不一致は独立かつ同一なベルヌーイ試行であり,また互いの指 し手についても独立と仮定する.
(a)pˆX,pˆY の漸近分布を求めなさい.またpˆX−pˆY の漸近分布を求めなさい.
(b)検定統計量を与えなさい.それはH0の下でどのような分布に近似的に従うか?
(c)有意水準1%の検定の棄却域を定め,標本の大きさをnX =nY = 25として検定を実行しなさい.
※数値例はフィクションです.また分析の目的は両棋士の棋風の差異の検証であり,本データのみで不 正行為の有無の検証は不可能です.
3.(50点)2変量データを((y1, x1), . . . ,(yn, xn))とする.yiのxi上への定数項のない古典的正規線形回 帰モデルは
yi=βxi+ui
{ui} ∼IN( 0, σ2)
βのOLS推定量をb,σ2の不偏推定量をs2とする.次の片側検定問題を考える.
H0:β= 1 vs H1:β >1
(a)OLS問題を書きなさい.
(b)bを式で与えなさい.
(c)bの分布を求めなさい.
(d)s2を式で与えなさい.
(e)検定統計量を与えなさい.それはH0の下でどのような分布に従うか?
解答例
1. 統計学の基本用語
(a)標本(検定統計量)の値域でH0を棄却する領域.
•「H0を棄却する領域」のみは2点.
•「棄却する領域」のみは0点.
(b)H0の下でχ2分布にしたがう検定統計量.
•「χ2分布にしたがう検定統計量」のみは1点.
•「χ2分布にしたがう統計量」のみは0点.
(c)母集団分布に対する標本の適合度の検定.
•「適合度の検定」のみは0点.
(d)R2:= ESS/TSS. 2. 2標本の母比率の差の検定
(a)
ˆ pX
∼a N (
pX,pX(1−pX) nX
)
ˆ pY ∼a N
(
pY,pY(1−pY) nY
)
両者は独立なので
ˆ
pX−pˆY ∼a N (
pX−pY,pX(1−pX) nX
+pY(1−pY) nY
)
• pˆX,pˆY の漸近分布で5点,pˆX−pˆY の漸近分布で5点.
• 統計量の漸近分布に統計量があったら0点.
(b)検定統計量は
Z:= pˆX−pˆY
√pˆX(1−pˆX)/nX+ ˆpY(1−pˆY)/nY
H0の下でZ∼a N(0,1).
• 検定統計量で5点,H0の下での分布で5点.
• 統計量の定義式に未知母数があったら0点.
(c)棄却域は[2.33,∞).検定統計量の値は
Z:= .88−.60
√.88(1−.88)/25 +.60(1−.60)/25
= .28
√(.1056 +.24)/25
= .28·5
√.3456
= 1.40
√.3456
≈2.38 したがってH0を棄却してH1を採択.
2
• 棄却域で5点,検定統計量の値で5点.
3. OLS
(a)OLS問題は
minb
∑n
i=1
(yi−bxi)2 and b∈R
(b)OLS問題の1階の条件は
∑n
i=1
(−xi)2(yi−b∗xi) = 0 すなわち
∑n
i=1
xi(yi−b∗xi) = 0 正規方程式は
∑n
i=1
xiyi−b∗
∑n
i=1
x2i = 0
OLS推定量は
b∗=
∑n i=1xiyi
∑n i=1x2i
(c)βのOLS推定量は
b=
∑n i=1xiyi
∑n i=1x2i
=
∑n
i=1xi(βxi+ui)
∑n i=1x2i
=β+
∑n i=1xiui
∑n i=1x2i
3
したがって
E(b) = E (
β+
∑n i=1xiui
∑n i=1x2i
)
=β+
∑n
i=1xiE(ui)
∑n i=1x2i
=β var(b) = var
( β+
∑n i=1xiui
∑n i=1x2i
)
= var (∑n
i=1xiui
∑n i=1x2i
)
= var(x1u1) +· · ·+ var(xnun) (∑n
i=1x2i)2
= x21var(u1) +· · ·+x2nvar(un) (∑n
i=1x2i)2
= σ2∑n i=1x2i (∑n
i=1x2i)2
= σ2
∑n i=1x2i
bは(y1, . . . , yn)の線形変換だから正規分布.したがって
b∼N (
β, σ2
∑n i=1x2i
)
• 期待値で2点,分散で4点,分布で4点.
(d)
s2:= 1 n−1
∑n
i=1
(yi−bxi)2
(e)標準化すると
b−β
√σ2/∑n
i=1x2i ∼N(0,1) σ2をs2に置き換えると
b−β
√s2/∑n
i=1x2i ∼t(n−1) 検定統計量は
t:= b−1
√s2/∑n i=1x2i H0の下で
t∼t(n−1)
• 検定統計量で5点,H0の下での分布で5点.
• 統計量の定義式に未知母数があったら0点.
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