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車車間通信を用いた危険運転車両検出手法の提案と現実的な車両挙動モデルを用いた性能評価

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(1)

I

はじめに

 安全で効率的な道路交通環境の実現は、現代 社会において極めてニーズの高い課題である。道 路上でのリスクの原因は様々であるが、本論文で は特に、無謀な運転や不注意運転により他のドラ イバーに危険を及ぼすような事例に着目し、そのリ スク軽減を目指すシステムを提案する。提案シス テムは、具体的には、そういった危険行為を行う 車両の接近を遭遇する以前に知らせることで、ドラ イバーに注意を与え、事故等の可能性を減らすこ とを目指す。  近年、多くの道路では、カメラや速度センサー を用いた速度違反車両の監視を行っている。しか し、この方法には、監視地点でのみ速度を落とす ことで、検知されずに速度超過を行うことが可能で あるという欠点が存在する。一方、今日では、モバ イルアドホックネットワーク技術を車車間ネット ワークに応用することが考えられており、交通渋滞 や事故の情報を他の車両に知らせる方法として、 無線マルチホップ通信を用いることについても議 論されている。本論文では、危険な運転を行う車 両の内、速度違反車両を無線マルチホップ通信 を用いて検出する一つの手法を提案する。  また、実機を用いたシステムの評価・検討は非 常に大きなコストが必要となるため、無線システム に関する研究・開発では、実機実験の前にシミュ レーションを用いてプロトコルの性能に関して詳 細な評価を行う必要がある。特にアドホックネット ワークプロトコルの場合には、端末の挙動をどの ように扱うかがシミュレーション結果に大きな影 響を与えることが知られており、現実的な端末の 移動をシミュレータ上で再現する事が正確なシミュ レーション評価のためには重要となる

[1]

[2]

。提 案手法のような車車間通信システムを評価するに

車車間通信

いた

危険運転車両検出手法

提案

現実的

車両挙動

モデルを

いた

性能評価

梅津高朗 Takaaki Umedu 滋賀大学経済学部 / 准教授 論文

(2)

あたっては、交通シミュレータを用いる場合が多 いが、従来の交通シミュレータの多くは、交通需 要の評価や渋滞予測などを目的として、統計的な 交通流の再現を目指しており、車車間通信システ ムを評価するために必要な、車間距離、各走行車 線の車両の割合などの情報が現実に近い値では ない。そこで、車車間通信システムの評価をより正 確に行うため、交通シミュレータにおける車両の 挙動をより現実的にすることを目的とし、車両挙動 のモデル化を行った3)。統計的に正確な交通流の 再現を目的とした交通シミュレータでは、計算を 簡略化してシミュレーションを高速化するため、車 両の速度が道路容量によって決定される最高速 度と先行車両との車間距離のみによって決定され ており、そのため、シミュレーション結果として均 一な車両分布となる傾向にあった。一般に、アド ホック通信は端末が一定以上の密度で均一に分 布している場合には通信成功確率が高くなること が知られている。そのため、均一な車両分布を用 いて車車間通信システムを評価した場合、マルチ ホップ通信が長距離まで到達する傾向により、現 実の車車間通信システムより高い性能として評価 される可能性がある。ここでは、各車両の最高速 度を何通りかに設定することで車両ごとの速度差 を実現し、車両分布を現実に近づけた。また、状 況に応じて走行車線を変更する仕組みを取り入れ ることで、車線毎の車両密度にばらつきを持たせ た。パラメータを調整することで、考案モデルは交 通流の統計的な再現性において従来の交通シ ミュレータと同程度の正確さを実現しながら、航 空写真より得られた車両分布と同様の車間距離 分布を持つ、現実的な交通流を再現できることを 示した。  考案モデルにより提案した安全運転支援シス テムの性能を検証し、その現実性を確かめた。よ り現実的な交通流の下で行ったシミュレーション により、従来の交通流を用いたシミュレーションで は発見できなかった欠点を確認出来、ある程度の 路側機を設置することで問題を解消できることを 確認した。

II

道路環境における

IT

技術の応用と課題

IT

技術を応用することで交通インフラや道路 環境の安全性や効率の改善を目指すシステムは、 総 称 と し て システム は 高 度 交 通 システム (

Intelligent Transportation Systems, ITS

)と呼 ばれている。その代表例としては、まず、テレマティ クスと総称される移動体無線通信技術を応用し た運転者への情報提供が挙げられる。日本では 財団法人道路交通情報通信システムセンターが 運 営 す る

VICS

Vehicle Information and

Communication System

)4)呼ばれるシステム が整備されており、各都道府県の警察や道路管 理者が提供する情報が

VICS

センターへと集めら れる。集められた情報はリアルタイムな交通量や 渋滞の情報として集約され、電波ビーコン、光ビー コン、

FM

多重放送、地上デジタル放送などを用い て運転者へと提供される。現在、多くのカーナビ ゲーションシステムが何らかの形で

VICS

に対応し ており、提供された情報を電子地図上に表示する ことでドライバーに交通状況を通知したり、情報 に基づきカーナビゲーションシステムが経路設計 を行うことで、渋滞回避や効率的な道路の利用に 役立っている。  また、より詳細でリアルタイムな交通情報の収 集と提供を行うために、カーナビゲーションシステ ムなどの車載器が走行情報を記録し、携帯電話 網を用いて定期的にセンターに情報を集約するシ

(3)

トの再送を全車両が繰り返してしまうと、再び干渉 により受信失敗してしまうと言う悪循環から、互い に干渉して受信不可能なパケットにより無線帯域 が埋め尽くされて通信が実質的に不可能になって しまう現象、いわゆるブロードキャストストーム9) 発生してしまうため、それを避けるために車両密度 を考慮してパケットの送出を行う必要がある。文 献

[10]

では、車両密度の計算方法が提案されてお り、文献

[11]

、および、文献

[12]

では、周辺の車両 密度に応じた効率のよい情報伝播プロトコルが 提案されている。   ま た、車 両 密 度 と 共 に、車 両 の モビ リ ティ13)、14)、15)、16)についても考えなければならない。 一般的にアドホック通信プロトコルの性能評価で よく用いられるランダムモビリティモデルは、均一 なノード密度で構成されており、データ伝播を現 実よりも高い確率で行うことができる。しかし、実 際の車両は、通常いくつもの車群で走行しており、 しばしば道路上に車両のいない空白部分ができて しまうため、ランダムモビリティモデルでは、情報 の伝播を正しく評価することができない。そのため、 車車間通信のシミュレーション評価には、現実に 近い交通流でネットワークの性能を評価すること が重要である。本研究では、リアルな広域の道路 交通状況を再現でき、比較的現実に近い性能評 価の行える交通流シミュレータとして交通流シミュ レータとして

NETSTREAM

17)を用いた。また、シ ミュレータ上の車両挙動モデルに高速道路上の 車の粗密を再現する工夫を加えることで、より現実 に近いシミュレーションを行った。 ステムも実用化されている。その代表としては、ト ヨタ自動車株式会社の

G-BOOK

5)、本田技研工 業株式会社のインターナビ6)、日産自動車株式会 社の

CARWINGS

7)挙げられる。これらのシス テムでは、対応機器により収集された情報を交通 情報として受け取ることができ、

VICS

の情報を補 完することでよりきめ細かい交通状況を把握する ことが出来る。こういった、実際に走行している車 両から直接に情報を収集するシステムは総称して プローブカーと呼ばれ、今後の発展が期待されて いる分野である。  また、安全運転支援システムの実現に向けて、 地上波アナログ放送停波 で利用可能となった

700MHz

帯の一部が

ITS

分野へ割り当てられる ことが決まっている。例えば、この帯域の無線を用 いて基地局を介さず車両間で直接に通信を行い 位置や速度に関する情報を交換し、システムが事 故の可能性を検出した場合には運転者に事前に 警告するなどの仕組みで、事故削減を目指す仕組 みが検討されている。特に見通しの悪い交差点な どには近距離無線基地局を設置し、車両間でや りとりされる情報を転送させることで、より確実に 情報のやりとりを行わせることも考えられている。 様々な組織がこういったシステムの設計検討、検 証実験や比較検討を共通の条件で行えるようにす るため、

ITS

情報通信システム推進会議により無 線ハードウェアの仕様から、通信プロトコルのイ ンターフェイスまで具体的に定めた実験用ガイド ラインが制定されている8)  こういった基地局を介さない無線通信技術を 走行する車両間での情報伝播に用いる際には、全 体の通信を制御、調停する端末が不在なために、 複数の車両が一斉にパケットを送出してしまい、 電波の干渉で全てのパケットが正常に受信できな い可能性がある。その際に、送信失敗に伴うパケッ

(4)

車間距離と道路ごとの最高速度で決定されるた め、多くの車両が等間隔で一定速度で走行してい る。また、車間距離が縮まらないことにより車線変 更も行われたため、交通流が少ない場合には一つ の車線のみ車両が通過しているという状況がしば しば発生してしまう。統計的な交通量や渋滞発生 の有無という視点では、この車両の挙動は問題に はならない。しかし、車車間通信システムを評価す る場合、車両が一列に等間隔で並んでいるため、 情報が遠くまで伝播されやすい。  この問題を定量的に評価した結果が、図

3

であ る。ここでは、図

1

の交通流と、

3

章で後述する我々 が提案した車両挙動モデルに基づいて作成した 交通流(図

2

)の上で、ある瞬間のマルチホップによ り通信可能なペアの数を求め、全車両ペアの数に 対する割合を計算した。マルチホップ通信可能で あるかどうかは、その

2

台の車両の間にその瞬間に 通信可能なマルチホップ経路が存在するかどうか で判定し、各ノード間で通信可能であるかの判定 は、車間距離が通信距離以下であるかどうかの判 断だけのシンプルなモデルで行った。また、道路 は首都高速道路を簡略化したモデル用い、通信 可能距離を

250m

とし、車両の発生台数は

1km

あ たりに

3

台(図

3

1

))、

6

台(図

3

2

))、

9

台(図

3

3

))、

12

台(図

3

4

))としてシミュレーションを走らせた。  図

3

1

)では、発生車両台数が少ないため従来 モデル、提案モデルともに通信可能なペアの割合 が

7%

以下と低い。しかし、従来モデルでは交通量 が少ないときに複数の車線が存在したとしても、車 両が特定の一つの車線に集まり一定間隔の車間 距離で走行してしまうため、図

3

2

)では、交通量 が少ないのにも関わらず通信可能なペアの割合が

50%

を超えている。一方、提案モデルでは、発生車 両台数をさらに増やした図

3

3

)でも、車群の粗密 があるため通信可能な車両のペアの割合が

10%

III

アドホック通信プロトコルの

性能評価における車両挙動モデル

Ⅲ.1 車両挙動モデルが性能評価に与える影響  多くのシミュレーションモデルは、現実の交通 流を必要とされる粒度で正確に再現できるよう注 意深く設計されており、現実の交通流をどの程度 再現可能で、どの程度正確に渋滞を予想できるか などに関しても十分な評価がなされている。そのた め、無線通信システムを設計する場合に、これら の交通シミュレーションの結果を用いることで信 頼性の高いシミュレーションが行えると考えられる。 しかし、そういった交通シミュレーションモデルの 流用は、モデルの本来の設計目的とは異なる問題 への応用となるため、場合によっては慎重に行う必 要がある。  例えば図

1

は統計的な交通流の再現性が高いこ とで知られる交通シミュレータ

NETSTREAM

17) を用いて、一般的な交通量が少ない時を再現した 場合の一部を切り出したものである。ここでは、交 通流が少なく各車両が自由走行速度で走行して いる。その場合、各車両の速度は、前方車両との 図1 既存の車両挙動モデルで再現された交通流 図2 提案した車両挙動モデルで再現された交通流

(5)

Ⅲ.2 現実的な交通流を再現可能な 車両挙動モデル  我々は、既存シミュレータの統計的な再現性を 損なわないまま、車車間通信システムをより正確に 評価するために、車両挙動モデルに変更を加えた。 車車間通信システムを正確に評価するためには車 両間の位置関係、ここでは車間距離分布を現実 的な分布に近づける事が効果的である。具体的に は以下の三点に着目して、車両挙動をモデル化 した。 (

1

)車両の速度決定法 (

2

)走行速度に基づく車線の選択 (

3

)車間距離と走行速度に基づく車線変更  まず、車両毎に走行速度にばらつきを持たせる ため、現実的な分布に基づき、車両の希望走行速 度を分散させた。また速度や、前方との車間距離 に応じて車線を変更する仕組みを取り入れた。 から

40%

の間に留まっている。しかし、さらに発生 車両台数を増やした図

3

4

)では、提案モデルで あっても通信可能なペアの割合が増え、従来モデ ルの結果に近づいた。  この場合、既存モデルにより再現された交通流 のデータを用いてアドホック通信を用いるアプリ ケーションを評価したならば、車両密度が比較的 低い段階から高い性能となるという見積もりが得 られてしまう。しかしそれは、図

1

のように車両が等 間隔に整列したような不自然な環境下でのシミュ レーション結果であり、過剰評価である可能性が 否定できない。このように、正確な交通需要見積も りが行えるとされる交通シミュレータを用いた場 合でも、それが広範囲の統計的な再現性のみに着 目しているのであれば、アドホック通信システムの 正確な性能評価には用いることが出来ない可能性 がある。 (1)3 台/km (2)6 台/km (3)9 台/km (4)12 台/km 図3 マルチホップ通信で到達可能な車両ペアの割合

(6)

 分布間の類似性は相関係数で元のモビリティ の

0.40

から

0.94

まで近づける事が出来た。従来モ デルでは、ほとんど存在しない、小さな車間距離 で走行する状況が提案モデルではある程度再現 できている。また、従来モデルでは

210m

付近の距 離を開ける車が際だって多い事が分かる。これは、 全ての車が同じロジックで走行しているため、この 付近で安定したためと思われる。このような条件 下でマルチホップ通信を行った場合、無線通信が

210m

以上の到達距離を持っている場合には、一 定間隔で走行する車列を介して、比較的容易に長 距離間情報伝達を行えると思われる。一方、到達 距離が

210m

を切った場合には、通信の可能性が 極端に減ってしまう。このような極端な挙動は、性 能評価においては好ましくない。提案モデルでは このような不自然に極端な状況は発生しておらず、 また、現実のデータに近い車間距離分布となって いるため、より妥当な性能評価を行う事が出来る。 Ⅲ.3 車両走行ロジックの変更の詳細  まず、車両の挙動の中で各車両の最高速度の 設定と、それに伴う速度決定式を変更した。一般 に車両の速度

V

は、次に示す車両密度

K

の関数と して

Greenshields

の関数式に従うと言われてい る18)  提案モデルを既存の交通シミュレータに組み 込んだ場合に、既存シミュレータが有していた交 通流量の統計的な再現性を損なわない事を確認 した。交通シミュレータが出力する交通量が現実 的に妥当かどうかを検査するために標準検証プロ セスが定められており18)、車両挙動モデルの変更 が大きな影響を与えると思われる項目に関して検 証した。また、渋滞の再現シミュレーションなどを 通して確認した。詳細は文献

[3]

を参照されたい。  次に、提案した車両挙動モデルを用いて、現実 的なデータと同様の車間距離の分布を再現するテ ストを行った。現実のデータとしては航空写真か ら計測した車間距離分布を用い、パラメータを調 整することで図

2

のように車両間隔に幅のある交 通流を再現できた。また、その際の分布を解析し たものが図

4

となる。ここで、“

real traffic flow

”が 再現対象のデータ、“

macroscopic model

”が従 来の交通流モデルで得られたデータの車間距離 分布、“

proposed model

”が提案モデルで得た結 果である。図は、横軸に前後の車の距離を車の先 頭位置間の距離で表した車頭距離、縦軸にその 距離を開けて走行している車の台数をプロットし たヒストグラムである。 図4 車頭距離の分布

(7)

容量の検証と呼ばれる項目がある18)。ボトルネッ ク容量とは、ボトルネックが存在する道路構造に 多くの車両を通過させた場合、一時間で何台の車 両が通過できるのかを示す値である。上記の変更 では、最低車間距離を広げた車両は低速走行時 にも広い車間距離で走行してしまい走行ロジック の変更前のリンク容量に比べ変更後のボトルネッ ク容量が減少してしまい、交通流の現実性が損な われる。また、

RS

1

より小さい車両、つまり速度 が遅い車両の混雑時の車間距離も変更前と比較 して大きな値となってしまっている。そこで、

RS

1

より小さい車両も、混雑時

RS

1

の車両と同じ車 間距離を取れるように、車間距離が短くなって速 度が落ちてきた場合は、

RS

1

の車両と同じ計算 式で計算することにした。下記に我々が提案した 速度決定式を示す。 ( ) ( >) × - × × - ≤ × - = 1 1 , 1 min 1 , 1 min 2 RS D D RS V RS D D V RS V RS D D V V MIN MAX MIN MAX MAX MIN MAX Ï Ó ÏÓ Ï ÏÓ Ó Ï Ó Ï Ó Ï Ó ¸ Ô ˝ Ô ˛ Ï Ó Ï Ó Ï Ó (

2

)  また、現実には一般的に、三車線以上の道路の 場合は、最も右側の車線が追い越し車線となり、 他の車線に比べ走行速度が速くなる傾向にある。 また、最も左側の車線は、一般道では路肩駐車や 人の飛び出しなどにより速度が自然と低くなってし まう。従って、本論文では個々の車両の最高速度 (

RS

の値)に応じて、各車両が主に走行する車線 を選択するようにした。また、車間距離が小さく なった場合には、距離に応じた割合で車線変更を 行い、場合によっては追い越しを行うよう走行ロ ジックを変更した。 (

1

V

: 走行速度

V

MAX : 車両密度が

0

の時の自由走行速度(最 高速度)

D

: 前方車両との車頭距離(車間距離)

D

MIN : これ以上近づくことはできない距離 (最低車頭距離)  この計算式では、全ての車両の最高速度

V

MAX を各道路に設定された道路容量から算出される 最高速度としていたため、車両ごとの速度差は再 現されていない。本研究では、車両ごとの速度差 を持たせるため、車両ごとに最高速度を決めるこ とにした。最高速度は同じ車両でも道路の規制速 度が変われば変わってくるため、車両ごとに係数

RS

(本論文では

0.8

RS

1.3

)を持たせ、走行中 の道路の規制速度にその係数をかけた値をその 車両の最高速度とした。割合の分布は、二車線道 路における国道での速度分布の例19)参考に定 めた。  しかし、単純に

RS

を用いて速度差を持たせるだ けでは、遅い車両の減速時に後続に速い車両が 存在した場合に原則が間に合わず、シミュレーショ ン上で追突してしまう状況が発生する場合があっ た。そこで、速度が速い車両は最低車間距離を広 げるよう走行ロジックを変更した。これにより、速 度が速い車両は車間距離が長い地点から減速を することで、衝突は回避できる。具体的には、今ま での最低車間距離

D

MINに車両ごとの固定値

RS

の二乗をかけたもの

RS

2×

D

MIN最低車間距離 として用いるものとした。  また、交通シミュレータが出力する交通量が現 実的に妥当かどうかを検査するために標準検証プ ロセスが定められており、その一つにボトルネック × =

V

D

D

V

MAX ÏÔ

1

MIN Ó Ï Ô Ó

(8)

専用のチャネルで一定間隔で発信していることと する。各車両(以下監視車両)は、周辺車両(以下、 監視対象車両)のエンジン

ID

を識別、収集する。 ここで、各監視車両は

GPS

受信機から自身の位置 を取得できるものとし、また、各車両の時計は

GPS

の信号などを用いてある程度の同期が取れている ものと仮定する。ただし、周辺車両の監視を行う 場合に、監視対象車両群の正確な位置に関して は得ることができないため、監視車両の位置をそ の代わりとして用いる。以降、この警戒情報を、

W

= {id, p, t, l}

で表現する。ここで、

id

は監視対象 車両のエンジン

ID

p

は監視車両の位置、

t

は監 視を行った時刻、

l

は後述する警戒値である。  警戒情報は、複数車両を介して前方の車両へと 伝搬される。警戒情報を受信した車両(以下、前方 監視車両)は同様の監視を行い、監視対象車両を 発見した場合には、その速度を推測する。エンジ ン

ID

を散布するパケットの最大到達範囲を

R

とし て、警戒情報が発信された地点と時刻をそれぞれ

p

rec、

t

rec、推測を行う地点と時刻をそれぞれ

p

cur、

t

curとして、推測速度

V

estは以下の式で求める。た だしここで

d

p

1

,p

2)は道なりの距離を求める関数 である。 (

3

)  監視対象車両の正確な座標の代わりに、監視 車両の座標で代替するため、最大でエンジン

ID

パケットの最大到達距離分の誤差が生じる。この 推測式では、誤検出を避けるため常に推測速度 が最小となる位置に監視対象車両が存在するもの として扱い、実際の走行距離に対して最大

4R

の 誤差を含む(図

5

)。

( )

est

V

=

p

t

reccur,

p

cur

p

rec

2R

IV

危険車両検出を行う

安全運転支援システム

 現在の交通監視システムは、定点観測に基づ いているため、速度を超過して走行している危険 車両が、速度検出器などの路側のセンサーの手 前で速度を落とした場合、検出することができない。 しかし、車両の監視を一定時間行うためには、複 数地点での監視が必要になり、非常に多くのコス トが必要となる。そのため本論文では、このような 危険車両の検出を、路側のセンサーに頼らず、走 行している車両間で行うための車車間通信プロト コルを提案する。提案システムでは、各車両は周 辺車両を監視して得られた情報を車車間通信を 用いて前方の車両へ伝播させる。この情報を以下 では警戒情報と呼ぶ。警戒情報を受信した車両は、 同様に周辺車両を監視し、受信した警戒情報中 に記録された車両が存在すれば速度を推測して、 速度超過を行っているか否かを判定する。 Ⅳ.1 車車間通信を用いた危険車両の 監視方法  本論文では、特にアドホック通信を用いたプロ トコルの実現性を検証し、周辺車両情報の収集 技術の詳細に関しては述べない。ここでは、議論 の簡単化のため、スマートナンバープレートシステ ムのような、次世代無線ナンバープレートシステム を前提として議論を進める。また、本論文で議論 の対象としている速度超過車両以外にも、提案プ ロトコルを複数の車載センサー技術と組み合わせ ることにより、蛇行走行を行う車両や、無理な割り 込みを繰り返す車両などの危険運転も監視できる と考えられる。  まず、仮定として、各車両はナンバープレートに 代わる無線システムとして、自分のエンジン

ID

(9)

 各車両は、周辺車両の情報を収集し、警戒情報 として前方へ送付する。警戒情報には各監視対 象車両の警戒値が含まれており、初めて監視され た車両の場合は、特に問題のない車両として警戒 値

l = 0

が設定される。各車両は、後方から警戒情 報を受け取ると、周辺車両の監視を開始する。受 信した警戒情報と、収集した周辺車両のエンジン

ID

に同一車両

ID

が含まれていた場合、その車両 の速度を推測し、推測した速度が大きく制限速度 を超えている場合、その車両を警戒車両とし、警 戒値を

1

だけ増加させる。速度を超過していない車 両の情報は、警戒情報から削除する。各監視対象 車両の警戒値は、制限速度を大きく超えていると 判断されるたびに

1

ずつ増加し、車両の警戒値が 閾値

N

に達したとき、その車両は危険車両とみな される。そして、その車両の警戒情報は車車間ア ドホック通信を用いて前方車両へと伝播させる。 危険車両とみなされた場合には、その情報は最終 的に警察へと届けるなどの対処が行われる。  ここで、警戒情報が短い距離しか伝播されてい なければ、受信車両は警戒情報を受け取ったとき に、すでに監視対象車両と遭遇している可能性が 考えられる。また、前述した速度計測の誤差のた め、短い距離で速度推測をした場合には、速度超 過を検出に失敗する可能性が高くなる。そのため、 各車両は警戒情報を受信したとき、それを即座に 伝播するか、監視を行うかを決定する。監視対象 車両と遭遇する以前に警戒情報を受け取ることが できるよう、警戒情報は転送された距離があらか じめ定めた一定距離

D

minを超えるまでは監視を 経ずに即座に前方車両へと転送される。 Ⅳ.3 中継局を用いた性能の改善  提案システムをシミュレーションにより評価実 験を行ったところ、特に現実的な交通密度のばら Ⅳ.2 提案プロトコルの概要  提案するプロトコルでは、危険車両と単に追い 越しを行うために短時間の速度超過をする車両と 区別するため、一定時間以上速度超過して走行す る車両のみを検出する。提案するプロトコルの概 要を図

6

に示す。 (

1

)周辺車両の情報を収集する。 (

2

)収集した情報を警戒情報として保持する。 (

3

)警戒情報を車車間通信を用いて伝播させる。 (

4

)各車両は後方からの警戒情報に含まれてい る車両の速度を推測する。 (

5

)各車両は推測した速度から周辺の警戒車両 の検出と警戒値の更新を行う。 (

6

)警戒値がある閾値を超えた速度の車両を危 険車両と見なす。 (

7

)危険車両を検出した車両は、前方の車両へ の警告と警察(路側の基地局)への通報を 行う。 図 6 提案プロトコルの概要 B C D Dmin D が監視を行う. A 警戒情報 P 警戒情報を 送信 転送距離がDmin未満の 場合は監視せずに転送 P 監視車両 図5 走行距離推定方法とその誤差 図6 提案プロトコルの概要

(10)

  また、車車間アドホック通信 の 規格として、

IEEE802.11 IBSS

IndependentBasic Service

Set

)20)用 い た。提 案 す る プロトコル は、

IEEE802.11

の上位層にある

UDP/IP

プロトコル 上のアプリケーションプロトコルである。警戒情 報パケットの電波到達距離

D

200m

とし、エン ジン

ID

の伝播距離を

40m

とした。このとき、警戒 情報とエンジン

ID

の伝播に使用する帯域は異な るものとした。また、警戒情報の受信確率は、車車 間の距離

x

に依存するものとし、

1-

x/D

)2の式で表 すこととする(

R

D

の場合は

0

とする)。また一方で、 議論の簡単化のために、無線伝播距離内にいる 車両のエンジン

ID

は、すべて一定の確率(

=60%

) で受信できると仮定する。ここで、各車両は、

1

秒ご とにエンジン

ID

を散布しているものとする。普通 車両と危険車両の速度の差が時速

100km

(秒速

28m

)であった場合でも、

ID

の散布間隔はエンジ ン

ID

の伝播距離(

40m

)よりも短い。そのため、各 車両は、すべての追い越される車両のエンジン

ID

をその速度が速い場合でも受信することができる。 また、一般車両は提案する検出プロトコルを実行 する。 つきを考慮した場合に、性能が悪化することが分 かった。そこで、追加の改善案として、路側に中継 局を設置する方式も試した。次章でこれらの実験 結果に関して述べる。

V

提案システムの

シミュレーションによる性能評価

Ⅴ.1 評価環境  車車間アドホック通信プロトコルを現実的な交 通流で評価するためには、交通渋滞の影響や各 道路の車線数、車両密度の変化や走行速度の差 などに注意する必要がある。我々は前述のモビリ ティモデルを用いることでより現実に近いシミュ レーション環境を構築した。  アドホックモバイルネットワークシミュレータと して、我々は、車車間通信に対応したモバイルア ドホックネットワークシミュレータ

MANS

12) 発した。

MANS

は、

NETSTREAM

で生成した 車両の位置情報を用いて、パケットレベルでの車 車間通信をシミュレートする。また、

MANS

は無 線通信距離、通信帯域、車両間の距離に応じた 受信確率、データのパケットサイズ、散布間隔をパ ラメータとして設定できる。  シミュレータ

MANS

を用いて、図

7

に示したよう な高速道路上で、危険車両の検出のための情報 散布を評価した。図

7

の高速道路は、東京の首都 高速道路の地図を元に作成した。シミュレーショ ンでは、高速道路の制限速度を時速

100km

とし、 通常車両の走行速度を

100

±

5km

とした。各道路 は、

2

車線または

3

車線であり、与えた車両密度に おいては、渋滞は発生しなかった。ここで、平均速 度が時速

130km

以上である車両を危険車両と する。 7シミュレーション実験いた道路データ

(11)

 より詳細な評価結果に関しては、文献

[21]

、およ び、文献

[22]

を参照されたい。

VI

おわりに

 本論文では、高速道路上での危険要因である、 速度超過車両を車車間通信を用いて検出する手 法を提案した。提案手法を用いることで、制限速 度を逸脱して走行する危険な車両の接近を、ある 程度の確率で先行する車両に事前に通知すること ができ、事故などの危険を未然に減らすことができ ると思われる。  また、無線通信を応用した高度道路交通システ ムの設計において、シミュレーションの正確性が 重要であることを述べ、既存モデルを応用してシ ミュレーションをより現実に近づける工夫に関して 述べた。   【付記】  本研究を行うにあたり、交通流シミュレータ

NETSTREAM

17)使用許可を快く与えてくださ いました豊田中央研究所に深く感謝いたします。   参考文献

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Mobile Wireless Network Simulation”,

Ad Hoc Networks / Elsevier, vol. , no. , pp. -. Ⅴ.2 評価結果  図

8

にシミュレーション結果を示す。図には、中 継器のあり、なしと、既存モビリティモデルと現実 的なデータに近づけたモビリティモデルを用いた 場合の合計

4

パターンで、危険車両と遭遇した事 例の内、どれだけがシステムによって検出できたか の割合を、危険車両の速度を変えて実験を行い、 評価した。横軸が危険車両の速度で、縦軸が検出 できた割合、それぞれのグラフが前述の

4

パターン を示している。  結果から、いずれの場合でも、よりリスクが高い と思われる、速度超過が大きい車両ほど、検出確 率が高くなり、規制速度を

30km/

時以上速度超 過しているような車両に関してはその半数弱以上 が検出できることがわかった。また、中継器を用い ない場合、既存のモビリティモデルと現実的な車 両分布を再現したモビリティモデルで実験した場 合に、検出率に顕著な差が見られた。このように、 既存の均一な車両分布でのシミュレーション実 験では正確な評価が行えない可能性がある。一方、 中継局を設置した場合には、速度超過が

25km/

時以上の危険車両を

9

割に近い確率で検出できて おり、提案手法の導入で、高速道路上での他者の 危険運転を原因とする事故リスクを低減できる可 能性があることが示された。 図8 シミュレーション実験による評価結果 ◆中継器なし(既存のモビリティモデル) ▲中継器なし(現実的なモビリティモデル) ●中継器あり(既存のモビリティモデル) ■中継器あり(現実的なモビリティモデル)

Average speed of dangerous vehicles [km/h]

(12)

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(14)

Detection Method of Dangerous Vehicles

Using Inter-Vehicular Communication and

Its Evaluation Considering Realistic

Vehicular Mobility

Takaaki Umedu

Recently, the deployment of wireless

commu-nication technologies for roads and highways

has been increasing done. There are a lot of

re-search about applying inter-vehicular

communication to collection and propagation

of traffic information. It has been suggested

that ad-hoc communications can be used to

propagate information related to traffic jams

and accidents efficiently. In this paper, we

pro-pose an inter-vehicular information system that

detects over speeded vehicles without any

road-side infrastructures. In our system, vehicles

observe each other and share the location

in-formation via inter-vehicular communication

to detect over speeded vehicles. We evaluated

the performance of proposing method using a

simulator taking into account realistic lane and

speed models, mobility, position, and location

errors. Here, in most of existing traffic

simula-tors, distance between two following vehicles is

modeled as equals based on statistical flow

rates. Such mobility models do not reflect real

performance of inter-vehicle communication.

We extract particular characteristics of real

ve-hicular mobility from several traces of veve-hicular

movement, formulate them formally,

imple-ment the formulated realistic vehicular

mobility on existing traffic simulators and

ob-tain more real performance of inter-vehicle

communication. In the extracted vehicular

mo-bility, each vehicle runs at a different speed,

and with different vehicular density and

distri-bution while the bottleneck capacity and

saturation flow rate of the target roads are

pre-served as the same as those on the original one.

The simulation results show that our system

can detect over speeded vehicles under various

conditions where the density and speed of the

vehicles vary.

参照

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