• 検索結果がありません。

アドホックネットワークにおける 電波強度を考慮した経路選択法

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "アドホックネットワークにおける 電波強度を考慮した経路選択法"

Copied!
34
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

アドホックネットワークにおける 電波強度を考慮した経路選択法

提出日: 2005 年 2 月 2 日

指導:後藤滋樹教授

早稲田大学 理工学部情報学科 学籍番号: 1G01P113-8

吉田傑

(2)

目次

1 序論 5

1.1 研究の背景 . . . 5

1.2 研究の目的 . . . 5

1.3 本論文の構成. . . 6

2 電波の性質 7 2.1 無線通信で使用される周波数 . . . 7

2.2 電波の伝わり方 . . . 8

2.2.1 直接波 . . . 8

2.2.2 地表波 . . . 8

2.2.3 大地反射波 . . . 8

2.2.4 電離層で反射される電波 . . . 9

2.3 フェージング現象 . . . 10

2.4 電波伝搬モデル . . . 11

2.4.1 自由空間モデル . . . 11

2.4.2 2波モデル . . . 11

3 アドホックネットワーク 13 3.1 アドホックネットワークとは . . . 13

3.2 メディアアクセス . . . 14

3.2.1 CSMA . . . 14

3.2.2 CSMA/CA . . . 14

3.2.3 隠れ端末問題 . . . 15

3.2.4 RTS/CTS . . . 15

3.3 アドホックネットワークのルーティング . . . 16

3.3.1 ルーティングプロトコルの分類 . . . 16

3.3.2 ルーティングプロトコルにおける問題点 . . . 17

(3)

4 実験概要 18

4.1 実験目的 . . . 18

4.2 実験環境 . . . 18

4.2.1 実験に用いたマシン . . . 18

4.2.2 シミュレータの紹介 . . . 18

4.2.3 パラメータ設定 . . . 19

4.3 実験 . . . 20

4.3.1 実験1 : ノード間の距離が変化したときのスループット測定 . . . 20

4.3.2 実験2 : ホップ数が変化したときのスループット測定 . . . 21

4.3.3 実験3 : ホップ数とノード間の距離が変化したときのスループット測定 . 22 5 測定結果と考察 23 5.1 測定結果 . . . 23

5.2 考察 . . . 25

6 結論 26 6.1 まとめ . . . 26

6.2 今後の課題 . . . 26

謝辞 28

参考文献 29

A GloMoSimの設定ファイル 31

(4)

図一覧

2.1 直接波 . . . 8

2.2 大地反射波 . . . 9

2.3 電離層反射 . . . 9

2.4 自由空間モデル . . . 11

2.5 2波モデル . . . 12

3.1 インフラストラクチャモード . . . 13

3.2 アドホックモード . . . 14

3.3 隠れ端末問題. . . 15

3.4 RTS/CTS . . . 16

4.1 GloMoSimのGUIツール . . . 19

4.2 実験1 . . . 21

4.3 実験2 . . . 21

4.4 実験3 . . . 22

5.1 実験1の測定結果 . . . 23

5.2 実験2の測定結果 . . . 24

5.3 実験3の測定結果 . . . 24

(5)

2.1 周波数の割り当て . . . 7

3.1 アドホックルーティングプロトコルの分類 . . . 17

4.1 コンピュータの仕様 . . . 18

4.2 GloMoSimがシミュレートするプロトコル . . . 19

4.3 ルーティングテーブル . . . 20

(6)

第 1 章 序論

1.1 研究の背景

無線通信技術を利用した様々なデバイスの登場により、私たちの生活スタイルは大きく変化し た。携帯電話によって、屋内外問わず移動しながら通話やWebブラウジングが可能となり、オ フィスではノートPCやPDAに無線LANカードを挿すだけでネットワークにアクセスするこ とができる。周辺機器との接続にはBluetoothを利用すれば配線に煩わされることもない。

このように、端末の小型化や高機能化とも相まって電子機器のモビリティは飛躍的に向上した。

今後もこの分野における技術革新が進み、社会的に大きな影響を及ぼすことが予想される。

現在までに一般化している無線ネットワークは、そのほとんどが無線基地局などのインフラス トラクチャを必要とするものである。これに対し、それらのインフラを必要としないネットワー クがアドホックネットワークである。

アドホックネットワークは、端末を持った人々が集まることにより自然発生的に形成される。

基地局がなくても通信が可能なことから、災害時などインフラが機能しないような状況において の活躍が期待できる。しかしながら、実際に運用するには解決しなければならない問題が多く残 されており、実用的な製品を開発すべく、現在盛んに研究が行われている。

1.2 研究の目的

1.1節で述べた問題のうちの1つに、ルーティングアルゴリズムに関する課題がある。アドホッ クネットワークでは、有線ネットワークのメトリックを真似た距離ベクトルベースのアルゴリズ ムが現在主流となっているが、これでは送信元ノードから宛先ノードまでのパスが複数存在する 場合に最適なものが選択されず、高いスループットを得られない可能性がある。

距離ベクトルベースのアルゴリズムでは、宛先ノードまでの経路が複数存在する場合に、一般 的にホップ数が最小となる経路が選択される。ところが無線リンクにおいては、電波強度が低下

(7)

するとスループットも低下するという性質があるために、ホップ数が最小となる経路で最も高い スループットを得ることができるとは限らないのである。

本論文ではこの点に着目し、宛先ノードまでのホップ数の変化と、ノード間の距離の変化によ る電波強度の変化がスループットに与える影響について、シミュレータを使った測定実験により 調査をする。その上で、アドホックネットワークにおいては、経路選択をする上でホップ数に加 えて電波強度も考慮に入れる必要性があるという結論を導く。

1.3 本論文の構成

本論文は以下の章により構成される。

第1章 序論

本研究の概要について述べる。

第2章 電波の性質

電波の基本的な性質について解説する。

第3章 アドホックネットワーク

アドホックネットワークにおけるメディアアクセスとルーティングについて解説する。

第4章 実験概要

実験環境と実験内容について解説する。

第5章 測定結果と考察

実験結果を示し、それに対する考察を行う。

第6章 結論

本論文に関するまとめと今後の課題について述べる。

(8)

第 2 章 電波の性質

2.1 無線通信で使用される周波数

無線通信で用いる電波は広い範囲に伝わる性質があり、無秩序に無線通信を行うとほかの通信 に妨害を与える混信などの問題が生じる。また2.2節に記す通り、電波は周波数帯によって伝搬 様態に違いがあるため、業務に適した特性を持つ周波数帯を選択する必要がある。このため、無 線通信の種類ごとに周波数帯域が法律などで定められており、この周波数帯を逸脱して通信を行 うことが禁止されている。日本国内で使用されている各種無線業務ごとに割り当てられた周波数 帯を表2.1に示す。

長波 (30kHz 〜 300kHz) 長波放送、標準電波、ビーコン

中波 (300kHz 〜 3MHz) 中波放送、船舶通信、ビーコン、アマチュア無線

短波 (3MHz 〜 30MHz) 短波放送、船舶通信、航空機通信、アマチュア無線

超短波 (30MHz 〜 300MHz) FM放送、TV放送、警察無線、航空機通信

船舶通信、アマチュア無線

極超短波 (300MHz 〜 3GHz) TV放送、列車無線、警察無線、携帯電話

衛星通信、無線LAN、アマチュア無線 マイクロ波 (3GHz 〜 30GHz) 衛星通信、無線LAN、ETC、電波天文

アマチュア無線

ミリ波 (30GHz 〜 300GHz) 衛星通信、電波天文、簡易無線、アマチュア無線

表 2.1: 周波数の割り当て

また、世界的にはITU (International Telecommunication Union)のWRC (World Radiocom-

munication Conference)において周波数割り当てが決定されている。世界で同一の周波数が使え

ることにより、グローバルに共通化できるメリットがある。無線LANの例でいうと、無線LAN

(9)

搭載ノートパソコンをいろいろな国に持っていってもそのまま使えるというメリットがある。

2.2 電波の伝わり方

2.2.1 直接波

大地

A局 B局

図 2.1: 直接波

送信側のアンテナから空間に放射された電波は、四方に広がりながら空間を伝わっていく。こ の電波が受信側のアンテナで受信される。図2.1はこの様子を表した図である。この図が示すよ うに、電波は送信側であるA局のアンテナから放射され、受信側であるB局のアンテナへ到達 する。このように、一方のアンテナから空間に放射された電波が直接他方のアンテナへ到達する ような形態をとる電波の伝わり方を直接波という。直接波は、超短波帯以上の周波数の高い電波 の伝搬様態である。

2.2.2 地表波

送信側のアンテナから放射された電波が、地表面に沿って受信側のアンテナまで到達する電波 を地表波という。地表波は、長波と超長波のように波長が長い電波の伝搬様態である。地表面に 沿って伝搬するため、直接波よりも遠距離まで到達する性質があり、無線技術の黎明期には低い 周波数を用いた通信設備が盛んに作られた。現在では、後述する電離層反射波を利用することで 遠距離通信ができることが発見され、超長波通信はあまり使われなくなっている。

2.2.3 大地反射波

図2.2に示すように送信側 (A局) のアンテナから放射された電波がいったん地表面で反射さ れ、受信側 (B局) のアンテナに到達する電波伝搬の様態を大地反射波という。ちょうど大地を 鏡に見立てて、アンテナから光を放射したときに、大地で反射されて受信側に到達するのと同じ 伝わり方をする。

(10)

第 2 章 電波の性質

大地

A局 B局

図 2.2: 大地反射波

2.2.4 電離層で反射される電波

図 2.3: 電離層反射

地球を取り巻く周囲には電波を反射する電離層が存在する。この電離層は、太陽から放射され る紫外線によって高層の大気分子が電離して構成されたものであり、地表面に近いところから 順にD層、E層、F層と呼ばれている。電離層は季節、時刻、場所、太陽活動などの影響を受 け、高さや密度が変化する。

図2.3は電離層で反射される電波を波長で示した図である。短波のように周波数の高い電波は

(11)

F層またはE層で反射されて地表に戻ってくる。このとき、地表で大地反射が起こり再び電離層 へ電波が到達して反射する。この反射の繰り返しにより、短波は遠距離通信が可能なのである。

地表面に最も近いところにあるD層は、電波を反射するというよりも減衰させる働きが強い。

図2.3のように、中波はD層に吸収されてしまうため遠距離通信ができない。しかし、夜間時に はD層が消滅するため中波の電波はE層で反射されるようになり、遠距離まで到達するように なる。

超短波帯以上の周波数の電波はF層をも通過してしまうため、電離層反射が利用できず、直接 波または大地反射波による伝搬が主になる。したがって、超短波帯以上の周波数の電波はもっぱ ら見通し距離1の範囲における無線通信に限定される。

2.3 フェージング現象

一般に、さまざまな原因のためにおこる受信電界強度の変動をフェージングと呼ぶ。フェージ ング現象には次のような種類がある。

吸収性フェージング

電波は電離層で損失なく反射されるわけではなく、一部の電波は電離層の反射によって減衰す る。また短波はD層を通過するときに減衰を受ける。電離層は時々刻々とその電子密度が変化す るため、これらの減衰は時間とともに複雑な変化をする。したがって、受信側の電界強度も変化 することになり、フェージング現象が生じる。これを吸収性フェージングという。

干渉性フェージング

複数の経路を伝わって受信地点に到達した電波が、受信地点で干渉して生じるフェージング現 象である。電離層で反射されない超短波帯や極超短波帯の電波でも生じる。

偏波性フェージング

電波伝搬の途中で偏波面の回転が起こり、受信地点で異なる偏波面の電波が干渉して生じる フェージング現象である。

跳躍性フェージング

電離層で反射される限界の周波数付近の電波で起こりやすいフェージング現象である。例えば、

F層で反射されるかまたは通過するかのぎりぎりの周波数の電波は、反射されたり通過したりと

1直接波が伝わる距離のこと。

(12)

第 2 章 電波の性質

時間的な変動を生じる。この結果、受信電界の強度が大幅 (跳躍的) に変化する。

選択性フェージング

周波数が異なるとフェージングの影響が異なるが、選択性フェージングは振幅変調された両側 波帯振幅変調波の上側波と下側波のいずれかの一部分が減衰を受ける現象をいう。そのため、受 信信号のひずみが多くなり、音声通信などにおいては音質が劣化し明瞭度が低下する。

2.4 電波伝搬モデル

2.4.1 自由空間モデル

直接波のみが受信機に到達し、大気による減衰や、反射波、透過波、回折波などの干渉が全く ない空間を自由空間 (free space) と呼び、このような理想的な空間での伝搬を自由空間伝搬と呼 ぶ。自由空間伝搬に対する電界強度E0 (V/m) は式2.1で表され、一定の強さの電波を送信した 場合には、受信点での電界強度は送信点からの距離に反比例する。

E0 =

q

30P

d (2.1)

P : 等価等方放射電力(equivalent isotropically radiated power) (W) d : 送信アンテナからの距離 (m)

図 2.4: 自由空間モデル

2.4.2 2波モデル

自由空間伝搬はあくまで理想的な空間のことで、現実の通信では先に述べた直接波、透過波、

反射波、回折波等が合成された信号が受信される。最初に、先の自由空間伝搬を直接波と考え、

(13)

これに地面からの反射波が干渉する2波 (two-ray) モデルを考える。このような2波モデルの電 界強度Eは、E0 を基本として式2.2のようになる。

E = E0|1 +rexpj(2πl

λ +φr)|

= E0

s

1 +r2+ 2rcos(2πl

λ +φr) (2.2)

λ : 電波の波長 r : 地面の反射係数

l : 直接波と反射波の経路差 φr : 反射による位相遅れ

図 2.5: 2波モデル

(14)

第 3 章

アドホックネットワーク

3.1 アドホックネットワークとは

図 3.1: インフラストラクチャモード

現在、一般的に「無線LAN」と言って利用しているネットワークは、アクセスポイントと呼 ばれる無線基地局を必要とする無線ネットワークである (図3.1)。ノード間、もしくはノードと 外部ネットワークとのデータの送受信はすべて基地局を経由して行われる。このような接続形態 をインフラストラクチャモードという。

これに対して、アドホックネットワーク、もしくはアドホックモードと呼ばれるネットワーク は、アクセスポイントなどの中央集権ノードが存在しない、自律分散型の無線ネットワークであ る (図3.2)。ルーティング制御機構を持ち、マルチホップ型の通信を行うため直接電波の届かな

(15)

図 3.2: アドホックモード

い場所にあるノード間でも、隣接するノードを経由することでデータの送受信を行うことができ る。

3.2 メディアアクセス

3.2.1 CSMA

ネットワークに接続されているノードが、データの送信に先だって媒体を監視し、他のノード が送信を行っている間、自らの送信を見合わせることによって衝突を回避する手法をキャリアセ ンス (Carrier Sense)と呼ぶ。CSMA (Carrier Sense Multiple Access) とは、各ノードがこの手 法を用いて、1つの媒体を複数のノードで共有できるようにする方式である。

3.2.2 CSMA/CA

CSMA方式に自動的に衝突検出をする機構を加えたものをCSMA/CD (CSMA with Collision

Detection) と呼び、有線LANで適用されている。複数のフレームが衝突するとケーブル上の直

流成分が増加するので、これを検出することで自動化が実現できる。しかし、無線環境において は2.3節で解説したように、フェージング現象によって受信レベルが激しく変動するのでこの手 法を用いることはできない。そこで、衝突回避機構を備えたCSMAであるCSMA/CA (CSMA with Collision Avoidance)が適用されている。

CSMA/CA方式では、各ノードはまずキャリアセンスを行い、媒体がビジー状態であったら

送信を延期する。アイドル状態であると判断される場合はランダムな時間待ったのちに送信を行 う。このようにすることで、複数のノードが一斉にデータを送信することを防止している。デー

(16)

第 3 章 アドホックネットワーク

タが正しく送信されたかどうかは、受信側からのACK (Acknowledge) フレームが到着するかど うかで判断する。ACKフレームを受信できなかったら、所定の回数を限度としてデータの再送 を行う。

3.2.3 隠れ端末問題

図 3.3: 隠れ端末問題

送信アンテナから遠ざかると電波強度が低下するという性質によって、隠れ端末問題が発生す る。図3.3に示すように、ノードBはノードAとノードCが送信する電波を受信できるが、ノー ドAとノードCはお互いが送信する電波を受信できないような状態にあるとする。ノードCは ノードAのデータ送信を知ることができないので、ノードAがノードBにデータを送信してい る最中であっても、ノードCはチャネルがアイドル状態であると判断してノードBへのデータ 送信を開始してしまい、結果的に衝突が発生してしまう。これを隠れ端末問題と呼ぶ。

3.2.4 RTS/CTS

隠れ端末問題を解決するためには、受信ノードに隣接するすべてのノードにチャネルが使用中 であることを知らせる必要がある。IEEE802.11ではRTS (Request To Send) とCTS (Clear

To Send)の2つのメッセージを用いてこれを実現している。図3.4にRTS/CTS手法の概念を示

す。

まず、ノードAはノードBにRTSを送信する。すると、ノードBはCTSを送信してチャネ ルが空いていることを知らせる。このCTSメッセージはブロードキャストされるので、ノード AとノードCが傍受する。CTSを受け取ったノードAはノードBに対してデータの送信を開始

(17)

図 3.4: RTS/CTS

する。その間、ノードCは通信を遮断される。ノードAのデータ送信が完了するとノードBは ACKをブロードキャストし、データの受領を知らせる。

3.3 アドホックネットワークのルーティング

3.3.1 ルーティングプロトコルの分類

アドホックネットワークのルーティングプロトコルは、一般に、次に説明する2つの型に分類 される。

テーブル駆動型アプローチ テーブル駆動型のルーティングプロトコルは、ネットワーク上の各々 のノードから他のすべてのノードへの矛盾のない最新のルーティング情報を維持しようと する。各ノードはルーティング情報を格納するためのテーブルを1つ以上持ち、ネットワー クトポロジの変化に反応してネットワーク全体に経路の更新情報を伝送する。そうするこ とで、ネットワークビューの整合性を維持する。

(18)

第 3 章 アドホックネットワーク

オンデマンド型アプローチ このルーティングでは、送信元ノードが要求した時にのみ経路を作 成する。あるノードにおいて宛先への経路が必要になった時に、ネットワーク内で経路探 索プロセスを起動する。このプロセスは、経路が見つかるか、利用可能なすべての経路パ ターンを試し終えると終了する。いったん経路が発見、確率されると、宛先へのアクセス が不可能になるか経路が不必要になるまでは、何らかの手段によってその経路が維持され る。

テーブル駆動型 オンデマンド型

DSDV DSR

WRP TORA

CGSR AODV

STAR CVRP

RDMAR

表 3.1: アドホックルーティングプロトコルの分類

それぞれの型に属する具体的なプロトコルを表3.1に挙げる。それぞれのプロトコルの詳細は、

本論文における実験には直接関係しないのでここでは解説しない。

3.3.2 ルーティングプロトコルにおける問題点

ルーティングにおいて、送信元ノードから宛先ノードまでのパスが複数存在する場合には、何 らかの基準によって最も適切と思われる経路を選択する必要がある。表3.1に挙げたルーティン グプロトコルの多くは距離ベクトルに基づいたプロトコルであり、この場合の選択基準は最短パ スである。最短パスとは最小ホップ数、つまりリンク数が最小となるような経路のことを言う。

しかし、無線リンクは有線リンクとは違い、ノード間の距離が変化すると電波強度が変化し、

結果的にスループットが変化するという特性がある。ホップ数が多ければ平均的にノード間の距 離は近くなり、逆にホップ数が少なければ距離は遠くなる。すなわち、単純にホップ数が最小と なる経路が最適な経路とは言えないのである。本論文ではこの点に着目し、第4章で説明する実 験を行う。

(19)

実験概要

4.1 実験目的

本論文における実験では、アドホックネットワークにおいてスループットに変化を及ぼす原因 のうち「電波強度」と「ホップ数」の2点に着目し、それらがスループットに与える影響につい てシミュレータを用いた3種類の計測実験により調査を行う。

4.2 実験環境

4.2.1 実験に用いたマシン

実験に用いたコンピュータの仕様を表4.1に示す。

製品名 Dell Inspiron 2500

CPU Celeron 900MHz

メモリ 256MB

OS FreeBSD 5.3-RELEASE

シミュレータ GloMoSim 2.03 表 4.1: コンピュータの仕様

4.2.2 シミュレータの紹介

今回の実験ではGloMoSim (Global Mobile Information Systems Simulation Library) という シミュレータを使用した。GloMoSimはUCLAで開発されているツールであり、無線と有線の ネットワークをシミュレートし各種の計測を行うことができる。ネットワークの各レイヤにおい てシミュレート可能なプロトコルの一部を表4.2に示す。

(20)

第 4 章 実験概要

Layers Protocols

Data Link (MAC) CSMA / IEEE 802.11 / MACA

Network (Routing) AODV / Bellman-Ford / DSR / Fisheye / LAR scheme 1 / Static

Transport TCP / UDP

Application CBR / FTP / HTTP / Telnet

表 4.2: GloMoSimがシミュレートするプロトコル

CUIベースのツールであるため、操作はコマンドラインから行うが、図4.1のような通信状況 を可視化するGUIツールが付属している。

図 4.1: GloMoSimのGUIツール

なおGloMoSimに関する詳細な情報は、http://pcl.cs.ucla.edu/projects/glomosim/よ り入手することができる。

4.2.3 パラメータ設定

シミュレータにおける主要なパラメータについて設定内容を説明する。3種類の実験すべてに おいて共通である。

電波伝搬モデル

現実の状況に近づけるため2波モデルを使用する。

(21)

無線周波数

2.4GHz帯の周波数を使用する。

バンド幅

11Mbpsとする。

MACプロトコル

IEEE 802.11と同様のものを使用する。

ルーティングプロトコル

今回の実験ではノードを横一列に並べる。以下のルールにしたがって、ルーティングテー ブルを手動で作成する。

– 宛先が自身より右側のノードになっているパケットは右隣のノードに転送する。

– 宛先が自身より左側のノードになっているパケットは左隣のノードに転送する。

– 宛先が自身であるパケットは転送しない。

例として、左から順に0、1、2とノードが配置されている場合のルーティングテーブルは 以下のようになる。

自身のノード 宛先ノード 転送先ノード

0 1 1

0 2 1

1 0 0

1 2 2

2 0 1

2 1 1

表 4.3: ルーティングテーブル

4.3 実験

4.3.1 実験1 : ノード間の距離が変化したときのスループット測定

ノード間の距離が変化すると受信側での電波強度が変化する。このとき、スループットはどの ように変化するかを調査する。図4.2に示すように、ノードAからノードBへFTPで10MBの データを転送する。ノードAとノードBとの距離を1mずつ遠ざけていき、各状態におけるノー ドAのスループットを測定する。

(22)

第 4 章 実験概要

図 4.2: 実験1

4.3.2 実験2 : ホップ数が変化したときのスループット測定

図 4.3: 実験2

送信元ノードから宛先ノードまでのホップ数が変化したときに、スループットはどのように変 化するかを調査する。図4.3に示すように、ノードAからノードBへFTPで10MBのデータを 転送する。経由するノードの数を1つずつ増やしていき、各状態におけるノードAのスループッ トを測定する。ノードは等間隔 (10mおき) に配置する。

(23)

4.3.3 実験3 : ホップ数とノード間の距離が変化したときのスループット測定

図 4.4: 実験3

送信元ノードと宛先ノードの位置が固定されているとき、途中経由するノードの数が変化する とスループットはどのように変化するかを調査する。図4.4に示すように、ノードAからノード BへFTPで10MBのデータを転送する。ノードAとノードBの位置は固定したまま、経由する ノードの数を1つずつ増やしていく。ノードAとノードBとの距離は2kmとする。同一ホップ 数のなかでノードの配置をランダムに10回変化させ、それぞれの状態におけるノードAのスルー プットを測定し、その平均を求める。

(24)

第 5 章

測定結果と考察

5.1 測定結果

実験1〜3の測定結果をそれぞれ図5.1〜5.3に示す。なお、図5.2と図5.3の横軸は送信元ノー ドと宛先ノードを含めたすべてのノード数である。

0 200000 400000 600000 800000 1000000 1200000 1400000 1600000 1800000 2000000

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

Throughput [bps]

Distance [m]

図 5.1: 実験1の測定結果

(25)

0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000 900000 1000000

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

Throughput [bps]

The number of nodes

図 5.2: 実験2の測定結果

0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 140000 160000

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

Throughput [bps]

The number of nodes

図 5.3: 実験3の測定結果

(26)

第 5 章 測定結果と考察

5.2 考察

電波状態が悪化すると、フレームが消失しやすくなり再送回数が増える。結果的にスループッ トは低下する。実験1において、送信元ノードと宛先ノードとの距離が比較的近い間は、スルー

プットは1.87Mbps付近でほぼ一定である。しかし、200mを超えるとスループットは次第に低

下し始め、415mを超えると通信が不可能となった。また、176mから287mの間で一時的に相 対的なスループットの低下が見られる。これは、電波伝搬モデルが2波モデルであるため、この 付近でマルチパスによる電波の干渉が激しくなり、電波強度が低下したためである。この実験 から、送信元ノードと宛先ノードが離れていったとき、スループットは単調に低下するのではな く、一定の距離を超えると低下し始めるということがわかる。

一方、実験2において、ホップ数が増加したときのスループットは、10台と11台の間で向上 しているが、それ以外では単調に低下している。スループットが低下する原因は、RTS/CTS方 式によるハンドシェイクを行う回数の増加や、コリジョンの増加であると考えられる。すなわち、

有線リンクのように、ノード間の距離によってスループットがほとんど変化しない場合の最適な 経路は、ホップ数が最小の経路ということになる。

実験3で、送信元ノードの宛先ノードとの距離を2kmと大きくとったのは、ノード数の増加 によるノード間の距離の変化をできるだけ緩やかにするためである。ノード数6台から10台ま でスループットは向上し、最高で0.147Mbpsとなった。その後は、ノードをランダムに配置し ているため多少の増減はあるが、全体的にスループットは低下していく。この実験から、送信元 ノードと宛先ノードとの距離に対して、ノード数が比較的少ない場合 (これを「ノードが疎」と 呼ぶことにする) と、ノード数が比較的多い場合(これを「ノードが密」と呼ぶことにする) で、

スループット変化の状況が異なることがわかる。すなわち、ノードが疎な状態では、ホップ数の 増加によってスループットが向上し、ノードが密な状態では逆に低下すると言える。これは実験 1からも予想できる結果である。

(27)

結論

6.1 まとめ

本論文では、アドホックネットワークにおいてホップ数と電波強度に着目し、両者の変化によ りスループットがどう変化するかをシミュレータを使った3種類の測定実験により調査した。そ して、最適な経路選択をするためには両者を考慮する必要があるという結論を導いた。

最初に、2つのノード間の距離を変化させ、スループットの変化を測定した。距離が遠くなっ ていったとき、スループットは単調に低下するわけではなく、一定の距離を超えると低下し始め るという特徴がこの実験からわかった。

次に、ホップ数を変化させたときのスループット変化について調査した。ホップ数が増加する

と、RTS/CTS方式によるオーバーヘッドやコリジョンの増加によって、基本的にスループット

は単調に低下していく。

最後に、送信元ノードと宛先ノードの位置を固定し、その間に経由するノードを配置し、ノー ド数を変化させたときのスループットの変化を測定した。これは、実際に経路が複数存在する状 況を想定した実験である。この実験から、ノードが疎な状態ではホップ数の増加によってスルー プットは向上し、ノードが密な状態では低下するということがわかった。

3つの実験により、ホップ数の増加によってスループットが向上する場合がある、すなわち、

ホップ数が最小となる経路が必ずしも最適な経路ではない、ということが証明された。また、こ の状況はノードが疎な状態で発生しやすく、最適な経路選択をするためにはホップ数と電波強度 の両者を考慮しなければならない。

6.2 今後の課題

本研究によって、最適な経路選択をする上でホップ数と電波強度の両者を考慮する必要性が認 められた。しかし、この提案を活用するためには、どの経路が最適であるかを判断するための具

(28)

第 6 章 結論

体的な評価方法を確立しなければならない。そもそも経路選択とは、宛先ノードまでの経路が作 成された上で、それが複数存在した場合に一番最後に行う作業であり、この提案を実際にルーティ ングプロトコルに組み込むとなると、さらに多くの問題が発生する。

また、スループットに変化を及ぼす原因は他にも多数存在する。例としてモビリティが挙げら れる。アドホックネットワークは、通信中もノードが絶えず移動することが前提となっている。

ノードの移動による電波強度の変化もさることながら、ある時間に通信していたノードが、次の 瞬間には通信不能な場所へ移動していることも考えられる。この場合は、直ちに宛先ノードまで の経路を作成しなおす必要がある。すなわち、多少通信状況がよくなくても、長時間移動しない ノードを選択したほうが高いスループットが得られるという状況が発生するかもしれない。この ようなことから、ノードの移動特性を考慮するということも最適な経路を選択する上で必要であ る。

有線リンクと無線リンクの違いを考慮しながら、スループットに変化を及ぼす様々な要因に着 目し、より最適な経路選択法を研究していきたいと思う。

(29)

本学士論文の作成にあたり日頃より御指導を頂いた早稲田大学理工学部の後藤滋樹教授に深く 感謝致します。さらに、研究テーマの決定に際して相談に乗っていただいた鈴木和明氏に深く感 謝致します。最後に、多大なる御協力を頂きました後藤研究室の諸氏に感謝致します。

(30)

参考文献

[1] W. Richard Stevens 著, 橘康雄 訳, 井上尚司 監訳『詳解TCP/IPプロトコル』ピアソン・

エデュケーション, 2000.

[2] C-K.Toh 著, 構造計画研究所 訳『アドホックモバイルワイヤレスネットワーク –プロトコ

ルとシステム–』構造計画研究所, 2003.

[3] 阪田史郎 編著『ユビキタス技術無線LAN』オーム社, 2004.

[4] 松下温, 中川正雄 編著, 寺岡文男, 中島達夫, 宮澤正幸, 若尾正義, 小澤和幸, 軒野仁孝 共著

『ワイヤレスLANアーキテクチャ』共立出版, 1996.

[5] 松下温 監修,重野寛 著『〜ネットワーク・ユーザのための〜 無線LAN技術講座』ソフト・

リサーチ・センター, 1994.

[6] 高橋寛 監修,山崎靖夫 著『絵ときでわかる無線技術』オーム社, 2002.

[7] Charles E. Perkins 著『AD HOC NETWORKING』Addison-Wesley, 2001.

[8] Bruce Blinn 著, 山下哲典 訳『入門UNIXシェルプログラミング』ソフトバンクパブリッシ

ング株式会社, 1999.

[9] RFC3626 : 『Optimized Link State Routing Protocol (OLSR)』

[10] 浜崎慎一郎『無線LANにおけるスループット低下の要因の分析』早稲田大学理工学部情報 学科2003年度卒業論文.

[11] 橋口怜司『無線リンクにおけるUDPの最適パケットサイズ』早稲田大学理工学部情報学科 2003年度卒業論文.

[12] 福田浩章『2.4GHz帯無線リンクにおける最適パケットサイズの検討』早稲田大学理工学部 情報学科2002年度卒業論文.

(31)

[13] 八幡淳『無線LANにおける負荷分散を目的としたアクセスポイント最適選択法』早稲田大 学理工学部情報学科2002年度卒業論文.

[14] 足立桂一『無線LANにおけるRTS最適閾値の検討』早稲田大学理工学部情報学科2002年 度卒業論文.

[15] 廣瀬俊哉『無線LANにおけるアクセスポイントの最適選択法』早稲田大学理工学部情報学 科2001年度修士論文.

[16] “About GloMoSim”. http://pcl.cs.ucla.edu/projects/glomosim/

[17] “FreeBSD Hypertext Man Pages”. http://www.freebsd.org/cgi/man.cgi

(32)

付録 A

GloMoSim の設定ファイル

実験で使用したGloMoSimの設定ファイルである、config.inの内容を以下に示す。

SIMULATION-TIME 1D

SEED 1

TERRAIN-DIMENSIONS (2000, 2000) NUMBER-OF-NODES 2

NODE-PLACEMENT FILE

NODE-PLACEMENT-FILE ./nodes.input MOBILITY NONE

MOBILITY-POSITION-GRANULARITY 0.5 PROPAGATION-LIMIT -111.0 PROPAGATION-PATHLOSS TWO-RAY PROPAGATION-FADING-MODEL RAYLEIGH NOISE-FIGURE 10.0

(33)

TEMPARATURE 290.0

RADIO-TYPE RADIO-ACCNOISE RADIO-FREQUENCY 2.4e9

RADIO-BANDWIDTH 11000000

RADIO-RX-TYPE SNR-BOUNDED RADIO-RX-SNR-THRESHOLD 10.0

RADIO-TX-POWER 15.0 RADIO-ANTENNA-GAIN 0.0 RADIO-RX-SENSITIVITY -91.0 RADIO-RX-THRESHOLD -81.0 MAC-PROTOCOL 802.11

NETWORK-PROTOCOL IP

NETWORK-OUTPUT-QUEUE-SIZE-PER-PRIORITY 100

ROUTING-PROTOCOL STATIC STATIC-ROUTE-FILE routes.in APP-CONFIG-FILE ./app.conf

APPLICATION-STATISTICS YES

TCP-STATISTICS YES

UDP-STATISTICS YES

ROUTING-STATISTICS YES

(34)

付録 A GLOMOSIMの設定ファイル

NETWORK-LAYER-STATISTICS YES MAC-LAYER-STATISTICS YES RADIO-LAYER-STATISTICS YES CHANNEL-LAYER-STATISTICS YES MOBILITY-STATISTICS YES

GUI-OPTION NO GUI-RADIO NO GUI-ROUTING NO

参照

関連したドキュメント

う東京電力自らPDCAを回して業 務を継続的に改善することは望まし

今回の SSLRT において、1 日目の授業を受けた受講者が日常生活でゲートキーパーの役割を実

 模擬授業では, 「防災と市民」をテーマにして,防災カードゲームを使用し

・発電設備の連続運転可能周波数は, 48.5Hz を超え 50.5Hz 以下としていただく。なお,周波数低下リレーの整 定値は,原則として,FRT

・発電設備の連続運転可能周波数は, 48.5Hz を超え 50.5Hz 以下としていただく。なお,周波数低下リレーの整 定値は,原則として,FRT

使用済燃料プールからのスカイシャイン線による実効線量評価 使用済燃料プールの使用済燃料の全放射能強度を考慮し,使用

経済特区は、 2007 年 4 月に施行された新投資法で他の法律で規定するとされてお り、今後、経済特区法が制定される見通しとなっている。ただし、政府は経済特区の

 今年は、目標を昨年の参加率を上回る 45%以上と設定し実施 いたしました。2 年続けての勝利ということにはなりませんでし