液状化地盤において杭頭半剛接合構法を採用した建物の
地震時挙動に関する解析的検討
石﨑 定幸
*1・長尾 俊昌
*1・時松 孝次
*2Keywords : semi-rigid pile head connection method, liquefaction, 2-D effective stress analysis, embedment, centrifuge model test 杭頭半剛接合構法,液状化,2次元有効応力解析,根入れ,遠心模型実験
1. はじめに
合理的な杭頭部の接合方法として杭頭半剛接合構法 (以下,本構法と称す)を開発し,多くのプロジェク トに実施適用している 1)。本構法は,杭頭部の回転を 許容することにより杭頭接合部への応力の集中をさけ, 杭基礎の耐震性を向上させる構法である。本構法を採 用することにより,杭だけでなく基礎梁の断面積を縮 小することが可能となり,コスト縮減や掘削残土の低 減等のメリットがある。 筆者らは,液状化地盤における杭頭半剛接合構法の 適用性を検証する目的で,地盤-杭基礎-建物系の遠心 模型振動実験を実施した。その結果,液状化地盤にお いて杭頭半剛接合構法を採用した場合,剛接合とした 場合と比べて液状化するに従い杭基礎の水平抵抗がか なり小さくなるため,以下に示す効果があることを確 認した。第一に,建物応答が増加した際に,杭頭回転 角の増加とともに地盤と建物の連成系が長周期化する 傾向があり,建物の加速度言い換えれば建物からの慣 性力が小さくなる効果があった。第二に,杭基礎が地 盤変形に追従しやすくなるとともに,建物慣性力の増 加にともない基礎の変形が増加する。その時,基礎根 入れ部の慣性力に対して前面側に作用する受動土圧が 大きくなり,外力として根入れ部に作用する地震時土 圧が小さくなる,あるいは建物慣性力に対して抵抗力 として働く効果があった。2つの効果が組み合わさり, 半剛接合とした場合の杭頭へ作用する水平力は剛接合 とした場合と比較してかなり小さくなった。その結果, 杭頭半剛接合構法の杭応力低減効果は,非液状化地盤 と比べて液状化地盤の方がより一層高まる可能性を示 した 2)。これらの効果は地盤条件や建物周期等により 異なるものと推測され,動的相互作用の効果を設計に 取り入れるためには,より一層の実現象の解明と,適 切な解析手法や耐震設計手法の構築が必要である。 本論文では,杭頭半剛接合部の回転挙動を軸力依存 型の回転ばねでモデル化する方法を提案し,それを組 み込んだ2次元有効応力解析手法の有効性を前述の遠 心模型実験の数値シミュレーションから検証する。次 に,液状化地盤において大きな変動軸力が生じる 12 階 建ての実大建物を想定した解析を実施し,杭頭半剛接 合構法の杭被害低減効果と建物全体の耐震安全性に与 える影響について検討する。2. 遠心模型振動実験
2.1 実験方法 遠心加速度 50g 場で,液状化地盤-杭基礎-建物系 の模型振動実験を実施した 2)。図-1 に試験体を示す。 以下,実物スケールで説明する。場所打ち杭(2×2 本)に支持される RC 造の低層建物を想定した。地盤 構成は,底面から密な下層,その上に液状化層,さら に非液状化層である表層とした。液状化層は豊浦標準 砂を用い相対密度(Dr)60%で作製し,地下水位は液 状化層上端より若干高くした。表層はケイ砂3号で作 製した。実験では,建物の加速度,杭のひずみ,杭頭 の左右における基礎根入れ部(以下,フーチングと称 す)との相対変位(杭頭回転角算出のため),フーチン グの左右に生じる土圧等を計測した。試験体は,杭頭 を剛接合とした試験体(Model R)と半剛接合とした試験 *1 技術センター 建築技術研究所 建築構工法研究室 *2 東京工業大学体(Model S)の2つとした。入力地震波は,最大加速度 を 200gal に調整した臨海波とした。 図-2 に建物に作用する水平力の模式図を示す。建物 慣性力は上部構造物とフーチングの慣性力の和とした。 フーチングには,左右の加振直交方向側面に土圧(PEL, PER)が作用していた。フーチングの加振方向と平行す る側面にはテフロンシートを貼り,底面と地盤の間に は隙間を設け,側面・底面摩擦力を無視できるように した。従って,フーチングを見かけ上押引きする土圧 合力は左右の土圧の差(PEL - PER)により求めた。杭 頭に作用する水平力は建物慣性力と土圧合力の和であ り,それが杭頭せん断力の合計と釣り合う。 2.2 実験結果 実験結果の概要を説明するため,図-3 に,液状化前 (t=0~13.5 秒),液状化過程(13.5~25.0 秒),液状化 後(25 秒以降)における建物慣性力と土圧合力の関係 を示す。また,各時刻において杭頭曲げモーメントが ピークを示す時刻の曲げモーメント分布を図-4 に示す。 液状化前における建物慣性力と土圧合力の関係は, 両試験体ともに負の相関にあり,土圧合力は建物慣性 力に対して抵抗力として作用していた。同時刻におけ る Model S の曲げモーメント分布は,Model R と比べ て,杭頭では小さく地中部では大きくなるが,深さ方 向の最大曲げモーメントは小さくなっていた(図-4(a))。 液状化過程では,負の相関にあった建物慣性力と土 圧合力の関係に位相差が生じ,履歴ループが円形に近 くなっていた(図-3(b))。同時刻における曲げモーメン ト分布では,半剛接合とした場合,液状化前と同様に 地中部では剛接合より大きくなるが,深さ方向の最大 曲げモーメントは小さくなることが確認できた。(図-4(b))。 一方,液状化後における Model R では,建物慣性力 と土圧合力の関係に正の相関があり,土圧合力が建物 慣性力と同一方向に作用する状況が明確に確認できた (図-3(c))。その結果,杭頭へ作用する水平力が増加し, 杭頭曲げモーメントが液状化過程と比べて 1.5 倍程度 に増加していた(図-4(c))。一方,Model S では,建物 図-1 地盤-杭基礎-建物模型
Fig.1 Model of soil-pile-structure system
図-2 建物と杭頭に作用する水平力
Fig.2 Horizontal forces acting on structure and pile heads
図-3 実験結果(建物慣性力と土圧合力の関係) Fig.3 Experimental results (relations between inertia forces and
total earth pressures)
図-4 実験結果(杭の曲げモーメント分布) Fig.4 Experimental results (distributions of bending moments
along piles) 21 0 フーチング <平面図> 560 1 0 0 1 3 2 Pile-2 Pile-4 Pile1 Pile3 ゴムシート 変位計 8 0 液状化層 豊浦砂(Dr60%) 下層 豊浦砂(Dr90%) 上部構造物(スチール) フーチング (アルミ) 板バネ(スチール) 16 杭(ステンレス管) φ16mm,t=1mm <立面図> モデルスケール (単位:mm), ( ):実大スケール ピン接合 (11.0m) (7.0m) (5.0m) (2.5m) 表層 ケイ砂3号 受圧板+ ロードセル(4個) (13.2m) 受圧板+ ロードセル 140 14 0 表層 ケイ砂3号 5 8 200 100 Height 300 400 11 0 ひずみゲージ 水圧計 加速度計 相対変位計 ロードセル ロードセル 受圧板 フーチング
Superstructure Inertia Force:FIS
Footing Inertia Force:FIF
FI =FIS+FIF Earth Pressure (Lefe Side) : PEL H=ΣQi Shear Force at Pile Head : Qi Earth Pressure (Right Side) : PER
PE :Total Earth Pressure FI :Inertia Force from
Structure
(建物慣性力)
PE =PEL-PER (土圧合力)
H=FI+PE
H :Total Horizontal Force at Pile Heads (杭頭へ作用する水平力) -1.2 0 1.2 -0.6 0 0.6 In e rtia F o rce (M N )
Total Earth Pressure (MN) t=0.0 -13.5s (a) Before Liquefaction
-0.6 0 0.6
Total Earth Pressure (MN) t=13.5
-25.0s
(b) Process to Liquefaction
-0.6 0 0.6
Total Earth Pressure (MN) t=25.0 -120.0s (c) During Liquefaction Model R Model S -0.5 0 0.5 0 2 4 6 8 10 12 Bending Moment (MN*m) Height (m) (a) T=11.8s Before Lique-faction Model R (11.75s) Model S (11.80s) -4 0 4 Bending Moment (MN*m) Model R (22.40s) Model S (18.73s) (b) Process to Liquefaction -4 0 4 Bending Moment (MN*m) (c) During Liquefaction Model R T=80.4s Model S T=80.9s Model R (80.48s) Model S (80.95s) Pile1
慣性力と土圧合力の関係に依然として負の相関があり, 土圧合力が建物慣性力に対して抵抗力として作用した。 その結果,液状化後において Model S の杭頭へ作用す る水平力の最大値は,Model R と比較して4割程度と な り , 杭 の 地 中 部 に 生 じ る 最 大 曲 げ モ ー メ ン ト も Model R と比べて小さくなった。剛接合に対する半剛 接合の杭の最大曲げモーメントの比は,液状化前では 7~8 割,液状化過程では 6~8 割,液状化後では 3 割 程度であり,液状化の進行とともに最大応力低減効果 が高まる結果が得られた。これは,杭頭接合条件によ る杭基礎の水平抵抗の違いに起因しているものと考え られた。すなわち,剛接合とした場合には,杭基礎の 水平抵抗が大きいため,基礎根入れ部に作用する地震 時土圧が外力として働くなど液状化による地盤変形の 影響を受けやすかった。一方,半剛接合とした場合に は液状化するに従い水平抵抗が小さくなるため,連成 系が長周期化したり地盤変形に追従しやすくなり,杭 基礎に作用する外力が増加しにくかった。液状化後に 杭応力が増加した Model R と液状化の影響を受けにく かった Model S の違いが顕著に現れ杭頭半剛接合構法 の最大応力低減効果が高まったと考えられた。
3. 2次元有効応力解析による遠心模型実験
のシミュレーション解析
3.1 解析方法 図-5 に模型実験に対する解析モデルを示す。地盤の 有効応力モデルの構成則は,Stress Density Model(SDモデル)3,4)である。飽和地盤である液状化層と下層を SD モデルによりモデル化する。解析定数は,豊浦砂の モデル化を行っている文献 4)に準じて設定する(表-1)。 図-6 に液状化強度曲線を示す。表層の非液状化層のせ ん断応力とひずみの関係は Ramberg Osgood モデルによ りモデル化する。表層の S 波速度は,微小加振時の加 速度伝達関数から 80m/s と推定する。基準ひずみは 0.001,最大減衰定数は 0.22 とする。 杭頭半剛接合部は,逐次軸力に依存して変化する回 転ばねでモデル化を行う(図-7)。その骨格曲線は双曲 線関数とする。双曲線関数の初期剛性は,杭頭接合部 の曲げ試験に合うように設定する。漸近値には,次式 で与えられる最大抵抗曲げモーメント(Mu)を用い, 変動軸力の影響を逐次考慮する。 (1) 表-1 有効応力モデルの解析パラメータ Table 1 Model parameters for liquefiable layers
間隙 比 弾性パラメータ ダイレイタンシーパラメータ A ポワソン比 n μ0 M Sc 液状化層 0.76 200 0.2 0.6 0.22 0.607 0.0055 下層 0.69 200 0.2 0.6 0.22 0.607 0.0055 図-6 液状化強度曲線
Fig.6 Models of liquefaction residence curves
図-7 杭頭接合部の回転性能のモデル化 Fig.7 Models of rotational characteristics of pile heads
図-8 入力地震波 Fig.8 Input motion 図-5 2次元有効応力解析モデル
Fig.5 Finite element mesh for 2-D effective stress analysis
1 10 100 0 0.1 0.2 0.3 0.4 繰返し回数 液状化層(σ'z0=50kPa) 下層(σ'z0=80kPa) せん断応力比(τ d /σ' z0 ) -2 0 2 -0.04 0 0.04 B e n d in g Mo m e n t (M N *m) Θ (rad) (a) Model R -0.04 0 0.04 Θ (rad) N=4MN N=2.5MN N=1MN (b) Model S 曲げ試験 解析 -3 0 3 0 20 40 60 80 100 120 Acc. Input Motion Time (s) Model R Model S (m/s 2) 下層 液状化層 28 表層 1 4 .5 4. 5 杭 上部構造物 地盤と杭の 相互作用ばね 杭頭接合部 の回転ばね 単位:m 杭 繰 返 し 境 界 繰 返 し 境 界
N
D
M
u=
/
2
×
ここで,D:杭径,N:杭頭軸力である。履歴特性は, 実挙動と対応させ,非線形弾性とする。半剛接合部の 水平と鉛直方向については,杭とフーチングの節点変 位を等しくした。 杭と建物は線形梁要素を用いてモデル化する。地盤 の奥行幅はフーチング幅とする。その際,杭はフーチ ング幅の地盤と力のやり取りを行うが,液状化後地盤 が杭をすり抜ける現象を評価できないため,杭に作用 する地盤反力が実際より大きくなる可能性がある。そ こで,液状化層と下層では,地盤-杭間に過剰間隙水 圧の上昇とともにばね反力が低減するばね要素を導入 する 5)。フーチングの左右側面は地盤と節点を共有さ せ,底面は共有させない。モデルの側方は繰返し境界 とし,底面は固定とする。構造物の減衰定数は,剛性 比例型として連成系の1次固有周期に対して 3%とする。 土槽底面の加速度記録(図-8)をモデルに入力する。 3.2 解析結果 図-9,10 に建物加速度,フーチングの振動台に対す る相対変位,杭頭の曲げモーメント,及び液状化層の 過剰間隙水圧について解析と実験結果の比較を各試験 体について示す。高さ7mにおける過剰間隙水圧は初 期有効上載圧に達し,液状化した状況をある程度再現 している。解析結果における建物加速度は,50 秒付近 まで,実験より大きくなっている。それ以降では, Model R の建物加速度を比較的良く再現しているが, 実験結果において Model S の建物加速度が Model R よ り小さくなる状況は十分に再現できておらず,解析結 果における Model S の建物加速度は実験より大きい。 図-11,12 に建物慣性力と土圧合力の関係を示す。液 状化前では,解析結果は両者の傾きを良く再現してい る。また,50s 以降では,Model R では土圧合力が建物 慣性力と同一方向に作用し,Model S では依然として 抵抗力として作用している状況を良く再現している。 図-13 に,杭頭接合部の曲げモーメント(M)と回転 角(θ)の関係を示す。解析結果は,両試験体の杭頭 接合部の挙動を良く再現している。図-14 に,杭頭曲げ モーメントがピークを示す時刻の杭の曲げモーメント 分布を示す。また,表-2,3 に同時刻の建物慣性力,土 圧合力,及び杭頭へ作用する水平力を示す。実験結果 の Model S では,同時刻の後方杭(Pile 1)において地盤 変形の影響が大きく,その杭頭水平力が前方杭(Pile 2) と比べてかなり小さかった 6)。そのため,表-3 の杭頭 図-9 解析より得られた主要な時刻歴(Model R) Fig.9 Time histories of seismic responses (Model R)
図-11 建物慣性力と土圧合力の関係(Model R) Fig.11 Relations between inertia force and total earth pressure
(Model R)
図-10 解析より得られた主要な時刻歴(Model S) Fig.10 Time histories of seismic responses (Model S)
図-12 建物慣性力と土圧合力の関係(Model S) Fig.12 Relations between inertia force and total earth pressure
(Model S) -1.5 0 1.5 Acc. ( m/s 2) (a) Superstructure 93-98s 77-83s 50-55s -15 0 15 Dis. (cm) (b) Footing -3 0 3 (c) Pile2 Moment (MN*m ) 0 80 0 20 40 60 80 100 120 E.P.W.P. (kPa) Time (s) (d) Soil (Height:7.0m) Observed Simulated Model R σvo' -1.5 0 1.5 -0.75 0 0.75 In er ti a F or ce (M N )
Total Earth Pressure (MN) Before Liquefaction
(t=0.0-13.5s) (a)
-0.75 0 0.75 Total Earth Pressure (MN)
During Liquefaction (b) Observed Simulated Model R 45.33s 80.48s (45.0-120.0s) -1.5 0 1.5 Acc. ( m/s 2) (a) Superstructure 93-98s 77-83s 50-55s -15 0 15 Dis. (cm) (b) Footing -3 0 3 Moment (MN*m ) (c) Pile 2 0 80 0 20 40 60 80 100 120 E.P.W.P. (kPa) (d) Soil (Height:7.0m) Time (s) Observed Simulated Model S σvo' -1.5 0 1.5 -0.75 0 0.75 In er ti a F or ce (M N )
Total Earth Pressure (MN) (a) Before Liquefaction
(t=0.0-13.5s)
-0.75 0 0.75
Total Earth Pressure (MN) (b) Observed Simulated During Liquefaction (t=50.0-120.0s) Model S 80.95s 80.13s
に作用する水平力が解析結果と比べて半分程度となっ ている。解析結果の建物慣性力は実験より大きい。し かし,Model S では,土圧合力が建物慣性力に対して 抵抗力として作用し,杭頭へ作用する水平力が,Model R と比べて大きく低減する状況をある程度再現してい る。その結果,Model S の地中部最大曲げモーメント は,Model R と比べて極端に大きくならず,実験結果 の曲げモーメント分布を良く再現している。解析より 得られた Model S と Model R の最大曲げモーメントの 比は,液状化前7~8割,液状化過程5割,液状化後 4割程度であり,最大応力低減効果は実験同様に液状 化とともに高まっている。以上のことから,本解析手 法により,液状化地盤で杭頭半剛接合構法を採用した 杭基礎建物の地震時挙動や,半剛接合構法を採用する ことにより杭頭へ作用する水平力が小さくなり杭の最 大応力低減効果が高まる現象を良く再現できると考え られる。 3.3 基礎根入れ部に外力として作用する地震時土圧 が小さくなるメカニズム 図-15 に解析結果における杭-フーチングおよび地盤 の変位分布(Model R:45.33s,Model S:80.13s)を示 す。地盤の変位は,根入れ部の直近ではなく,解析モ デルの左右境界部における値であるため,土圧合力と 直接は対応していない。 地盤変位は,高さ 5m 以下の下層内では比較的小さ いが,高さ 5m~8m にかけて急激に増加し,高さ 7m 付近から杭変位より大きくなっている。Model R の杭 変位は,杭頭を剛接合としているため,高さ 7m付近 から杭頭にかけて増加量が減少し,フーチングの変位 は表層地盤の変位より小さくなっている。一方,Model S の杭変位は下端から直線的に増加し杭頭付近で表層 地盤とほぼ等しくなっている。すなわち,Model R で は,杭基礎の水平抵抗が大きいため,表層地盤の変形 に抵抗しているのに対し,Model S の杭基礎は表層地 盤に追従して動く状況が確認できる。このことが,土 圧合力が,剛接合とした場合には建物慣性力と同一方 向,すなわち外力として作用したのに対し,半剛接合 とした場合には建物慣性力と逆方向,すなわち抵抗力 図-13 杭頭の M-θ関係(Model R と Model S)
Fig.13 Relations between M and θ at pile heads (Model R and Model S)
図-14 液状化後における杭の曲げモーメント分布 (Model R と Model S)
Fig.14 Distributions of bending moment along piles (Model R and Model S)
表-2 建物慣性力,土圧合力,及び杭頭へ作用する水平力 (Model R)
Table 2 Inertia force from structure, total earth pressure, and total horizontal force at pile heads (Model R)
実験(80.48s) 2次元FEM(45.33s) 建物慣性力 622kN ポワソン比 n 990kN M Sc 土圧合力 476kN 0.2 0.6 236kN 0. 0.0055 杭頭へ作用する水平力 0.69 1098kN 0.2 0.6 1226kN 0.607 0.0055 表-3 建物慣性力,土圧合力,及び杭頭へ作用する水平力 (Model S)
Table 3 Inertia force from structure, total earth pressure, and total horizontal force at pile heads (Model S)
実験(80.95s) 2次元FEM(80.13s) 建物慣性力 350kN ポワソン比 n 659kN M Sc 土圧合力 -116kN 0.2 0.6 -161kN 0. 0.0055 杭頭へ作用する水平力 0.69 236kN 0.2 0.6 498kN 0.607 0.0055 図-15 下部構造物と地盤の変位分布
Fig.15 Distributions of displacements of pile, footing and soil
-4 0 4 -0.01 0 0.01 B e n d in g Mo m e n t (M N *m) Θ (rad) Pile 2 Compressed Side Tensile Side Observed Simulated Model R -0.01 0 0.01 -4 0 4 Θ (rad) Pile 2 Observed Simulated Compressed Side Tensile Side B e n d in g Mo m e n t (M N *m) Model S -3 0 3 0 2 4 6 8 10 12 Bending Moment (MN*m) He ig h t (m ) Pile2 Model R Observed Simulated t=80.48s t=45.33s -3 0 3 0 2 4 6 8 10 12 Bending Moment (MN*m) He ig h t (m ) Pile2 Model S Observed Simulated t=80.95s t=80.13s 0 0.05 0.1 0 5 10 15 Displacement (m) H e ig h t (m ) Model R
Pile 2 & Footing
Soil t=45.33s Footing 0 0.05 0.1 0 5 10 15 Displacement (m) Model S
Pile 2 & Footing
Soil t=80.125s Footing H e ig h t (m )
として作用した要因と考えられる。
4. 大きな変動軸力が生じる実大建物を想定
したシミュレーション解析
4.1 建物概要と解析方法 本章では,実験で考慮することができなかった大き な変動軸力の影響や,建物や杭体の非線形性の影響を 検討するため,液状化地盤に建ち杭に引張軸力が生じ る実大建物を想定し,杭頭を半剛接合とした場合と剛 接合とした場合のシミュレーション解析を行い,半剛 接合構法の杭応力低減効果と建物の耐震安全性につい て検討する。 建物は,液状化地盤に建つ地上 12 階耐震壁付き RC ラーメン構造(2×2スパン,スパン長=7m)であ り,杭は場所打ちコンクリート杭(長期軸力 5,360kN, 軸部径 1.2m,鉄筋比 2%,長さ 24.5m)である。建物の 階高は 3.5m とし,基準階の重量は 12kN/m2,1 階は 20kN/m2とする。建物周期は,高さから Tb=0.84s とす る。図-16 に想定した地盤の概要を示す。地表から,表 土,液状化の検討対象層である沖積砂層(沖積砂層-1・2),軟弱なシルト層,比較的密な沖積砂層,支持 層とした洪積砂礫層で構成されている。フーチング底 は深度 2.5m であり,地下水位は深度 3m とする。 図-17 に2次元 FEM の解析モデルを示す。沖積砂層 1・2は SD モデルによりモデル化し,図-18 にそれら の液状化強度曲線を示す。液状化層では,地盤-杭間に 地盤ばねを設ける 5)。非液状化層は,せん断応力-ひず み関係を Ramberg Osgood モデルによりモデル化する。 基準ひずみと最大減衰定数は,砂質土では 0.001・0.24, 図-18 液状化強度曲線 Fig.18 Models of liquefactionresistance curves
図-19 建物の非線形性のモデル化 Fig.19 Model of nonlinearity of
superstructure
図-20 半剛接合部のモデル化 Fig.20 Models of rotational
characteristics of pile heads
図-21 杭体のモデル化 Fig.21 Model of nonlinearity of piles
図-22 入力地震波 Fig.22 Input motion 図-16 想定した地盤の概要
Fig.16 Soil Profile
図-17 実大建物の解析モデル Fig.17 Finite element mesh of a building and soil
1 10 100 0 0.1 0.2 0.3 0.4 繰返し回数 せん断応力比(τ d /σ' z0 ) 沖積砂層-1 (σ'z0=60kPa) 沖積砂層-2 (σ'z0=100kPa) 層間変形 層せん断力 K=K0/100 Qy Qcy δy K 0 δy:降伏時の層間変形 =階高/150 Qcy:ひび割れ時の耐力 =1/3×Qy Qy:降伏せん断耐力 0 1 2 3 4 0 0.01 0.02 0.03
Rotation Angle (rad)
B e n d in g Mo m e n t (M N*m ) 断面解析 解析モデル N=12000kN N=8000kN N=6000kN N=4000kN N=2000kN N=0kN N-1500kN N-3000kN 0 1 2 3 4 5 0 0.005 0.01 0.015 Curvature(1/m) B e n d in g M o m e n t (M N *m ) 断面解析 解析モデル N=12000kN N=4000kN N=2000kN N=0kN N-1500kN N-3000kN N=10000kN N=8000kN N=6000kN Mu My Mc :ひび割れ :降伏 :終局 -4 0 4 0 20 40 60 80 100 120 Acc. Input Motion Time (s) (m/s 2 ) 深度 (m) 25 洪積砂礫層 (工学的基盤) 30 沖積砂層-3 土質 0 20 15 10 5 表土 (砂) 沖積砂層-1 (液状化層) 沖積砂層-2 (液状化層) 沖積シルト層 1.50 2.00 密度 (t/m3) 0 500 Vs (m/s) 1120 55 2 30 525 3 .0 m 12 .0 m 27 . 0m 24 0 12 .0 m 56.0m 繰 返 し 境 界 繰 返 し 境 界 杭頭接合部 の回転ばね 地盤と杭の 相互作用ばね 液状化層 Pile-1 (L=24m) Pile-2 (L=24m) Pile-3 (L=24m)
粘性土では 0.002・0.22 とする。 建物は質点系の等価せん断型モデルによりモデル化 を行い,転倒モーメントが杭基礎に伝達されるよう, 曲げ剛性は十分に大きくする。各層に設けるせん断ば ねの降伏せん断耐力は,ベースシアを 0.45 とした Ai 分布により設定する。各層の初期せん断剛性は,高さ 方向の剛性比を耐力比と等しくし,解析モデルの1次 周期が建物周期と等しくなるように設定する。図-19 に 示すように,せん断ばねの非線形特性はトリリニアモ デルによりモデル化し,履歴特性は武田モデルとする。 基礎梁は剛な梁要素でモデル化する。 半剛接合部は,接合面の径を 800mm とし,引張軸力 が生じるため,断面中央部に芯鉄筋(鉄筋比 1.1%)を導 入する 1)。図-20 に,半剛接合部の曲げモーメント-回 転角の関係を示す。実物では,フーチングや杭が RC 部材のため,めり込みが杭頭部の回転性能に大きな影 響を与える。そのため,今井ら 7)のめり込みを考慮し た理論に基づき断面解析を行い,逐次軸力に依存して 変化するトリリニアモデルによりモデル化を行う。そ の履歴特性は非線形弾性とする。杭は梁要素によりモ デル化する。その曲げモーメント-曲率の関係は,逐 次軸力に依存するテトラリニアモデルとし(図-21), その履歴特性は武田モデルとする。杭の先端はピン支 持とする。構造物の減衰定数は,剛性比例型として, 連成系の1次固有周期に対して 3%とする。入力地震波 は人工地震波とし,応答スペクトルは建告 1461 号に定 められている極めて稀に発生する地震動,位相特性は 八戸波 NS 成分とする(図-22)。 4.2 解析結果 図-23 に液状化後において杭頭曲げモーメントが最大 値を示す時刻の杭の曲げモーメント分布,表-4 に同時 刻の建物慣性力,フーチングに作用する土圧合力,杭 頭へ作用する水平力,フーチングの変位,及び地表面 の変位(解析モデル端部)を,剛接合とした場合と半 剛接合とした場合で比較して示す。杭頭接合条件によ らず,フーチングの変位は地盤変位より大きく土圧合 力は建物慣性力に対して抵抗力として働いている。し かし,半剛接合とした場合のフーチングと地盤の相対 変位は剛接合とした場合より大きいため,土圧合力が より一層小さくなっている。さらに,半剛接合とした 場合には,建物慣性力が若干減少しており,その結果, 杭頭へ作用する水平力(杭頭せん断力の合計)は剛接 合とした場合の約 8 割程度になっている。 半剛接合とした場合の杭の曲げモーメント分布は, 杭頭で小さくなるだけでなく,地中部の最大値におい 表-4 建物慣性力,土圧合力,杭頭へ作用する水平力,及び フーチングの変位
Table 4 Inertia force from structure, total earth pressure, total horizontal force at pile heads, and displacement of footing
剛接合 半剛接合 建物慣性力 4.84MN ポワソン比 n 4.65MN 土圧合力 -0.39MN -1.04MN 杭頭へ作用する水平力 0.69 4.45MN 3.61MN フーチングの変位 12.5cm 13.2cm 地表面の変位 12.4cm 12.7cm 図-23 杭の曲げモーメント分布 Fig.23 Distributions of bending moment along piles
図-24 杭頭接合部の曲げモーメントと回転角の関係 Fig.24 Relations between bending moment and rotation angle at
pile heads
図-25 杭頭部の曲げモーメントと曲率,曲げモーメントと軸 力の関係
Fig.25 Relations between bending moment and curvature, and axial force and bending moment at pile heads
-6 0 6 0 5 10 15 20 25 30 Bending Moment (MN*m) D ept h (m ) (a) Pile-1 -6 0 6 Bending Moment (MN*m) (b) Pile-2 Model R T=80.4s Model S T=80.9s -6 0 6 Bending Moment (MN*m) (c) Pile-3 Model R T=80.4s Model S T=80.9s Rigid (30.33s) Semi-rigid (30.37s) -0.015 0 0.015 -6 0 6 (a) Pile-1 B e n d in g Mo m e n t (M N *m)
Rotation Angle (rad)
-0.015 0 0.015 Rotation Angle (rad) (b) Pile-2
-0.015 0 0.015 (c) Pile-3
Rigid Semi-rigid Rotation Angle (rad)
-5 0 5 -15 0 (d) Pile-1 A xia l Fo rce (M N ) Bending Moment (MN*m) MyMu My Mu -5 -5 0 5 (e) Pile-2 Bending Moment (MN*m) My Mu My Mu -5 0 5 (f) Pile-3 Bending Moment (MN*m) My Mu My Mu -0.015 0 0.015 -5 0 5 (a) Pile-1 B e n d in g Mo m e n t (M N *m) Curvature (1/m) Mu My Mu My -0.015 0 0.015 (b) Pile-2 Curvature (1/m) Mu My Mu My -0.015 0 0.015 (c) Pile-3 Curvature (1/m) Rigid Semi-rigid Mu My Mu My
ても,剛接合とした場合と同等か若干小さくなってい る(図-23)。これは,地中部の杭応力には地盤変形の 影響が大きいため杭頭接合条件の影響は現れにくいが, 逆に若干小さくなることは,半剛接合とした場合に, 杭頭へ作用する水平力が小さくなることが影響してい ると考えられる。 図-24 に杭頭接合部の曲げモーメント-回転角の関係, 図-25 に杭頭部の曲げモーメント-曲率・曲げモーメン ト-軸力の関係を,剛接合とした場合と半剛接合とし た場合で比較して示す。剛接合とした場合,全ての杭 において杭頭部が終局限界状態に達し,杭頭に甚大な 被害が生じるものと推測できる(図-24(a)~(c))。一方, 半剛接合とした場合,全時刻において,杭の曲げモー メントは降伏曲線の中に納まっている。半剛接合部に ついては,解析モデルと同等の軸力比での構造実験に おいて,杭頭回転角 0.03rad まで大きな損傷がないこと が確認されている 1)。解析より得られた杭頭回転角は それ以下である。図-26 に建物の最大層せん断力を示す。 最大層せん断力は,過剰間隙水圧の上昇過程(19s 付近) に発生している。半剛接合とした場合,建物の最大層 せん断力は,剛接合とした場合と比べて若干小さくな っている。以上のことから,液状化地盤において杭頭 に引張軸力が生じる建物では,杭頭部を引張軸力に対 応した設計とする必要があるが,半剛接合とすること により,杭頭部の損傷を大きく低減できるものと考え られる。さらに,建物慣性力や外力として根入れ部に 作用する地震時土圧が小さくなる結果,その杭の地中 部最大曲げモーメントは剛接合とした場合と同程度か むしろ若干小さくなる可能性を示した。
5. 結論
本論文では,杭頭半剛接合部の回転挙動を軸力依存 型の回転ばねでモデル化した2次元有効応力解析手法 を提案し,その有効性を検証すると同時に,実大建物 を想定した解析から,液状化地盤における杭頭半剛接 合構法の杭応力低減効果と建物の耐震安全性について 検討した。得られた結論を以下に示す。 1) 液状化地盤-杭基礎-建物系の遠心模型実験のシミ ュレーション解析から,解析手法は杭頭半剛接合部 の挙動や杭の曲げモーメント分布を良く再現できる ことを示した。また,杭頭を半剛接合とした場合, 液状化後に外力としてフーチングに作用する地震時 土圧が剛接合としたものより小さくなり,杭頭へ作 用する水平力が小さくなる状況を再現できることを 示した。その結果,解析手法は剛接合と比較した杭 の最大曲げモーメントの比が液状化とともに小さく なる現象を概ね再現することができる。 2) 液状化地盤に建ち杭頭に引張軸力が生じる 12 階建て の実大建物を想定し,建物や杭体,杭頭接合部の非 線形性を考慮した2次元有効応力解析を実施した。 その結果,杭頭半剛接合構法を採用することにより, フーチングの変位は若干大きくなるが,杭頭部の損 傷を大きく低減できることを示した。また,地中部 に生じる最大曲げモーメントは,杭頭へ作用する水 平力が小さくなる結果,剛接合とした場合と同等か むしろ若干小さくなる可能性を示した。 参考文献 1) 青島一樹,安田聡,石﨑定幸,島田博志,小室努,川端一 三:杭頭半剛接合構法「F.T.Pile 構法」の開発,大成建設 技術センター報,Vol.37,pp.11-1~11-8,2004. 2) 石﨑定幸,時松孝次,長尾俊昌:液状化地盤において杭頭 半剛接合構法を採用した建物の地震時挙動-表層の非液 状化層に基礎根入れ部を有する建物の遠心模型振動実験 -,日本建築学会構造系論文集,第 677 号,pp.1089-1097, 2012.73) Cubrinovski, M., Ishihara, K.: State concept and modified elastoplasticity for sand modeling, Soils and Foundations, Vol.38, No.4 pp.213-225, 1998.12
4) Cubrinovski, M., Ishihara, K.: Modelling of Sand Behaviour Based on State Concept, Soils and Foundations, Vol.38, No.3 pp.115-127, 1998.7 5) 石﨑定幸,藤井俊二,時松孝次:大型せん断土槽実験に基 づく液状化地盤と杭の動的相互作用評価に関する一検討, 第35回地盤工学研究発表会,pp.1957-1958,2000.6 6) 石﨑定幸,長尾俊昌,船原英樹:液状化地盤において基礎 根入れ部を有する建物の地震時杭応力,日本建築学会大 会学術講演梗概集,B-1,構造 I,pp.515-516,2011.8 7) 今井和正,是永健好,小室努,瀧口克己:めり込みを考慮 した RC 部材端部の回転変形解析法,日本建築学会構造系 論文集,第 562 号,pp99-106,2002.12 図-26 建物の最大層せん断力 Fig.26 Maximum story shear forces
0 5 10 15 0 1 2 3 M ax . S h e ar F o rc e (M N )
Max. Relative Story Disp. (cm)
12F 11F 3F Rigid Semi-Rigid 1F 2F 10F 9F 8F 7F 6F 4F 5F Rigid Semi-Rigid