九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
磁気中性線放電における粒子挙動とプラズマ生成条 件に関する研究
迫田, 達也
九州大学総合理工学研究科エネルギー変換工学専攻
https://doi.org/10.11501/3135104
出版情報:Kyushu University, 1997, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
の
磁気中性線放電における
粒子挙動とフラズマ生成条件に関する研究
迫 田 達 也
目 次
頁 記 1 記号の説明
第 1章 序 論
1.1 本研究の背景
1.2 本研究の意義と要約 3 1.3 本論文の構成 4
第 2章 磁気中性線放電プラズマと研究方法 6 2.1 まえがき 6
2.2 磁気中性線放電プラズ、マの発生法と特徴 7 2.2.1 磁気中性線放電プラズマの発生原理と特徴 7 2.2.2 磁気中性線放電の発生装置の設計方針 13 2.2.3 実験装置 14
2.3 レーザートムソン散乱法による電子温度、密度の測定方法 20 2.3.1 レーザートムソン散乱法の原理 20 2.3.2 電子温度の算出法 25 2.3.3 電子密度の算出法 28 2ふ4 実験方法とその概要
2.4 励起原子密度の測定方法
2.4.1 レーザー誘起蛍光法の原理 2.4.2 励起原子密度の算出方法
2.4.3 励起原子密度の空間分布測定実験
2.4.4 発光分光法による発光強度の空間分布測定実験 2.5 まとめ
9 2 2 8 9 2 5 2 3 3 3 3 4 4
第 3章 磁気中性線放電プラズマの電子温度、電子密度分布 46 46 3.1 まえがき
47 3.2 トムソン散乱信号の評価
50 3.3 電子温度、密度の空間分布の測定
3.3・1 磁気中性線半径の変化に対する電子温度、 50 密度の空間分布の変化
3.3.2 電子温度、密度の空間分布の磁界強度依存性 55 3.3.3 電界強度の変化に対する電子温度、密度の空間分布の変化 55 3.3.4 磁気中性線放電プラズマの電子温度、密度の範囲 59 61 3.4 まとめ
第 4章 磁気中性線放電プラズマ中の電子挙動とプラズマ生成条件 62 4.1 まえがき 62
4.2プラズマ生成における磁気中性線の役割 63 4
ユ
1 励起原子密度の空間分布 63 4.2.2 電子速度分布関数の検討 68 4.2.3 励起・電離過程の検討 77 4.3 磁気中性線放電プラズマの生成条件 79 4.3.1 磁場強度及びRFパワー依存性 79 4.3.2 周波数依存性 824.3.3 換算電界強度によるプラズマ生成条件の検討 88 4ふ4 圧力依存性 90
4.4 まとめ 92
第 5章 総 括 94 参考文献 97 謝辞 100
記号の説明
本論文で使用した記号の意味を以下に示す。
アルファペット文字
A21' A31 B
Bo
B12' B21' C
Cj∞
C
d
E E
。
EL Ei e F
F
。
F
,
G G(d入)
g h
A32 A3i
B13' B31
:アインシュタインのA係数 :磁界強度
:電子サイクロトロン共鳴を満たす磁界強度 :アインシュタインのB係数
:積分定数
:電離レート係数 :真空中の光の速さ :レーザービームの直径 :誘導電界
:誘導電界の最大値 :レーザーエネルギー :レーザー光の電界 :電気素量
:換算電界
:換算電界の最大値 :分光器の装置関数 :レンズの焦点距離 :光電子増倍管の増倍率
:実際に観測される分光スペクトル強度 :縮退度
:プランク定数
記 1
‑K
:散乱光の強度
:電磁コイルの電流値 :入射光の強度
:レーザー入射光の強度 トムソン散乱光強度 :レーリ一散乱光強度
:レーザーの単位面積あたり、単位周波数あたりの エネルギ一束
:フィッティング直線の傾き :入射光の波数ベクトル
‑ d
y ‑ ‑ A
l ︐ YEA q4・a'
y ‑ ‑ A
ハ
Y E リ
‑ ‑a
IL IT
DH
YEA
︑ ︐
j
v
iE t
y ‑ ‑ A
p u w
'K
‑K
:観測方向の散乱光の波数ベクトル k : ks ‑ kj
n j
:磁界強度が0から電子サイクロトロン共鳴を満たす磁 界強度になるまでの長さ
:分光器のスリット長さ :レーザーキャビティ長 :散乱長
:電子の質量
:観測時間内のレーザーショット数(積算回数) :迷光、背景光、熱雑音などによる光電子数 :レーザーパルスあたりの散乱光光電子数 :粒子密度
:中性原子密度 :電子密度
: J準位の励起原子密度 L
Ls
L
L¥L
m E
N Ns
N
pen
n吋
ρ L V
n
lle :電子密度の時間平均
n 巴 :電子密度の密度揺動
RL :検出抵抗
Rj∞ :電離レート
r :観測位置
r
。
:古典的電子半径r :位置ベクトル
S :飽和パラメータ
SUF LIF信号
SRL :レーリ一散乱信号
S/N :信号の SN比
S(入,
e )
:分光スペクトル強度T :光学系の透過率
Te :電子温度
t :時間
一 :規格化した時間
v
, d.V :観測堆積V :電子の速度ベクトル
‑・
‑<惨 ・ー
Ve Ve :電子の加速度
W :分光器のスリット幅
X :衝突遷移のレート係数
記 3
ギリシャ文字
ε C
:サルベータパラメータ :散乱光スペクトルの 1/e幅
:散乱光スペクトルのドップラ一半値半幅 :装置関数の 1/e幅
:縦モード間隔 :自然拡がり
:光電子増倍管の量子効率 :真空中の誘電率
:電子が
RF
電界から得る最大の運動エネルギー :電子が曲折運動を行って得る運動エネルギー :運動エネルギーの平均値:散乱光ベクトルの投影角 :励起率
:散乱角 :観測波長
:トムソン散乱実験でのレーザー波長 (532nm) :デバイ長
:差波長 (入 一入。) :振動数
:トムソン散乱の全散乱断面積 :散乱微分断面積
トムソン散乱の散乱微分断面積 :レーリ一散乱の散乱微分断面積 :検出系の積分時定数
:角周波数
α
。
λ(Oλ)問
。 入
I。 1 J
L
OνN ε ε
。
εmax
くε>
pr b
L η
。
入 入。 入D ム入
ν
U T
dσ dOT dOR
τ ω
Cuj :入射レーザー光の角周波数 :散乱光の角周波数
:受光立体角
ω
dO,ム Q
記 5
第 1章 序 論
1.1 本研究の背景
プラズマは、気相の原子や分子が電子とイオンに電離した状態であり、常温 気体に比べて高いエネルギー状態にある。またプラズマ内では、電子が中性の 気体粒子と衝突することによって、化学的に活性度の高い励起状態の原子・分 子あるいはラジカルが生成される。これらのラジカルやイオンを含むプラズマ を固体表面に接触させると、プラズマは固体表面に様々な作用を及ぼす。例え ば、固体表面での反応によって、その物理的・化学的性質を変えたり(表面改 質凡 2))、固体表面の物質を気化して削り取る(エッチング 3),4))。また、条件に よっては、気相中の粒子が膜状に固体表面に堆積する(薄膜堆積凡 6))。このよ うな、プラズマを用いた表面改質、エッチング、薄膜堆積等は表面の加工技術 として応用されており、プラズマプロセスと呼ばれている。プラズマプロセス は半導体産業の発展に伴って半導体デバイスの高機能化、高集積化のための重 要な技術となっている。特に近年の半導体デバイスの作製においては、最小線 幅 0.1μmの超微細加工技術 η,8)が求められている。また、 1枚のウエハーから 多数の大規模集積デバイスを作製するために、 8インチから 12、16インチへと ウエハーの大口径化 9),10)が急速に進められている。そのため、広い面積にわた って一様にプロセスを行うことができるプラズマ源が求められている。
半導体デバイスをフロセスするためのプラズマ源には、専ら非平衡の放電プ ラズマが用いられている。低ガス圧領域(く 1Torr)で生成される放電プラズマ においては、まず電子が電磁界よりエネルギーを得る。その結果、電子の温度 は高く、 1eV "'‑' 10 eV 11)の領域にある。フラズマ内での、解離・励起・電離と いった反応は、高いエネルギーを持つ電子の中性粒子との衝突によって引き起 こされる。他方、電子とイオンおよび中性粒子との問で熱平衡が達成されるほ どには衝突頻度が高くない。そのため、中性粒子およびイオンの温度は低く、
密度が低いこととあわせてプラズマ全体の熱容量は小さい。これにより、半導 体デバイスのプロセスで求められる、基板温度を低温に保つことが可能となっ ている。このことは、熱容量が大きく、必然的に基板温度を上昇させてしまう 平衡(熱)プラズマ 12)と大きく異なる点である。
非平衡プラズマを用いたプロセス用プラズマ源として、まず平行平板型の電 極配置を持つ DC放電プラズマ町や、容量結合型 RF放電プラズマ(CCP)14),15)が 実用化された。それらは、構造の簡単さからこれまでに最も多く用いられてき た。しかし、 DCプラズマや CCPはプラズマ中の荷電粒子密度が低く、動作圧 力が高いために、処理速度と微細加工性において問題がある。そこで、プロセ スの高速化、高集積化の観点から、誘導結合型プラズマ(ICP)16 ,)η1、電子サイ クロトロン共鳴(ECR)プラズマ 18),問、 ヘリコン波プラズマ刈21)等の研究開発が 進められてきている。これらのプラズマ源は、 DCプラズマや CCPに比べて、
低圧力(10mTorr以下)で高い荷電粒子密度(1017m‑3以上)のフラズマが得られる。
しかし、 CCPを含めて上記のプラズマ源においては、密度や温度の空間的非一 様性が存在している。そのため、基板上におけるプロセスの不均一性が生じ易
い。
このような従来の問題点を解決し得る新しいプロセス用フラズマ源として、
1 9 9 4
年に内田氏によって磁気中性線放電(NLD; N e u t r a l
LoopD i s c h a r g e )
プラ ズマが提案された 2九NLD
では、まず真空容器の周りに配置した 3つの電磁コ イルにより、その内部に磁界強度ゼロの磁気中性線( N L )
を形成する。この NL に沿って高周波電界を印加し、放電プラズマを発生させる。NLD
プラズマでは、電磁コイルの電流値やその配置により、基板に対しての
NL
の形成位置や、形 状を任意に変えることができる。そのため、プラズマの大口径化や、NL
の動 的制御を介しての大面積にわたる一様プロセスなと、への応用が期待されている。NLD
プラズマに関してその原理の提案以来、理論的な解析と、実験による研 究が報告されている。前者については、吉田氏23),24)らが、 NLDで特異なNL
周 りの電子の運動と、エネルギーの吸収機構について報告している。後者につい2
ては、坪井氏25)らがラングミュアープローブを用いて測定した電子密度、空間 電位分布の報告を行っている。しかし、この実験は、限られた放電条件下で行 われたものであり、且つ電子温度の分布に関する情報は得られていないb また、
理論と実験の対応の系統的な検討は行われていない。 NLDプラズマの高度な利 用技術の確立をはかるには、実験結果と理論との比較をもとに、 NLDプラズマ の物理的特性を明らかにすることが必要である。
1.2 本研究の意義と要約
前節でも述べたように、放電プラズマにおいては、まず電子が入力エネルギ ーを吸収する。その結果生じた高いエネルギーを持つ電子の中性粒子との衝突 によりイオンやラジカルの生成が起こる。 NLDプラズマの場合には、 NL周り の高周波電界の中で電子が非線形な運動を行う。それにより、電子の加熱が効 率的に行われることが理論的に予測されている。本研究は、フラズマ生成部で ある NL周りの電子挙動に着目し、それを特徴づける電子温度と電子密度の分 布および励起・電離過程に関する測定を行った。様々な放電条件下でのこのよ うな実験結果を理論的な予測と対比することにより、電子挙動と NLDプラズ マ生成のための条件について検討を行った。
電子温度、電子密度の測定には、レーザートムソン散乱法均27)を用いた。同 法の大きな特徴は、他の測定法の多くのように測定によりフラズマを乱すこと ないと同時に、その上に何よりも得られたデータから電子温度、電子密度を求 めるのにも暖昧さがないことである 28)。フラズマ中の励起・電離過程を反映す る励起原子密度とその分布の測定には、レーザー誘起蛍光法 (LIF; Laser Induced fluorescence) 29), 30)と発光分光法川刀)を用いた。これらの分光計測法により、励 起種の密度を選択的に把握することが可能である。
本論文では、まず本研究のために設計、製作した NLDフラズマ発生装置に ついて述べた。次に、レーザートムソン散乱法により、様々な放電条件下にお
いて電子温度および、電子密度の分布を測定した。その結果、 NLDプラズマで達 成される電子温度の値は 1'"'‑' 2.5 e V程度、電子密度は 1017,",‑,1018 m‑3程度である ことを明らかにした。また、電子温度のピークは常に NL上に現われるが、電 子密度のピークは NLよりも半径方向内側に位置することを明らかにした。さ らに、磁界強度や高周波電界強度による電子温度・密度の値と分布の変化を示 した。
LIF法によっては、 NLDプラズマ中の励起原子密度の分布を測定した。励起 原子密度の測定結果と、 トムソン散乱による電子温度・電子密度の測定値をも とに、励起過程の衝突放射モデル刈刈による解析を行った。その結果、電子速 度分布関数についてマクスウェル分布から外れるような高エネルギー成分の存 在を考える必要がなく、 トムソン散乱計測により得られた電子温度を用いてプ
ラズマ内の励起・電離分布を評価できることを示した。
さらに、磁界強度、電界強度、周波数、ガス圧等の条件を広範に変えて NLD プラズマを生成し、発光分光法でプラズマ生成領域の変化を観測した。その結 果、測定結果は、理論的に予測されてきたパラメータ依存性に矛盾しないこと を明らかにした。これにより、フラズマ生成部が局在化される度合いは、磁界 強度、電界強度、周波数の値から決定される換算電界によって制御できること を示した。また、 NLDフラズマ生成のための換算電界の下限値と、動作ガス圧 の設定上限を示した。
1.3本論文の構成
本論文は、 5章より構成される。
第 1章は序論であり、低気圧ガス中の放電により生成される非平衡プラズマ が応用されているフラズマフロセスの現状と、 NLDフラズマが提案された背景 について述べた。さらに、 NLDフラズマにおける電子挙動の解明の重要性を述 べるとともに、本研究の意義と要約について述べた。
第 2章では、本研究で設計、製作した NLDプラズマ発生装置、フラズマの パラメータの計測に用いたレーザートムソン散乱法とレーザー誘起蛍光法の原
理および実験方法についてまとめた。さらに、発光分光法によるプラズマ生成 部の観測方法について説明した。
第3章では、レーザートムソン散乱法による測定結果について述べた。まず、
レーザートムソン散乱による電子温度、電子密度の測定精度を示した。次に、
NL半径、磁界強度、 RFパワーを変えたときの、電子温度、密度の空間分布の
変化を示した。
第 4章では、まず LIF法で励起原子密度を測定した結果を示した。それらと 電子温度、電子密度の測定データをもとに、衝突放射モデルを用いて電子速度 分布関数の高エネルギー部を評価した結果と、プラズマの励起・電離過程を考 察した結果について示した。さらに、発光分光法でプラズマ生成部を観測した 結果を示し、理論との対比により NLDプラズマの生成条件について考察を行 った。
第 5章は総括であり、本研究で得られた成果をまとめるとともに将来への展 望を述べた。
第 2章磁気中性線放電プラズマと研究方法
2.1 まえがき
本章では、まず、磁気中性線放電 (NLD)プラズマの発生原理と、その発生 手段について述べた。次に、 NLDプラズマの生成過程および生成のための条件 を明らかにするための研究手段について記述した。
2.2節では、 NLDプラズマの発生原理とその特徴、発生手段について述べた。
また、 NLDプラズマ発生装置の設計を行う際の問題点を提示した。さらに、そ れらを考慮して設計、製作したNLDフラズマ発生装置を示した。
NLDプラズマの生成過程を明らかにするためには、磁気中性線 (NL)周り の電子の挙動を明らかにする必要がある。そのためには、まずプラズマ中の電 子温度、電子密度の正確な把握が必要となる。レーザートムソン散乱法による と、プラズマに対して非接触、無擾乱で空間、時間分解能の高い測定ができる。
また、得られた結果の解釈に暖昧さがないため、ここでの目的に最適な計測手 段である。 2.3節では、電子温度、電子密度の測定に用いたレーザートムソン 散乱法の測定原理と方法について記述した。
NLDプラズマを特徴づけるプラズマ内の励起・電離過程は、電子速度分布関
数の裾野に位置する比較的高エネルギーのわずかな電子によって維持される。
そのため、高エネルギー成分も含めた電子速度分布関数の詳細と電離領域の検 討を、電離・励起過程を反映する励起原子密度の測定を通じて行っている。 2.4 節では、まず、励起原子密度の局所的測定に用いたレーザー誘起蛍光(LIF)法の 原理と測定方法について述べた。次に、プラズマからの放射光分布を観測する 発光分光法について記述した。
6
2.2 磁気中性線放電プラズマの発生法と特徴
2ム1磁気中性線放電プラズマの発生原理と特徴
NLDプラズマの発生には、動作ガスを低気圧に保つための真空容器、磁束密 度ゼロの環状の NLを形成するための磁界発生手段、および NLに沿って誘導 電界を形成するための高周波電界発生手段が必要である。磁界と高周波電界の 発生のためのコイルとアンテナの配置を図 2‑1に模式的に示す。 NLを含む磁界 は、同軸状に配置した 3つのコイルで形成する。コイル 1とコイル 3に同一の 方向と値の電流を流すと単純ミラー磁界が形成され、その時これらのコイルの 中間の平面上に磁束密度がゼロとなる NLが環状に形成される。 2つのコイル の電流の大きさに差をつけると、 NLは上下に移動する。次にコイル 2に、コ イル 1とコイル 3とは逆向きの電流を流すと NLは、同一平面上で 2つにわか れる。逆向きの電流の大小に応じて、それらの半径は変化する。すなわち、 3 つのコイルの電流値によって NLの軸方向位置および半径を自由に制御するこ
とができる。このように形成した NLに沿って、高周波 (RP)アンテナにより 高周波電界を印加して放電させると環状の NLDプラズマが生成される。以上 のようなことで、 3つのコイル電流を制御することにより、任意の位置に任意 の半径のプラズマリングを自由に生成することができる。
無衝突領域でのNL周りの電子の運動が、吉田氏らによって理論的に解析され ている功。以下には、その理論の概要を、本論文での検討に必要な範囲で記述 する。電界及び磁界中での電子の運動方程式は
ffie
ト十日
X) X B ]
(2‑1)で表される。ここで、図2‑2(a)に示すようなy方向の磁界が存在し、 X方向に磁 界強度 Bの値が直線的に変化しているとする。同時に、 z方向に角周波数ωで
民
1 a g n e t i cf i e l d l i n e s
¥
C o i l 1
Coi12
RF a n t e n n a Coi13
図 2 ‑ 1 NLD 発生のためのコイルおよび RF アンテナの配置概念図
8
ーラ
B
X
E
=E o
sinωt⑨
y
( a ) NL 周りの磁界及び電界の配位(モデル)
X
Z
(b)NL 周りの電子軌道の解析例
図 2 ‑ 2 NL 周りの、磁界・電界のモデル化された配位と
電子軌道の解析例
時間的に変化する電界E
=
Eosin ωtを印加したと考える。この場合の、磁界 B は次式で表される。(2 ‑2)
Bは x=oでゼロとなり、また電子サイクロトロン共鳴 (ECR)を満たす磁界強度 Bo (= me(1)j e ; meは電子の質量)の点を x=士 Lとする。位置と時間スケールは、
それぞ、れωとLで規格化して、以下のように表す。
t ==ωt
X 雲 一 一X
L
その時、式(2‑1)のx成分及び〉成分はそれぞれ次式のように表される。
x"= xz'
(2 ‑3) (2 ‑4)
(2 ‑5)
三 " = ー 云
'+Ff (2‑6) ここでF
は、磁界で電界を規格化した換算電界Fを時間微分したもので、 Fは次 式のように定義される。F = Fosinωt ,
式(2・6)をtで積分すると、
z'=
一 三 一
+F+C 2Fn=~
v 1必)Bo (2 ‑7)
(2 ‑8)
となる。ただし、 Cは積分定数である。式(2‑5)に式(2・8)を代入すると、次の ような規格化された電子の運動の式を得る。
五円=ート
(F+C ) 三
(2 ‑9)x = 0の周りでの電子の運動方程式を解いて軌道を計算すると、 F。の値がオー夕、
一
(1)の時のみ、電子はー2L<xく2Lの範囲で図2‑2(b)に示すような非線形で曲折 した運動 (meanderingmotion)を行う。この領域がECR領域を含むので、電子は10
RF
電界よりエネルギーを吸収する。曲折運動する電子が得る運動エネルギーは 次式で求められる。山 一
2M
m (2 ‑10)
ただし、云、
P
は、 X方向、 Z方向の規格化された速度がJ d t,d~/d ) t
で、あるo他方、磁界成分に対して電界成分が十分に小さく Fo~ 1である場合、式(2‑9) の第 1項が支配的となり、電子は磁力線に拘束される形で曲折運動を行わない。
その例として、図 2‑3(a)にFo= 0.05の場合の軌跡を示す。 x= 1の周りの電子は、
NL
の点と交わることなく磁力線に巻きついたような運動を行う。逆に、磁界 成分に対して電界成分が十分に大きくF o } >1
である場合は、式( 2
・9 )
の第2
項の 線形項が支配的になる。この場合、電子は図 2‑3(c)(Fo = 50)のようにx= 0の周りで単振動し、
RF
の周期でミ=10の周りで磁力線に巻きついたような運動を繰り返す。このように、 F。の値がオーダー (1) を満たさない場合 (Fo~
1
,F o } >
1)は、電子はNL
周りでの非線形で曲折した運動を行わない。NLD
プラズマの最も大きな特徴は、上記のようにNL
周りで電子が非線形的 な運動を行ってRF
電界からエネルギーを吸収することである。1 3 . 5 6MHz
の 高周波を用いる場合、ICPの最低動作圧力は1mTorr程度であるのに比べて、NLD
の最低動作圧力は 0.5mTorr以下と低い均。 NLDプラズマでは、このような低 ガス圧下でも、無衝突で高効率な加熱お)が行われ、磁界による閉じ込め効果も 加わるので、高いプラズマ密度を得ることができる白さらに、
NLD
では、NL
を制御することでプラズマの形成位置や、形状を自由に変えることができる。
そのため、
NL
の動的制御を介して、広い面積にわたって一様なプロセスを行 うことが期待される。X
( a ) F o = 0 . 0 5 の時の電子軌道の解析例
x
Z
( b ) F o = 1の時の電子軌道の解析例
Z
( c ) F
o=50 の時の電子軌道の解析例
図 2 ‑ 3 F o = 0 . 0 5
、1
、50 の時の電子軌道の解析例
12
2.2.2 磁気中性線放電の発生装置の設計方針
まず、磁界分布と真空容器サイズとの関係について考える。 2.2.1節で記述し たように、電子は NLと ECR点の 2倍の距離の点との問で曲折した運動
(meandering motion)を行い、 RF電界よりエネルギーを吸収する。局在化したプ ラズマを生成し、 NLの動的制御を介して一様プロセスを実現させる観点から
考えると、曲折運動を行う領域の広がりは真空容器の大きさに対して十分小さ いことが必要である。
次に、 RF周波数の選定条件について考える。 RF周波数を通常用いられてい
る13.56MHzとした場合、その周波数における共鳴磁界強度 B。は 0.48mTと なる。この場合、 8、12インチウエハーに相当する大面積のフロセスが可能な NLの形成には、放電管の中心軸において 10mT程度の磁界強度を印加できる
電磁コイルが必要となる。それに対して、 ECRフラズマの生成で用いられる 2.45GHzの場合、 B。は 87.5mTとなる。この場合、 NLを形成しようとすると、
各々のコイルとして、 1T以上もの磁界を発生できるものが必要となる。この ように、周波数が高くなるほど大きな磁界強度が必要になり、装置全体が大型 化する。一方、周波数が低い場合、例えば1MHzのときには、 B。は0.03mTと なる。この磁界強度は、地磁気と同程度である。そのため、地磁気の影響を受 けて、 NLを精度よく設定することができなくなるという問題が生じる。 NLの
設定誤差、装置の小型化、経済性の面から考えると、 RF 周波数は 10~100MHz 程度のものが妥当であると考えられる。
2ム3 実験装置
NLDプラズマ中の電子温度、密度の空間分布測定用に、本研究において製作 した小型のNLDプラズマ発生装置(以下、 NLD1と書く)を図 2‑4に示す。NLD1 では、 NLDプラズマで得られる電子温度や密度の領域を把握するだめに、電界 強度、磁界強度の条件を変えてトムソン散乱計測を行った。 NLD1は、真空容 器、磁界発生部、高周波発生部、ガス系から構成される。
真空容器は、内径 260rnrn、全長 900rnrnのステンレス銅製で、レーザービー ムの入出射用ポートおよび受光系用ポートを設けた。
磁界発生用のコイルには、内径 320rnrnのコイル 1(巻数 120,電流値 1),コ イル 2(巻数 120,電流値 12)と内径 115rnrnのコイル 3(巻数 128,電流値 13)を 放電管の外側に同軸上に配置した。 NLは、コイル 1,コイル 3に同一方向、コ イル 2に逆方向の電流を流して形成した。コイル電流は、直流安定化電源(最 大10V, 200 A) により供給した。なお、 NLの位置はビオ・サバールの式にし たがった磁界計算によって求めようとしたが、真空容器の磁化の影響でその設 定にずれが生じていた。そのため、まず計算にしたがって大まかに NL位置を 設定し、その状態で磁界強度分布を実測した。次に、 NLが設定したい位置に くるようにコイル電流値を調整した。磁界強度は、ホール素子を備えたガウス メータで測定した。これにより、 NL位置を士2rnrnの精度で設定することがで きた均J九 半 径70rnrnのNLを設定する場合、それぞれのコイルの電流値は、
11
=
19.4A
, 12=
47.2A
, 13=
194A
とした。この場合の真空容器内の磁力線構造を 図2‑5に示す。特に、 NL上を含めてトムソン散乱計測を行うために、 NLをコ イル 1とコイル 2の聞のレーザー入射軸上に形成した。これを反映して、磁力 線構造はNL平面の両側で非対称形になっている。NLの半径を 70rnrn、90rnrnおよび100rnrnに設定した時のNL平面上の磁界 強度分布を図 2‑6に示す。 NL半径が70rnrnの場合、 NL平面上の中心磁界強度 は約 1.8rnTであった。 RF周波数が 13.56MHzの場合、 NLから ECR点 (Bo
=
0.48 mT)までの距離は 8rnrnであった。
14
M a g n e t i c ‑ f i e l d l i n e s
D i f f u s i o n , 、 , .
e ‑σb
一 u 一
n
a ‑= o = n
. h
一 一
o
a = z
‑ u
一一 割 岨
= 創
k = B pump
window
Coi13 ⑥
Q u a r t z window
図
2 ‑ 4 NLD
フラズマ発生装置(NLD1 )
い 図
品 山
引 ﹂ 相 川 ィ
o
⑨
∞
ー・‑.・ー"・ー.......・..‑リ・・・......・̲.M.・・・・・・・・・・・・・・・・・.・・"・"・.‑・・・…・"・・一・・・・・・・・・..・.......・...・.・.・・・.・・・...・..・...̲̲・・ー・.・・・・.・・・・・・・・・・・・..・・・・・.・・・..・・・・・ー・・.・・句" ・・.・.・・・・・..・・M.・.・.・.・・...・.・・......・....・.....・.....・............̲..................…・.̲...・...‑.・.・.....・....…...・...一...一....…......・..・.・...・・・.............・・・..・・.・................・.・・...・.・・・..・・・...…...一.・.・一.・・・...一.・・‑・一・.・・.・…・…・・..̲・."...̲・・・・・......・・・......・....."・...一・̲・.・‑・・・.ー・・・.・̲.・.・...・.".・・・・・・・・・"・・・‑・.ー・・・・・・・・.・・・..・・.....‑句."‑・・・・・・"・ ・・・・・・~
磁力線構造 (NLD1)
16
図 2 ‑ 5
NL radius 100 m m
阿 古 ∞ ロ
ω担
∞℃
‑ ω
何 回
υ
コ
ωロω ω
︾J目
一
一 一 一 一 一 一 一e、 , ・・・・・・・ ・ ・ ‑ ー ‑, 、、 一
叫円 、、 一:¥ ・、・ ¥ 一パ 、、
一 、
一 、
一一 、、
一 、
1 ¥ NL radius 70 m m 道
一 一
一 一
一・・・・4. . . . . . ・・・1・ーーー・ーーー曹ーー‑‑‑‑ 一・ーーーーー・
... ̲....̲.. ‑‑‑‑・‑‑‑̲............̲....・........‑. .
(H E)
NL radius 90 m m
nH 9u
o w
n u r
‑ ‑ t
‑ L U
島 a m
¥ ¥ α
n u
戸 ︑
J
噌1 ‑50
。
50 100!
150Radius (mm) Chamber wall
図 2 ‑ 6 NL を含む平面上の磁界強度分布 (NLD1 )
高周波発生部は、周波数 13.56MHz、最大出力 1kWの高周波電源(ULVAC社 製)と整合器とからなる。本論文で述べる全ての実験は、高周波の入射パワーが 一定に保てるように整合器を用いて負荷整合をとり、反射パワーをゼロにじた
状態で行った。石英製のガラス管に挿入された半径 105mmの RFアンテナ (1巻)は、 NLの形成位置から放電管の軸方向に 15mm離れた位置に配置し た。なお電界強度 E。は、市販の高周波電流センサー(変流器)で RFアンテナ 電流を測定し、それによる誘導起電力から求めた。 RFパワーが 100W 程度か ら800Wまでの範囲で誘導起電力は、 RFパワーの0.5乗に比例することを確認
した。 NL半径が70mmでRFパワーが400Wの時、 NL位置の r
=
70 mmに誘 導される電界強度のピーク値は約 140V/mであった。ガスの導入は、真空容器内を 10・6Torr台まで排気した後、マスフローコント ローラを用いてアルゴンガスが一定流量流れるように制御した。排気系はロー タリーポンプと油拡散ポンプから構成し、 0.1Toロまではロータリーポンプで、
それ以下の圧力では油拡散ポンプで排気した。圧力は、レーリ一散乱法 38),39)に よって較正された隔膜真空計(Baratron390,フルスケール 10Torr,公称精度は読 みの 0.08%)で測定した。
NL半径を大きくして、 L等のパラメータ依存性を幅広く調べられるように、
2つめの NLDフラズマ発生装置(以下、 NLD2と書く)を製作した。その構成は、
NLD1と基本的に同じである。真空容器は、内径308mm、全長750mmのステ ンレス銅製で、 NLD1と同様に、レーザービームの入出射用ポートおよび、受光 系用ポートを有する。磁界発生用のコイルには、内径 390mmのコイル 1(巻 数60,電流値 11) ,コイル 2(巻数 60,電流値 12) と内径 320mmのコイル 3
(巻数 128,電流値 1)を同軸上に配置した。半径 100mmのNLを設定する 場合、それぞれのコイルの電流値は、 11
=
66.8 A, 12=
193 A, 13=
115 Aとした。そ の時の NL平面上の磁界強度分布を図 2‑7に示す。 NL平面上の中心磁界強度は 約 4.0mTとなる。 RF周波数として 13.56MHzを用いた場合、 NLから ECR点までの距離は 5.4mmであった。また、 RFパワーが400Wの時、 NLである
18
( ド 日 ) 召 ∞ ロ
ω H H ω
℃古
田
υ
ヨωロe E
‑160¥ ‑ 1 2 0 ‑ 8 0 Chamber w a l l
‑ 4 0 40 8 0 120/160
Chamber w a l l
。
R a d i u s (mm)
図 2 ‑ 7 NL 半径 100mm のときの NL を含む平面上の磁界強度分布
(NLD 2 )
r = 100 m mに誘導される電界強度のピーク値は204Y/mであった。
NLD 2では、レーザー誘起蛍光法を用いてフ。ラズマ中の励起原子密度を測定 し、 NLDプラズマの励起・電離過程、電子速度分布関数の詳細な検討を行った。
また、電界強度、磁界強度、 RF周波数、ガス圧等のプラズマ生成条件を広範 囲に変えてプラズマを生成し、 NLDプラズマの生成条件を明らかにするための 実験を行った。
2.3 レーザートムソン散乱法による電子温度、密度の測定方法
レーザートムソン散乱法によれば、非接触でプラズマを乱すことなく、プラ ズマの電子温度・密度の測定ができる。しかも、測定データの解釈に暖昧さが ないために、それらの値が高い信頼度で得られる。レーザートムソン散乱法の 理論については、すでに詳しい解説が出されている均27)ロ以下には、実際に電 子温度、電子密度を算出するのに必要な範囲で、簡単に記述する 28)。
2ふ1 レーザートムソン散乱法の原理
プラズマ中にレーザー光を入射すると、プラズマを構成する粒子はレーザー 光の電場で強制振動させられる。その強制振動の結果、レーザー光の伝搬方向 以外の方向へ 2次的な電磁波が放射される。このような光が放射される現象を 散乱現象と呼ぶ。図2‑8に示すように、入射光の波長を入。、強度を 10(W / m2)
とする場合について、位置 rでの散乱を考える。波長が入と入+d入の間にあ って、散乱角。方向の立体角 dQ内へ散乱される光の強度 1(入,8)dQd入は次 式のように表される。
1 λ(,8)dQ dλ= 10・n'Y'do(λ,8)dQ d λ ( 2 ‑11)
ここで、 nは散乱粒子の密度、
v
は散乱光を観測する散乱体積である。また、入射光の波数ベクトルkjと観測方向の散乱光の波数ベクトル ksのなす角。を
20
I n t e n s i t y o f s c a t t e r e d l i g h t 1 ( 入 , 8 )
L a s e r
W a v e l e n g t h
入o
I n t e n s i t y 1 0
S o l i d a n g l e dQ
C E
・ 且
o b
n a
σ bn
・ ・ ・ 且 r
且ρしV抗
ω o
P3
Plasma
一〉
r
H ue
叫v o v M
ρしVa c
σ δ
図 2 ‑ 8 プラズマによる電磁波の散乱
散乱角と呼ぶ。 da(入,8)は、個々の散乱粒子が波長幅 d入において O方向の立 体角 dQ内に散乱する断面積で、散乱微分断面積と呼ばれる。
散乱粒子が自由電子の場合は、 トムソン散乱と呼ばれる。位相の揃ったレー ザ一光の電場
E
j(r , t)により自由電子(電荷e,質量m)はVe
=三五
i(J,t)me (2 ‑12)
の加速度を受ける。この時、入射光の電場によって電子の受ける加速度Veの方
向は電場 Ejの方向(偏光方向)である。図 2・9(a)に示すように、偏光方向を y 軸にとった座標系を考える。この場合、直線偏光した入射光の散乱強度角度分 布は図 2‑9(b)に示すようにEiを軸方向とする異方性を示し、 Ei方向の散乱光強 度はゼロとなる。
トムソン散乱の散乱微分断面積 dσT(入,8)は、真空中にある l個の電子に直 線偏光したレーザー光が入射した場合について、以下のように表せる 26)。
doT
λ (
,8)=ら2• [1 ̲ sin 2 8 . CO内 J . s ( λ
,8)r。は古典的電子半径と呼ばれ、
九 = ‑
e
フ=2.82 X 10‑15( m )
4JtEO me C‑
(2 ‑13)
(2 ‑14 )
である。角とは、図 2‑9(a)に示すように、 ksをy‑
z
平面に投影したベクトル がy軸となす角度である。また、 s(入,8)は分光スペクトル強度と呼ばれる。トムソン散乱の全散乱断面積
a
Tは、式(2・13)を全立体角、全散乱波長にわた って積分することで得られ、次式となる。8‑J 2 0中. 3 =‑πrn
v (2・15)
従って、 トムソン散乱の散乱微分断面積 dar(入,8)を全散乱断面積aTを用い て表すと、式(2‑13)と式(2‑15)から
22
y
E i
. .己
│ タ
・/
x
Z
(a)
直線偏光と座標系の関係
y
X
z
(b) x‑y
平面内における散乱強度の角度分布.
3次元的には、
y
軸の周りで回転させたものが放射強度分布
図 2 ‑ 9 直線偏光した入射光の散乱強度の角度分布
︑lEJ Q υ 町 人 ︐
︐
a・ ︑
c d
可E
・
E‑E
﹂
ヒ ︑
今L
Q JU
o
pu
AO
n 今 乙
・ ・
・
A
F3
・
IFEE‑‑LT O 3
一口
問
︑ ︑ . . 一 一
︐
︐ ︐
︐ A O ヘ 人
〆' a
E︑ ︑
T O JU (2 ‑16)
となる。
次に、プラズマ中の電子群によるトムソン散乱を考える。式(2‑11)においてll= l
leとした場合の dO(λ,8)をdoe(入,8)とする。場所 r、時刻 tでの電子密度を lle( r , t)とし、時間平均密度を五e(r, t)、密度揺動をne(r,t)として、
lle(r, t) = IIe(r, t) + lle(r, t) (2 ‑17)
と書けば、 d0 e(入,8)はえ(r,t)には依存せず、 lle(r,t)にのみ関係する。 lle(r,t) の下限は熱的揺らぎと呼ばれるものである。これは、電子が熱運動をしている 結果、ある点の密度は平均値を中心として常に揺らいでいることによる。熱的 揺らぎによるne
( r
,t )
は、 2つの部分に分けられる。 1つは、電子自身の熱運動 による部分である。もう lつは、個々のイオンがデバイ遮蔽により電子群に遮 蔽された状態で熱運動するために、それに追従する電子群の密度揺動によるも のである。前者の密度揺動による散乱断面積を電子項と呼び、後者によるもの をイオン項と呼ぶ。 トムソン散乱の断面積は、電子項とイオン項の和で表され る。この時、電子項とイオン項の大小関係によって散乱スペクトルの様子は異 なる。その評価は、次式で定義するサルベータパラメータ αで行われる。一D
一ヘ 人
l
‑ F S
1二k 一 一
‑ i
二k
α 一 一 (2 ‑18)
ここで、入Dはフラズマのデバイ長である。
α<{1 ではデバイ長がレーザー波長よりも十分長くなるので、個々の電子が 独立に散乱に寄与する。その結果、電子の熱運動の影響が反映され、電子項が 優勢でイオン項は無視できる。このような状態は非協同的散乱といわれ、プラ ズマによる散乱断面積は電子の個々の熱運動によって決まる。 α討 で は 電 子 の集団的な運動の影響が現れ、イオン項が支配的となる。これは、イオンを遮
24
蔽する電子群の協同的運動による散乱という意味で協同的散乱といわれる。
本研究で用いたレーザー計測配置および対象プラズマのパラメータでは、散 乱パラメータは α~1 となり(典型的な値としては α ご0.003) 、散乱は非協同的 散乱領域にある。従って、以下では非協同的散乱の場合についてのみ述べる。
非協同的散乱の場合、 トムソン散乱の散乱微分断面積da巴(入,8)は、結果的 に 1個の電子による散乱微分断面積 dσT(入,8)と等しくなるので、以下では dσT(入, 8)と書く。
2ふ2 電子温度の算出法
非協同的散乱領域にある散乱光の波長スペクトルは、自由電子の熱速度に応 じてドップラー拡がりをもっ。このドップラー拡がりを観測することによって 電子速度分布関数を求めることができる。また、それがマクスウェル分布に従
う場合には、電子温度を求めることができる。
図 2‑10に示すように、電子はrの位置に存在し、速度 Vで熱運動していると する。また、入射レーザー光の波数ベクトルをkj、角周波数を ωi、散乱光の波
数ベクトルをks、角周波数をωsとする。この時、散乱光の角周波数は電子の速 度により、以下のようなドッフラーシフト(ム ω)を受ける。
~ω=ωiωs
=
(ki ーに}~ ︒ 一
2 2
一
0・m
n
トi・'
i
︐E Q
リ
k π
一0
2 4 7
人
v v 一 一 一 一
(2 ‑19)
電子の速度分布関数 f(v)dvがマクスウェル分布をしているとき、 f(v)dvは次 式のようになる。
f(v) dv
= f ~竺_,
i
,Ye x p ( 一 生 三
1dv¥2πe T̲ J ~ ¥ 2 e T̲ J
(2 ‑20)
レーザ一 入射方向
散乱光の 波数ベクトノレ
k s
プラズマ k
。
レーザー光の 波数ベクトノレ
︑
7 k
。
図 2 ‑ 1 0 レーザートムソン散乱のベクトル関係
26