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ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析

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(1)

ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析

著者 塩津 ゆりか

雑誌名 經濟學論叢

巻 55

号 3

ページ 83‑102

発行年 2003‑12‑20

権利 同志社大学経済学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004644

(2)

ユーザー評価にみる保育の

「質」に関する統計分析

塩 津 ゆ り か

1

は じ め に

国の少子化対策として,保育所整備・拡充,育児休業の推進,児童手当の拡 充,児童扶養控除の創設,不妊治療への支援などいくつかの施策が検討され,

実施されてきた.なかでも保育所整備・拡充は重点的に対策が講じられてきた.

特に大きな変化としては,1998 年の制度改正に伴い,保育所入所は,従来の措 置制度から選択制度へと変更された.すなわち,旧制度下では住所等によって 入所できる保育所が割り当てられていたが,今回の改正で,保護者が希望する 保育所を選べるようになった.しかし,なお地域的には認可保育所への需要が 増大しており,待機児童を発生させている.この待機児問題解決策としては,

まず既存保育所の定員枠弾力化などで応急的な対応がなされる.さらに,抜本 的な解決策として,これまで地方公共団体と社会福祉法人にしか認められてい なかった認可保育所の設置運営を民間営利企業にも認めるなど,解消のための 手段が講じられている.だが,なお無認可保育所での痛ましい事故が相次いで 起こっている現状がある.その一方で,待機児童の抜本的解決策である保育所 の新設については,株式会社による参入はそれほど進まず,少子化と地方財政 窮乏が自治体による認可保育所の設置運営に歯止めをかける結果となっている.

また,平成14 年閣議決定の規制改革推進3 ヵ年計画(改定)によれば,自治体 のなかには国の保育所設置基準以上の基準導入や補助の上積みが行われ,財政

417 )83

(3)

負担が過重となっていることを指摘したうえで,質を維持しつつ,これらの基 準や補助のうち合理性を欠くものは廃止すべきであると述べている.

最近の保育所の需給関係などを詳細に分析した研究としては,山重(2002), 福田(2002),駒村(2002)がある.なかでも,山重(2002)では,保育所の運 営費用と効果について,マクロデータおよびアンケート調査によるミクロデー タを使って,高い保育所運営費用(特に低年齢児)がかかっているにもかかわら ず,廉価な利用料しか課していないことの不公平性および公営保育所が諸外国 と比較して運営費が高いことをあげ,その非効率性を説明し,代替策である3 世代同居のほうがむしろ女性の社会進出や出生児数に貢献していることを示し ている.

また,延長保育などのサービスを行っている保育所は,民営の方が多いとい われ,いわゆる「官民格差」の問題も指摘されている.加えて,保育所運営費 について,林(1998)が公立保育所の運営費が私立保育所の運営費よりも高い ことを調査し,保育料に官民格差がないのであれば,措置制度から移行するこ とで,サービス・質での競争が導入され,保育所利用者にとっては望ましいと している.そこで,限られた財源のもとでの待機児の解消と「官民格差」解消 を目指して,公設公営保育所の民営化が提言されたのであるが,費用問題から 低年齢児受け入れが進展しないことや,特に現場からは,保育の質低下を招く として,強い反対が表明されている.すなわち,民営化の問題点としては,① 待機児の有無に地域差があること ②コストのかかる低年齢児の受け入れが進 みにくいこと ③保育の質的低下がもたらされることの3 点である.また,問 題点①の待機児数の地域格差への対処については,横山(1999)がニーズの増 減に対する対応やそもそもニーズの少ない地域への対応も勘案した上で,民営 化を検討すべきであると述べている.②の低年齢児の受け入れに関する問題に ついては,保育料徴収方法とその問題点という視点から,丸山(1998)が低年 齢児を受け入れるよりは,4 歳以上児を受け入れる方が収入増大となることを 指摘している.さらに,③保育の質低下に関する議論では,保育行財政研究会

84418 ) 55 巻 第3 号

(4)

(2000)が財政的な理由のみで保育所の民営化を行うことは,公的福祉の後退に なり,保育の質的低下を招くとしている.

本稿では,先にあげた民営化の問題点のうち,③に着目する.この公営保育 所の民営化による,保育サービスの量的拡大が保育の「質」低下を招くという 議論は,従来,公営保育所を地方財政悪化による財政的理由によって民営化す ることで,経費削減を図る地方自治体に対し,特にサービス供給者の一部であ る公営保育所から提示されてきた.たしかに,昨今の無認可保育所あるいは託 児所等における虐待を含む乳幼児の死亡事件・事故を考えると,いたずらに量 的な拡大を実施することが望ましいとはいえない.しかし,保育所選択制度が 導入されている今日,保育の「質」という問題を考えれば,実際の利用者であ る乳幼児の代理人としての保護者の視点が必要不可欠であるにもかかわらず,

民営化の議論ではこの視点がそれほど生かされてこなかったのではなかろうか.

本稿では,こうした問題意識に基づき,保育サービス需要者にとっての保育の

「質」とは何かということを明らかにすることを目的とする.

以下では,現行の保育所入所制度および保育料決定方式,保育所運営費につ いての現状を把握する.さらに,本稿の目的である保育サービス需要者からみ た保育の質を理解するため,アンケート調査に基づき,次の3 つの手法で統計 分析を行う.第1 は,マン・ホイットニーのU 検定を用いて,保育所の運営主 体によって,保育所利用者の属性を表す「妻の職業」,「末子の年齢」,保育所 の属性を表す「延長」,「保育士加配数」,保育の「質」を表す項目としての

「情報」「連絡」「衛生」「環境」「清掃」「玩具」「運動」の各項目および総合評 価に差がみられるかを検討する.第2 には,運営主体のちがいによる利用者属 性および評価の相違が認められなければ,クラスカル・ワリスの検定を使って,

利用者全体で保育に対する総合評価と利用者属性および保育の質と考えられる 各項目に何らかの差が確認されるかをみる.具体的には,総合評価で大変満足 している利用者と「ふつう」と答えた利用者で利用者属性や保育所からの連絡 などに対する満足度に差があるかを検討する.また保育所が実施している延長

419 )85 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

(5)

保育などの事業や保育士の加配が利用者の評価に影響しているかを分析する.

ここで差が認められる項目は,総合評価に何らかの影響を与えていると考えら れる.そこで,第3 に,これらの項目について,カテゴリカル回帰分析を用い て,保育所利用者は,「質」として何を重視しているか,言い換えれば,どうい った項目が総合評価を高めるのに作用しているかを分析する.この結果をふま えて,最後にまとめと今後の課題について述べる.

2

現行の制度

現行の認可保育所入所制度は,1998 年の制度改正により,希望者が住所地の 福祉事務所に入所を希望する保育所を順番に記入して提出し,各市町村長が入 所を認めた場合,定員内であれば,希望する保育所に入所できる.仮に定員を 超える応募があった場合,抽選等により入所が決定される.最悪の場合,応募 していない他の保育所に空きがあっても待機児となる.次に,保育所保育料の 決定方式であるが,保護者負担分である保育料は,国が徴収基準に基づき,児 童福祉法で市町村が保育料を決定することとされているため,多くは国徴収基 準よりも安く,その差額は市町村の持ち出し(税負担)となっている.また,保 育料は応能負担とされているので,保護者の過去1 年間の所得税額や住民税額 に応じて決定される.この保育料は,所在する地域の公立,私立保育所共通の ものである(第 1  表).一方,運営費は,年齢別に国が定めた保育単価により,

乳幼児1 人あたりのコストが算出され,そこから国が定めた徴収基準額を差し 引き,その残り2 分の1 を国,4 分の1 ずつを都道府県と市町村が支出する

(第 2  表).すなわち,運営費のうち,約半分は公費支出となる.さらに,保育 所の処遇改善のために国,都道府県が別途補助金を交付している.

具体的な経費としては,主に施設長(所長・園長),保育士,調理員等の人件 費,入所児童の一般生活費(給食に要する材料費,保育材料費,炊具食器費など)及 び冬期の暖房に要する経費,保育所で実施している行事などに必要な経費,水 道光熱費,補修費(建物の修繕など),保健衛生費(健康診断など),備品,通信

86420 ) 55 巻 第3 号

(6)

運搬費(電話・郵送代など),職員の研修費等の管理費があげられる1).ところで,

保育所運営に実際にかかっている費用を各保育所が完全に把握していないとい

421 )87 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

世帯の階層区分  徴収金基準額(月額) 

3 歳未満児

0円  0円 

3 歳以上児 階層区分

第 1 階層 第 2 階層 

第 3 階層 

第 4 階層 

第 5 階層 

第 6 階層 

第 7 階層  定義  生活保護世帯  前年度所得税  非課税世帯 

市町村民税  非課税世帯 

9,000円  6,000円 

16,500円 

27,000円 

(保育単価限度) 

41,500円 

(保育単価限度) 

58,000円 

(保育単価限度) 

77,000円 

(保育単価限度) 

19,500円 

30,000円 

44,500円 

61,000円 

80,000円 

(保育単価限度) 

市町村民税  課税世帯  64,000円未満

64,000円以上 180,000円未満 180,000円以上 408,000円未満 408,000円以上 前年度所得税 

課税世帯 

(出所)全国保育団体合同研究集会実行委員会編,(2002)『保育白書 2002 年度版』をもとに作成.

第 1 表 国徴収基準(平成14年度)

負担割合 

国  都道府県  市町村  利用者 

25% 12.5% 12.5% 50%

(出所)全国保育団体合同研究集会実行委員会編,(2002)『保育白書 2002 年度版』をもとに作成. 

(国徴収基準を運営費の半額とし,これを全額利用者が負担した場合) 

第 2 表 運営費負担状況

1)大阪府八尾市は,2002 年現在,人口約27 万人の都市で,市内の保育所数は市立13 ヵ 所,私

17 ヵ 所,待機児数は,26 人である.このように待機児がいる他都市と比べて特別な違いはみ られない.大阪府八尾市の例でみると,入所児童の年齢を考慮せず,単純平均をとった場合は,公 立保育所の方が社会福祉法人立(私立)よりも,児童1 人あたりでみると,月額,年額ともに高 くなっている.八尾市では,保育料や補助金などの収入が運営費を大幅に下回る事態となってお り,その分を市税で補填している.特に市立保育所での不足額が深刻であり,必要経費の約7 割を 市税に頼っている.

(7)

う問題が指摘されている.これは,特に公営保育所の場合,保育士が地方公務 員となるため,総費用の8 割を占める人件費を保育料収入のみで賄っているわ けではなく,一般会計から支出されているためである.

以上,保育所の現行制度について概観してきたが,次章以降ではアンケート 調査に基づき,運営主体間で質の評価に差がみられるのか,実際のサービス利 用者(ここでは保護者)が保育の質として特に何に着目しているのかを検討する.

3

デ ー タ

今回の分析に用いたデータは,2001 年6 月に同志社大学少子高齢化研究会2)

が実施した保育所利用者を対象としたアンケート調査とホームページおよび行 政の担当窓口で公表されている調査対象保育所の人員および施設条件3)をもと にしている.

アンケート調査の調査期間は,2001 年6 月で,調査対象は近畿地方の政令指 定都市であるA 市の公設公営保育所29 ヵ 所および公設民営保育所39 ヵ 所に 乳幼児を預けている保護者約4,400 世帯である4).配布および回収方法は,登園 または降園時に保護者に対して手渡しによる直接配布を行い,回収は郵送法を とった.回収率は約25%であった.回答者を公設民営保育所,公設公営保育所 利用者にわけると,前者が748 人,後者が310 人であった.調査項目は世帯構 成員の属性と保育の内容に関する項目である.なお,保育内容に関する設問設 定では,社会福祉法人 全国社会福祉協議会による『児童養護施設サービス自 主評価基準』,『母子生活支援施設サービス自主評価基準』を参考にした.以下 では,データの制約から,利用している保育所の総合評価について,各運営主 体別にグラフを作成して考察する.

88422 ) 55 巻 第3 号

2)同志社大学経済学部教授 八木 匡氏を代表とする研究会である.

3)本稿では,延長保育,一時保育,障害児保育,休日保育,地域交流事業および保育士数を利用 した.ここで障害児保育とは,受け入れが可能であることを指し,実際に受け入れているかどうか は不明である.

4)A 市には,このほかに約240 ヵ所の認可された私立保育所がある.

(8)

総合評価を比較すると,両保育所利用者とも「ほぼ満足」と「満足」の合計

が公営で74%,民営で77%となっており,「不満」「やや不満」「ふつう」につ

いてもほぼ同様の傾向がみられる.

総合評価に関しては,両保育所利用者とも「ほぼ満足」と「満足」の合計が 7 割以上となっており,高い評価を行っているといえる.

次に通常の開所時間に加えて時間を延長する延長保育事業と国の保育士配置 基準よりも加配されている保育士数を運営主体別にグラフを作成して考察する.

まず延長保育事業であるが,調査対象保育所のうち,実施保育所数は公営

12 ヵ 所,民営14 ヵ 所で,実施率は公営41%,民営36%となっている.

次に保育士加配数であるが,本稿では,保育士の加配数を次の手順で導出し た.年齢別の入所児童数から配置基準で必要とされる保育士数を計算し,その 合計を保育所全体での必要保育士数とし,実際の保育士数から必要保育士数を 差し引いた数を加配数とした.これを運営主体別に比較すると公営では,最低

423 )89 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

0 20 40 60 80 100(%) 

満足  ほぼ満足 

ふつう  やや不満 

不満  公 営 

民 営 2% 

25% 

1% 

2% 

49% 

48%  29% 

36% 

41%  59% 

56% 

7%  22% 

8% 

10% 

20% 

14%  3% 

8%  15%  5% 

23% 

21%  48% 

49% 

21% 

23% 

第 1 図 総合評価

(9)

でも2 人加配されており,最高11 人の加配5)が行われていた.公営全体では,

加配数5 人の保育所が22%と最も多く,ついで4 人加配,7 人加配,9 人加配

がいずれも14%であった.加配数が1 人〜 5 人までの保育所が公営全体の

46%となっていた.一方,民営保育所では配置基準よりも3 人不足している保

育所から最高11 人の加配となっていた.民営全体では加配数2 人が20%と最 も多く,ついで加配数4 人が15%,加配数5 人が13%であった.加配数が1

人〜5 人までの保育所が民営全体の68%を占め,全体として公営保育所よりも

保育士数が少ないといえる.

以上,運営主体ごとに調査対象保育所の延長保育実施状況および保育士加配 状況を概観した.延長保育は公営,民営とも40%前後の実施率であったが,保 育士加配数については,全体としては,公営保育所の方が加配されていると思 われる.

90424 ) 55 巻 第3 号

0 20 40 60 80 100(%) 

不明  実施せず 

実施  公 営 

民 営 

49% 

48% 

36% 

41%  59% 

56%  8 % 

7%  22% 

8% 

10% 

20% 

14%  3% 

8%  15%  5% 

23% 

21% 

36% 

41% 

56% 

59% 

第 2 図 延長保育実施率

(同志社大学少子高齢研究会アンケートより作成)

5)11 人加配されている保育所は,いずれも午前7 時から午後7 時までの延長保育ならびに一時保

育事業を実施している.

(10)

4

実 証 分 析

本稿では,民営化によって保育の質が低下するという保育サービス供給側か らの議論に対し,保育サービス需要者は運営主体のちがいが満足度に影響して いると考えているのか,また利用者にとっての保育の「質」とは何かを明らか にすることを目的としている.ここで保育の「質」の項目として以下の分析で 利用したものは,保育所の保育方針や行事等の情報について説明が十分行われ ているか(情報),子どもの様子を連絡ノートなどできちんと教えてくれるか

(連絡),子どもの清潔を保つため,おむつの交換や着替えがこまめに行われてい るか(衛生),保育所内で乳児と幼児が別室で保育されており,クラス担任が実 施されているか(環境),保育所内の清掃が行き届いているか(清掃),子どもに とって誤飲やけがの危険がない安全な玩具が与えられているか(玩具),散歩や 体操などの十分な運動が行われているか(運動)の7 項目について,5 段階評価 を尋ねた(以下では,順に「情報」「連絡」「衛生」「環境」「清掃」「玩具」「運動」と

425 )91 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

49% 

48% 

36% 

41%  59% 

56% 

0 20 40 60 80 100(%)

11 不明 

10 9

8 7

6 5

4 3

2 1

0

−1

−2

−3 公 営  民 営 

3 % 

3 %  5% 

7%  14%  2222%  14%  10% 

3% 

8% 

10% 

20% 

14%  3% 

8%  15%  13%  55% 

0% 

11% 

3% 3% 

23% 

21% 

7%  22% 

8%  20% 

10% 

8%  15% 

14%  3% 

5% 

第 3 図 保育士加配数(人)

(11)

表す).また,延長保育が実施されていれば,通常の開所時間で対応できない利 用者にとっては総合評価を高める要因となりうるし,保育士が多数配置されて いることで,よりきめ細かな対応が可能となり,総合評価を高めることも考え られる.そこで,これら2 項目を先の7 項目に加えて分析を行う.分析対象は,

前章で利用したサンプルで,標本数は,公設公営保育所310,公設民営保育所

655 で,全体としては965 となった.これらの基本統計量は以下のとおりである.

本稿の目的を達成するため,まず,運営主体のちがいが保育サービス需要者 の評価に差をもたらすのかを分析する.しかし,3 で得られたデータは,いず れも満足度を示す5 段階評価の順序尺度や属性を示す名義尺度であるため,質 的データとなる.このため,まずノンパラメトリック検定であるマン・ホイッ トニーのU 検定を用いて,運営主体のちがいが,ユーザー評価に差をもたらす のか検討する.これにより,もし「質」や総合評価に運営主体で差がみられる のであれば,少なくとも本調査においては,民営化による運営主体の変更が利 用者からみた「質」に影響を及ぼし得ることが考えられる.次いで,やはりノ ンパラメトリック検定であるクラスカル・ワリスの検定を使って,利用者全体

92426 ) 55 巻 第3 号

情 報  連 絡  衛 生  環 境  清 掃  玩 具  運 動  総合評価 

4.090323 3.490323 4.003226 4.409677 4 3.967742 4.006452 3.964516

0.857993 1.170665 0.943375 0.84181 0.812523 0.94111 0.948491 0.789514

0.736152 1.370456 0.889957 0.708644 0.660194 0.885687 0.899635 0.623332

1 1 1 1 1 1 1 1

5 5 5 5 5 5 5 5 平 均  標準偏差  分 散  最 小  最 大 

(出所)同志社大学少子高齢化研究会実施のアンケート結果から作成. 

第 3 表 公設公営保育所アンケート調査基本統計量

(12)

で保育に対する総合評価と利用者属性および保育の質と考えられる各項目に何 らかの差が確認されるかをみる.具体的には,総合評価で大変満足している利 用者と「ふつう」と答えた利用者で利用者属性や保育所からの連絡などに対す る満足度に差があるかを検討する.また保育所が実施している延長保育などの 事業や保育士の加配が利用者の評価に影響しているかを分析する.ここで差が 認められる項目は,総合評価に何らかの影響を与えていると考えられる.これ らの変数がどの程度,総合評価に作用しているかを分析するにあたって,先述 のとおり本稿で利用可能なデータは,いずれも満足度を示す5段階評価の順序 尺度や属性を示す名義尺度であるため,質的データとなる.それゆえ,通常の 回帰分析を利用することはできない.よって,最後に順序尺度や名義尺度に対 応できるカテゴリカル回帰分析6)を用いて,保育所利用者は「質」として何を 重視しているか,言い換えれば,どういった項目が総合評価を高めるのに作用

427 )93 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

情 報  連 絡  衛 生  環 境  清 掃  玩 具  運 動  総合評価 

4.033588 3.445802 3.88855 4.442748 3.883969 3.914504 4.070229 4.038168

0.914763 1.114147 0.89414 0.806703 0.896119 0.960387 0.935839 0.77227

0.836791 1.241324 0.799486 0.650769 0.80303 0.922343 0.875794 0.5964

1 1 1 1 1 1 1 1

5 5 5 5 5 5 5 5 平 均  標準偏差  分 散  最 小  最 大 

(出所)同志社大学少子高齢化研究会実施のアンケート結果から作成. 

第 4 表 公設民営保育所アンケート調査基本統計量

6)カテゴリカル回帰分析では,順序尺度の数量化を行うため,元のデータを正規分布に規準化し,

交互最小二乗法により,規準を満たすまで推定と数量化を行っている.したがって,通常の回帰分 析とは異なり,回帰式の妥当性検討,および各係数の有意確率の判定には,より一般性をもつF 検 定が用いられている.

(13)

しているかを分析する.なお,分析に用いたソフトは,SPSS Ver11.5 である.

(1)マン・ホイットニーのU 検定の結果

本稿での目的の1 つに運営主体のちがいによって「質」へのユーザー評価が 異なるのかを明らかにすることがある.そこで,民営化の際に議論となる運営 主体のちがいが総合評価や利用者の属性および保育の質をあらわすと考えられ る各項目や保育所の属性に差があるのかをマン・ホイットニーのU 検定を用い て検定した.

この結果,有意水準5 %で有意差が検定できたのは,妻の職業,養育費,衛 生,延長保育の実施状況,保育士加配数であった.このうち,衛生のみ5 %水 準で有意であったが,そのほかは,1 %水準でも有意であった.すなわち,公 営保育所と民営保育所では妻の職業,養育費,衛生,延長保育の実施状況,保 育士加配数に差がみられた.しかし,衛生以外で保育の質を表す各項目と総合 評価については,有意差が確認できなかった.よって,保育所の運営主体のち がいが,直接の利用者である子どもの年齢や衛生以外の保育の質にちがいをも たらしているわけではないと考えられる.つまり,保育所の総合評価や衛生以 外の保育の「質」を考えるとき,少なくとも本調査結果からは,保育サービス 需要者からみれば,運営主体がこれらを規定する要因ではないことが明らかと なった.

(2)クラスカル・ワリス検定の結果

マン・ホイットニーのU 検定により,運営主体によって総合評価に差がない ことが確認されたので,全保育所利用者を対象とし,全保育所利用者の5 段階 の総合評価間で利用者の属性である妻の職業,末子の年齢,養育費や保育の質 と考えられる「情報」「連絡」「衛生」「環境」「清掃」「玩具」「運動」の各項 目,延長保育の実施状況および保育士加配数に差があるのかを検討した.

この結果,有意水準5 %で保育の質と考えられる7 項目すべてについて有意

94428 ) 55 巻 第3 号

(14)

差が確認された.よって,総合評価で「不満」「やや不満」「ふつう」「やや満 足」「満足」の各評価間では保育の質を表す「情報」「連絡」「衛生」「環境」

「清掃」「玩具」「運動」の各項目に差があることが確認された.しかし,妻の 職業や末子の年齢,養育費,延長保育の有無および保育士加配数が総合評価に

有意水準5 %で差をもたらさなかった.

以上の結果から,本調査では,妻の職業,末子の年齢,養育費,延長保育の 実施状況,保育士の加配数は総合評価に影響せず,むしろ保育に対する総合評 価と保育の質を表す各項目のみが何らかの関係をもつことが確認できた.しか し,クラスカル・ワリス検定は総合評価と保育の質を表す各項目が何らかの関 係をもつことのみを示すものであり,どの程度の作用があるかはわからない.

429 )95 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

Mann-Whitney

のU Wilcoxson のW Z 漸近有意確率 

(両側) 

妻職業  末子年齢 

養育費  情 報  連 絡  衛 生  環 境  清 掃  玩 具  運 動  総合評価 

延 長  加配数 

87659.000 98252.500 86477.000 99023.000 98494.000 93963.000 100093.000 95069.500 98480.000 97666.000 96653.000 76913.000 38019.000

302499.000 146457.500 134682.000 147228.000 146699.000 142168.000 314933.000 143274.500 146685.000 312506.000 311493.000 291753.000 252859.000

−3.509

−0.821

−3.885

−0.656

−0.777

−1.967

−0.410

−1.694

−0.792

−1.010

−1.301

−5.563

−15.802

0.000***

0.411 0.000***

0.512 0.437 0.049**

0.682 0.090 0.429 0.313 0.193 0.000***

0.000***

***は 1 %水準,**は 5 %水準で有意であることを示す. 

(出所)同志社大学少子高齢化研究会実施のアンケート結果から作成. 

標本数 公営保育所;310 民営保育所;655

第 5 表 マンホイットニーのU 検定統計量

(15)

そこで,保育の質を表す各7 項目が満足度である総合評価にどの程度作用して いるのか,カテゴリカル回帰分析を用いて検討する.

(3)カテゴリカル回帰分析の結果

クラスカル・ワリス検定では,総合評価と保育の質を表す7 項目が何らかの 関係をもつことが示された.そこで,保育サービス需要者が保育所の評価をす るときにどういった項目を重視しているのか分析するため,カテゴリカル回帰 分析を行う.

推定式

総合評価=A1×情報+A2×連絡+A3×衛生

+A4×環境+A5×清掃+A6×玩具+A7×運動 この結果から,推定式も1 %水準で有意であり,また,いずれの項目も係数

96430 ) 55 巻 第3 号

カイ 2 乗 漸近有意確率  妻職業 

末子年齢  養育費  情 報  連 絡  衛 生  環 境  清 掃  玩 具  運 動  延 長  加配数 

4.329 5.401 0.960 271.779 192.524 234.112 160.821 188.069 281.731 252.581 4.892 4.850

0.363 0.249 0.916 0.000***

0.000***

0.000***

0.000***

0.000***

0.000***

0.000***

0.299 0.303 自由度はいずれも 4 である.

***は 1 %水準,**は 5 %水準で有意であることを示す. 

(出所)同志社大学少子高齢化研究会実施のアンケート結果から作成. 

標本数 965

第 6 表 クラスカルワリスの検定統計量

(16)

は正で,1 %水準で有意となった.さらに重要度をみると,情報,玩具,運動,

連絡,衛生,清掃の順で重要視されていることがわかった.すなわち,保護者 は保育所から行事予定などの情報を適切に提供されることで総合評価を高め,

子どもに年齢に応じた危険のない玩具が与えられているか,散歩などが行われ ているかといった事柄も順に総合評価に正の影響を与えていることがうかがわ れる.

(4)考察

マンホイットニーのU 検定と前章のグラフをあわせてみると,運営主体別で は,民営保育所に子どもを預ける母親は,ややフルタイムで働く方が多く,結

431 )97 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

回 帰  残 差  合 計 

447.470 517.530 965.000

22 942 964

37.022***

平方和  自由度  F 値 

(1)分散分析

情 報  連 絡  衛 生  清 掃  玩 具  運 動 

0.227 0.149 0.129 0.135 0.198 0.158

3 4 4 4 3 4

63.797***

31.381***

19.994***

24.443***

46.719***

31.104***

標準化係数 

パラメータ  自由度  F 値 

(2)係  数

***は 1 %水準で有意であることを示す. 

(出所)同志社大学少子高齢化研究会実施のアンケート結果から作成. 

標本数 965

重相関係数 0.681 R 2 乗 0.464 調整済み R 2 乗 0.451 第 7 表 保育所利用者全体の推定結果

(17)

果として保育料も高くなっているため,養育費にも差がみられたと推察される.

また,延長保育の実施状況は,公営の実施率の方がより高いことがわかる.調 査時点(2001 年)で末子の平均年齢が2 歳であるので,すでに契約制度に移行 していたと考えられ,A 市においては,フルタイムで働きながらも延長保育が より多く実施されている公営保育所よりも民営保育所が選好される結果になっ たと思われる.

だが,マンホイットニーのU 検定およびクラスカル・ワリスの検定結果から,

運営主体のちがいが衛生以外の保育の質や総合評価に影響せず,総合評価のち がいが保育の質の各項目には影響することが確認された.これは,我が子を預 ける場合は,ともかくも子どもに対して十分な配慮がなされているかというこ とが重要だと考えていることのあらわれといえる.

また,カテゴリカル回帰分析の結果から,個別の「質」に関する項目では,

保育所の行事や保育方針など保育所全体のことがらを伝達してくれるかどうか に極めて高い関心が示された.これは,親のスケジュール(特に有給休暇をとる 必要があるかなど)や物品等の準備と密接に関わってくるので,少しでも早く知 りたいためと考えるのが妥当である.

また,子どもの1 日の様子をきちんと連絡してくれるかどうかにも高い関心 が持たれていることがわかった.これは,保護者であれば当然の関心といえ,

自分のいない間に子どもがどんなふうに過ごしたのか,ただ,ケガや病気をし なかったかどうかだけでなく,日々の成長を知りたいと願う気持ちがこの結果 となったと推察される.

直接の利用者である子どもと保育所の関係という視点では,保護者は,子ど もが直面する玩具,運動,衛生,清掃状態が適当かどうかという事柄に強い関 心を抱いているといえる.これは,危険のない玩具や情操や発達を促進する玩 具が適宜与えられるかどうかや散歩を含めた運動を十分行うことが,子どもの 成長に不可欠なことであるから,重要視されていると理解できる.また,着替 えやおむつ交換などの衛生管理や清掃が十分行われていなければ,子どもは不

98432 ) 55 巻 第3 号

(18)

潔を強いられることになる.特に3 歳以下の小さな子どもにとっては,自分で 着替えることはおろか,排泄,食事といった基本的な動作が十分できない上に 言葉での伝達も完全ではなく,保護者が強い関心を抱くのも当然であろう.

しかし,以上の3 つの分析から,保育所利用者は保育士が加配されていると いう量的な拡充よりも,これまでみたように,子どもに対して十分なケアが行 われているか,日々の子どもの様子が保護者に伝達されているか,保育所の情 報が的確に保護者に提供されているかどうかによって,保育所の評価を決定し ていると思われる.

5

結論と今後の課題

今回の分析では,保育所利用者全体の場合と運営主体別の場合の双方ともに 玩具,運動といった日常生活に保護者の関心が寄せられていることがわかった.

これは前章でも述べたとおり,保護者は,保育者と十分言葉でのコミュニケー ションがとれない子どもにとって快適な保育環境が与えられているかどうかに 細心の注意を払っている状況がわかる.しかしながら,自由記述欄をみると,

個別の保育所にあっては,約束の時間以外には,絶対子どもを預かってくれな い保育所や体罰が加えられている保育所すらあることが述べられていた.さら に,保育所の施設条件に関しては,全保育所利用者の保育所に対する総合評価 に対して延長保育事業は影響していない.また,保育士の加配数も影響がない.

これらの結果から,保護者からみた保育の「質」は直接の利用者である子ども にとって望ましい保育環境が十分に与えられているか,そして保護者への情報 提供が適切に行われているかどうかであり,本稿においては,それが必ずしも 保育士の数によってもたらされるとはいえないことが確認された.これは民営 化によって保育士加配数が減ることが即,保育の「質」低下につながるとは考 えられないことを示している.むしろ,各乳幼児の様子や保育所全体の情報を 開示することで保護者にとってよき育児のパートナーとなることが各保育所に 求められていることのあらわれといえるだろう.よって,民営化問題を議論す

433 )99 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

(19)

る際に保育の「質」という観点からは,運営主体が問題なのではなく,最低限 の保育環境を保障することはもとより,保護者との情報共有ではないだろうか.

今回の分析では,サンプル数を増やすため,採用した質問項目が少なくなっ ている.この点を改善し,より保育の「質」を明らかにすることを今後の課題 としたい.

謝 辞

アンケート調査にご協力いただいた多数の保育所利用者の皆様,保育所所長先生方ならびに関係者 の方々に厚く御礼申し上げます.

本稿の作成にあたっては,八木 匡氏(同志社大学),伊多波良雄氏(同志社大学)の厚いご指 導・ご教示を賜りました.また,岩本康志氏(一橋大学)から貴重なコメントを頂戴いたしました.

記して感謝の意を表します.当然のことながら,本稿の誤りはすべて筆者によるものです.

100434 ) 55 巻 第3 号

(20)

【参考文献】

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村上雅子,(1999)『社会保障の経済学』(第2版)東洋経済新報社.

社会福祉法人全国社会福祉協議会・児童福祉施設におけるサービス評価のあり方検討委 員会,(2000)『児童養護施設サービス自主評価基準』.

社会福祉法人全国社会福祉協議会・児童福祉施設におけるサービス評価のあり方検討委 員会,(2000)『母子生活支援施設サービス自主評価基準』.

牧 厚志・宮内 環・浪花貞夫・縄田和満,(1997)『応用計量経済学Ⅱ』多賀出版.

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駒村康平,(2002)「保育サービス費用分析と需給のミスマッチの現状」『少子社会におけ る育児支援』国立社会保障・人口問題研究所編,東京大学出版会, pp. 291-312.

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pp. 74-93.

435 )101 ユーザー評価にみる保育の「質」に関する統計分析(塩津ゆりか)

(21)

The Doshisha University Economic Review Vo.55 No.3

Abstract

Yurika SHIOZU, An Empirical Study on the Quality of Nursery School by Users Evaluation

The Japanese Government suggests that nursery school administration should be placed under private management to take measures to meet the prob- lem of declining population. A previous study points out the degradation to be caused by privatization from a suppliers point of view, and many other studies do not pay attention to this problem from a users point of view.

This paper uses an original questionnaire to clarify both the quality of nurs- ery school for users and the relation between the managers and users in evalua- tion by Mann-Whitney s U-test, Krascal-Warris test and categorical regression.

The main findings are that information is valued highest by users and that the managerial difference does not affect the quality of nursery school and the total satisfaction.

102436 ) 55 巻 第3 号

参照

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