流通証券法の基礎概念
その他のタイトル Wertpapier und ,,Negotiable Instrument" im anglo‑amerikanischen Recht
著者 福瀧 博之
雑誌名 關西大學法學論集
巻 48
号 3‑4
ページ 911‑964
発行年 1998‑12‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00024498
流通証券法の基礎概念
福 瀧 博 之
目 次 一流通証券の意義 二流通証券法の基礎概念 三アメリカ手形法の基本法理
問題の所在 流通証券の意義
一定の金額の支払を目的とする有価証券と理解されており︑有価証券a
T e r t
p a p i
e r )
という概念は︑手形法の研究においては重要な位置を占めている︒しかし︑これは︑ドイツ私法解釈学の特殊性に由
来するものであり︑英米法においては事情が異なる︒もっとも︑英米法にも︑流通証券
( ne g o ti a
b le
i ns t r um e
n t)
と
いう概念があり︑ある意味においては有価証券と類似の機能を営んでいるが︑有価証券とは基本的な考え方を異にす
ると
考え
られ
る︒
近時︑わが国の文献においても英米の手形法に言及するものが少なくないが︑手形︵小切手︶の経済的機能の類似
にもかかわらず︑法的には︑大陸法と英米法とが単純な比較に馴染むかどうかは︑はなはだ疑問である︒本稿は︑両
者の相違を確認することを一の目的とする︒なるほど︑これは︑従来からよく知られているところであるが︑本稿に
おいては︑流通証券と有価証券の概念の相違の指摘︵本節︶に止まらず︑さらに進んで︑手形が流通証券の一として
法的に位置付けられる場合に用いられている他の法的概念にも注意を喚起したいと考える︵ニ流通証券法の基礎概
念︶︒いくっかのわが法︵大陸法︶には見られない基本的な用語ないし概念が重要な役割を担っている︒これらの概
念を前提にして始めて︑英米手形法の基本的な仕組みの理解も可能となると考えたからである︵三アメリカ手形法
の基本法理︶︒なお︑本稿において取り上げるような抽象的な議論の次元では︑アメリカ法もその母法であるイギリ
ス法も基本的には同じであると解するが︑ここでは︑主としてアメリカ法を中心に考察することにする︒
流通
証券
法の
基礎
概念
わが国においては︑手形は︑
四三 七
︵ 九
一 三
︶
co
mm
en
t 1
参照
︶︒
ものである︒流通性
( n e g
o t i a
b i l i
t y )
の意味に関しても議論はあるが︑流通性とは︑①証券︵流通証券︶が特有な流
通
( n e g
o t i a
t i o n
)
という方法で譲渡できること︑②そのような譲渡の効果として︑譲受人︵流通による譲受人が
h ol
,
de
r
︹所
持人
︺ ( de f e ns e )
および権利の主張
( c l a
i m )
(3 )
ばで
ある
︒
である︶は︑自己の名において訴求でき︑また善意有償の譲受人︵所持人︶は譲渡人に対する抗弁
(2 )
の対抗を受けないこと︑などの流通証券の特徴を示すために用いられること
(U CC
では
︑
d r a f
t ︑
BE
Aで
は︑
b i l l
o f ex
ch
an
ge
)
および小切手
(U CC
では
︑
ch
ec
k ︑
BE
Aで
は︑
ch
eq
ue
)
具体的に流通証券とされる証券の典型は︑約束手形
(U CC
では
︑
no
te ︑
BE
Aで
は︑
pr
om
is
so
ry
n ot e
)︑為替手形
(4 )
であ
る︒
則として一定の金額の支払を単純に約束し︑または指図する指図式または持参人払式の﹁署名のある書面﹂であって
一覧払または特定のときに支払われるものをいうとされている
( C f .
, UCC§3 ,
1 0 4 (
a ) ( c
) ( d )
) および
uc c§ 10 4,
二︑流通証券ないし流通性の意味を以上のように捉える場合︑これは︑換言すれば︑その証券が流通証券に特有な方 アメリカ合衆国の統一商事法典
(U
CC
)
第三
編に
は︑
一種の定義規定があり︑それによれば︑流通証券とは︑原 流通証券とは︑金銭債権を表章する証券であって とばが用いられている︒ 一︑流通証券
( ne g o ti a
b le
in
st
ru
me
nt
)
2 第四八巻第三•四合併号
流通証券の意義
四三 八
︵九
一四
︶
とは︑端的にいえば︑流通性
( n e g
o t i a
b i l i
t y )
と呼ばれる一定の特徴を有す
る証券である︒英米法には︑わが国の有価証券に当たることばはないが︑それに類するものとして流通証券というこ
関法
(1 )
( C f ・
, ucc§3 ,
1 0 4 (
a ) )
︑流通性と呼ばれる一定の性質を有する
法︵すなわち︑
ne go ti at io n
︹流
通︺
︶ 渡 の 譲 受 人 で あ る
﹁ 所 持 人 (h ol de r)
﹂には一定の効果が認められていること︑とりわけ一定の要件を充たせば正当
所 持 人 (h ol de r in du e cou rs e)
理解する場合には︑右に見るように︑
ne go ti at io n
︹流通︺とか
ho ld er
︹所持人︺といったことばの意味するところ
( 5)
が重要な意味をもってくることになる︒次節において取り上げることにする︒
(1 )
周知のように︑アメリカ合衆国の統一商事法典
(U CC
; Un if or m C om me rc ia l Code)
は︑統一州法委員全国会議
(N CC US L)
とアメリカ法律協会
( A L I
) が起草したいわゆる統一法であり︑各州の制定法のモデルという性格を有するものであるが︑
その第三編は︑わが国の手形法︑小切手法とほぼ同様の分野を規整の対象としている︒
統一商事法典第三絹は︑コモン・ローを法典化したものというべき英国為替手形法
(B EA
; B r
i ti s h B i l l s o f Ex ch an ge A ct , 1 88 2)
に範をとった統一流通証券法
(N IL
; Ne go ti ab le n I st ru me nt Law ,
18 96 )
を前身とするものである︒統一流通証
券法
(N IL )
は︑すでに一九二0年代には︑すべての州において採用されていたが︑一九四0年代後半にその改正が議論さ
れるようになり︑結局︑統一商事法典
(U CC
; Un if or m C om me rc ia l Cod e)
の制定(‑九五二年︶に伴って︑統一商事法
典第三編商業証券
(C om me rc ia lP ap er )
とされたものである︒
統一商事法典は︑最初の
O f f i c i a l eT xt
であるUCC1952
O f f i c i a l Te xt
以来︑数次にわたって改正されたが︑第三編は︑
重要な変更を加えられることなく︑すぺての州において採用されてきた︒しかし︑この統一商事法典第三編も一九九
0年
に
至って全面的に改正され︑その表題も︑︹改正︺第三編流通証券([
Re vi se d] A r t ic l e 3
Ne go ti ab le In s t ru m e nt s )
と改称され
ている︒以下において︑特に断らないで︑たとえば︑
u c c
§ 3
, 302とか︑統一商事法典三ー三0二条というように引用す
る場 合に は︑
UCC1990
O f f i c i a l Te xt
の条文︵規定︶を表示するものとする︒なお︑統一商事法典︹改正︺第三編流通証券
の邦訳については︑澤田壽夫編集代表・解説国際取引法令集︵三省堂・一九九四︶参照︒
(2
)
この②の後半は︑換言すれば︑正当所持人
( ho l d er i n d ue
c 0日
s e ) の制度が認められているということである︒
( 3 )
流通性ということばは︑流通証券に特有な流通の方法による譲渡の効果︑とりわけ善意有償の譲受人を保護する正当所持
流通証券法の基礎概念
で譲渡可能なこと︑およびその効果
1
そのような譲渡方法︹流通︺による譲 と
な る こ と ー を い う も の に 他 な ら な い
︒ ア メ リ カ 手 形 法 の 流 通 証 券 を こ の よ う に 四三
九
︵九
一五
︶
関法第四八巻第一――•四合併号
人の制度が流通証券に認められていることを指すことが多いが︑場合によっては︑流通証券の成立のために記載すべき要件
︵手 形要 件︶
︵ r eq u i si t oe s f n e go t i ab i l it y )
の意味で用いられることもあり︑この意味の流通性︵すなわち︑手形要件︶のう
ち︑とくに指図文句および持参人払文句を総称して流通文句
(w or ds of ne g o ti a b il i t y) とい うこ とも ある
︒
さらにいえば︑右に述べたところに加えて︑約因の推定も流通性の属性とされることがある︒たとえば︑上柳克郎﹁イギ
リス手形法成立史の概観﹂法学論叢五七巻一号七九頁︑八一頁註四参照︒
流通性の多義性に関しては︑すでに簡単に述べたことがある︵拙稿﹁手形における権利と権利と証券の結合について﹂拙
著・教材現代手形法学︵法律文化社・一九八八︶八一頁以下所収︵初出︑関西大学法学論集二七巻三号︹一九七七︺︶︑九五
頁以 下参 照︒
(4
)
従来︑統一商事法典においては︑商法取引において用いられている証券を商業証券
(c om me rc ia l pa pe r)
︑投資証券
(i nv es tm en t s e cu r i ti e s ) および権原証券
(d oc um en ts of ti t l e ) に分類し︑商業証券とは︑為替手形
( dr a f t)
︑小切手
(c he ck
)︑預金証書
( ce r t if i c at e of de p o si t )
および約束手形
( no t e )
をいうものとしていた︒たとえば︑UCC
(U ni fo rm Co mm er ci al Cod e)
1972
O ff i c ia l Te xt
のucc§3,
1 0 4
(2 )
(3)~
照︒これに対して︑UCC1990
O ff i c ia l Te xt にお いて ほ︑
第三編の表題は︑従来の﹁商業証券﹂から﹁流通証券
( ne g o ti a b le in st ru me nt s)
﹂に変更され︑第三編の適用範囲も流通証
券に限定されている
(u cc
§3
, 1 0
2 ( a
) )︒もっとも︑商業証券とは︑﹁金銭の支払を目的とする流通証券であって︑本来︑
商取引に利用されてきたもの﹂をいうものであり︑1990
O ff i c ia l Te xt
における流通証券の定義も︑基本的には従来のそれ
と同じである
( C f .
, UCC§3 ,
1 0 4
( a) ( e) ( f) ( j) )
︒
( 5
)
この問題は︑すでに別の機会に︑UCC1972
O ff i c ia l Textにもとづいて相当詳しく紹介・検討したことがある。拙稿•前
掲﹁手形における権利と証券の結合について﹂拙著・教材現代手形法学八一頁以下所収10
一頁 以下 など 参照
︒
次節以下において見るように︑本稿は︑基本的には︑かつて右の論文において述ぺたところを維持するものであり︑先に
述べたところをUCC1990
O ff i c ia l Te xt
にもとづいて再確認するものである︒
四四
0
(九
一六
︶
流通証券法の基礎概念
四四
Sp
ei
de
l/
Z
i c k l
e s ,
Ne
go
ti
ab
le
n I
st
ru
me
nt
s a
nd
Ch
ec
k C o ll e c ti o n .I n
A
Nu
ts
he
ll
( 4 t
h .
19 93 )
わが国の手形法に関する一般的な理解を前提にアメリカ手形法を眺めるときに︑先ず︑目を惹くのは︑右に見たよ
うな大きな枠組みの相違︵有価証券と流通証券という枠組みの相違︶であるが︑次に問題となるのは︑アメリカ手形
法においてーー判例︑統一商事法典第三編
(U CC A rt i
c le 3
)
およびその他の文献においてー用いられる用語の相
違であろう︒このような用語の相違は︑筆者のように主として大陸法の知識を前提にしてアメリカ手形法の文献を播
く者にとっては︑アメリカ手形法ないし英米手形法の理解の大きな障碍になると解される︒
ここでは︑わが国の手形法︵手形法学︶にとっては必ずしも馴染みはないが︑他方︑アメリカ手形法の仕組みに
とってーー'したがって︑またアメリカ手形法の理解にとって1重要な意味を有すると解されるいくつかの基礎的な
英米法に関して発言するためには︑本来︑判例の検討分析が不可欠の前提となると考えるが︑筆者は︑ここではそ
の準備と能力に欠ける︒ここでは︑ある概説書の記述と統一商事法典第三編の規定ならびに統一商事法典第三編のオ
フィシャル・コメントなどを参考にして︑多少の説明を試みることで満足せざるをえないであろう︒すなわち︑以下
においては︑主として︑
Sp
ei
de
l ¥
Z
i c k l
e s ,
Ne
go
ti
ab
le
n I
st
ru
me
nt
s a
nd
Ch
ec
k C o ll e c ti o n I
n
A
Nu
ts
he
ll
( 4 t
h .
19 93
な)
どの記述を手掛かりにして︑アメリカ手形法に特有ないくつかの基礎的な概念をアト・ランダムに取り上げて︑若干
(1 )
の考察を試みたいと考える︒
流通証券法の基礎概念 概念に限って多少の理解を試みたい︒
︵九
一七
︶
第四八巻第一―-•四合併号
流通証券法の基礎概念
それでは︑いかなる概念またはことばを取り上げるべきであろうか︒前述のように英米手形法の特徴の一を流通証
券概念に見る本稿の立場からは︑先ず︑
ne go ti at io n
︹流通︺およびそれと関連する
ho ld re
︹所持人︺といったこと
概念にも言及すべきであろう︒私見によれば︑英米手形法に特有な権利概念は︑その権利の主体︵すなわち︑権利
者︶に関する特有の概念を生み出すとともに︑さらにその権利の譲渡に関しても特有の概念を伴っているのである︒
以下に列挙するような概念︵用語またはことば︶を取り上げることにする︒
pr op er ty pr op er ty
と
co nt ra ct
︵九
八一
︶
︵あるいは︑それに先立って︶英米手形法︵英米法︶に特有な権利
(2 ) I ns t r um e n ts a r e , i r s f t , c o n t r a c t s . Th ey em bo dy n f e o rc e a bl e promises
to p ay mo ne y.
•· •
• •
I n •
s tr ・ u me n t s a r e a l s o
p ro p e rt y .
﹁︹
流通
︺証
券は
︑先
ず︑
契約
であ
る︒
強制
的に
実現
可能
な金
銭の
支払
約束
を表
章す
るも
ので
ある
︒⁝
⁝︹
流通
︺証
券は
︑ま
た﹁
産財
( pr o p er t y )﹂
でも
ある
︒﹂
一定の金額の支払を目的とする有価証券であるとされている︒そこで問題となって
いる権利関係ないし法律関係は、債権||、銭債権~の法律関係である。学説によっては、さらに手形の所有権が
(3 )
問題とされることもある︒
これに対して︑英米法における流通証券または手形との関係で強調されるのは︑①契約
( co n t ra c t )
一︑わが国においては︑手形は︑ (1) ばを検討すべきことはいうまでもないが︑併せて 2 関法
四四
および②
pr op er ty
の法律関係である︒アメリカ法においては︑手形は︑先ず︑契約
( co n t ra c t )
として位置付けられている︒
一般に︑英米の
pr op er ty
概念は︑わが国の不動産・動産を合わせたものよりも
(7 )
広く︑いわば﹁財産﹂に相当すると解されている︒
財産
(p ro pe rt y)
と人的財産
(p er so na lp ro pe rt y)
に分類される︒物的財産は︑わ
(8 )
が国の不動産にほぼ匹敵するといわれている︒他方︑人的財産は︑さらに動産
( ch a t te l ) pr op er ty )
とに分類される。そして、無形財産には、預金•株式・社債・公債、各種無体財産権および一般の債権
(9 )
︵1 0 )
(c ho se n iaction)
などがふくまれる︒
手形が
pr op er ty
であるといわれる場合︑考えられるのは︑右にいう動産
( ch a t te l )
または債権
(c ho se i n a c ti o n ) ( 11 )
としてであろう︒そのいずれと解するについては見解が分かれるが︑たとえば︑^^
Li ke ot he r k in ds of co n t ra c t s, ( 12 ) co mm er ci al
pa
pe r is property,
•••••
"
(﹁
柚心
の稲
巴類
の契
約と
同様
に︑
商業
証券
︹流
通証
券︺
は pr op er ty
であ
る﹂
︶と
いわれる場合には︑むしろ債権
(c ho se i n action)
としての
pr op er ty
を指すものであろう︒
流通証券法の基礎概念
(p ro pe rt y)
(4
)
手形は、契約の特殊な場合であるとされる。特に手形行為者ーたとえば、約束手形の振出人ー~が手形上責任を負
(5 )
うかどうかの問題との関係においては︑この側面︵契約としての側面︶が強調される︒したがって︑アメリカ手形法
を理解するためには︑英米法に特有な
co nt ra ct
(契
約︶
︵しかも︑捺印契約ではなく︑単純契約としてー│'︶理解されている
二︑しかし︑それ︵独自の特殊な契約であること︶以上にわが国の手形法と異なるのは︑アメリカ法においては︑併
(6 )
せて︑手形の
pr op er ty
としての側面が強調されていることである︒大陸法の理解を前提にすると︑このことば
は︑物的財産
( re a l pr op er ty )
の訳出は容易ではない︒ Jとに言及するに止まる︒ ︵流通証券︶は契約の特殊な場合であると
と無形財産
( in t a ng i b le
の概念にも立ち入るべきであると考えるが︑ここでは︑手形
四 四一 ︱
︱
︵九
一九
︶
については︑後述に譲り︵アメリカ手形法の基本法理︶︑ここでは立ち入らない︒ 第四八巻第三•四合併号
︵ 九 ︱
1 0 )
⁝
. . . i t i s se en h a t t a
n e q ui t o f y ow ne rs hi p a nd
a l e
g al t i t l e wi th re s p ec t o t
a n e
g ot i a bl e n s i t ru m e nt a r e p r o pe r t y r i g h t s , u s ua l , l y a s se r t ed b y t h e o wn er n is om e a f fi r m at i v e a c ti o n a g a in s t a n a l le g e d w ro ng fu l p o ss e s so r w , he re as an eq u i ty o f d ef en se i s ( 13 ) u su a l ly a ss e r te d de f e ns i v el y in a n a c ti o n b ro ug ht by a p a r ty a ga i n st t he maker,
ac c e pt o r , d ra we r o u n r q ua l i fi e i n d d or s e r.
﹁証
券に
対す
る an e qu i t y o f own
er sh ip
およ
び
a
l e g a t i l t l e
は︑
ーー
4通常︑違法な占有者とされる者に対する訴訟
( af f i rm a t iv e ac t i on )
にお
いて
所有
者 (o wn er )
によ
って
主張
され
るー
ーー
財産
上の
権利
( pr o p er t r i y g h t )
であ
る︒
⁝⁝
︹以
下
訳出省略︺⁝⁝﹂
( 13 )
右は
︑ Br it to
nの教科書からの引用であるが︑
ow ne rs hi
pまたは
t i t l
e ︑さらには
pr op er ty r ig h
tの関係を端的に示
す記述として注目される︒手形ないし流通証券を財産
(p ro pe rt y)
として捉える場合に︑その財産上の権利
(p ro pe
r ,
ty i g r h t) が ︑ ow ne rs hi pな
ので
ある
︒も
っと
も︑
^^
an eq ui ty f o own er sh ip
"
と ^ ^
a
l eg a t i l t l e
︹ ゜
wn er sh ip )"
との関係
右に
いう
^^o
wn er sh ip
"
という語は︑多く﹁所有権﹂と訳出されるが︑財産
(p ro pe rt y)
概念が前述のようなもので
あることからすれば︑これは不正確である︒しかし︑この文脈において︑﹁所有権﹂とは︑必ずしも物権である所有
権を意味するものではなく、英米法にいう「財産(property)」に対する権利である‘ー~しかも、多くの見解では、
前述のように債権
(c ho se i n a ct io n)
に対する権利である︑1という理解のもとにこの訳語を用いることは可能で
あろう︵財産権という訳語も考えられるが︑これでは︑あまりにも漠然としている︶︒
また︑少なくとも英米の流通証券︵または手形︶に関する文献においては︑この﹁所有権
(o wn er sh ip
)﹂という ②
ow ne rs hi pまたは日
l e
関法
四四 四
は︑その手形にもとづいて権利を行使すること
(3)
四四 五
にもとづいて訴を提起することができ 語と互換性のあることばとして
e "
t i t l e "
ということばも用いられているのである︒
ow ne rs hi
pと
ho ld er sh ip
ないし
th er ig ht to n e fo rc e t he in st ru me nt In st ru me nt s a r e a l s o
p ro p e rt y . Th ei r o wn er sh ip i s a s s ig n a bl e a, nd en f o rc e a bi l i ty i s t r a n s f e r a b l e . S i g n i f i c a n t l y , ow ne rs hi p o f a
n i n st r u me n t a nd th e ri g h t t e n o f or c e i t a re no t t h e s am e o r i n s ep a r ab l e . Th ey f t o e n c o i n c i d e , u b t t he y c an sp l i t s o t h a t so me on e o t he r th an th e ow ne r o f a n i n st r u me n t can n f e o rc e
it•
so me ti me s ev en h w en th e in s t ru m e nt w
as t o s l en fr om th e ( 14 )
0 w
ne r.
﹁︹流通︺証券は財産でもある︒その所有権は譲渡可能であり︑証券上の権利を︹訴訟において︺強制的に実現することので
きる権利も譲渡できる︒重要なことは︑右の所有権と証券上の権利を強制的に実現する権利とは同一のものでもなければ︑不
可分なものでもないということである︒両者は多く一致するが︑しかし両者は分離することができるのであり︑したがって︑
証券の所有者以外の者が証券上の権利を強制的に実現することもできるのである︒ときによれば︑証券が所有者から盗取され
た場
合で
あっ
ても
そう
なの
であ
る︒
﹂
一︑問題は︑むしろこの﹁所有権
(O
目
1e rs hi
p ;
t i t l
e ) ﹂に伴う法的効果である︒先ず︑手形という財産に関してその
﹁所有権﹂を有する者は︑その権利が違法に侵害された場合ーたとえば︑盗取された場合ーにその占有の回復を
( 15 )
求めることができる︒または︑﹁所有権﹂を有する者は︑横領
(c on ve rs io n)
るのである︒
しかし︑手形を有する者にとって重要なのは︑たとえば︑盗まれた手形を取戻すことだけではない︒より重要なの
流通証券法の基礎概念 ︵手形の支払を受けること︶である︒そのような視点から問題にされ
︵九
ニ︱
)