様式8の1の1 別紙1
論文の内容の要旨
専攻名 システム創成工学 氏 名 田代知範
第1章では,グレアすなわち眩しさについて視覚科学的観点からの分類,照明環境整備のため の不快グレア評価式およびLEDのグレア評価に関する既住研究について抄録され,これらを踏ま えて,本研究の背景および目的が述べられている.本研究の目的は,不快グレアの主観的評価と 様々な空間的レイアウトを有するLED光源の測光量との定量的関係を明らかにし、LED光源にも適 用可能な新しい不快グレア指標を確立することである。近年,蛍光灯や白熱灯等の従来光源に代 わり,様々な場面で使用されるようになってきた白色LED光源の特徴の一つに,空間的レイアウ トの自由度の高さが挙げられる.通常,一つのLED光源は様々な幾何学的配置に並べられた多数 の小さなLEDチップによって形成されている.これは,LED光源の利点であると同時に,光の空間 的な不均一性を生成し,観察者の不快グレア評価に対し悪影響を及ぼす可能性がある.現状とし て,不快グレア評価に対する光の空間的不均一性の影響を,LED光源を用いて調査した研究は少 なく,その要因や影響の程度については未だよく分かっていない.照明は通常,視界確保のため の十分な明るさを維持しつつグレアは少ないという相反する要求を同時に満たさなければならな い.故に,観察者に良好な視認性を提供するグレアレスな照明の設計方法を確立することは,照 明工学における最重要課題の一つであり,LED光源に対する不快グレアの制御もそれに含まれる.
第2章および第3章では,各種測光量と不快グレア評価との定量的関係を明らかにするために行 われた,様々な空間的レイアウトを有するLED光源を使用した4つの主観評価実験が説明されてい る.各実験はそれぞれ,光源発光面の光学的均一性の効果,LEDマトリクスのピッチ長の効果,
固定領域内のLEDチップの実装密度の効果,光の均一性の効果を検討したものである.これらの 実験においては,全部で17パターンのLED光源が使用され,各LED光源はNDフィルタにより7段階 の明るさレベルに調光して被験者に提示された.夜間屋外環境において高さ4.5mの街路灯を20m の視距離で観察する場合,仰角は8.5°となる.これを模擬するために,暗幕で覆われたブース 内に,1.7mの高さにLED光源を設置し,その直下0.4mつまり約1.3mの高さにある注視点を,3mの 視距離から顎台で頭部を固定した被験者に観察させた.これで仰角は8.5°である。不快グレア の主観評価スケールには,松田らの9段階スケールが採用された.
不快グレア評価との定量的関係を検討する測光量として眼前照度,光源領域での平均輝度,有 効領域での平均輝度の3つが検討された.全17パターンのグレア源の結果から,眼前照度および 有効領域での平均輝度は,不快グレア評価と概ね良好な相関関係を示した.しかしながら,比較 的均一な光源の結果群とその他の不均一な光源の結果群との間には差異が見られた.これは,均 一光源もしくは不均一光源に限定した場合,それらの測光値は不快グレア評価に関して良い指標 となるが,全ての光源をまとめて比較する場合適切な指標とは言えないことを表している.一方,
光源領域での平均輝度は,異なる条件間の評価カーブに大きなズレが生じてしまい,適切な測光 量でないことが明らかとなった.
第4章では,全ての条件における評価カーブを良好に一致させ得る測光量探求と,本研究の最 終的な目標である様々な空間的レイアウトに対応する不快グレア評価式確立について述べられて いる.本研究では,2次元色彩輝度計により光源領域内の各ピクセルの輝度値が取得されている.
そこで,各ピクセルの輝度値に応じた単調増加な重み付け関数を仮定し,新しい測光量の候補で ある有効グレア輝度を定義した.全実験に対する不快グレア評価値と有効グレア輝度との関係を 調査したところ,全ての評価カーブが他の測光量に対してプロットした時と比べ非常によく一致 する結果となった.これは,重み付け関数を使用して計算した有効グレア輝度が主観的な不快グ レアの程度を説明するための有効な候補であることを示唆している.次に,有効グレア輝度を利 用した様々な不快グレア評価式確立の試みが述べられている.ここでは,国際照明委員会CIEに より提案されている従来光源用の不快グレア評価式UGRに有効グレア輝度を組み合わせた新しい 評価式 mUGRが提案された.mUGRでの予測値は,全条件での主観的な不快グレア評価値と非常に 高い相関を示し,mUGRが光源の空間的レイアウトの違いによらず不快グレアの程度を良好に予測 できることを示唆している.
第5章は,本論文の総括である.本研究では,不快グレアの主観的評価と様々な空間的レイア ウトを有するLED光源の測光量との定量的関係を調査するために4つの主観評価実験が行われた.
その結果,全ての結果を良好に説明できる測光量の候補として,重み付け関数を使用した有効グ レア輝度が提案され,それを用いた新しい不快グレア評価式 mUGRが導かれた.本研究は,グレ アレスかつ十分な視認性を確保できる光源の開発・設計に役立つと考えられる.