インバウンド観光振興に関する研究―日本の観光政 策の変遷と旅行者行動分析―
著者 野瀬 元子
学位授与大学 東洋大学
取得学位 博士
学位の分野 国際地域学
報告番号 甲第286号
学位授与年月日 2011‑09‑25
URL http://id.nii.ac.jp/1060/00003935/
2011年度
東洋大学博士学位論文
インバウンド観光振興に関する研究 一日本の観光政策の変遷と旅行者行動分析一
、 \♂/、
国際地域学研究科国際地域学専攻博士後期課程
野瀬元子
(学籍番号4810081001)
博土論文要旨
論文題目 インバウンド観光振興に関する研究
一日本の観光政策の変遷と旅行者行動分析一
東洋大学大学院国際地域学研究科国際地域学専攻博士後期課程 学籍番号4810081001野瀬元子
1章はじめに
1、1背景
観光立国宣言(平成15年),観光立国推進基本法の施行(平成19年),観光庁設立(平 成20年)がなされ,今後,日本の多くの地域が外国人旅行者の受け入れに取り組むと考え られる.外国人の訪日観光需要が注目される理由として,超高齢化の進展,経済停滞など から地域活性化のための「観光の活用」といった国内事情とともに,近隣諸国の所得水準 のE昇にともなう海外旅行需要の拡大といった外部環境がある.日本人の国内観光と比較
して外国人旅行者の訪日であるインバウンド観光の特徴として,主体となる旅行者が遠距 離を旅行して日本へ来訪する点,旅行者の属性・嗜好がより多様となり,受け入れ地域側 で対応に慣れていない点,そして,言語・文化面で旅行者が障壁を感じる可能性を持っ点,
日本を旅行するEで保有する旅行者の情報が少ない点が挙げられる.また,著者自身の通 訳案内.七(通訳ガイド)としての経験から,旅行者評価の地域へのフィードバックが欠如
しているという問題意識がある.それに対応するために,多様な旅行者の目から見た受け 入れ地域の資産の棚卸しと再編集が必要となる.
1.2 目的
インバウンド観光振興を考えたとき,その本質として,旅行者の期待・満足によるとこ ろが大きいと考えられる.受け入れ地域側がどの程度,旅行者のニーズを充足して地域を 整備し,魅力を創出するか,さらに評価者(旅行者)がどのような評価特性を有するか考 慮し,反映することが重要といえる.
そこで,本研究では,日本のインバウンド観光を対象として,受け入れ地域側,旅行者 側,両者の分析視点を設定する.具体的には,受け入れ地域側では,受け入れ地域整備の 取り組みを近代観光の初期段階からレビューし,現在までの観光行政の発展経緯の把握お よび国際比較による課題の抽出,解決方策の検討,提案を行う.一方,旅行者側では,イ ンバウンド観光の旅行者の行動・評価特性をとらえる分析を行い,振興策の検討を行う.
図1は,本研究の目的,分析視点を示すにあたり,インバウンド観光のステークホール ダーならびに旅行者の意思決定過程を整理したものである.インバウンド観光のなかでは,
さまざまなステークホールダーが存在するが,そのなかで本研究では,旅行者を迎えるf受 け入れ地域側」(客体)と観光行動の主体となる「旅行者側」(主体)に着目する.
受け入れ地域側旅行者側
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象地域:日本,東京,栃木 :諸外国
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訪者数,経済効果
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期:tl 会・経済状況,時代背景
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1 本研究のインバウンド観光概念図
「受け入れ地域側」のステークホールダーには,観光事業者をはじめとする多様なil体 なかで行政が挙げられる.行政は,インバウンド観光事業から税収を得ると同時に,講 る施策が観光地等のインフラ整備,情報発信など,ステークホールダー全てに関わる業 を担う存在でもある、これらより,裾野の広い観光産業の振興策を講じるために主体間 調整が不可欠と考えられることから,その役割を担うことが期待される行政を分析対象
する.
そこで,受け入れ地域側の視点に立脚した研究目的2点を下記のように設定する.
1)観光政策の変遷の考察から,行政の役割を明らかにする.(3章)
2)国際比較による旅行環境の課題抽出および解決施策の検討および提案を行う.(4章)
次に,「旅行者側」では,旅行者は様々なステークホールダーによって提供される物品や ービスを観光行動を通して消費するが,これら一連の旅行者の満足を促すサービスの充 がインバウンド観光の振興に重要と考えられる.このため,受け入れ地域におけるイン ウンド観光の施策検討にあたっては,「旅行者側」の訪日中の行動や来訪後の評価の把握 不可欠と考えられ,その際にはインバウンド観光の旅行者の特性を考慮する必要がある
いえる.そこで,旅行者側に着目した分析視点を下記2点と設定する.
3)外国人旅行者の観光地に対する事前期待,事後評価特性と他要因との関連性を把握 する.(5章)
4)外国人旅行者の交通環境に対する評価特性の把握,ならびに負担感解消に対する意 向を分析する.(6章)
以上のように,受け入れ地域側,旅行者側のそれぞれ2つの観点から分析を行い,今後 らに日本のインバウンド観光が振興するための留意点を明らかにする.
1.3 本論文の構成
前節の目的のもと,7章からなる本研究の構成について述べる.2章以降の構成は以下 の通りである.2章は,インバウンド観光の現状を公的機関のデータから概観するととも に,既存研究のレビューを通じて,これまでの研究の不足点を明らかにし,本研究の位置 づけを示す.3章,4章は,受け入れ地域側を対象とした目的(1),(2)に関する分析 を行う.これに対して,5章,6章では,旅行者側に着目した目的(3),(4)に関する 分析を行う.7章では,各章の研究成果から,インバウンド観光の振興に寄与する施策へ の示唆をまとめ,本研究の結論および今後の課題を述べる.
1章はじめに(背景.訓.本脇のnnt)2章本研究の位置づけ随光の瓢鮪研究と本研究の位ロづ・ナ、
1
ヒ m 「 − −ロ受け入れ地域側 一『va− …一・P 3章日本における国際観光行政の 成立・発展過程
31日本の国捺観光政策に関する基礎的分析 ・国際観光政策黎明期の関係組織の変遷 ・中央政府の取り組みの変遷
32日光町・栃木県における観光地づくりの変 ・日光町の観光地整備の取り組み(戦前)
一栃木県の観光地整備予算に着目して一 3.3東京都の観光政策の変遷(戦後)
・地方自治体と国の連携,役割分担に着目して 3.43章まとめ
︸
行者側
4章諸外国の観光・交通政策の
事例分析
一外国人旅行者の旅行環境に着目して一 フランスの観光政策の事例分析
4.2韓国の観光政策の事例分析
4.3観光振興の視点による交通バスの国際比較 4.44章まとめ
一一一一『m−…一『 一
} 章日光・箱根における旅行者の 行動・評価特性の分析
5.1 1まじめ1:
5,2分析フレームならびに鯛査概要 5.3観光地評価の特性分析 5,45章まとめ
6章外国人旅行者の交通パス 購入意向の分析
6.1はじめに
6.2交通パスの購入意向の考え方 6.3アンケート概要ならびに基礎集計結果 6,4東京都区内公共交通の心理的、時間的負担 6.5支払い意思額の椎定
6.66章まとめ
1
7章結論インバウンド観光の振興に寄与する施策への示唆
図2 本研究の論文構成 2章本研究の位置づけ
2.1 観光の実態
インバウンド観光振興に関する分析に先立ち,観光行動の時代的変遷について文献調査 をもとに明らかにした.また,訪日観光の現状では,国別外国人訪問者数の増加傾向を示 すとともにアジアからの構成割合が増加傾向にあること,訪日外客の消費による経済効果,
世界的な観光流動の特徴を示した.
2.2 既存の研究ならびに本研究の位置づけ
受け入れ地域側の研究には2つの視点を設定しているが,まず観光政策に関する既存研 究では,社会・経済環境との関連性の考慮が十分でなく,時間の推移に伴う変化といった 継続性についてi…分配慮されていないと考えられる.そこで,日本の観光行政の戦前と戦 後に着目して,中央政府,地方自治体の観光政策,観光行政・制度の変遷を通史で検証し,
時代毎の中央政府と地方自治体との関係について着目する点が特徴である.次に,2つ目 の旅行環境の課題抽出では,特に交通サービス施策について着目するが,都市への来訪者
の利便性に関わる研究例は少ないことから,世界の複数都市の交通パスを対象として,来 訪者の利便性の視点からサービスの水準ならびに当該都市の課題を明らかにした点が特徴
といえる.
一一方,旅行者側の観光行動・評価に関する研究では,これまでの研究では,観光者属性 を考慮した分析例はみられるが,訪日観光における立寄り観光地を相互に比較し,観光地 の特徴と観光者特性との関連性に着目した研究事例は少ない.そこで,日光,箱根を比較 しながら,観光者要因,観光地要因,および両者の交互作用要因と観光地評価との関連性 を5章において明らかにする.さらに,旅行者の交通環境に着目すると,交通パスの価格 設定に関して負担感を考慮した分析方法の提示を行う先行研究はみられない.そこで,6章 において,外国人来訪者の公共交通機関利用時の負担感を時間的,心理的負担感として分 析し,意向データを用いた支払い意思額の導出方法を提示していることが特徴といえる.
3章 日本における国際観光行政の成立・発展過程 3.1 日本の国際観光政策に関する基礎的分析
日本政府の明治初期から第二次世界大戦前の観光政策の展開に着目し,まず既存研究で 不足していた外国人旅行者数のトレンドを明らかにした.この旅行者数のトレンドと社会 経済環境,旅行形態の変化との関連性や,それに対応した観光政策を担った中心的な組織 の変遷とその役割について文献収集を通じて分析したところ,以下に示す事項が明らかと
なった.
1.喜賓会の設立(1893(明治26)年)を契機として,ジャパン・ツーリスト・ビューロー の設立(1912(明治45)年),国際観光局の設置(1930(昭和5)年)と続くインバウンド 観光組織やその設置目的を明らかにした.さらに,国際情勢や経済状況の時系列デー タと照らし合わせた結果,関係組織の変遷時点で,国際観光の対象とする客層の変化 による消費行動の変化を確認することができた.
2.3っの組織の国際観光政策上の取り組み分野(誘致,宣伝,斡旋,観光地整備,資源 保護など)の変化を明らかにし,中央政府の行政組織によって国際観光が取り組まれる ようになった1930(昭和5)年より,国策として外貨獲得を目的とした観光地開発,整備 が開始されたことが確認できた.
以hから,観光行政初期の日本は欧米諸国と比較しても,その取り組みに著しい遅れを とっておらず,それまでの蓄積が無い国際観光ではあったが,効率的なキャッチアップが なされていたことがわかった.
これらの分析を踏まえ,わが国の国際観光政策への視座として,①ターゲットを考慮し た観光施策の実施,②当時不足していたホテル整備などをはじめとする,旅行者の行動実 態やニーズを反映した観光地受け入れ態勢の整備,③「観光」世論への注視,を抽出できた.
3.2 日光町・栃木県における観光地づくりの変遷
戦前期を中心とする第二次世界大戦までの日光町・栃木県を対象として,地域住民や町,
県が観光地整備にどのように取り組んだのか,実施主体,取り組み,意図・ねらい,社会
明治期は保晃会設立をはじめとする民間主体の地域資源保存が試みられているのに対し て,大IE期以降は県による観光地整備の継続的な取り組みが行われた.例えば,県の観光 地整備に関連する継続的な予算計上では,1913(大正2)年から始まり,調査費の計上がみら れ,昭和期に入ると,日光国立公園指定に向けた組織の設置に伴い,宣伝紹介や施設整備 を目的とした団体への補助金の交付が開始され,指定後は,霧降高原開発計画,日光観光 ホテル建設計画など施設整備計画へ県が直接関与する段階へ推移していた.以上から,当 初は町を中心に行わオしていたものから,事業規模の拡大,世論の動向,観光に対する機運 の上昇を背景として,県を主体とした国,町と連携した開発プロジェクト実施に取り組ま れた時代へと移ったことがわかった.
以ヒの分析の結果から,明治から昭和初期にかけてのインフラ未整備段階の観光地づく りとして次の4点が重要であることがわかった.①観光振興において中心となる観光資源 の明確化の重要性,②はじめに地方自治体が主体となり,旅行者の利用に不可欠なインフ ラ整備を行いながら,観光資源の保護と利用の両立という観点を持つ必要性,③地域の主 体的な取り組みの重要性,そして,最後に,④社会・経済情勢の考慮の必要性である.
3.3東京都の観光政策の変遷
東京都の戦後の観光政策をその所管組織の変遷ならびに予算データの推移により把握す ることを目的として,文献収集を通じて分析を行った.さらに,東京都の観光政策と国の 観光政策の比較,政策に影響を与える外部要因,内部要因について分析を行った.その結 果,次のことが明らかになった.
第1期(昭和22年〜33年,観光担当所管が複数存在)は,戦後の経済復興の手段として 観光が位置づけられ,東京都は国の観光政策と連動する形で,外貨獲得に資する国際観光 振興を図った.第2期(昭和34年〜39年)は,第18回オリンピック大会の東京招致決定 により観光行政の所管がオリンピック準備局となった時代で,アジア初の大規模な国際イ ベントの開催都市として,受入体制整備のため観光施設,特に宿泊施設の整備に予算が投
下された.
これに対して第3期(昭和40年〜55年)総務局所管の時代は,これまでの時代と大きく 観光政策の重点がシフトした.戦後の経済政策の目標であった国際収支の均衡が達成され
るなか,高度経済成長による国民の所得・余暇時間の増大という外部要因により,東京都 の観光行政の主眼は,内外の観光客の受け入れから,都民の観光レクリエーションを対象 とした政策へと転換した.続く第4期(昭和56年〜平成12年)は,所管が生活文化局へ 移った時代で,前期同様の都民の観光レクリエーション活動の支援という東京都の観光行 政の位置づけであった.
現在に至る第5期(平成13年〜22年現在)は,国の観光立国への取り組みと連動しなが らも,東京都独自の観光産業振興策が展開され始めた時代と考えられる.以上から,東京 都の観光行政は,その時代の社会経済環境,世論といった外部要因とともに,財政状況,
知事の強力なリーダーシップによる都政の方針といった内的要因と密接にかかわり,取り 組まれていたことがわかった.
以hをべ一スに地方自治体が担う観光行政の今後について考察する.これからの地方自 治体の観光行政は,行政自らが宿泊施設などの観光施設整備に税金を投入する必要性は低
くなった一方,特にインバウンド観光について考えると,海外宣伝,シティー・セールス や環境整備等の外部性を有する事業はその供給量が過少になることから,依然,行政の果 たす役割が大きい.また,様々なステークホールダーの調整役としての役割,モニタリン グ資料としてのデータ整備の機関としての役割がより大きくなると考えられる.そのため,
1.「観光」の位置づけの明確化,2.効率的に民間等の取り組みが機能する環境整備,3.
観光行政のアウトカム評価,以上の3点の重要性が今後一層増すと考えられる.
4章 諸外国の観光・交通政策の事例分析一外国人旅行者の旅行環境に着目して一
本章では,インバウンド観光振興に重要と考えられる受け入れ地域側でのサービスの充 実に寄与する具体的施策の提言を目的として,先進的な観光施策が実施されている国とし てフランス,韓国を取り上げて事例調査を行った.フランスの文献調査では,各行政レベ ルの役割分担について法律で明記されていたことがわかり,韓国のヒアリング調査では,
外国人旅行者の旅行環境の向上に資する施策の最新動向及びその推進体制について明らか にすることができた.(4.1節,4.2節).
つぎに,個人旅行の割合の高まりにともなう,都市観光にかかわる公共交通機関の利便 性向上に関する問題意識から交通パスに着目した.本研究では,交通バスを「一つの都市 などのまとまった地域において,一定のエリア内全ての鉄道やバスなどの公共交通サービ スの路線を自由に乗降可能とした特定期間の乗車券」と定義する.文献調査により,東京 を含む世界12都市の交通政策,都市特性の差異をふまえながら,外国人旅行者の視点で交 通パスのサービス内容を把握した.対象都市のサービス内容の国際比較により,東京にお ける一層の利便性向上策として,1.行動実態を反映した価格設定,2.グループへの考 慮,3.日数別種類の多様化,4.利用者により安心感を与える価格システムの導入(例:
ロンドンのdaily price capping制),5.交通パス関連情報提供における観光部局とのより 緊密な連携(名称のアルファベット表記の統一や行動予定に即した交通パスや乗車券の選 択肢に関する情報発信の改善)を提案した(4.3節).
5章 日光・箱根における旅行者の評価特性分析
外国人旅行者は,観光地についての情報量,嗜好の差異など,日本人と異なる旅行意向,
行動特性を有していると考えられる.そこで,外国人旅行者の訪問が多い日光・箱根を対 象として現地における来訪者へのアンケート調査をもとに,個人属性,行動や評価特性を 明らかにした.
アンケート調査は,日光,箱根合わせて12施設の宿泊者に対して実施した.その結果,
有効サンプル数は,日光276名(外国人162名,日本人114名),箱根249名(外国人125名,
日本人124名)の合計525名となった.本調査の外国人サンプルは欧米系旅行者が9害lj以11 を占めており,増加傾向を示すアジアからの旅行者とは異なる嗜好性を持つことが考えら れるが,本研究では,多様な評価特性の提示を目的としているため,調査地点の宿泊施設
を利用する外国人旅行者を,その居住国を限定せずに調査対象とした.なお,調査項目は,
訪問箇所と日光・箱根に対する事前期待・事後評価(21の観光行動に対する個別評価なら
いて,日本人・外国人別観光地別平均値を算出したところ,「地域の人々と話す」,「地域の生 活に触れる」について訪問地を問わず外国人観光者の評価が高かった.また,「世界文化遺 産!富]:山をみる」にっいて外国人,日本人を問わず事前期待が高い.訪問地別では,日光に おいて「歴史的建造物」の事前期待・事後評価のいずれも高いなどの特長がみられた.これ ら評価と個人属性との関連性を分散分析したところ,有意とならなかった.平均値は異な るものの,その分散が大きかったためであり,各回答者がどのような観光資源に興味があ るか,観光行動に対する嗜好はどのようなものかという点を考慮する必要があるといえる.
そこで,観光者の観光行動・評価は,①観光者の評価パターン,②観光地要因(日光と箱 根の2要因),③①と②が組み合わされる交互作用,以上の3っによって構成されると仮定 し,21項目に対する事前期待,事後評価の点数を用いて主成分分析を行い,さらに主成分 得点を用いたクラスター分析によってサンプルをセグメンテーションした.
その結果,観光者の評価パターンは12セグメントに区分でき,日光・箱根と日本人・外 国人の構成割合が卓越する4セグメントを見出すことできた.各グループの特長として,
箱根・日本人セグメント:『富士山を見る』に対する事前期待が小さい,箱根・外国人セグ メント1『歴史,交流』に対して事後評価が高い,日光・日本人セグメント:『世界遺産』,
『お.1二産』に対する事前期待・事後評価いずれも高い,日光・外国人セグメント:『自然景 観』に対する事後評価が高い,との特長を抽出できた.さらに,口光で『歴史』,箱根で『自 然体験』について交互作用が明らかとなり,これら要因と地域が組み合わされると,より 高評価となることが明らかとなった.これらにより,居住地別などによるアプリオリなセ グメンテーションでは見いだせない評価パターンを明らかにでき,外国人旅行者の観光評 価特性を明らかにできたことが本分析の成果と考えられる.
6章 外国人旅行者の交通パス購入意向分析
本章は,1)外国人旅行者の都区内の観光実態の把握,2)都区内における仮想の交通パス に対する外国人旅行者の支払い意思額及び交通パス購入による心理的,時間的負担感の軽 減と支払い意思額との関連性を考慮する分析手法の開発・提案を行うことを目的として,
都区内の外国人旅行者を対象としたアンケート調査を都内6箇所の宿泊施設で実施した.
アンケート調査項目は,個人属性,今回の訪日旅行形態,東京都区内公共交通の心理的・
時間的負担,仮想的な観光行動・交通パスの購入意向を設定した.特に負担感の分析では,
心理的負担感は「言語」,「利用方法」に関する要因が,また時間的負担感は「乗車券購入」,
「利用方法」の要因を指摘する回答がみられ,個人属性では,女性のほうが心理的,時間 的負担感が共に高く,年齢階層別では39歳以下は時間的負担感の方が大きい傾向がみられ,
来訪回数別では初回旅行者がより時間的負担感を感じていたことが明らかとなった.
さらに,襯的期待効用職の聡を用いたCW(仮想評価法)を適肌,交通パスの
支払い意思額推計モデルを構築した.交通パスの利用における公共交通機関利用時の負担 感の軽減(メリット)を構成する要素ごとの支払い意思額を推定することができた.交通パスの価格ではなく,交通パスによるメリットを示す変数(予想支払い運賃総額一 交通パス費用)を用いると説明力が向1二すること,要素毎の支払い意思額や,上記支払い 意思額は,50代以E,同行者数が4人以上でさらに大きくなることが明らかとなった.以
ヒの分析から,公共交通利用に際した負担感とその解消に対する意向に着目し,外国人旅
行者の旅行環境に対する評価を把握することができた.
7章 結論
本研究の4つの目的についての研究成果と結論は前記の各章で述べたので,ここでは,
全体の結論とインバウンド観光の振興に寄与する施策への示唆と今後の研究課題について
述べる.
受け入れ地域側の分析では,戦前,戦後における観光政策の変遷を中央政府,地方自治 体について明らかにした.その結果,社会情勢と密接に関連しながら,外貨獲得,住民サ ービスなど観光振興の日的,対象マーケットを変化させながら観光振興に取り組まれてい たことが明らかとなった.特に,日光町や東京都では,地元主体での積極的な発案・行動 や知事によるリーダーシップが大きな特徴として抽出できた.一方,国際比較による旅行 環境の課題抽出では,公共交通機関利用のための交通パスに着目したところ,世界の諸都 市では多種多様なサL−一ビスが実施され,その根底に公共交通サービスの位置づけ,補助制 度などが日本と大きく異なっていることが明らかとなった.それらをふまえ,国際競争力 の視点からは,公共交通利用の利便性に関しては,インバウンド観光の先進国と同等,あ るいは,それ以上のレベルを保持し,旅行環境整備を推進する必要があることがわかった.
一方,旅行者側の分析では,旅行者の嗜好,行動特性の把握を行った.その結果,観光 地に対する事前期待,事後評価特性については,日本人との嗜好,評価の差異が明らかに なるとともに,「歴史,交流」目的を有する観光者が日光へ来訪した場合,また「自然体験」
を主目的とした観光者が箱根に来訪した場合に,事後評価への交互作用の影響が確認でき た.また,外国人旅行者の交通環境に対する評価では,言語的ハンディを背景とした公共 交通利用への負担感を確認することができた.アジアからの旅行者の増加,個人旅行の増 加が予想されることから,それらへの対応が今後必要と考えられる.
以上より,インバウンド観光振興のために,その客層の変化・ニーズの把握,分析手法 の開発の重要性を示し,旅行者の行動実態に即して利便性を向ヒさせる施策を継続的に実 施していくこと,施策の推進主体,体制の構築の必要性を明らかにした.
今後の研究課題として,まず旅行者側の分析の精緻化が考えられる.今回の嗜好,意向 調査は1時点のものであるため,アジアからの旅行者,リピーターの増加などの市場環境
(外部条件)の変化を念頭とした旅行者行動の分析,そして,観光地の魅力度評価,観光 地の安全性など他の要因を合わせて考慮した需要予測が必要である.
一方,受け入れ地域側の分析においては,より魅力的な観光地整備のための具体的手段 の提示など,現場レベルで活用できる検討が早急に待たれる.例えば,よりきめ細やかな 旅行環境のモニタリングを通じた旅行環境整備とその影響把握を行い,経験と勘のみに頼
る振興からの脱却を目指すべきであろう.さらに,諸外国の旅行環境整備についての分析 や萌芽期,成長期,成熟期,衰退期から構成される観光地発展過程ステージとの関連性検 討も課題と言える.さらに,インバウンドによる経済効果推計の継続的実施や,行政によ
るアウトプット,アウトカムを評価する「行政評価システム」の確立が待たれるところで ある.また,本研究で検討したインバウンド観光の振興を社会の発展につなげていくため
Abstract of Doctoral Dissertation
Study on lnbound Tourism Development
Tourism Policy Evaluation and Tourist Behavior Analysis 一
Motoko NOSE, Graduate School of Regional Development Studies Japan has been faced with an increasing number of inbound tourists fそom di行brent cultural backgrounds, since 2003 when the Japanese government launched a campaign to promote tourism;
however, this influx is still smaller than that of Japanese outbound tourists. For the development of inbound tourism, tourism practitioners must achieve a greater understandmg of the various tourists behavior. They must also make a tourism policy which is ln accordance with a market environment.
The purpose of this study is fbur−fbld:(1)to clarify the development of tourism pohcy in relation to socio−economic background;(2)to suggest improvements in the Japanese travel environment through a comparison with other advanced countries;(3)to identify the evaluation characteristics of international tourists by comparing them with their』apanese counterparts and two destinations visited(Nikko,
} lakone);(4)to develop an analytical method of estimating WTP(Willingness−Tb−Pay)fbr a hypotheticahransport pass in Tokyo, the purpose of which would be to make it easier to use the public transport system.
ln the analysis ofJapanese tourism policy, the difference between the l㏄al govemment policy and the central government policy was compared us{ng d㏄uments covering dle prewar and postwar(WWII)
periods. The result showed that the tourism policy was heavily influenced by socio−economic background.
The second survey which fbcuses on the convenience of the transport pass in twelve cities ln the world,
including Tokyo, as evaluated by intemational touhsts examined the contents and styles of service regarding the pass, as well as the characteristics of each city and its public transport background. This study identified that pricing of individual passes as well as group or family passes with consideration of length of stay are priorities fbr the improvement in Tbkyo.
In the examination of tourist behavior, the response data asking about on−site behavior, pre−trip expectation/post−trip evaluation of actMties and overalいrip evaluation was util▲zed fbr multivariate analyses. As a result, twelve segments were identified, which was not possible in the previous researches using a priori attributes. For the last research purpose, the estimation of WTP in the contingent valuation method(CVM)emplo)弓ng the concept of su切ect{ve expected utility theory was proposed.
ln conclusion, through the analyses fヤom the viewpoint of demand−side and supply−side fbr enhancement of the inbound tourism policy, the fbllowing suggestions are proposed. Further development of a methodology fbr analyzing the touristsうevaluation fbr the destination and the transport service fbr the intemational tourists are needed. The result of this study also suggests that the government should play a bigger role in influencing various stakeholders interest in the tourism industry in the future, especially in tourism advertisement, data handling and the maintenance of the tourist travel environment. These suggestions have both managerial and theoretical implications.
博士論文題目
インバウンド観光振興に関する研究一日本の観光政策の変遷と旅行者行動分析一 野瀬元子
目次
1章 はじめに__._._.___.__.____._._.__.__.__...______.__.___._._.1 1.1 背景_____._._.____..___.___.______..__..____..___.___.−1 1.2 日白勺___.___...____.__..__..__._.._..___.._.._____._..__.___._2 1.3 本論文の構成_____.___.__.___._.__._____._.______.___.5 2章 本研究の位置づけ______...._._____.__.._.__.__.___._..___.___.7
2.1 観光の実態_____.._._____.______...___..___.__.____.___.7 2.1.1 観光行動の時代的変遷___.___.____.__..._._____.______.__.7 2.1.2 訪日観光の現状___.__._.._____._.______._.____._.____._8 2.1.3 外国人旅行者の実態__.____._.____._..______..__.____..._−14
2.2 既存の研究ならびに本研究の位置づけ._____.__._.___.______..__22 2.2.1 観光行政,観光政策に関する既存研究と本研究の位置づけ______..__.22
2.2.2 旅行者の評価特性に関する既存研究と本研究の位置づけ,._.........._....._._..28
3章 日本における国際観光行政の成立・発展過程______._____._.___._.39 3.1 日本の国際観光政策に関する基礎的分析.______.._.____.____..__..39 3.Ll はじめに..______._.____._...______..______.___._.__._39 3.1.2 時代区分の設定_____.______._____._..__.__.__.____.39 3.1.3 萌芽期(1858・1892)の国際観光への取り組み_._.____._._.____..___40 3.1.4 樹立期(1893−1929)の国際観光への取り組み_..____.___..___...__−41 3.L5 発展期(1930・1942)の国際観光への取り組み_.___.__.____._._..___45 3.L6 戦前の国際観光政策のまとめ______..__._.___.___._.__.____..46 3.2 日光町・栃木県における観光地づくりの変遷______.____.__._____48
3.2.1 はじめに_._.____.______...__..____.._._____.______._48
3.2.2 観光地形成過程の初期段階における外国人利用の差異について______48
3.2.3 日光地域への来訪者数の実態_____.______..._.___.__._.___.51 3.2.4 日光における観光地整備の取り組み____._..______,______..._52 3.2.5 県議会における観光地整備関連の議論および予算____._.._.______56 3.2.6 日光町・栃木県の観光政策のまとめ______.._.___.__.______._62
3.3 東京都の観光政策の変遷____.__.._._____..__.____.____._._._._66 3.3.1 はじめに______一...______...______.__.____.._._____.._66 3.3.2 従来の研究と本研究の位置づけ.__.____.______..______.__.66 3.3.3 東京都の観光行政,政策の変遷__.____.______._____.___.67 3.3.4 東京都の観光行政の予算の推移______.____..__._____._..___86
4章 諸外国の観光・交通政策の事例分析一外国人旅行者の旅行環境に着日して一_..103
4.1 フランスの観光政策の事例分析.__.___..______._.._____.___....103 4.1.1 はじめに._..___..._____._.__.____..__._.___...__,___...._103 4.1.2 フランスの観光行政組織_...__........__一..._...一一t_._.._............,_...__..103
4.1.3 フランスの観光行政・政策の特徴.___.___.____._._.______...104 4.1.4 政策評価のためのパフォーマンス評価.__.___..__.__._..._._.__..107 4.1.5 フランスの観光政策のまとめ______.___._.__、______、、____107 4.2 韓国の観光政策の事例分析____.__.._.__._._...______.._..___...108 4.2.1 中央政府,文化体育観光部(MCST)の取り組み_._...一.....、__......_..__..108 4.2.2 韓国観光公社(KTO)の取り組み..._..___...._.____._.______._..109 4.2.3 ソウル特別市の取り組み.__..__._..___.___.._____...__._._ .111 4.2.4 ソウル市観光公社(STO)の取り組み.._____.______._____._ .111 4.2.5ソウル市の交通パス導入事例調査.___.___._____._.._一___._._ .113 4.2.6 韓国及びソウルの観光政策のまとめ.__.____.______._____ .119 4.3 観光振興の視点による交通パスの国際比較__ ..121
4.3.1 はじめに_.._____.___.___..______..._._____.__._ _121 4.3.2 本分析の分析視点._____.._____._..______. ..121 4.3.3 都区内外国人旅行者の公共交通サービス利便性評価.._ ..122 4.3.4 都市・交通事業者の特性及び交通政策______._____._.____._.122 4.3.5 12都市の交通パスの現状比較_____._.______.______.___.124 4.3.6 観光振興の視点による交通パスの国際比較のまとめ..______。___.__129 4.44章まとめ______..__.___._._____.._.__.____.______..__133 5章 日光・箱根における旅行者の評価特性分析____.__.______.....___.__,.137 5.1 はじめに.___.___.__._,___._._____..__.__.__._._____._._137
5.2 旅行者の評価行動分析の先行研究レビューと本研究の位置づけ_____.__137 5.3 分析フレームならびに調査概要_____._.______..______..___._138 5.3.1 分析フレーム_____t.__.一._.__.______._.__.___.._____138 5.3.2 調査概要______.______。__.____..____.__.t__.__.__..139 5.3.3 調査内容ならびにサンプル概要______.._.____._._____.._._.一.140 5.4 観光地評価の特性分析.一.___..._._.__.._._._.._.._、、_一、_、、_..._._.._.__.142 5.4.1 単純集計による観光地の評価について.__.__.._.__.____.__._.__.142 5.4.2 多変量解析を用いたサンプルのセグメンテーション___.__._...____144 5.4.3 観光者要因,観光地要因の統計的検定_____.______.__.__....147 5.5 5章まとめ______.._____._._____._..____..__..__.____.__.149 6章 外国人旅行者の交通パス購入意向の分析____.__,...__._..__..___.___..151 6.1 はじめに_____._..___.___..___.___.______.....__..___..__.151 6.2 交通パス購入意向の考え方______._.___.__.______.____.__151 6.2.1 観光における交通パスのメリット____._._.____._..___.___._..151 6.2.2 外国における交通パスの導入状況_.._____._.._____.___.__._._154 6.2.3 交通パス購i入意向の考え方______.______._____._..____._154
6.3 アンケート概要ならびに基礎集計結果______..____._.._._____._.156 6.4 東京都区内公共交通の心理的,時間的負担______...______一._____159 6.5 支払い意思額の推定__.____.______...____._._._._____.____162 6.66章まとめ__.____..__.____.._._____._._____..___..___.__167
7章 糸吉轟命............................扇...................◆...........................◆..右.右..◆......................................170
7.1 結論._._____.______,_._____._____._.._.__.___.___170 7.2 今後の研究課題.____一_.______.__.____.____._._.___.___172 あとがき___.___..._._____.__..____.___._.__.____..__...______173
調寸舌辛 ………・…・… ………・・………・…・…・…………・…・…._.__....__..___...__.175
業績リスト______..______...__.___._.___._.__.__.____..______177 付録_____...______.______._____.______..______._._179 付録1 日光,箱根を対象とした観光地形成過程についての考察.______._..__180
付録2 旅行者の評価特性分析アンケート調査票...._...........___......._.__一._._一.202
付録3 交通パス購i入意向の分析アンケート調査票____.__.___.___..__._.218
図表リスト 1章
図・1.1 図一1.2
本研究のインバウンド観光概念図 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 2 本研究の論文構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 5 2章
図一2.1.1 図・2.1.2 図 2.1.3 図・2.1.4 図一2.1.5 表・2.1.1 表一2.1.2 表一2.1.3 表一2.1.4 表一2.1.5 表一2.1.6 図一2.1.6 表一2.1.7 図一2.工7 表・2.1.8 図・2.2.1 表一2.2.1
国別外国人訪問者数(左)とツーリスト・マイレージ(右) ・・・… 9 訪日外国人旅行者の地域別構成比の推移・・・・・・・・・・・・… 10 主要国籍別外客数の推移(1984年〜2006年)・・・・・・・・・・… 11 海外旅行者数,訪日外国人旅行者数の推移・・・・・・・・・・・… 12 外国人観光客受入れ数の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・… 13 地域別特性別観光関連統計データ ・・・・・・・・・・・・・・・… 14 我が国における主な外国人観光客統計とその概要・・・・・・・・… 15 2009年国籍別ノ目的別訪日外客数 ・・・・・・・・・・・・・・・… 16 2009年国籍別都道府県別訪問率・・・・・・・・・・・・・・・・… 17 2001年/2009年国籍別都道府県別訪問率・・・・・・・・・・・・… 18 2009年国籍別初回来訪者の団体旅行割合 ・・・・・・・・・・・・… 18 2009年国籍別初回来訪者の団体旅行割合・・・・・・・・・・・・… 19 2001年/2009年国籍別団体旅行割合 ・・◆・・・・・・・・・・・… 20 2001年/2009年国籍別団体旅行割合 ・・・・・・・・・・・・・・… 20 2009年国籍別訪日前の期待要素の上位5位・・・・・・・・・・・… 21 インバウンド観光概念図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 22 国際観光に対する組織の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 24 3章
図一3.1.1 表3.1.1 図・3.1.2 図一3.1.3 図一3.1,4 表一3.2.1 表一3.2.2 表・3.2.3 図一3.2.1 表・3.2.4 表・3.2.5 表一3.2.6 表一3.2.7 表一3.3.1
入国者数等の時系列推移 ・・・・… ◆◆・・・・・・・・・・… 40 国際観光に対する組織の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 42 貿易収支の時系列推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 43 1人当たり外客消費額等の推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 44 観光事業機構一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 45
日光と箱根の交通環境の発展過程 ・・・・・・・・・・・・・・・… 49 同一ガイドブソクに記載された日光と箱根の記述の比較・・・・・… 49
日光入込者数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 51 日光駅降車旅客者数の推移 ・・・・・・・・・・・・… ・・… 52 日光の観光地整備に関する年表 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 53 戦前期の日光町における観光地整備の取り組みによる時代区分・・… 55 観光地整備に関する栃木県予算(名目値)の推移年 ・・・・・・・… 58 観光地整備に関する栃木県予算(実質値)の推移 ・・・・・・・・… 59 東京都と国の中心的な観光行政機構の変遷 ・・・・・・・・・・・… 68
表一3.3.2 図一3.3.1 表一3.3.3 表・3.3.4 表一3.3.5 表一3.3.6 表一3.3.7 表一3.3.8 1ヌ1−3.3.2 図・3.3.3 じXl−3.3.4 じt1・3.3.5 図 3.3.6 1叉1−3.3.7
[*1−3.3.8 L}s(1 一 3.3.9
東京都の観光政策の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・… ・ 70 東京都観光事業綜合計画書(1951年)の章構成・・・・・・・・・… 73 東京都と国の観光の取り組み(第1期) ・・・・・・・・・・・・… 75 東京都と国の観光の取り組み(第2期)・・・・・・・・・・・・・… 77 東京都観光事業振興対策事業見積額総括表 ・・・・・・・・・・・… 78 東京都と国の観光の取り組み(第3期) ・・・・・・・・・・・・… 80 東京都と国の観光の取り組み(第4期) ・・・・・・・・・・・・… 82 東京都と国の観光の取り組み(第5期) ・・・・・・・・・・… ◆◆83 東京都観光産業振興施策の取り組み分野・・・・・・・・・・・・… 84 東京都普通会計歳出(A),観光行政歳出(B)及びその割合(B/A) ・・88 東京都観光行政の予算推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 88 観光行政の項目別予算割合の推移 ・・・・・・… ◆・・・・・… 89 オリンピック準備期間の観光予算推移(1960年〜1964年) ・・・… 90 オリンピック東京大会後の総務局時代の観光予算推移(1965年〜1980年)91 生活文化局時代の観光予算推移(1981年〜2000年) ・・・・・・… 92 産業労働局観光部の観光予算推移(2001年〜2010年) ・・・・・… 93 4章
図4.1.1 フランスの観光行政組織 ・・・・… ◆◆・・・・・・・・・… 104 表4.Ll 観光行政組織の施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 105 図4.1.2 ATOUT Franceのミッション概念図 ・・・・・・・・・・・・・… 106 表4.1.2 中央政府,地方組織間の関連性規定 ・・・・・・・・・・・・・… 106 図4.2.1KTOの企業理念から戦略課題までのフロー ・・・・・・・・・・… 110 図4.2.2 KTOの中長期戦略・革新目標 ・・・・・・・・・・・・・・… ◆・110 図4.2.3KTOのビジョンと連携した革新目標 ・・・・・・・・・・・・・… 111 表 4.2.1STOの組織構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 112 図4.2.4 ソウル特別市新交通システム導入前後の運賃算出例(左)とバスレーン(右)114 図4.2.5 交通変革以前・以後の運賃計算方法・・・・・・・・・・・・・… ◆114 図4.2.6 新交通カードシステム改革の前後・・・・・・・・・・・・・・・… 114 図4.2.7 交通運賃収入マネージメント・システムのスキーム・・・・・・・… 115 図4.2.8 ソウル特別市を8つのゾーンに分けたバス系統・番号システム・・… 115 図4.2.9 ソウルのIC交通カード・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 116 図42.10 KSCC社が販売するIC交通カードのバリエーション・・・・・・… 117 図・4.3.1 都市特性の比較(人口,自動車分担率,外国人来訪者数) ・・・・… 123 図・4.3.2 }三な交通事業者の収入内訳(行政からの運営費に対する補助金負担率) ・124 図一4.3.3 交通パスのサービス内容の基本特性ならびに評価項目 ・・・・・・… 125 表一4.3.1 12都市の交通パスのサービス内容及び評価 ・・・・・・・・・・… 126 表・4.3.2 交通パスの特徴的なサービス内容・・・・・・・・・・・・・・・… 128
5章
図一5.1 表・5,1 表一5.2 図・5.2 表一5.3 図・5.3 表一5.4 表一5.5 表一5.6 図一5.4 図一5.5 表一5.7 図一5,6
観光地の評価に影響を与える要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 139 アンケート質問項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 140 調査場所ならびにサンプル数・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 140 サンプル別年齢階層構成比率・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 141 外国人観光者の居住地構成比率・・・・・・・・・・・・・・・・・… 141 21項目別事前期待(左),事後評価(右)平均値・・・・・・・・・・・… 143 外国人居住地別観光地全体評価・・・・・・・・… ◆・・・・・… 144 主成分分析の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 145 セグメント別構成人数及び構成比率・・・・・・・・・・・・・・・… 146 セグメント別日本人/箱根観光者構成割合 ・・・・・・・・… ◆… 146 セグメント別評価特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 147 分散分析表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 148 セグメント別第1,第II主成分得点平均点・・・・・・・・・・・・… 148 6章
表一6.1 外国人旅行者の不満要素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 152 図一6.1 (a)利用回数と利用者負担額との関連性(上図)・
(b)予想利用回数別交通パス購i入確率(F図) ・・・・・・・・・・・… 153 表一6.2 年齢階層別居住地別サンプル構成割合 ・・・・・・・・・・・・・… 157 表一6.3 現行の都内交通パス等の認知率・利用率 ・・・・・・・・・・・・… 157 表一6.4 観光周遊時に利用する交通手段指摘率 ・・・・・・・・・・・・・… 158 表一6.5 都内訪問希望地点指摘率(全体及び年齢階層別)・・・・・・・・・・… 158 表一6.6 都内希望訪問地点数別構成割合 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 158 表一6.7 公共交通の負担感の要因及び指摘率 ・・・・・・・・・・・・・・… 159 表一6.8 公共交通に対する負担感の総合評価(7段階評価) ・・・・・・・… 160 表一6.9 性別による公共交通に対する心理的・時間的負担感 ・・・・・・・… 160 表一6.10訪日回数別公共交通に対する心理的・時間的負担感 ・・・・・・・… 160 表一6.11 年齢階層別公共交通に対する心理的・時間的負担感 ・・・・・・・… 160 表・6.12 心理的・時間的負担感の主成分分析結果 ・・・・・・・・・・・・… 161 表一6.13 交通パス支払意思額モデルの結果(1) … ◆・・・・・・・・・・… 163 表一6.14 交通パス支払意思額モデルの結果(2) ・・・・・・・・・・・・・… 164 表一6.15 個別負担感の貨幣換算値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 164 図一62 メリソト(予想交通費一パス料金)別交通パス購入確率 ・・・・・… 165 図一6.3 交通パス価格と購入確率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 165
1章はじめに
1.1背景
わが国の経済の状況をみると,高度経済成長を支えた人口動態が逆転し,少子高齢化,
人口減少による国内市場の縮小が想定されている.社会構造が変化するなか,経済成長を 維持し,社会の活力を維持していくために海外需要は重要性を増している1.そのなかで,
外需を取り込む手段の一一つとして観光需要が注目を集めている.国内事情からの必要性と ともに,近隣諸国の所得水準のh昇に伴う海外旅行需要の拡大といった外部環境に対する 期待から観光への注目が高まっている.
日本の観光市場の現状は,平成19 (2007)年度の日本国内の旅行消費額23.5兆円の 市場別内訳をみると,日本人の国内観光(宿泊65.1%・日帰り21.1%),日本人の海外旅行
(アウトバウンド観光)の国内消費分(7.6%)の合計は約93.7%となり,外国人の訪日旅 行市場(インバウンド観光)は6.3%であった2.これまでの主要な市場であった日本人の 観光需要に加え,日本へ来訪する外国人旅行者の市場の拡大,すなわち,日本の観光にお けるグローバル市場の拡大に対して,観光立国宣言(2003年),観光立国推進基本法の制定
(2006年12月13口),施行(2007年1月10),観光庁設立(2008年10月1口)がな され,今後,日本の多くの地域が外国人旅行者の受け入れに取り組むと考えられる.イン バウンド観光の特徴的な点として,主体となる旅行者が遠距離を旅行して日本へ来訪する 点,旅行者の属性・嗜好がより多様となり,受け入れ地域側で対応に慣れていない点,そ して,言語・文化面で旅行者が障壁を感じる可能性を持つ点,日本を旅行する上で持つ旅 行者の情報が少ない点が挙げられる.
また,著者自身の通訳案内士(通訳ガイド)としてインバウンド観光の仕事を通じて,
旅行者評価の地域へのフィードバックが欠如しているという問題意識を持った.つまり,
観光のグローバル市場の拡大を目指すなかで「地元・国内で同じサービスを供給する」こ とを超えた発想が必要とされると考えられる.そのため,多様な旅行者の目から見た受け 入れ地域の資産の棚卸しと再編集が必要となる.また,外需を取り込む,外貨獲得といっ た経済面とともに,インバウンド観光の振興には,文化交流,日本のプレゼンセンス向上 の効果が期待される.観光は,宿泊業,旅行業,輸送業,飲食業,土産品業等極めて裾野 の広い産業であるが,旅行者を受け入れる地域の充実が振興に必要不可欠で,関係主体を 束ねる組織コーディネータの役割が重要となると考えられる.
そこで,本研究では日本のインバウンド観光振興施策に向けて,旅行者側,受け入れ地 域側両者の分析が重要と考える.具体的には,今後の観光行政や旅行者の実態把握,検討 のあり方について有用な示唆を提示する視点から、受け入れ地域側では,受け入れ地域整 備の取り組みを近代観光の初期段階からレビューし,現在までの観光行政の発展経緯の把 握および国際比較による課題の抽出,解決方策の検討,提案を行う.一方,旅行者側では,
インバウンド観光の旅行者の行動・評価特性をとらえる分析を行い,振興策の検討に資す る分析手法の提示を行う.
1.2 目的
インバウンド観光振興を考えたとき,その本質として,旅行者の期待・満足によるとこ ろが大きいと考えられる.さらに,受け入れ地域側がどの程度,旅行者のニー一一ズを充足し て地域を整備し,魅力を創出するか,さらに評価者(旅行者)がどのような評価特性を有 するか考慮し,反映することが重要といえる.
そこで,本研究では,日本のインバウンド観光を対象として,受け入れ地域側,旅行者 側,両者の分析視点を設定する.具体的には,受け入れ地域側では,受け入れ地域整備の 取り組みを近代観光の初期段階からレビューし,現在までの観光行政の発展経緯の把握お
よび国際比較による課題の抽出,解決方策の検討,提案を行う.一方,旅行者側では,イ ンバウンド観光の旅行者の行動・評価特性をとらえる分析を行い,振興策の検討を行う.
図1は,本研究の目的,分析視点を示すにあたり,インバウンド観光のステークホール ダーならびに旅行者の意思決定過程を整理したものである.インバウンド観光のなかでは,
さまざまなステークホールダーが存在するが,そのなかで本研究では,旅行者を迎える「受 け入れ地域側」(客体)と観光行動の主体となる「旅行者側」(主体)に着目する.
受け入れ地域側
認介且▽蕊
旅行者側
対象地域:日本,東京,栃木
、、
サービス事/業者
1ミき〜 ノ観光事業者
行政
地域住民∋メディア㌧案内業.〜藝憲
宿泊業..﹇ −§︑㌧〜 乞ノ〆旅行業︶ ︿
観光関連/ノ 情報
個人の意思決定過程 来訪前 認知
當⑧
来訪者数、経済効果
サービス
時期:t1 時期:t2
(明治〜 li一成)
肖費
訪間中 行動
⑭
ぎ嘉外国 i仏,韓国
了障政 ︑民・ごノ
ステーク
zールダー
来訪後 r 評価
@ 満足
インパウンド
キ行者の特徴
E嗜好が多様・少ない情報・言語障壁・遠距離からの
?K{時間・
?p負担:大)
観光政策 マ状況,時代背景
図一1.1 本研究のインバウンド観光概念図
「受け入れ地域側」のステークホルダーには,観光対象となる施設や土産物店などの運 営・管理事業者を含む観光事業者,外貨両替,コンビニエンスストアなどを含む観光関連 サービス事業者,旅行業者,宿泊事業者,交通事業者,案内業者,出版・インターネット などのメディア,地域住民,そして行政がある.行政は,図に示すように,インバウンド 観光事業から税収を得るステークホー一一・ルダーのひとつであると同時に,観光地等のインフ