長崎大学工学部研究報告 第 2 7 巻 第 4 9 号 平成 9 年 7 月 2 4 7
弾塑性有限変形解析 による鋼製箱型橋脚載荷実験の シミュレーシ ョン解析
松・ 田 浩* ・崎 山 毅* ・森 田 千 尋*
山 口 浩 平**・松 田 貴 志***
AnEl a s t o ‑ Pl a s t i cSi mu l a t i o no fCyc l i cLo a d i n gTe s t so f St e e LBo xBr i d gePi e r sus l ● ngF. E. M
by
Hi r o s h i MATS UDA* , Ta k e s h i S AKI YAMA* , Ch i h i r oMORI TA*
Ko h e i YAMAGUCHI **a n dTa k a s h i MATS UDA***
Thebe ha vi o ro fc a nt i l e ve rs t e e lbo xc o l umnunde rt hec yc l i cl oa di ngt ha ts i mul a t e se a r t hq ua kef o r c e s wa sa na lyz e dus i nge l a s t o‑ pl a s t i cFEM. Themo de l sa na lyz e da r eas i mpl es t e e l bo xa ndas t e e l bo xr e i nf o r c ‑ e dbyt hes t i f f e ne r .Ther e s ul t so fFEM a na l ys i sa r ec ompa r e dwi t ht ho s eo ft hee xpe r i me nt sunde rt he s a mec o ndi t i o n.Asar e s ul t ,t hef o l l o wl ngf i ndi ngsa r eo bt a i ne d.
1.Thee f f e c to fma t e r i a ls t r e s s ‑ S t r a i nr e l a t i o ns hi po nt her e s ul t so fFEM a na l ys i si se vi de nt .Thec o m‑
pa r i s o no ft hec a s eus i ngki ne ma t i cha r de ni ngr ul ewi t ht hec a s eo fi s o t r o pi cha r de ni ngml es ho wst ha t ki ne ma t i cha r de ni ngml eq ua l i t a t i ve l ygi ve sbe t t e rr e s ul t st ha ni s ot r o pi cha r de ni ngr ul er e ga r di ngt he s ha peo fhys t e r e s i sl o o pa ndma xi mum l o a dc a r r yi ngc a pac i t y.
2.I ti spos s i bl et oe va l ua t eq ua l i t a t i ve l yt hepr oc e s ss t a r t i ngf r o ml o c a l buc kl i nga ndr e a c hi ngma xi mum l o adc a r r yl ngC a pa c i t y.
1 . まえがき
兵庫県南部地震では,道路橋 において も橋脚の倒壊 や落橋等の多 くの被害が生 じた.従来比較的 じん性の 高い とされてきた鋼製橋脚 について も,初めて大 きな 被害を受け,数多 くの損傷があった ことが報告 されて い る 1) . こう した被災状況 を踏 まえ , 「兵庫県南部地 震 により被災 した道路橋の復 旧に係 る仕様 」2) では, じん性を確保す る方法 として,当面,鋼製橋脚 におい てはコンク リー トを充填する方法 を示 し,コンク リー トを充填 した鋼製橋脚 について地震時保有耐力照査を 行 うこととしている. しか しなが ら,既設橋脚では, コンク リー トを充填す ることによる鋼製橋脚の耐荷力 の上昇や剛性の増加が図れて も,橋脚全体構造 の応答
への影響 を考慮すると,基礎やアンカー部の補強 を行 う必要 がでて くるもの と考 え られる.現場での施工 を 考 える と,基礎の補強は困難な場合 もあ り,剛性,お よび耐荷力の上昇を極力抑 えた補強方法の確立が望ま れている.
鋼構造物 については, これまで一部の構造物 を除い て許容応力度法のみの設計がなされてお り,保有耐力 や変形性能の照査は実施 されていなかった.平成 2 年 に道路橋示万 苦・ Ⅴ耐震設計編 3 )が改訂 され,鉄筋 コンク リー ト橋脚 について地震時保有水平耐力の照査 法が整備 されたが,鋼製橋脚 については研究が不十分
とい うことで基準化が見送 られた経緯がある.
この ような状況を考慮 して, 建設省土木研究所では, 平成 9年 4月25日受理
*構造工学科 ( De pa r t me nto fSt r uc t ur a lEngi ne e r i ng)
**大学院修士課程構造工学専攻 ( Gr ad ua t eSt ude nt ,De pa r t me nto fSt r uc t ur a lEngi ne e r i ng)
***長崎セキスイハイム ( 秩)
コンク リー トを充填 しない鋼製橋脚 について,大地震 時の弾塑性挙動, じん性向上の方法や評価 について明 らかにす るために,大型鋼製橋脚供試体 の準静的2 軸 繰 り返 し載荷実験 を実施 し,その結果,耐震性向上の 効果が確認 されてい る 5)6) 7 ) .大規模地震時 におけ る鋼製橋脚の弾塑性挙動の解明や耐震性能の評価 を 目 的 とした研究は,今回の地震の以前 よ り主 に実験的に 行われているが ( 例えば,文献 4 )8 ) ),設計基準 に反 映 させるためには現状では必ず しも全てのパ ラメータ に対 して実験結果が得 られているわけではない. これ らのパ ラメー タの組み合わせは膨大な数 にな り,実験 のみに依存す るのは膨大な費用 と時間を要す る.実験 の補完のために,今後なん らかの予測解析が必要 とさ れる とともに,実験 をある程度の精度でシミュレーシ ョンで きる数値解析技術が望まれている.また, より 耐震性の高い新 しい構造形式 を探 るためには解析によ る予備検討 は極めて有効であ る と考 え られ る.( 例 え ば,文献 5) 6) 7)
本研究では,この ような背景の もと,建設省土木研 究所 で行われた,軸圧縮力 と繰 り返 し曲げを受ける片 持ち柱の鋼柱を対象 とした準静的繰 り返 し載荷実験 に ついて,弾塑性 FEM 解析の汎用アプ リケーシ ョンソ フ ト MAR C 1 2) を使用 して,載荷実験 を再現する 目的 で数値解析を行った ものである.
この ように数値解析技術を用いて鋼製橋脚の繰 り返 し載荷実験が再現で きれば,
1.実験で得 ることができなかった細部 の挙動 や破
No . 2
N o . 3≡ ≡ 書 ≡
壊現象の解明
2. 実験結果 と併用す ることにより変動パ ラメー タ な どに対す る実験 データの補完
3. 新構造 や補強構造 を考案す る際の性能予測 4.動 的 解 析 法 の た め の 非 線 形 復 元 力 モ デ ル
〟「 ∧ 「¢
な どに活用で きるもの と考 えられ る.
2. 建設省土木研究所で行われた実験
建設省では,円柱供試体,箱形供試体について実験 が行われた.本報では箱形供試体について記述す る.
供試体は,図 1に示す ように,矩形断面 4 体 とし, その うち 1 体 ( No.2)を基本供試体,残 りの 3 体 を 補強 を施 した もの ( No.3‑No.5)である.供試体 の諸元 を表 1に示す.ここで,Aは供試体の断面積,
Ⅰは断面 2 次モーメン ト , 再ま縦 リブ剛比,γ*は弾性 座屈理論 か ら得 られ る補剛材の最小必要剛比 , 0, は 材料試験か ら得 られた降伏応力度である.供試体高 さ は3 4 70[ mm] であ る.
基本供試体 ( No.2) の断面寸法が900[ mm]×900 表 1 供試体の諸元
供試体 A[ c m 2 ] Ⅰ[ c m 4 ] γ / r * o r b , l kgf /c m 2 ] No. ■ 2 37 8. 4 48 0 48 0 0∴ 8 9 3 8 64
No.4 481. 6 65 2 80 8 0. 91 3 7 79 No.5 48 5. 4 661 32 7 0. 91 3 7 7b
;同
. I . ' ' i '‑' H' '‑' 1 !
臨 画 l mm ,
図 1 供試体の概略
弾塑性有限変形解析に よる鋼製箱型橋脚載荷実験の シ ミュレーシ ョン解析 2 4 9
[ mm] ,補剛材 の板厚 は 9[ mm] ,縦 リブの板厚 は 6 [ mm] ,板幅 は 8 0[ mm] ,材質 は SM4 9 0 であ る.横 リ ブダイヤフラムは 9 0 0【 mm 】間隔,板厚 は 6[ mm] であ る.基本供試体 に補強 を施 した供試体 ( No.3‑No.
5 )は,補強材の断面積がはば等 しくなるように設定 されている. N0.3 は縦 リブを追加 した ものである.
N0.4 は内側 に閉断面 となるようにコーナープ レー ト を,外側 にアングルを想定 した鋼板 を溶接 した もので あ る. N0.5 はフ ィラープ レー トを介 してアングル材 を高力ボル トで接合 した ものである.
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世 樹 zE 肯
載荷ステ ップ 図 2 載 荷 方 法
載荷実験 では,供試体 に全断面降伏荷重の 1 5 【 % 】の 軸力が導入 されている.さ らに,軸力を一定 に保ちな が ら図 2に示す ように水平荷重を増加させなが ら,準 静的 に正負交番載荷 されている・∂ γ を計算上 ,供試 体下端が降伏す る ときの水平変位 として,∂ γ を片振 幅 とする正負交番載荷後, ± 2∂ , , ± 3∂ , , ± 4 ∂ , と い うように,十分 に大 きな水平変位 ,および変形が生
じ,水平反力は降伏時の値 よ り十分 に下がるまで載荷 は行われている.
各供試体の水平荷重 一水平変位関係 ( ヒステ リシス ループ) を比較検討す る と,基本供試体 N0. 2 と比較 して,剛性,最大耐力 ともに N0.4 で最 も大 き くな り, 続 いて No.3,N0.5 の順 とな った.荷重 ピー クを過 ぎてか らの劣化は,相対 的に N0.5 で大 き く ,N0,5 で小 さい.基本供試体 に対す る補強供試体の最大耐荷 力は No. 3,No. 4 ,お よび N0.5 でそれぞれ約 1. 3 倍 1. 4 倍 1. 1 倍 となっている.
3 /鋼管柱の解析
箱形橋脚 を解析す る前に, 2 つの硬化則 ( 移動硬化 則,等方硬化則)を用いて,鋼管柱 ( 無補剛)供試体
図 3 変形状況 ( 鋼管柱)
での実験結果 と解析結果 との比較 を行い,解析結果の 有効性 を確認 した.モデル基部が座屈 した ときの変形 状況を図 3 に示す.
解析 に用いたモデルは,項部は水平変位 を与 える際 に変形 を生 じないようにするため,弾性係数や板厚 を 大 き くして ( 弾性係数 :フランジ,またはウェブの約 1 0 0 倍 ,板厚 : 5 0[ mm] )剛 とした.また,水平荷重 と直交する断面は部材軸の中心線か ら見て左右対称で ある として 1 / 2 対称 モデル とした.境界条件 として, モデルの基部 において完全 固定 ( ∂ x ‑a , ‑∂ Z ‑ 0,o x
‑0 ,‑0 2 ‑ 0) ,x‑ 0 ( モデル上部)において対称条 件 ( ∂ x ‑0,O y ‑O z ‑0 ) を設定 した・
[51 ]p 。 0 ‑ O Z! J O q 00 75 印 25 0 1
‑ 1 0 0 ‑ 7 5 ‑ 5 0 ‑ 2 5 0 2 5 5 0 7 5 1 0 0
hor i z ona l di s pl a Ce me 叫 mml
図 4 水平荷重 一水平変位 曲線 ( 鋼管柱)
0 0 0 6 4 2 互 pc o m oz !, o q
0 20 40 6 0 8 0 1 00
hor i z ona l di s pl a c e me nt 【 mm]
図 5 水平荷重 一水平変位曲線 ( 鋼管柱) 水平荷重 一水平変位 曲線を図 4に,包絡線を図 5に 示す.等方硬化別はピーク後の劣化の度合が実験 と同 じような債 向であ るが,最大耐 力が 20 【 %]程高い.
それに対 して移動硬化則は,最大耐 力の違 いは +10 [ %]程度であるが,ピーク後の劣化の度合は解析結果 のほ うが緩やかであった.これ らの結果のみか ら, ど ち らが適用できるか即断することはできないが,以後 の解析では,最大耐力の大 きさ と劣化の度合が実験結 果により近い移動硬化則 を採用する.
4. 箱型橋脚の解析
図 6 変形状況 ( No . 2)
補強 された解析モデル ( No. 3‑No. 5) の うち, No . 4 供試体の角部 については溶接 によってフランジ またはウェブ と補剛材が一体化 しているとして,また, No. 5 供試体の角部 については,ボル ト接合の代わ り
に,それぞれ板厚 を 1 5 【 mm] に増加 させた.境界条件 として,モデルの下端部 において並進変位 を固定 ( ∂∬
‑∂ , ‑ ∂ 2 ‑ 0) し ,x ‑ 0 において対称条件 ( ∂ x ‑ 0 , O y ‑O z ‑ 0 )を設定 した・各要素の材料定数は ,SM4 90 の引張試験の結果を使用 している .1 3 )
モデル基部 が座屈 した ときの変形状況 を図 6 に示 す.また,解析結果を図 7 ‑図 1 0 に示す.同国には実 験結果 も併記 されている. No . 2 供試体の解析結果は, 最大荷重,および最大荷重後の耐力低下の様子が実験 結果 とほぼ一致 してい る. しか しなが ら ,No.3 , No . 4,No . 5 供試体では ,No . 2 供試体の解析結果ほ どには実験結果 と一致 してな く,初期剛性 も解析値の 方が大 きく,最大荷重 も解析値の方がやや大 きい結果
宣 p 召 t m O Z
!JO tt [ Jl] p 召 雲 O Z
!10 q
‑ 1 5 0 ‑ 1 0 0 ‑ 5 0 0 50 1 0 0 1 50
ho r i z o na l di s pl ac e me n t l mm]
図 7 水平荷重 一水平変位曲線 ( No . 2)
‑ 1 5 0 ‑ 1 00 ̲ 5 0 0 5 日 1 0 0 1 5 0
ho r i z o na ldi s pl ac e me nt l mm]
図 8 水平荷重 ‑水平変位曲線 ( No . 3)
弾塑性有限変形解析に よる鋼製箱型橋脚載荷実験の シ ミュレーシ ョン解析 2 5 1
︻J l ]P PO 二 。 u O Z ! J O q [3 1] p ‑ m O Z
!JO q
‑ 1 5 0 ‑ 1 0 0 ‑ 5 0 0 5 0 1 0 0 1 5 0 hor i z onaldi s pl ac eme n t l mm]
図 9 水平荷重 一水平変位 曲線 ( No. 4)
‑ 1 5 0 ̲ 1 0 0 ‑ 5 0 0 5 0 1 0 0 1 5 0 ho r i z onaldi s pl ac e me n t l mm]
図 1 0 水平荷重 ‑水平変位 曲線 ( No. 5) となった.初期剛性が大 きいのは解析モデルでは基部 の変位は固定 されているが,実験供試体の基部 はボル トで固定 されているため,強制変鹿 を与 えた際 にボル トの緩み等で同等の水平変位であって も水平反力が低 くな るな ど完全固定ではないためではないか と考 えら れる.最大荷重 については,初期剛性が大 きい こと, また初期不整や残留応力を考慮 していない ことが原因 として挙げ られる.また,解析結果,お よび実験結果 の水平荷重 一水平変位 曲線の包絡線 を図11,お よび図 1 2 に示す.これ らを比較する と No. 5 供試体 を除 くと, はば同様 な傾 向を示 している. しか し ,No. 5 供試体 については,同一の水平変位 を加 えた場合,実験 では No.3 供試体 よ り水平反力は劣 っているが,解析では ほぼ同等の耐力 となった.角部 について,実験供試体 では補強部分は高力ボル トで接合 しているのに対 し, 解析モデルでは補強部分 を一体化 させている. このた め,実験供試体で発生 している補剛材 との滑動 を解析
0 0 0 0 5 0 2 1 1
[5
1 ]p ‑ ‑ O Z
!JO q 0 0 5 0 l l
一Jl]