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論文の内容の要旨
氏名:髙 附 亜希子
博士の専攻分野の名称:博士(歯学)
論文題名:
Evaluation of novel root canal obturation techniques using prototype endodontic obturators with a resin-based sealer in various powder-to-liquid ratios
(試作根管充填用コンデンサーを用いた粉液比の異なるレジン系シーラーによる新規 根管充填法の検討)
根管の拡大,清掃後に行われる根管充填は,根管治療の中でも重要な手技の一つである。根管充填 の目的は根管を緊密に封鎖することによって,根管内感染細菌が根尖歯周組織へ波及する経路を遮断 することである。根管充填法には,側方加圧充填法,垂直加圧充填法,
continuous wave
法あるいは単 一ポイント法など様々な方法があり,それぞれ優れた封鎖性を有している。しかし,側方加圧充填法 は多くのアクセサリーポイントを必要とし,内部吸収症例やイスムスおよびフィンなどの複雑な根管 形態を有する症例に対して緊密な充填を行うことが極めて難しい。一方,垂直加圧充填法は内部吸収 歯や歯内歯などの複雑な根管形態にも適用できるが,歯根破折,歯根表面の温度上昇あるいは根管充 填材料の根尖孔外への押し出しなどのリスクが指摘されている。そのため,これらの欠点を補い,よ り正確かつ経済的で簡便な根管充填法の開発が望まれている。このような欠点を補い,臨床家にとってより望ましい根管充填法を見い出すため,試作根管充填用 コンデンサー(試作コンデンサー)を用いて根管シーラーを根管内に充填する新規根管充填法に着目 した。実験に先立ち,根管シーラーを根管内に充填するためのステンレス製コンデンサー(マニー)
を試作した。また,根管シーラーとして
MetaSEAL Soft
(サンメディカル)を使用した。MetaSEAL Soft
は可撤性に優れており,再根管治療時の除去操作が容易である。また,デュアルキュア型接着性レジ ン系シーラーであり,根管象牙質と樹脂含浸層を形成することで良好な接着を可能にする。しかし,MetaSEAL Soft
を根管内に単独で充填する際,製造者指示の粉液比が良好であるかは不明である。本研究の目的は,
MetaSEAL Soft
の粉液比を変化させた際の特性を検討し,試作コンデンサーを用いた 根管充填の有効性を検討することである。MetaSEAL Soft
の粉液比は製造者指示によって1.0:1
とされているが,粉液比を1.1:1, 1.2:1, 1.3:1,
および
1.4:1
と変化させ,根管充填材として最も適した粉液比を明らかにすることとした。すなわち,ISO 6876
に準じて,各粉液比におけるMetaSEAL Soft
の稠度,被膜厚さ,硬化時間および溶解率を検索するとともに,引張接着強さ(接着強さ)の測定を行った。
MetaSEAL Soft
の接着強さを測定する ため,ウシ歯象牙質を用いた試験片の作製を行った。すなわち,ウシ歯の前歯歯冠部を使用し,唇側 のエナメル質を耐水性シリコンカーバイドペーパー(#220)で研削し,象牙質を露出させた。その後,アクリルレジンに包埋し,シリコンカーバイドペーパー(#600)を用いて象牙質表面の研磨を行った。
象牙質表面に厚さ
50 μm,直径 4 mm
の孔開きテープを貼付し,孔の中に練和したMetaSEAL Soft
を 満たしたのちレジン製円柱棒を垂直に圧接し,硬化させた。接着強度の測定には万能材料試験機(model
5567
,Instron
)を用い,クロスヘッドスピード1 mm/min
で試験片に荷重を加えた。破断時の荷重(N
)を記録し,接着強さ(
kPa
)を求めた。これを各粉液比で練和したシーラーを用いて,それぞれ6
回繰 り返し行った。試作コンデンサーはピッチ数とピッチ角度をそれぞれ
12, 17, 22
および5
度,8
度,11
度と変更し,様々な組み合わせで作製し,根管充填度を評価した。初めに,ピッチ数
17
でピッチ角度を5
度,8
度,11
度と変更させたもの,およびピッチ角度11
度でピッチ数を12
,17
,22
と変更させたコンデンサー の根管充填性を検討した。その後,ピッチ数22
,ピッチ角度11
度とし,先端径のみ0.15
,0.20
,0.25
および
0.30 mm
と変化させたコンデンサーの充填度も検索した。根管充填に使用したMetaSEAL Soft
の粉液比は
1.3:1
とし,模擬根管模型(根管模型:ニッシン)に根管充填した。根管充填後,根管模 型を根尖側1/3,根管中央部,および根管上部 1/3
の位置で自動精密切断機(Isomet,Buehler)を用い て切断した。切断面を実体顕微鏡(×10
)で観察し,スケールと共に写真撮影を行った。その後,画 像解析ソフト(SigmaScan Pro5
,Hulinks
)を用い,切断面全体の充填前の面積と充填後の空洞部分の2
面積(気泡面積)をピクセル数で計測したのち,それぞれの面積(mm2)を算出した。全ての試験を
6
回繰り返し行った。なお,MetaSEAL Softの粉液比を1.0:1,1.1:1,1.2:1,1.3:1,および 1.4:1
と変化 させた場合の充填度も同様に比較検討した。その結果,
MetaSEAL Soft
の粉液比を1.1:1
,1.2:1
,および1.3:1
と変化させた練和物は,全ての稠 度,被膜厚さ,硬化時間および溶解率においてISO
規格で定められた基準に適合する測定値を示して いた。一方,稠度の計測値では,粉液比1.4:1
で練和したシーラーはISO
規格の基準値17 mm
を下回 った。接着強度については,粉液比が大きくなるにつれて上昇傾向にあり,1.3:1で最も有意に高い値 を示したが,1.4:1で最も低い値を示した。なお,粉液比1.3:1
は全ての粉液比に比較して,有意に高 い接着強度を示したことから,この粉液比で練和したMetaSEAL Soft
は根管充填材として最も適して いることが示唆された。各コンデンサーを用いた根管充填時の充填度を評価したところ,ピッチ角度が大きくなるほど,ま たピッチ数が多くなるほど根尖側
1/3,根管中央部,根管上部 1/3
における充填時の気泡面積は減少し た。統計分析の結果,ピッチ角度8
度と11
度のコンデンサーは根尖側1/3
において,また11
度は根 管中央部と根管上部1/3
において有意に低い気泡面積を示した。ピッチ数を変化させたところ,ピッ チ数17
と22
のコンデンサーは根尖部および根管上部1/3
において,ピッチ数22
は根管中央部で有意 に低い気泡面積を示した。コンデンサー先端の太さを変化させたところ,0.15から
0.25 mm
と変化するに従い,気泡面積が減 少した。統計分析の結果,0.20および0.25 mm
のコンデンサーは,0.15 mmおよび0.30 mm
のものに 比較して根尖側1/3
および根管上部1/3
で有意に低い気泡面積を示した。また,0.25 mm
のコンデンサ ーは根管中央部において,最も有意に低い気泡面積を示した。粉液比を変化させた場合の充填度を評 価したところ,1.0:1
から1.3:1
と変化させるに伴って,気泡面積は減少する傾向にあった。統計分析 の結果,粉液比1.2:1
および1.3:1
における気泡面積は根尖部1/3
で1.0:1,1.1:1,および 1.4:1
よりも 有意に低い気泡面積を示した。また,粉液比1.3:1
は根管中央部で全ての粉液比に比較し有意に低い 気泡面積を示した。本研究の結果から,粉液比を