書字支援による心の解放
著者 杉? 哲子, 上村 一成, 竹下 哲之
雑誌名 静岡大学教育実践総合センター紀要
巻 24
ページ 183‑192
発行年 2015‑03‑31
出版者 静岡大学教育学部附属教育実践総合センター
URL http://doi.org/10.14945/00008943
静岡大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 No 24 p 183〜 192(2015)
〈プロジェクト報告〉
書字支援による心の解放
杉崎 哲子*1,上
村 一成*2,竹下 哲之摯3
Liberation Ofthe heart by the Writing suppOrt.
Satoko Sugizaki, Kazlmari Uemura, Tetsuyuki Takeshita
概要:静岡大学教育学部芸術文化課程書文化教室では、これまでに地域の方を対象に書道体験イベ ン トや 書道展を開催 し、昨年度 には障がい者の方にも書制作の機会を提供 してきた。その結果、参加 された 方々の 「文字を書 くJことに対す る意欲の高揚を確認できたため、教育学部附属特別支援学校の中学 部の生徒達に対 して書写書道の見地か ら支援を行 うことに した。本論はその実践報告である。
キーワー ド: 特別支援 書字指導 毛筆書制作 自己表 現
は じめに
静岡大学教育学部書文化教室では、これまで地域の 多 くの方に書道体験の場 を提供 してきた。平成 25年 度は、障がいのある方を対象に市内に会場を設けて書 道体験イベ ン トを行 うとともに、専攻生の書展に併催 した形で書道展 「ために書 く」を実施 した。今年度は 大学の書道室に障がい者の方 を招いて一緒に書制作を 楽 しみ、ギャラリーで書展 「ともに書 く」を開催 した。
リハ ビリのため、あるいは 日頃お世話になっている 人に感謝 の言葉 を伝 えるために等、 「書 く」 目的は 様々であるが、この取 り組みによつて、参カロした障が い者の方々の文字への関心や学びたい書きたい とい う 意欲 を高揚 させ ることができた。
そこで、上記の成果をふまえ、本学部附属特別支援 学校で行つた書字支援について、 ここに報告す る。
1 研究動機の実践の概要 とその成果
1)2年間の取 り組み
○平成25年度実施 「ために書 く」の概要
「ために書 く」では、地域連携プログラムとして、
NPO法人オール静岡ベス トコミュニテ ィと連携 し、障 がいのある方への支援 として以下の3つを実施 した。
① 授産製 品への書の提供 (平成25年4月〜)
② 書道体験イベ ン ト(平成25年10月 27日 :於五風 来館)、 参カロ者/授産施設4か所及び特別支援 学校 よ り参加 (19名 )、 授産所訪問 (3回)
③ 書道展の開催 (平成26年1月10日〜12日 :於 グ ランシップ、2月 4日〜18日 :於 しず ぎん ミニ ギャラリー)
*1 静岡大学教育学部 国語講座・ 書文化
*2、 *3 静岡大学教育学部附属特別支援学校
書文化専攻生が書を提供 して、コースターや缶バ ッ チな どの授産製品の付加価値 を高めた。授産製品への 書の提供は、単に製 品の売 り上げに貢献 しただけでな く、例えば 「コースターJを磨 く作業工程の中で、書 かれている文字の意味や 自身の好 きな言葉についてな どを話す よ うにな るな ど、黙 々 と進 める作業の中に
「筆文字」があるだけで、そこに書かれている言葉の 意味に注 目す るよ うになっていった。また、その後に 開催す る書道イベ ン トを楽 しみに待 ちなが ら、書きた い文字についての会話が弾むよ うになった。
イベン トにはIx産所か らだけでな く特別支援学校の 子 どもたちも参加 して、思い思いに書作品に取 り組ん だ。その 日以外にも数回授産所に出かけていき、多 く の人に作品制作 を楽 しんでもらつた。
○平成26年度実施 「ともに書 く」の概要
平成 26年度は、もつと大学 を身近に感 じてもらお うとの配慮か ら、大学に障がいのある方を招いて書道 体験イベ ン トを実施 した。
① 大学の書道室 にお ける書道体験イベ ン トの実施
(平成26年6月 7日、於静大教育 書道室・演習室)
② 書道展 「ともに書 く」の開催 (平成26年 6月 20 日〜25日、於 :し ず ぎんギャラ リー『 四季』)
③ キャンパスフェスタin静岡での書作品展示
(平成26年 11月 15日〜16日 :於 大学会館)
大学での書制作は特別の経験になった とのことで、
その 日参加できなかった授産所の方や特別支援学校の 生徒 か ら出前講座 や追加 開催 の要請があるは ど好評 だった。
2)書道体験イベ ン ト・ 書展開催 の成果
イベ ン トでは、最初は うま く書 こ うとい う意識か ら
183
杉崎哲子 上村一成 竹下哲之
か委縮 している様子だつたが、学生がマ ンツーマンで 関わつて書きたい言葉を引き出 してい くうちに、思い 切 りよく書 けるよ うになつていつた。ある人は リハ ビ リのために、また人はお世話になつている人に伝 えた い一心で、感謝の言葉 を大筆で書いた。字が書けない 人は絵 を書き、脳性麻痺の人は車椅子か ら降 り床 を這 うように して全身の力 を込めて書いた。皆、滑 らかな 筆致を楽 しみなが ら筆 を走 らせ、毛筆で表現す ること の喜び を感 じることができていた。
書かれた作品は学生が裏打ち してパネルに貼 り、書 道展 を開催 した。書展において 自身の書 と再会す る。
作品を人に見せ るとい うことを意識す ると、もつとう ま く書きたい とい う思いが膨 らむ。思いを形に したい
とい う意識 によつて、これまで嫌がっていた文字を積 極的に覚 えようとする等の効果 も確認できた。
2 特別支援学校における書字教育
1)特別支援学校学習指導要領 における書字教育 知的障害児教育に関 して特別支援学校学習指導要領 では、生活単元学習、作業学習、 日常生活の指導、遊 び指導の4つの指導形態を中心に、各教科 と領域を合 せて学習 を行 うことが認 められている。また、各教科 の内容は、知的障害の状態や経験な どが様 々で個人差 も大きいため、児童生徒の個々の実態に即 して選択 し 指導 しやすい よう学年では定め られてお らず、小学部 は3段階、中学部は1段階で示 されているt
・小学部1段階 (主として障害の程度が比較的重 く、
他人 との意思の疎通に困難があ り、 日常生活 を営 むのにほぼ常時援助を必要 とす るものを対象 とし た内容)
・小学部2段階 (1段階ほどではないが、他人 との 意思の疎通に困難があ り、 日常生活を営むのに頻 繁 に援助を必要 とす るものを対象 とした内容)
・小学部3段階 (障害の程度が比較的軽 く、他人 と の意思疎通や 日常生活を営むの際に困難が見 られ るが、前段階の程度までは達せず、適宜援助 を必 要 とす る者 を対象 とした内容)
・ 中学部 (小学部3段階をふまえ、生活経験に応 じ なが ら、主 として経験の積み重ねを重視す るとと もに、他人 との意思疎通や 日常生活への適応に困 難が大きい生徒にも配慮 しつつ、生徒の社会生活 や将来の職業生活の基礎 を育てることをね らい と す る内容)
書字に関す る指導は国語の授業を中心に進め られ る ものの、合科統合 と各教科の相互の関わ りの中での教 育課程の編成や児童生徒の実態への対応によつて、担 当教員の考え方が大きく影響 しているit
小学部の国語の内容は、 「聞 く・ 話す」、 「読む」、
「書 く」の観点から構成 され、 日常生活で用いられる 初歩的な国語の知識や技能を身につけ、生活の中で生
かす ことが重要であるとされている。そこで、段階を 3つ設定 し、内容14pに 「書 く」観点か ら次のように 示 している。
ここには、 「書 く力は読む力 より、やや遅れて身に 付いて くる。」 ことか ら、 「書こうとす る文字を正 し
く読んで、内容を理解す る基礎的な能力がある程度身 についてい ることが前提である。^」 とある。続 けて
「文字に対する関心を深め、文字として表現 しようと する気持ちを伸ばす ようにすることが大切Jであるこ とから、 「ものの名称や事柄 を聞いた り話 した り読ん だ り」す ることの必要性が記 されている。
「いろいろな筆記具Jのところには、 「児童がいろ いろな筆記具に触れ(なぐり書きであっても書 くこと を十分楽 しめるような指導内容を設定す ることが大切 である。Jとある。また、筆記用具の持ち方や正 しい 姿勢についても、 「初期の段階や 日常生活の中のあ ら ゆる機会で、継続的に指導を行 うことが大切」である と記 されている。 さらに、 「人や物の名前は文字で表 せることを知 り、書 くことへの興味・関心を育てるJ
ことも意図 されている。 また、 「手指の機能について、
児童の実態を把握 してお くこと」や、 「筆記用具、マ ス ロの大 きさ、手本 との距離に配慮 し、単なる繰 り返 しには しないように しなが ら、受け答えな どをして意 欲を高める」工夫 も求めている。
中学部では小学部の内容 をふまえて、文章を書 くこ との技術的な指導だけではなく、様々な生活経験を し ていく中で文章を書 く場面を作つていくことが大切で あると記 されている。 ここでは、生徒の能力、興味・
関心に応 じてファクシミリや コンピュー ターな どの操 作 とともに、毛筆を指導内容 として加 えることも考え
られるとしている。
2)静岡大学教育学部特別支援学校 中学部における 書字指導
静岡大学教育学部附属特別支援学校 中学部には、染 色体異常を有す る3名を含む17名の知的障害の生徒 が在籍 してお り、 うち 12名に 自閉症または自閉傾向 が認め られ る。
平成 26年度の学部経営案に 「地域の人や仲間とと もに主体的に活動できる生徒を育てる。」 とい う学部 目標を掲げ、思春期における心身の変化を理解 し自他 を大切にする気持ちや態度を育てることをねらった実 践に取 り組み、生き生きとした活動が展開 されている。
日課は、 「生活単元学習」 「作業学習」 「国語・算 数」 「保健体育」 「音楽」 「総合的 な学習/美術J
「特別活動」 と、始業終業時の 「日常生活の指導」を 時間割に加 えて構成 している。
184
書字支援 による心 の解放
書字に関 しては、小学部での基礎 的なひ らがな・ カ タカナ指導の系統的な指導の延長上に、それ らの字形 を整 えるといつた書写的な学習が行われている。学年 別の漢字配当の枠にとらわれず授業名や住所な どの生 活 に身近な漢字を中心に取 り扱 うなど、あくまでも生 活に生かす とい うことが重要視 されている。
習得 をね らう漠字学習が量的に増 えるも、 これを主 体的な活動にす ることは極めて難 しく、記憶 を苦手 と す る生徒や手指の巧al■に課題 を抱える生徒の場合は、
文字を書 くことを厄介に感 じることも多い。
小学部ではなぞ りや視写のワークシー トを活用 し宿 題 にす るなどの方法で定着に力を注いできたが、硬筆 筆記具の持ち方に起因 した手指の疲労 も書 くことに対 す る苦手意識 を助長 している。苦手意識の有無や強弱 の個人差が大きくなっている中学部になつて習得漢字 を増やそ うとなると、さらに生徒個々の能力差に留意 す る必要性が生 じる。 したがって個への対応が求め ら れ るなかでは一斉授業 とい う形での書字指導 には時間 を避けず、 日記の形態な どにせ ぎるを得ない状況であ る。 このよ うに中学部における書字の指導には、内容 と方法の両面か らの検討課題が指摘できる。
3 書字支援実践の概要
書字に対す る支援 として、大学側か ら提供 できるこ とは幾つか考えられるが、対象が義務教育段階の中学 部の生徒であるため、単発のイベ ン トとい う形ではな
く通常の教育活動の範囲内での実施を提案 した。
障がいの程度や習得状況には個人差があって、生徒 個々に克服するべ き課題は異なる。 しか し時間的制約 か ら一斉の形態での展開は外せないため、 どの生徒に も共通す る次の2点を支援全体のね らいに した。
くオaら い>
・ 文字 の形 を整 えて書 くこ とがで きる。
・ 主体的に文字 を書 くことができる。
く実施計画>
特別支援学校 に出向いての 「書字支援AJと 「書字
支援B」 は 2日 に分けて行い、 「書字支援CJの大字 書の制作は、静岡大学の書道室に於いて実施 した。
①特別支援学校での支援
◆書宇支援A(平成26年 11月 19日、21日の2回、 特別支援学校 にて各1時限実施)
iPadの活用 によって運動面の支援 を行 う。
字形の捉 え方を確かにす る工夫 と書き進め方 を 示す方法により、漢字を正 しく整 えて書 くこと ができるようにす る。
◆書字支援B 同 日の同時限に生徒3名を抽出 し、大 学生 2名 が担 当。
*「支援A・ BJは通常 日課 「国語・数学」に充当。
② 静岡大学内での支援
◆書字支援C
大字書の制作 (12月 5日 、静岡大学教育A棟書 道室 で実施)
想 い を形 にす る体験に よ り字 を書 くことの楽 し さを実感 し、書字に対す る主体性 を喚起す る。
*「支援CJは、学校行 事 と して予定 されてい る校 外 学習 として実施。
4 実践 の様子
1)特別支援学校 での支援
書字支援A
は じめに挨拶 と自己紹介 を し、12月 5日の静大訪 間の話 を したが、まだ生徒に話 していなかった との こ
とで動機 づけの導入 としては不十分であつた。 そ こで、
授 業 の流れ を説明 した段階で、再度 「形 よく書 く」た めの支援の授業であることをはつき りさせ た。
IPadを用意す ると、何 が始 ま るのか とい うよ うな 期待感 を抱 いてい る様子がみて とれ た。続いて ワー ク シー トを配布 して記名 を求 めたが、学習には真面 日に 取 り組む ものの、文字 を書 くこと自体 に嫌悪感 を抱い てい る生徒 も数名 いることが確認 できた。
一 斉 指 導 で は 、 「左 右 の組 立 て 方 (へん とつ く り)Jを確認 す るこ とか ら始 めた。 「木へんJ「さん ず い」 と「毎」 をホ ワィ トボー ドに貼 り「漢字 を作 ろ う」 と声掛 け した ところ、即座 に 「海」 「梅Jの両方 が挙がつた。 「海 のそばに梅 が さいてい る」 とい うヒ ン トの一文は不要のよ うだが、漢字 の意味 を感 じ取 り 情景 を浮 かべ る とい う点で意味があると考える。
一斉指導で取 り扱 ったのは、全て小学校第3学年 に
配 当 され てい る漢字 とした。事前 に生徒の ノー トを調 査 した ところ、低学年の漢字 では習得で きている生徒 が多いため、物足 りな さを感 じ学びの足取 りを 自党で きない危険性が ある と判断 したか らである。
また、漢字その ものは習得で き書 けて も終筆 (とめ、
はね、は らい)の区別が曖味だった り転折 (おれ)の
押 さえが足 りなかつた り、点画 の方 向を誤 った りな ど、
生徒の多 くに共通す る課題 を含有 してい るもの として、
複合文字の 「左右 の組立て方Jの漢字 が妥 当 と考 えた。
課題克服 の手立て として、 1日 日の前 半には、言語 化 と空書 きによる仝員での確認 を行 つた。 「木へん」
の一画 目の横画 を 「ぐっ と右 に上げ る」、二画 目の縦 画 は 「右寄 り」に、 「左 は らいJ、 そ して 「点」にす る とい うよ うにポイ ン トを唱 えなが ら空書 きで動 きを 定着 させ た。 「毎Jの部分 、 「さんずい」 も同様 に言 語化 と空書 きを繰 り返 してか ら、 「梅」 「海Jのシー
トをつ けた IPadの うえを指でなぞ らせ た。 なぞ り書 き と空書 とを合体 さたiPad上の指なぞ り (=空なぞ り)は、筆記 具 を把 持す る とい うス トレスを取 り除 く こ とができ、認知・運動の双方 に効果的である●。
杉崎哲子・上村一成 竹下哲之
笏か
「iPad等を活用した書字支援」・ 筆記具把持のス トレスを除去 して、文字を書 くことへの負担感を軽減する。
・ 示 し方を工夫 して文字認識 を確かに し、文字 を正 しく形 よく書けるよう支援する。
実践担 当
3グループに分けるが、同様の流れで活動す る
Aグループ (5名)、 Bグループ (5名)、 Cグループ (4名)
・19日/杉時、非常勤講師、学生 3名 ・21日/杉崎、非常勤講師、学生 2名 展開 (1)11月 19日 (水)9:30〜10:10
生徒の活動 留意点 準備物
10分 グループ内で 自己紹介
文字 を書 くことに興味を抱 く。
大学訪間を楽 しみにす る。
学習の流れを知 る。
自分の名前を鉛筆で紙に書 く。
声に出 して自己紹介す る。
・ 担 当 者 の 挨 拶 。 (親 しみ を 持 た せ る。)
・猛札 を見せ なが ら自己紹介す る。
・ 学習の流れが分か るよ うにす る。
(声に出 して説 明、確認 をす る。)
・ 学生が先 に名 前 を書 いて 自己紹介 を し てみせ る。
に)
流れのカー ド
鉛筆 (各自)
ワークシー ト
15分
10分
「左右の組立て方」を理解する。
「木へん」「さんずいJの漢字
「梅」で「木へん」の整え方を知る。
・ 「毎」の整 え方 を確認す る。
「く+折れ て、はね る+真ん 中+横一J
・iPadを使 つたなぞ り (指書 き)に
よつて、字形 と運筆 のポイン トを理解す る。
シー トをなぞつて 「梅」 を書 く。
シー トを外 して 「梅Jを書 く。
・ 友達 と見合 う。
・ 共通課題 を意識化 させ る。
「へん」 と「つ くり」
・ 書 き方の コツ (偏の整 え方)を示す。
① 右上 が り (ぐっ とあげる)
② 中心右寄 り (縦画の位置)
③ 右端揃 える (右払いを点に)
「梅Jの提示 (木+毎)
「海Jの提示
・iPadの 使用法について指示す る。
(保存の仕方、シー トの使い方な ど)
・空書きで確認す る。 (音声化) │
・ 宇形認識 を主にす るが、運筆の仕方や 筆圧のかけ方を意識化 させ る。
・相互評価ができるようにす る。
(学生が、会話 を記録す る。)
共 通 の組 合 せ カー ド
iPad
OHPフィル ム
5分 ・ 鉛筆でま とめ書きをする。
・次時の学習を見通す
・や り方を知らする。iPadで扱つた文字 を活用する。
記入用紙 (書之助)
日常的な文字では、折れや終筆の区別 には無 頓着になつている生徒が多い。 しか し、iPad上 に指 なぞ りを繰 り返 してか ら書いた ワー クシー トの文字では、全ての生徒が転折部で しっか り と鉛筆を止めて方向を変 えていた。
右 の生徒は 日常の ノー トでは多 くの転折部が 丸 く、例 えば 「花」の最終画の 「まが り」の後 の 「はね」 もない。 しか し、急いで書 く日常 と 特別 な授 業 との状況の違 いや終筆のは らいが不 十分ではあるものの、一斉授業での音声化や空 書 きによる確認 と各 自の空なぞ りによって意識 化できたことは間違いない。
◆生徒の文字の変化例 (1年男子)
日常のノー ト(下)
支援Aでのワークシー トの部分 (右)
0 0
書字支援 による心の解放
◆空なぞり「海J
筆 記 具 の持 ち方 を気 にす る こ と な く、指先 の加 圧 に よつて筆 圧 の 強 弱 と点画 の形状 (はらい 、 とめ 等 の 終筆 の変化)との 関係 を感 じ 取 る。鉛 筆 で筆 記す るよ りも大 き く書 いて い るので 、点画 の形 状 や 方 向な ども分 か りや す い。 大字 は 低 学年 の書字 に有 効 で あ るの と同 様 に特別 支援 と して も、そ の効 果 が期待できる。
シー トあ り (左 )、 シー トな し (中)
展 開 (2) 11月 21日 (金)9:30〜10:10
生徒の活動 留意点 準備 物
5分 ・ 前時の学習 を思い起 こし、本 時の学習の 流れ を知 る。
実習生 も学習 に加 わって も らう。 流れ のカ ー
ド 鉛筆 (各自)
分
10分
「木へん」の漢字のポイ ン トを振 り返 る。
・ カー ドを組み合 わせて、 「木 へん」の漢字 を作 る。
「木+反、黄 、直、公、主」
・ 作った漢字 をワー クシー トに書 き込む。
・ 「海 」 を思 い 出 し、
ポイ ン トを振 り返 る。
「シ+主、 羊 、 由、
「さんずいJの漢字の
皮 、谷 、青 、 ムロ 永 、魚 、去 、 可 」
・iPadを 使つたなぞ り書き (指書 き)
よつて、個々の課題 に取 り組む。
iPadに保存 した漢字 のプ リン トを 配布 し、書 き方のポイン トを思い 出す。
思いつか ない生徒 に ヒン トを与 え る。読み方 を確認 させ る。
カ タカナ の 「シJを確認 し、 「さ んずいJの右上払 い に気 をつ け さ せ る。
組み立て方について理解 させ、
宇認識の意識 を喚起 させ る。
個人課題 を意識 化 させ る。
iPadの使 用法 を思 い起 こ させ る。
(保存の仕方、シー トの使い方など) 言語化 を取 り入 れ る。
iPad保存 文 字組 合 わせ カー ド ヒン トカー
ドジ グ ソー
個 々のカー ド
iPad
ClllPフ ィル ム
(マグネ筆)
5分 ま とめ書 きをす る。次時の学習 を見通す 文字 を書 くことに対する意欲 を喚起 させ る。
二 日 日の最 初 に は 、前 回 の 「左 右 の組 立 て 方 」 を確 認 した。 小 さい カ ー ド の「木 」 と 「主 」 で
「柱 」 を作 る こ とを例 示 し 、 各 自 に 「木 へ ん 」 カ ー ドを配 布 した。 そ の 後 、 1さんず いJに取 り 組 んだ。
◆漢字パズルに挑戦:
187 の様子
杉峙哲子 上村一成 竹下哲之
漢 字 を作 る こ とがで きた ら、教育実習生 に も参加 し て もらい、マ ンツーマ ンで読み方 と使 い方 を声に出 し て確認 した。 思いつかない生徒 に対 しては、学生が ヒ ン トを出 していた。 見つ けた漢字 をワー クシー トに記 入す るこ とに して あ つた が、マ ス ロが足 りないほ ど沢 山探す生徒 もい る反 面(習得 漢字 が少 な く探せ ない生 徒 もい るため新 しく学 ばせ るのは時間的 に難 しか つた。
その後は、事前 に指導教員か ら提 出 された 「学習 し たい (させ たい)漢字Jを iPadで練 習 した。 この際 も、初 めは シー トをつ けて空 なぞ りし、形 を とらえ ら れ た らシー トを外 してなぞ るよ うに した。
◆個々の課題文字の空なぞり
を有す る3名を抽出 し、毛筆を生か し た書宇支援 を実施 した。 (担当:大学生2名)
・ 筆圧 が弱 く強弱がない
この2年の男子は乗 り物 が好 きで、 どんなことに も 意欲 的 に取 り組む。 2語文程度で 自分 の気持 ちを伝 え るこ とが出来 る。語 彙 が少 な く発 音 が不明瞭 な時 もあ
るため、コミュニケーションに困難が生 じる。筆圧が 不安定、小 さく書 くことが苦手、列を揃 えて書 くこと が難 しい等の書字の課題に対 し、担当の学生が、以下 の支援を した。
手立て/筆圧調節のために太 さの違 う線 (かご字で 提示)を書 く。→漢字の一部 (人、玉、金な ど)を
書き組み合わせ る。→ 「鈴」 とS字カーブ
成果/「三」の細・ 中・ 太の線、最初は全て同 じ太 さ に しか書けなかつたが、筆圧 を加 えることにようて 線が太 くなることを実感 し書けるようになった。始 筆の際に力を加 え、そのままの筆圧 を保 ちなが ら繰 を引くことができた。 「のJでも筆圧 の変化 をつけ ることができた。 ぐ―つと、ゆっくり太 くな どの言 葉がけ、姿勢の崩れも常に指摘 し声掛 け した。
・ 力が入 りす ぎて文字が角張る
ダ ウン症による中度程度の知的障害がある3年の女 子である。書 くことが大好きで自宅でも好 きな言葉 を ノー トに書いている。平仮名、カタカナは全てかける が、濁点、拗音・促音の書き落 としが しば しばみ られ る。授業名、小学校1年生の学習漢字程度は書 ける。
緊張気味の影響 もあつて文字が小 さい。縦画が短 く字 形が横広 になる傾 向がある。
手立て/小筆で渦巻やS字カーブ (かご字を提示)
を書 く。→ 「ゆめ」 「かにJを書 く。
成果/くね くね、 ぐるぐる、 ぐつと力を入れて、たま ごが入 るよ うに等具体的にill明。S字かご宇教材に おいて枠が埋まるぐらいの太 さで と促す と線の大 さ に変化をつけることができた。練習を重ねる うちに
ワー クシー ト上で も曲 線 が書 ける よ うになつ ていった。
◆S字カー プの練習風景
書字支援B
特徴 的 な課題 0ワークシー ト例
★
︐ さ
″ のポ イ ン ト が
︐ か つた 0
︐ 一
鵬 . 閣
.
0業9蒸ズル
☆■︐ け2■字●移よくいこう.
一 犠 一
,台 : ,谷: i去
188
書字支援 による心 の解放
・ 点画がつなが り、終筆の区別が曖味
新 た な学習 に対 して も意欲 的 に取 り組 む1年男子。
自分で 日標や楽 しみを見つ けて取 り組み努力で きる。
学習の積み重ねによって手順やや り方 を覚 え、正 しく 行 える力 を有 し、生活面に不 自由 さはない と思われ る。
漢字書 き取 りには時間 を要す る ものの 、筆圧 を調 節 し枠 に合 った大 き さで文字 を書 くことが 出来 る。 「は ねJ「は らい」」は意識で きているが、 「とめJは流 れ るこ とが多い。 日記や予定は丁寧 に書 いている。
手 立て/惜書 の基本 点画 (かご字提示)を練 習 し、
終筆 の 「とめJと筆 を離す位 置 に印 をつ け る。
→ 「マ ラ ソン」、 「=J「求」 の後 に 「球J
成 果/終筆 に注 目させ た こ とに よつて、 生徒 自身 が
「ここで止 ま る」 「筆 を離す」 と口に しなが ら書 き、一点一画 を意識 して書 くよ うにな つた。 「求」
の筆順 を指書 きで確認。「ン」の右上払 いでは、始 筆 で一度止 ま る こ とを しっか り意識 で きていた。
◆終筆の区男1「球J
2)静岡大学書道室での支援 書字指導C「毛筆大字書」の制作
「書きたいことを書きたいように書 くJ
「静岡大学キャンパス内での活動 (大学教官の指導、
学生 との触れ合い)を通 して、本校 の母体である静岡 大学の様子 について知 る機会 とする。」 ことをね らい に毎年実施 され る校外学習で、今回は大学の書道室に 於いて 「書道体験」をす ることになつた。
ね らい
毛筆の大学作品を書 く活動 をとお して、書字の技能 向上をはか り、書 く活動の楽 しさを味わ う。
展開
・全体説明 :杉 崎/支援 :書 文化の学生 (11名)
・書道室 と演習室の二か所で制作す る。
「書道室J大学生2名、 中学生3名のグルー プ3つ と 大学生1名、 中学生2名の グループ1つ
「演習室J大学生1名、 中学生2名の グループ3つ (=書字支援Bの担 当者 と生徒 を含 む)
は じめに書道室 に全員 が集合 し、制作の手順 を説 明 した。各 々、グループ担 者の学生が先導 し、 自己紹介 を終 えた ところか ら書 く文字 を決定 していった。事前 に決 めてきた生徒 もあつた。決まった ら半紙 に雛形 を 作 り、半切 三分の一か ら全紙二分の一のサイズまでの 画仙紙 を選び書 き始 めた。
何を書 こうかな。 筆順 忘れ ち ゃつた。
太い筆で思い切 りよく
189
書きたい文字は 「食J
◆制作風景
杉崎哲子 上村一成 竹下哲之
◆生徒の表われ
生
徒 書 字支 援A(パズル等)での表れ 書字支 援A(iPad)での表れ 書字支援Cでの表れ
1 意欲的 意欲的 最 初 は困惑 、 その後 のび
のび書けた
2 楽 しく取 り組 んだ 正 しく書けた 名前 な ど楽 しく書 いた
3 終筆の区別を守つて書けた 普段 よ りも丁寧に整 えて書けた 書字 が苦手→ 大筆 で書 い た=一番楽 しかった
4 終筆確 か 、積 極的 に漢字 を作 つた △筆順 の誤 り見 られた 楽 しく書 いた、
大筆 に意欲的
5 初めは意欲的、途 中か ら飽 きてい
た
姿勢保持 △、のび のび 取 り組む、大筆に意欲的
6 1日 目欠席
書字への苦手意識強 く拒否感有
意欲的 部 分 に気 を付 け の び の び
書 いた。
7 筆順に苦手意識有、
はね注意 した
抵 抗 な く活用 高所 のハー ドル有 りなが ら、のびやかに書き集中 8 梅、海 は未習の為筆順に困惑 なぞ りや視写 よくできた 名 前 、 上 下 組 み 立 て △ 、
羊 に も挑 戦
9 字の部分の傾 き有 意欲的、速 く書いて終 らせる面も 教科名書 いた、大筆 で ダ イナ ミックに書いた 沢 山の字 を書 いた 良 く見 て綺麗 になぞれた 大筆で楽 しく書いた
字形 良い、 はねや折れ を更 に意識 色 々な文字に挑戦 楽 しんで取 り組 む はねや 払 い を意識 して書 けた 大 きな紙 に力強 く書けた
繰返 し書いた後、 自分で練習 も 教 科 名 や 名 前 を 書 い た 、 声掛 けを守 って書 けた
楽 しんで取 り組 む 集 中できていた 大筆で力強 く書 けた
書 字 支 援
B雰 霞 翠 ξ 看 麗 を し
終筆の区別あいまい
のびのび、宇形に気配 り 手本 をまね 自分 で表現 、リ 見ることも楽 しんだ
17 楽 しみ に して い た
0大字書完成
個 々の生徒 の表 われか ら、 「書字支援C」 では全 て の生徒が楽 しみなが ら主体的 に取 り組 めていた こ と が確認で きる。字形 を整 えるな どの拘束 を感 じることな く、滑 らかな毛筆の筆触 を楽 しみ 自由に書 ける状
況はとても楽しい。初日あ「支援A」 を欠席し、二日目最初に鉛筆で書く作業があって嫌悪感を示 した生 徒 (上表6)や日頃から書字を苦手とする生徒 (上表3)の「支援C」 での表われは特筆すべきである。
高所が苦手な生徒 (上表7)も坂の上の6階 にある書道室で夢中になつて取り組めた。
190
書字支援による心の解放
5 書字支援による心の解放
1)書写的視点の有意性
書字支援のAとBとは、教具は異なるが、 どちらも 点画の種類 を確認 して運筆の仕方に直接働 きかける支 援である。筆記具把持のス トレスを除去 した iPadに 対 して、毛筆は手指へのス トレスを緩和す る、手指に 優 しい教具だ とい うことができる。
筆記の際には紙面に筆圧を加 える必要があるのだが、
それ と同等の力で逆に机か ら手指に負荷がかかって く る。その点毛筆は穂先の弾力が緩衝作用 として働 き、
その負荷 を緩和 して くれるため、 「運筆の滑 らか さJ を感 じ取 ることができるのである・ 。
手指の巧緻性 を課題 とする入門期や特別支援学校 に お ける書字支援 には、 こ うした 「筆記 の際 のス トレ ス」を除去または緩和す るような手立ては極 めて有効 であるが、認識面の手立ては多 く考案 されているのに 対 して 「書き進 め方」への支援は決 して多 くはない。
ここで確認す る必要があるのは、書宇支援 として、
まずは文字 を記憶 し使用できるよ うにす ることである が、書写的な見方では、その上に「整 えて書 くJこと を要求す る。 したがつて特別支援学校における書字指 導 を、 「書ければよい」 とい う考え方で留めるのでは なく、書写的視点をカロ味 した効率の良い指導や支援 を 検討す るべきであろ う。
「筆順指導」や 「空書き、指書きによる書字運動の 記憶向上J、 あるいは 「動作見本による書字指導、文 字のイ メージ保持 を図 りなが らの視写」が効果的であ るとい う支援の方針 は、既に取 り入れ られているもの に書写教育の視点 を加 えた`ものであ り、更に、 「聴 党経路 を介 した音韻の活用や言語化」を加 えると効果 的であるのは周知のことである。
い うまで もな く「書写」は国語科の一領域 として、
「日常に生きるJものでなければな らず、毛筆の場合 も「硬筆のための毛筆」である。 しか し、前時代的で 訓育的な、書 き手の意思や 自由を制限す ることのない
自己表現活動 とい う側面での 「書」の制作について、
再検討の必要がある・ 。
2)文字 を書 くことの原点
研究動機 の取 り組みでは 「書道体験イベ ン ト」 と
「書道展Jを通 してみた参加者全員 の表われに二つの タイプの効果が確認できている。
一つ は、 自己の思いを表現できた ことによ り「自 信」を持てたことである。最 も顕著だつたのは、 自開 で潔癖症、人の持った物が触れず、 自分の椅子に しか 座れなかつた人 との交わ りを避 けてきた 自身 50代の 女性である。彼女は、母親 に対す る感謝の言葉 「あ り がとうJを書きたい一′さで使用済みの筆を手に して書 き上げていった。それ ばか りか、その後 は映画館や ポー リング場にも出かけられ るようになつた。表現で きた喜びを感 じただけでなく、書展において 自身の作 品 と再会 し更に自信 を高めていつた と考え られ る。
もう一つは、文字習得に対 して意欲的になつた事例 であ り、これは若年の障がい者に確認できた変化であ る。漢字 どころか平仮名の習得 も不完全な 20代の青 年は、特別支援学校 に在学 していた時期に、 「自分に は文字は書けない」 とい うことを確信 し、諦念か ら書 くとい うことに嫌悪感 さえ抱いていたため最初はイベ ン トに参加 しなかったのだが、書展に出かけ仲間の書 を鑑賞 したのを契機 に文字 を書きたい と考 えるように なつていつた。 自宅で毎 日カ レンダーに字を書いた り 平仮名だけで手紙 を書いた りす るなど学習に対す る主 体性が本人の中か ら湧き上った。
これ らの事象は、我々に 「文字を書 く」 ことの原点 を教示 してくれた。 自身の内側か ら湧 き出て くる思い を重要視せず して主体性 は望めない し、手指に負担感 を抱 えさせて字形指導を強化 した ところで、文字を書 くことを嫌いにさせては本末転倒である。 まずは「文 字 を書 くJこ とに楽 しさを感 じ取れ るようにす ること が、重要ではないだろ うか。 自由に書 くこと、負担感 な く書 くことの両方が楽 しさにつながると考える。
◆毛筆作品制作の効果―「 自己表現による自信獲得」
書く
=思いを形にしたい
● ● at
毛筆(滑らかな運筆)
=心地よさ 内在している思い
く感謝の気持ち ⇒ 伝えたい)
思いを表現できた 0違威感
ゆ l灘勇 ⇒
191
杉崎哲子 上村一成 竹下哲之
◆毛筆作品制作の効果―「文字習意欲の高撮」
内在してし`引駆tヽ
書きたい0でも書けない 琥
‡
承一
□
毛筆(滑らかな菫筆)
=心地よさ
3)心の解放 に向けて
中学部 の具体的 目標 「自分 の めあて を もつて、意欲 的 に学習 に取 り組む力 を養 うJの方針 には 「国語・ 数 学 等 の知識や 技能 につ いての学習 では、 日常生活 に活 かす こ とを意識 して指導内容 を設定す る。」 とある。
今 回 の書宇支援 A・ Bでは、本人が形 よく書 きたい と望んで い る 自身 の名 前や教科名 な ど、 日常の使 用頻 度 を考慮 して取 り扱 う漢字 を設 定 した。
ただ し中学部では取 り立て学習 として文字の字形 を 確 認 す る時間 が とれ ない とい う状 況 をふ ま え、一斉授 業 の形態 で は 「組立 て方 」 を取 り扱 つて字形 を整 え る た めのポイ ン トを示す とともに、点画 の種類 について も注 目させ た。 特別支援 に限 らず 、書字 の指導 とい う と字形の認識 に着 目しがちだが、実は どう手指 を動か して書 き進 めるのかが分かって こそ、実際に文字 を書 くこ とがで きる。そのために、点画の種類 について動 きを含 めて確認 す るこ との意味 は大 きい。
特 に、硬筆筆記の際に手指 の疲 労を訴 えている生徒 に関 しては、量的な練習 をすれ ばす るほ ど、漢字嫌 い になつて しまい文字を書 くこと自体 に嫌悪感 を抱 きか ね ない。iPad上へ の指書き 「なぞ り」は、筆記具を 把持す る際 のス トレス緩 和 とい う点 で、有効 な運動 面 の手立てである。手指 を動かす とい うことが、脳 内に 字形 を記 憶 させ 、文字 を再 生す る場合 に も有効 であ る
こ とは実証 されている。
以上 の よ うに、国語 として漢字習得 を 目指す だ けで も精一杯 とい う時間的 な制約 が あ る状 況下で あるか ら こそ、書写的視点の支援が文字 の認識 、運動の両面に 有効 に機 能 す る。
また、 「丈夫な体 と豊かな情操 をもつた心 と体づ く りに努 める」の方針 には 「思春期 にお ける心身の変化 を知 り自他 を大切 にす る気持 ちや態度 を育て る」 とあ る。今回の支援Cでは、 とか く技能面を先行 しがちな 毛筆書において 「書 く楽 しさ」や 「書けた達成感Jが
得 られ 、 自信 に結びつ いた と考 え られ る。 自分 に 自信 が持 てない と自己肯定感 は生まれず 、思いを表現す る
には至 らない。
主体的な学習姿勢 も、 自己肯定感が基盤 となる・ 1 表現す ることの達成感は、書き終えた時点に感 じるの はもちろんであるが、書展で 自己の作品 と再会 した時、
更に高揚す る。今回の作品の展示は、次年度にはなっ て しま うが、必ずや生徒達の 自信に結びつ くことだろ う。 こうした支援を継続的に実施できれば、前述の文 字習得への意欲向上の事例が示唆 している通 り、教科 の学習を主体的に進 めることに有効であ り、研究動機 の事例のよ うに、自分を表現す ることの勇気を手にで き、心の解放が達成できるに違いない。
i r特別支援教育の基礎・ 基本 一人一人のニーズに 応 じた教育の推進J pp 135独立行政法人国立特別支 援教育総合研究所 2013ジーアス教育新社
Ⅱ「知的障害児の文字・書きことばの指導における担 当教員の意識 と指導方法」渡邊実 「花園大学社会福 祉学部研究紀要20巻 pp 49 62花園大学2012渡邊 が実施 したアンケー ト調査によると、国語の重点課 題には多 くの教員が 「話す こと」を挙げ、 「書 くこ
とJの指導は最 も少なかつた とい う結果が出ている。
li「横書き速書きスキルア ップに関わる基礎研究J
杉崎哲子・沓名健一郎『 書写書道教育研究 第27 号』pp 21 30全 国大学書写書道教育学会2012
・ 「国語科教育における書写指導の課題―その lJ 平形精一『 静岡大学教育学部研究報告 (教科教育 篇)』 1976
V「書字学習障害児 (LD児)に対す る書字及び書写 か らの支援に関す る研究J『第27回全国大学書写書 道教育学会京都大会発表要旨集』仁 田幸二郎 2012
¨「小学校国語科書写における『 毛筆作品制作』に関 す る一考察」杉崎哲子『 書写書道教育研究 第21 号』pp 28‐37全国大学書写書道教育学会 2006
・ i「中学校国語科書写における硬筆指導の方向性に 関する考察J杉峙哲子『 書写書道教育研究 第26 号』pp 50 59 全国大学書写書道教育学会 20H
192 もっとうまく
'を たい 学冒薇