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日本在住外国人に対する言語支援の取り組み

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日本在住外国人に対する言語支援の取り組み

――川崎市の言語サービス―

林 遊 子

1.はじめに

1.1 研究背景・目的

近年、日本に在住する外国人の数が加速度的に増加している。そして、日本在住の外 国人市民は日本で暮らしていく中で直面する問題の一つに、言葉の問題がある。それを サポートしていけるのは、私たち日本人市民と、共に日本に住んでいる外国人市民であ る。その中でも、特に重要である言語支援について、日本在住の外国人市民に対する支 援が先進的である川崎市に着目し、どのような取り組みがされているのかを研究する。

また、2011年 月11日に起きた東日本大震災の際にどのような支援が行われたのかも合 わせて考えていく。以下、日本在住の外国人市民のことを外国人市民、日本在住の日本 人市民のことを日本人市民と呼ぶこととする。

1.2 研究方法

日本、また川崎市における日本在住外国人市民の現状、また、川崎で行われてきた言 語支援・言語サービスなどについて、文献調査を行った。さらに、今まさに川崎市が行っ ている取り組みについて、実際に会議の傍聴や施設への訪問などを通し、自分の目で見 て調査したことをもとに研究を進めていった。

2.日本在住外国人と言語支援の現状 2.1 日本に住む外国人

法務省の外国人登録者統計によると、日本には平成22年末現在における外国人登録者 数は2,134,151人(2011年 月19日発表)だという。10年前と比較すると1.3倍にもなり、

日本の人口の1.67% を占めていることから、近年増加傾向にあることがわかる。来日す る理由や背景は様々であるが、外国人が直面する問題の一つが、言葉である。外国人が 日本で生活していくためには、日本人側から言語サービスを提供する必要があるのであ 東京女子大学言語文化研究( )21(2012)pp.64‑77

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る。

2.2 言語サービスの定義・内容 2.2.1 言語サービスとは

外国人市民に不足しているのは情報である。日本人ならば簡単に入手できる情報が、

外国人には言葉の問題に遮られ入手することが難しくなり、情報格差が生じてしまう。

その状況を改善することを目的とした言語支援として、「言語サービス」というものがあ る。河原(2007)は、「言語サービス」を「外国人が理解できる言語を用いて、必要とされ る情報を伝達すること」(p.11)を第一の定義とし、「外国人の言語アイデンティティを 守り、多言語社会を維持発展させること」(p.12)を第二の定義としている。外国人市民 のアイデンティティも守り、日本人市民と外国人市民が平等に共生していくためのサー ビスである、ということを忘れてはいけないのである。

2.2.2 言語サービスで使われる言語

まず「外国人市民の母語」は、最も望ましい形である。しかし、外国人市民の国籍(出 身地)は年々多様化し母語も多様化していることから、全ての言語に対応していくこと は不可能である。河原(2007)によると、自治体の多くは少なくとも つの言語(日本 語、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語)による言語サービスを提供しようとしてい たそうだが、外国人登録者の推移の変化により、この基準もいずれ変化していくかもし れない。

次に「やさしい日本語」である。「やさしい日本語」とは、普通の日本語よりも簡単で、

外国人にもわかりやすい日本語のことである。言い換える時のルールは①重要度が高い 情報だけに絞り込む、②あいまいな表現は避ける、③難解な語彙を言い換える(『「やさ しい日本語」が外国人被災者の命を救います』弘前大学人文学部社会言語学研究室、佐 藤和之教授発行プリント http://human.cc.hirosaki‑u.ac.jp/kokugo/ejpamphlet.pdf より)であるという。これならば、予算や翻訳者が足りなくても、日本人がある程度訓 練を受けることにより外国人向けのパンフレットなどが作れるようになる。

最後に英語である。英語といっても、ネイティブが使うような英語ではなく、「平易な 英語」が必要なのである。河原(2007)は、「英語を理解する外国人にとって、英語によ る言語サービスは貴重なものである。ただし、日本にいる外国人の数から考えて、利用 者の多くは英米人よりも非英米人と考えたほうがいい。そのためにも、分かりやすい平

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易な英語で書かれることが望ましい」(p.16)という。

この の中で、どれを使用するかは、内容によってふさわしいものが決まる。

2.2.3 言語サービスの内容

河原(2004)によると、言語サービスの具体的な内容は大きく分けて以下の つが挙 げられる。①災害・事故・緊急医療など緊急事態に関する言語サービスを提供すること、

②相談窓口を提供すること、③パンフレットやホームページを通して生活情報を提供す ること、④多言語での公共の掲示・道路標識・案内標識を充実すること、⑤観光案内を 充実すること、⑥司法通訳を提供すること、⑦日本語教育を提供すること、⑧外国人児 童への母語保持教育を提供すること、である。

④や⑤などの言語サービスと違い、②、⑥、⑦、⑧は、日本人市民からは具体的な取 り組みが見えにくく、もしかしたら外国人市民も知らないかもしれない。このような サービスの存在を、外国人市民自身だけではなく、周りの外国人市民にサービスを広げ られるように、日本人市民も多く知っていく必要がある。

3.川崎市の現状と取り組み 3.1 川崎市に住む外国人

川崎市の人口は2011年 月現在1,426,080人であり、そのうち外国人登録者数は 32,146人である。前年に比べるとやや減少しているが、年々増加傾向にある。川崎市は 東京都と横浜市の間に位置し、ハイテク地帯が広がっている。このように工場が立地し 始めた1900年代初頭から、多くの外国人が移り住み、発展してきた。また、その後、社 会・経済構造の変化、出入国管理及び難民認定法の改正等もあり、様々な国から様々な 背景を持った人々が移り住むようになり、川崎市は多様な文化が交流する街になったの である。

3.2 川崎市の取り組みの歴史

川崎市は、1970年代から外国人市民が国籍(出身地)や文化、言語の違いなどによっ て社会的な不利益を受けないよう制度の改善を図ると共に、あわせて教育、啓発等の取 り組みを進めてきた。1996年に設置された外国人市民代表者会議は特に川崎市の先進的 な取り組みの一つとされていて、1988年の川崎ふれあい館開設や、2005年の『川崎市多 文化共生社会推進指針』の策定も同様である。又、1994年には川崎市国際交流センター

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を開設し、1998年には「外国人市民への広報のあり方に関する考え方」を策定している。

その他にも、2011年現在、区役所に「外国人市民情報コーナー」を設置し多言語による 資料を配布、川崎区役所や麻生区役所では2006年10月より 言語(英語・中国語・タガ ログ語)による外国人窓口を開設、川崎市のホームページ(http://www.city.kawasa- ki.jp/index.html)では、日本語(ルビつき)、英語、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン 語、ポルトガル語、タガログ語、ロシア語などの他言語による多くの多言語情報やその リンクを記載するなどの言語サービスを行っている。さらに、外国人市民のサポートの ため多くの事業を行っている川崎市国際交流センターでは、日本語を含めた多言語の講 座を開いたり、多言語情報を提供するなど、言語支援・言語サービスにおいて重要な役 割を果たしている。これらの取り組みや施設を、順に述べていく。

3.3 ふれあい館

3.3.1 概要と設置の背景

ふれあい館は、川崎区に存在する施設である。そして、社会福祉法人「青丘社」が市 よ り 受 託 し て 運 営 し て い る。ふ れ あ い 館 ホ ー ム ペ ー ジ(http:

//www.seikyu‑sha.com/fureai/)によると、日本人と在日外国人が、市民としてこど もからお年寄りまで、相互のふれあい交流をすすめ、互いに理解し共に生きる地域社会 を創っていくことを目的として川崎市が設置したという。

3.3.2 ふれあい館の言語サービス

門の近くの提示版には右の写真のポスターが 掲 示 さ れ て い た。こ れ に は、「【Intercom Kawasaki‑ku】『メールが とどきます。会員

(かいいん)になりませんか!』」と書かれ、

「かわさき(川崎)くやくしょ(区役所)と『か わさきくコミュニケーション・ボランティア』

がけんこう(健康)・こそだて(子育て)・イベ ントなどの おしらせを、まいしゅう(毎週)

メールで おくります。『やさしい にほんご』

と か い て、[email protected] メールを おくってください。」といった文章

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が、やさしいにほんご、中国語、英語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語で書か れていた。小さい子どもを育てている若い世代の親に合わせた情報ツールである。まず はなにより、外国人市民に、情報を伝えるための情報をいかに伝えるかが重要だ。ふれ あい館は、こども文化センターと統合していることから、主に子どものための施設と思 いがちだが、その親や家族も多く訪れる。そこでの情報交換は、情報を広げる大きな効 力がある。それらを考えると、このふれあい館は情報を提供するのに適している場の一 つだと言える。

中に入るとまず、入口の脇に多言語情報コーナーがあった(下の写真)。主な言語は、

日本語、韓国・朝鮮語、中国語、スペイン語、ポルトガル語で、全てではないが、その 他にもベトナム語、タイ語、タガログ語での情報もあった。

その中には、『外国人保護者用就学ハンドブッ ク』(川崎市教育委員会)、『多言語 DV 相談窓 口のご案内』(神奈川県県民部人権男女共同参 画課)、『夫からの暴力に悩むあなたへ』(神奈川 県立かながわ女性センター)、犯罪予防対策ガ イ ド ブ ッ ク『A Guide to Crime Prevention Measures』などがあった。これらを見ると、ふ れあい館に来る子ども、一緒にくる家族を対象 とした情報が多いことが分かり、日本人男性と 結婚して日本に来る外国人の女性が多いこと や、その夫から暴力を受けている女性が増えて いることが考えられる。そして、犯罪予防対策

など、細かい情報を提供しているものよりも、情報を得る場所、困った時の連絡先、な どの情報が多かった。ふれあい館だけでサポートする内容には限界もあるため、上記の ような情報をまとめて置くことが一番適しているのである。

さらに、2012年 月に改定、実施されるという入管法、外国人登録法を詳しく知るた めのパンフレットが売られていた。制度実施の Q&A が、 冊セット(特別永住者、中・

長期滞在者、非正規滞在者)で150円だ。これはまだ全てルビのない日本語表記のものだ が、もうすぐ多言語翻訳化されるという。この冊子は主に外国人のために作られたもの であるはずだから、最初からルビを振って制作すれば多言語化を待たなくても読める人 がもっといたのではないだろうか。早く外国人市民のもとに情報が届くよう多言語化を

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早急にしてもらいたい。

他にも多文化遠足など、子どもとその親同士と、地域の人がふれあい支え合うきっか けにもなるイベントも行っている。

ふれあい館は、外国人市民の人達のことを知ること、共にわかり合おうとすることが できる大切な場である。子どもはもちろんのこと、その親や、地域の人々との交流を増 やし、繋がりを強くしていくという目的も果たすことができるのである。

3.4 川崎市外国人市民代表者会議について 3.4.1 概要と設置の背景

川崎市外国人市民会議は、外国人市民が日本人市民と共に暮らしていくために、自ら の問題に向き合い話し合い、市へ働きかけていくための外国人市民による会議である。

川崎市外国人市民代表者会議条例をもとに、1996年に設置された。川崎市の公式ホーム ページ(http://www.city.kawasaki.jp/25/25zinken/home/gaikoku/kaigi/index.htm)

によると、市政参加をすすめ、ともに生きる地域社会の形成に役立てるために作られた という。

この会議の仕組み、大きな流れとしては、公募により選考された外国人市民代表者が、

年に 回( 回あたり 回)に会議と、年に 回臨時会(オープン会議)を開催し、調 査審議を行う。そして、年に 回調査審議の内容等を市長へ報告、市長が市議会へ報告、

そして人権・男女共同参画推進連絡会議で協議、それぞれの担当局を中心に施行、反映 状況を代表者会議へ報告、といったものである。

猿橋(2007)によると、外国人会議に類する取り組みは、2001年に行われた川崎市外 国人代表者会議検討委員会の調査では、川崎市を含め12の自治体が行っているという。

さらに川崎市の外国人市民代表者会議について以下のように述べている。

「これらの中で、川崎市の外国人会議は、(1)唯一、条例による設置である(議会での 議決によらずに解消はできない)、(2)26人という代表者の多さ(平均14.6人)、(3)

代表者全員が外国人で構成されている( 自治体は日本人を含む)、(4)代表者全員が 公募による選出であるという点で、他の自治体の外国人会議より規模や基盤の面で充 実している。」

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様々な国籍(出身地)や境遇、年齢の人の意見や声を取り入れるために、ある程度多 くの人数で行い、より多くのリアルな外国人市民の声を反映させるため、代表者を全員 外国人としている。もし、外国人市民と日本人市民が共に行った方がいいと言うのなら、

区民会議等の審議会に外国人市民も参加しやすいようにするべきである。より多くの審 議会が、外国人市民が参加しやすいようなものになることが理想である。以上のことを 踏まえ、やはり川崎市外国人市民代表者会議は、新しく先進的な取り組みと言える。

3.4.2 目的と役割

川崎市外国人市民代表者会議の目的、役割、また会議の流れを述べる。川崎市外国人 市民代表者会議条例の条例第25号の第 条(目的及び設置)には、「本市の地域社会の構 成員である外国人市民に自ら係る諸問題を調査審議する機会を保障することにより、外 国人市民の市政参加を推進し、もって相互に理解しあい、ともに生きる地域社会の形成 に寄与することを目的として、川崎市外国人市民代表者会議(以下「代表者会議」とい う。)を設置する。」とある。中野(2007)は、以上のことなどを踏まえ、外国人代表者 会議設置の目的を「①外国人市民の市政参加の推進、②共生の街づくりへの寄与」であ ると述べている。(p.43)

スローガンは「〜外国人の住みやすいまちは、日本人も住みやすい〜」である。そし て、以下の つをキーワードとしている。川崎市外国人市民代表者会議年次報告<2010 年度>によると、「要求から参加へ」は「要求するだけでなく、積極的に市政参加・社会 参加をしていく」、「個別と普遍」は「個別の違いの中から誰をも納得させる普遍的なも のを探す」、「相互理解と共生」は「外国人も日本人も、お互いの理解に努め、共生を図 る」(p.5)ことを表わしているという。川崎市外国人市民代表者は、そのものが目的と なる面と、外国人市民の声を反映させ、市政参加へ繋げる、という面があると考えられ る。

会議は基本として、外国人代表者と事務局と呼ばれる市民・子ども局、人権・男女共 同参画室の職員とで行われる。事務局は主に、会議運営のサポート、調査審議資料及び 議事録作成、関係当局との調整及び連携、他都市等の情報収集及び情報提供を行う。会 議の中でも、書記、代表者からの質問に答えるなどの役割がある。使用言語は日本語で ある。毎年募集には多くの外国人市民の立候補があり、その中から川崎市外国人市民代 表者会議選任要綱に基づき選考される。また、代表者は、市の非常勤職員としての報酬 も支払われている。

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3.4.3 2011年度の審議の傍聴

次に、私が今回傍聴した会議のうちの一つ、2011年度の 月の通常の会議について述 べる。まず、通常の会議の流れは、最初に事務局の方が事務説明をした後、代表者から の質疑応答に答える。そして社会生活部会と教育文化部会に分かれ会議を行う。今回は 社会生活部会の方の会議を傍聴した。その日は、絞られたテーマから、最も重要だと思 われるものを つ選出するための審議をするところだった。そのテーマは、多数決で決 められる。

傍聴者には、傍聴者遵守事項、会議の座席表、前回のまとめ、今後の予定、イベント のお知らせ、代表者にも配られていると思われる話し合いの報告書などの書類が配られ る。その書類に書いてある言語は全て日本語であり、難しい表現が使われている部分も あるが、全ての日本語にルビが振られている。さらに、事務局の職員が代表者から出た 意見をホワイトボードにまとめていく際も、全ての文字にルビを振っていく。板書に関 してはとても細かく大変な作業ではあると思うが、会議をスムーズに行う上で必要なこ とである。

会議は、基本的に代表者同士の話し合いである。各部会に部会長、副部会長が決まっ ており、部会長が司会となり話し合いが進む。話し合いの中で疑問点が挙がると、同席 している事務局の職員が可能な限り答え、不明な場合は次回までに明確にしてくるとい う流れになる。

【2011年 月11日】

この日は「社会参加」について話し合われた。外国人市民が日本人市民とともに生活 していくために、国や市だけではなく、町内会や自治会の存在が重要とされている。町 内会・自治会は、「一定の地域に住む人々によって組織され、お互いの連帯意識を深めな がらその地域内に生ずるさまざまな共通の課題を解決する地域を代表する重要な組織 で、住みよいまちづくりを目指して自主的に活動している住民自治組織です。」(2011年 月11日 川崎市外国人市民代表者会議 資料2‑2より)と定義されている。町内会・自治 会の活動として、「 災害に強い まちづくり」、「 安全・安心に暮らせる まちづくり」、

「 交通事故のない まちづくり」、「 ごみのない、きれいな まちづくり」、「 ふれあい のある まちづくり」、「 情報を共有する まちづくり」が挙げられている。

これらを共に実現していくためには、外国人市民も町内会や自治会に参加することが 重要となってくる。会議の中でも、町内会の子ども会などで開催されるイベントなどに

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参加することが大事だ、という話が出ていた。しかし、その町内会や自治会はどうやっ たら加入できるのか、そもそも町内会とは何かがわからないといった問題が生じる。会 議の中でも、新しく日本に来た外国人市民にその情報をどう伝えていくか、ということ が問題になっていた。それを実現させるためには、まず、外国人市民が新しく引っ越し てきたということを把握しなければならない。そこで、「住所などを登録する時に、区役 所側から町内会を紹介するのはどうか」という案が出た。実際に麻生区では、マンショ ン、アパートの管理者に町内会への参加を仲介してもらえるところがあるそうだ。

「社会参加」についての審議は、10月の会議で決められた市へ提出する今年度の提言に はならなかったため、具体的な実現からはまだ遠いが、町内会・自治会に関しての案は、

とても効果的なものだと考える。予算をあまりかけることのできない町内会、自治会で は、ボランティアをいかに集め、いかに活用していくかが鍵を握っていると考えられる。

会議は、外国人市民の声を反映させたり、市政参加などのために行われているもので ある。しかしそれだけではなく、代表者が一外国人市民としての悩みを打ち明け、それ に対し他の代表者がアドバイス、自分の体験談などを話すという光景がみられた。同じ ような経験や似た悩みを持つ者同士としてそれを話し共有できる人がいるという安心 感、それを共に解決しようとしてくれる仲間がいるという心強さに繋がっていくと思っ た。

3.4.4 オープン会議の傍聴

次に、私が傍聴した、11月29日に川崎市高津市民館にて行われたオープン会議につい て述べる。オープン会議とは、川崎市外国人市民代表者会議のうちの臨時会議であり、

代表者以外の人の外国人市民や日本人市民の意見を聞き審議の参考にし、外国人をめぐ る状況を広く把握することを目的としたものである。

準備や運営は、代表者の中のオープン会議実行委員を中心とした代表者達によって行 われる。全体の流れは、第 部に「川崎市における国際化〜多文化共生の実現に向けて 地域住民としてできること」のパネルディスカッションが行われ、第 部では第 期代 表者会議の審議の報告及び意見交換会を行い、最後に希望者のみで交流パーティーが行 われた。

第 部のパネルディスカッションでは、コーディネーターとして駒澤大学法学部教授 であり川崎市多文化共生施策検討委員会委員長である中野裕二氏、パネリストとして慶 応義塾大学経済学部准教授、前川崎市外国人市民施策推進指針検討委員会委員である柏

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崎千佳子氏、川崎市外国人市民代表者会議第1,2期代表者、獨協大学国際教養学部言語文 化学科非常勤講師であり特定非営利活動法人 KFV 理事長である金熙淑氏、川崎市外国 人市民代表者会議第6,7期代表者、川崎市子どもの権利委員会第 期委員、らいこむ多文 化教室代表(子どもの母語支援活動)である朴海淑氏が参加した。パネルディスカッショ ンの後、質問の時間がとられた。そこでされた言語サービスに関する質問の一つを取り 上げる。

新宿区で外国人市民との共生のために活動されている方の質問で「最近新大久保に住 む外国人市民が増えたのだが、ゴミ出しなどのルールを守らないなど、日本人市民との 間でのトラブルが増えている。川崎市ではどのような対策をとっていたか」というもの だった。それに対し朴氏は、外国人市民は、日本特有の遠回しの表現では分かりにくい ということを述べていた。優しく伝えるとことも必要だが、「ダメです」などといった直 接的な表現で教えてほしいということだった。トラブルを避けようとするからこその遠 回しの表現が、逆効果となりトラブルを招いてしまうことがあるのだ。これは、今となっ ては流暢に日本語を話されているが、日本語をまだ習得していない外国人市民としての 経験があるからこその視点であり日本人市民は気付きにくい、非常に貴重な意見である。

参加者は、外国人市民と思われる人ももちろんいたが、日本人市民と思われる参加者 も多くいた。これだけ多文化共生に興味を持ち、または活動している人がいるのだと感 じた。

4.川崎市の震災における言語サービス 4.1 今までの対応・対策

川崎市では、外国人市民が緊急時に困らないような体制づくりとして取り組みは進め られていた。川崎市外国人市民代表者会議での2007年度の提言にも沿って進められてい る。

●2007年度・提言②「日本語や日本の習慣等に不慣れな外国人市民が緊急時に困らない ような体制づくりをすすめる。」

これをもとに、「地震に自信を(緊急時の対応ガイド)」(英語、韓国語・朝鮮語、中国 語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、タイ語、ラオス語、カンボジア語版)と いう資料を各区役所やイベント時に配布したという。また、これまでにも多言語版防災 マップ作成を対象としたパワーアップモデル事業補助金による支援、「ぼうさい出前講

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座」の開催、職員による防災講話等を実施している。さらに2008(平成20)年度作成の

「備える。かわさき」の防災マップを英訳した。日本語版の裏面に英語版を印刷し、外 国人転入者や日本語学級などで配布したという。また、避難所標識に英語併記を行って おり、マークを緑十字からピクトグラムへ変更し、外国人市民にも十分に情報を伝えら れる体制を整えているという。

4.2 東日本大震災における対応

2011年 月11日、東日本大震災が発生した。外国人市民のために、川崎市はどのよう に動いたのだろうか。

・外国人相談窓口を特設

川崎市国際交流センターでは、 月18日(金)〜21日(月)までの 日間、地震や停 電、出国・帰国にかかわること、放射能に対する心配等について外国人対象の特別相談 窓口を開設した。英語、中国語、韓国・朝鮮語、ポルトガル語、タガログ語、スペイン 語の 言語での相談に、11人の相談員が対応した。放射能に対する不安や、出産間近で 他の町への移動希望や、テレビの情報を知りたいなど、被災地からの電話も含め30件余 りの相談があったという。

・文書翻訳

関東一円のネットワークとして、被災地や川崎市からの震災関連の文書翻訳の依頼に 応え、数十件の翻訳をメール便で送る等を行ったという。

・緊急情報のおしらせ

川崎市のホームページ(http://www.city.kawasaki.jp/index.html)に、「外国人市 民の方へ Emergency information」というお知らせのリンクがあり、さらに「緊急情報 外国人市民の皆さんへ Emergency information」というリンクがある。「計画停電中に 気をつけること」などといった情報が、やさしい日本語を含めた 言語で載せられた。

また、原子力発電所の事故や放射能についての資料がやさしい日本語で載せられている。

さらに、「外国語のリンク集」には、神奈川県庁へのリンク、内閣府定住外国人ポータル サイトへのリンク、さらに川崎市ホームページ 防災情報ポータルサイトの『備える。

かわさき』へのリンク、地域ごとの防災マップ、心のケアのためのパンフレット、川崎 市国際交流協会の外国人相談コーナーのリンクなどといった、地震や災害に関する多言 語情報のリンクもたくさん載せられている。

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事前の対策を含めたこれらの支援がなされた。

4.3 課題

2.2.3でも述べたように、災害や緊急事態の時は、外国人市民の母語で支援を行うこと が最も理想である。しかし、それには限界があり、やさしい日本語でのサポートが大き な役割を果たすと考えられる。そのため市や自治体などでやさしい日本語の認知度を高 め、日本人市民にも広げていく講座などを多く開催することが望ましいと考えられる。

さらに、市のサポートだけに留まらず外国人市民の周りの身近な日本人市民も助け合え るようにしていきたい。そして、事前に地震に備えるための情報をどのように伝えてい くかである。これは、明確な終わりはなく、成果も見えにくいため、長い課題になりそ うだ。

また、世界には地震というもの自体を知らない人もいる。地震に備えてもらうために、

まず地震そのものの基本的な事前知識としての情報を伝える必要がある。また、そう いった地震の際の予備知識や備え方が、日本と異なる場合がある。このような外国人目 線から見えてくる支援は、重要なものとなる。

そして、地震発生直後の支援だけではなく、 その後 の支援も重要となってくる。例 えば、健康保険や損害保険などの手続きの問題、医療費の問題、震災直後は多言語で流 されていた情報も少なくなり、行政の言葉もだんだんと難しくなってくるという問題で ある。保険等の問題は、もともと内容も難しく、やさしい日本語では限界がある部分も あり、多言語で翻訳されたものでのサポートが必要になってくる。長期にわたる支援が 行われるかどうかが大きなポイントとなってくる。

5.おわりに

本稿では、日本に住む外国人市民のための言語支援・言語サービスの取り組みを明ら かにするべく、取り組みが先進的だと言われている川崎市に焦点をあて、調査を行った。

川崎市は先進的な取り組みを行っていることが明らかになったと共に、それらも時間 が経つにつれて改善が必要になり、まだ課題もあるということがわかった。言語サービ スには終わりがない、ということを実感した。

そして、支援を行っているのは、日本人市民だけではないということを強く感じた。

日本に住んでいる外国人市民が、自ら立ち上がり、自分を含めた外国人市民のために活 動を行っているのである。それは、両者が共に協力し合った時初めて成立するのだ。日

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本人市民も、日本人として日本語を使って日本で生活しているからこそ気付けないこと や見えにくい部分はたくさんある。本当の意味で外国人市民の視点から考えていけるよ うに、外国人市民の生の声、意見を出すことができる場を作っていくことが大切だ。

ここで注意しなければならないのは、これは日本人市民と外国人市民の共生を目指す ものであって、決して同化させるためのものではないということである。多言語社会を 維持発展させていくためにも、外国人の言語のアイデンティティを守りながら支援をし ていく必要がある。それが「多文化共生」である。

そして私自身、ここで初めて知った、勉強になったということで終わらせてはいけな い。それを自らの行動に変えなければ意味がないのだ。川崎市の言語支援・言語サービ スの今後のさらなる発展を期待するとともに、私も行動に移していけるようにしたい。

引用文献

河原俊昭(2004)「はじめに―言語サービスとは」『自治体の言語サービス―多言語社会への

扉を開く』pp.5‑11 春風社

河原俊昭(2007)「外国人住民への言語サービスとは」河原俊昭,野山広編『外国人住民への言語

サービス―地域社会・自治体は多言語社会をどう迎えるか』pp.10‑27 明石書店 猿橋順子(2007)「共同作業としての言語サービス<川崎市の事例から>」河原俊昭,野山広編

『外国人住民への言語サービス―地域社会・自治体は多言語社会をどう迎えるか』

pp.47‑65 明石書店

中野裕二(2007)「川崎市外国人市民代表者会議の10年―議事録から読み取れること―」『駒

澤法学』7‑1(25)駒澤大学法学部

引用資料

川崎市外国人市民代表者(2011)会議編『川崎市外国人市民代表者会議年次報告<2010年度>』

川崎市市民・こども局人権・男女共同参画室発行

弘前大学人文学部社会言語学研究室佐藤和之(2011)『「やさしい日本語」が外国人被災者の命を

救います』弘前大学人文学部社会言語学研究室発行

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Web ページ

1)「川崎市」

〈http://www.city.kawasaki.jp/index.html〉(2011/10/31 検索)

2)「神奈川県 Earthquake Information」

〈http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p131218.html〉(2011/11/28 検索)

3)「ふれあい館」

〈http://www.seikyu‑sha.com/fureai/〉(2011/11/15 検索)

4)「法務省」

〈http://www.moj.go.jp/〉(2011/11/15)

5)「法務省 入国管理局」

〈http://www.immi‑moj.go.jp/toukei/〉(2011/11/15 検索)

6)「やさしい日本語実験」

〈http://human.cc.hirosaki‑u.ac.jp/kokugo/honjikken.html〉(2011/11/17 検索)

Abstract

In recent years, the number of foreign residents in Japan has increased. As a result, the need for language support and services has grown. In this study, I have investigated the current situation, focusing particularly on Kawasaki, a city with many foreign residents. The data for the research was obtained through a literature review, attending assembly meetings and visiting public institutions.

Kawasaki has aimed at coexistence of cultures since 1970 in order to protect foreign residents from discrimination because of nationality, culture and language. The city offers multilingual information about ward offices, self‑governing bodies and International Centers in pamphlets and on webpages. It also provides consultation services and Japanese language classes, and has built Fureaikan, a place where Japanese and foreign residents can meet. There

is also the , which allows foreign residents to

participate in local government. All of these things play their part in the cityʼs language services.

Foreign residents do not solely expect help from Japanese residents, but also act of their own accord in order to coexist in Japanese society. Japanese residents need to think about their viewpoints. There are still many problems, and more support is necessary, but coexistence of cultures can be realised with the help of language services and the cooperation of Japanese and foreign residents.

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