職 孚 資 源 と 國 民 清 費 生 活
井藤牛彌
職争資源として國家が動員し得るものは何か︒またこれが國民の消費経濟生活に封していかなる影響を及ぼ
すか︒これがこの駄文の中心題目である︒この問題については過去歎年の問に著書や論文︑ことに﹁日本諸學﹂
第二號(交部省敷學局昭和十七年十輔月稜行)所載拙文﹁長期建設職の恒久財源﹂で︑もつとも詳細に研究し
た︒こと︑では過去の論文を基礎とし︑その後入手または調査して得た資料をも新たに加へ︑今一度やや異つた
親角からこの問題を取扱はうと思ふ︒
職争の資源となるものは何か℃職孚経濟力の大小をあらはすものは何か︒これについて學者はいろいろのも
のをあげてゐる︒試みにその二三をあげる︒
職争資源と國民清費生活(井藤)̀一四七
,
一四八
まつイエヒトは職争需要を充足する源泉込して次の五のものをあげる︒O戦争申における維濟生産力の損
禿︑⇔從來私的家計の需要のために活動せる経濟部門及び経濟経螢の軍需生産へめ輻換︑別の語でいへば︑職
時経濟の公共需要のために︑あらゆる個別経濟的消費を極度に制限すること︑⇔軍需産業以外への投資の中
止︑㈱すでにある貯藏や設備の虞分︑岡外國資源の動員(国9︒︒け同8ぎ囚H一︒ぴq︒・幽3・︒言①PH㊤︒︒︒︒"の●︒︒︒︒i︒︒ρ小穴
毅氏邦課六二頁︑日猫文化協會課四三ー四四頁)︒
ピグーは職箏資金の源としてつぎの四者をあげる︒9生産増加︑⇔個人浩費の切下︑⇔資本新投資の申止︑
㈲現存資本の浩粍(︾博ρ国碧ξ↓冨旦三$一︒8ぎ塁︒貼蓄さ戸漣ρラb︒㊤ー齢⑦・)︒
タルハイムも職時財政における物資調達の資源として次のものをあげる︒e年々の生産︑肚會生産物︑職時
財政にこれを利用するには次の二方法がある︒④國家必要物の直接生産︑@必要外國品の輸入決濟用に供せら
な
れるべき輸出品の生産︑⇔財産の浩耗︒これには次の四種がある︒ω國民経濟内の貯藏物資の消耗︑◎天然資
源の濫用︑㊥補充投資の中止︑⇔外國資本及び金準備の浩耗(囚註O・目冨蒙助βU一①OH§亀・︒σQ睾魯乙︒暑9窪
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ブルクハそザーも職時財政の資源として次の三者をあげる︒0肚會生産物︑口封内的及び封外的國民財産(封'
内的國民財産とは︑土地︑建物︑工場︑機械︑交通機關︑武器︑商品︑家畜︑家具等︒封外的國民財産とは
金︑外國爲替︑外國投資︑その他必要な場合に外國に費却し得る財産)︑⇔外債(囚9二切霞聾・露さρき=窪き傷
崔︒昏&窪畠自囚碁σq︒・欝魯自犀きびQ堵固昌§N舞︒ぼくり罫炉︒︒●頃↑"μ●=̀お吟ρ¢︒︒︒︒1︒︒ρ)︒
以上のほかに︑多くの學者が職争の資本として種々のものをあげてゐる︒しかし以上列學した歎人の學者︑
それ以外の學者のあげるところをみると︑︑分類方法︑その他に多少の相違はあるが︑その内容には大差がない
のであつて︑これを整理すると︑結局は職争の資源乏なるものは︑H國局所得︑⇔國民財産︑匂外國資源の三
者につきるのである︒ここではこの分類方法をとり︑職費の財源としてのこの三者の特性について吟味し︑そ
㊨うちどれが最も適當な財源であるかについて研究しよう︒まつ外國資源からはじめる︒ !
一
職争のために外國の資財を利用する方法には︑次〇四形.態がある︒
(﹁)職争用叉は一般生活用の物資︑生産設備乃至帥労力などを︑そのままの形で占領地で軍自らが徴用する
とと︒これは往時一般さかんに行はれた方法である︒
(二)かかるものを︑そのままの形で外國より有償または無償で支給をうけること︒普通の方法では商品輸
出超過︑または貿易外牧入の増加によつて︑必要外國物資を得るのであるが︑現在のイギリス︑ロシア︑重慶
政府のやうに︑武器貸與法といふ特別の方式によつて︑アメリカより軍需品の支給を受けることもある︒
(三)國際的購買力ある資金を外國から借入れ︑これによつて必要物資を買入れること︒これが外國資源利
戦孚資源と國民浩費生活(井藤)︑一四九 ■
・‑一五Q
用に關する最も普通の方法である︒外債による職費調達といへば主としてこの形態をとる︒
だノ(四)占領地で軍自らが軍票︑債券︑富籔などの焚行や課税を行ひ︑この方法で得た資金で必要物資︑榮力
等を現地で調達すること︒これを現地調緋主義といふ︒我が國が占領地域で現在實行してゐるのは︑主として
この形態である︒
噸般的にいつて︑職時に外國の資源を利用することは︑それだけ國民員憺を輕減するものであるから︑経濟
といふ観鐵のみからいふと便利な方法である︒ごとに外債は最も便利なものであつて︑我が國では日露職争の
とき軍資金牧入十七億圓のうち六億八千九百萬圓︑即ちその百分の四十は外債によつてまかなつた︒當時の一
年職費の國民所得に封する比傘は百分の六十飴といふ高率であつたにもかかはらす︑職争中の物債騰貴は戦前
にくらべて僅かに百分の十であつた︒しかも現在のやうに債格の公定や國民消費生活の規制などの統制政策は
行はれなかつたのである︒これには戦争期間が一年牛といふ短期であつたこと︑その他種々の事由があると思
ふが︑そのうち最も重大なものは︑外債により外國物資を利用したことである︒外債により職費をまかなふ政
策は経濟といふ窯のみからいへば最も便利であるが︑しかし國策途行上債椹國よりいろいろの摯肘をうけると
いふ訣監があることを忘れてはならない︒つぎに現地調辮主義は占領地の物資が豊富な場合には最も健質な方
策であり︑現在我が國でも大東亜建設の長期財源といふ立場からいへば︑結局はこの方法が重大な役割を演ず
べきであるが︑占有後︑日なほ淺き今日︑とれを大規模に早急に實行すゐことは不可能である︒當分の間はこ
れに封して過大の期待をかけてはならぬ︒
も
≡
つぎに國内の國民財産を職争の資源として利用する場合を考へる︒過去から蓄積された財産乃至資本を職争
の資源として使用し得ることnそれからとの多い國はそれだけ職争維濟力が大であるといふことは読明を要し
ないが︑しかし﹁國富統計﹂などで國民財産又は國富として計上されてゐるものすべてが︑無條件的に直ちに
職争資源として動員し得るものと考へてはならぬ︒この鮎個人の場合と異なるのであつて︑私維濟の立場から
いへば︑現金にかへ得るものは何でも生活の財源となるのであるから︑その個人が所有する財産全部が何か.の
目的に動員し得るのであるが︑國家経濟の場合はさうではないのである︒例へば内閣統計局編纂﹁列國國勢要
覧﹂の﹁列國の國富﹂の一部を抜載すると︑次の通りとなつてゐる︒
列國の︑喉國富
調査年度
日本(内塊のみ)昭和五"年
アメリカ,同七牟
イギリス同五年
戦孚資源と國民溝費生活(井藤) 縞額(車位十億圓)
こ0
入ん○
一七七 入口U入賞︑(軍位圓)
一︑七一〇
七︑σ四五
三︑八七三
一五一
¢ 一五こ
イタリヤ同五年.i‑五一一︑二六三︑
ドイ・ツ同一一年入四一︑こ五入
フランス大正一四年一二山ハ三︑一一八
この場合にこれ等の國富高の全部が無條件的に職箏資源として動員し得るわけではない︒例へば内閣統計局
曹
調査にかかる昭和五年の我が國富総額は千百億園であるといつても︑その内諜はつぎの通りであつて︑その全
・額が職孚資源として利用し得ないのである︒属富の構成要素如何により利用し得る程度が異ふのである︒
昭和五年我が國富(軍位+慮圓)
土地四一︑︑
建物二二
所藏財貨'一入内謬〜
家具家財一二e
生産品五
鋳貨及び金銀.一︒
樹木六
鑛山六
其の他一四
計二6
右の我が國富千百億圓の構成要素のうち︑土地四百十億圓︑建物二百二十億圓︑樹木六十億圓等は︑その大
部分はそのままの形では職孚用に動員し得ないのである︒
職争資源として動員し得る國民財産乃至は蓄積資源にはどんなものがあるか︑またこれを利用する方法には
どういふものがあるか︒つぎにこれについて読明しよう︒これには次の五種があるゆ
(一)國際市場で購買力をもつもの︑ま光は︑かかるものに容易に轄換し得るものこれらのものは︑外國
よ瀕必要物資を輸入するための資源(貿易差額決濟用等)となる︒例へば次の如きものがこれである︒金銀︑
外國爲替︑外國投資︑有債誰券︑特許権︑美術品等︒︑
(二)兵器弾藥等の軍需品の貯藏過去の國防費の大部分はこの種の職争財産の蓄積にすでに輻換してゐる
ものと考ふべきである︒随つて職前の國防費金額の大小は職争資源を決定する重要要素となる︒
(三)一般民需財産にして⁝戦争用に韓用し得るもの李和用工場︑家具︑商品等にして︑そのまま叉はこれ
に改造を加︽て軍需用に鱒用し得るものがある︒
(四)新投資の申止平和用物資の生産擾張乃至は維持または新投資を申止し︑從來との方面に向つてゐた
生産力を軍需品生産方面に韓換せしめるのである︒
(五)天然資源の濫用長期経螢の立場からいつて過度と考へられる木材濫伐や鑛物探掘などがこれで
ヒある︒.
戦争資源と國民消費生活(井藤)一五三
一五四
かく考へてくると戦争の資源として動員し得る財産の範園はかなり廣大となるのである︒しかしながら國民財
産の元本を消費七て職争物をまかなふ政策は︑短期戦の場合は便利であるが︑長期建設戦の場合は不適當な方
策である︒何故かといへば︑(一)國民財産の元本消費は⁝戦費を將來の人々の員憺に韓嫁する︒その財産が奢修
も的のものである場合はさておき︑それが國民維濟上必要な財産の場合には︑戦争中に消費した部分は將來にお
いて再び生産しなければならぬからである︒例へば消費された貨物の貯藏品は復替されなければならぬ︒生産
設備︑交通機關︑佳宅その他の物資の損傷は︑再調達乃至修理されなければならぬ︒さうでなければ一國の維
濟を圓滑に運螢することはできないのである︒この意味で國民財産を職費に充當する政策は︑職費を將來の人
々の員憺に輻嫁するものと解すべきである︒(二)財産元本の消費は維濟上の職争能力を薄弱ならしめる︒例
へば職時に食糧として家蓄を出生数以上に屠殺することは︑一時は食糧問題に貢献するが︑將來に悪影響があ
る︒.生産設備や天然資源の過大の動員は將來の生産力に影響する︒'
短期職の場合︑または長期職でも危急存亡のときは︑かかる政策をとるのも巳むを得ぬのであるが︑大東亜
職争の如く長期にわたつて経濟上の職争能力を持績すべき泌要がある場合には︑この倣策を中心としてはなら
ぬのである︒國民財産の元本浩費な︑最後の手段として保留すべきである︒この前の第一次大職のときには國
民財産の元本消費高が意外に多かつた︒これについては後に蓮べる︒