モ ス クワの低層住宅建設
小 田 福 男
目 次
は じ め に
第1節 モ ス ク ワ 近 郊 で の コ テ ー ジ建 設 の 動 向 第2節 モ ス ク ワ近 郊 で の コ テ ー ジ建 設 の 現 状 第3節 レ ン ガ コ テ ー ジ と 木 造 コ テ ー ジ
第4節 モ ス ク ワ州 に お け る 住 宅 建 設 統 計(2001年) 第5節 モ ス ク ワ 近 郊 で の コ テ ー ジ建 設 の 問 題 点 お わ りに
は じ め に
本 稿 の 目的 は,モ ス ク ワ(モ ス ク ワ市 とそ の 周 辺 に あ る モ ス ク ワ州)に お け る低 層 住 宅 建 設 の 経 緯 と現 状 を検 討 す る こ とで あ る。1)
低 層 住 宅 はモ ス ク ワ の都 心 で は ほ とん ど存 在 せ ず,主 と して 郊 外 に建 設 され て い る 。 郊 外 の低 層 住 宅 と し て は,い わ ゆ る ダー チ ャ が 有 名 で あ る 。 こ れ は 本 来,果 樹 園 ・菜 園 の 一 角 に作 ら れ た 小 規 模 な セ カ ン ドハ ウ ス で,通 常 は夏 季 を 中 心 に季 節 的,一 時 的 に利 用 さ れ て い る。 ウ ォ ロ ン ッ ォ フ に よ る と,ダ ー チ ャ の 敷 地 は,ほ とん どの 場 合 ダー チ ャ協 同 組 合 の所 有 で あ る 。 ダ ー チ ャ を売 る た 1)2003年9月30日 原 稿 提 出 。 本 研 究 に先 行 す る,こ の テ ー マ に 関 連 し た 筆 者 の 研 究 に は 次 の も の が あ る 。 「モ ス ク ワ低 層 住 宅 建 築 と欧 米 住 宅 技 術 」 『サ ハ リ ン石 油 ・ ガ ス 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト と北 海 道 経 済 の 活 性 化(6)』 平 成15年3月,「 サ ハ リ ン とモ ス ク ワ の 戸 建 住 宅 建 築 」 『サ ハ リ ン石 油 ・ガ ス 開発 プ ロ ジ ェ ク トと 北 海 道 経 済 の 活 性 化(4)』平 成13年3月 。
〔123〕
ヱ24 商 学 討 究 第54巻 第2・3号
め に は 協 同 組 合 全 員 の 同 意 が 必 要 で あ る 。 「協 同 組 合 は,電 線 の 引 き込 み,道 路 や 水 道 の 敷 設,各 人 の 敷 地 の 囲 い の 建 設 等 の共 同 作 業 に 必 要 な費 用 を賄 うた め に,複 数 の 自然 人 に よ っ て 設 立 さ れ て い る。」 他 方,「 個 々 の 敷 地 内 で の建 物 の 建 設 は,個 々 の 自然 人(協 同 組 合 の メ ンバ ー)が 資 金 を 出 して行 う。」2)
他 方,通 年 居 住 可 能 な郊 外 の 低 層 住 宅 と して は,伝 統 的 な 農 村 集 落 の な か の 田 舎 風 の低 層 住 宅 お よ び近 代 的 な都 会 的 コ テ ー ジが あ る。 前 者 に は通 常,果 樹 園 ・菜 園 が そ の 屋 敷 地 に並 存 して い る 。3)本論 文 で は,後 者 の コ テ ー ジ建 設 を 中 心 的 な分 析 対 象 とす る。
本 稿 で モ ス ク ワ の コテ ー ジ建 設 を分 析 す る背 景 に は次 の こ とが あ る 。第 一 に, 先 進 諸 国 に お い て低 層 住 宅 建 設 が 国 の経 済 発 展 を推 進 す る基 幹 的 分 野 の 一 つ に な っ て お り,ロ シ ア の 今 後 の経 済 発 展 を 考 え る上 で この 分 野 の 動 向 が注 目 さ れ る こ と。 第 二 に,世 界 の 寒 冷 地 域 にお け る,防 寒 を中 心 と した 快 適 な居 住 生 活 の た め の 住 宅技 術 の分 野 にお い て 国 際 的 な 技 術 交 流 ・移 転 が見 られ,そ れ が ロ シ ア や そ の 首都 モ ス ク ワ に ま で 波 及 す る と,ロ シ ア の 住 宅 建 築 企 業 や さ ら に広 くそ の 経 済 社 会 に大 きな イ ンパ ク トを与 え る こ とが 予 想 さ れ る こ と。 第 三 に, 日本 特 に北 海 道 の 住 宅 産 業 に とっ て,ロ シ アへ の 国 際 的 技 術 移 転 ・経 済 交 流 に 関与 す る こ とは,地 域 の 経 済 活 性 化 に 大 い に貢 献 す る と考 え られ る こ とで あ る 。
ロ シ ア に お け る コ テ ー ジ の 建 設 に は い くつ か の パ タ ー ン が あ る。 第 一 の パ タ ー ン は,孤 立 的 な コ テ ー ジ建 設 で あ る 。 林 問 や 野 原 に一 棟 だ け 独 立 した 形 で コ テ ー ジが 建 設 され る 。 この パ ター ン は,1990年 代 の 前 半 に大 規 模 な コテ ー…ジ を建 設 す る 際 に 散 見 さ れ た が,そ の後 は あ ま り見 られ な くな っ た 。第 二 の パ タ ー ンは,新 し く整 備 さ れ た コ テ ー ジ建 設 用 地 に コ テ ー ジ を造 る場 合 で あ る 。 そ の 結 果,コ テ ー ジ団 地 が 形 成 さ れ る 。 第 三 の パ タ ー ンは既 存 の低 層 住 宅 集 落 の 中 で コテ ー ジ を新 築 す る場 合 で あ る 。 前 述 の ダー チ ャ集 落 や 郊 外 の伝 統 的 な 農 村
2)ウ ォ ロ ン ツ ォ フ,「 ロ シ ア に お け る住 宅 市 場 の 形 成 と住 宅 公 共 事 業 改 革 」 『ロ シ ァ 東 欧 貿 易 調 査 月 報 』1998年9月 号,32頁 。
3)マ ル ガ リ ー タ冨 田(井 桁 貞 義 訳)『 ロ シ ア 人 ・生 ま れ て か ら死 ぬ ま で 』東 洋 書 店, 2003年,47頁 。
モス ク ワの低 層住 宅建 設 ヱ25 集 落 の 中 で 土 地 を 取 得 し,コ テ ー ジ を 新 築 す る場 合 で あ る 。
住 宅 建 設 に お け る 低 層 住 宅 の 比 率 を 国 際 比 較 す る と,ロ シア で は著 し くそ の 比 率 が 低 い 。 まず 住 宅 ス トッ クで 見 て み る と,ア メ リ カ で は低 層 住 宅 が66.2%
(1997年),イ ギ リ ス で は80.5%(1991年),フ ラ ン ス で は56.2%(1996年), ドイ ツ で は46.0%(1993年),日 本 で は61.7%(1998年)を 占 め て い る。 また, 住 宅 建 設 の フ ロ ー で 見 てみ て も 同様 な 傾 向 が 見 られ る。 ア メ リ カ で は1999年 に お い て一 戸 建 住 宅 が 全 住 宅 建 設 の 中 で80.1%を 占 め て い る。 イ ギ リス で は一 戸 建 住 宅 が85.9%(1997年),フ ラ ンス で は一 戸 建 等 が59.0%(1999年),ド イ ツ で は1家 族 お よ び2家 族 用 住 宅 が58.4%(1999年),日 本 で は 一 戸 建 お よ び長 屋 建 住 宅 が52.3%(1999年)を 占 め て い る。4)ロシ ア で は,ソ 連 時 代 の 集 合 住 宅 中 心 の住 宅 建 設 方針 の た め に低 層 住 宅 の 比 率 が か な り低 い 。 ま た,住 宅 建 設 の フ ロ ー で見 て み て も,2000年 に ロ シ ア 国 家 統 計 委 員 会 に よ って 行 わ れ た 調 査 に よ る と,3階 建 以 下 の 低 層 住 宅 の住 宅 総 建 設 面積 に 占 め る 比 率 は,44。2%で あ っ た 。5)この こ と は,今 後 ロ シ ア に お い て,低 層 住 宅 の 建 設 が 急 速 に増 加 す る 可 能 性 が あ る こ と を示 唆 して い る 。
ロ シ ア の あ る不 動 産 会 社 の 評 価 に よれ ば,モ ス ク ワ の住 宅(低 層 住 宅 お よび 多 層 住 宅)は そ の 品 質 に よっ て 次 の よ う に 区分 され る。6)
① 低 品 質 の住 宅 一一39%:古 い住 宅 で,「 フ ル シチ ョフ住 宅 」の 大 部 分,1945 年 以 前 に建 築 され た 住 宅 の 一 部 。
② 標 準 的 な住 宅 一46%:標 準 的 な 多 層 パ ネ ル 住 宅(主 と し て,P44型,P 55型),お よ び 「ス ター リ ン住 宅 」。 大 体1960年 代 以 降 に建 築 さ れ た 多 くの 住 宅 が これ に 当 て は ま る。
4)こ の 国 際 比 較 に つ い て は 次 文 献 を 参 照 の こ と。 住 宅 金 融 公 庫 編 集 『海 外 住 宅 DATA‑NOW』No14/2000,住 宅 金 融 普 及 協 会,4頁,21頁 。 海 外 住 宅 金 融 研 究 会 編 著 『欧 米 の 住 宅 政 策 と 住 宅 金 融 』 財 団 法 人 住 宅 金 融 普 及 協 会,平 成12年, 34〜35頁,152頁 等 。
5)ifHBECTifLtififB1)OCCifif(2001).c.125.
6)HoBvaKoBB.J]1.P6LIHOKifOUEHKAHE/IBZZKIIMOCTifBPOO㎜
∂K3AMEH,2000,c.30.
126 商 学 討 究 第54巻 第2・3号
③ 高 品 質 の 住 宅 一13%:多 層 レ ン ガ住 宅(「 ス ター リ ン住 宅 」 の 一 部 も こ れ に 含 まれ る),一 体 成 形 コ ンク リー ト住 宅,南 西 地 域 に あ る パ ネ ル 住 宅 の一 部,古 い ダー チ ャ 集 落 に あ る コテ ー ジ。
④ エ リー ト住 宅 一2%:主 に,都 心 や 幹 線 道 路 沿 い に あ る改 修 済 み 住 棟 や 住 戸,新 築 の 多 住 戸 住 棟(マ ンシ ョ ン),コ テ ー ジ,タ ウ ンハ ウス 。 本 稿 で主 と して検 討 す る低 層 住 宅 と して は,こ の 分 類 で は③ 高 品 質住 宅 の う ち の 古 い ダ ー チ ャ集 落 に あ る コテ ー ジ,④ エ リ ー ト住 宅 の うち の コ テ ー ジ と タ ウ ンハ ウ ス が 該 当 す る 。 タ ウ ンハ ウス は 連棟 式 低 層 住 宅 で あ り,各 住 戸 は 自分 の 土 地 区画,玄 関,ガ レー ジ を有 して い るが,壁 は 隣i家と共 有 す る部 分 を持 つ 。 モ ス ク ワ で は1990年 代 中 期 に現 れ た 。 上 の比 率 か ら明 らか な よ う に,低 層 住 宅 は モ ス ク ワ地 域 にお い て ま だ小 さな 比 重 しか 占 め て い な い 。
モ ス ク ワ地 域 の 低 層 住 宅 市 場 の特 徴 を検 討 す る前 に,住 宅 市 場 全 般 の 動 向 を 見 て お くこ とに す る。1999年 夏 ま で の1990年 代 に お け るモ ス ク ワ市 の住 宅 市 場 の 動 向 を,ノ ビ コ フ は次 の よ う に 時 期 区 分 して い る 。7)区分 の 基 準 は 市 場 規 模 と価 格 の 動 向 で あ る。 な お モ ス ク ワ市 の 場 合,そ の大 部 分 が 集 合 住 宅 で あ り, 低 層 住 宅(コ テ ー ジ)は ほ と ん ど建 築 さ れ て い な い。8)
(1)第1期(1990年 〜1991年6月);住 宅 市 場 の 生 成 段 階 で,市 場 規 模 は 小 さ い。 価 格 は相 対 的 に安 定 して い た 。
(2)第2期(1991年7月 〜1993年 第1四 半 期);住 宅 市 場 の拡 大 が 生 じ, 価 格 も急 激 な 上 昇 が 生 じた 。1992年 に は,早 く も豊 か な 「新 ロ シ ア 人 」 層 が 形 成 され,都 心 の 高 価 な マ ンシ ョ ン(住 戸)に 対 す る 需 要 が 増 大 し た 。
(3)第3期(1993年 第2四 半 期 〜1995年 末);市 場 規 模 が 相 対 的 に安 定 化 して き た 時期 で,価 格 は上 昇 傾 向 が 継 続 し た。 そ の 結 果,モ ス ク ワ市 は マ ン シ ョ ン(住 戸)価 格 に お い て,世 界 の なか で 最 も高 い都 市 の ひ とつ
7)HoBMKoBB.耳.P51HOK〃 【OUEIヲIKTAHEaBlanMOCTifBPOO㎜
∂K3AMEH,2000,c.38‑39.
8)TaMx(e.c.63.
モ ス クワの低 層住 宅建 設 ヱ27 に な っ た 。 ま た こ の 時 期 に は,住 戸 の特 性 に よ る価 格 格 差 の拡 大 傾 向 が 見 られ た 。 特 に,高 級 マ ン シ ョ ン市 場 の 発 展 が 見 られ た。
(4)第4期(1996年 初 〜1998年 夏);引 き続 き市 場 規 模 が 相 対 的 に安 定化 して い た 時 期 で,価 格 水 準 も相 対 的 安 定 期 に あ っ た 。 こ の時 期 に,住 宅 市 場 の セ グ メ ン トの 分 化 が 明確 に な っ た 。 す な わ ち,一 般 購 入 者 市 場, 中 間 購 入 者 市 場,富 裕 層 市 場 の3区 分 が 明 確 に な っ て き た。
(5)第5期(1998年 秋 〜1999年 夏);1998年 夏 の 金 融 危 機i後,市 場 規 模 が 縮 小 し,ド ル 表 示 で の 価 格 水 準 も大 き く低 下 した。1999年 秋 の 時 点 で の 1㎡ 当 た りの 価 格 帯 は,一 般 購 入 者 市 場 が450‑700ド ル,中 間購 入 者 市 場 が700‑1200ド ル,富 裕 層 市 場 は1200‑3000ド ル 以 上 で あ る。
第1節 モ ス ク ワ近 郊 で の コテ ー ジ建 設 の 動 向
(1)試 行 錯 誤 の 過 程
ロ シ ア が 市 場 経 済 へ の 本 格 的 移 行 を開 始 した1990年 代 前 半 に,早 くもモ ス ク ワ近 郊 で は 裕 福 に な った 人 々 の 一 部 が,コ テ ー ジ と呼 ば れ て い る現 代 的 な一 戸 建 住 宅 を建 築 し始 め た 。 そ して,第 一 次 コ テ ー ジ建 設 ブ ー ム が1993年 〜1996年 に 生 じた 。そ の特 徴 は,「 城 塞 」 の よ うな 大 邸 宅 建 築 が 主 流 で あ っ た。 そ れ は, 広 大 な建 築 面 積 を 有 し,100万 ドル 以 上 の 建 築 費 用 を要 す る も の もあ っ た 。 他 方 で は,「 趣 味 の 悪 い」 住 宅 で あ る と い う評 価 を受 け る こ と もあ っ た 。 ま た,
この 時 期 に は 個 別 立 地 に よ る 建 設 が 比 較 的 多 か っ た 。 こ の ブ ー ム の 主 な前 提 に な っ た の は,建 設 作 業 お よ び建 設 資 材 の 価 格 安 定 化 と住 民 所 得 水 準 の急 激 な 階 層 分 化 そ して 富 裕 層 の 出現 で あ っ た。
ノ ビ コ フ に よ れ ば,体 制 転 換 と と も にモ ス ク ワの 裕 福 な 人 々 は,ア メ リ カ の よ う に,恒 久 的 居 住 の た め に都 市 内 の 集 合 住 宅 か ら郊 外 コ テ ー ジ に住 み 替 え る で あ ろ う と当 時 は 一 般 的 に 考 え られ て い た 。9)しか し,そ の 移 住 過 程 は ス ム ー
9)HoBHKoBB.且.P61HOK∬0∠ 擢 ㎜1丑1/llヲWWMOC乃ijBPOO㎜
∂K3AMEH,2000,c.64.
128 商 学 討 究 第54巻 第2・3号
ス に は 進 行 しな か っ た 。 現 に,今 日で も建 設 途 中 で 挫 折 した コ テ ー ジが 数 多 く 放 置 さ れ て い る。2001年 末 現 在 の モ ス ク ワ 州 内 の 未 完 成 住 宅 は,2,395,731rd あ る 。10)また,ロ シ ア不 動 産 仲 介 業 者 協 会 の デ ー タ に よれ ば,1990年 か ら今 日 ま で に モ ス ク ワ近 郊 で7500戸 以 上 の コ テ ー ジ が 建 設 ・完 成 さ れ た が,1万 戸 程 の コテ ー ジが 未 完 成 の ま まで 残 っ て い る。 つ ま り完 成 コテ ー ジ よ りも多 い 数 が 未 完 成 の ま ま で あ る とい う事 に な る 。11)
そ の 背 景 に あ るの は,郊 外 の コ テ ー ジ立 地 地 点 の 劣 悪 な 生 活 環 境 が あ っ た 。 特 に,道 路 環 境 の 悪 さ と不 断 の交 通 渋 滞 に よる 通 勤 ・通 学 の 困 難性,そ の他 の 現 代 的 な 生 活 イ ン フ ラ が 整 備 さ れ て い な い点 が あ っ た。 また,次 の よ う な ケ ー ス もあ っ た 。 コ テ ー ジ建 設 用 土 地 区 画 を取 得 し,実 際 に コテ ー ジ建 設 を始 め た 後 で ラ イ フ ラ イ ン(電 気,ガ ス,上 下 水 道,電 話 等)の 敷 設 が あ ま りに高 価 で あ る か全 く不 可 能 で あ る こ とが 後 で 明 らか に な るケ ー ス で あ る。 そ こで,人 々 が 学 習 した こ とは ラ イ フ ラ イ ン の敷 設 が 終 わ っ て い る土 地 に コ テ ー ジ を新 た に 建 て る か,生 活 実 績 の あ る 既 存 の コテ ー ジ を購 入 す る か が 賢 い選 択 で あ る とい う こ とで あ っ た。
(2)ダ ー チ ャ か ら コテ ー ジ へ
前 述 の よ う に,試 行 錯 誤 の 過 程 を 経 な が ら も全 体 と して は郊 外 に お い て コ テ ー ジ の建 設 が 増 加 し て い る 。 他 方,従 来 の モ ス ク ワ の郊 外 生 活 とい え ば,そ れ は主 に ダー チ ャで の 生 活 で あ っ た 。 し たが っ て 巨 視 的 に み れ ば,モ ス ク ワ に お い て ダ ー チ ャ 的郊 外 生 活 か らコ テ ー ジ的 生 活 へ の 進 化 が徐 々 に生 じて い る と み る こ と もで き る 。 ダ ー チ ャ す な わ ち 割 り当 て られ た600㎡ の 土 地 と そ こ に建 て られ た 質 素 な小 屋 は こ れ か ら も存 続 す るが,そ れ と同 時 に コ テ ー ジの 建 設 が 増 加 し始 め た の で あ る。 「郊 外 の住 宅 が,ピ ク ニ ック と菜 園 仕 事 の 場 所 か ら大 都 市 の 不 自 由 な い 住 民 の 常 住 の 地 に変 わ り始 め た の で あ る。」12)「仕 事 は 都 市
10)『 モ ス ク ワ 州 の 建 設(2001年)』 統 計 年 報,モ ス ク ワ州 国 家 統 計 委 員 会,2002年, 51頁 。
11)「 春,改 め て 郊 外 不 動 産 の 価 格 」 《KBanpaTHbltiMeTp》24.04.2002.
モス クワの低層 住宅 建設 129 で こ な し,郊 外 に家 を 建 て て,そ こ に住 む」 とい う生 活 パ ター ンが 生 じ始 め た 。 そ して,モ ス ク ワ で は次 の よ う に考 え られ て い る 。 す な わ ち,こ の よ う な生 活 パ タ ー ンが ヨ ー ロ ッパ の 市 民 に お け る普 通 の 生 活 パ ター ンで あ り,そ れ が ロ シ ア,モ ス ク ワ ま で 及 ん で き て い る とみ な して い る 。 「欧 州 の 中 流 階 層 は か な り 前 か ら こ の よ う に 生 きて き た(あ る い は少 な くて も生 き よ う と し て きた)。 こ の 息 吹 ・傾 向 が 我 々 の と こ ろ まで 達 し た の で あ る。」13)「ほ と ん ど の 西 側 諸 国 の 自尊 心 あ る 中 間 階 層 は大 都 市 に は住 ん で い な い 。 大 都 市 は ビ ジ ネ ス,交 際, 娯 楽 に とっ て の み ふ さわ しい もの とみ な され て い る 。」14)
ソ連 邦 の 時 代 に は,土 地 に対 す る多 くの都 市 住 民 の 願 望 は,ダ ー チ ャ用 の 土 地 の 分 配 で あ っ た 。 そ れ に,当 時 の物 不 足 の 時 代 に は,600㎡ の 土 地 か ら得 ら れ る農 産 物 は,家 計 の 悪 くな い 助 け に な っ た 。 「しか し年 と と もに,そ れ らの 土 地 は,ま す ます,有 利 で 確 か な投 資対 象 と して み な され る よ う に な っ た 。」15) つ ま り,最 近 まで 最 も普 及 した 郊 外 不 動 産 と い え ば,そ れ は ダー チ ャ で あ っ た。
しか し,コ テ ー ジ が そ れ に とっ て 変 わ ろ う とす る動 きが 生 じて い る の で あ る。
(3)孤 立 的 コテ ー ジ 建 設 か ら コ テ ー ジ 団地 へ
前 述 の よ う に,初 期 の 孤 立 的 コ テ ー ジ建 築 か ら最 近 で は 団 地 内 で の コテ ー ジ 建 築 に重 点 が 移 っ て きて い る 。 今 日で も孤 立 的 コ テ ー ジの 潜 在 的 購 入 層 に な っ て い る の は,ラ イ フ ラ イ ン敷 設 済 み の郊 外 の 土 地 や 住 宅 を取 得 す る た め に必 要 な 資 金 が 調 達 出 来 な い,あ ま り裕 福 で は な い 市 民 か あ るい は,自 己 の好 み を全 面 的 に生 か し て コ テ ー ジ を建 築 した い裕 福 な人 々 で あ る。16)
これ ま で モ ス ク ワ 周 辺 に お い て 建 設 され た コ テ ー ジ団 地 は,200〜300団 地 で あ る と言 わ れ て い る 。17)コテ ー ジ 団 地 に集 ま っ て 建 築 ・居 住 す る こ と に よ っ
12) 13) 14) 15) 16) 17)
「だ れ が 御 殿 に 住 ん で い る か?」 《npoΦH∬b》04 .11。2002.
「だ れ が 御 殿 に 住 ん で い る か?」 《npoUbvanL》04111 .2002.
「忘 れ ら れ た 中 流 階 層 」HπbHCTynvaH《 ∂KcnepT》22 .04.2003.
「な ぜ,今 日,郊 外 の 数100㎡ な の か?」 《KnO》03.04.2002.
「な ぜ,今 日,郊 外 の 数100㎡ な の か?」 《KJI[O》03.04.2002.
「郊 外 の す ば や い お 金 」 《BenoMocTz》11 .06.2002,《KllO》10.07.2002.
ヱ30 商 学 討 究 第54巻 第2・3号
て,住 宅 の 建 築 費 用 ・居 住 費 用 の 大 幅 引 き下 げが 可 能 に な っ た 。 コ テ ー ジ 団地 の 典 型 的 姿 は次 の よ うで あ る 。 団地 地域 全 体 の警 備 保 障,出 入 口 の チ ェ ック, ラ イ フ ラ イ ン の敷 設,社 会 イ ン フ ラ の 整 備,コ テ ー ジ外 観 等 の 統 一 的 基 準 の設 定 で あ る。 現 在 で は,建 築 され た コ テ ー ジの 約7割 は 新 しい コ テ ー ジ 団 地 に お い て 建 築 され て い る 。18)
特 に,コ テ ー ジ建 設 後 の 各種 サ ー ビス 料 金(ゴ ミ処 理,電 話 使 用,進 入 路 の 維 持,そ の他 の 修 理 作 業 の 費用)の こ とを 考 え る と,孤 立 型 コテ ー ジ よ りコ テ ー ジ団 地 の ほ うが 割 安 に な り,有 利 で あ る 。ま た,団 地 の規 模 が 大 き くな る ほ ど, そ れ らの 費用 は よ り割 安 に な る傾 向 が あ る 。
そ の 他,孤 立 型 コ テ ー ジ に対 す る コ テ ー ジ 団地 の優 位 性 は 以 下 の とお りで あ る 。19)
① 安 全,快 適 を 感 じる こ とが で きる 生 活 環 境 を 得 られ や す い 。 同 じ階 層 の 人 々が 周 囲 に住 ん で い る とい う安 心 感 もあ る。
② 統 一 的 建 設 プ ラ ン,景 観 構 想 の 下 で 建 設 さ れ て い る。 ま と ま りの あ る景 観 が あ る 。
③ 余 暇 や 生 活 の イ ン フ ラ が 整 備 さ れ て い る。 た だ し,そ の 整 備 の程 度 は 団 地 に よっ て異 な る 。
(4)季 節 的 居 住 か ら恒 常 的 居 住 ヘ
コテ ー ジ が 建 設 さ れ 始 め た1990年 代 中 頃 にお い て は コ テ ー ジ も ダ ー チ ャ と同 じ く季 節 的,一 時 的利 用(夏 季 あ る い は 週 末 あ る い は 休 暇 時 に 利 用 す る)の 形 が 多 か っ た が,最 近 で は 年 間 を 通 した 居 住 に 変 わ りつ つ あ る。 「ロ シ ア不 動 産 仲 介 業 者 協 会 の デ ー タ に よ れ ば,モ ス ク ワ近 郊 の不 動 産 購 入 者 の60%以 上 は, 今 日,ま さ に 常 住 の た め の 住 宅 を取 得 して い る。」20)この こ とは,住 宅 そ の も
の や 住 宅 団 地 の 設 計 や 建 設 方 法,投 資物 件 と して の魅 力 に ま で 影 響 して い る。
18)「 郊 外 の す ば や い お 金 」 《BeAoMocTu》11.06.2002.
19)「 郊 外 で の 快 適 さ は お 金 が か か る 」 《KJIO》02.04.2002.
20)「 だ れ が 御 殿 に 住 ん で い る か?」 《npo(bMnb》04.11.2002.
モス クワの低 層住 宅建 設 131
第2節 モ ス ク ワ近郊 で の コ テ ー ジ建 設 の 現 状
モ ス ク ワ の低 層 住 宅 市 場 は春 に な る と活 発 に な る。 通 常,冬 に郊 外 住 宅 を購 入 す る とい う基 本 方 針 を 決 め て お き,春 す な わ ち3月,4月,5月 に購 入 希 望 者 は様 々 な物 件 を検 討 し購 入 を決 め る。 そ して 夏 か らそ の 郊 外 コ テ ー ジ で,夏 期 休 暇 をエ ンジ ョ イす る の で あ る。
不 動 産 情 報 誌 『モ ス ク ワ とモ ス ク ワ州 の 不 動 産 カ タ ロ グ』32号(2002年12月9 日〜15日)を み る と,モ ス ク ワ州 の低 層住 宅(nOMA,nAqH,KOTTE耳)KH)
の 販 売 物 件 が1000件 以 上 掲 載 さ れ て い る。21)
(1)2002年 〜2003年 の コ テ ー ジ建 設 状 況22)
雑 誌 『プ ロ フ ィ リ』 の評 価 に よ れ ば,2003年 春 に は,モ ス ク ワ近 郊 の郊 外 不 動 産 市 場 に お い て,一 気 に約100の 新 コ テ ー ジ 団地 が 登 場 して い る。 そ れ らの 大 部 分 は,約30万 ドル を 支 払 う用 意 の あ る購 入 者 を 当 て に して い る 。 比 較 的 安 価 な,10万 ドル まで の 住 宅 の 供 給 不 足 状 態 が続 い て い る 。
こ の よ う に新 コテ ー ジ団 地 の建 設 が モ ス ク ワ近 郊 で ラ ッ シ ュ状 態 で 進 行 して い る が,昨 年(2002年)に は,モ ス ク ワ近 郊 で50以 上 の コテ ー ジ 団 地 が 出現 し た 。 昨 年 か らみ る と今 年 は 倍 化 して い る。 た い て い の場 合,建 設 事 業 者 は 団 地 全 体 を 統 一 的 設 計(景 観)の 元 に建 設 して い る。 こ れ は,住 宅 供 給 数 の増 加 に 対 して は 有 利 に働 くが,同 一 タ イ プ の 物 件 が大 量 に 出現 し,単 調 感 を感 じ させ
る こ と もあ る。
大 手 不 動 産 会 社 の ミエ ル 不 動 産 に よれ ば,今 年(2003年),出 現 して い る約100 の 団地 に は,各 々30‑50戸 の 住 宅 が 建 築 さ れ て い る。 従 っ て,低 層 郊 外 住 宅 市 場 に は 一 気 に お お よそ4000戸 の コ テ ー ジが 供 給 され る こ と に な る 。 従 っ て,魅 力 の あ る 物 件 か ら優 先 的 に 売 れ て い く。 そ の よ う な魅 力 の あ る物 件 は,相 対 的
21)《KaTailorHenBva)KvaMocTzMocKBaHMocKoBcKo最06nacTva》NΩ32 09.12‑15.12.2002.
22)「 後 ろ か ら 一 モ ス ク ワ 」 《11poφHπL》17.03.2003.
132 商 学 討 究 第54巻 第2・3号
に そ の 価 格 が 上 昇 して い る。 以 下 で,コ テ ー ジ市 場 の 状 況 を3つ の 価 格 帯 に 区 分 して,そ の概 要 を み て み よ う。23)
1)低 価 格 コ テ ー ジ;最 も不 足 して い る の は10万 ドル 以 下 の低 価 格 の コテ ー ジ 物 件 で あ る 。 仲 介 業 者 も こ の よ う な低 価 格 物 件 を あ ま り取 り扱 っ て い な い 。 モ ス ク ワ の近 くで,団 地 の 中 に 立 地 して い る コ テ ー ジは,こ の価 格 で は 売 られ て い な い 。 そ の よ う な 団 地 で は,建 築 面 積100nf以 下 の小 さ い コ テ ー ジ は 建 築 さ れ て い な い。 少 な くて も160㎡ 以 上 で あ る 。 通 常,仕 上 げ と ラ イ フ ラ イ ン敷 設 な しの コ テ ー ジ単 体 で,50キ ロ 圏 内 で は13‑20万 ドル 掛 か る し,す べ て 完 備
した 「ター ンキ ー 」 の形 で は25‑27万 ドル必 要 で あ る 。
「レ ンガ の箱 」 と呼 ば れ る こ と もあ る未完 成 コテ ー ジ物 件 は,完 成 物 件 よ りも 3分 の2か ら半 分 の 資 金 で購 入 で き る。 しか しこ れ を完 成 させ る まで に は300ド ル/㎡ 以 上 の 費用 が かか る し,さ ら に ライ フ ラ イ ン敷 設 に約1.5万 ドル必 要 で あ る。
モ ス ク ワ都 心 か ら遠 く離 れ た コ テ ー ジで あ れ ば,10万 ドル以 下 で 購 入 で き る。
建 築 面 積200㎡ で 仕 上 げ と ラ イ フ ラ イ ン付 の優 良 物 件 を10万 ドル 以 下 で 手 に 入 れ る た め に は,60‑70キ ロ 以 上 遠 方 に な る。 この 場 合 は,整 備 さ れ た コ テ ー ジ 団 地 で は な く,農 村 集 落 の コテ ー ジ通 りな い し コテ ー ジ ブ ロ ック に 立 地 す る こ
と に な る 。
2)平 均 的 価 格 帯 の コ テ ー ジ物 件;10万 一25万 ドル の価 格 帯 の コテ ー ジ で は 状 況 は も っ と よ くな る。 この ク ラ ス で は,独 立 した 団 地 地 域 に立 地 した,100
〜250㎡ の 広 さ の独 立 住 宅 な い し連棟 式 住 宅(タ ウ ンハ ウ ス)が 取 得 可 能 で あ る。
この よ う な 団 地 の一 般 的 条 件 は 次 の もの で あ る。 良 好 な交 通 手 段,地 域 の 警 備 保 障,集 中 的 熱 ・水 供 給 シ ス テ ム,電 気,モ ス ク ワの 電 話 ネ ッ ト,発 達 した イ ン フ ラ(商 店,ス ポ ー ツ 施 設,児 童 施 設,医 療 施 設,娯 楽 施 設)。 こ の よ う な コテ ー ジ の 単 位 面 積 当 た りの価 格 は,700‑800ド ル/㎡ で あ る 。維 持 費 は毎 月100
‑150ド ル で あ る。この よ う な 平 均 的 価 格 帯 の コ テ ー ジ 団地 が,モ ス ク ワ の西 側, 北 西 側,北 東 側 で 積 極 的 に建 設 され て い る。 今 年 に 出 現 した 平 均 的 価 格 帯 の 団
23)「 後 ろ か ら 一 モ ス ク ワ 」 《npoΦHπb》17.03.2003,
モス ク ワの低 層住 宅建設 133 地 と し て は,ロ ー ドニ キ(PonHvaKva)団 地,ス カ ー ス カ(CKa3Ka)団 地, 北 ス ロ ボ ダ(CeBepHaHCπ060八a)団 地 等 が あ る 。
3)高 価 格 帯 の 物 件24);こ の 価 格 帯 に は25‑50万 ド ル の 物 件(1000‑2300 ドル/㎡)が 該 当 す る 。 整 備 さ れ た 団 地 内 の 建 築 面 積250‑450r㎡ の 住 宅 が 対 象 で あ る 。通 常1500㎡ 以 上 の 土 地 が つ い て い る 。月 の 維 持 費 は250ド ル 以 上 で あ る 。 こ の 価 格 帯 の 物 件 の 大 き な 特 徴 は よ り 充 実 し た 生 活 イ ン フ ラ で あ る 。 さ ら に, 住 民 が 同 一 の 社 会 的,経 済 的 階 層 に 属 し て い る こ と で あ る 。 新 し い 隣 人 候 補 者
は,支 払 能 力 の み な ら ず,そ の 評 判 も調 査 さ れ る 。 そ し て 少 な く と も 犯 罪 組 織 に 属 し て い な い と い う こ と が 住 民 に な る 条 件 と な っ て い る 。 こ の よ う な 団 地 が 現 在,積 極 的 に 建 設 さ れ て い る の は,新 リ ガ(HOBop">KCKoe)街 道,カ ル ー ガ(Ka」y)KcKoe)街 道,ド ゥ ミ ト ロ フ(lllMmpoBcKoe)街 道 沿 い で あ る 。 通 常,仕 上 げ な し で,ま た 内 部 の 間 仕 切 り な し で 引 き 渡 さ れ る 。 そ れ ら は 購 入 者 が 自 分 の 好 み で 実 施 す る 。 こ の よ う な 団 地 と し て は,ベ ー シ ュ ニ(BelliHva),
ド ゥ ブ ラ ー バ(几y6paBa>の 団 地 が あ る 。
(2)コ テ ー ジ 団地 の 評 価 要 因
上 述 に お い て コテ ー ジ そ の もの の価 格 帯 に つ い て紹 介 した が,こ こ で は 少 し 視 点 を 変 えて コテ ー ジ 団 地 の 社 会 的 評 価 に つ い て み て い こ う。 モ ス ク ワ近 郊 の
コ テ ー ジ 団 地 内 で コ テ ー ジ を取 得 し よ う とす る 人 々 は どの よ う な要 因 を考 慮 し て コ テ ー ジ団 地 を 評価 して い る の で あ ろ う か 。 日 々,コ テ ー ジ 団地 市 場 で活 動 し て い る 不 動 産 仲 介 会 社PennyLaneRealtyの 郊 外 不 動 産 部 が 作 成 した もの を紹 介 し よ う。25)コテ ー ジ団 地 を3段 階 に 区 分 し,そ の 個 別 の 評 価 要 因 と し て,
① 立 地 条 件(中 心 部 か らの 距 離 と方 角),② 近 隣iの自然 環 境,③ 団地 内 の コ テ ー ジの 数 と敷 地 お よび コ テ ー ジの 広 さ,④ ラ イ フ ラ イ ン の設 置 状 況,⑤ 生 活 イ ン
24)ル ブ リ ョボ 地 区 の 超 高 級 物 件 は こ の 価 格 帯 の 物 件 の 中 に は 入 っ て い な い 。 25)「 郊 外 不 動 産 の 分 類 シ ス テ ム 。 コ テ ー ジ 団 地 と住 宅 」http://www.cottage.ru
31.10.2002.
Z34商 学 討 究 第54巻 第2・3号
フ ラへ の ア ク セ ス 状 況,26)⑥ 建 築 構 造(壁 材),⑦ 建 築 業 者,⑧ 設 計 担 当 者,
⑨ 住 宅 所 有 者=住 民,⑩ 団地 内 の 整 備 度,⑪ 維 持 管 理 サ ー ビ ス,⑫ 警 備 体 制,
⑬ 団 地 の街 並 み 景 観 を示 して い る。 そ れ ら を総 合 的 に 評 価 して,3つ の ラ ン ク に コ テ ー ジ団 地 を ラ ン ク付 け て い る。
A.最 高 級 団 地
① 立 地:ル ブ リ ョボ ・ウ ス ペ ンス キ ー 街 道 な い し新 リ ガ街 道 沿 い の,モ ス ク ワ 環 状 自動 車 道 か ら15km以 内 。 カ ル ー ガ 街 道 沿 い の モ ス ク ワ 環 状 自動 車 道 路 か ら10km圏,ソ コ リ コボ 街 道 沿 い の 全 域 。
② 近 隣 の 自然 環 境:第 一 級 カテ ゴ リー(松)の 森 林 地 帯 。 特 別 の 自 然 景 観 一親 水 域(貯 水 池 ,川,湖)。27)
③ 団 地 内 の コ テ ー ジ の 数 と コテ ー ジ と敷 地 の 広 さ:同 一 団 地 内 の コ テ ー ジ 数 は30戸 まで 。 コ テ ー ジの 広 さ は800r㎡以 上,敷 地 面 積 は5000㎡ 以 上 。
④ ラ イ フ ラ イ ン:集 中 方 式 。 最 高 級 レベ ル 。 モ ス ク ワの 電 話 番 号 。 イ ン タ ネ ッ ト接 続 。
⑤ 生 活 イ ン フ ラへ の ア ク セ ス:団 地 内 な い し団 地 か ら1km以 内 に 次 の よ うな 生 活 イ ン フ ラ が あ る こ と。 プー ル付 きの ス ポ ー ッセ ン ター(フ ィ ッ ト ネ ス セ ン タ ー),美 容 サ ロ ン,医 療 セ ン タ ー,レ ス トラ ン,ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト。 団 地 内 に必 須 の もの:ゲ ス ト用 駐 車 場,子 供 広 場 お よび ス ポ ー ツ 広 場 。
⑥ 建 築 構 造(外 壁 と内 壁 の 種 類):レ ンガ,鉄 骨 枠 組 み 一一 体 成 形 コ ン ク リー ト,最 高 水 準 の建 築 。
⑦ 建 設 業 者 の 評 判:高 い 社 会 的 評 判 を持 つ 。
⑧ 設 計 家:有 名 建 築 家 の 注 目す べ き設 計 案 。
26)生 活 イ ン フ ラ に つ い て は,団 地 自 ら整 備 す る 自 己 完 結 型 団 地 と モ ス ク ワ都 心 へ の ア ク セ ス を容 易 に す る と い う形 で 対 処 し て い る モ ス ク ワ 依 存 型 団 地 が あ る 。
(HOBvaKOBB.J]1.・P51HOKIIOL(EHKAHE/ZBZZIZZMOCTifBPOCCUva:
∂K3AMEH,2000,c.66.)
27)な お,地 価 を 低 下 させ る 要 因 と して は,送 電 線 や 工 業 企 業 の 存 在,自 動 車 幹 線 道 路 か らの排 気 ガ ス ・騒 音 等 が あ る。(「な ぜ,今 日,郊 外 の 数100㎡ なの か?」 《KI[O》
03。04.2002.)
モ スク ワの低層 住宅 建 設 ヱ35
⑨ 住 宅 所 有 者=住 民:裕 福 な市 民 か ら構 成 され る 同一 の社 会 層,疑 惑 的 評 判 を 有 す る 隣 人 が い な い こ と,人 物 調 査(フ ェ イス コ ン トロ ー ル)が 行 わ れ る。
⑩ 団 地 内 の 整 備 度:団 地 全 体 の整 備 。 照 明,道 路,芝 生,街 灯,散 歩 道 の 整 備 。
⑪ 維 持 管 理 サ ー ビス:高 度 に熟 練 した 自前 の維 持 管 理 部 門 を有 す る 。
⑫ 警 備 体 制:出 入 り口,団 地 の 周 囲 で の 武 装 警 備,ビ デ オ監 視,警 報 装 置 。
⑬ 団 地 の 町 並 み 景 観:団 地 の 統 一 的 設 計 ス タイ ル 。い くつ か の住 宅 タ イ プ 。 B.高 級 団地
① 立 地:西 側,南 西 側 あ る い は 北 西 側 の モ ス ク ワ 環 状 自動 車 道 路 か ら 25km以 内 。
② 近 隣 の環 境:森 林 地 帯(混 合 林)。
③ コ テ ー ジの 数 等:200戸 以 内,コ テ ー ジ の 大 き さ は450㎡ 以 上,敷 地 の 広 さは2000㎡ 以 上 。
④ ラ イ フ ラ イ ン:集 中 方 式,標 準 レベ ル,モ ス ク ワの 電 話 番 号,イ ン タ ネ ッ ト接 続 。
⑤ 生 活 イ ン フ ラ へ の ア ク セ ス:団 地 か ら3km以 内 に,プ ー ル 付 き の ス ポ ー ッ セ ン ター(フ ィ ッ トネ ス セ ン タ ー),美 容 サ ロ ン,医 療 セ ン ター, レス トラ ン,ス ーパ ー マ ー ケ ッ トが あ る 。 団 地 内 に必 須 の もの:ゲ ス ト用 駐 車 場,子 供 広 場 お よび ス ポ ー ッ広 場 。
⑥ 建 設 構 造(資 材):レ ンガ,「 サ ン ドウ ィ ッチ 」 パ ネ ル,木 材 。
⑦ 設 計 家:注 目す べ き設 計 案 に よ る設 計 。
⑧ 住 宅 所 有 者 一住 民:裕 福 な市 民 か ら構 成 され る 同 一 の 社 会 層,疑 惑 的 評 判 を 有 す る 隣…人 が い な い こ と,人 物 調 査(フ ェ イ ス コ ン トロ ー ル)が 行 わ
れ る 。
⑨ 団 地 内 の整 備:団 地 全 体 の整 備 。 照 明,道 路,芝 生,街 灯,散 歩 道 の整 備 。
⑩ 維 持 管 理 サ ー ビス:熟 練 した 自前 の維 持 管 理 部 門 を有 す る。
136商 学 討 究 第54巻 第2・3号
⑪ 警 備 体 制:出 入 り口,団 地 の 周 囲 で の 武 装 警 備 。
⑫ 団 地 の 町 並 み 景 観:団 地 の 統 一 的設 計 ス タ イ ル 。い くつ か の住 宅 タ イ プ 。 C.ビ ジ ネ ス ク ラ ス の 団地
① 立 地:東 側 と南 東 側 を の ぞ く全 方 面 で,モ ス ク ワ 環 状 自動 車 道 路 の 40km以 内 圏。
② 近 隣 の 環 境:平 地 。
③ コ テ ー ジの 数 等:コ テ ー ジの 数 が400戸 まで,コ テ ー ジの 広 さは250㎡ 以 上,敷 地 の 広 さ は1000㎡ 以 上 。
④ ラ イ フ ラ イ ン:上 水 道 と ガ ス 供 給 は集 中 方 式,下 水 は 「浄 化 タ ン ク」, モ ス ク ワ 州 の 電 話 番 号 。
⑤ 近 隣iのイ ン フ ラ:10km以 内 に,プ ー ル付 き の ス ポ ー ツ セ ン ター(フ ィ ッ トネ ス セ ン ター),美 容 サ ロ ン,医 療 セ ン ター,レ ス トラ ン,ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト。 団 地 内 に必 須 の も の:ゲ ス ト用 駐 車 場,子 供 広 場 。
⑥ 建 設 構 造(資 材):レ ン ガ,「 サ ン ドウ ィ ッチ」 パ ネ ル,木 材 。
⑦ 住 宅 所 有 者 一住 民:一 応 裕 福 な 市 民 か ら構 成 さ れ る 同 一 の社 会 層 。
⑧ 団 地 内 の整 備:団 地 全 体 の整 備 。 照 明,良 い 道 路 。
⑨ 維 持 管 理 サ ー ビス:臨 時 に,維 持 管 理 の専 門 家 と して 請 負 業 者 を招 く。
⑩ 警 備 体 制:出 入 り口 の 警 備 。
⑪ 団 地 の 町 並 み 景 観:団 地 の 統 一 的 設 計 ス タ イル の 欠 如,他 方 で は,遊 休 的 で,現 実 的 で は な い物 件(施 設)も な い。
(3)モ ス ク ワ近 郊 の コ テ ー ジ建 設 ビ ジ ネ ス の 担 い手 と購 入 者
モ ス ク ワ 近 郊 の コ テ ー ジ建 設 ビ ジ ネ ス の 担 い 手 と して は,ま ず 不 動 産 仲 介 業 者 が い る 。28)モス ク ワの 大 手 の 不 動 産 仲 介 業 者 は,1992年 か らモ ス ク ワ 近 郊 の 不 動 産 市 場 を積 極 的 に 開 拓 して きた 。1997年 か らは コテ ー ジ建 設 用 地 の 集 中 的 買 付 け に動 い た 。 さ ら に,自 らの 資 金 や借 入 れ に よっ て コ テ ー ジ団 地 を建 設 し
28)「 春,改 め て 郊 外 不 動 産 の 価 格 」 《KBa江paTHLIhMeTp》24.04.2002.
モ ス ク ワ の 低 層 住 宅 建 設137
た 。29)こ の ビ ジ ネ ス の 収 益 性 は 年 に30%〜50%で あ り,投 資 家 に と っ て 非 常 に 魅 力 的 な も の に な っ て い る 。い わ ば,ハ イ リ ス ク ・ハ イ リ タ ー ン の 市 場 で あ る 。 不 動 産 仲 介 業 者 以 外 に,建 設 会 社 も コ テ ー ジ を 建 設 し て い る 。 例 え ば,建 設 会 社 「社 会 的 イ ニ シ ア テ ィ ブ 」 《COUIianbHafivaHZHIIaTvaBa》 は,ブ ィ コ ボ 空 港 近 くの ト ミ リ ノ 地 区(TOMrmuHo)に お い て30haの 土 地 に タ ウ ン ハ ウ ス を 建 設 し て い る 。30)
他 方,モ ス ク ワ 郊 外 の コ テ ー ジ の 主 な 購 入 者 を み て み る と,最 も積 極 的 な 購 入 者 と し て 挙 げ ら れ て い る の は,ロ シ ア 各 地 の ビ ジ ネ ス 関 係 者,具 体 的 に は ガ ス 関 係,石 油 関 係,金 属 関 係,金 ・地 下 資 源 関 係 の 企 業 家 ・経 営 者,な ら び に 旧 南 方 共 和 国(タ ジ キ ス タ ン,ウ ズ ベ キ ス タ ン,北 カ フ カ ー ス の 諸 共 和 国)の 出 身 者 で あ る 。 地 域 的 に は,モ ス ク ワ 地 域 以 外 の 購 入 者 が65%以 上 を 占 め て い る 。例 と し て は,ス ル グ ー ト市 や チ ェ レ ポ ー ベ ッ ッ 市 の 市 民 が 目 立 っ て い る 。31)
コ テ ー ジ を 所 有 す る こ と の 社 会 的 意 味 は,社 会 的 威 信 と 富 の 表 現 で あ る こ と で あ る 。 さ ら に,前 述 の よ う に,コ テ ー ジ 価 格 の ラ ン ク に 従 っ て,ほ ぼ 同 じ所 得 ・社 会 階 層 の 建 築 主=所 有 者 た ち が 同 じ 団 地 に 住 む よ う に な っ て い る 。 同 一 の 社 会 階 層 の 人 々 が と も に 居 住 す る こ と に よ っ て,一 定 の 安 心 感,住 み や す さ を 感 じ る こ と が で き る で あ ろ う 。
㈲ 中 古 住 宅 の 入 手 方 法
既 存 の 低 層 ・独 立 住 宅 集 落 の 中 に あ る 中 古 住 宅 を 取 得 す る 方 法 と し て は,以 下 の2つ が 主 な も の で あ る 。
第1に,古 い ダ ー チ ャ 集 落 の 中 古 住 宅 で あ る 。 例 え ば,ソ 連 時 代 の エ リ ー ト 組 織(科 学 ア カ デ ミ ー,作 家 同 盟,芸 術 家 同 盟 等)に 属 し て い た 知 識 人 た ち の ダ ー チ ャ 集 落 が あ る 。 そ の 多 く は モ ス ク ワ 環 状 自 動 車 道 路 か ら30km以 内 に あ る 。 比 較 的 都 心 に 近 く イ ン フ ラ が 整 備 さ れ て お り,必 要 な ラ イ フ ラ イ ン が 整 っ 29)「 郊 外 の す ば や い お 金 」 《BeπoMocTH》11.06.2002.
30)「 春,改 め て 郊 外 不 動 産 の 価 格 」《KBanpaTHLItiMeTp》24.04.2002.そ の 他, 普 通 の 会 社 も 自 己 の 経 営 者 や 従 業 員 用 に コ テ ー ジ 等 を 建 設 し て い る 。
31)「 春,改 め て 郊 外 不 動 産 の価 格 」 《KBaπpaTHb磁MeTp》24.04.2002.
138 商 学 討 究 第54巻 第2・3号
て い る 知 識 人 ダ ー チ ャ集 落 で は,広 さ100〜180㎡ で,20〜30年 前 に 建 築 さ れ た 木 造 住 宅 が あ る 。 当 時 の熟 練 大 工 に よ って 建 築 され た もの が 多 く,内 部 の 間 取 り も郊 外 生 活 に 適応 した もの で あ る 。 例 え ば,客 間 の 暖 炉,書 斎,夏 用 ベ ラ ン ダ等 が 配 置 さ れ て い る。 また,こ の よ う な集 落 の メ リ ッ トに な っ て い る の は, 知 識 人 階 層 と い う一 定 の社 会 的 ス テ ー タス を有 す る 隣 人 の 存 在 が 期 待 し うる こ
と で あ る 。た だ し,こ の 旧知 識 人 ダ ー チ ャ集 落 の 土 地 区画 は,通 常800〜1200㎡
の 広 さ しか な い。32)
今 日,こ の よ うな,古 い ダー チ ャ 地域 の 家 や敷 地 を売 却 す る ケ ー ス と して は 次 の よ うな ケ ー ス が 目立 っ て い る。 ま ず 第1に,モ ス ク ワ に 住 ん で い て,子 供 達 と別 居 す るた め に モ ス ク ワ に も う一 つ の 住 戸(マ ン シ ョ ン)を 手 に 入 れ よ う
とす る年 金 生 活 者 で あ る。 つ ま りモ ス ク ワ に住 み つ づ け る た め に,子 供 との 別 居 の た め の 資 金 作 りに ダ ー チ ャ を売 却 す る場 合 で あ る。第2に,遺 産 の 形 で ダ ー チ ャ を相 続 した 人 が ダー チ ャ を売 却 す る ケ ー ス で あ る。 こ の 場 合 も,ダ ー チ ャ の 売 却 で得 た 資 金 で 首 都 の住 宅 を購 入 して い る こ とが 多 い 。33)
第2に,モ ス ク ワ 郊 外 で 以 前 か ら田舎 風 の 一 戸 建 住 宅 の 集 合 と して 形 成 さ れ て きた 既 存 集 落 の 住 宅 を入 手 す る こ とで あ る。1999年 時 点 で は,1,5万 ドル 〜2.5 万 ドル で そ の よ う な 住 宅 が 購 入 で きた 。 この 場 合 は 前 述 の 知 識 人 ダ ー チ ャ の 土 地 区 画 よ り も少 し広 く,1200〜2000㎡ の 土 地 区画 が つ い て い る 。34)
第3節 レ ン ガ コ テ ー ジ と 木 造 コ テ ー ジ
ロ シ ア に お け る低 層 住 宅 は,建 築 構 造 的 に は お お よ そ 次 の よ う に 区 分 さ れ る 。35)
32)HoBHKoBB.几P61HOKifOUEHKA∬EπB㎜MOO7π βPOOO朋
∂K3AMEH,2000,c.66.
33)「 春,改 め て 郊 外 不 動 産 の 価 格 」 《KBa即aTHb磁MeTp》24.04.2002.
34)HoBHKoBB.Al.P6、IHOK∬OUEHKAHEaBVaVaMO(フTifBPOO㎜
∂K3AMEH,2000,c.66.
35)CBohnoM.《CTponTe∬sHafira3eTa》12 .05.1996,
モス ク ワの低層 住 宅建設
① 鉄 筋 コ ンク リー ト製 の 大 型 パ ネ ル構 造 お よび 一 体 成 形 構 造
② 軽 量 コ ンク リー ト等 に よ る ブ ロ ッ ク構 造
③ レ ン ガ構 造
④ 木 造構 造(丸 太 積 み構 造,枠 組 み構 造,パ ネ ル 構 造)
⑤ 各 種 構 造 の組 み 合 わせ
139
現 在,モ ス ク ワ地 域 にお い て 多 く見 られ るの は,③ レ ン ガ構 造 と④ 木 造 構 造 で あ る。
木 造 構造 の長 所 は次 の 点 で あ る。36)第一 に,構 造 を構 成 す る 木 材 が 比 較 的 軽 量 なの で(600‑900kg/㎡),住 宅 の基 礎 が 軽 量 ・安 価 に 施 工 で きる こ とで あ る。
第 二 に,エ コ ロ ジ ー 的 に純 粋 で あ り,健 康 に 良 い 。木 自身 が 「呼 吸 を して い る」。
第 三 に,壁 の 内 側 を 追 加 的 な 仕 上 げ な し に済 ます こ とが 可 能 で あ る(カ ン ナ が け し た 角 材,円 柱 加 工 した 丸 太 等)。 第 四 に,断 熱 性 に す ぐれ て い る た め に, 比 較 的 薄 い壁 で 済 ます こ とが 出 来 る'。第 五 に,冬 期 間 で も施 工 可 能 で あ る。
他 方 で は,木 造 構 造 の 欠 点 と して は 次 の 事 柄 が 挙 げ られ る 。 火 災 の危 険 性, カ ビ等 に よ る腐 食 の 可 能 性,乾 燥 収 縮 や 亀 裂 の可 能 性 。 ま た 総 じて,耐 久 性 の 点 で,レ ンガ ・石 よ り劣 る 。
逆 に,レ ン ガ構 造 で は次 の よ う な長 所 が 考 え られ て い る 。 高 い 防火 性 能,カ ビ等 に よ っ て 腐 食 しな い こ と,高 い 耐 久 性,堅 牢 性 。 しか し レ ン ガ構 造 に も次 の よ うな 欠 点 が あ る 。 レ ン ガ の比 重 が 大 きい の で(1500‑2500kg/㎡),強 固 な 基 礎 工 事 が不 可 欠 で あ る。 基 礎 工 事 の 際 モ ス ク ワ州 で は,通 常1.4m‑1.6m の 凍 上 深 度 まで 基 礎 を掘 り下 げ る必 要 が あ る。 また レ ンガ 自体 は断 熱 性 能 が 良
く な い の で,厚 い壁 を必 要 とす る(少 な く と も厚 さ51cm)。 レ ン ガ壁 の場 合, 内 側 の 内装 仕 上 げ が不 可 欠 で あ る。 レ ン ガ壁 は冬 期 施 工 が 困 難 で あ る 。 ま た経 済 的 に は,こ の 住 宅 メ ー カ ー の 評 価 に よれ ば,他 の 条 件 が 同 じで あ れ ば,概 し て,レ ンガ構 造 住 宅 は木 造 住 宅 よ り も1.3‑1.5倍 ほ ど高 価 に な る。 また,暖 房
して い な い 場 合 に は,「毛 細 管 現 象 」に よる 多 湿 化 の 被 害 を受 け や す い 。従 っ て,
36)住 宅 企 業 『ギ プ ラ ゴ ー ル 』 の ホ ー ム ペ ー ジ(http://www.9ipragor.ru/)
140 商 学 討 究 第54巻 第2・3号 冬 期 の 暖 房 を き ち ん とす る必 要 が あ る。
この 住 宅 メー カー の 総 合 的 判 断 に よれ ば,37)常 住 の 住 宅 と して 使 用 す るの で あ れ ば,甲 乙つ けが た い。 上 述 の よ う に,レ ン ガ住 宅 は,耐 久 性,堅 牢 性,防 火 性 能 の点 です ぐれ て い るが,高 価 で あ る し,前 述 の よ うな い くつ か の欠 点 もあ る。
他 方,も し一 時 的,季 節 的 に居 住 す る住 宅 と して使 用 す る の で あ れ ば,木 造 住 宅 が す ぐれ て い る。 安 価 で あ る し,維 持 管 理 が比 較 的簡 単 で あ る か らで あ る。
ロ シ ア不 動 産 仲 介 業 者 協 会 の調 査 に よ る と,38)2002年 に お い て 郊 外 コ テ ー ジ の購 入 者 の54%が レ ンガ造 りを選 び,木 造 コ テ ー ジ を選 ん だ の は25%で あ っ た。
残 りは コ ン ク リー ト構 造 とサ ン ドウ ィ ッチ 構 造 が 占 め て い る。 レ ン ガ系 住 宅構 造 が 優 位 で あ る の は,伝 統 的 に ロ シ ア で は レ ン ガ構 造 が 好 まれ て お り,そ こ に 耐 久 性,信 頼 性 の価 値 が 結 び つ い て い るか らで あ る。 しか し,最 近 で は,木 造 コ テ ー ジ の 比 率 が 上 昇 して い る。 前 述 の 調 査 に よれ ば2002年 の2‑3年 前 に は レ ン ガ と木 造 の 比 率 は75%と12%で あ っ た 。こ こ数 年 で レ ン ガ の 比 率 が 低 下 し, 木 造 の比 率 が 上 昇 して い る の で あ る。そ れ は,都 市 生 活 者 の 自然 回帰 志 向,「 木 の ぬ く も り」 志 向 が 反 映 して い る。 な お,カ ナ ダ由 来 の 「サ ン ドウ ィ ッチ 」 構 造 住 宅 に対 す る態 度 は 二 面 的 で あ る。 一 方 で は,そ の 理 念 そ の も の は す ば ら し い,特 に 中 流 ク ラ ス に と っ て は,と 評 価 され て い る 。 しか し,他 方 で は 現 実 に ロ シ アで 製 造 ・建 築 され た もの は西 側 の そ れ と比 して 非 常 に 劣 って い る し,価 格 は 高 い。39)
第4節 モ ス ク ワ州 にお け る住 宅 建 設統 計(2001年)
モ ス ク ワ市 の 周 囲 に位 置 す る モ ス ク ワ 州 で は,低 層 住 宅 も含 め た 住 宅 建 設 が 盛 ん で あ る 。 そ こ で,2001年 の統 計 デ ー タ を も とに そ の 現 状 を 考 察 し よ う。
表 一1は,モ ス ク ワ 州 にお け る2001年 の所 有 形 態 別 の 住 宅 建 設 で あ る。 住 宅
37)同 上 。
38)「 だ れ が 御 殿 に 住 ん で い る か?」 《npolpvanL》04.11.2002.
39)「 農 村 の 住 宅 の 価 格 上 昇 」VseDoma.ru.11.04.2002。
モス ク ワの低層 住宅 建設141
総 面 積 で は,そ の77.0%が 私 的 所 有 の 住 宅 建 設 で あ る 。 そ の 内,個 人 が建 設 し た 住 宅 は合 計 の46.5%で あ る 。 こ の個 人 建 設 に お い て は,住 棟 数(6840棟)と 住 戸 数(6899戸)の 差 は わず か で あ る 。 つ ま り,そ の ほ とん どは1住 棟 に1住 戸 で あ り,ほ ぼ低 層 一 戸 建 て 住 宅 で あ る こ とが わ か る 。
表 一1モ ス ク ワ 州 に お け る住 宅 ・寮 の 建 設(2001年) 住 宅総 面 積,
㎡ % 実 際 建 築 費,
100万 ル ー ブ ル 住棟の数 住戸の数
合 計 2,827,333 100 16,662.6 7,142 28,776
国 家 的 所 有 351,136 12.4 3,025.9 46 5,023
連 邦 的 所 有 301,425 10.7 2,641.3 41 4,311
連 邦 構 成 主 体 所 有 49,711 1.8 384.6 5 712
地 方 自 治 体 所 有 127,400 4.5 805.3 30 2,087
社 会的,宗教 的組織 の所 有 8,973 0.3 50 2 112
私 的 所 有 2,176,084 77.0 11,328.3 6,999 19,145
個 人 建 設 1,315,236 46.5 4,586.6 6,840 6,899
混 合 的 ・国 内 的 所 有 94,306 3.3 783.7 19 1,450
消 費 協 同 組 合 の 所 有 2,049 0.1 12.3 1 23
外 国 の 所 有 6,396 0.2 49.5 3 89
国 内 ・国 外 の 共 同 所 有 60,989 2.2 607.6 42 847
出 典;『 モ ス ク ワ 州 の 建 設(2001年)』 統 計 年 報,モ ス ク ワ 州 国 家 統 計 委 員 会,2002年,39
‑40頁 。
表 一2は,個 人 住 宅 建 設6840棟 の 内,コ テ ー・・一一・ジ タ イ プ の 住 宅 が3029棟 で あ る こ と を 示 し て い る 。 そ の 比 率 は44.3%で あ る 。 ま た,コ テ ー ジ タ イ プ の 住 宅1 棟 当 た り の 建 築 総 面 積 は,237.8㎡ に な る 。
表 一2:2001年 の 建築 タイプ別個 人住 宅 建設 住棟数 住戸数 総 面 積,㎡ 住 宅建 築 費,
千 ル ー ブ ル
付 属建 物 建 築 費, 千 ル ー ブ ル
合 計 6840 6899 1,315,236 4,242,155 344,430
コ テー ジ タ イ プ の 住 宅 3029 3048 720,433 2,534,456 255,362 それ 以 外 の タイプ の 住宅 3811 3851 594,803 1,707,699 89,068 出 典;表 一1と 同 じ,43頁 。
142商 学 討 究 第54巻 第2・3号
表 一3は,個 人 住 宅 建 設 の 実 施 方 法 に よ る 分 類 で あ る 。 建 設 労 働 者 班 を 自 ら 雇 用 して 作 業 させ た り,建 設 会 社 と建 設 作 業 の 請 負 契 約 を締 結 して独 立 住 宅 を 建 築 した りす る 方 式 が,住 棟 数 の比 率 で65.0%で あ り,そ れ 以 外 の 方 法 に よる 建 設 の 比 率 が35.0%で あ る 。
表 一3:2001年 の 建築 方法別 個人 住 宅建 設 住棟数 住戸数 総 面積,㎡ 住 宅 建 築 費,
千 ルー ブル
付属 建 物 建 築 費, 千 ルー ブル
合 計 6840 6899 1,315,236 4,242,155 344,430
建 設労 働 者 班 の雇 用 に よ る,建 設 請 負契 約 に よる 建 設
4443 4478 960,471 3,313,733 315,707
それ以外の方法 による建設 2397 2421 354,765 928,422 28,723 出 典;表 一1と 同 じ,43頁 。
表 一4は,2001年 の 個 人 住 宅 建 設 の建 築構i造別 区 分 で あ る 。 レ ン ガ組 積 構 造 が 最 も多 く総 面 積 の比 率 で68.4%,第 二 位 が 木 造 構 造 で21.4%,石 造 りが4.3%, そ の 他 の 構 造 が6.0%で あ る 。
表 一一4:2001年 の 構 造 別 個 人 住 宅 建 設
住棟 数 住戸数 総 面 積,㎡ 住 宅 建 築費, 千 ル ー ブ ル
付 属 建 物建 築 費, 千 ル ー ブ ル
合 計 6840 6899 1,315,236 4,242,155 344,430
石 造 り 56,213 137,642
レ ン ガ 積 み 899,186 3,113,898
木 造 281,034 778,636
そ の 他 の 壁 材 78,803 211,979
出 典;表 一1と 同 じ,43頁 。
表 一5は,個 人 住 宅 建 設 と して建 築 さ れ た住 戸 数6899戸 の 部 屋 数 別 の 区分 で あ る 。3部 屋 な い し4部 屋 の 住 宅 が 中 心 的 で あ る こ とが わ か る。