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神奈川県新産のタカネサトメシダ

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Academic year: 2021

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神奈川県新産のタカネサトメシダ

著者 田村 淳, 山根 正伸, 中山 博子

雑誌名 植物地理・分類研究 = The journal of phytogeography and toxonomy

巻 52

号 1

ページ 83‑84

発行年 2004‑07‑25

URL http://hdl.handle.net/2297/48665

(2)

田村

1

・山根正伸

1

・中山博子

2

:神奈川県新産のタカネサトメシダ

Atsushi Tamura

1

, Masanobu Yamane

1

and Hiroko Nakayama

2

: Newly distributed Athyrium pinetorum Tagawa in Kanagawa Prefecture

神奈川県の丹沢山地で本県新産となるタカネサトメシダ(Athyrium pinetorum

Tagawa)の生育を確認し

たので報告する。

タカネサトメシダ(イワデンダ科)は本州の東北地方から中部地方にかけて,および徳島県剣山に分布し,

亜高山帯の針葉樹林下に生育することが知られている(倉田・中池

1990)

。倉田・中池(1990)によると,

神奈川近県では山梨県と静岡県の富士山周辺,および埼玉県,山梨県,東京都境の秩父山地で分布が報告され ている。どちらも亜高山帯針葉樹林が発達する地域である。一方で神奈川県丹沢山地では,最高峰の蛭ケ岳(標

1,673 m)を筆頭に 1,600 m

を超える峰があるものの,亜高山帯針葉樹林は存在しない。そのため,丹沢山

地におけるタカネサトメシダの分布は貴重といえる。

発見したのは丹沢山地東部の尾根上(標高

1,370 m)で,ニホンジカ(Cervus nippon Temminck,以下シ

カ)から植物を保護する目的で設置された植生保護柵内に

2

株生育していた。付近の植生はブナ,イタヤカ エデ,アラゲアオダモ,ヒコサンヒメシャラなどから構成される広葉樹林で,林床にはスズタケ,クロイチゴ,

オシダ,イワシロイノデなどが生育して いた。

生育地周辺は

1960

年代にスズタケが 密生していた(宮脇他

1964)が,1980

年代後半からシカの過度の採食圧により スズタケが退行し(羽山他

1994)

,1997 年に植生保護柵を設置した地域である。

スズタケが密生していると草本類はほと んど生育できないことから,スズタケが 退行したこととシカの採食圧を除去した ことがタカネサトメシダの生育に正の影 響を及ぼしていると考えられる。

タカネサトメシダはコシノサトメシダ

(Athyrium neglectum

Seriz.)に類似す

るシダである。近隣地ではコシノサトメ シダも県新産として報告されている(田

1998)

。両者の区別点は,タカネサト メシダが葉身の中部から上の方で羽片基 部の小羽片がやや外先に出るのに対し,

コシノサトメシダは小羽片がほぼ対生に 出るため羽片に柄がはっきりとあること である(中池

1992)

。今回採集した標本

(Fig. 1)はこの点の他に葉身が

3

角形 状になることからタカネサトメシダと同 定された。標本は神奈川県立生命の星・

地球博物館に納めた。

この報告にあたり,標本を同定してい ただいた元千葉県立中央博物館の中池敏 之博士,ならびに標本採集を許可してい ただいた神奈川県自然環境保全センター 自然公園課の許認可担当者にお礼申し上 Fig.1. A specimen ofAthyrium pinetorum Tagawa from Kanagawa げる。

Prefecture. Bar =100 mm.

July 2004 J. Phytogeogr. Taxon. Vol. 52. No. 1

83

(3)

引用文献

羽山伸一・古林賢恒・三谷奈保・山根正伸.1994.丹沢山地におけるササの退行とニホンジカの状況.

WWF Japan Science Report 2

(1)

: 21―47.

倉田 悟・中池敏之(編).1990.日本のシダ植物図鑑 分布・生態・分類 ―

6. 881 pp.東京大学出版会,

東京.

宮脇 昭・大場達之・村瀬信義.

1964.丹沢山隗の植生.国立公園協会

(編).丹沢大山学術調査報告書,

pp.54

―102.神奈川県,神奈川.

中池敏之.1992.新日本植物誌 シダ篇 改訂増補版.868 pp.至文堂,東京.

田村 淳.1998.神奈川県新産のコシノサトメシダ.Flora Kanagawa

47 : 532.

1〒243―0121 厚木市七沢

657

神奈川県自然環境保全センター;2〒248―0015 鎌倉市笹目町

10―7

1

Ka- nagawa Prefecture Natural Environment Conservation Center, Nanasawa 657, Atsugi 243―0121, Ja- pan ;

2

Sasame 10―7, Kamakura 248―0015, Japan)

植物地理・分類研究 52巻第1 20047

84

参照

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