• 検索結果がありません。

マルドゥーンの馬を巡る表象

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "マルドゥーンの馬を巡る表象"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

首都大学東京 機関リポジトリ

Title

マルドゥーンの馬を巡る表象

Author(s)

高岸, 冬詩

Citation

人文学報 表象文化論(401): 91‑113

Issue Date

2008‑03‑30

URL

http://hdl.handle.net/10748/5321

Rights

Type

Departmental Bulletin Paper

Textversion

publisher

http://www.tmu.ac.jp/

(2)

マ ル ド ゥ ー ン の 馬 を 巡 る 表 象

高 岸 冬 詩

2006年1◎ 月 に 出版 さ れ た ポ ー ル ・マ ル ド ゥー ン(PaulMuldoon)の 『無 風 帯 』茄 畑 θ五8だ加 詫5(1)が 、P◎etryBo◎kSocietyのAutumnChoiceと して 手 元 に 届 い た 時 、 ま ず 目 を 引 い た の は そ の 表 紙 だ っ た 。褐 色 の 馬 数 頭 が 身 を 寄 せ 合 う写 実 画 で 、18世 紀 イ ギ リス の 画 家 ジ ョー ジ ・ス タ ッブ ズ(GeorgeStubbs, 1724・1806)(2)作 と記 さ れ て い る。 この 詩 集 の 中 身 を 雄 弁 に 物 語 る 表 紙 で あ る が 、実 際 に 読 み 進 め て い く と予 想 通 り、表 題 作"H◎rseLatitudes"を 筆 頭 に 、 馬 が 至 る と こ ろ に 現 れ 、 「 馬 」 が 詩 集 の ラ イ トモ テ ィ ー フ に な っ て い る こ とが 分 か る。 ち な み に 、 彼 が こ の 詩 集 に つ い てPoetryB◎okSocietyの 会 誌(P%

Bulletin)に 載 せ た エ ッセ ー で も 、 主 役 は 馬 で あ る 。

Iwasdぬvingalo捻gWest38thStreeti鍛Manhatta繊the◎ther臓ight whenIsawahorsebeinghoseddown.Oneofthosepoorfellowspressed intoservicetodrawacarriagethroughCentralPark,thehorsestood

thereasimpassivelyasasandblastedsandstonewall,lettingthewater flowoverandoffhim.

Itseemedthishorsehaditinhimtobearnotjustsuccessivecartloads oftouristsbuttheweightofmuchmore.Zbbeemblematicoftheshocking combinationofimpassivityandpassivity(aretheythesame?)inwhichso manyofusseemtofindourselves,particularlythoseofuswholivein B"sh'sA凱erica....(3)

マ ン ハ ッ タ ン の 西38番 街 で ホ ー ス の 水 を か け られ 、 砂 岩 壁 の よ うに 無 表情 に

(impassively)立 ち つ くす 馬 車 馬 に 出 会 っ た と き 、 馬 の 背 負 う荷 の 重 さ を 思

(3)

92マ ル ドゥー ンの馬 を巡 る表 象

い や りつ つ 、馬 は 「 無 表 情 と無 抵 抗(そ れ は 同 じこ と?)の 恐 るべ き 結 合 を表 象 し、そ こ に我 々 の 多 く、特 に ブ ッ シ ュ の ア メ リ カ に 暮 らす 我 々 自身 の 姿 が 見 え る よ うだ 」 と述 べ て い る 。 言 わ ば 、苦 しむ べ き 状 況 に置 か れ た 馬 た ち の 無 抵 抗 な 姿 に 、現 代 ア メ リカ 人 の 現 状 を重 ね 合 わ せ て い る わ け で あ る が 、 こ の詩 集 に 出 て く る 馬 た ち の 境 遇 は 、 ま さ に そ れ に 当 て は ま る よ うに 思 わ れ る。 しか も タ イ トル が 意 味 す る と こ ろ は 、実 に 象 徴 的 だ 。"HorseLatitudes"の 直 訳 はr馬 の 緯 度 」 で あ る が 、 緯 度 が 北 緯(あ る い は 南 緯)30度 付 近 で 、 と く に 大 西 洋 上 の 「 無 風Jの 海 域 の こ とを 指 す 。 か つ て 貿 易 船 が こ の 付 近 を航 行 中 、 凪 に 立 往 生 して 動 き が 取 れ な く な っ た 際 、乗 組 員 の水 を確 保 す る た め 、生 か して お け な く な った 積 荷 の 馬 を 海 に 投 げ 捨 て た とい う逸 話 か ら.こ の 言 葉 が 生 ま れ た ら しい 。 受 難 の 馬 に 由 来 す る こ の ピ ク チ ャ レス ク な 熟 語 が 、 ど うや ら この 連 作 の キ ー ワー ドと な っ て い る よ うで あ る 。

マ ル ド ゥー ン は そ も そ も 初 期 の 頃 か ら、馬 へ の こだ わ りを 示 して き た 詩 人 で あ る。 例 え ば 、 故 郷Moyの 馬 市 か ら ヒ ン トを 得 た"DancersattheM◎y"(第 一 詩 集NewWeather所 収) 。2作 貝の 詩 集 の タ イ トル に な っ た"Mules"「 騨 駒 、 馬 頭 の 主 人 公 が 詩 の 一 節 を 語 る 政 治 的 な 詩"GatheringM囎 ㎞ ◎◎ms"

(Quoof所 収)。 癌 に 苦 し む 母 を 、 苦 しむ 牝 馬 の イ メー ジ に 重 ね た 自伝 的 長 編 詩

"Yarrow"(TheAnnalsofChile所 収) 。 そ して 前 作 晦5劾 げ 齪 ゴ 伽 沼 (2002)で は 、壁 の 穴 か ら漆 喰 に 混 じっ て 発 見 さ れ た 馬 の 毛 を巡 り、ユ ー モ ラ ス な 奇 想 を展 開 した"The][んaf'な ど、例 を 上 げ れ ば き りが な い 。 マ ル ドゥー ン が 馬 に 対 して 特 別 な 興 味 と愛 着 を 示 して き た こ とは 事 実 で あ り、馬 に よ っ て 人 間 の あ る側 面 を 表 し、 極 端 に 言 え ば 、 人 聞 の 運 命 を 代 弁 す る 存 在 と して 、詩 の 中 に 登 場 させ て き た と言 え る だ ろ う。 そ う した 過 去 の 経 緯 が 、馬 を 主 役 に 据

え た この 詩 集 を 作 る 際 に 、 十 分 な 下 地 とな っ た こ と は 明 らか で あ る。

彼 の 馬 へ の こ う した こ だ わ りが 、前 面 に 、 そ して 圧 倒 的 に 表 出 した の が 、 こ

の"HorseLatitudes"と い うこ と に な る。 そ こ で 本 稿 で は 、 マ ル ド ゥー ン の

様 々 な 馬 が 、詩 集 茄 塑 θゐヨ薦 召廊3に お い て どの よ う に表 わ れ て い る か に 注 霞

し 、 馬 の 表 象 を め ぐ る マ ル ドゥー ン の 詩 法 に つ い て 検 証 して い き た い と思 う。

(4)

I

HorseLatitudesは19の ソネ ッ ト連 作 で あ る表 題 作"H◎rseLatitudes"か ら始 ま り、 長 短 織 り交 ぜ て3◎ 篇 の 詩 か ら成 り立 っ て い る 。 最 初 に 、 表 題 作 以 外 の 詩 で 、 馬 を 扱 っ て い る作 品 に触 れ て お き た い 。

ま ず 「 モ リ ン ・ホ ー ル の た め の メ ド レー 」(̀̀Me(fleyforLorinKhur"〉 と い う詩 が あ る 。HorseLatitudesよ り前 に 出 版 され た 私 家 版 詩 集11fedleyfor Morin.Kliurの 中 に 、"HarseLatitudes"と 共 に 収 め られ た 表 題 詩 で あ り、 馬 の モ テ ィー フ を 論 じる 上 で 欠 か す こ と は で き な い。 モ リン ・ホ ー ル は 、 日本 で は 「 馬 頭 琴 」 と し て知 られ 、 文 牢 通 り柄 の 部 分 に 馬 の 頭 の 彫 刻 が 施 され た 、馬 の 皮 や 馬 の 毛 を使 っ て 作 られ る こ と も あ る モ ン ゴル の 民 族 楽器 で あ る 。

1

共 鳴箱 は馬 の頭 で で きてい る 共鳴器 は馬 の皮

弦 と弓は馬 の毛 でで きて い る jll

ジ ャス ミン香 る空気 の中 で 精霊 同 士が呼 び 交わす 声 と同様 抗 うこ との で きない声

馬頭 琴 はモ ン ゴル の

ヴァイ オ ジンの サ ラブ レッ ド そ の音色 は牡馬 が雌 馬 に呼 びか け る声

1V

遺骸散 らば る中央広 場 で 血族 同士 が呼 び交 わす声 と同様 抗 うこ とので きな い声

V

馬 の毛 が積 み 上 げ られ た 山 と 馬 の皮 が積 み 上 げ られ たiの 脇 に 馬 の頭が積 み 上 げ られ る広 場[pp。89〜90]

馬 頭 琴 の 奏 で る 美 しい 音 色 が 、牡 馬 か ら雌 馬 へ 呼 び か け る 声 で あ る とい う ロ{

ン テ ィ ッ ク な 想 像 が 語 られ る が 、最 終 連 で は 殺 さ れ 解 体 さ れ た 馬 の イ メー ジ ヵ 生 々 し く提 示 され る。 第4連 に は 、 「 遺 骸 散 らば る 中 央 広 場 」"abody・s捷eWI centralsquare"と い う 、 さ らに シ ョ ッキ ン グ な … 行 が あ り、 こ れ は馬 の 死 搦

に と ど ま らず 、 ど こ か の 戦 場 に 人 の 遺 体 が 横 た わ る 惨 状 か 、 あ る い はcents

(5)

94マ ル ドゥー ンの 馬 を巡 る表象

squareと 「 セ ン トラ ル ・パ ー ク」 と の 連 想 か ら、9 .11の 惨 劇 を も 想 起 させ る 詩 行 に な っ て い る 。 馬 頭 琴 の 音 楽 に 、 離 別 した 死 馬(死 者)た ち の霊 が 呼 び 交 わ す 声 を 聞 き 、 聞 く者 は そ の カ に 抗 うこ とが で き な い とい う内 容 だ 。 こ の 馬 へ の 鎮 魂 歌 を 、 マ ル ドゥ ー ン は 各 連 の 同 じ行 で 脚 韻 を踏 ま せ(例 え ば1行 目 は head‐thoroughbred‐gainsaid‐gainsaid‐heads)、 リ フ レイ ン(例 え ば 、"a callthatmaynomorebegainsai(r')を 効 果 的 に 用 い つ つ 、 ま さに 馬 琴 頭 の 奏 で る音 楽 の よ うに 鳴 り響 か せ て い るの で あ る 。 そ して 、 こ の モ テ ィー フ の 響 き は こ の 詩 の 中 だ け に と どま らず 、"HorseLatitudes"の 中心 テ ー マ で あ るr馬 の 受 難 」 と呼 応 し て 、 響 き あ う こ とに な る 。 そ れ に つ い て は 後 述 す る。

ヂ モ リ ン ・ホ ー ル の た め の メ ド レーJに 出 て く る 「 馬 の頭 」 の 表 象 、 これ は 他 の 詩 「ビデ ィ ー ・ボ ー イ ズ 」("TheBiddyBays")[ρ25]に も 登 場 す る。

ぼ くた ち が 旧 ラ ー グ郡 の とあ る 角 を 曲 が る と

藁 の ケ ー プ と帽 子 を ま と っ た6,7人 の 紳 士 に 出 会 う。

彼 らの 丸 い 頭 は モ ス リ ン布 に く る ま れ て い る。

欠 か せ な い ゼ ラ ニ ウ ム が カ ー テ ン 窓 越 しに 見 え る。

カ ー テ ン 窓 は 、 今 彼 ら の 隊 長 が 入 っ て い く通 夜 の 家 の も の 。 うご め く シ ー ツ の 下 で 白 馬 が うご め い て い る 。

彼 の 木 製 の 馬 頭 に は 、 あ る種 の 鋲 が 施 して あ る。

彼 は あ ち こ ち で 会 葬 者 を 突 い て い く。

会 葬 者 は あ ち こ ち で泣 き 声 を あ げ る 。

「 ケ ソ シ ュ の ユ ー モ ア 」 が2台 の フ ィ ドル で 演 奏 され る。

雨 に 洗 わ れ た2頭 の馬 が 、 並 ん で 立 っ て い る。

ど こか の 老 夫 婦 の よ うに 並 ん で 立 っ て い るG

あ の カ ー テ ン 窓 越 しに 見 え る 、 き み の ゼ ラ ニ ウム の よ うな 鯖。

「 ず っ と悪 い 状 況 だ っ た け れ ど 、や っ とぼ くた ち は 角 を 曲 が っ た ん だ の

(6)

タ イ トル の 「ビデ ィー ・ボ ー イ ズ 」 は 、1月 末 資に ア イ ル ラ ン ドの 地 方 で 行 わ れ る 聖 ブ リジ ッ ド前 夜 祭 に 、藁 人 形 を 携 え て 藁 の 仮 面 を か ぶ り、家 々 を訪 問 す る仮 装 の 男 た ち を 指 して い る④。 こ の 詩 に 出 て く る 「藁 の ケ ー プ と帽 子 を ま と っ た6,7人 の 紳 士 」 とい うの が 、 ま さに 「ビデ ィ ー ・ボ ー イ ズ 」 に 当 た る 。 そ し て こ の 詩 で は 、彼 ら が 「通 夜 の 家 」 を訪 れ る と 、 死 ん で い る は ず の 「白馬 」 が シ ー ツ の 下 で う ごめ き 、馬 頭 に つ い た 鋲 で 会 葬 者 を突 く と い う、笑 劇 風 の 場 面 が 展 開 す る。雨 に 濡 れ た 馬 の 夫 婦 が 人 間 の 老 夫 婦 の よ うに 立 っ て い る と い う、

哀 感 を 誘 うシ ー ン も提 示 され る 。4行 霞で 窓 辺 に 見 え た ゼ ラ ニ ウ ム は 、 「き み の ゼ ラ ニ ウム の よ うな 口J(原 文 は"Thegeraniumofyourmouth")に 姿 を変 え 、 最 終 行 で は 一 行 匿 と 同 じ フ レー ズ"we'veturnedacorner"を 比 喩 的 な意 味 に ず ら して 用 い 、 冒頭 に 回 帰 す る こ と で 、 妙 に納 得 しつ つ も 、 は ぐ らか され た と い う読 後 感 を 読 者 に残 す 。ア イ ル ラ ン ドの 慣 習 を 下 敷 き に 、登 場 人 物 を 「 罵 人 間 」 と して 表 象 し、葬 儀 を パ ロデ ィ化 す る ノ ンセ ン ス 風 ひ ね りが 効 い て 、 い か に も マ ル ド ゥー ン ら しい ユ ー モ ラ ス な 詩 に 仕 上 が っ て い る 。 この 詩 も 、馬 を 人 間 に 見 立 て る とい う、 詩 集 の 一 貫 し た テ ー マ に 貫 か れ て い る の で あ る。

さ て 、 表 題 詩 の"H◎rseLatitudes"に 話 を 移 そ う。 最 初 に 書 い た とお り、

こ の 詩 は 、無 風 帯 海 域 に お け る馬 の受 難 とい うモ テ ィー フ を 中 核 に 据 え た 連 作 詩 で あ る。 そ して 、19の ソネ ッ トに は 副 題 が つ き、 す べ てbattleのBで 始 ま る 戦 場 の 地 名 で あ る と い う、徹 底 した 趣 向 が 凝 ら して あ る。 こ の 趣 向 は 、副 題 に 古 今 東 西 の 哲 学 者 の 名 前 を 年 代 順 に 掲 げ た 長 編 詩"Madoc:AMystery

(1990)を 思 い 出 させ る が 、 こ の 詩 で も 、 ほ ぼ 歴 史 年 代 順 に 戦 争 を 並 べ て い る の が 特 徴 で あ る 。1番 のBeijingは1215年 に モ ン ゴ ル と金(中 国)が 戦 っ た 地 、2番 の8ag加b臓 は1170年 に 戦 争 が あ っ た ア イ ル ラ ン ドの 地 名 。 以 下 r,・(131年 ス 灘 ッ トラ ン ド)、Berwick‑upon‑Tweed(13世 紀 末

〜 盗 世 紀 の 、 英 国 とス コ ッ トラ ン ドの 国 境 戦 の 要 所)、Blaye(14世 紀 の 英 仏

戦 争)、BosworthField(15世 紀 の バ ラ戦 争)と 続 く。 さ らに9番Boyne(1690

年 、ア イ ル ラ ン ド)、10番Blenheim(17◎4年 、ス ペ イ ン継 承 戦 争)。11Bunker

(7)

96マ ル ドゥー ン の馬 を巡 る表 象

Hillと12番B聡 簸dy犠 臓eは ア メ リカ 独 立 戦 争 。14番BuUR膿(ア メ リカ 南 北 戦 争)、15番Br◎nkhorstspruit(ボ ー ア 戦 争)と 続 き 、18番 脱eτsheba(イ ス ラエ ル 、1917年 、第 一 次 大 戦)、 最 後 の19番Rは1944年 第 二 次 大 戦 の 地 、 と い う具 合 に 、12〜20世 紀 に か け て の 、 ア ジ ア 、 ヨー ロ ッパ 、 ア メ リ カ に 亘 る 歴 史 上 の 戦 地 を副 題 に 掲 げ て い る の で あ る。 こ れ らの 固 有 名 詞 に は 、 有 名 な も の と 、あ ま りな じみ の な い も の が 混 在 す る が 、す べ てBで 始 ま る地 名

と い うこ だ わ りに 従 って 選 ば れ て お り、そ の 意 味 で こ の 「Bづ く し」の 趣 向 は 、 遊 び の た め の 遊 び と も言 え る も の で あ ろ う。 しか し、戦 い の 史 実 が 折 りに ふ れ て 詩 の 内 容 と交 わ る よ うに 工 夫 され て お り、マ ル ドゥー ン 特 有 の 緻 密 な 計 算 が 働 い て い る。 そ の 点 に つ い て は 、 次 章 で 詳 述 す る。

こ う した 副 題 の 趣 向 に 絡 ん で 、 ソネ ッ ト連 作 の 中 で 展 開 す る 物 語 は 、一 人 称 の 「 僕 」 に よ っ て 語 られ 、 彼 の 恋 人 と思 しき カ ル ロ ッタ(Carlotta)と い う名 の イ タ リア 系 女 性 と、 そ の祖 父 の エ ピ ソー ドが 中 心 とな る 。 僕 」 と カ ル ロ ッ タ の 恋 愛 に つ い て は 、rアル バ 」("Alba")と い う詩 の 中 で も 語 られ て い る の で 、 先 に そ ち ら を 見 て お こ う。

「ア ル バ 」 は 、 一 人 称 の 「 僕 」 が カル ロ ッ タ と過 ご した 夜 と翌 朝 に つ い て 歌 う、 伝 統 を踏 ま え た 後 朝 の 歌 で あ る。 冒覚 め た と き の 自分 を 、 サ ー カ ス が 撤 収 して 、 プ ー ル の 「 藻 海 」 に 取 り残 され 、 困 惑 す る 人 に 喩 え て い る 。 以 下 、4行 連 句9連36行 か ら成 る こ の 詩 の 、最 初 の5連 目ま で を 引 用 す る 。

「ア ル バ 」[pp.26〜271

僕 は 困 惑 した/野 外 で 冒覚 め た とき/サ ー カ ス の 支 柱 が 引 き 抜 か れ/

しか じか

云 々 のプール の 藻海 が

出 現 す る の を 見 た 人 の よ うに 。/そ の プ ー ル は 、 ど こ か の 若 造 が/

羨 ま しい オ フ ロ ー ド用 ベ ン ツ の ラ ジ エ ー タ ー に/水 を満 た した 場 所

藻 海 が現れ た場 所 にサー カス の大テ ン トが/立 って いた に違 い ない。昨夜 は

索具 が/パ カパ カ うな って いた/ま さにそ の時 、カル ロ ッタが

(8)

ア ナ グ ラ ム

浮 き草 か ら姿 を現 わ し/私 の名 は/rQ唇 性 戯 」の綴 り替 えよ と告 げ た。/

僕 はそれ を闘い た。 ほか の者 た ちが 泳 いで いる間 、

僕 た ちは、 ジ ンベイザ メが群れ るよ うに/並 ん で浮か んで いた。/

しfな

僕 た ちが以 前時 化 にあ った こ との あ る場 所 は/凪 の海 域 にな って いた

しかじか

語 り手 のr僕 」が 前 夜 カ ル ロ ッ タ と過 ご したr云 々 の プ ー ル 」(̀theSo‑and‑sos' P◎of)とiY(theSargass◎)が 、 水 の イ メー ジ の 連 想 に 加 え 、Sargasso とSo‑and‑S◎s'の 語 呂合 わ せ に よ りモ ン タ ー ジ ュ され る。 さ ら に 前 夜 の 回 想 シ ー ン で は 、 サ ー カ ス テ ン トの 索 具 が 「 パ カ パ カ 」(clippety‑clop馬 の 蹄 音 の 擬 音 語)鳴 っ て い る と き 、 カ ル ロ ッ タ が 浮 き草 の 陰 か ら現 れ 、 自分 の名 が 「口唇 性 戯 」"oralfuckingtact"の ア ナ グ ラ ム だ と告 げ て く る 。確 か に"Carlotta"は

"◎raltact"の ア ナ グ ラ ム に な っ て お り

、こ う し た 思 い が け な い 言 葉 の 発 見 を詩 の 中 で 披 露 す る の は 、 マ ル ド ゥー ン の 特 技 で あ る。 そ し て 、海 の 上 で 「ジ ンベ イ ザ メ が 群 れ る よ うに 」2人 が プ ー ル に 並 ん で 浮 か ぶ シ ー ン か ら、藻 海 の 「 凪 」 へ の 言 及 が あ り、6連 目以 降horselatitudesそ の も の の シ ー ン へ と カ ッ トす る 。

阪婁

臓whichthe丑()℃ 段鍛・doersaもlastdid鵬edalh◎ 捻s/()fvealwiもhhea鷲sof pa1燃,/血which癒eArabianstalh◎n/st迅 狙anagedasalaa瓢//

despiteCarlotta'sjettisoninghismares/inanefforttobreakthe deadlock,[PP.26・27,11.21〜26]

そ こ(凪 の海域)で は、なすす べ もな くな った人 々 がつ いに/パ ル ミ ッ ト添 え子牛 肉 のメ ダイ ヨン を作 り、/ア ラ ビア 産牡馬 は/イ ス ラム式敬 礼 を し続 けた//停 滞 を解 こ うと努 め るカル ロ ッタが/彼 の6頭 の雌馬 を投 げ捨 て てい た とい うのに …

凪 の 中で船 の停 滞 に直 面 し、積 荷 の子牛 は調理 され て メ ダイ ヨンに な り、雌 矯

は海 に投 げ捨 て られ る。前 出の ギ パ カパ カ」が前触 れ で あった か よ うに馬 が登

(9)

98マ ル ドゥー ンの馬 を巡 る表 象

場 す る の で あ る が 、死 ん で い く雌 馬 に 「 イ ス ラ ム 式 敬 礼 」を す る 牡 馬 の 場 面 は 、

「 モ リ ン ・ホ ー ル の た め の メ ドレー 」 を 髪 影 と させ る。 こ う して 無 風 帯 の 馬 の 表 象 は 、 これ らの 詩 を結 び つ け る重 要 な カ ギ と な っ て い る こ と が 分 か る。

で は 、̀̀H◎rseLatitudes"に つ い て 詳 し く 見 て い こ う。 こ の 連 作 の1番 Beijing「 北 京 」 は 、 こ の よ う な 出 だ し で あ る 。

王COiユ1dsti葉 ユhea望themusicians cajolingthosethousandsofclay horsesandhorsementhroughthesqueeze whenIwokebesideCarlotta.

Life・size,a180.Alsoterra・c◎tta.[p.3,丑 ユ 〜5]

(僕 に は ま だ 闘 こ え て い た 、音 楽 家 た ち が/あ の 何 千 も の 土 の馬 や 騎 手 た ち を /抱 き しめ 、な だ め て い る と こ ろ を。/そ の とき 僕 は カ ル ロ ッ タ の 隣 で 目 を 覚 ま した。/実 物 大 だ 、 や は り。 テ ラ 灘 ソタ 製 で も あ る。)

ま ず 副 題 のBeijingは 、 前 述 した よ うに1215年 に モ ン ゴル と金 の 戦 い が 行 わ れ た 場 所 で あ る が 、 こ の 連 作 の始 め に 敢 え てBeijingを 持 っ て き た 最 大 の 意 図 は 、BeijingとBegi血ngの 語 呂合 わ せ と深 読 み す る こ と が で き る。 マ ル ド ゥ ー ン流 に 言 え ば 、BeijingはBeginningの 誤 植 、"ForBeijingreadsBeginning"

とい う正 誤 表(errata)を 念 頭 に お い て い る に違 い な い(5)。そ して 、 モ ン ゴ ル の 戦 い で あ る ゆ え 、最 初 の3行 で 言 及 され る音 楽 家 と馬 の 組 み 合 わ せ は 、 再 び

「 モ リ ン ・ホ ー ル の た め の メ ド レー 」 と の連 想 で 、戦 い で 死 ん で い っ た 馬 た ち

へ の 、馬 頭 琴 奏 者 に よ る鎮 魂 歌 を 思 い 浮 か べ させ る 。 こ の 調 べ を 夢 の 中 で 聴 い

て い た 「 僕 」 が 、4行 目 で 夢 か ら 目覚 め る と、 隣iでカ ル ロ ッタ が 眠 っ て い る 。

これ は 「ア ル バ 」を 思 わ せ る 「 後 朝 」の 朝 で あ ろ う。 しか し、4行 目のCarlotta

は5行 目のterra℃ ◎ttaと 脚 韻 を 踏 み 、 生 身 の 人 間 で あ る カ ル ロ ッ タ に 、 生 気

(10)

の な い テ ラ コ ッ タ人 形 の イ メ ー ジ が ダ ブ っ て しま う。2行 目の 死 に ゆ く ゼ 馬 」 を 修 飾 す る 形 容 詞 「 土 の 」(clay)と も響 き 合 い 、 カ ル ロ ッ タ に 不 吉 な 死 の 影 が 差 し 、 そ れ は11行 冒 で確 か な も の と な る。

Proud‑fleshedCarlotta.Hypersarcoma.

Fornowourhighestambition wassimplytobearthelightoftheday

wehad◎ 鍛cebee即la蜘ngも ◎seize.[P.3,11ユ1〜141

(肉芽 の あ る カ ル ロ ッ タ。 肉 芽 腫 。/当 面 、 僕 た ちの 最 大 の 願 い は/以 前 掴 も う と計 画 し て い た/昼 の 光 に 、 た だ 耐 え て い く こ とだ け に な っ て しま っ た 。)

Proud・fleshedとHypersarc◎ 滋aは 共 に 「 肉 芽(腫)」 を 意 味 し 、傷 や 腫 瘍 の あ との 肉 の 隆 起 を表 す 医 学 用 語 で あ る が 、語 り手 に と っ て 、 ど うや ら こ の 病 変 は 、悪 性 腫 瘍 へ の 不 安 、恋 人 の 死 へ の 恐 れ を 暗 示 して い る よ うだ 。 最 後 の3行 で 、そ れ ま で2人 が 描 い て きた 将 来 へ の 希 望 が 、 カル ロ ッ タ の 死 の 予 感 に 打 ち 砕 か れ 、一 日一 β を生 き ぬ き 、毎 日の 光 に た だ 耐 え て い か ね ば な らな くな っ て

しま っ た こ とが 示 唆 さ れ て い る。

こ う した 不 治 の 病 へ の 恐 れ は 、お そ ら くマ ル ドゥー ン 自身 の 個 人 的 体 験 に 基 づ い て い る 。 こ の 詩 集 の エ ピ グ ラ フ に は 、"IN・OFMAITREEN

iii1953‑2005"と 、20◎5年 に52歳 の 若 さ で 卵 巣 癌 の た め 亡 く な っ た妹 モ ー リー ン へ の 献 辞 が 記 され て い る⑥。 一 方2003年 に は 、 彼 の親 友 で ロ ッ ク ミュ ー ジ シ ャ ン で あ っ た ウ ォー レン ・ジ ヴ ォ ン を 、 や は り癌 の た め56歳 の 若 さ で 亡 く し 、 彼 に 捧 げ る 長 編 詩"SillyStride:InmemoryofWarren

Zevon"を こ の 詩 集 の 最 後 に 載 せ て い る。 癌 に よ って か け が え の な い 友 人 と妹

を 立 て 続 け に 失 っ た こ とは マ ル ドゥー ン を深 く悲 しま せ 、そ の 悲 しみ が,Horse

Latitudes執 筆 の 大 き な 動 機 の … っ に な っ た こ とは 、これ ら の 献 辞 か ら も想 像

に 難 くな い 。 マ ル ド ゥー ン は 、 こ の 個 人 的 悲 しみ を 、 カ ルr1ッ タの フ ィ ク シ ョ

ン へ と昇 華 させ た とCtう こ とが で き る だ ろ うO

(11)

gooマ ル ド ゥー ン の 馬 を 巡 る 表 象

こ の 後 カ ル ロ ッ タ が 病 と闘 う物 語 が 、 「 僕 」 に よ っ て 語 られ て い く の で あ る が 、 ス ト レー トに 物 語 が 進 展 す る こ とは 決 し て な く 、 「 僕 」の 連 想 の 中 で 、様 々 な イ メ ー ジ の 断 片 が 結 び つ き 、現 実 と 史 実 と夢 想 が 入 り混 じ り、マ ル ドゥー ン 独 自 の テ ク ス チ ャー を作 り上 げ て い く。カ ル ロ ッ タが い る ナ ッシ ュ ビル の ホ テ ル の プ ー ル が 、 い き な り歴 史 上 の 戦 争 シ ー ン と交 わ る か と思 え ば 、カ ル ロ ッ タ の 祖 父 とカ ル ロ ッタ の 会 話 の 断 片 が 挿 入 され る。 そ して 、 ラ イ トモ テ ィ ー フ で あ る 璃 の受 難 」 の 表 象 が 、カ ル ロ ッタ の病 お よ び 戦 争 で の 軍 馬 の 受 難 と結 び つ く。 こ れ らは 、 き わ め て 修 辞 的 な 工 夫 に よ っ て 行 わ れ て い くの で あ る。

例 え ば 、2番Bag加b狐 で は 、 カ ル ロ ッタ と 僕 の い る ナ ッ シ ュ ビル の 地 平 線 の"hemandhaw"(躊 躇)を 、 「(略奪 者 た ち は)ス カ ン ジ ナ ヴ ィ ア 系 ア イ ル ラ ン ドの 従 弟 た ち に/牛 の 大 群 を 放 つ ノル マ ン人 の よ うに 、/自 ら急 造 した/強 大 な 胸 壁 の 前 で 尻 込 み し て い た 」([thefreeb◎ ◎tern̲likeN◎rmans stampedingdozens/ofcowsintotheirNorse‑lrishcousins,/wereballing

nowatthismassivebreastw◎rk/theythemselveshadthrownup,)と 喩 え る 。 な か な か 暗 く な らな い ナ ッシ ュ ビル の 夕 空 の 様 子 を 喩 え た 表 現 と して は 、 い か に も大 仰 な叙 事 詩 的 比 喩epicsimileで あ る が 、 この 喩 え に よ っ て 、 ノル マ ン人 が ア イ ル ラ ン ドに侵 攻 した 「 バ ギ ンバ ンの 戦 い 」 に触 れ て い る こ と に な

る 。 さ ら に 「 紫 を 背 景 に 白 い 馬 の 鞍 行 」(Thehip・h坤1eofawhitehorse

againstpurple)は 、 白 馬 を用 い た 比 喩 で 白 い 雲 の か か る 夕 空 を 喩 え て い る と 思 わ れ る が 、 こ の ソネ ッ トの 最 後 は 、

Age‑oldtraductionsIcouldtrace fromfreebaserspretendingtheyfreebase tothisinescapableflaw

hiddenbyCarlotta'sclose‑knitwetsuit likeaheart‑woundbyahauberk.[p.4,ll.10^‑14]

(い くつ もの 古 い 道 筋 を 、僕 は 辿 る 事 が で き た/灘 カ イ ン を 吸 う振 り を す る

コカ イ ン吸 入 者 か ら、/こ の逃 れ られ な い疵 に 至 る ま で 。/そ の 疵 は カ ル ロ

(12)

ッタ の 密 な 生 地 の ウ ェ ッ トス ー ツ に 隠 され て い た/ま る で 鎖 か た び らに 隠 され た 心 の 傷 の よ うに 。)

「この 逃 れ られ な い 疵Jは 、 カ ルaッ タ の 腫 瘍 の こ と を指 して い る の だ ろ う。

こ の 椴 を 隠 して い た 彼 女 の ウ ェ ッ トス ー ツ を 、 中 世 の 鎖 か た び ら(hauberk) に 喩 え 、 カ ル ロ ッ タ の 物 語 と 中 世 の 戦 争 を交 差 さ せ て い る の で あ る。

次 のiw・ ・ は 、1314年 に ス コ ッ トラ ン ド軍 が 王 ロバ ー ト ・ブ ル ー ス(魚)bertBruce)の 指 揮 下 、 イ ギ リス 軍 を 撃 破 した 戦 い の 地 で あ るが 、 マ ル ドゥー ン が この 戦 い で の ブ ル ー ス の 活 躍 を 紹 介 す る 際 、や は り馬 に 焦 点 を 当 て て い る の が 特 徴 だ 。

Thoughhewasmountedonacab ratherthanawarhorse,theBruce stillmanagedtosidestepaspear fr◎mHe蟹yde8◎hurしa益dtax deBohun'spollwithhisbroad‑basedpoleax

andleave(ieB()hun'schargerso憩ewh&tlee凱[p。5,11.1〜6】

(軍馬 と い う よ りは/短 脚 の馬 に 乗 っ て い た が 、 あ の ブ ル ー ス は/そ れ で も ヘ ン リー ・ ド ・ブ ー ン の 槍 を/う ま くか わ して 、 ブ ー ン の 首 筋 に/鍔 広 の 戦 斧 を 打 ち込 み/ド ・ブ ー ン の馬 を騎 手 不 在 に した)

ブ ル ー ス とブ ー ン の 有 名 な 一 騎 打 ち の 場 面 を 描 写 す る の に 、cob(短 脚 の 頑 丈 な 馬)、warhorse(軍 馬)、charger(騎 士の 乗 る馬)と 、 戦 争 で 使 う馬 を細 か く 区 別 して い る点 が 匿立 つ 。 以 下 、 こ の ソネ ッ トの 後 半 は 、 カ ル ロ ッタ の 祖 父 が 登 場 し、彼 も戦 争 に 参 加 して い た こ とが 、様 々 な 戦 略 へ の 言 及 一 例 え ば 、潜 入 ゲ リ ラ兵 、 樹 木 を義 勇 兵 に 見 せ る 迷 彩 戦 略 な ど一 か ら想 像 で き る、 、

一 方 、 カ ル ロ ッタ の ウsッ トス ー ツ は 、 こ の 連 作 の 重 要 な モ テ ィー フ と して

繰 り返 し登 場 す る。 次 の4番Beτwick・upo灘 ・Tweedで は

(13)

102マ ル ド ゥ ー ン の 馬 を 巡 る 表 象

Carloもta簸owweari皿gahalte獄eck underthelong‑sleeved,high‑collared wetsuitwhereof,..whereof...whereof...whereof

Ineeds憩ustagai難 鵬ake澱entio臓.[P.6,丑 ユ1〜14]

(カル ロ ッ タ は 今 ホ ー ル タ ー ネ ッ ク を 着 て そ の 上 に 長 袖 、 襟 高 の ウ ェ ッ トス ー ツ を 着 て い る

そ れ につ い て一 そ れ に つ い て 一 そ れ に つ い て 一 そ れ に つ い て 僕 は も う一 度 触 れ て お か な け れ ば な ら な い 。)

カ ル ロ ッ タの ウ ェ ッ トス ー ツ につ い て 「 僕 」 は 語 らな け れ ば な ら な い の で あ る が 、そ の こ と に 対 す る 精 神 的 抵 抗 が 、吃 音 の よ うなwhereofの 反 復 と して 表 象 され て い る。 さ ら に 次 の5Blayeで は 、彼 女 の 水 着 が 再 び 鐙 鑑フ ラ ン ス の 戦 士 が ま と う鎖 か た び らに 喩 え られ(Herwetsuitlikeacoatofmail/w◎rnby

aFrenchknight...)、 この ソネ ッ トの 後 半 で は 、

NowCarlottawouldclimb fromthehotelpoolinNashville, takeoffheご 瓢ask,a難dsetasp皿 乞く)aGaul◎iseasO職e]脇ighもset

asp迅tothefuseofafa玉c◎ 餓

andthewallsoff'herchestassail.

TheFrench,meanwhile,werestillstrugglingtoprime theirweaponsofmassdestruction.[p.7,11.7^‑14]

(今 、カ ル ロ ッ タ は ナ ッ シ ュ ビル の/ホ テ ル の プ ー ル か ら上 が り/マ ス ク を

ソ ァル コネ ノ ト

取 る と、/小 型 軽 砲 グ)導火 線 に 点 火 し て/彼 女 の 胸 郭 の 壁 を 攻 撃 す る か の よ

う に/ゴ ロ ワー ズ に 点 火 した 。/そ の 間 、 フ ラ ン ス 軍 は な お も/大 量 破 壊 兵

器 に 火 薬 を 詰 め よ う と懸 命 に な っ て い た 。〉

(14)

カ ル ロ ッ タ が ナ ッ シsビ ル の ホ テ ル の プ ー ル か ら上 が り、 ゴ ロ ワ ー ズ(フ ラ ン ス 製 の紙 巻 タ バ ほ)に 火 をつ け る 場 面 が 、副 題 のBlayeが 示 す 英 仏 戦 争 の 時 代 の 小 型 軽 砲 に 点 火 す る 場 面 に 喩 え られ て い る 。彼 女 の胸 郭 の 壁 へ の 攻 撃 とい う の は 、カ ル ロ ッタ 自身 の 身 体 に 癌 を つ く る タ バ コ の 害 を 示 唆 して い る も の と思 わ れ る が 、 そ の よ うな 含 み を 巧 妙 に 交 え つ つ 、水 着 の カ ル ロ ッ タ と鎖 か た び ら

を っ け た 英 仏 戦 争 の 戦 士 の イ メ ー ジ を 、直 喩 に よ っ て 結 び っ け て い る の で あ る 。 戦 い の 時 代 は 下 る。 ば ら戦 争 の激 戦 地 ボ ズ ワ ー ス(:・ ◎rthField)が 次 の ソ ネ ッ トの6番 の 副 題 で 、 リ チ ャー ド3世 が ヘ ン リー ・チ ュ ー ダ ー の 軍 を 攻 め 立 て な が ら、 ウ ィ リア ム ・ス タ ン レー の 裏 切 りに よ っ て リチ ャ ー ドが 敗 れ る件 が 語 られ る。 こ こで マ ル ド ゥー ン が 注 霞す る の は 、

Lessclearwashow he'dma簸 ε}ged工 主ott◎cracktheshe慧 ofthepigeoneggthesizeofcyst

he'dheldsocloseinsidehisshirt.[峯).8,慧,11〜14]

(はっ き り しな いの は/彼 が シ ャ ツの 中に しっか り抱 いて いた/嚢 腫 の 大 き さの鳩 の卵 の殻 が/ど うして割 れ ない で済ん だか であ る。)

胸 に 抱 え て い た 鳩 の 卵 が 割 れ な か っ た 逸 話 で 、鳩 の 卵 を 「 嚢 腫 の 大 き さ の 」(the

sizeofcyst)と 表 現 す る の は 、カ ル ロ ッタ の 腫 瘍 へ の 語 り手 の 強 迫 観 念 を.一り

だ して い る。 そ れ は 、 次 の7番BlackwaterFartの 冒 頭 で 、"AsIhadheld

Carlottaclose/thatnight..."と 、同 じ"holdclose"の フ レー ズ を 軸 に 、 カ

ル ロ ッタ の 話 題 へ と繋 げ て い く こ とか ら も分 か る 。そ し て こ の ソネ ッ トの 副 題

に あ るBlackwaterは 、 マ ル ド ゥー ン の 故 郷 ア ー マ ー(A撒 鰭h)に あ る 川 名

で 、.・ 年 に イ ギ リス と ア イ ル ラ ン ドの 戦 地 とな っ た 場 所 で あ る が 、 こ こ で

は む しろ 、 ス ン ニ ・ トラ イ ア ン グル(イ ラ ク の ス ン ニ 派 が 多 く住 む 、 バ グ ダ ッ

ド北 西 部 の 地 域 。 サ ダ ム ・フ セ イ ン の 地 盤 を 含 み 、 ア メ リカ の 軍 事 標 的 とな っ

た)、 ガ ソ リ ン の 値 段 、 テ キ サ コ(ア メ リカ の 石 油 会 社 の 名)、 テ ィ グ リス 川 、

(15)

104マ ル ド ゥ ー ン の 馬 を 巡 る 表 象

ブ ッ シ ュ 、 と い っ た 言 葉 が 出 て くる こ とか ら、 ア メ リカ の 対 イ ラ ク 戦 争 や 中 東 石 油 戦 略 へ の 風 刺 へ と話 が 転 換 して い る よ うで あ る。

"Why"

,Carlottawondered,"theHouseofTaz'?

Mightithavetodowiththegross impartsofcrudeoilBushwillcomecleanan

・mywhentheTigrisc・mesclean?"[P.9,m1〜14]

(カル ロ ッタは 疑 ったrな ぜ タール 社 なの?/テ ィグ リス川 が きれ いに な るま で は/ブ ッシュ も 白状 しない原 油の総 輸入 量 に/関 係 が あ るのか しら」)

Blackwatexを 文 字 通 り 「 黒 い 川Jと とれ ば 、 最 後 の 行 と の 関 連 で 、 文 字 通 り イ ラ ク 戦 争 の 戦 禍 を 受 け 、黒 く汚 染 され た テ ィ グ リス 川 を 指 して い る と想 像 で き る。 ま た 、"c◎meclean"を 「 本 音 を 吐 く」 と ド(川が)き れ い に な る 」 に か け た 洒 落 に は 、背 後 に あ る ブ ッ シ ュ の 腹 黒 い 石 油 戦 略 へ の 当 て こす りも 読 み 取 れ よ う。 後 で 出 て く る"・ …‑ofTartan"(タ ー タ ンチ ェ ッ クの 服 を販 売 す る 商 社 名)と"HaaseofTai'と の 混 同 や 、「タ ー ルJと 「 黒 い 川 」の 連 想 、ま た 「タ ー ル 」に つ い て は 、こ の 詩 集の 他 所(p.92)に 出 て く るJackTar(水 夫 の 通 称 。 tarpaulinと い う、 タ ー ル 塗 り防 水 布 の服 を 身 に 着 け て い た こ とか ら)と の 関 連 も あ り 、 マ ル ド ゥー ン が 様 々 な 修 辞 的 工 夫 を 凝 ら して い る こ とが 分 か る。

次 の8番rベ ン バ ー ブ 」(i'・ ・)、9番 「 ボ イ ン 」(B◎yne)に は 、 再 び 馬 が 登 場 す る。 ベ ンバ ー ブ の 戦 い は1646年 に 起 き た ア イ ル ラ ン ドと ス コ ッ ト

ラ ン ドの 戦 い の 地 で あ る が 、 忍 び 返 し(chevaux‑de‑frise)⑥ に 突 撃 して 身 動

き が 取 れ な く な っ て し ま う馬 の 受 難 の エ ピ ソー ドに言 及 す る。一 方 の ボ イ ン川

の 戦 い は 、1690年 、 ウ ィ リア ム3世(オ レ ン ジ公 ウ ィ リア ム)が ジ ェ ー ム ズ

2世 と彼 の 復 位 を 支 持 す る カ ト リ ッ ク 勢 力 を 破 り 、そ の後 の イ ギ リス に よ る ア

イ ル ラ ン ド支 配 を 決 定 づ け た 戦 い の 地 で あ るが 、マ ル ドゥー ン が 注 目す る の は 、

そ う した ア イ ル ラ ン ド史 に お け る 有 名 な 関 心 事 で は な い。

(16)

Thebloodslickfromthehorseslaughter Icouldnolongerdisregard asCarlottasurfacedlikeharm.

Myputtingherthroughherpaces asshekickedandkickedagainstthetraces likeapackmulekickingfromayardarm

be景)reま もfbn,heeh歌w,i捻thed◎ckyard。 【p.11,1豆.1〜7]

(カル ロ ッタがパ ン種 の よ うに浮 か び上 が った とき/馬 の虐殺 に よって浮 か ぶ血 を/僕 は も う無視 で きな くな った。/僕 は彼 女 の能力 を試 して い たのだ 、 /埠 頭 で桁 端 を蹴 って/ヒ ヒー ン と悲鳴 をあ げて 落 ちて い く運搬 用 螺馬 の

よ うに、/彼 女 が引 き綱 を何回 も蹴 りの けて いた とき。)

こ こでは 、プール で何 回 も飛び 込み の練習 を し、水面 に浮 かび 上が るカル ロ ッ タが 、船 か ら海 に投 げ落 と され る際 に抵抗 す る 「 無風 帯」の馬 に ごで は騨馬) に喩 え られ て い る と解 釈 で き よ う。 そ して、 この ソネ ッ トに 「 ボイ ン」 とい う 副 題 が付 け られ た所 以 は と言 えば、

whereasthatvisionofamilk‑whitesteed drinkingfromatubofwater

andbreathinghard,breathingalittlehard, hadbarelysetoffanalarm.[p.ll,ll,11^‑14]

(一方 、乳 白色 の軍馬 が/桶 か ら水 を飲 み/息 も絶 え絶 えで あ る あの ヴィジ ョンが/警 鐘 を鳴 らす こ とはほ とん どなか った)

ボ イ ン 川 の 戦 い で ウ ィ リア ム3世 が 騎 乗 して い た の は 「白馬 」 と され て い る か

ら で あ る 。彼 が 白馬 に 乗 る エ ン ブ レ ム は 、 プ ロ テ ス タ ン ト側 が掲 げ る英 雄 的 な

図 像 と し て よ く知 られ て い る。 しか し こ こ に 出 て く る 白馬 は 、む しろ 戦 い に疲

(17)

106マ ル ド ゥー ン の 馬 を 巡 る 表 象

れ て 息 も 絶 え 絶 え に 水 を 飲 む 馬 で あ り、賢 頭 に 引 用 した マ ンハ ッタ ン の 馬 車 馬 に も 似 て 悲 哀 を誘 う。 こ こ で も馬 の 受 難 と い う ラ イ トモ テ ィー フ に 沿 う形 で 、 ウ ィ リア ム3世 の 白 馬 を 提 示 して い る の が 、マ ル ド ゥー ン の 工 夫 と言 え る。 そ

して 、 そ の よ うな 馬 が 警 鐘 を な らす こ とが な か っ た 、 とい うの は 極 め て 示 唆 的 で あ り、危 機 の 徴 候 に 誰 も気 づ か な い 憂 うべ き状 況 の 喩 え と捉 え る こ と が で き 、 ひ い て は 、苦 しみ に鈍 感 な 現 代 ア メ リカ 社 会 の 病 弊 を 、マ ル ドゥー ン が 苦 しむ 馬 の ヴ ィ ジ 鐸 ン に 託 し て 暗 示 して い る と も言 え る だ ろ う。

この 後 、10番 「 ブ レニ ム 」(Blenheim)に は 、 暗 く湿 っ た谷 間 の 中 、 「 空 荷 の 彼 女 の 軍 馬 」 を 追 っ て い く場 面 が あ る("asIfollowedherunladen/steed

throughadellsodarkanddank.̲")[p.12,H.2〜3]。 ス ペ イ ン 継 承 戦 争 で 最 も 有 名 な 「ブ レニ ム の 戦 い 」(17◎4年)が 行 わ れ た の は 、 ドイ ツ の バ ヴ ァ リ ア 地 方 、 ダ ニ ュー ブ 川 沿 い に あ る村 ブ レニ ム で あ っ た 。 こ の あ た りの 渓 谷 の 風 景 を 喚 起 して い る も の と想 像 で き る が 、場 面 は 転 換 し、祖 父 の 履 い て い た ウ ェ ー ダ ー(腰 ま で 達 す る 長 靴)を 彼 女 が 履 い て 、0厩erBanksで 魚 を獲 る シ ー ン が 出 て く る 。OuterBanksと は 、ア メ リカ の ノー ス カ ロ ラ イ ナ の 海 岸 沿 い に連 な る 島 々 で 、 リゾ ー ト地 で あ る が 、 こ れ ら の 日々 を彼 女 の 祖 父 は 、 「これ ら凪 の 数 週 間 、 数 ヶ 月 が/蘇 っ て く る … 」("Thoseweeksandm◎nthsinthe

doldrums/comingba(激̲)凪8〜91と 回 想 す る。「 凪 」(doldrums)は"H◎rse Latitudes"の 縁 語 と も 言 え る キ ー ワー ドで あ り、 一唄寺的 な 平 穏 を表 して い る が 、 そ の 後 に く る 苛 酷 な 試 練 の と き を 予 感 させ る 、 嵐 の 前 の 静 け さで も あ る 。

そ のr嵐 」 は 、 カ ル ロ ッ タ に と っ て 、腫 瘍 の 検 査 お よ び 手 術 とい う形 で や っ て く る 。11BunkerBill(マ サ チ ュー セ ッ ツ の 地 名 で 、1775年 の ア メ リカ 独 立 戦 争 中 、イ ギ リス 軍 が 革 命 軍 に 勝 利 を収 め た 戦 い の 地)で 、 ま ず カ ル ロ ッ タ が 「 僕 」 を 抱 き しめ 、 「 血 を 流 す 僕 の 大 枝 に 、 焼 き鰻 の よ うな 餌 を つ け る 、 ヒ

ヒー ン。」(̀̀.̲hermouthacauter/SittOmybleedingbough,heehaw.")

[p.13,11.3〜4]と い っ た 、い さ さか 狂 気 じみ た 癒 しの 場 面 が く る。heehawは 、

た び た び 合 い の 手 の よ うに 挿 入 され る 螺 馬 の 鳴 き 声 で 、馬 の テ ー マ を想 起 させ

つ つ 、 次 の行 のsaw(の こ ぎ り)と 脚 韻 を踏 む 。 こ の の こ ぎ りを 、 彼 女 の 祖 父

が 殺 菌 消 毒 して い る シ ー ン が 挿 入 され 、止 血 の た め の 助 手 が 脇 に 立 っ て い る の

(18)

だ が 、 こ の 恐 怖 映 画 の よ う な シ ー ン が 意 味 す る と こ ろ は 、 最 後 の 「ビル マ 」 (ilfi)で 明 か され る 。 先 取 りす る こ と に な る が 、..rビ ル マ 」 か ら 引 用 し よ う。

Hergrandfather'sjabwastocut thevocalcardsofeachpackmule withasingle,swiftexcision, ahelperstandingbytowrench

themule'sheadfiercelytoonesideanddrench

itwithhoochhe'dkeptsinceProhibition.[p.21,ll.1^‑6]

(彼女 の祖 父 の仕 事は/一 頭 ず つ運 搬用iaの 声帯 を/1回 で す ばや く切除 す るこ と/傍 らに は助 手 が立 ち/騨 馬 の首 を激 しく一方 向 に捻 じって/禁 酒 法の 頃か らとってお い た密 造酒 に浸す ことだ った。)

第 二 次 大 戦 中1944年 の ビル マ 戦 線 で 、 英 国 突 撃 隊 は グ ラ イ ダー で ビル マ 山 中 に 降 り立 ち 、バ ラ ン ス 感 覚 に す ぐれ た 運 搬 用 螺 馬 と共 に 行 軍 した が 、騨 馬 が 鳴 い て 日本 軍 に 居 場 所 を 悟 られ な い よ う、螺 馬 の 声 帯 を 切 除 す る とい う残 酷 な 行 為 を行 っ て い た(8)。カ ルRッ タ の祖 父 が そ れ に 関 わ っ て い た こ とが 、 こ の 最 後 の 詩 で 明 か され る の で あ る。11番Bu櫨erHillで 、 ビル マ 戦 線 で の 騨 馬 の 受 難 の エ ピ ソー ドが 先 取 り され て い る の で あ る が 、最 後 の5行 で は カル ロ ッ タ に 話 が 戻 る。

She'dmeetthebreast‑highparapet withthenonchalance,thenofuckingsweat ofaslightlyskankyschoolmarm

thoughthesurgeonwaspreparingtoganch

herLikeIrVhat's‑his‑face'sDaughter.[p.13,ll.10^‑141

(19)

1◎8マ ル ド ゥー ン の 馬 を 巡 る 表 象

(彼女 はち ょっ と不快 な女 教 師の よ うに/暢 気 に汗一 つ かかず/胸 壁 に向 か お うとしていた 、/外 科 医が 、何 とか さん の娘 の よ うに、彼 女 を/突 き刺す 準 備 を していた に もかか わ らず)

と 、戦 い で の カ ル ロ ッ タ の 平 静 さ を 強 調 しっ つ 、戦 争 で カ ル ロ ッ タ に 迫 る 危 機 の 喩 え を 用 い て 、彼 女 の 外 科 手 術 の 準 備 が 進 め られ て い る こ とを 匂 わ せ て い る 。

そ して 次 の12番Brandywine以 降 、 病 院 で の カ ル ロ ッ タ の様 子 が 語 られ る の で あ る が 、 そ の 手 法 に 注 霞 した い 。

IcrouchedinmyownLittleEase bythepoolattheVanderbilt whereCarlottacrouched,sputter‑sput, justasshehadinthescanner whenthenurse,keensightedasaTanner,

pickedoutatumorlikearabbitscut ondarkground.Itwasasifafinesilt, whitesandorsilicate,hadclogged hersnorkel,hergoggleshadfogged, andCarlottasurfacedlikefloc tobeskimmedoffsomegreatcast‑ironpot asgarbleisskimmedoff,orlees

painstakinglydrainedbyturningsandtilts framaman・sizebarrelorbutt.[p.14,双.1〜14]

(僕 は ヴ ァ ン ダ ー ビル トの プ ー ル サ イ ドに あ る/自 分 の 監 房 で しゃ が ん で い た が/彼 女 はや は り ヴ ァ ン ダ ー ビル ト病 院 で ぶ つ ぶ つ 言 い な が ら し ゃ が ん で い た/ち ょ う ど そ の と き 、彼 女 の ス キ ャ ン検 査 中/ハ ヤ ブ サ び)よ うに 目 ざ と い 看 護 士 が/黒 い 地 面 上 の 兎 の 尻 尾 の よ うな 腫 瘍 を/見 つ け 出 して い た。

ま る で 、細 か い 沈 泥 か/白 い砂 か 珪 酸 塩 が/ス ノ ー ケ ル に詰 ま り、/ゴ ー グ

(20)

ル が曇 って しま ったか の よ うに/カ ル ロ ッタは、鋳鉄 の大 鍋か ら掬 い とるべ き/灰 汁の よ うに水面 に浮 かん で きた/不 純物 が掬 い と られ る よ うに、/特 大 の酒樽 を回 し傾 けて/苦 心 してぶ ど う酒 の澤 が排 出 され る よ うに。)

す で に 「 ボ イ ン 」 に お い て 、 カ ル ロ ッ タ が パ ン種 の よ う に 水 面 に 浮 か び 上 が る シ0ン へ の 言 及 が あ っ た が 、 こ こ で は カ ル ロ ッ タ の 腫 瘍 発 見 の 瞬 間 と、潜 水 し て い た カ ル ロ ッ タ が 溺 れ そ う に な っ て 水 面 に 浮 か ん で く る シ ョ ッ ト とが 結 び つ け られ て い る。 そ して 、 水 中 で 溺 れ るカ ル ロ ッ タ の イ メー ジ に 、 「 無 風 帯 」 の 海 に 投 げ 込 ま れ 、 水 面 で 苦 しむ 馬 の 残 像 が 重 な り 、scut‐silt‐sand‐

silicate、C1◎駆ed‑goggles《bgged、Carlotta‐flot‐patと い う中 間 韻 の リズ ミ カ ル な 連 鎖 が 、異 様 な 切 迫 感 を 読 者 に 伝 え 、シ ョ ッ トを 繋 い で 意 味 を繰 り出 す 映 画 の モ ン タ ー ジ ュ の よ うな 特 殊 効 果 を 上 げ て い る と言 え る だ ろ う。カ ル ロ ッ タ の 水 着 姿 が 何 回 も挿 入 され て い た の は 、 こ の シ ョ ッ トを導 く た め で 、 ま さ に こ こ は 連 作 中 の ク ラ イ マ ッ ク ス で あ る 。 ち な み に 副 題 のBrandywineは 、 1777年 に ア メ リカ 独 立 戦 争 の 舞 台 とな っ た 川 名 で あ る が 、こ こ で は 文 字 通 り、

詩 の 後 半 に 出 て く る酒 樽 の イ メ ー ジ か ら、ブ ラ ン デ ー 、 ワ イ ン との 語 呂合 わ せ が 隠 され て い る こ と が 分 か る。 これ も実 に マ ル ドゥー ン ら しい ア イ デ ア で あ る。

次 の 娼 番Bad珪Ke・Sefaiで は 、1857年 の イ ン ド大 反 乱(セ ポ イ の 反 乱) で 、 イ ギ リ ス 軍 が 武 器 に 動 物 の 脂 を 塗 っ て 滑 りを よ く して い た とい う史 実 に 、

カ ル ロ ッ タ の 祖 父 が 、カ ル ロ ッ タ の 英 語 の 語 法 の 間 違 い を 正 す(英 語 でu◎oth

◎ver)エ ピ ソー ドを 、ha澱 一hamme獅gram搬arの 韻 に よ っ て 結 び つ け て い る 。("̲theBritishploy/ofgreasingwithhamthehammer/arsm◎othing

overCarlotta'sgrammar:"[p.15,11.9〜11]「 ハ ム で ハ ン マ ー グ)滑 りを よ く し

グ'/":̲

た/英 国 式 作 戦 、/あ る い は カ ル ロ ッ タ の 文 法 を 直 し た こ と 。」)

iit・Run(1861年 、 南 北 戦 争)で は 、 「ブ レ ニ ムJの 谷 間 の シ ー ン に 似 て 、 「僕 」 が 馬 に 乗 っ た カ ル ロ ッ タ の 後 を 追 っ て い く シ ー ン が 夢 想 さ れ る 。 僕 は 彼 女 の 血 と 汗 の に お い 」 を 愛 し た が 、 彼 女 は ま る で 悪 夢 の よ う に を ア ク ア ラ ン グ の よ う に 担 い で い る 」(̲h◎rsedung/Carlottashouldered

likea盈Aqua・L鷲 臓g)[p.16,Pp.4〜5]。 こ の 場 面 も 、dung‐Aqua‑Lungの

(21)

110マ ル ド ゥー ン の 馬 を 巡 る 表 象

韻 に よ っ て 、馬 と カ ル ロ ッ タ を モ ン タ ー ジ ュ 風 に 結 び つ け る 意 図 が 窺 わ れ よ う。

さ ら に 彼 女 は 「し っ と り と 湿 っ た 谷 間 に 僕 を 導 き 、/タ ー タ ン 社 の 防 水 布 を 広 げJラ ブ シ ー ン が 提 示 さ れ る が 、 こ こ で も 戦 い の 比 喩 と馬 の 足 跡 の 追 跡 の 喩 え を 用 い て 、r僕 は そ よ と も 動 か ぬ サ ン ザ シ の 中 を 覗 い た/そ の 茂 み は 砂 利 坑 の 両 側 に ほ ぼ 完 壁 に は ま っ て い た/そ こ で 彼 女 と 僕 は 、 お 互 い を/う ま く 出 し 抜 こ う と試 み 、僕 は 彼 女 の 泉 門 に あ る 蹄/(あ る い は 蹄 鉄 の 跡)を 辿 っ て い っ た 。」

("...lstaredthroughunruffledthorns/thatwereanalmostperfectfitto eachsideofthegravelpit/wheresheandI'dtriedtooutflank/eachother, Itracedthemark◎fahoof,/(◎fhorseshoe)inherfc)ntanelle.")[11.9〜14]と

表 現 す る 。 セ ク シ ャ ル な 暗 示 は 、 次 の15番Bmnkh◎rstspruitへ と 続 き 、

Itracedtheage‑oldtraduction ofastreamthroughathornthicket

asagushfr◎ 買1afar雛 昭ale.

Ske鑓 難gtα ゴ8Daughter.Skeffz'ngton.[P.17,11ユ 〜4】

「 僕Jはrサ ン ザ シ の 茂 み を抜 け/フ ァ ー ジ ン ゲ ー ル か らの 噴射 の よ うな 川 の /古 い 道 筋 を 辿 っ て い く」。 しか し 、 セ ク シ ャ ル な 暗 示 で あ る と 同 時 に 、 farthingale(腰 回 り に 張 り輪 を 入 れ て 広 げ た ス カ ー ト)か らSkeffingtan's Daughter(Scavenger'sDaughterと し て も知 られ る 、16世 紀 イ ギ リス の 拷 問 具 。 身 体 か ら血 が 流 れ る ま で 鉄 の 輪 で 人 を 締 め 上 げ る)へ の 連 想 は 、 カ ル ロ ッ タ が 手 術 で 身 体 に 器 具 を は め られ 、 血 を 流 し、 痛 み に 耐 え る様 を 想 像 させ る 。 ち な み に 、Skeffington'sDaughterは 、 「ブ レニ ム 」 の 最 後 に で て く る"the maidennameofthatIronMaiden/onwhichhewasdrawingablank"[p.12,

11.13〜14](彼 が 思 い 出せ な か っ た/あ の 鉄 の 処 女 の 旧 姓)、 お よ び 「 バ ン カ ー ヒル 」 の 最 終 行 の"What's‑his‑face'sDaughter"(何 とか さん の 娘 〉 と い う部 分 に 呼 応 し、よ うや く拷 問 具 の 名 字 を思 い 出 した と い う対 応 関係 に な っ て い る 。

さ らに 場 面 は 転 換 し、rqた ち 」 は 線 路 の 間 の 待 避 線 に横 た わ り、 そ こ か ら再

び 水 を飲 む 「自馬 」 を 見 る の で あ る が 、 そ の 馬 は 「 鉄 輪 の 桶 」 か ら 水 を 飲 み 、

(22)

「 チ ュ ー バ の よ うに 鼻 を 鳴 ら して い た 。」("todrinkfromaniron・h◎ ◎pedtub /withthesnore‑sn◎rt◎fatuba:')[p.17,11.9‑10]そ して 、 「 彼 の 目隠 し と腹 帯 は ス キ ュ ー バ と言 っ た/一 方 彼 の 吸 引 が 突 然 で き な く な っ た の は/ポ ン プ の バ ル ブ が 故 障 す べ く して 故 障 した か ら と/カ ル ロ ッ タ に は分 か っ て い た 。」

Hiswま 醒ζeごsa難dbellyba鍛dsaidscuba 脚hilehissuddenloss◎f8蟻c乞i◎

Carlottaknew斑ea揃ap職 搬 ρwh◎sec葺ckeも's 魚iledi簸 もhewayaclicketfa丑s.[p.17,11.11〜14】

マ ル ドウー ン はtub‐tuba‐scuba‐sudden‐suctionと 、 脚 韻 、 頭 韻 に よ っ て 綴 りを ず ら し 、単 語 を 繋 げ て い く得 意 芸 を 披 露 す る 。 そ の 中 で 、水 を 飲 む 馬 が 窒 慰 す る シ ョ ッ ト、 「無 風 帯 」 で 溺 れ る 馬 の シ 謎 ッ ト、 ス キ ュー バ ダ イ ビ ン グ の ポ ン プ が 詰 ま り、カ ル ロ ッタ が 溺 れ そ うに な る シ ョ ッ ト、彼 女 の 手 術 中 に 、 吸 引 器 が 故 障 す る ア ク シ デ ン トの 映 像 を 、数 行 の 中 で 鮮 や か に 読 者 の 脳 裏 に刻 み つ け て い る。

16番Basra(第 一 次 大 戦 、 英 国 と トル コ が 戦 った イ ラ ク の 地 名)で は 、 カ ル ロ ッタ の祖 父 が カ ル ロ ッ タ に 、英 語 の 活 用 や 語 形 変 化 な ど を厳 し く叩 き こ も う とす る が 、 な か な か 覚 え られ な い 。 こ れ は 、祖 父 が カ ル ロ ッタ の 文 法 的 間 違 い を正 す とい うテ ー マ の 一 環 で 、マ ル ド ゥー ン 自身 の 言 葉 へ の こ だ わ りを 反 映 して い る。次 の17Bazentin(第 一 次 大 戦 、 ソ ン ム の 戦 い の 戦 地 の 一 つ)に も 、 カ ル ロ ッ タ が 手 帳 に"Dust?Fust?MusG?"と 言 葉 を 書 き 留 め 、 正 しい 言 葉 を覚 え よ う とす る 件 りが あ るが 、 次 の 行 に 正 解 のrustを 置 い て お く と い う

マ ル ド ゥー ン ら しい 趣 向 も あ る("The(セagoonnonplussed/byhischarger takingtherust「 重 騎 兵 は 馬 が 進 ま な くな り/途 方 に くれ て しま っ たD。

18番Bersheめaの 後 半 に は カル ロ ッ タ の 祖 父 が 再 登 場 し 、運 搬 用 螺 馬 を ゴ ム

マ ッ トの 所 に連 れ て 行 っ て 、仕 事 に か か る 場 面 が あ る。 そ の 仕 事 とは 、 前 述 し

た よ うに 、ビル マ 戦 線 で 螺 馬 の 声 帯 を 切 除 して い た仕 事 で 、最 後 の 詩rビ ル マJ

で そ れ が 語 られ る 。憩4ペ ー ジ に 引 用 した 箇 所 に続 く最 後 の 部 分 を 見 て お こ う。

(23)

112マ ル ド ゥー ン の 馬 を 巡 る 表 象

"Why

,"Carlottawondered,"thatfearsometool?

Wasitforfearthemulesmightbray andgivetheirpositionaway?"

AtwhichIseehimthumbtheshade asifhewereoncemoretestingablade andhearthetwofoldsnappingshut

ofhisfourfold,brassedgedcarpenter'srule

"Andgiveawaytheirposition ."{p21,ll.7^‑14]

(カル ロ ッタは疑 っ た 「 なぜ 、 あん な恐 ろ しい道 具 を使 った の?/騨 馬 が鳴 い て/位 置 をバ レて しまわ ない よ うに?」/そ れ を闘い た彼 がブ ライ ン ドを 摺 で押 し開 け るのが 見 えた/ま るで も う一度 刃 を試 す か の よ うに/そ して 四 つ折 りで縁 が真 鍮 の 大工 用定 規 を彼 が ピシ ッとこつ 折 りにす る音 が 聞 こ

えた。/ザ 位 置 をバ ラ して しま わな い よ うに」)

カル ロ ッ タ は 、 声 帯 を 切 られ た 螺 馬 の エ ピ ソー ドに 同情 を示 し 、祖 父 を非 難 す る が 、 祖 父 は 、 厳 しい 体 罰 を 与 え そ うな 勢 い で 、 彼 女 の 文 法 を 正 す 。 彼 女 が 、 傷 つ い た 螺 馬 に 同 情 を 示 す の は 、腫 瘍 切 除 の 手 術 を 受 け た 彼 女 に と っ て 、他 人 事 と は 思 え な い か らで あ る 。 声 を 失 い 、 居 場 所 を 否 定 され た 動 物 、 これ は 、 ビ ル マ 戦 の 史 実 で あ る と同 時 に 、マ ル ドゥー ン が マ ンハ ッ タ ン で馬 車 馬 を 見 た と き の シ ョ ッ ク と 、妹 を 癌 で 失 っ た 悲 しみ が 複 合 的 に 作 り出 し た表 象 で あ る と言 え る だ ろ う。 な お 、 カ ル ロ ッ タ の 運 命 に つ い て は 最 後 ま で 明 示 さ れ な い が 、彼 女 の 祖 父 に よ る 文 法 の 訂 正 で 、 こ の 詩 を 締 め く く る とい う曖 昧 な ラ ス トは 、 い か に も言 葉 に と りつ か れ た マ ル ドゥー ン にふ さ わ しい 。

以 上 、MorseLatitudes所 収 の 詩 を 、表 題 作 を 中 心 に 分 析 し て き た 。 ま と め

る と 、 カル ロ ッ タ が 登 場 す る断 片 的 シー ン 、 無 風 帯 に お け る馬 の 受 難 の 表 象 、

そ して 歴 史 上 の 様 々 な 戦 い の 揚 面 、 と い う3つ の 要 素 が 、主 と して 韻 や 語 呂含

わ せ や 言 い 間 違 い とい っ た 連 想 を 媒 介 に 、独 創 的 に 結 合 ・連 鎖 し、 夢 の 中 あ る

(24)

い は 映 画 の 中 で イ メ ー ジ が 駆 け巡 る よ うに 、 詩 行 が 駆 け 巡 る 、 と い うの が 、

"HorseLatitudes"の 特 長 と言 え る だ ろ う

。 そ して 、 嚥 風 帯 の 馬 」 の ア イ デ ア を 元 に した 様 々 なr馬 」 の 表 象 が 、 詩 集 全 体 に 散 り ば め られ て い る。 そ の よ うな 特 長 に 目 を 奪 わ れ る と同 時 に 、マ ル ド ウ謄 ン が 詩 集 の 随 所 に 隠 した 知 的 な 言 語 ゲ ー ム の 謎 解 き を 、 心 ゆ くま で 楽 しむ こ とが で き る 。 そ の 点 こ そ 、 飾 鷹 Latitudesと い う詩 集 の 魅 力 で あ る と、 私 は 思 う。

本 稿 は 、2007年1◎ 月 に1ASILJAPAN大 会 の シ ン ポ ジ ウ ム"UlsterP(>8t$"

で 口 頭 発 表 し た 内 容 の 一 部 を 、 大 幅 に 加 筆 、 発 展 させ た 論 考 で あ る 。 (1)PaulMuldo◎n

,Horselatitudes(#・ ◎n:Faber&Faber,2006).以 下 詩 の 引 用 で ペ ー ジ 数 、 行 数 を 掲 げ て あ る の は 、 こ の テ ク ス トか ら で あ る 。 (2)「 馬 」 の 画 家 と し て 知 ら れ、 馬 を 題 材 に し た 絵 画 を 多 数 残 し て い る 。

(3>P涕 β αZめ擬刀

,Autumn2006,Number210(PoetryB◎okSociety),p.5.

④E .猛sもy簸EvansIrishFolkWays(・ ◎i1:R◎utledge ,1957),p.270参 照 。

㈲ 正 誤 表 を 詩 に す る マ ル ド ゥ ー ン の 詩 法 に つ い て は

、詩 集 砺 α998)所 収 の 詩"Errata"、 お よ び 拙 論 咬 差 す る テ ク ス トーマ ル ド ゥー ン の 詩 集Hayに お け る 回 帰 と展 開 」(『人 文 学 報 』第321号 、20◎1年 、1・44頁 〉、rマ ル ド ゥ ー ン の 境 界 を 巡 る 表 象 」(『 人 文 学 報 』 第386号 、2007年 、23・42頁)参 照 。

cs>PBS .Bulletin,p.5."...thedeathofmysisterfromovariancancer,the

same(liseasethattookmymotherin1974:'彼 の 母 も 卵 巣 癌 で 亡 く な っ た 。 (7)chevaux‑de‑frise(忍 び 返 し)は

、 フ ラ ン ス 語 で"horsesofFriesland"「 リ ー ス ラ ン ド の 馬 」 を 意 味 す る 語 。

(8)RichardHolmes(ed .),The(oxfordCompanion頚o漁 狛 埋 茄 訪o町7(OUP, 2001)P.58,"animalsandthemilitary"の 項 に 言 及 が あ る 。

参照

関連したドキュメント

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

このうち、放 射化汚 染については 、放射 能レベルの比較的 高い原子炉 領域設備等を対象 に 時間的減衰を考慮す る。機器及び配管の

区部台地部の代表地点として練馬区練馬第1観測井における地盤変動の概 念図を図 3-2-2 に、これまでの地盤と地下水位の推移を図

すなわち、5 馬力(5PS、5HP の表示) 、あるいは 3 馬力(3PS、5HP の表示)に ついては、それぞれ 3.73kW、2.24kW

既往最大を 超える事象 への備え 既往最大