マネジエリアル商品学の本質
その他のタイトル The Methodology of Managerial Commodities (Warenkunde)
著者 小西 善雄
雑誌名 關西大學商學論集
巻 15
号 5‑6
ページ 480‑501
発行年 1971‑02‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00021166
156 ( 4 8 0 )
マネジェリアル商品学の本質
小 西 善 雄
商 品 学 の 基 礎
商品学は生産者から消費者に至る商品の全過程の研究を市場品質の研究を 中心として総合的に行なう一独立科学である。
種々な立場から商品を研究する学問は自然科学・社会科学・人文科学の各 分野にわたって多数存在する。それらの諸学問と商品学は同じでないことは 勿論であるが,商品学がある一つの立場を強調すればその立場の商品学が成 立する。すなわち商品学にはいろいろのアプローチの方法がある。例えばマ ーケティングの立場を強調するものはマーケティング的商品学であり,自然 科学的研究に重点を置けば自然科学的ないし鑑定論的商品学が成立し,同じ
ように経済学的商品学,消費科学的商品学その他の商品学が考えられる。
しかしながら,注意すべきことは,いかなる立場や種類の商品学といえど も,その中心的研究課題は商品の市場品質の究明にあるのである。もしも商 品学において市場品質の研究を行なわず単に商品の自然科学的研究やマーケ ティング研究,経済学的研究,消費科学的研究などの研究を行なう場合は,
それは自然科学そのものでありマーケティングそのものであり経済学そのも のであり消費科学そのものであり,決して商品学ではないのである。つまり 商品学と関連科学・隣接科学とは混同してはならないのである。以上のこと がらは商品学研究の基礎である。
市場品質の研究を中心とする商品学の種々なアプローチのなかでマーケテ ィソグ的商品学こそ現代の商品学の最も中心的なアプローチであると考えて いる。とりわけマネジ=))アル・マーケティソグのアプローチが重視される。
その理由ほ商品学が
1 8
世紀後半において商業学の中から生まれたという歴史(1)
をみても,また現代の商業学がマネジエリアル・マーケティングとして展開 されていることからみても,商品学の本質はマネジェリアル・マーケティン グアプローチにあるということができるであろう。以上のこともまた商品学 研究の基礎である。
このような商品学の基礎の上に立って,本稿においてはマネジエリアル商 品学を展開しようと試みる。
さて現代のマーケティングは商品の生産・流通・消費の全局面の種々な問 題を経営活動の遂行を中心として考究する。これに対して商品学は市場品質 の研究が中心となる。この中心的研究課題の相違にかかわらず,商品学とマ ーケティングは生産から消費に至る商品の総合的研究を領域とするゆえに共 通の研究領域をもつ極めて密接な関連科学である。多くの学問がそうである ように,商品学もその時代を背景として研究方法が変化する。現在のマネジ エリアル・マーケティングの時代における商品学は,社会科学および自然科 学の両分野の研究を総合的に導入し融合するところのいわゆるインクーディ
ップリナリー・アプローチ
( i n t e r d i s c i p l i n a r ya p p r o a c h )
として展開される。マ ーケティング的商品学とくにマネジニリアル商品学はマネジエリアル・マー ケティング研究に市場品質の概念を中心的研究課題として導入すること,ぁ るいほ市場品質の研究を中心とする商品学にマネジエリアル・マーケティソ グの研究方法を導入すること,のいずれかの方法によって成立する。マネジニリアル商品学は市場品質の研究を中心とするゆえに自然科学と社 会科学の境界科学(中間科学)である。マネジエリアル商品学ほ,今日の技 術革新とマネジエリアル・マーケティングの時代における経営および消費の 構造を合理化し豊かな社会と人々の福祉に貢献するために有用な示唆を与え る体系的商品学研究として,学問的にも社会的にも必要欠くべからざる重要 な一独立科学である。
いかなる種類の商品学においても商品学の中心的研究領域が確立され,さ
(1) "Warenkunde" o r "Warenlehre" developed o u t o f t h e s t u d y o f commerce.
In t h e l a t e 1 8 t h c e n t u r y Johann Beckmann, P r o f e s s o r a t t h e U n i v e r s i t y o f
G o t t i n g e n , e s t a b l i s h e d "Warenkunde" a s a s c i e n c e independent and a p a r t from
commerce.
158 ( 4 8 2 )
マネジニリアル商品学の本質(小西)らにそれに対する商品学独自の問題意識と観点からの研究が行なわれなけれ ばならない。さもなければ商品学と他の独立科学とを混同し商品学の独自性 が失われることになるであろう。
市 場 品 質
市場品質の概念を展開するに当ってまず一般的な品質概念から述べなけれ ばならない。
品質
( q u a l i t y ;Q u a l i t i i t )
とは,特定の用途に対する商品のもつ効用( u t i l i t y ; B r a u c h b a r k e i t )
有用性( u s e f u l n e s s ;N i i t z l i c h k e i t )
属性( A t t r i b u t e ;A t t r i b u t )
などを示す概念であって,使用価値の直接の現象形態である。
品質は自然科学的品質と社会科学的品質とに大別しうる。前者は第一次品 質,基本品質,主要品質,使用品質,自然的品質などとも呼ばれる。後者は デザイン,装飾,付加機能,知名度などの商品としての市場性を高める面の 品質であって,第二次品質,付加的品質,可変品質,主観品質,文化的品質 などとも呼ばれる。
商品の品質をさらに客観的に把握するためには,市場品質
( m a r k e tq u a l i t y ; Markt Q u a l i t i i t )
の概念が必要である。市場品質は生産者や商業者が商品の販 売を有利に導くために主張する品質でもなければ,消費者サイドに立って消 費者の一方的利益のために主張する品質でもない。市場品質は一方の立場に 偏しない科学的品質であり,生産・流通・消費の総合論理および自然科学的 品質と社会科学的品質との総合化によって評価せられる客観的品質をいう。すぐれた市場品質をもつ商品は最も多くの市場に受け入れられ且つ長期の ライフサイクルをもつ商品である。市場品質は現代の商品の最も正しい品質 であるといえる。
商業と商品との関係は,企業が商品の市場品質を深く研究して,商品生産 の合理化を計り,企業の長期安定化を期することにある。企業とは利潤の獲 得によって存在しうる一つの制度である。したがって企業の目的は顧客の創 造である。顧客の創造とは顧客の欲求に合致する商品を生産し有効需要を満 たすことにあるから,企業は商品の市場品質について認識を強く要請される
のであり,その優劣こそ企業の死命を制する最も重要な要因の一つである。
商品の市場品質は,技術革新,生産者や販売業者の資本力,広告,ザービ ス方法,景気変動,商品テスト,消費者のその商品に対するイメージ,その 他多くの要因によって影響を受ける。さらに商品の付加価値
( v a l u eadded by m a n u f a c t u r e )
の増大と価値分析( v a l u ea n a l y s i s )
は,市場品質を高め,企業の 利潤を増加せしめる有効な手段である。付加価値とは,商品の総売上高から原材料費・人件費・サービス費•生産 動力費・消耗品費・減価償却費などを差引いたものである。付加価値を多く
して商品の市場品質を向上させるためには,一次品質を一定にしてコストを 下げねばならない。この問題の研究が価値分析
( v a l u eA n a l y s i s o r v a l u e e n g i ‑ n e e r i n g , VA or VD)
であって1959
年にペンシルベニア大学でVE
のセミナー が開催されて以来急速に注目されてきた。V A
は,商品の一次品質(原材料の 材質,安全性,耐用年数,信頼性,確実性,特性などを含む),外観,魅力,消費者 の好みなどの商品としての主要機能を確実に保有しながら,しかも最低のコ ストで生産を行なうシステイマテイックな生産工学である。商 品 学 の 定 毅
商品学
( S c i e n c eo f M e r c h a n d i s e , Commodities; Warenkunde)
は総論と各論 とに分けられる。商品学総論の定維は,商品一般のもつ客観的な市場品質理論の研究を中心 として,生産者から消費者に至る商品の全過程の理論体系を,学問的な立場 と原理に基いて,研究し確立することである。
商品学各論の定義は,総論で確立された理論体系を個々の具体的商品の研 究に応用することである。即ち,個々の具体的商品の生産者から消費者にい たる全過程の運動法則を社会科学および自然科学の両面から体系的に解明し,
個々の具体的商品のもつ一般性と特殊性を明確にし,その商品の市場品質に 関して科学的方法
( s i e n t i f i cmethod; w i s e n s c h a f t l i c h Methode)
を適用して調査•分析・評価する総合的な研究体系である。
商品学と他の専門諸科学との関連ほ,上の商品学の定義にもとずいて次の
160 ( 4 8 4 )
マネジエリアル商品学の本質(小西)ごとくに明確にしうる。即ち,例えば,商品一般のもつ経済的抽象理論につ いて論じることは商品学本来の領域に属しない。それは経済学の領域に属す る問題であり,商品学の中心的研究対象ではない。また商品の部分領域の研 究,例えば,消費の立場に立つ研究は生活経済学
(homee c o n o m i c s ; W i r t s c h a f t a l s Leben)
,流通および経営の立場に立つ研究はマーケティング( m a r k e t i n g ; M a r k t a n a l y s e )
,生産技術と,経営工学の立場に立つ研究は生産工学( p r o d u c t e n g i n e e r i n g ; Produkt l n g e n i e u r w i s s e n s c h a f t )
として,それぞれ独立した専門科 学となっている。これらの専門諸科学は商品学の中心を構成することは決し'(2) ‑
てないのであるが,いずれも専門科学の立場から商品の或る局面の研究を行 なっているのであるから,これらの専門諸科学は商品学の関連科学であり,
その研究領域は商品学のそれと互に重複
( o v e r l a p ;Verdoppelung)
する。それ ゆえに,それらが学問的体系と原理に基いて商品学に導入され総合的に融合 されて商品の市場品質が究明されなければならない。商
品現代経済社会においてほ,多くの物資は一般市場で売買することを目的と して生産される。すなわち生産者の個人的使用のために生産されるのではな
(2) R e c e n t l y , some J a p a n e s e p r o f e s s o r s o f "Warenkunde" have been empha‑
s i z i n g t h a t " m e r c h a n g i s i n g " o r t h e "commodity approach" i n m a r k e t i n g , or t h e "commodity t h e o r y " i n economics i s t h e cen
叫c o n c e r no f "Warenkunde".
But I do n o t , t h i n k s o b e c a u s e m e r c h a n d i s i n g i s an i m p o r t a n t problem i n t h e f i e l d o f m a r k e t i n g , and t h e commodity approach i s one o f t h e ways o f s t u d y i n g m a r k e t i n g , and t h e commodity t h e o r y i n e c o n o m i c s i s t h e economics i t s e l f .
Concerning t h i s p o i n t , P r o f e s s o r Mitsuo Hara has s t a t e d i n h i s book "War‑
enkunde", a s f o l l o w s :
Merchandising o r ・ m a r k e t i n g and "Warenkunde" a r e d i f f e r e n t s c i e n c e s . There a r e some J a p a n e s e p r o f e s s o r s who i n s i s t t h a t m e r c h a n d i s i n g and "Warenkunde"
a r e t h e s a m e , i . e . , i n d e e d m e r c h a n d i s i n g i s a c e n t e r s u b j e c t o f "Warenkunde".
But s u c h i n s i s t e n c e i s e q u a l t o i n s i s t i n g , t h a t t h e c e n t e r s u b j e c t o f p h y s i c s and t h e c e n t e r s u b j e c t o f b i o l o g y a r e t h e s a m e . I t i s an e x c e s s i v e i n s i s t e n c e .
There a r e no fundamental d i v e r g e n c e s o f o p i n i o n between t h e v i e w s o f Dr.
Hara and my i n t e r p r e t a t i o n .
く,市場で交換のために財貨を生産する。このようにして生産された財貨や 物資が使用価値
( v a l u ei n u s e , Gebrauchswert)
および交換価値( v a l u ei n e x ‑ c h a n g e , Tauschwert)
を有し,商業の対象物として市場配給の過程に置かれるとき,これを商品
( m e r c h a n d i s e , c o m m o d i t y ;Ware)
という。現代の商品は最新の生産技術,商業(経営技術)および資本の相互結合によ って生産・販売される。この商品生産の三要素としての技術
(modemt e c h n i ‑ q u e s ; Techniken)
,商業(commerce;Handel)
,資本( c a p i t a l ;K a p i t a l )
の総和がよりすぐれている企業ほど,競争市場において優位を占めることができる。
生産技術水準は,労働者の技術的熟練度,生産機械設備の優秀度,.生産能力
(生産性)と生産規模,立地条件(土地)などの総合である。商業は,その中心 が販売力であり,これを左右するのはマーケティングである。資本は,その 大きさおよび質つまり自己資本と他人資本の割合が企業経営の状態を左右す
る。
現代社会の経済活動は商品の生産・流通・消費を基盤としており,極めて 多数の自主性を持った企業と家庭の総合体であり,それぞれの自由経済を原 則としている。社会主義社会における計画経済のもとでは企業や家庭の自主 的行動は著しく制限されているが.それでもなお,最近における利潤概念の 導入にみられるように,逐次,自由経済的方法が採用され,各人の自由が確 保される方向に改革が進められている。今や純粋な資本主義,純粋な社会主 義.は存在しないのであり,資本主義社会は社会主義の長所を,社会主義社 会は資本主義社会の長所を,それぞれ導入し新らしい形態の社会を発展せし めつつあるといえるであろう。これが即ち混合経済
(MixedEconomy)
である。今後の経済学や商業学や商品学の中心的研究課題ほ,この混合経済社会にお ける諸問題の究明にあると言える。
商品学が研究対象とする商品は,交換価値が主として実質にある実質的商 品に限られる。有価証券などのように交換価値をもち商取引の対象となって いても,それ自身が使用価値をもたないもの即ち交換価値が単に形式のみに ある形式的商品は商品学上の商品の範疇に入らない。これらの商品は有価証 券論という一独立科学として現在では研究されており,また使用価値をもつ
162
( 4 8 6 )
マネジニリアル商品学の本質(小西)ものでも土地,家屋.山林などの不動産.および骨董品のように実用価値以 外のものが高く評価されるものなども商品学では取扱わない。
商品が成立するためには,その前提として社会的分業が確立していること が必要である。製品は自給自足の時代から存在していたが,商品は社会的分 業として生産と消費が分離して以後の産物である。近代的な商品はその交換 の一方が貨幣であることを特質とし,とくに市場配給を支配的とする現段階 において成立し問題とされるのである。社会的分業は自然発生的(資本主義社 会)ないしは計画的(社会主義社会)に分化してきたが,前述の混合経済の現 状から両者はそれぞれの長所を導入した形態を取りつつある。社会的分業に よって労働技術と生産過程が専門化された現代の社会機構では,人々は衣食 住その他の必要な物資のほとんどを商品市場において購入する。商品市場は 商品売買とそのための商品の評価社会であって,商品の需要供給関係の評価 および使用価値を価格で評価することなどによって交換価値が定められる。
交換価値は価格で示されるが,その価格が品質に対して正しく適正なもの であるかどうかによって市場品質の優劣が決定される。正しい市場品質をも つ商品は.品質と価格のバランスが均衡している状態でなければならない。
品質についてはイザペル
Bウインゲート教授の,いわゆる S e l l i n gP o i n t s = Buying P o i n t sの概念が適用しうる。すなわち S u i t a b i l i t y ,D u r a b i l i t y , Ver‑
sa~lity, S t y l e , A t t r a c t i v e n e s s , Comfort, P r i d e of Ownership, Care r e q u i r e d
およびP r i c eが均衡していることが必要である。この均衡度が市場品質決定
要因として重要な意味をもつものである。商品の市場品質は個々の具体的商 品において決定される。そのために商品分類法によって商品を分類し考察し なければならない。商品は種々の基準によって分類することができる。例えば,第一次産業生 産品と第二次産業生産品。生産財と消費材。動物性商品,植物性商品,鉱物 性商品。無機質商品と有機質商品。地方商品,国内商品,国際商品。食料品,
衣料品,燃料品,金属,機械。最寄品
( c o n v e n i e n c e g o o d s )買回品 ( s h o p p i n g
g . )
専門品( s p e c i a l i t yg . )
。 有 標 品( t r a d e m a r ko r l a b e l g . )
と無標品。生産物 差別化( p r o d u c td i f f e r e n t i a t i o n )の有無。付加価値の高い商品と低い商品。商
品のライフサイクルから導入期,成長期,成熟期,衰退期にある商品。弾力 的商品と非弾力的商品。自由競争商品,寡占商品,独占商品。
商品学各論は商品学総論で確立された理論体系を,個々の具体的商品の研 究に応用することである。すなわち.いずれかの分類基準に従って分類され た商品別に,その生産者から消費者にいたる全過程の運動法則を体系的に解 明し,個々の具体的商品のもつ一般性と特殊性を明確にし,科学的方法を適 用して市場品質を調査,分析,評価するのである。
商 品 の 価 格
市場品質を決定する要因の最も重要なものの一つに,前述のように商品の 品質と価格とを対比してその均衡度を測定し評価決定する方法がある。すな わち品質に比して高すぎる商品は消費者の福祉のためにマイナスの要因とし て作用するから市場品質は低い。これと反対に品質に比して価格が不当に安 い商品は生産者に損失をもたらすから,これも市場品質が低い。高すぎる商 品は企業に不当な利益を与え,消費者は不利益をこうむる。安すぎる商品は 生産者に苦しみを与える。現在の多くの商品の価格は,このように適正でな いものが極めて多い。こうした不適正な商品の価格はいかにして決定される のであるか。次にこれを概観する必要がある。
一般に生産者や商業者が,商品の価格を決定する方法として,不完全競争
( i m p e r f e c t c o m p e t i t i o n )
の場合には,競争関係にある製品の価格との比較にお いて価格を決定する方法,および原価を基礎として決定する方法の2
種の原 理にもとづいている。この基本原則のもとに,高利少数販売主義や独占価格 による高価方式,簿利多売主義の低売価方式,独占的売手がしばしば採用す る価格差別化( p r i c ed i s c r i m n a t i o n ; P r e i s d i f f e r e n z i e r u n g
=同じ商品を異なった買 手に異なった価格で販売すること), 卸・小売商の乱売を規制するためメーカー が卸・小売商の価格と利幅を定める再阪売価格維持( r e s a l ep r i c e maintenance)
などの方法によって価格が定められる。これに対して完全競争
( p e r f e c tc o m p e t i t i o n )
の場合には,全く同質的な商品 の売手および買手がともに多数であり,その個々の規模も市場における取引164
( 4 8 8 )
マネジニリアル商品学の本質(小西)高全体から見て無視しうるほどに少ないものであるから,売手および買手は その商品の価格を自分で決定することはできず,たまたまその市場に成立す る価格,すなわち市場価格を所与としてうけとらざるをえない。つまり
P r i c e t a k e r
としてもっばら行動する状態である。商品の価格ほ,競争価格および独占価格のいずれかに属する。完全競争は その一方の極であり,完全独占は他方の極である。競争および独占の程度に よって一様ではないが,競争価格も独占価格も価格機構の作用によって価格 が定まる。すなわち,需要曲線と供給曲線との交点において価格が定まる。
完全競争とは,前述のように,全く同質的な商品の売手および買手がとも に多数の場合であるので,各売手や買手は所与の市場価格において最大の経 済的効果を収めるよう需給量を調節せざるをえない。したがって完全競争の 場合には,―市場または一産業としての需要曲線は一般的な右下りのもので あるが,各個人ないし個別企業の需要曲線は完全にフラットなものである。
つまり各々の売手および買手は一定の市場価格でどれほど多くの数彙をも 売り,または買うことができるのだから,その売り,または買う商品にたい する需要または供給の弾力性
( e l a s t i c i t y )
が無限に大きい。これに対して完全独占
( p e r f e c tmonopoly)
は,―市場にただ一人の売手な いし買手しか存在せず,その一人が一市場の取引量の全部を独占すること,競争商品あるいは代替商品が全く存在しないこと,新らしい売手や買手がこ の市場に全く参加できないこと,の条件が満たされるときに成立する。した がって完全独占の売手や買手は商品の価格に対して絶対的な支配力をもち,
いわゆる
P r i c emaker
として行動する。しかし完全独占は実際上極めてまれ なケースであって,通常は独占企業の独占力は完全ではない。例えば電力会 社は石油やガスとの競争に,鉄道会社ほバスや航空輸送との競争に,また政 府の統制や世論や消費者運動によっても独占力は制限される。またどれほど 完全な独占力をもつ売手または買手も,その売るまたは買う商品の価格変化 に対する需要または供給の弾力性は決して零にはならない。たとえば,独占 企業の価格引下げはより低い所得層の需要を喚起しうること,および独占企 業がしばしば採用する価格差別化は,独占企業の商品需要が完全に非弾力的なものではないことを物語るものである。すなわち,完全競争での個々の売 手の需要曲線またほ買手の供給曲線はフラットであるが,独占の場合は,完 全な独占といえども,需要曲線も供給曲線も垂直というわけではない。
さて,現代の経済機構が一方の極である完全競争でもなく,また実際上極 めてまれな他方の極としての完全独占でもなく,その中間に位置する独占的 競争
( m o n o p o l i s t i cc o m p e t i t i o n )
ないし寡占( o l i g o p o l y )
による競争状態にある ことは殆んど疑う余地がない。(不完全競争は完全独占を含むが,独占的競争は完 全独占を含まない)。 しかしながら若千の特定商品の場合には完全競争に極め て近い競争状態が見出される。例えば, じゃがいも,ハンバーガー,七面鳥,にわとりなどの産業は完全 競争に近いといえる。これらの商品は完全競争の主要条件を備えている。即 ち,(
1
)同質的商品,(2
)多数の売手と買手,(3
)市場力(需要供給)についての完 全知識,(4
)市場へ売手も買手も制限なき新参加ないし退出の可能性,の4
条 件が大かれ少なかれ当てはまる。このような完全競争の場合には,前述のように一産業全体としての(例えばじゃがいも産業全体としての)需要曲線は一般 的な右下りであるが,個々の生産者(例えば
1
生産者が1
産業全体の1
万分の1
を生産するような場合)の需要曲線は与えられた市場価格(均衡価格e q u i l i b r i u m p r i c e
=ー産業全体の需要曲線と供給曲線とが交差する点) においてフラットとなる。このような場合には,生産者が生産量の増加によって価格が急激に下落 しても,それに対する有効な手段は何一つとしてない。ただ価格下落によっ て損失をこうむるのみである。同じような状態は他の多くの農産物にも見出 される。そして生産者は政府に救済を求めることとなりパリテイ
( P a r i t y )
計 画が実施される。右のような高度な競争状態は農産物のみでなく他の同質財たとえば化学,
石油,石炭,プラスチック,セメ`ノト,鉄,非鉄金属などの産業にも存在する が農産物のそれに類似したものではない。 これらの産業の場合は寡占(一産 業または一市場少数企業)が多く,生産者は生産量をコントロールしうる。し かし,たとえそうであっても企業問の協定は守られないで各企業は生産を拡 大する傾向があり生産羅増大化によって市場価格は低落する。日本のセメン
166 ( 4 9 0 )
マネジェリアル商品学の本質(小西)ト,石炭,石油,化学などはその好例であろう。アメリカでも多くの例があ る。例えば住宅産業は1
9 6 0
年には非常に利益のある産業であったが,1 9 6 1
年に多くの大小の類似メーカーが出現し価格が下落し,
1 9 6 2
年に2 0 0
のメーカ ーのうち90%が倒産した。その中には10
の大メーカーのうち8
つの大メーカ ーが倒産した。競争は常にこのような激烈なものとは限らないが, しかし場 合によっては優秀な会社でさえ完全競争のもとでは利益がなくなることがあ る。独占的または異質的競争
( m o n o p o l i s t i co r heterogeneous c o m p e t i t i o n )
は企 業が利潤をあげ成長発展するために必要な競争形態である。完全競争におい て良い利潤があるときは競争者がそれに引かれて新参加し,または生産量増 大によって価格は利益がなくなるまで下がるであろう。企業にとってこのよ うな状態は避けねばならないことはいうまでもない。そのために経営者は差 別化ないし異質化( d i f f e r e n t i a t e do r heterogeneous p r o d u c t s )
を研究開発し独特.な商品を商品化しなければならない。こうして開発された商品が消費者に異 質的商品として認識されたならば,この企業はすべての競争者にその商品の 需要を分かつことはないであろう。即ち競争がかりに多数であっても生産物 差別化
( p r o d u c td i f f e r e n t i a t i o n )
の認められる商品の場合は個々の売手は独占 力を行使しうるのである。このような競争状態を独占的競争という。完全競 争の場合の各企業の需要曲線は完全にフラットであるが,独占的競争におけ る各企業の需要曲線は右下りのものであるから,各企業はマーケティング・ミックスによって価格の決定をなしうる。もし商品の需要が高度に非弾力的
( i n e l a s t i c
=代替品s u b s t i t u t e s
が極めて少ない商品)であれば企業は利潤増大のた め価格を上げることを決定するであろう。この場合の価格の上昇は企業の総 合収益( t o t a lr e v e n u e )
を増加せしめる。商品が非弾力的であ、ればあるほど,需要曲線の形態は垂直に近づくからである。他方,その商品の需要が高度に 弾力的
( e l a s t i c
=多くの代替品がある商品であり多くの競争者がある)であればあ るほど需要曲線の形態は水平に近づき(完全競争の状態に近づき)価格の上昇は 総合収益を低下せしめるので,これを避けるため企業は製品改良やプロモーツョンなどに力点を注がなければならない。
つまり需要の弾力性が大きい場合(弾力的商品)は企業の市場支配力が小さ く,弾力性が小さい場合(非弾力的商品)は市場支配力が大きいので需要の弾 力性の逆数を独占力の指標とみなすことができる。 これを独占度
( d e g r e eo f monopoly)
という。このような企業の支配力は他の企業の行動によっても左・・・・・・。...........
右される。企業の現実の需要曲線は他の企業の行動を織込んで考えなければ
. . . .
ならない(寡占や独占的競争の場合7)このような需要曲線は屈折需要曲線の理論にお いて用いられている)。 そのようにして作られた需要曲線の弾力性の逆数を企 業の現実の市場支配力指標と考えればよい。
寡占企業とくに同質的商品の寡占企業の利澗極大化の価格ほ競争相手の数 企業の価格政策の影響を受けるという相互依存の関係にあるから,たとえ産 業の需要曲線が知られても,それからさらに各個別企業の需要曲線を推測す ることは極めて困難である。確定的な推測が可能な場合というのは,すべて の寡占企業間に,公然とまたは暗黙のうちに価格政策についての協定に類し たものが存在している場合であり,寡占企業が少数であればあるほど,この
ような協定類似のものの存在する状態は起りやすい。
寡占企業間に価格にたいする暗黙的な協定が存在する場合は,価格指導制
( p r i c e l e a d e r s h i p )
の原理によって,ーないし複数の企業が新価格をきめると 残余の寡占企業は直ちにこれに追随する。寡占企業間の暗黙的協定は,もっ ばら価格面に関係しており,その他の面では依然としてほげしい競争が残さ れている。すなわち,寡占および独占的競争における生産物差別化( p r o d u c t d i f f e r e n t i a t i o n )
,広告( a d v e r t i s i n g )
,マーケット・セグメンテニーション(market s e g m e n t a t i o n )
などのいわゆる非価格競争( n o n p r i c e c o m p e t i t i o n )
が市場占拠 率( m a r k e ts h a r e )
の拡大のために必須の競争手段として用いられる。生産物差別化や広告は同種の近似せる競争商品が存在する場合は勿論,た とえ存在しない完全独占の場合でも,自己の会社の製品をより一層消費者需 要に合わせる方法を探求し実施し需要を開拓することである。換言すれば独
. . . . . . . . . . . . . . . . .
占的ないし寡占企業の場合において,他の企業の行動を一定と仮定してえが いた自己の会社の需要曲線を右にシフトしようと試みることである。これと 反対に自己の会社の需要曲線が左にツフトするのほ競争相手の会社が価格を
168 ( 4 9 2 )
マネジェリアル商品学の本質(小西)下げたり広告をしたり生産物差別化を行なった場合である。完全独占とはこ
,のような需要曲線の左へのシフトを全く引起さないという限定的なケースで ある。
生産物差別化は特定製品の特色や区別を強調しプロモーションを行なうこ とである。生産物差別化には種々な形態がある。製品自体およびそれに関す る特徴としては,特許
( p a t e n t )
,商標( t r a d e ‑ m a r k s )
,銘柄( b r a n dnames)
,商号( t r a d e names)
,包装( p a c k a g e )
,コンテナー,品質特性,デザイン,色彩,スク イルなどがあげられる。販売環境に関しては,販売業者の場所,評判( r e p u t a ‑ t i o n )
,信用(goodw i l l )
,サービス,その他の条件があげられる。マーケット・セグメンテニーションは,消費者の収入,年令,性別,職業,その他によっ て市場を分類し,そのそれぞれの市場に最適の特定製品を考えることである。
しかしその細分化された市場には競争業者が存在するから,その競争に対し て生産物差別化が強調される。したがって両者は密接な関連を有する。
次に広告は商業経営にいかに重要なものであろうか。商品の流通過程およ ぴ消費過程においては,今日の流通革命の時代を迎えて,商業の生産性とい う問題が認識され,産業資本中心の
1 9
世紀の価値蜆では予想できなかった現 象が顕著に現れている。即ち前世紀の価値観でほカール・マルクスの労働価 値説に明らかなように商品の価値は生産のために投下された労働量によって 決定されるということ,つまり生産過程で創造されるものであって流通や消 費過程では積極的な役割りをもたないと考えられていた。労働価値説には利 子理論の欠如や生産工程の長さを考慮していないなど多くの欠点があるが,商品の価値ほ,労働のほかに資本(設備や技術革新を含む),経営者の経営手腕,
広告,販売方法など生産過程および流通過程の総合的機能によって創造され るのである。すなわち,今日では流通過程により多くの広告費を投じて商品 の知名度を高め販売高を増加し,大量生産による大量販売を可能にするとい う商業の生産性によって前世紀の価値観が大きく変革した。いまや経営にお けるマーケティソグの実践によって流通過程(消費過程を含む)に有効な支配 を加えることが企業の発展に不可欠の条件となり,商品の価値創造的機能は 生産過程と流通過程との総合過程}こおいて形成されるのである。
以上において商品の価格は価格競争および非価格競争と市場の種々な競争 形態との相互関連において成立することの概要を述べた。商品の適正な市場 品質は第
1
次品質,第2
次品質,ウインゲート教授のS e l l i n gPoints=Buying P o i n t s
,適正な価格,およびそれらが生産・流通・消費の三つの立場を総合して把握され決定されなければならない。したがって次に商品の生産者,流通 業者および消費者の一般情勢を概観する心要がある。
商 品 と 生 産 者
資本主義社会における社会的分業は,無政府的分業であり,労働のそれぞ れの産業への配分は個人の自由意志にゆだねられている。労働は低利潤の産 業から高利潤の産業へたえず移行する。
かくして,利潤こそ経済成長をリードするものであり,利潤の高低によっ て労働の産業間移動が個人の自由意志を保持しつつ急速に進行する。
これに対して社会主義社会における社会的分業は,一国民全体の立場から 一国の全労働と全設備と全資材とを計画的に最も有効に配置しようとするも のである。国民の需要を満たずために社会主義社会における利潤概念とマー ケティングの導入は今や急務となっている。これによって社会主義社会にお いては,需給関係を反映した生産と競争を行なうことができる。
以上述べたことから言えることは,資本主義社会および社会主義社会のい ずれの場合においても,商品生産における需要供給のバロメークーとしての 利潤概念の重要性が指摘される。
現代の科学的な商品生産は数量的および質的分析を用いて次のような順序 で進められる。
情報収集
( G a t h e r i n gI n f o r m a t i o n )
→製品調査( P r o d u c tR e s e a r c h )
→製品開発( P r o d u c t Development)
→原型テスト( P r o t o t y p e T e s t i n g )
→特許( L i c e n s i n g )
→品質管理
( Q u a l i t yC o n t r o l )
→製品製造( P r o d u c tM a n u f a c t u r i n g )
以上がプロ ダクト・プランニング( P r o d u c tP l a n n i n g )
のプロセスである。さらに次のプ ロダクト・マネジメントのプロセス( P r o d u c tManagement P r o c e s s )
へと継続 する。製品市場導入( P r o d u c tMarket I n t r o d u c t i o n )
→製品市場侵透( P r o d u c t
170 (494) マネジェリアル商品学の本質(小西)
Market P e n e t r a t i o n )
→製品販売安定( P r o d u c tMarket S t a b i l i z a t i o n )
→製品市場 撤退(ProductMarket Withdrawal)
生産物差別化やマーケット・セグメンテエイツョンは右のすべての過程に 関係する。工業製品であると農水林産物であるとを問わず,また独占的製品
( m o n o p o l i s t i c p r o d u c t s ; Monopol E r z e u g n i s s e )
であると完全競争的製品( p e r ‑ f e c t l y c o m p e t i t i v e p r o d u c t s ; Vollkommenheit Konkurrenzerzeugnisse)
であると を問わず,すべての商品は以上のマーケティング管理にもとずく科学的生産 方式および流通方式のプロセスを採用しなければならない。商 品 と 流 通 業 者
流通業者とは生産者代理店
(manufacturera g e n t ; Manufakturist Agent, Fa‑
b r i k b e t r i e b Agent)
,卸売業者( w h o l e s a l e r ; E n g r o s s i s t , Groszhandler)
および小 売業者( r e t a i l e r ; K l e i n h a n d e l e r , D e t a i l h a n d e l e r )
をいう。生産財(産業品
i n d u s t r i a lg o o d s ; I n d u s t r i e l l g i i t e r , P r o d u k t i v g i i t e r )
の流通径路( d i s t r i b u t i o n c h a n n e l s ; D i s t r i b u t i o n P f a d e )
は,生産者から使用者へ直接販売さ れる場合,生産者からフランチャイズ( f r a n c h i s e ,f r a n c h i s i n g )
で販売される場 合,生産者から配給業者を通じて販売される場合,生産者から生産者代理店 を経て販売される場合などの方式がある。消費財
(consumer goods; Konsumgiiter)
の流通径路は,生産財の配給と基 本的には,異なることはない。しかしながら一般には消費財の配給は生産財 の直接配給に比して間接配給の傾向が強い。即ち生産者から消費者への直接 配給はごく一部の商品に限られ(通信販売や生産者自身が小売店を経営しているも の),多くの場合には卸売業者と小売業者を通じて消費者へ,代理店やアセ ノ ブラーから卸売業者と小売業者を通じて消費者へ,フランチャイジーを通し て消費者へ,などのような間接配給方式が一般的である。フランチャイジソ グ・オペレーションは消費財においては今日では生産財と同程度に普及して いる。以下紙数の関係で小売業者についてのみ概説する。小売業者の過去30数年間における変遷は,アメリカにおける大量販売方式 の発展によって急激な展開を見た。小売業は一般に少量の商品を消費者に販
売する事業活動であるが,アメリカにおいては1920年代のチニンストア,
1 9 30
年代からのスーパーマーケット,ボランクリーチェンなどが発展した。とくに近年における小売業の最も重要な発展の一つであるスーパーマーケット の成長により消費財商品の大量販売が行なわれることとなり,流通革命が進 行してきた。
1 9 5 9
年にはアメリヵのスーパーマーケットおよびスーパーレット(年間売上高3
7
万5千ドル以下の小型店)の数は32,000を越え,その年間売上 高ほ350
億ドルであった。日本でスーパーマーケットが発展してきたのは19 60
年代の中期以降であり,アメリカに比べて30年の遅れがあるといえよう。現在のアメリカでは一般に年間売上高が最少
100
万ドル以上のものがスーパ ーマーケットの分類に入るとされている。1 9 6 6
年にはこの定義に合致するも のは,1 9 , 1 5 5
のスーパーマーケットで食料雑貨類総売上高の57%を取扱って" る
oチェンストアについては,
1 9 3 0
年前後に小売チエーンほその頂点に達し小 売総売上高の約30
%を占めていたが,強力なチニンストア反対運動が独立小 売商の業者団体によって展開された。この反対運動によって19 3 0
年代におけるチニンの発展が抑制された。
百貨店
( d e p a r t m e n ts t o r e ; W a r e n h a i i s e r ; g r a n d m a g a s i n s )については, 1 8 5 0
年代にパリに設立されたボソ。マルシェ( B o nM a r c h e )
にはじまるが,アメリ力においては1
9
世紀後半より発達し19 1 0
年以降巨大な百貨店が出現した。約40
年前に建設された巨大な百貨店建築すなわちフィラデルフィアのワナメー カー( W a n a m a k e r )
,ニューヨークのメーシー( M a c y )
などを見ればアメリカが 世界のR e t a i l i n gC e n t e r
であることがよく分る。1 9 2 9
年における全米の百貨 店は全小売商業総売上高の 8%以上を占め,小売商業の中心的存在となった。その後1
9 3 0
年代のスーパーマーケットの出現,チェンストアに対抗するため に小売業者と卸売業者が共同して結成したグループであるv o l u n t a r yc h a i n s
ゃ,地域的独占のf r a n c h i s ed e a l e r s
などがアメリカにおいて発展した。日本 の小売業界は前述のようにアメリカに遅れること約30年にして,これらの形 態の流通革命が進行しつつある。世界の小売業界の規模については,
1 9 6 6
年の売上高をみると,別表の通り172 ( 4 9 6 )
ラ ン ク 1 9 6 6 年 1 9 6 5 年
1 1 2 2 3 3 4 4 5 5 6 6 7 7 8 8
, ,
1 0
111 1 1 0 1 2 1 7 1 3 1 9 1 4 1 5 1 5 1 2 1 6 1 4 1 7 1 3 1 8 1 7 1 9 1 8 2 0
マネジニリアル商品学の本質(小西)
小売業・世界ランク ( 2 0 位まで)
社 名 国 別
S e a r s Roebuck アメリカ G r e a t , A t l a n t i c & P a c i f i c Tea アメリカ Safeway S t o r e s アメリカ
Kroger アメリカ
J . C. Penney アメリカ Montgomery Ward アメリカ F . W. Woolworth アメリカ Federated Departmant アメリカ Acme Markets アメリカ Food F a i r S t o r e s アメリカ N a t i o n a l Tea アメリカ S . S . Kresge アメリカ Spartan I n d u s t r i e s アメリカ Jewel Companies アメリカ A l l i e d S t o r e s アメリカ May Department アメリカ Winn‑Dixie S t o r e s アメリカ W. T. Grant アメリカ Grand‑union アメリカ Rapid‑American アメリカ
1 9 6 6 年売上高 6 , 8 0 4
千ドル, 8 3 4 5 , 4 7 5 , 2 5 9 3 , 3 4 5 , 1 8 7 2 , 6 5 9 , 9 8 3 2 , 5 4 9 , 3 6 2 1 , 8 9 4 , 1 2 3 1 , 5 7 3 , 4 7 0 1 , 4 1 2 , 0 2 6 1 , 2 5 3 , 7 4 8 1 , 2 0 4 , 5 2 0 1 , 1 9 0 , 4 9 5 1 , 1 0 2 , 6 8 8 1 , 0 8 5 , 3 8 6 1 , 0 6 0 , 1 3 7 1 , 0 3 0 ! 4 2 8 9 8 3 , 9 6 3 9 8 2 , 4 5 3 9 2 3 , 0 4 7 8 3 6 , 2 4 2 7 5 5 , 0 8 5 であり, トップはアメリカの通信販売百貨店シア ズ ・ローハックである。
ア メ リ カ 以 外 で20 位 ま で に 入 る 会 社 は な い 。 表 に 出 て い な い が50 位までにラ ソク入りしたのは,イギリスのマーク(チエンストア),アライド(食品),グ レート・ユニバーサル(通信販売)の
3社と西ドイツのカルツュタット(百貨 店),ヶレ(通信販売),カウフホフ(百貨店)の
3社 だ け で あ る 。 日 本 の 大 丸 ほ 55 位 で 惜 し く も 脱 落 し た 。 フ ラ ン ス の 有 名 百 貨 店 プ ラ ン タ ン , ボ ン ・ マ ル ツ
ェも落選した。(ダイヤモンド 1 9 6 8 年新年特別号より引用)。
商 品 と 消 費 者
商 業 者 ほ 消 費 者 の 動 向 や 消 費 者 運 動 の 情 勢 を 絶 え ず 研 究 し な け れ ば 現 代 の
巨大商業戦に勝ちぬくことはできない。本節では商品を消費者サイドから分 析し新らしい時代における商業者の経営上の原則を究明する材料としたい。
最近ほ情報化時代に入ったと言われているが,いろいろの情報の中でも消 費生活と密接に結びつく正しい商品情報は極めて少ない。これは全く矛盾し たことであるが情報化社会における消費者が商品を買う場合その商品につい ての正しい情報を得ることが困難である。広告を中心とするほとんどすべて の商品情報ほ企業の販売戦略のための情報であり,消費者が信用しうる公正 な商品情報は少ない。すなわち企業が最大利潤獲得のため,一方においては,
原材料を節約し,製造工程を短縮し,商品の品質を低下ぜしめ(品質を下げた 場合においても独占的企業は広告を中心とする非価格競争によって需要曲線を右にシ フトしうる),他方においては,必要以上に品質水準を高めてコスト以上に最 終価格を釣上げ,不必要な付加機能や付属品を取付けて価格を引上げ,外観 デザインを必要以上に変化させ,流行期間やライフサイクルを短縮させ,さ らに市場統制と強力な広告戦略によって独占価格を形成し,絶えず極大利潤 を追求する。
そうした結果,使用価値に欠陥のある欠陥商品や不正価格の商品が続々と 市場に出回ることになる。消費者は商品の使用価値を買うために金を支払う のであるから,「不良商品」,「欠陥商品」,「有害商品」,「不正価格商品」,「う そつき商品」などの不完全商品は種々な強力な方法で市場から締め出さなけ ればならない。
そのために消費者のための正しい商品情報が必要なことは言うまでもない。
この商品情報の研究こそ商品学における市場品質の研究と一致する。正しい 商品情報が得られる情報化社会は,商品学の発達,消費者教育の水準を高め ること,強力な行政による消費者保護政策の確立`強力な商品テスト機関の 充実とテスト情報の即時徹底などによって実現されるであろう。
消費者組織,技術革新の結果,生産性が向上しかつ,新商品が続々と出現 している。合成繊維工業,電子工業,石油化学工業などは戦前にはなかった もので戦後に出現した新産業である。大規模な大量生産が行なわれると,必 然的に大規模な大量消費が必要となる。商品の大量消費を促進させるために
174
( 4 9 8 )
マネジニリアル商品学の本質(小西)流通革命が到来したのである。流通革命は企業者の利潤追求にのみ存在する ものではなく消費者の利益が守られることこそ最も必要なことである。消費 者の利益が擁護される制度の現状はどうであろうか。
( 1 )
消費者の組織化—アメリカには消費者保護立法制定のための圧力団 体の活動がある。消費者援助を目的とする数団体は,詐欺的ラベル,広告,および販売活動に対して消費者を保護する法律の制定のために活発な運動を 行なってきた。これらの団体のうち特に顕著に活動しているのは,婦人会総 連盟
( G e n e r a lF e d e r a t i o n o f Womens C l u b s )
,全国婦人有権者連盟( N a t i o n a l League o f Women V o t e r s )
,婦人購買者連盟(Leagueo f Women Shoppers)
および全国消費者連盟
( N a t i o n a lConsumers'League)
である。ホイーラー・リ 一法および1 9 3 8
年の純正食品法,医薬品法,および化粧品法は,以上のよう な圧力団体の活動によって成立したものである。日本の場合はどうか。すでにアメリカでは
3 0
年前に消費者保護立法が制定 されているが,日本では消費者保護組織は著しく立遅れている。主婦連や日 本消費者協会の力もあまり強力なものとはいえなかった。去る43
年5
月の第5 8
回国会で四党共同提案の議員立法として成立した消費者保護基本法によっ て,日本の消費者もようやく組織された消費者運動を展開しようとしている 段階である。( 2 )
消費者教育一~消費者は自から商品,の科学(商品学)にもっと強くなり,理性的な買物の研究,利用しうる情報の 種類と情報を評価し利用する方法を研究することによって,企業の組織力や 広告力に対抗しなければならない。このためには消費者教育が必要である。
アメリカでは消費者教育は殆んどすべてのハイスクールにホーム・ニコノミ ックス講座があり,また多くのスクールでは主婦のために夜間講座
( e v e n i n g c l a s s e s )
を実施している。前述の全国婦人有権者連盟, 婦人購買者連盟,ぉよび各種の婦人団体は消費者の買物について討論会や講習会を主催している。
これに対していままでの日本の消費者教育ほ内容が断片的で一貫性がない。
アメリカに比べて日本の消費者教育は著しく立遅れている。
( 3 )
強力な商品テスト機関と消費者への情報提供ー一ーアメリカにおける理(499) 175
性的な消費者は買物をするに当って,その商品の製造業者,および流通事情
(配給事惜)について正確な情報を利用し,商品の品質と価格について正しい 判断をすることができる。アメリカ農務省マーケティング局のホーム・ニコ ノミックスおよび消費者課は食料品その他の農産物について情報的バンフレ ットを発行している。非営利機関としてコンシュマーズ・リサーチ
( 1 9 2 9
年設 立), コンツュマーズ・ユニオン( 1 9 3 6
年創設)の二大消費者評価機関はあらゆ る種類の消費財商品の試験を行ない,品質・価格についての評価を毎月の雑 誌と年報に発表している。日本には前述のように43年 5月の消費者保護基本法が成立したとはいえ,
各県庁所在地に生活センターが設置されるのは一部の府県をのぞいては,ほ とんど44年度以降となっており,まだまだ強力な消費者運動組織は生まれて いない。日本には,昭和23年に設立された主婦連,
3 7
年に設立された日本消 費者協会(雑誌「月刊消費者」を発行),雑誌「暮しの手帳」などがある。アメリカに比べ日本の消費者の組織化が著しく立遅れていることは以上に よって明らかである。しかしながら近年, 日本においても生産第一主義への 反省,消費者行政確立の機運が前述のように,ようやく高まってきたことは,
日本の消費者の地位向上のために好ましいことである。
結
論以上,商品学の本質に関する考察とともに,生産者の立場,流通業者の立 場および消費者の立場から商品を考察した。企業は利潤の獲得を最大の目的 とし,消費者はより良い商品をより安く購入しようとするから,そこに立場 の相違と利害のギヤップが存在する。品質に比して安すぎる商品は生産者に 苦しみを与え,品質に比して高すぎる商品は企業に不当利潤をむさぼらしめ
る。
このギヤップをなくし生産者も流通業者も消費者も共に豊かに繁栄する社 会を築くためには商品の市場品質が究明されなければならない。現代の商品 学における市場品質の研究は筆者がこれまでに主張してきたように各立場を 総合したイソターディップリナリー・アプローチによって決定されるべきも