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混合糞便からの直接 PCR による食中毒菌核酸検査に向けた検討 1)

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(1)

混合糞便からの直接 PCR による食中毒菌核酸検査に向けた検討

1)

株式会社島津製作所分析計測事業部,

2)

財団法人東京顕微鏡院食と環境の科学センター

西村 直行

1)

高岡 直子

1)

馬場 洋一

2)

林田 瑞穗

2)

伊藤 武

2)

(平成 24 年 4 月 3 日受付)

(平成 24 年 8 月 3 日受理)

Key words : PCR, foodborne, feces

混合糞便検体からの直接 PCR で食中毒 3 菌種(ベロ毒素産生菌,サルモネラ属菌,赤痢菌)の同時検出 を試みた.蒸留水で約 2.5% の濃度に調製した検便懸濁液を 95℃5 分間熱処理した後の遠心上清 5 μ L を 45 μ L の PCR master mixture に添加して PCR を実施し,MCA(Melting Curve Analysis)で検出した.その結 果,50 混合糞便検体に混入させた 1 つの食中毒菌陽性糞便を個別培養法と同等の検出感度で検出すること ができた.本方法は大量の糞便検体から迅速,確実,さらに感度良く腸管系病原菌検出が行える方法である ので,食品取り扱い従事者からの検便検査など一度に大量の検体を処理しなければならない検査においては 極めて有用な方法と考えられた.

〔感染症誌 86:741〜748,2012〕

食の安全・安心を確保するには,食品そのものが食 中毒菌に汚染されていないだけでなく,食品取り扱い 従事者が保菌していないことも重要である.そのため,

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関す る法律」(感染症法)

1)

,「大量調理施設衛生管理マニュ アル」

2)

や「学校給食衛生管理基準」(学校給食法)

3)

で,

食品取り扱い従事者の腸内細菌検査(検便)の実施が 義務づけられている.通常検便検査は腸管出血性大腸 菌,サルモネラ属菌,赤痢菌の培養検査をベースに行 われているが,他の食中毒菌や冬季にはノロウイルス 検査などが追加で実施されることも多くなってきてい る.

検便検査においては,通常,検査対象者が採便した 検体が検査機関に輸送され,検査現場においてそれぞ れ菌の培養に適した選択培地への直接塗抹により分離 培養が行われる.培養後に形成された菌コロニーの形 態,色などを指標に検査員が食中毒菌疑いコロニーと 認めた場合には,各食中毒菌の確認培地に接種する.

確認培養後,性状が当該の食中毒菌と一致した場合に

は血清型別判定を行う.さらに,食中毒菌が腸管出血 性大腸菌疑いの場合にはさらにベロ毒素産生試験やベ ロ毒素遺伝子の検出などが必要となる.このように培 養による食中毒菌検査は煩雑かつ長時間を要するのみ ならず,初期判定は培養後に出現した菌コロニーの性 状を検査員が目視によって行うため検査員の熟練度に よっては一次判定に差が出る危険性もあり,改善の余 地が存在している.

一方,個々生物種に固有の遺伝子を特異的に増幅し て検出する核酸増幅検査(NAT:Nucleic acid Ampli- fication Test)法は感度,特異性,定量性,迅速性な どに優れた方法であるため,食材中の食中毒菌検査

4)

や細菌性食中毒発生時における感染疑い者の検便検

5)〜7)

,培養が不可能なノロウイルスなどの食中毒原

因ウイルス検査

8)

など,食の安全・安心検査にも広く 使用されるようになってきた.しかし,食品取り扱い 従事者検便中の食中毒菌スクリーニングにおいては検 査すべき検体数が膨大であるため,個々の検体から核 酸を抽出・精製して NAT を行うことが物理的に不可 能などから導入が遅れていた.

検体からの核酸の抽出・精製については,我々は核 酸増幅反応を阻害する生体由来物質に結合しその働き を中和する物質群を見出し,生体試料から直接 PCR

(Polymerase Chain Reaction)を可能とする試薬を 10

別刷請求先:(〒604―8511)京都府京都市中京区西ノ京桑原 町 1

株式会社島津製作所分析計測事業部

西村 直行

(2)

年以上前に製品化(Ampdirect:島津製作所)してお り

9)

,検便からも核酸の抽出・精製することなしに直 接,大腸菌 O-157 の DNA

7)

やノロウイ ル ス の RNA

8)

を増幅・検出できることを示している.それでも,食 品取り扱い従事者の検便検査を実施する大手検査セン ターの 1 日あたりの取り扱い検体数が通常数千以上で あることから,検体から直接 PCR が行えるとしても 個々の検体から NAT を行うことはなお極めて困難で あることに変わりはない.他方,検査対象が同じく大 規模な献血中の B 型肝炎ウイルス(HBV),C 型肝炎 ウイルス(HCV),後天性免疫不全症候群ウイルス

(HIV)などのウイルス検出においては,数十の献血 液を集めたバッチでの遺伝子検査が日常的に行われて いる

10)11)

.よって,食中毒菌を検査対象とした検便検 査においても予め数十検体を混合したバッチでの検査 が有効と考えたので,著者らは混合糞便からの直接 PCR 法による 3 種食中毒菌(ベロ毒素産生菌,サル モネラ属菌,赤痢菌)同時増幅・検出法を開発し,評 価したので,ここに報告する.

材料と方法

1.検出感度検討のための DNA 調製

当施設保有の VT(Vero toxin)2 型産生大腸菌(Es- cherichia coli O157),サルモネラ属菌(Salmonella ty- phimurium),赤痢菌(Shigella flexneri)を培養後,フェ ノール ! クロロフォルムでの抽出,エタノール沈殿,蒸 留水への再懸濁でそれぞれ菌の精製 DNA を取得し た.精製 DNA の濃度と純度は 260nm と 280nm の吸 光度から算出し,反応液あたり 1 から 10,000 コピー の DNA となるように添加して PCR を行い,反応系 の検出感度評価に使用した.

2.PCR および検出

PCR および検出は「腸管系病原菌遺伝子検出キッ ト(島津製作所)」を使用して行った.なお,本キッ トにおいては,ベロ毒素産生大腸菌検出に VT 遺伝子 を共通に識別できるプライマー,サルモネラ属菌検出 にエンテロトキシン遺伝子識別プライマー,赤痢菌検 出に ipaH 遺伝子識別プライマーと内部コントロール

(IC)が 混 合 さ れ て い る.ま た,PCR 後 に Melting Curve Analysis(MCA)を行う際には反応液に SYBR Green I 核酸ゲル染色液(Invitrogen)を 4,000 倍希 釈で添加している.PCR は 95℃ 10min のプレヒー ティング後に 95℃ 30sec,55℃ 30sec,72℃ 60sec の 45 cycles で行った.その後 72℃ 7min,95℃ 1 min,70℃ 1min 反応させた後,0.5℃ 10sec 刻みで 95℃ まで温度を上昇させ,その間の MCA を行った.

また,一部アガロース(4%)電気泳動での解析も行っ た.なお,PCR および MCA は iCycler iQ リアルタ イム PCR または MiniOpticon リアルタイム PCR 装置

(BIO-RAD)を使用して行った.

3.糞便添加可能量の検討

10 人のボランティアから採取した糞便を蒸留水で 20% 濃度になるように懸濁,95℃ 5 分間熱処理後,

卓上の微量遠心機で 10,000rpm 3 分間遠心し,その上 清を回収した.回収した上清を蒸留水で 2.5% まで 2 倍段階希釈して,その 5 μ L を 45 μ L の上記キットで作 製した PCR master mixture に添加して PCR を行い,

IC 由来の PCR 産物を MCA およびアガロース電気泳 動で検出した.

4.混合陰性糞便に混入させた陽性糞便からの食中 毒菌関連遺伝子の検出

採便スティック(Procanal

TM

-2 東京顕微鏡院)に 付着した糞便をそれぞれ菌に適した選択培地へ直接塗 抹し,分離培養を行った.培養後に各食中毒菌疑いの コロニーをカウント後,当該コロニーを確認培地へ塗 抹,血清型別判定での確定を行った.血清型別などで 最終的に食中毒菌と確認された感染者糞便の中から,

選択培地上でのコロニー数を指標にベロ毒素産生大腸 菌陽性糞便とサルモネラ属菌陽性糞便から各 3 サンプ ルを選択した.また,培養で陰性であった糞便からラ ンダムに 196 検体を選択した.それぞれの糞便検体を 採取したスティック先端を 1.5mL チューブに分注し た 50 μ L の蒸留水に浸漬,攪拌,蓋を閉めた後,ボル テックスにて糞便懸濁液(概ね 2.5% 濃度)を作製し た.各懸濁液は卓上の微量遠心機でフラッシュ,95℃

5 分間熱処理後,微量遠心機で 10,000rpm 3 分間遠 心した.各陰性糞便検体の遠心上清 25μL を 49 検体 分混ぜたものを 4 組作製した.陽性糞便検体からの遠 心上清は沈渣を吸わないよう回収し,個別のチューブ に滴下した.各陽性検体の上清 1μL を 49μL のそれぞ れ 4 組の混合陰性糞便検体上清に添加し十分混合した もの(各菌種毎で合計 12 組)を陽性混合検体とした.

さらに各陽性混合検体を同一の混合陰性検体で 10 倍 希釈(陽性検体混合比:1! 500),100 倍希釈(陽性検 体混合比:1! 5,000)したものも作製した.各陽性混 合検体およびその希釈検体と混合陰性検体のそれぞれ 5 μ L を 45 μ L の PCR master mixture に 添 加 し て PCR・MCA を行った.

5.個別陰性糞便検体からの PCR・MCA

混合陰性検体作製に使用した各陰性糞便懸濁液の加 熱・遠心上清の 5μL を 45μL の PCR master mixture に添加して PCR・MCA を行った.

1.検出感度試験

ベロ毒素産生大腸菌,サルモネラ属菌,赤痢菌の各

細菌株から抽出した DNA を反応液あたり 10,000 から

1 コピーとなるように添加して PCR を実施,MCA と

(3)

Fig. 1 Sensitivity of mixed primers for detecting VT gene/E.coli, enterotoxin gene/Salmonella and ipaH  gene/Shigella by serially diluting DNA purified from (A) VT2-toxin-producing E. coli O157, (B) Salmonella typhimurium and (C) Shigella flexneri. Upper data showed results of MCA and lower data results of 4% 

agarose  gel  electrophoresis,  each  after  PCR.  Lanes  and  symbols:  Lane1/○ :  10,000;  Lane2/● :  1,000; 

Lane3/□ : 100; Lane4/■ : 10; Lane5/△ : 1; Lane6/▲ : 0 (copies/test); LaneM: Hinc-II-digested ϕX174 RF  DNA.  PCR  products  specific  to  each  bacteria  and  internal  control  DNA  are  indicated  by  arrows  ( ▼  and ▽ ).

Table 1 Fecal  concentration  determined  with- out PCR inhibition. using 5 μL of fecal superna- tant  (0%,  2.5%,  5%,  10%,  20%)  from  10  healthy  subjects  (A−J).  Fecal  suspension  was  heated  and centrifuged, and poured into a 45 μL PCR  mixture.  + :  positive  IC−specific  product  de- tection.  − :  negative  IC−specific  product  de- tection  at  MCA  and  agarose  gel  electrophore- sis.

Healthy  subjects ID

Feces supernatant (%)

0 2.5 5 10 20

A + + + + +

B + + + + −

C + + + + +

D + + + + −

E + + − − −

F + + + + −

G + + + + −

H + + + + +

I + + + + +

J + + + + +

アガロース電気泳動で検出した結果を Fig. 1に示し た.図に示す通り,PCR 後の MCA における melting temperature(Tm)は VT 遺 伝 子 由 来 産 物 が 86℃,

サルモネラ属菌エンテロトキシン遺伝子由来産物が 89℃,赤痢菌 ipaH 遺伝子由来産物が 91℃,IC が 81℃

に検出できた.また,電気泳動においても,VT 遺伝

子,サルモネラ属菌エンテロトキシン遺伝子,赤痢菌 ipaH 遺伝子,IC 由来産物がそれぞれ 171bp,264bp,

242bp,540bp に相当する位置に検出できた.さらに,

何れの解析法での何れの菌種由来 DNA 検出において も 10 コピーが検出できた.

2.糞便添加可能量の検討

10 人のボランティアから採取した各糞便(A-J)を 蒸留水で 20% になるように懸濁した液の熱処理後の 遠心上清および蒸留水でのその 2 倍段階希釈液を反応 液に 1! 10 量添加して PCR を実施,IC 由来の PCR 産 物を MCA とアガロース電気泳動で検出した結果を纏 めたのが Table 1である.Table 1に示す通り,2.5%

糞便を添加した場合は全ての検体で,5% および 10%

糞便では 9! 10,20% 糞便では 5! 10 検体で PCR 産物 が検出できた.

3.陽性混合糞便検体からの食中毒菌関連遺伝子の 検出

選択培地での分離培養で数個から数百個検出された ベロ毒素産生大腸菌もしくはサルモネラ属菌陽性糞便 の各 3 サンプルと 49 混合陰性糞便との組み合わせ(陽 性検体混合比:1! 50),さらには同一ロットの混合陰 性糞便での 10 倍希釈(1 段階希釈),100 倍希釈(2 段階希釈)したものからの PCR・MCA の結果を Fig.

2に示した.さらに混合陰性糞便 4 ロット分での検討

結果を纏めたのが Table 2である.

(4)

Fig. 2 MCA data after direct PCR from supernatant of 50 mixed feces. Direct PCR was performed with  mixture of 1 volume of VT positive E. coli (A) or Salmonella (B) positive fecal sample (3 kinds each) and  49 volume of mixed 49 negative fecal sample (×50). These samples were diluted with the same nega- tive mixed ones (×500 and ×5,000) in addition. Symbols: ○ ; 2, ● ; 30, □ ; several hundreds colonies of  VT positive E. coli, ■ ; 5, ▲ ; 50, ◇ ; several hundreds colonies of Salmonella and × ; mixed negative fe- cal sample. The specific products of PCR for each bacteria and internal control DNA are indicated by  arrows ( ▼ and ▽ ).

Fig. 2で示される通り,反応陽性の場合は IC とと もに VT 遺伝子またはサルモネラ属菌エンテロトキシ ン遺伝子に特異的な Tm ピークが,反応陰性の場合 は IC 特異的な Tm ピークのみが検出できた.さらに は,Table 2より,培養で 2 コロニーが検出されたベ ロ毒素産生大腸菌陽性検体では混合陰性糞便との混合 で 4 組中 3 組(A,B,D)に,30 コロニーが検出さ れた陽性検体では混合陰性糞便との混合の全てと 1 段 階希釈の 2! 4 組(A,B)に,培養で数百コロニーが 検出された陽性検体では 2 段階希釈を含む全てに,VT 特異的な PCR 産物を検出した.同様に,サルモネラ 属菌検出においては,培養で 5 コロニーが検出された サルモネラ属菌陽性検体では混合陰性糞便との混合の 全てに,50 コロニーが検出された陽性検体では混合 陰性検体との混合および 1 段階希釈の全てと 2 段階希 釈の 4 組中 2 組(B,D)に,培養で数百コロニーが 検出された陽性検体では 2 段階希釈を含む全てに,サ ルモネラ属菌エンテロトキシン特異的な PCR 産物が 検出できた.

4.陰性糞便検体を使用した特異性の検討

混合陰性糞便作製に使用した全ての糞便(49x4:

196 検体)を本反応系に当てて個別に検討した結果が Fig. 3である.図では,49 検体ずつ纏めての PCR・

MCA の結果(A-D 群)を示しているが,大部分の検 体からは VT 産生大腸菌,サルモネラ属菌,赤痢菌特 異的な PCR 産物の Tm と同一のピークを検出しな か っ た が,一 部〔VT に お い て は 5! 196(2.6%);A 群 1 検 体,B 群 3 検 体,D 群 1 検 体,ipaH に お い て は 2! 196(1.0%);A 群 1 検 体,B 群 1 検 体〕に 比 較 的少量ながらも疑わしい PCR 産物が得られた.また,

IC が検出できない検体が一部〔6! 196(3.1%);A 群 2 検体,B 群 3 検体,D 群 1 検体〕存在した.これら 一部検体については,検体調製,PCR のし直し後 MCA で再度解析したところ,Fig. 3で VT 疑い PCR 産物 が検出された 5 検体のうち 2 検体で再度類似の PCR 産物が得られ た(Fig. 4A)が,ipaH 疑 い PCR 産 物 が検出された 2 検体は何れも陰性化した(Fig. 4B).

また IC が検出できなかった 6 検体のうち 1 検体で IC 不検出が再現した(Fig. 4C).

通常,プライマーを混合したマルチプレックス PCR

においては,個別プライマーでの PCR に比べ感度,特

(5)

Fig. 3 Specificity of direct PCR using food-borne bacteria negative  samples  [49×4  (A-D)=196  samples]  from  which  negative  mixed  sample  was  made  at  Fig.  2  and  Table  2.  Approximate  2.5  %  of  each fecal sample (5 μL) was poured into PCR mixture (45 μL). The  specific products of PCR for VT gene/E.coli, enterotoxin gene/Sal- monella, ipaH gene/Shigella and internal control DNA are indicated  by arrows ( ▼ and ▽ ).

Table 2 Comparison of sensitivity between direct PCR from mixed feces and  individual  cultivation.  Direct  PCR  followed  with  MCA  was  performed  from  various dilutions (×50, 500, and 5,000) of one sample containing VT positive  E.coli  or  Salmonella  with  4  sets  of  49  mixed  negative  sample  each  (A−D). 

Symboles:  + ;  detection  of  target  specific  band,  − ;  detection  of  IC  specific  band only.

49 mixed  negative fecal 

sample ID

diluted with  mixed nega- tive sample

food-borne bacteria detected/

the number of colonies per plate VT−positive E. coli Salmonella

2 30 several 

hundred 5 50 several  hundred

A ×50 + + + + + +

×500 − + + − + +

×5000 − − + − − +

B ×50 + + + + + +

×500 − + + − + +

×5000 − − + − + +

C ×50 − + + + + +

×500 − − + − + +

×5000 − − + − − +

D ×50 + + + + + +

×500 − − + − + +

×5000 − − + − + +

異性が低下するのが一般的な現象であるので,まずは 本キットでの検出感度,特異性をベロ毒素産生大腸菌,

サルモネラ属菌,赤痢菌の各細 菌 株 か ら 抽 出 し た

DNA を用いて検討した.これら 3 菌種検出用のプラ

(6)

Fig. 4 Retest of positive and non-reactive samples in the test shown  in Fig 3. The same method was used and the results are indicated  in the same way as the test shown in Fig 3.

A:  Retest  of  VT-positive  samples,  B:  Retest  of  ipaH-positive  sam- ples, C: Retest of IC-non-detective samples.

イマーを個別で使用した場合は反応系あたり 10 コ ピーを検出限界とする(data not shown)が,混合し て使用した場合もいずれの食中毒菌に対して反応系あ たり 10 コピーの検出感度を維持していた.さらに PCR 後の MCA,アガロース電気泳動いずれの解析に おいても,VT 遺伝子,サルモネラ属菌エンテロトキ シン遺伝子,赤痢菌 ipaH 遺伝子,IC に由来する全て の PCR 産物の分離,識別が可能であった.

本試薬キットには,生体物質由来による PCR 阻害 を抑制する試薬(AmpdirectPlus:島津製作所)

9)

が組 み込まれているので検便からの直接 PCR が可能

7)

であ るが,その添加濃度の許容範囲を評価するために,10 人のボランティアから採取,熱処理した糞便懸濁液の 遠心上清の 2 倍段階希釈(20〜2.5%)液を PCR 反応 液に 1 ! 10 量添加して PCR を実施,MCA およびアガ ロース電気泳動で解析した結果,2.5% 濃度で全員,5%

濃度で 10 名中 9 名の PCR が成功したことより,混合 糞便検体作製時の各糞便濃度は 5% 以下が妥当と判断 した.

次に,陽性混合糞便検体に内在する食中毒菌検出を 試みた.なお混合する糞便数は事前に行った検査セン ターへのインタビューなどから 50 が適当と判断した.

ベロ毒素産生菌感染者糞便とサルモネラ属菌感染者糞 便の中から,それぞれ選択培地で数個,数十個,数百 個のコロニーを形成した糞便を選択し,4 組の 49 人

分の混合陰性糞便の懸濁上清に 1 ! 50 量混合,さらに は同じ混合陰性糞便懸濁上清で 10 倍希釈(1 段階希 釈:陽性混合検体比=1! 500),100 倍希釈(2 段階希 釈:陽性混合検体比=1! 5,000)して PCR を行った.

結果,Table 2に示された通り,数個レベルの陽性糞 便を添加した場合には,混合陰性糞便との混合におい て 3! 4 組以上(VT:3! 4,サルモネラ:4! 4)で,数 十個レベルの陽性糞便を添加した場合には 1 段階希釈 の 2! 4 組以上(VT:1 段階希釈の 2! 4,サルモネラ:

2 段階希釈の 2! 4)で,数百個レベルの陽性糞便から は 2 段階希釈においていずれも 4 ! 4 組で検出できた.

以上の結果は,50 検体を混合して PCR を行った場合 においても,個別培養で数個レベルの当該菌が検出で きたことを示している.すなわち,本法はベロ毒素産 生菌やサルモネラ属菌に感染した糞便検体を個別培養 と同等以上の検出感度で検出できる能力を有している と判断できる.なお,今回は赤痢菌感染者糞便が入手 できなかったので混合糞便からの赤痢菌検出の評価は 実施できなかったが,Fig. 1に示す通り本菌検出用の プライマーがベロ毒素産生菌やサルモネラ属菌検出用 プライマーと同等の検出感度,特異性を有しているこ とより,同様の結果が得られるものと推測している.

次に,本検出キットに使用したプライマーの特異性

を検討するために,混合陰性糞便検体作製に使用した

全ての糞便(49x4:196 検体)を個別に本反応系に当

(7)

てて検討した結果,比較的少量ながらも 5 検体でベロ 毒素遺伝子産物に類似した Tm を,2 検体で赤痢 ipaH 遺伝子産物と類似した Tm を検出し,さらに IC が検 出できない検体が 6 検体存在した.そこで,これら 13 検体について検体調製,PCR を再度行い,MCA で解 析したところ,1 回目で VT 疑い PCR 産物が検出さ れた 5 検体のうち 2 検体で再度類似の PCR 産物が得 られ,IC が検出できなかった 6 検体のうち 1 検体で 再度の PCR 阻害が認められた.培養陰性検体で散発 的に食中毒菌疑いの PCR 産物が得られた要因として は,糞便検体や採便部位,量の不均一性にも起因して 少量の VNC(viable but non-culturable)菌や死菌を 拾った可能性や非特異反応物が出現した可能性などが 挙げられるが,今後の解析で解明していきたいと考え ている.また,PCR 阻害については,阻害が生じた 検体を蒸留水で 10 倍希釈して反応液に添加すること で解消されることから,糞便中の阻害物質量が反応液 中の中和物質の量を上回ったために起こった現象と捉 えている.以上纏めると,個別検体の数%に培養で陰 性,PCR・MCA で何れかの食中毒菌陽性疑い例が認 められたが,陽性疑い例の PCR 産物量が比較的少量 であることから,混合検体中では問題にならない程度 まで希釈されたものと考えている.さらに,今回採用 した採便法(採便スティック先端を 50μL の蒸留水に 浸漬,攪拌)では個別検体の数%で PCR 阻害が認め られるものの,大部分の検体で IC が検出されている ことから,混合検体中では問題にならない程度まで阻 害が希釈されたものと考えている.

核酸検査で陽性が出た場合は制度上個別検体に遡っ ての培養検査が必要になるが,まず混合糞便からの直 接 PCR による核酸検査でのスクリーニングを行うこ とで,最初から個別に培養検査をする場合に比べて陰 性判定が迅速に行える,廃棄物量がはるかに少なくて 済むなどのメリットがある.さらに,培養後に出現し た菌コロニーの性状を検査員が目視によって判断しな ければならない培養法に比べて客観性が増すなどの利 点もある.今後,実際の検便検査において培養法と併 用で評価を行うなどで本検査法の実用化に向けた検証 が必要であるが,本方法は大量の検便検体から迅速,

確実に食中毒菌を検出できる優れた方法になると考え ている.

利益相反自己申告:申告すべきものなし

文 献

1

)厚生労働省:感染症の予防及び感染症の患者に

対する医療に関する法律,法律第 114 号,公布 平成 10 年 10 月 2 日.

2

)厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル,

衛食 85 号,平成 9 年 3 月 24 日.

3

)文部科学省:学校給食衛生管理基準,告示第 64 号,平成 21 年 3 月 31 日.

4

)Wang R-F, Cao W-W, Cerniglia CE:A univer- sal protocol for PCR detection of 13 species of food-borne pathogens in foods. J Appl Microbiol 1997;83:727―36.

5

)Fukushima H, Tsunomori Y, Saki R:Duplex real-time SYBR Green assays for detection of 17 species of food-or waterborne pathogens in stools. J Clin Microbiol 2003;41:5134―46.

6

)福島 博,角森ヨシエ:リアルタイム PCR 法に よる食中毒菌の迅速スクリーニングの検討.感 染症誌 2005;79:644―54.

7

)Okamoto H, Takano E, Sugao T, Kage K, Okamoto E, Nishimura N, et al.:Direct amplifi- cation of Escherichia coli O157 vero toxin genes from human faeces by the polymerase chain re- action. Ann Clin Biochem 1999;36:642―8.

8

)Nishimura N, Nakayama H, Yoshizumi S, Mi- yoshi M, Tonoike H, Shirasaki Y, et al.:Detec- tion of noroviruses in fecal specimens by direct RT-PCR without RNA purification. J Virol Methods 2010;163:282―6.

9

)Nishimura N, Nakayama T, Tonoike H, Kojima K, Kato S:Direct PCR from whole blood with- out DNA isolation. Ann Clin Biochem 2000;

37:674―80.

10

)Meng Q, Wong C, Rangachari A, Tamatsukuri S, Sasaki M, Fiss E, et al.:Automated multiplex assay system for simultaneous detection of hepatitis B virus DNA, Hepatitis C virus RNA, and human immunodeficiency virus type 1 RNA. J Clin Microbiol 2001;39:2937―45.

11

)横山繁樹:わが国の血液事業における核酸増幅

検査(NAT)の現状と血液事業への影響.日本

輸血学会誌 2002;48:279―85.

(8)

Direct PCR Detection of Food-borne Bacteria from Mixed Human Feces

Naoyuki NISHIMURA

1)

, Naoko TAKAOKA

1)

, Youichi BABA

2)

, Mizuho HAYASHIDA

2)

& Takeshi ITO

2)

1)

Analytical & Measuring Instruments Division, Shimadzu Corporation,

2)

Laboratories for Food & Environmental Science, Tokyo kenbikyoin Foundation

Mixed human feces were evaluated for simultaneous direct PCR detection of 3 food-borne bacteria -

verotoxin-producing bacteria, Salmonella, and Shigella. Mixed feces concentrated approximately 2.5% in dis-

tilled water, were heated at 95℃ for 5min. The heated suspension was then centrifuged and 5μL of the su-

pernatant poured into a 45μL PCR mixture prepared to neutralize PCR inhibitors originating in biological

samples. As a result of PCR under the above conditions followed by melting curve analysis(MCA),one posi-

tive fecal sample containing food-borne bacteria was detected from among 50 mixed fecal samples, showing

the same sensitivity as individual cultivation. Results thus indicate that this method enables rapid, reliable,

highly sensitive testing of many fecal samples -especially those of personnel handling food, which requires

the simultaneous testing of many samples.

Fig. 1 Sensitivity of mixed primers for detecting VT gene/E.coli, enterotoxin gene/Salmonella and ipaH  gene/Shigella by serially diluting DNA purified from (A) VT2-toxin-producing E
Fig. 2 MCA data after direct PCR from supernatant of 50 mixed feces. Direct PCR was performed with  mixture of 1 volume of VT positive E
Fig. 3 Specificity of direct PCR using food-borne bacteria negative  samples  [49×4  (A-D)=196  samples]  from  which  negative  mixed  sample  was  made  at  Fig.  2  and  Table  2.  Approximate  2.5  %  of  each fecal sample (5 μL) was poured into PCR mi
Fig. 4 Retest of positive and non-reactive samples in the test shown  in Fig 3. The same method was used and the results are indicated  in the same way as the test shown in Fig 3.

参照

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