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厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 運動失調症の医療基盤に関する調査研究班 分担研究報告書
脳表ヘモジデリン沈着症の診断基準の構築の実態調査
研究分担者 1)髙尾昌樹
研究協力者 1)大平雅之,2)百島祐貴,3)山脇健盛
所属:1) 埼玉医科大学国際医療センター神経内科・脳卒中内科,2) 慶應義塾大学予防医療センター, 3) 広島市民病院脳神経内科
研究要旨
脳表ヘモジデリン沈着症につき、本邦における実態を調査し、診断方法や治療方法の試みなど を明らかにするため、平成29年度に日本神経学会会員の認定施設792施設に対してアンケー ト調査を実施した。回収された287施設(36.2%)からの結果により、総数129例の症例が確 認された。古典型81例、限局34例、非典型13例であり、平均発症年齢64.6歳、平均罹病期 間約 7 年であった。初発症状としては感音性難聴が最も多く(44%)、次いで小脳失調が多か った(35%)。mRSは1〜3 が多く、古典型と限局型ではその分布に大きな差異は認めなかっ た。治療は全施設のうち61%で試みられていた。そのため、具体的な治療方法や患者サポート の試みの具体的内容を明らかにするため、平成 30 年度に日本神経学会認定神経内科専門医 5746名(平成30年1月時点)に対して、アンケート調査を実施した。1048名(18.2%)から 回答を得、総数150例の症例が確認された。古典型122例(80.8%)、限局21例(13.9%)、 非典型7例(4.6%)であり、平均年齢64.2歳であった。古典型における初発症状としては小 脳失調が最も多く(64 例)、次いで感音性難聴が多かった(52 例)。原因疾患は種々にわたる が、原因疾患は全体では77例(51.0%)、古典型のうち54例(45.8%)に確認できた。古典型 の原因疾患としては、脊柱管内の嚢胞性疾患・硬膜異常症が最も多く(27 例)、限局型ではア ミロイド血管症が大半を占めた(13例)。対処療法以外のなんらかの治療が73例(50.3%)に 施行され、古典型では止血剤の使用が最も多い(34例)が、限局型と非典型では止血剤を使用 している症例はなかった。止血剤などの薬剤を使用した治療はカルバゾクロムスルホン酸ナト リウムとトラネキサム酸の使用が大半であった。難病申請は古典型のうち48例(39.3%)で 行われ、介護申請は古典型のうち50例に対して申請されていた。一連の調査により、治療の有 無、その内容および社会的資源の活用の現状を中心とした本疾患の診療の現状が把握しえた。
今後本調査結果な資料に基づき、本疾患に対する周知を進めることが重要であると考えられた。
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A. 研究目的
本邦における脳表ヘモジデリン沈着症本疾患の 実態を明らかにするために平成23年度の同疾患に 関する研究班による調査研究において日本神経学 会などの認定施設を対象にアンケート調査を施行 し、その結果を参考に診断指針を作成、本疾患が 指定難病に指定された。これにより認知度も上昇 したと考えられるところ、本年度に再度本邦にお ける実態を調査し、診断方法や治療方法の試みな どを明らかにするため、医療機関および各個別の 医師に対してアンケート調査を実施した。
B. 研究方法
本邦における脳表ヘモジデリン沈着症に関して、
平成29年に日本神経学会認定施設に対して、平成 30年度に日本神経学会認定神経内科専門医に対し てそれぞれアンケート調査結果を実施した。これ らの結果を平成31年度に総合的に整理、検討を行 った。
(倫理面への配慮)
研究分担者所属の倫理委員会に事前に申請の上で 同委員会の許可を得た。アンケートにより収集す る情報には、患者の指名など患者個人を特定可能 な情報は含まれず、プライバシーおよび個人情報 に対する配慮を十分に行った。
C. 研究結果
平成30 年度のアンケートの結果、回収された 1048名(18.2%)からの結果により、114名(19.2%)
の専門医が本疾患患者を診察しており、総数150 例の症例が確認された。症例を把握している専門 医の所属先施設は 93 施設あり、そのうち大学病 院は 42 施設(43.8%)であった。症例の内訳は 古典型122例(80.8%)、限局21例(13.9%)、 非典型7例(4.6%)、詳細不明1例であり、平均 年齢64.2歳であった。古典型における初発症状
としては小脳失調が最も多く(64例)、次いで感 音性難聴が多かった(52例)。初診時のmRSは 2が多く、本調査施行時のmRSでは4が多くな っていた。古典型と限局型ではその分布に大きな 差異は認められなかった。
原因疾患は全体(右図)では77 例(51.0%)、 古典型のうち54例(45.8%)に確認できた。古典
型の原因疾患の内訳としては、脊柱管内の嚢胞性 疾患・硬膜異常症が最も多い(27例)のに対して、
限局型ではアミロイド血管症が大半を占めた(13 例)。
全症例のうち、平成30年度の調査ではなんら かの治療が73例(50.3%)に施行され、病型別 では古典型の66例、限局型5例、非典型型2例 であった。症例全体としては止血剤の使用が最も 多く、次いで外科的手術が目立った。病型別では 古典型では止血剤が最も多い(34 例)のに対し て限局型、非典型では止血剤を使用している症例 はなかった。止血剤などの薬剤を使用した治療は カルバゾクロムスルホン酸ナトリウムとトラネ キサム酸の使用が大半であったが、本邦未承認の 鉄キレート剤であるdeferiponeが1例のみ存在 した。
難病申請は古典型のうち48例(39.3%)で行 われていたが、その他2例が脊髄小脳変性症とし て難病申請がされていた。介護申請は古典型のう ち50例に対して申請されていた。
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D. 考察
脳表ヘモジデリン沈着症の初発症状としては小 脳失調、感音性難聴の順に頻度が高かった。これ らの症状からは本疾患を診療・把握している当該 科としては脳神経内科以外にも外科的手術を受け ている症例や、難聴を主訴としている患者も存在 することが予想されるため、耳鼻咽喉科、脳神経 外科、リハビリテーション科など他科にて診療を 受けている患者も相当数存在すると考えられる。
しかし、今回の一連の調査は神経学会を介しての 調査であったため、本邦のすべての患者を把握し ているとは言い難い。包括的な本疾患患者の病態 ないしは受診状況の把握には、これらの科に対す る調査も今後検討されるべきである。
本邦で多様な治療が試みられていたものの、い ずれもエビデンスが十分であるとは言い難い。こ のような環境の下、難病指定による患者の社会的 資源によるサポートは重要であると言わざるを得 ない。しかし、古典型のうち難病申請が行われて いたのは平成 30 年度の調査でも 4 割程度にとど まっていた。同疾患および難病申請制度の周知が 今後とも重要ではある。
E. 結論
難病指摘および診断指針の公表により本疾患の認 知は確実に高まっているが、さなる周知により患 者へのサポート充実が必要である。
F. 健康危険情報 なし
G. 研究発表 1.論文発表
1) Ohira M, Takao M. Nationwide epidemio logical survey of superficial hemosiderosis in Japan. J Neurol Sci. 15; 404: 106-11 1. 2019.
2) 高尾昌樹. 脳表ヘモジデリン沈着症(古典型).
新薬と臨牀. 67(8). 982-986. 2018.
3) 大平雅之, 高尾昌樹.脳表ヘモジデリン沈着症.
BRAIN and NERVE:神経研究の進歩.
70(10). 1107-1113. 2018.
4) 大平雅之, 高尾昌樹. 脳表ヘモジデリン沈着 症. Clinical Neuroscience. 37(3) 310-315.
2019.
2.学会発表
1)大平雅之,髙尾昌樹.脳表ヘモシデリン沈着 症診療と治療に関する実態調査.第38回日本 神経治療学会.横浜.2019年11月5日〜11月2 8日.
2)大平雅之,髙尾昌樹.脳表ヘモシデリン沈着 症診療に関する実態調査.第116回日本内科学 会講演会.名古屋.2019年4月26日〜28日,
2019
H. 知的財産権の出願・登録状況(予定を含む)
1.特許取得 なし
2.実用新案登録 なし
3.その他 なし