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「公務研究科」の挑戦

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特集

「公務研究科」の挑戦

鵜 養 幸 雄

要 旨 「公務研究科」は、専門職大学院ではなく、また、博士課程後期をもたない修士課程と して、2007 年 4 月に創設された研究科で、ユニークな名称である。 入学者の多くは学部からの進学者であり、将来社会で活躍するための専門性と深い教養 を身に付けることを目的としている。しかし、専門性を身に付けることを念頭に置いてい る社会人大学院生も少数いる。 本研究科は「志」と「政策力」をもった「人材」養成のため、社会・時代の変化への適 応も図りつつ、カリキュラム等教学上の工夫等を加えてきた。 ここでは今後も、教育研究活動の強化充実等に向け、続ける挑戦について紹介する。 キーワード 公共政策大学院、公務研究科、人材育成、政策力、公務員志望、社会人院生

はじめに −耳慣れない名前の「公務研究科」−

設置 4 年経っても、いまだに「公務研究科」という名称は世間ではあまり馴染みがないようで、 電話等で科名を伝えた際には、音の近い「法務研究科」かと聞き返されることも珍しくない。つ い「公務員の公務」と説明してしまうが、本科はけっして「公務員養成科」ではない。にもかか わらず、職業の選択肢として「公務員」を目指す人たちが多く集ってくるのもあながち誤解に基 づくものと断定できないところに、また、本科の特徴があるところである1 ) 。 創設して 1、2 年ほどの時期に、筆者は別稿で科の運営の実態の紹介や特徴などについて記し たことがあるが2 )、本稿では、科の体系的な位置付けも顧慮しつつ、これまでの取組、今後の課 題等についてまとめながら、この公務研究科(以下では、科名から「」を外して表記する。)の 「挑戦」の姿について述べることとする。

1.公務研究科の概要

公務研究科は、2007 年 4 月に開設された。その概要は次のとおりである。

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・研究科及び専攻名:立命館大学大学院公務研究科 公共政策専攻 ・付与する学位:修士(公共政策) ・設置形態:独立研究科 ・入学定員:60 名(収容定員 120 名)3 )  (入学者数は、2007 年度からそれぞれ、45 名、42 名、44 名、53 名となっている。) ・標準修業年限:2 年(大学院設置基準(昭和 49 年文部省令第 28 号、以下単に「設置基準」 という。)第 3 条第 3 項及び第 16 条ただし書に基づく「1 年コース」及び「在学期間の短縮」 を認める。)4 ) ・昼夜開講制を実施(設置基準第 14 条に基づく「教育方法の特例」の施行)5 ) ・開設場所:朱雀キャンパス (社会人の通学等の便宜にも配慮。)

2.設置の趣旨(設置に際しての説明)

6) 公務研究科の設立に際しては、公共政策に関する人材の育成が必要であるとの認識のもとに、 「政策の企画立案についての専門性を有する人材を養成すること」(文部科学省「公共政策系大学 院の在り方等に関するまとめ」平成 15 年 3 月)を目的として、新たな大学院の在り方について の検討を経て、「政策力のある人材の育成」を目指して設置されたものである。 設置の意義は、 ① 社会が政策を企画し実現していくプロセスをマネージメントすることのできる人材(=「政 策力」)を求めていること ② 「政策力」の養成には、既存の学問(経済学、法律学、政治学等)の枠を越え、それらをよ り統合して対応できる力量をつけることのできるカリキュラムや教育体制が必要であること の 2 点に対応することとされた。 ここでいう「政策力」とは、政策立案、政策実施を意味し、これに必要な情報収集・処理、コ ミュニケーション等の能力、さらに総体的に処理できる高い専門能力とその処理に当たって高い 倫理観を有することを一言で表したものである。 また、教育課程の特色としては、 ①「政策力」の養成 ②国際性、学際性及び時代即応性 ③研究者と実務家の共同による政策実務教育 ④討論の場の形成 を掲げ、修了後の進路・就職先として、中央官庁、地方自治体、独立行政法人、シンクタンク、 国際機関、政府関係企業、NPO・NGO 等の他、政治家、民間企業の企画部門も想定したもので あった。

3.公務研究科の特徴

公務研究科は、専門職大学院ではなく、研究科であるが、博士課程後期をもたない修士課程で

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ある。他方、必ずしも研究者ではない、公務に関する(公務の求める)「専門性」という社会の 要請に応えるべく「人材」の養成を目指すという難題に取り組んでいる。 「公務における専門性」については、M.ウェーバーが「官僚制」において指摘した専門性 (Fachmäßigkeit)も、一方でそれを有する者が組織を構成することを論じつつ、組織の部内でそ れが高められること(その結果、昇進すること)も想定しているが、では具体的にそれが何であ るかについては、必ずしも明らかにされていない7 ) 。 特に我が国の労働慣行から見た場合、雇用の流動化が進んでいるとはいえ、基本的には、新規 学卒者等を採用し、部内での育成(かつての OJT の機能は弱まっていると指摘されてはいるが) を中心に「人材開発」をすることは、公務・民間企業を問わない共通する特徴ともいえる。「即 戦力」が求められるといわれる場合も、その実体は、体質の弱い企業が従業員に対する研修コス トを削減するために、入社前に自らの費用支出によって種々のスキル等を身につけた者を採用す ることであることも少なくない。自社での長期的な人材育成を基本と考える企業では、企業の採 用に際しての判断でも、「人柄」、「熱意」及び「今後の可能性」が重視されている8 ) 。 このことは、平成 18 年度国家公務員採用Ⅰ種試験をはじめとする、公務員試験の人物試験 (面接)における「コンピテンシー型面接」の導入にも現れているところである9 )。もともと「コ ンピテンシー」に基づく人事管理は、米国の手法を参考として民間企業で導入が進められたもの であり、実際の職務遂行を通じて発揮された能力を判断し、それに基づいて配置、昇進等の判断 を行う方法である。採用試験の面接(人物試験)でこれを用いようとする場合、重大な問題が 2 つある。すなわち、①新規採用者の「コンピテンシー」を見ようとしても、一般に採用前には公 務の経験がないので、「実務上」の能力を測ることは困難である、②面接は口頭で行い、実際の 職務遂行を観察することはできないという、とらえ方によっては致命的な欠陥ともいえる制約が ある。そこで、技法としては、被験者が一定の能力を身につけられた又は発揮できたと考える経 験について具体的に質問し、今後の能力の伸長を推測する形で行われることになる。企業では、 エントリーシートの段階でこれを問うものも少なくない。 公務・企業を問わず「求められる資質」が、このように「将来の可能性」に着目していること にかんがみれば、公務研究科での教育も、単に「使えるスキル・知識」の修得を目指すのではな く、より基礎の部分での人材育成を目指すこととなる。つまり、結果としてなにがしかのスキ ル・知識を身につけることことは必ずしも教育の目的とはならない(過去のある課題への対応手 法を身につけたとしても、その手法自体を活用できる「賞味期限」は長くはない)。例えば行政 において新たな課題が現れた場合にも、応用問題としてそれに対応していく力が求められるので あり、近時、学部教育を含めて大学で涵養するべき能力に関して「学士力」、「社会人基礎力」と いう観点からの議論が活発なこともそのことの現れといえよう。 他方、社会で活躍できる人材の育成に正面から取り組むことの反面として、大学院課程のひと つである「研究者の育成」の機能は、排除はされないものの副次的なものとならざるを得ないこ とになる。 これらを踏まえ、「公務員の従事する公務」より広く「公務」を捉えて、「不透明で困難な時代」 にこそ求められるような人材養成を図る課程であることが、(抽象的であるが)公務研究科とし ての特徴となっている。

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4.活動しながら固められてきた「コンセプト」

設立当初から「志」をもった「人材」の養成を謳い「政策力」の涵養を目指すこととしたもの の、それがどのような意味かをわかりやすく説明することは必ずしも容易ではなかった。 研究科長を中心に教員間で議論し、前述 3. の内容について検討を加え、現在では、次のよう に整理している10 ) (さらに、これに基づき、人材育成目標及び諸ポリシー(アドミッション、カ リキュラム及びディプロマ)を明確にしている11 ))。 「これまで社会を支えてきた政治・行政、あるいは経済の仕組みが揺れ動き、多くの「公共問 題」が登場してきています。このような時代だからこそ、課題への現実的対応が、問題の性格の 的確な認識をベースにして行える人材が求められています。それは、自分の責任で「考え、調べ、 判断し、行動する」訓練を通して培われる人材だと思っています。」 「私たちは、この人材が身につける力を「政策力」と表現しています。そして「政策力」は、 社会や人間の行動を、観察・分析・理解できる学問的な「基礎体力」をつけること、自分で発見 した問題を追求し、場合によってはその解決策を提示する訓練をすること、自分の意見や主張に 説得性を持たせるコミュニケーション能力を磨くこと、さらには、「公共問題」に向き合う「志」 を高めることによって育まれていくと考えています。」

5.カリキュラムの特色

当初のカリキュラムは、コア(教養・実践)、専門、展開及びリサーチ・プロジェクト科目に 分類されており、修了要件は計 36 単位以上とされていた。これが設置後 2 年目に「カリキュラ ム改革」がもち上がり、検討されることとなった。 背景としては、発足 2 年後の 2008 年度に「完成年次」を迎えること、加えて、大学院教育改 革支援プログラムとして「地域共創プロデューサー育成プログラム−政策現場への派遣型客員研 究職創設による新たなキャリアパスデザイン−」(政策科学研究科と共同申請)が採択されたこ とがあった。研究科設立の目的を再確認し、それまでの成果と問題点を検討した上で必要な措置 を講ずることとされた。 その結果、 ・研究科の機能(修了者、教員スタッフの状況等) ・全国的な改革動向との関連(カリキュラム、指導体制等) ・在籍する大学院生の実態や希望(科としてのアイデンティティー、実習系の強化等) を勘案して、次のような改革方向が打ち出された。 ①実践的スキルと教養・学問的思考の両者の重視 多くの公共政策大学院においては「即戦力」(技術的、実践的な政策の分析、形成、評価等の 訓練)重視の傾向が見られるが、公務研究科は、教養や理論的思考力、古典や専門書の読解力に 裏づけられた想像力、プレゼンテーション能力、問題発見能力、オルターナティブ提示能力、問 題解決能力などに加え、(広義の)公務への「志」、人間や地域・環境への深い共感・共生能力を

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含む「政策力」の陶冶をいっそう重視することとした。 ②課程修了に必要な単位数の削減 開設科目数は維持(結果的に 2009 年度は、前年度の 37 から 41 へと増加した。)しつつ、大学 院生の自由な研究活動をより一層保障するために、修了に必要な単数を 4 単位削減( 36 → 32 ) した。 ③他学部・研究科の教育課程との関係の整理 政策科学研究科と連携した教育の実施、法学部の公務行政特修過程との連携を図ることとした。 ④科目区分及び構成の変更 ・従来「基本科目」と「リサーチ・プロジェクト」を除くほとんどの科目が「専門科目」とさ れ、それを「コア科目」及び「展開科目」に小分類していたが、この小分類を大区分として 独立させ、併せて、「基礎科目」として整理する科目等と並立させることにより、教育課程 の多様性と立体性をより明確に打ち出すこととした。 ・「コア科目」の再編    従来の「基本科目」の内容は、公務・公共政策の基礎的なスキルと基礎知識、現場観察・ トレーニングなどからなる、いわば「入門」的な科目群であったが、科目数も少なく、積み 上げ・段階的な学習の実態には欠けていたことから、「基幹科目」とリサーチメソッド科目 からなる「コア科目」として再編する。    改革の内容として、特に象徴的なものである、新たな科目としての「基幹科目」は「公共 哲学」、「公共システム論」及び「公務基礎論」の 3 科目とする。 ・「公共哲学」では、公共政策を巡る古典や歴史・人物論などを通じて、「公共」なるものの性 格を考える。 ・「公共システム論」では、公共私 3 部門の理論的・歴史的な観念を論じながら社会のサブシ ステムとしての「公共部門」を考察する。 ・「公務基礎論」では、従前の入門的な「公務員基礎講座」とは異なり、「公務」なるものと、 その中心的な担い手である公務員の位置付け、機能、使命、モラルや公務組織などを学ぶも のとする。 ⑤リサーチ・プロジェクトにおける共通性と独自性とのバランスの確保 「複数教員によるゼミ」としての特徴を活かしつつ、 ・基本的な学問的思考を養う古典や社会科学理論の研究 ・公務・公共政策をめぐるアップ・ツー・デートなイシュー研究 ・ケーススタディーやリサーチ・プロジェクト単位でのフィールドワーク ・オープンな形でゲストスピーカーを招いたシンポジウム などを行うこととする。 この改革の結果、科目の体系は、次のように、コア(基幹・リサーチメソッド)、基礎、展開 及びリサーチ・プロジェクトに整理され、現在に至っている(新カリキュラムの具体的な内容は、 科目の一覧は【参考】として後掲)。 ・コア科目  基幹科目:公共哲学、公共システム論及び公務基礎論

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 リサーチメソッド科目:統計分析、政策評価論、ケース分析及び参与調査法 ・基礎科目:法学基礎Ⅰ(私法)、法学基礎Ⅱ(公法)、政策過程論、行政学、地方自治論、経 済学、財政学、政策史、公共政策文献講読(英語)等 ・展開科目   展開科目:政策法務論、労働法務論、公務員論、日本経済論、公共政策の課題Ⅰ(行政)、 公共政策の課題Ⅱ(法律)、公共政策の課題Ⅲ(経済)、公共政策特殊講義等  地域共創プログラム科目:地域共創研究Ⅰ等 ・リサーチ・プロジェクト

6.院生はどこから集い、どこへ行くか

入学者は、出身大学・学部も多様で、出身大学としては立命館大学が 7 割を占めるが、それ以 外に、さまざまな大学( 2010 年度入学者の場合、14 大学)の出身が集い、出身学部としては法 学部が 5 割を占めるが、経済学部、政策科学部その他社会学系の学部、国際関係学部、文学部、 さらには理工系学部など多岐にわたっている。また、必ずしも多くはないが、社会人も現・旧公 務員を含めて、バライエティーに富んだ構成となっている。 しかし、年々、「公務員志望者」の増加が顕著な傾向として現れ、修了後の進路にも反映して きている12 ) 。すでに修了した第 1 期生( 2007 年度入学)・第 2 期生( 2008 年度入学)の進路状 況を見ても、第 1 期生では民間企業採用が 54%、公務員は 36%(うち、国家 20%、地方 80%) が、第 2 期生では民間企業 22%、公務員 75%(うち、国家 36%、地方 64%)となっている。

7.社会人院生と公務研究科

昼夜開講、立地等の便宜、そして「 1 年修了コース」など、社会人院生を想定した制度設計と はなっているものの、現実には、社会人入学者は毎年数人しかいないという状況ではある。 2009 年 6 月 18 日に、さまざまなバックグラウンド、入学動機をもつ社会人院生による座談 会を開催した13 )。参加した 4 人の社会人院生は、現職の国家公務員(自己啓発休業制度を利用)、 現職の県職員(夜間の科目の履修などにより仕事との両立を実現)、退職後の市職員(定年まで 5 年程残す)、市長経験者(かつて市職員・市議会議員も経験、現在も市議会議員)という顔ぶ れであった。 その場で、それぞれ公務研究科での研究活動を通じて感じたところを語ったが、そこから、「現 場での経験から物事を考え、それをまた仕事等にも生かせる」、「見つめ直しの方法論を自分自身 で作っていく機会となる」といった社会人院生にとっての意義が確認された。なお、現役の公務 員が入学するためには、首長の「意識」が重要であるという指摘もなされたが、今後社会人院生 増加のためにも、首長の理解、そして支援が必要であるといえる。

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8.これからの課題

設立 2 年後に行ったカリキュラムの改訂を始め、「教育活動」の充実を通じてその方向性は次 第に明確となってきたものの、今後の大きな課題として「研究活動」の面での充実化がある。科 としての研究活動の独自性をどのように発揮していくかについてはいまだ模索中である14 ) 。 さらに、ここで公務研究科の「窮状を訴える」というのは、本誌の品格を汚すことにならない かを危惧するが、もう一つの「最重要課題」としては、体制の脆弱さを述べざるを得ないところ である。本年度、筆者は幸いにも専任教員として加えいただいたが、それでも、専任教員は教 授 2、准教授 1 であり、研究科長を含めて 3 名が法学部に所属、政策科学部所属 2 名、経済学部 所属 1 名のほか、任期 1 年特別任用教授 1 名、任期 5 年の特別招聘教授 1 名の助けを借りている。 体制強化の実現を期待しているところである。

おわりに −「実務家」出身の教員の目から見て−

筆者は、「実務家」(人事院)出身教員として創設時から本科に所属した。「人材」に関しては、 いわば、公務という「需要側」から大学院という「供給側」(の支援)へと立場が変わったわけ であるが、その双方の誤解(「神話」、「虚像」)に気づくことも少なからず経験した。一見遠回り な古典の輪読などによる人としての成長が、スキル修得などを越えた政策力ある人材の養成に役 立つことも実感したところである。 少し大げさな話になるので詳述は避けるが、我が国の近代化の過程でも、「人材」の養成重視 がこれを支えたのも間違いないと確信している15 ) 。 また、逆にやや卑近なこととして、「就活」という異様な活動に若者が翻弄される姿にも違和 感を覚えたが、他方、公務員試験その他の「就活」という場面を通じて、人として成長すること も間近に見ることができた。必死にものごとに取り組み、その中で自分自身を見つめ直していく ことが、成長につながっているといえよう。 なお、本稿のタイトルは『京都帝国大学の挑戦』(潮木守一著、講談社学術文庫、1997 年)に 倣ったものである。同書で扱われた「挑戦」は結果としてハッピーエンドとはなっていないが、 公務研究科は、さらに今後、全学的な検討が進められるであろう社会科学系大学院全体の中にお ける意義、諸学部・諸後期課程との連携などの大きな課題に取り組みつつ、「志」をもった有為 な人材の輩出という「結果」を目指した「挑戦」をし続ける強い意志をもって議論・検討を重ね ているところである。 1 ) 一般に「公共政策大学院」といわれる範疇に属しながら、「公務」というユニークな名称を用いたのは、 設立検討段階で、 public administration and management を想定しつつ設計が進められた事情によるよう である。

2 ) 拙稿「立命館大学大学院公務研究科」(Close up 今注目の大学院紹介 Vol.12 )『ESP』2008 年 6 月号、 68 − 69 頁、

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同「『大学院』という現場から−『人材』、そしてその育成支援に想いを馳せて−」『人事院月報』2008 年 10 月号、20 − 23 頁。 3 ) 定員の「振替財源」としては、法学研究科法学専攻(博士課程前期)30 人、経済学研究科経済学専攻 (博士課程前期)10 人、政策科学研究科政策科学専攻(博士課程前期) 20 人を充てている(設置の際の 「基本計画書」)。 4 ) 設置基準に基づく特例の施行 ・設置基準第 3 条第 3 項(標準修業年限の短縮、「社会人 1 年修了コース」の設置) ①入学時点で 2 年以上の実務経験がある社会人学生であり、 ②昼夜にわたって学習に集中できる環境が担保され、一定の基礎学力を有する場合に、標準修業年限(2 年)を短縮し、1 年で修了できる「社会人 1 年修了コース」を設置している。  「社会人 1 年修了コース」として修了するためには、入学試験受験時に「 1 年修了希望理由書」を出願書 類に同封して提出し、入学試験の面接試験とともに「社会人 1 年修了コース」の面接も受ける。入学試 験に合格し、「社会人 1 年修了コース」として入学を許可された場合は、修業年限を 1 年として登録さ れるが、これは、1 年での修了を保障するものではなく、1 年間で修了要件のすべてを満たすことが必 要となる。  なお、「社会人 1 年修了コース」の場合、学費は「 1 年修了コース」としての学費が適用されるが、結果 として 1 年で修了できなかった場合には、その時点で標準修業年限での学費が適用される。  ・設置基準第 16 条(ただし書)(在学期間の短縮、1 年修了の導入)  1 回生在学中に修了に必要な単位を優秀な成績で修め、また公務員試験等で採用内定を得られるなど、 修了後の進路も確定し、更には、執筆した修士論文で優秀な評価が得られた場合、1 年間で修士の学位 を得る(修了する)ことも可能となる。 5 ) 設置基準第 14 条(教育方法の特例)の基づく「昼夜開講制」の実施 開講している科目の半数を 5 時限以降に配置し、そのうちの 3 分の 2 は夜間時間帯( 18 時以降)に配置 するなど、社会人学生が勤務終了後からでも授業が受けられるように配慮。(昼夜開講制) また、土曜日(昼間時間帯)にも配置し、勤務しながらでも 2 年間で必要な単位が余裕を持って修得で きるカリキュラム構造を採用。 6 ) 「立命館大学大学院公務研究科修士課程設置届出書」(平成 18 年 4 月 24 日) 7 ) マックス・ウェーバー、阿閉吉男・脇圭平訳『官僚制』角川書店、1958 年。

Max Weber, Büerokratie(Grundriss der Socialökonomik, Ⅲ . Abteilung, Wirtschaft und  Gesellschaft, Verlag von J. C. B. Mohr, Tübingen,1921-1922, Dritter Teil, Kap Ⅵ , SS.650-678 )。

8 ) リクルート就職ジャーナル『就職白書 2005 』によれば、企業が採用基準で重視する項目上位 3 は、「人 柄」( 89.6%)、「その会社への熱意」( 78.8%)、「今後の可能性」( 74.2%)となっている。上西充子「大 学生の現状とキャリア形成支援」『若者の働き方』、ミネルヴァ書房、2009 年、97 − 119 頁。 9 ) 人事院『人物試験技法研究会報告』(平成 17 年 8 月 26 日)が、人物試験で「経験学習力(コンピテ ンシーラーニング能力)を検証する意義」を指摘し、これに基づき、翌平成 18 年度の国家公務員採用 Ⅰ種試験以降、「経験学習力」の検証が面接試験に採り入れられ、その後、地方公務員試験など種々の 採用試験も同様となっている。 10 ) 「公務研究科」紹介パンフレットの冒頭、水口憲人公務研究科長「ご挨拶」 ここでは、次のことにも言及されている。 「ちなみに、全国に「政策」と名のつく研究科が多く生まれていますが、「公務」を使用している研究科 は立命館大学だけです。それは、公務員志望者や現職公務員の能力開発を念頭に置いていることが理由 の一端ですが、それだけではありません。「公務」を自分の問題として受け止め、「政策力」を磨こうと する市民にも幅広く開かれ、修了生が、民間企業、シンクタンク、NPO、政治の世界等で活躍してくれ

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ることも期待してつけられた名称です。 カリキュラムは、「基礎体力」、問題追求能力、コミュニケーション能力、「志」を身につけるべく工夫 されていますが、とくに、複数の教員と院生の集団が、共同でこれらの能力を身につけるべく設計され たリサーチ・プロジェクトは、ユニークな仕組みだと思っています。行政の実務経験豊かな教員、法学、 政治学、経済学の分野でそれぞれ優れた業績を持つ教員たちは、皆さん方が、「政策力」を鍛錬する「場」 として公共政策大学院・公務研究科を活用されることを、心から期待しています。」 11 ) 人材育成目標及び諸ポリシー(アドミッション、カリキュラム及びディプロマ)は次のとおりである。 ○人材育成目的(「公共問題の優れた臨床医に」)  「時代が直面する課題に対して、グローバルな視野を伴い、政策立案および政策実施に関わる情報収 集・処理、コミュニケーション等の能力を備えた人材の育成」(立命館大学大学院学則第 4 条の 2 第 13 号)、言い換えれば、「公共問題」にチャレンジできる「考え、調べ、判断し、行動する」人材の養成を 目的。 ○入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)(求める人材像)  「公務」を自分の問題として受け止め、「政策力」を磨こうとする学生・市民、そしてこうして鍛錬さ れた「政策力」によって、国・地方自治体、様々の国際機関や NPO、NGO、シンクタンク、独立行政法人、 政党、さらには民間企業など、あらゆる分野で企画立案を担い、総合的な視点で課題を解決することで 社会に貢献しようという学生・市民など、「公共問題」に向き合う「志」をもった人材を幅広く求める。 ○教育課程編成・実施方針(カリキュラム・ポリシー)  「法学」「政治学」「経済学」の 3 つの基礎的な学問分野と、その応用・複合分野の科目を設定し、体 系的に学べる編成を行うことで、研究科の人材育成目的を達成する教育システムを構築する。 このうち、政治・行政学、経済学、法学、外国語講読等の系統の科目は、臨床医にたとえれば、公共問 題を扱うための基礎医学に相当します。基礎医学はこれらに限られる必要はないし、総合大学の利点を 生かして、さらに関心を広げることも可能とする。 インターンシップやフィールドワーク系の科目は、政策の現場の感覚を育むためのものとする。 そして、院生とスタッフが協働して基礎と臨床をつき合わせ検証していく場として、リサーチ・プロ ジェクトという科目を設置。 優れた臨床医は、基礎医学が提供する理論と、臨床という医学の「現場」をフィード・バックさせる態 度を身につけてる。公務研究科の教育課程は、基礎的な学問分野から応用・複合分野の科目、インター ンシップなどの実践科目、そしてリサーチ・プロジェクト、と体系的に学んでいく中で、院生が「実学」 精神と「市民的感性」を身につけた「公共問題の優れた臨床医」に育っていけるように編成。 ○学位授与方針(ディプロマ・ポリシー) 修了時点において学生が身につけるべき能力として、下記のとおり 4 点の「教育目標」を定めている。 《修了時に身につけておくべき能力》 ①社会や人間の行動を、観察・分析・理解できる学問的な「基礎体力」をつけること ②自分で発見した問題を追及し、場合によってはその解決策を提示する訓練をすること ③自分の意見や主張に説得性を持たせるコミュニケーション能力を磨くこと ④さらには「公共問題」に向き合う「志」を吟味し高めること これらの能力の獲得は、研究科が規程する所定単位の修得と下記の学位論文評価基準に基づく審査の合 格により、その達成とみなし、修士学位を授与することとする。 《論文評価基準》 修士論文は、概ね以下のような基準のいくつか(複数)により評価されます。 ①問題意識が明確で、課題意識が適切であるか(研究テーマの妥当性) ②課題についての本質が正しく理解できているか(課題の本質の理解)

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③先行研究が検討・吟味され、到達点が踏まえられているか(既存研究との関連性) ④事実調査・文献資料などの検索が十分にできているか(使用情報文献の適切性) ⑤論理展開に一貫性はあるか(論理の一貫性) ⑥分析が正確かつ緻密に行われ、論述の説得性を高めているか(論述の厳密性・緻密性) ⑦研究内容がユニークであるか(独創性) ⑧調査に基づく実地検証が十分行われているか(実証性) 12 ) 学部新入生の保護者へのアンケートでも、就職先として教員以外の「公務員」を考える保護者の割合 が増加してきている。 13 ) この座談会の概要は、『社会人院生、大いに語る』として、パンフレット形式にまとめられている。 14 ) 2010 年度から立命館大学内の「研究基盤強化予算」を活用して「公務」の在り方等について、研究会 を設け、地方公務の実態調査等から着手しているところである。 15 ) 横井小楠『大学問答書』1852(嘉永 5 )年は、注意深く、ただ学校を建てれば良いわけではないこと に留意しつつ、人材の重要性を説いている。なお、その小楠自身を育てた「時習館」の人材育成機能も 見逃せない。 佐藤一斎『学問所創置心得書』1832(天保 3 )年では、「寛政異学の禁」(寛政 2(1790 )年)を受けて「宋 儒の成規」(朱子学)を守るとしているという制約はあるものの、学問所を創る意義として、「始終それ ぞれの職に任じて、用立つべきものになさしめん」とする。しかし、古来学問というものは「心に弁へ て身に仕なす事」をいうものであったのが、次第にその趣旨が失われて「文字上の事とのみ」になって、 「経学をなせども、経の文字を講明するを学とし、又学者といへば余計に書籍をよみて、故事来歴を記 し、或は詩賦文章を巧みに作り、斯のごときを学問という」状況になっているので、学問所を創る以上 は、「無用の学を教ふべからず。ただ用立つ人をこしらへんと心掛くべきこと第一なり。」として「人材 を育するの道」を強調している。 【参考 現在の公務研究科のカリキュラム】 ・コア科目( 4 単位以上の履修が必要)  基幹科目:公共哲学、公共システム論、公務基礎論(各 2 単位)  リサーチメソッド科目:統計分析、政策評価論、ケース分析、参与調査法(各 2 単位) ・基礎科目( 4 単位以上の履修が必要):憲法、法学基礎Ⅰ(私法)、法学基礎Ⅱ(公法)、政策過程論、行 政学、地方自治論、経済学、財政学、政策史、公共政策文献講読(英語)Ⅰ、公共政策文献講読(英語) Ⅱ(各 2 単位) ・展開科目( 4 単位以上の履修が必要)  展開科目:政策法務論、消費者法務論、労働法務論、公務員論、ミクロ経済学、マクロ経済学、日本経 済論、GIS と地域分析、非営利組織論、インターンシップ、国際関係論、公共政策の課題Ⅰ(行政)、公 共政策の課題Ⅱ(法律)、公共政策の課題Ⅲ(経済)、公共政策特殊講義(各 2 単位)  地域共創プログラム科目:地域共創研究Ⅰ( 2 単位)、地域共創研究Ⅱ( 4 単位)、地域共創研究Ⅲ( 8 単位)、地域共創学( 2 単位)、政策ファイナンス( 2 単位) ・リサーチ・プロジェクト( 8 単位以上の履修が必要)

 リサーチ・プロジェクト I、リサーチ・プロジェクト I、リサーチ・プロジェクト III、リサーチ・プロジェ クト IV(各 4 単位)

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