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紹介 金淵明編著 韓国社会保障研究会訳『韓国福祉国家性格論争』

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Academic year: 2021

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紹介 金淵明編著 韓国社会保障研究会訳『韓国福祉

国家性格論争』

著者

石崎 菜生

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

47

8

ページ

76-76

発行年

2006-08

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00007453

(2)

『アジア経済』XLVII 8(2006. 8) 76 紹   介 1997年末に韓国を襲ったアジア通貨危機を受けて, 金大中政権は新自由主義的な構造調整政策を行った。 しかし,同政権は経済政策の方向性に相反して国家 福祉の拡大を行い,社会保障支出を増加させた。こ の一見矛盾した現象をどう捉えるかについて,韓国 の社会福祉(広い意味での社会福祉をさす。以下同 様に用いる。)の専門家たちが繰り広げた論争をま とめたのが本書である。本書は4編に分かれ,計17 本の論文が収録されている。 本書には,金大中政権期の社会福祉政策を国家福 祉の拡大とみる学者と新自由主義的とみる学者の対 立が現れている。国家福祉の拡大と論ずる学者は, 金大中政権下における国民皆年金の実現,医療保険 の統合,雇用保険の適用拡大,産災保険(日本の労 災にあたる)の適用拡大,国民基礎生活保障法の制 定をあげる。新自由主義的と論ずる学者は,金大中 政権期に膨張した私保険など民間の役割強化,所得 不平等の悪化,国民基礎生活保障法にみられるワー クフェアの性格をあげる。金大中政権の福祉改革で は社会的弱者のための国家介入の拡大がみられるが, その介入方式は国家財政の最小化と受益者負担の原 則を固守する規制中心的な社会保険の拡大が主流で あり,その結果,所得保障制度においては労働の商 品化水準が高く,勤労福祉が依然として強調されて いると評価する。同じ現象を捉えても,見方によっ て全く違った評価が存在するのである。 本書において多くの論者が議論の下敷きにしてい るのは,エスピン・アンデルセンの福祉レジームに 関する3種の類型である。自由主義レジーム,保守 主義・コーポラティズム的レジーム,社会民主主義 レジームである。論者によって立場は異なり,自由 主義レジームだとする論者もいれば,保守主義レジ ームだとする論者もいれば,これらの混合型だと分 析する論者もいる。 自由主義レジームだと主張する学者は,GDP に対 する社会保障支出および租税総額の比率が低い一方, 民間保険料の比率は高いことを指摘し,市場に対す る国家介入の程度が最も少ないと論じる。公的サー ビスはほとんどなく,公的扶助の比重が高いことは 自由主義レジームの特徴であるため,韓国はこれに 属すると主張する。 保守主義類型に近い部分と自由主義類型に近い部 分とを見出すことができるとする学者もいる。所得 保障制度の拡大と労働市場の差別的柔軟化などの制 度は保守主義類型に近いが,結果についてみると, 不安定な地位別就業者の増加は保守主義,低い長期 失業率と高い所得不平等は自由主義に近いとする。 また,既存の各レジームの混合だと主張する学者 もいる。まず,社会保障の急激な拡大によって公的 所得移転が以前より強化され,ワークフェアは副次 的であったとして自由主義的レジームだという論に 反論する。次に保守主義レジームだという論に対し ては,「地位の差別化と家族主義の融合」が保守主 義レジームの核心だが,韓国の医療保険が組合方式 を撤廃し,地位の差別化を弱める統合主義の方式に 移行しているので,あてはまらないと指摘する。そ して各レジームの特徴が折衷的に混ざっているため, 「混合モデル」になる可能性が高いと主張する。 現在,盧武鉉政権が発足し,金大中政権期に実施 された政策は既に過去のものとなっている。金大中 政権は所得保障制度の拡大と公的扶助の充実を行っ たが,盧武鉉政権はその時に行われなかった社会福 祉サービスの充実を図っている。盧武鉉政権期の韓 国の福祉国家は金大中政権期とはまた異なる性格を もつであろう。しかし,金大中政権が行った改革は アジア通貨危機の影響を受けた時期に実施されたも のであり,グローバリゼーションとの関わりを探る ことができる。また,その内容は韓国の社会福祉史 上,画期的な転換点となった。本書が日本で紹介さ れる意義は,そうした転換期の韓国の福祉国家を韓 国の学者たちがどのように捉えていたのかを知るこ とができる点にある。 (アジア経済研究所地域研究センター)

金淵明編著 韓国社会保障研究会訳

『韓国福祉国家性格論争』

流通経済大学出版会 2006年  xxvi+433ページ 石 いし 崎 ざき 菜 な 生 お  

参照

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