Title
[原著]沖縄県北部一離島における糖尿病検診
Author(s)
普天間, 弘; 吉田, 美智子
Citation
琉球大学医学会雑誌 : 医学部紀要 = Ryukyu medical
journal, 11(1): 13-18
Issue Date
1989
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/2297
沖縄県北部-離島における糖尿病検診
普天間 弘 吉田美智子 琉球大学医学部保健学科 成人保健学第一教室 はじめに 最近の日本では,平均寿命の増加と共に成人 病対策が重要な課題となっている. 糖尿病は成人病の一つであり,年々増加して いるといわれているが,他の成人病と同様,慢 性・潜行性に発病するので,その実数の把趣は なかなか困難である. 糖尿病の有病率調査としては,厚生省がアソ ケ-ト法で行う国民健康調査による方法,病院 受診者を調査する方法などもあるが,やはり全 住民を対象とした集団検診による方法が最も適 切な方法と思われる. 我々は,沖縄県の糖尿病有病率調査を行って いるが,前年の宜野座村に続いて今回北部離島 である伊江村で糖尿病集団検診を行ったのでそ の成績について述べる. 対象及び方法 昭和61年11月,伊江村が毎年住民を対象に実 施している住民検診に参加した男518名,女776 名計1,294名に対し,血糖検査を行い(表1) , 血糖値の高い者,尿糖陽性者を二次検診の対象 とした. 受診率は,全体としては63%であるが, 40歳 以上のみをとると82%と比較的高率であった. 血糖検査は随時行ったので,食事との関係は一定 しないが,食事時問を聞き,空腹時血糖105m甘/dゼ 以上,食後1時間値16伊I甘/dゼ以上, 2時間値120 mル/dl以上, 3時間値110mル/dゼ以上の者及び尿 糖陽性者を二次検診の対象とした. 表1.性・年齢別受診者数および糖代謝異常者数 \ 年 齢 ′∼3 0 3 0 ∼ 4 0 へ′5 0 - 6 0 ∼ 7 0 " 計 罪 受 診 者 数 5 3 7 0 8 1 1 3 7 9 0 8 7 5 18 糖 尿 病 0 2 0 6 6 3 17 境 界 型 1 0 0 0 3 4 1 8 境 界型 2 0 2 3 1 0 6 2 2 3 t 受 診 者 数 2 8 9 0 1 3 9 2 14 1 6 4 1 4 1 7 7 6 糖 尿 病 0 0 2 1 0 7 3 2 2 境 界 型 1 0 0 2 1 2 0 5 境 界 型 2 0 0 3 2 3 4 12 汁 受 診 者 数 8 1 1 6 0 2 2 0 3 5 1 2 5 4 2 2 8 1 2 9 4 二次検診では75gブドウ糖経口負荷試験(以 下75gGTTと略)を行い,日本糖尿病学会の判 定基準1)によって判定した. 村の住民検診では、問診による既往歴調査, 身長・体重・血圧の測定,尿,総コレステロー ルの検査を行っているので,そのデータも利用 させていただいた. 血糖測定は,静脈血梁を酵素法(グルコース オキシダーゼ法) ,尿は試験紙法,総コレステ ロールは酵素法(アスコルビソ酸オキシダーゼ 法)で行った. 有意差の検定は, Z2検定を用いた. 成 績 二次検診対象者は、男63名,女48名,計ュll 名であったが,そのうち既に糖尿病とわかって いる者の中14名は75gGTTを行わずに糖尿病と 判定した.この14名を含めて、既知糖尿病は男 9名,女10名,計19名,新規発見糖尿病は男8名,IE! 表2.二次検診結果 普天間 弘 ほか 年 齢 . 性 判 定 4 0 歳 以 上 全 体 男 女 男 女 既 知 糖 尿 病 9 (2 . 3 ) 10 ( 1 .5 ) 9 1 0 発 見 糖 尿 病 6 (1 .5 ) 12 (1 .8) 8 12 境 界 型 1 8 (2 .0 ) 5 (0 .8 ) 8 5 境 界 型 2 2 1 ( 5 .3 ) 1 2 ( 1 .8 ) 2 3 12 正 常 型 1 2 ( 3 .0 3 (0 .5 1 2 4 G T T 不 検 者 2 (0 .5 5 (0 .8 3 5 境界型1 : 2時闇値160m4/dI以上()内% 女12名,計20名であった. 境界塾の2時間血糖値は120mg/dIから200 m<i/d2までかなり幅が広いので、 2時間借160 <"<i/d2以上を境界型1,それ以外を境界型2 に分けて判定すると,境界型1は男8名,女5 名,計13名,境界型2は男23名,女12名,計35 名であった. 75gGTTの結果正常型と判定され た者は,男12名,女4名,計16名であった.罪 3名,女5名,計8名は75gGTTを受けなかっ た(表2). 性・年齢別に糖尿病をみると(図1,表1), 男は30代2.9%,40代0%, 50代4.4%, 60代6.7 %, 70代3.4%と, 60代が最も高率で,女は30 代0%, 40代1.4%, 50代4.7%, 60代4.3%, 70 代2.1%と, 50代が最も高率であった. 40歳以 上では男3.8%,女3.3%で,男女間の有意差は なかった. 男女 男女 男女 男女 男女 男女 30- 40- 50- 60- 70- 40≦歳) 図1.性・年齢別糖尿病および境界型1. 2の頻度 境界型1の男は, 50代2.2%, 60代4.4%, 70 代1.1%と, 60代が最も高率で,女は40代1.4%, 50代0.5%, 60代1.2%, 70代0%であった. 40 歳以上では男2.0%,女0.8%で男に高率であっ た(P〈O.05). 境界型2の男は, 30代2.9%, 40代3.7%, 50 代7.3%, 60代6.7%, 70代2.3%と, 50代が最 も高率で,女は40代2.2%, 50代0.9%, 60代 1.8%, 70代2.8%と, 70代が最も高率であった. 40歳以上では男5.3%,女l.1で男に有意に高 率であった(P〈O.01). WHOの基準による高血圧者は,男では糖尿 病で高血圧の者は26.7%,境界型では20.7%, 正常では11.4%と,糖尿病と境界型は正常に比 し高率で(P〈O.01),女では糖尿病で高血圧の 著は9.1%,境界型では17.6%,正常では9.9% と,境界型に高率であった(P〈O.01) .男女 別では女より男の糖代謝異常者に,高血圧者が 高率の傾向があった(表3) . 表3.糖尿病と合併症 、 、 例 数 高 血 圧 者 高 コレステロl J堵 肥 満 者 男 糖 尿 病 1 5 2 6 .7 % 2 0 .0 % 2 6 .7 % 境 界 塾 2 9 2 0 .7 % 1 0 .3 % 2 0 .7 % 正 常 3 5 1 l l .4 % 1 3 .1 % 1 6 .5 % 計 3 9 5 12 .7 % 1 3 .2 % 1 7 .5 女 糖 尿 病 2 2 9 .1 % 3 1 .6 3 6 .4 % ォ サ I 1 7 1 7 .f 2 9 .4 % 2 9 .4 % 正 常 6 1 9 9 .9 % 1 4 .4 1 8 .」 計 6 5 8 1 0 .C 1 5 .3 % 1 9 .8 % 総コレステロールは, 250m<j/d4以上を高 コレステロール者とした.男では糖尿病で高コ レステロール者は20.0%,境界型では10.3%, 正常では13.1%と,糖尿病に高率で(P〈O.01), 女では糖尿病で高コレステルール者は31.8%, 境界型では29.4%,正常では14.4%と,正常に 比し糖尿病と境界型に高率であった(P〈O.01). 男女別では男より女の糖代謝異常者に,高コレ ステロール者が高率の傾向があった(表3). 肥満度は,松木氏法2)に準じ標準体重を求め, 標準より20%以上肥満している者を肥満者とし た.男では糖尿病で肥満者は26.7%,境界型で
は20.7%,正常では16.5%と,正常に比し糖尿 病に高率で(P〈O.01),女では糖尿病で肥満者 は36.4%,境界型では29.4%,正常では18.9% と,正常に比し糖尿病と境界型に高率であった (P〈O.01).男女別では男より女の糖代謝異常 者に,肥満者が高率の傾向があった(表3) . 考 察 糖尿病集団検診は,アメリカでは1940年代か ら行われ, 1947年WilkersonとKralPはOxford 町の全住民の70.6%, 3,516名を検診し,その 糖尿病有病率を全住民で1.7% (男1.7%,女 1.8%) , 45-54歳で4.0%, 55-64歳で4.4%, 65-74歳で5.1%とし,男女差はなかったとし ている. West*'は1974年30歳以上の住民を調 査し,白人で8.0%,イソティアソで20.2%と 報告している. 我が国では1958年と1962年に全国規模での集 団検診が行われ,その成績は小林5) 6)によって まとめられているが,それによると, 40歳以上 の糖尿病の頻度は, 1958年では4.6% (男5.0%, 女4.2%) , 1962年では7.6%であったとしてい る. その後は全国規模の集団検診は行われていな いが,地域・職場を対象とした集団検診は各地 で行われ,その成績は後藤らT)や竹内8)によっ てまとめられているが,それによると,全年齢 層を対象にしたものでは 0.6-2.2%, 40歳以 上を対象としたものでは 2.1-16.0%にわたっ ている.これを年次別にみると,年次とともに 上昇傾向を認めるとしている. 沖絶県における糖尿病検診は, 1968年中山ら9) が病院受診者を対象に行い, 40代2.4%, 50代 4.3%, 60代4.1%, 70代5.8%,全年齢層で1.7 %,男女比は1.4で男に多かったとしている. Sakumotoら10)は1970年沖絶県で糖尿病集団検 診を行い, 40歳以上の農村住民で3.2%, 48歳 以上の公務員で13.5%であり,男女比ではいづ れも男性に高率であったとしている. 我々は" ,1985年宜野座村住民40歳以上を対 象に75gGTT法で糖尿病集団検診を行い,男 2.7%,女3.2%の成績であった.今回の伊江村 の我々の成績は男3.8%,女3.3%であり,宜野 座村の成績と似ているが,従来の日本各地の成 績に比較すると,やや低率に属するようである. しかし我々の成績と従来の成績ではブドウ糖負 荷の方法,糖尿病の判定基準が異るので,直接 の比較はできない.すなわち従来は50gブドウ 糖を負荷し,食後2時間値が140 j/d」以上 を糖尿病型と判定していたのに対し, 1982年に 日本糖尿病学会l)は, 75gブドウ糖を負荷し, 食後2時間値が200m<j/d2以上を糖尿病型と 判定すると判定基準を変更しており,我々は新 しい方法で判定しているからである. 羽倉12)の研究によると, 50gGTT時の2時間 値140mij/d Iは75gGTTに換算すると, i6(m/ dlに相当するとのことなので,今回の我々の 成績で, 2時間値160 j/d」以上の者(境界 型1)を糖尿病と判定すると,糖尿病の頻度は 男5.8%,女4.1%となり,従来の日本各地で行 われた農村地区での糖尿病集団検診成績とほぼ 一致する. 75gGTT法で行った集団検診として伊庭,吉 川や高科の報告がある.伊庭,吉川13)は滋賀県 の40歳以上の住民6,487名を対象に集団検診を 行い,糖尿病有病率は男2.5%,女1.4%,男女 計1.7%と報告している.高科】4)は40歳以上の 広島県民2,940名を対象に集団検診を行い,糖 尿病有病率は男5.5%,女3.3%と報告している. 伊庭,吉川の報告は我々の成績に比して低率 であるが,これはスクリーニソグを尿糖だけで 行ったためと思われる.糖尿病集団検診の第一 次検診を尿糖によるスクリ一二ソグのみで行う と,軽症糖尿病者を見落とす可能性が大きい-5) からである.高科の成績は,男性で我々の成績 より高率であるが,男女合計では4.0%であり, 我々の成績と大差ないようである. 沖縄県で行われた中山ら9)やSakumotoら】0) の成績は, 50gGTT法であるにも拘わらず低率 なのはスクリーニソグを尿糖のみで行っている ためと考えられる.しかしSakumotoらの48歳 以上の公務員を対象にした成績は13.5%と高率 であるが,これは48歳以上であり,都市住民で
16 普天間 弘 ほか 肥満者が多いという特殊集団であったためと考 えられる. 今回の我々の成績は日本各地の成績8)ともほ ぼ似ており,沖組県農村のほぼ平均的有病率で はないかと思われる. 男女差にっては,欧米では男女同数とするも の3)あるいは女性に多いとするもの16)が多いが, 日本各地の成績はいづれも男性に高率8)であり, 今回の我々の成績も男性に高率であった.しか し有意差はなかった. 年齢については年齢とともに増加し,特に40 代から急増し,その後も増加を続けるとするも のと, 50代・60代にピークがあるとするものが あるが,我々の成績は60代にピークがあった. 70代で有病率が減っているのは,死亡等により 実際に減少しているのか,あるいは集団検診に 来ないため,見かけ上減少しているのか,今後 さらに調査を行うつもりである. 今回の検診で得た糖尿病者39名中半数の20名 が新規発見者であったが,伊江村ではこれまで の住民検診項目に血糖検査を行っていなかった ため,見落とされていた可能性が載く,糖尿病 の早期発見・早期治療の趣旨からすると,一次 検診に血糖検査を加えることが克く望まれる. 幸い昭和62年度の住民検診からは厚生省の指 導もあり,多くの市町村が血糖を検診項目に加 えたことは喜ばしいことである. 肥満者に糖尿病者の多いことは衆知の事実で あるが,今回の我々の成績も同様であった. また糖尿病者は高血圧者5) -5)や高コレステロー ル者13)M)に多いということも多数報告されてい るが,我々の成績もそれを支持していた. ま と め 沖組県の北部離島,伊江村民1,294名を対象 に,スクリーニソグを血糖と尿糖の両者で,二 次検診を75gGTT法で糖尿病集団検診を行い, 40歳以上で男3.8%,女3.3%の糖尿病有病率を 得た.これを従来の50gGTT法による判定基準 でみると,男5.8%,女4.1%となり,日本各地 の検診成績とほぼ同様であった. 糖尿病有病率は,肥満者,高血圧者,高コレ ステロール者に高率であった. 今回の検診での糖尿病者39名中半数の20名が 新規発見であり,血糖スクリ一二ソグによる糖 尿病検診の重要性が改めて示唆された. (本研究は,文部省特定研究費の助成を受けた. ) 文 献 1)小坂樹徳:糖尿病の診断に関する委員会報 告.糖尿病, 25:859-862, 1982. 2)松木駿:日本医事新報, No.1786:16,1958.
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Joslins dial莞tes mellitus, pp 13, Lea and Febiger, Philadelphia, 1971.
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A Diabetes
Survey
in a Northern
Island
in
Okinawa
Hiromu Futenma, Michiko Yoshida
First Department of Adult Health School of Health Sciences
Faculty of Medicine University of the Ryukyus
Abstract
We performed diabetes survey of 1,294 inhabitants in Ie Island which is situated in northern part of Okinawa.Both blood and urinary glucose were measured as a screening test, and 75gOGTT were carried out as a second step test.
The prevalence of diabetes mellitus more than 40-years-old were 3.8% and 3.3% in male and female, respectively.When these results of blood glucose levels were judged by the criteria of 50gOGTT made by Japan Diabetic Society, the prevalence of diabetes were 5.8% in male and 4.1% in female,
which showed almost similar values to that of the results obtained in other areas of Japan. Higher prevalence of diabetes was observed in patients with obesity, hypertension and hyperchole-steremia. Out of 39 diabetic inhabitants, 20 were newly diagnosed ones, which suggests the importance
of diabetes survey with blood glucose measurements.