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ダイズの葉齢進展モデルを活用した多筆圃場における帰化アサガオ類の適期防除

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Academic year: 2021

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原著論文 要 約:ダイズ多筆圃場における帰化アサガオ類を防除す る目的で,ダイズの葉齢進展モデルに基づく除草剤体系処理 の効果を農事組合法人で調査した。モデルによるダイズの葉 齢の誤差は 0.4~1.9 日(二乗平均平方根 0.11~0.56)であり, 防除適期を推定する上で実用可能と考えられた。推定した防 除適期に基づいてダイズ 2 葉期のベンタゾン液剤と 5 葉期の グルホシネート液剤の処理が実施できた圃場では,マルバル コウおよびマメアサガオの残草面積割合は不適期に実施した 圃場と比較して低下する傾向が認められた。しかし天候不良 等による作業遅延のため,52~81%の圃場では適期散布が できず,全体では本除草剤体系処理の実施前と比較して明瞭 な残草量の低下は認められなかった。特にマメアサガオはマ ルバルコウと比較して葉齢進展速度が速く,防除適期が短い 傾向であり,除草剤による防除はより困難になると考えられ た。また,ダイズ 2 葉期のベンタゾン液剤処理が遅れるほど 残草面積割合は前年よりも高くなる傾向が認められ,帰化ア サガオ類の防除体系ではダイズ 2 葉期の適期防除を考慮した 作業計画の立案がより重要であると考えられた。 キーワード:ダイズ多筆圃場,適期防除,ダイズ葉齢進展モ デル,マルバルコウ,マメアサガオ

緒  言

近年,農業人口の急減,農業従事者の高齢化,農村地域の 過疎化などによって労働力が不足する中で,担い手不足や耕 作放棄地の増加といった地域の課題に対応するため法人形態 の集落営農が増加する傾向にある(農林水産省 2019)。集落 営農法人の集積面積は非法人と比較して大きく,50 ha 以上 の集落営農数の割合は全体の 20.6%に達する(農林水産 省 2019)。特に中山間地域においては小面積圃場や不整形農 地の集積化が進み,平地と比較して作業効率が劣ると考えら れる。さらに,圃場が分散している場合においては,適期に 除草管理を実施することがより困難になると予想される。広 島県東広島市の農事組合法人 F(以下法人 F とする)では, 近年ダイズ圃場において帰化アサガオ類が侵入,蔓延し,ダ イズの収量低下の原因となっている。また,深刻な場合には 収穫を放棄する圃場が散見され,農地の集積化,農地管理面 積の増加に伴って,同様の事例が全国的に増加していると考 えられる。 橘ら (2017) は, ダイズ晩播狭畦栽培におけるマルバルコウ (Ipomoea coccinea L.) の防除では,播種後出芽前の土壌処理 剤,ダイズ 2 葉期のベンタゾン液剤,ダイズ 5 葉期のグルホ シネート液剤畦間・株間処理の除草剤 3 回処理体系が有効で あることを報告している。一方,ベンタゾン液剤では子葉の 帰化アサガオ類でも完全に枯死はせず,3 葉期以降の枯殺は 困難であることが明らかになっている (澁谷ら 2006; 杉浦・ 平岩 2008)。また,蔓化した場合はグルホシネート液剤処理 後も腋芽から再生する可能性がある(農研機構中央農業総合 研究センター 2012)。従って,ダイズ圃場での帰化アサガオ 類の防除においては,帰化アサガオ類の生育が進行する前に 除草剤を適期に散布することが重要である。 農地の集積に伴って複雑化する作業計画の立案や圃場管 理に対して,ICT を活用した経営管理支援システムの活用が 推進されている。既に作業計画・管理支援システム(PMS) (吉田ら 2009) や,Akisai(富士通株式会社),KSAS(株式会 社クボタ)等が利用されており,長野県ではAkisaiをモデル 経営体に導入することで生産性が向上し,経営改善に繋がっ たという報告事例もある(成 2016)。一方で,ダイズの雑草 防除管理に関して経営管理支援システムを活用した報告はな く,普及を目論む上では雑草防除支援に特化した簡易的な作 業支援システムが必要であると考えられる。そこで,筆者ら は前述の作業計画・管理支援システム(PMS)と比較して, 生産者が容易に利用できる Microsoft Excel を使用して開発し た適期作業支援システム(高橋ら 2017; 農研機構 2017, 2019) を活用し,多筆圃場を管理する集落営農法人での適期雑草防 除が実現できないかと考えた。 除草剤の散布適期を特定する上では,散布の基準となるダ イズの葉齢を正確に予測する必要がある。そこで,本研究で はまずダイズの葉齢進展モデルを作成し,現地圃場での利用 可能性について検討した。モデルにより算出されたダイズの 推定葉齢と適期作業支援システムを活用することで,圃場毎 の帰化アサガオ類の防除適期を提示し,法人 F は橘ら(2017) の体系処理を実施した。そして,秋季の帰化アサガオ類の残 草程度と圃場毎の作業履歴を調査し,除草剤の散布状況と残 草面積割合との関係から,ダイズ多筆圃場における適期体系 処理の効果を検証した。

ダイズの葉齢進展モデルを活用した多筆圃場における帰化アサガオ類の適期防除

浅見秀則

★ 1,2

・高橋英博

1

・奥野林太郎

1

・橘 雅明

1

・本間香貴

2 1 農研機構西日本農業研究センター 〒721-0973 広島県福山市西深津町 6-12-1 ★ [email protected] 2 東北大学大学院農学研究科 (2020 年 6 月 9 日受付,2021 年 1 月 28 日受理)

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材料および方法

1.調査対象法人の概要 試 験 は 2016 年~2018 年に広島県の中山間地域(標高 265~410 m)に位置する農事組合法人 F で実施した。法人 F は約 900 圃場,計 104 ha の面積を管理している。F 法人の ダイズ作付圃場のうち,およそ 7 割の圃場が連作であり,残 りの 3 割の圃場は水稲,麦,ダイズの 2 年 3 作体系や,麦あ るいはソバとの輪作体系である。従って,合計圃場数や圃場 の位置は他作物との転作や輪作の兼ね合いで年次毎に一部 異なった (217~227 圃場,計 16.8~18.3 ha)。ダイズは条間 30 cm の狭畦栽培であり,早生種の「サチユタカ」と晩生種 の 「あきまろ」 を栽培している。「サチユタカ」 の播種日は概 ね 7 月中旬~7 月下旬,「あきまろ」の播種日は 7 月下旬~ 8 月上旬で,「サチユタカ」の播種後に「あきまろ」の播種 へ移行していた。法人 F のダイズの作付状況を第 1 表に示 した。 近年,法人 F の圃場ではマルバルコウやマメアサガオ (Ipomoea lacunosa L.),が定着し,ダイズの収穫を放棄せざ るを得ないほど蔓延した圃場も確認され,帰化アサガオ類の 発生圃場数は年々増加していた。そこで,2015 年以前はダ イズ播種時のジメテナミド P・リニュロン乳剤(ジメテナミ ド P:510 g a.i. ha−1,リニュロン:720 g a.i. ha−1,以下 D 乳剤 とする)処理のみであったが,2016 年にはダイズ播種時の D 乳剤とダイズ 2 葉期のベンタゾン液剤(600 g a.i. ha−1,以下 B 液剤とする)処理の除草剤 2 回処理体系に移行した。しか し,帰化アサガオ類に対する防除効果は小さかった。そこ で,2017 年,2018 年は適期作業支援システムによる防除適 期を参考にした上で,播種時の D 乳剤とダイズ 2 葉期の B 液剤,ダイズ 5 葉期の非選択性茎葉処理剤グルホシネート液 剤(925 g a.i. ha−1,以下 G 液剤とする)畦間・株間処理の除草 剤 3 回処理体系(橘ら 2017)を実施した。 除草剤散布にはブームスプレーヤ(BSA-500E-2;最大散 布幅 7.8 m, 株式会社丸山製作所) を使用し, ダイズ 2 葉期の B 液剤散布後に,6 連 (5 条用) の吊り下げノズルと大豆畦間 株間用広角除草ノズル(ヤマホ工業株式会社) を同ブームス プレーヤに装着し,ダイズ 5 葉期の G 液剤散布を実施した。 B 液剤の散布作業日数は 2017 年では 10 日(1.65 ha 日−1), 2018 年では 7 日 (1.33 ha 日−1),G 液剤の散布作業日数は 2017 年では 6日 (1.05 ha 日−1),2018 年では 11日 (1.31 ha 日−1) で あった。B 液剤と G 液剤の両剤を散布した圃場数は 2017 年 では 85 圃場,2018 年では 114 圃場であった。B 液剤あるい は G 液剤のみを散布した圃場数はそれぞれ 2017 年では 131 圃場,0 圃場,2018 年では 0 圃場,71 圃場であった。一方で, 両剤共に未散布の圃場数は 2017 年では 11 圃場,2018 年で は 32 圃場であった。 また,2018 年の帰化アサガオ類の達観調査時にはダイズ の生育状況についても観察調査を行い,ダイズに対する顕著 な湿害が確認された圃場は 19 圃場で全体の 9%,シカ等に よる食害が確認された圃場は 24 圃場で全体の 11%であった。 2.調査方法 気温は,法人 F(標高 280 m)に設置した気象観測装置 (FieldServer V,株式会社イーラボエクスペリエンス)によっ て,10 分間隔で計測した。 圃場管理情報については,法人 F の作付台帳を基にした。 台帳には各圃場の地番,圃場面積,各年の作付状況等の情報 が含まれる。ダイズの播種日は播種に用いたトラクタの走 行軌跡を基に圃場毎に推定し,不明確な情報については法人 職員からの聞き取りにより修正した。トラクタの走行軌跡は 3G/GPS トラッカー(TR-606DJ,株式会社 GISupply)とトラッ カーシステムの運用アプリケーション eZfinder Business(株 式会社 GISupply)を用いて取得した。また,各種除草剤の 散布日は,法人 F に作成を依頼した作業記録を基にして圃 場毎に特定した。 ダイズの圃場内平均葉齢およびマルバルコウ,マメアサガ オの圃場内最大葉齢について,2016 年は 7 月 13 日から 8 月 26 日に計 6 回,2017 年は 7 月 19 日から 8 月 30 日に計 7 回 調査を行った。葉齢の調査は圃場内の 3 か所において生育中 庸なダイズ 5 個体および生育の最も進んでいる帰化アサガオ 類 5 個体を対象とした。ダイズの葉齢は子葉,初生葉を除い て第 1 本葉を 1 葉目とし,帰化アサガオ類の葉齢は子葉を除 いて第 1 本葉を 1 葉目とした。2016 年の調査圃場数は「サ チユタカ」作付圃場が 17 圃場,「あきまろ」作付圃場が 5 圃 場,2017 年ではそれぞれ 31 圃場と 11 圃場であった。 第 1 表 F 法人のダイズ作付状況 年次 播種期間(播種日数) 作付面積(ha) 作付圃場数 サチユタカ あきまろ サチユタカ あきまろ 総計 サチユタカ あきまろ 総計 2016 年 – – – – 18.3 – – 218 2017 年 7 月 17 日~7 月 29 日 (12 日) 8 月 2 日~8 月 6 日 (5 日) 10.5 6.8 17.3 145 82 227 2018 年 7 月 17 日~8 月 6 日 (9 日) 7 月 26 日~8 月 8 日 (6 日) 12.1 4.7 16.8 153 64 217 2016 年は各ダイズ品種の播種期間,作付面積,作付圃場数は不明であった。

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帰化アサガオ類の残草面積割合を調査するため 2016 年~ 2018 年に全ダイズ作付圃場を対象に達観調査を実施した。 圃場毎に帰化アサガオ類各草種の発生面積割合を調査し,鈴 木ら(2010)の基準を基にして第 2 表のような 6 段階のカテ ゴリーに分類した。調査者による評価の偏りを防ぐため, 2 人または 3 人で同じ圃場を調査し,合議の上で数値を確定 した。調査は 2016 年では 9 月 7 日,9 月 8 日,2017 年では 9 月 11 日~ 9 月 13 日,2018 年では 9 月 18 日~ 9 月 20 日に 行った。 帰化アサガオ類の残草面積割合の年次変動を解析する際 には,ダイズ連作圃場のみを解析対象とした。また,B 液剤 および G 液剤の適期散布の有効性を検討するため,2 剤が適 期(散布適期葉齢+1.0 未満)に散布された圃場(以下適期 散布圃場とする)とそれ以外の圃場(以下不適期散布圃場と する)に分類した。不適期圃場には B 液剤または G 液剤の 1 剤のみが散布された圃場および両剤を散布したものの,片 一方もしくは共に不適期(適期葉齢+1.0 以上)に散布され た圃場が含まれる。適期散布圃場数は 2017 年では 42 圃場, 2018 年では 105 圃場であった。また,不適期散布圃場数は 2017 年では 160 圃場,2018 年では 80 圃場であった。なお, 両剤共に未散布の圃場も存在したが,雑草の発生が認められ なかったために法人 F が除草剤散布を意図的に回避した圃 場が含まれるため本研究では解析の対象外とした。 ダイズの葉齢進展モデルには鮫島(2000)が採用した Sinclair (1984) によるダイズ出葉速度 (LER, day−1) を用いた

推定モデル(式 1)を使用した。

LER = a × (T − Tb) (式 1) a は定数で Sinclair(1984)と同じ 0.018 leaf day−1°C−1を用いた。

T は平均気温,Tbは品種毎に設定する平均気温のしきい値で ある。Tbについては,2013 年, 2014 年に広島県福山市の農研 機構西日本農業研究センター(標高 2 m,以下試験場とする) 内圃場で調査した計 7 作付の結果から Microsoft Excel のゴー ルシークで最適値を算出した。Tbは品種毎に異なり,「サチ ユタカ」では Tb = 9.08,「あきまろ」では Tb = 10.53 であった。 調査時のダイズ播種後10日間の平均気温は22.4~28.7°C(平 均25.5°C),積算降水量は22~233 mm(平均78 mm)であっ た。推定モデル(式 1)によって算出した LER(day−1)の値 を積算し,ダイズの推定葉齢とした。また,播種日を起点と して葉齢を推定するため,播種時の仮想葉齢(初期値)を試 験場での試験結果(2013 年,2014 年)から算出した。「サチ ユタカ」では −2.9,「あきまろ」では −2.8 であった。 本研究では,圃場毎の除草剤の適期散布日を図示化する ため,Microsoft Excel による適期作業支援システム(高橋ら 2017; 農研機構 2017, 2019)を用いた。適期作業支援システ ムは,式 1 の推定モデルを用いてダイズ葉齢を予測するシー トと,そのデータを基に適期作業日を地図表示するための シートおよびマクロ(Microsoft Visual Basic for Applications) で構成される。ダイズの葉齢推定は[気温],[品種],[除草 剤],[モデル]シートで構成される。[モデル]シートにお いて,指定した気温,品種,除草剤のデータを各シートから 参照し,播種日からの葉齢進展が推定され,防除開始日が算 出される。そして,播種日毎に色分けされた地図が表示され る。第 1 図に適期作業支援マップの表示例を示した。 3.統計解析 達観調査による帰化アサガオ類の残草面積割合について は,圃場数を基にして年次間での比率の検定(Pearson のカ イ 2 乗検定)を行った。また,除草剤散布状況の違いによる 当年度の圃場分類比率および年次変動比率についても同様 にカイ 2 乗検定を実施した。統計解析には JMP13.0.0(SAS Institute)を用いた。

結  果

1.ダイズおよび帰化アサガオ類の葉齢進展 第 2 図に 2016 年,2017 年における「サチユタカ」および 「あきまろ」の葉齢進展モデルによる推定葉齢値と実測値の 差を示した。「サチユタカ」のダイズ 2 葉期前後(1.0 以上 3.0 以下) の葉齢差(モデルによる推定値-実測値) は −0.5~0.9, 中央値は 0.31,二乗平均平方根誤差(RMSE)は 0.35 であっ た。ダイズ 5 葉期前後 (4.0 以上 6.0 以下) の葉齢差は −0.8~ 1.2,中央値は −0.06,RMSE は 0.56 であった。また,「あき まろ」のダイズ 2 葉期前後の葉齢差は 0.2~0.7,中央値は 0.55,RMSE は 0.11 であった。ダイズ 5 葉期前後の葉齢差は −0.4~0.6,中央値は 0.23,RMSE は 0.26 であった。 第 3 図に 2016 年,2017 年のダイズの圃場内平均葉齢と帰 化アサガオ類の圃場内最大葉齢との関係を示した。マルバル コウ,マメアサガオの葉齢進展を線形近似した結果,決定係 数(R2)はそれぞれ 0.45,0.72 であり,回帰直線の傾きはマ ルバルコウよりもマメアサガオの方が高い値であった。ダイ ズ 2 葉期における圃場内最大葉齢の平均値はマルバルコウで は 5.7,マメアサガオでは 5.4 であった。また,ダイズ 5 葉 期における圃場内最大葉齢の平均値はマルバルコウでは 8.4, 第 2 表 達観調査による残草面積割合のカテゴリー分類表 カテゴリー分類 ポイント 帰化アサガオ類残草面積割合 無 0 発生無 微 1 10%未満 少 2 10%以上 20%未満 中 3 20%以上 50%未満 多 4 50%以上 80%未満 甚 5 80%以上 帰化アサガオ類各草種の発生面積を 0~100%の範囲で判定し 6 段階 に分類した。

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マメアサガオでは 8.8 であった。観察調査の結果,マルバル コウおよびマメアサガオの蔓化開始時期は早い個体でおおよ そ帰化アサガオ類の 6 葉期以降であり,これはダイズの 2~ 3 葉期に相当した。 2.帰化アサガオ類の残草面積割合 第 3 表に 2016 年~2018 年の帰化アサガオ類の残草程度を 示した。マルバルコウでは,「無」(発生無)に分類された圃 場割合は 2016年が 56%であり,2017年, 2018年は 64~66% であった。「微」(10%未満)に分類された圃場割合は 3 年間 で同程度(28~30%)であり,「少」(10%)以上に分類さ れた圃場割合の合計は 2016 年では 15%,2017 年では 4%, 2018 年では 8%であった。年次間でカイ 2 乗検定を行った結 果,2016 年と 2017 年および 2018 年との間には圃場のカテ ゴリー比率に 5%水準での有意差が認められた。マメアサガ オでは,「無」に分類された圃場割合は 2016 年,2017 年, 2018 年がそれぞれ 78%,67%,61%であった。また,「微」 に分類された圃場割合は 14%(2016 年),22%(2017 年), 26%(2018 年)であった。「少」以上に分類された圃場割合 の合計は 2016 年では 8%,2017 年,2018 年では 12%であっ た。年次間でカイ 2 乗検定を行った結果,有意差は認められ なかった。 第 1 図 適期作業支援システムによるマップの表示例 B 液剤の散布適期(ダイズ 2 葉期)をダイズの播種日からダイズの葉齢進展モデルによって推定し,散布日毎に色分けして地図上に表示した(2017 年)。表示例の範囲は東西約 4.0 km,南北約 2.5 km である。白色表示の圃場はダイズ以外(水稲,ソバ,野菜等)の品目を作付しており,図中の 圃場のうち 8 割以上の農地を F 法人が管理している。 第 2 図 ダイズの葉齢進展モデルによる推定値と実測値の差 2016 年,2017 年にダイズ 6 葉期未満の個体を調査した。2016 年は 7 月 13 日から 8 月 26 日に計 6 回,2017 年は 7 月 19 日から 8 月 30 日 に計 7 回調査した。2016 年の調査圃場数は「サチユタカ」作付圃場 が 17 圃場,「あきまろ」作付圃場が 5 圃場,2017 年ではそれぞれ 31 圃場と 11 圃場であった。 第 3 図 ダイズの葉齢と帰化アサガオ類の葉齢との関係 2016 年の 7 月 13 日から 8 月 26 日に計 6 回,2017 年は 7 月 19 日か ら 8 月 30 日に計 7 回調査を行った(マルバルコウ:n = 62,マメア サガオ:n = 61)。

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3.除草剤の散布状況と残草面積割合との関係 第 4 図に各除草剤散布時の推定ダイズ葉齢を示した。2017 年の B 液剤散布時(ダイズ 2 葉期)のダイズ推定葉齢が 2.0 以下の圃場数は 137 圃場(60%)であった。2.0 より高く 2.9 未満の圃場数は 60 圃場(26%),2.9 以上の圃場数は 19 圃場 (8%)であった。また,G 液剤散布時(ダイズ 5 葉期)の推 定葉齢が 5.0 以下の圃場数は 31 圃場(13%),5.0 より高く 5.9 未満の圃場数は 18 圃場(8%),5.9 以上の圃場数は 37 圃 場(16%)であった。2018 年の B 液剤散布時のダイズ推定 葉齢が 2.0 以下の圃場数は 1 圃場(0%),2.0より高く2.9未満 の圃場数は 104 圃場(49%),2.9 以上の圃場数は 9 圃場(4%) であった。また,G 液剤散布時の推定葉齢が 5.0 以下の圃場 数は 50 圃場(23%),5.0より高く5.9 未満の圃場数は 132 圃 場(62%),5.9 以上の圃場数は 3 圃場(1%)であった。 第 4 表に除草剤散布状況と帰化アサガオ類の残草程度との 関係を示した。2 か年の平均値を見ると,マルバルコウにつ いては,適期散布圃場の 72%が「無」,24%が「微」に分類 され,「少」以上は 6%であった。一方,不適期散布圃場の 平均 59%が「無」,35%が「微」に分類され,「少」以上は 適期散布圃場と同程度の 6%であった。カイ二乗検定の結果, 適期散布圃場群と不適期散布圃場群との間にはカテゴリー割 合の異なる傾向が認められた(p = 0.0508)。マメアサガオで は,適期散布圃場の 75%が「無」,20%が「微」に分類され, 「少」および「中」は 3%,「多」は 1%,「甚」は 0%であっ た。また,不適期散布圃場では 57%が「無」,28%が「微」, 3%が「少」,9%が「中」,2%が「多」,4%が「甚」に分類 された。カイ二乗検定の結果,適期散布圃場群と不適期散布 圃場群との間には 5%水準で有意なカテゴリー割合の違いが 認められた(p = 0.0335)。 第 5 表に除草剤散布状況と帰化アサガオ類残草面積割合の 年次変動との関係を示した。2 か年の平均値を見ると,マル バルコウについては,適期散布圃場群のうち,前年と同カテ ゴリーに分類された圃場は 55%,1 階級以上減少した圃場は 30%,増加した圃場は 15%であった。一方で,不適期圃場 群では 54%の圃場が前年と同カテゴリーであり,減少した 圃場は 24%,増加した圃場は 22%であった。カイ二乗検定 の結果,適期散布圃場群と不適期散布圃場群との間には有意 なカテゴリー割合の違いは認められなかった(p = 0.4645)。 マメアサガオについては,適期散布圃場群のうち,前年と同 カテゴリーに分類された圃場は 61%,減少した圃場は 20%, 増加した圃場は 19%であった。また,不適期圃場群のうち 前年と同カテゴリーに分類された圃場は 65%,減少した圃 場は 12%,増加した圃場は 22%であった。カイ二乗検定の 結果,適期散布圃場群と不適期散布圃場群との間には有意な カテゴリー割合の違いが認められた(p < 0.0001)。 第 5 図に除草剤散布時の推定ダイズ葉齢と残草面積割合の 第 3 表 達観調査による帰化アサガオ類の残草程度 草種 年次 カテゴリー毎の圃場割合(%) 無 微 少 中 多 甚 マルバルコウ 2016 年 (122)56 (65)30 (13)6 (10)5 (4)2 (4)2 2017 年 66 30 2 1 0 1 (149) (67) (4) (3) (1) (3) 2018 年 (138)64 (60)28 (7)3 (8)4 (3)1 (1)0 マメアサガオ 2016 年 (169)78 (31)14 (4)2 (7)3 (3)1 (4)2 2017 年 67 22 3 5 1 3 (151) (50) (6) (11) (2) (7) 2018 年 (133)61 (56)26 (7)3 (15)7 (3)1 (3)1 圃場毎に帰化アサガオ類各草種の発生面積を 0~100%の範囲で判定し,第 2 表に従って無~甚の 6 段階に分類した。 ( )の数値は圃場数を示す。 第 4 図 各種除草剤散布時の推定ダイズ葉齢 B 液剤:ベンタゾン液剤,G 液剤:グルホシネート液剤。ダイズの 葉齢は葉齢進展モデルで算出した推定値である。

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第 4 表 B 液剤および G 液剤の散布状況と帰化アサガオ類の残草程度との関係 年次 草種 散布状況除草剤 カテゴリー毎の圃場割合(%) 無 微 少 中 多 甚 合計1) 2017 年 マルバルコウ 適期3) 79 21 0 0 0 0 (33)2) (9) (0) (0) (0) (0) (42) 不適期4) 59 34 3 2 1 2 (94) (55) (4) (3) (1) (3) (160) 2018 年 適期 (68)65 (27)26 (6)5 (5)5 (0)0 (0)0 (105) 不適期 59 35 1 1 3 1 (47) (28) (1) (1) (2) (1) (80) 2017 年 マメアサガオ 適期 86 14 0 0 0 0 (36) (6) (0) (0) (0) (0) (42) 不適期 (91)57 (43)27 (6)4 (11)7 (2)1 (7)4 (160) 2018 年 適期 64 25 5 5 2 0 (68) (26) (5) (5) (2) (0) (105) 不適期 (45)56 (22)28 (1)2 (8)10 (1)2 (2)3 (80) 平均(%) マルバルコウ 適期 72 24 3 3 0 0 p = 0.05085) 不適期 59 35 2 2 2 2 マメアサガオ 適期 75 20 3 3 1 0 p = 0.0335 不適期 57 28 3 9 2 4 1) F 法人は雑草発生量の少ない圃場について意図的に除草剤散布を行わなかった可能性があるため,除草剤散布未実施の圃場は合 計(解析)に含めていない。 2)( )の数値は圃場数を示す。 3)2 剤が適期(散布適期葉齢+1.0 未満)に散布された圃場。 4)1 剤のみが散布された圃場および両剤を散布したものの,片一方もしくは共に不適期(適期葉齢+1.0 以上)に散布された圃場。 5)適期圃場群と不適期圃場群との間でのカイ二乗検定による p 値を示す。 第 5 表 B 液剤および G 液剤の散布状況と帰化アサガオ類残草面積割合の年次変動との関係 年次 散布状況除草剤 圃場数該当 1) 圃場割合(%) (残草面積割合の対前年比2) マルバルコウ マメアサガオ 変化無 減少 増加 変化無 減少 増加 2017 年 適期4) 23 65 35 0 83 4 13 (15)3) (8) (0) (19) (1) (3) 不適期5) 124 62 20 18 74 3 23 (77) (25) (22) (92) (4) (28) 2018 年 適期 75 45 25 29 39 36 25 (34) (19) (22) (29) (27) (19) 不適期 46 (21)46 (13)28 (12)26 (26)57 (10)22 (10)22 平均(%) 適期不適期 5554 3024 1522 6165 2012 1922 カイ二乗検定(p 値) 0.4645 <0.0001 1)ダイズの連作圃場のうち除草剤が散布された圃場を解析の対象とした(2017 年:147 圃場,2018 年:121 圃場)。 2)前年と比較して残草面積割合のカテゴリーが 1 階級以上変動した圃場。 3)( )の数値は圃場数を示す。 4)2 剤が適期(散布適期葉齢+1.0 未満)に散布された圃場。 5) 1 剤のみが散布された圃場および両剤を散布したものの,片一方もしくは共に不適期(適期葉齢+1.0 以上)に散布された圃場。

(7)

年次変動との関係を示した。マルバルコウおよびマメアサガ オの残草面積割合は B 液剤散布時(ダイズ 2 葉期)のダイ ズの葉齢が高いほど前年と比較して高くなる傾向が認められ た。一方,G 液剤散布時(ダイズ 5 葉期)の推定ダイズ葉齢 と残草面積割合の年次変動との関係は判然としなかった。

考  察

本研究ではダイズ出葉速度(LER)を用いたモデル(鮫島 2000; Sinclair 1984)と 2013 年に試験場内の圃場で調査した ダイズの葉齢から算出したパラメータを用いて,2016 年, 2017 年に法人 F で栽培されたダイズの葉齢推定を試みた。 ダイズの葉齢進展モデルによってダイズの播種日から推定 した葉齢の値と実測値を比較したところ,ダイズ 2 葉期前後 における RMSE は「サチユタカ」では 0.35,「あきまろ」で は 0.11,ダイズ 5 葉期前後における RMSE はそれぞれ 0.56, 0.26 であった(第 2 図)。RMSE から日数に換算すると,ダ イズ 2 葉期前後の予測においてはおよそ 0.4~1.2 日の誤差, ダイズ 5 葉期前後では 1.0~1.9 日の誤差であった。RMSE 値は 0.11~0.56 でいずれも 1.0 を下回っており,ダイズ 2 葉 期(2.0~2.9)および 5 葉期(5.0~5.9)の期間を推定する 上では,本研究で用いたモデルの推定精度は実用可能な水準 であると考えられた。 しかし,ダイズ葉齢の推定値と実測値の差(推定値-実測 値)の中央値はダイズ 2 葉期前後では「サチユタカ」が 0.31, 「あきまろ」が 0.55,ダイズ 5 葉期前後ではそれぞれ −0.06, 0.23 であった(第 2 図)。ダイズ 5 葉期前後の「サチユタカ」 を除いた中央値は 0.23~0.55 であり,推定値が実測値より も高い傾向であった。本研究で採用した橘ら(2017)の体系 処理では,B 液剤および G 液剤の散布時期が各薬剤の使用 時期の早限に相当するため,ダイズ葉齢の推定値が実測値を 上回ると農薬登録を逸脱した散布時期になる可能性がある。 従って,本研究ではダイズの葉齢進展モデルを用いて葉齢 2.0 および 5.0 を予測し,各除草剤の 「防除開始日」 を F 法人 に提示したが,推定するダイズの葉齢の最適な値(例えば葉 齢 2.3 および 5.3)についてはモデルの誤差に鑑みて今後検 討する必要があると考える。なお,ダイズの葉齢進展モデル のパラメータは 2013 年の試験場内で得た結果を基に決定し た。試験場と法人 F は直線距離でおよそ 50 km 離れており, かつ標高差が 250 m 以上ある。従って,試験年次や気候(平 均気温や気温の日較差等)が異なる条件で得たパラメータで あったが,モデルの精度は実用可能な水準であると考えられ た。今後はダイズの品種や地域によって Tbの値(平均気温 のしきい値)や播種時の仮想葉齢(初期値)を適切に設定す ることで,より高精度で汎用性の高いモデルとしての活用が 可能であると考える。 マルバルコウの残草面積割合は,2016 年と比較して 2017 年,2018年で減少傾向であり,2016年と 2017年および 2018 年との間にはカテゴリー比率に 5%水準での有意差が認めら れた(第 3 表)。また,2017 年および 2018 年においては除 草剤の適期散布圃場群と不適期圃場群との間で残草面積割合 のカテゴリー比率が異なる傾向が認められた(第 4 表)。さ らに,2017 年では適期圃場群のうち残草面積割合が増加し た圃場は 0%,減少した圃場は 35%であった(第 5 表)。以 上より,2017 年以降に導入した除草剤 3 回処理体系(橘ら 2017)が適期(散布適期葉齢+1.0 未満)に実施されたこと によってマルバルコウの残草面積割合は減少傾向になったと 考えられる。しかしながら,2018 年では適期圃場群におい ても 29%の圃場で残草面積割合は増加しており,除草剤 3 第 5 図 除草剤散布時の推定ダイズ葉齢と残草面積割合の年次変動との関係 B 液剤:ベンタゾン液剤,G 液剤:グルホシネート液剤。除草剤処理時の推定ダイズ葉齢は葉齢進展モデルで算出した。 解析対象としたのは,1.ダイズの連作圃場,2.ダイズ 2 葉期および 5 葉期の除草剤 2 回処理を実施した圃場,3.マルバルコウまたはマメアサ ガオの残草面積割合のカテゴリーが前年と比較して 1 階級(1 ポイント)以上変動した圃場,の 3 つの条件を満たす圃場である。解析対象圃場 数はマルバルコウ 62 圃場(2017 年:17 圃場,2018 年:45 圃場),マメアサガオ 57 圃場(2017 年:9 圃場,2018 年 48 圃場)。 箱ひげ図は,箱中の線が中央値,箱の下端が 25%値(第 1 四分位値),箱の上端が 75%値(第 3 四分位値),ひげの両端は箱の長さの 1.5 倍以内 にある最大値と最小値,ひげの外の〇は外れ値を示す。

(8)

回処理体系を適期に実施することのみが防除の成否を決定し ているわけではなかった。作物による庇陰はマルバルコウの 生育抑制に有効であり,ダイズ群落内の相対光量子束密度が 50%以下で生育の抑制や枯死に至ることが報告されている (Kurokawa et al. 2015)。F 法人のダイズ圃場においては,乾 湿害や獣害によるダイズの出芽・生育不良が観察され,2018 年の達観調査時の観察では 2 割程度の圃場でダイズの被陰が 不十分であった。よって,マルバルコウの残草面積割合を抑 制する上では,除草剤 3 回処理体系の適期実施に加えてダイ ズの被陰力を最大限に発揮するための栽培管理技術の向上が 併せて求められることが示唆された。 マメアサガオについては,除草剤 3 回処理体系導入前後の 残草面積割合の年次間差は認められず,「無」または「微」 に分類された圃場割合の合計は 2016 年が 92%,2017 年が 89%,2018 年が 87%で徐々に低下する傾向であった(第 3 表)。しかし,除草剤 3 回処理体系が適期に実施された適期 圃場群のカテゴリー比率は不適期圃場群と比較して有意に異 なり,「無」および「微」に分類された平均圃場割合は適期 圃場群では 95%に対して,不適期圃場群では 85%であった (第 4 表)。よって,マメアサガオに対しては,B 液剤および G 液剤の両剤を適期に散布することで単剤散布や 2 剤の不適 期散布と比較して防除効果が向上すると考えられた。ただ し,適期散布圃場群のうち,残草面積割合が減少した圃場は 平均 20%に対して,増加した圃場は 19%で同程度であった (第 5 表)。また, 不適期圃場群のうち, 減少した圃場は12%, 増加した圃場は 22%であった。以上より,除草剤 3 回処理 体系が F 法人のダイズ作付圃場におけるマメアサガオの発 生拡大を抑制しているものの,本研究の結果からは残草面積 割合の低下に寄与しているとは言えなかった。橘ら(2017) の提案した除草剤 3 回処理体系はマルバルコウに対する効果 を示したものであり,マメアサガオに対しては効果が劣る可 能性が考えられる。また,ダイズの生育不良に伴う庇陰力の 低下が防除効果に影響していることも考えられるが,本研究 では要因を明らかにすることはできなかった。よって,橘ら (2017)の除草剤 3 回処理体系のマメアサガオに対する防除 効果に関しては今後改めて検証する必要がある。 B 液剤では 3 葉期以降の帰化アサガオ類の枯殺は困難であ ることが報告されており(澁谷ら 2006; 杉浦・平岩 2008),蔓 化した場合には G 液剤処理後も再生する可能性がある(農 研機構中央農業総合研究センター 2012)。ダイズ 2 葉期にお ける帰化アサガオ類の圃場内最大葉齢の平均値はマルバル コウでは5.7,マメアサガオでは5.4であり,既に B 液剤の効 果低下の目安となる 3 葉期を越えていた(第 3 図)。従って, B 液剤を農薬登録範囲内(ダイズ 2 葉期~開花前)の早限で 散布した場合においても,一部の生育が進んだ個体に対する 防除効果は低下することが予想された。一方で,マルバルコ ウ,マメアサガオ両草種において,B 液剤散布時の推定ダイ ズ葉齢が小さいほど,残草面積割合のカテゴリーは前年と比 較して減少する傾向が認められた(第 5 図)。従って,橘ら (2017)の体系処理の効果を最大限に得るには,ダイズが 2 葉期に達してからできるだけ早く B 液剤の散布を行う必要 がある。G 液剤については,散布時の推定ダイズ葉齢と残草 面積割合のカテゴリーの年次変動との間には明確な関係性が 認められなかった(第 5 図)。従って,ダイズ 5 葉期の G 液 剤散布時期と比較して,ダイズ 2 葉期の B 液剤散布時期の 方が体系処理の成否により影響したと考えられる。 本研究では,ダイズの葉齢進展モデルを搭載した適期作業 支援システムを活用することで,F 法人における除草剤 3 回 処理体系の帰化アサガオ類に対する防除効果を検討した。そ して,除草剤の適期散布が実施された圃場においては帰化ア サガオ類の残草面積割合は低下する傾向であることが明らか になった(第 4 表)。しかしながら,除草剤の適期散布が実 施された圃場は 2017 年では 42 圃場,2018 年では 105 圃場 のみ (全体の 19~48%) で非常に少なく,その原因は適期作 業支援システムがあっても実際には作業が実施できない作業 計画にあった。従って,帰化アサガオ類の残草面積割合を低 減する上では作業計画の再考および作業優先度の検討が必要 であると考えられた。作業計画に関しては,播種や除草剤散 布の作業能率から除草剤 3 回処理体系を全圃場で実施可能と する播種面積の算出と計画の立案が可能である。しかし,ダ イズ作では梅雨時期の作業が多いことから降雨による作業遅 延のリスクもあるため, 例えば, 孫ら (2017) が開発した営農 計画策定支援プログラムのように降雨リスクを考慮したプロ グラムの活用も期待される。また,帰化アサガオ類の残草面 積割合をより効果的に低減する上では, ダイズ 2 葉期の B 液 剤の適期散布を優先することが重要であると考えられた(第 5表)。さらに,F法人のように複数種の帰化アサガオ類が圃 場に侵入している場合が想定される。本研究のようにマルバ ルコウとマメアサガオであれば,より葉齢進展が早いマメア サガオの方が防除はより困難であると考えられ (第3図), よ り生育が早く防除が困難な草種の防除作業を優先すべきであ る。また,前年までの残草程度を基に今後の発生リスクを評 価し,リスクの高い圃場に対して優先的に防除を実施するこ とも有効であると考えられる。水稲乾田直播栽培では,ヒメ タイヌビエとクサネムの埋土種子数が少ない圃場における除 草剤処理回数削減の可能性が示されており(橘・藤本 2017), 圃場の埋土種子数を参考にした圃場毎の除草剤処理体系の変 更も検討の余地がある。本研究で用いた G 液剤は畦間・株 間処理であるため,茎葉処理剤処理と比較して作業性にやや 劣るが,G 液剤に代わるフルチアセットメチル乳剤を組み入 れた新たな防除体系(農研機構中央農業研究センター 2020) の導入による防除作業能率の改善も今後期待される。

(9)

謝  辞

本研究の一部は農研機構生研支援センター「革新的技術開 発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」の「売れ る麦を核とする中山間水田輪作体系における収益力強化と省 力化の実証」で実施しました。また,本研究を遂行するにあ たり,農研機構技術支援部西日本第 1 業務科の門田克史氏, 伊達勇太氏をはじめとする諸氏にご協力を頂きました。ここ に記して心より御礼申し上げます。 引用文献

Kurokawa, S., M. Hajika and T. Shibuya 2015. Canopy height-to-row spac-ing ratio as a simple and practical onsite index to determine the time for terminating Ipomoea coccinea control in the Japanese soybean-growing systems. Weed Biology and Management 15, 113–121.

農研機構 2017.Microsoft Excel 用圃場色分け表示マクロプログラム, 職務作成プログラム,機構-M18/P 第 10761 号-1.http://www.naro. affrc.go.jp/collab/program/laboratory/warc/121592.html(2020年4月15 日閲覧) 農研機構 2019.大豆雑草防除適期をマップ表示する Microsoft Excel 用マクロプログラム,職務作成プログラム,機構-M21/P 第 10919 号-1.http://www.naro.affrc.go.jp/collab/program/laboratory/warc/ 131401.html(2020 年 4 月 15 日閲覧) 農研機構中央農業総合研究センター 2012.帰化アサガオ類まん延防 止技術マニュアル:大豆畑における帰化アサガオ類の防除技術. http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/publication_ narc_kika_asagao_boujo.pdf(2020 年 4 月 15 日閲覧) 農研機構中央農業研究センター 2020.診断に基づく大豆栽培改善技 術導入支援マニュアル:大豆栽培における難防除雑草の防除.https:// www.naro.affrc.go.jp/project/research_activities/soybeanzassoumanual_ full_20200312.pdf(2020 年 4 月 15 日閲覧) 農林水産省 2019.集落営農実態調査.https://www.maff.go.jp/j/tokei/ kouhyou/einou/(2020 年 4 月 15 日閲覧) 鮫島良次 2000.気象環境要因に対するダイズの生育反応の解析およ びモデリングに関する研究.農業研究センター研究報告 32, 79–91. 澁谷知子・浅井元朗・與語靖洋 2006.ダイズ作における一年生広葉 夏畑雑草のベンタゾン感受性の種間差.雑草研究 51, 159–164. Sinclair, T.R. 1984. Leaf Area Development in Field-Grown Soybeans 1.

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(10)

Controlling Ipomoea species in soybean

fields with a leaf age development model

Hidenori Asami

★1,2

, Hidehiro Takahashi

1

, Rintaro Okuno

1

,

Masaaki Tachibana

1

and Koki Homma

2

Summary

To control invasive morning glory (Ipomoea) species in multiple soybean fields of an Agricultural Cooperative Corporation, the effects of sequential herbicide applications based on a soybean leaf age development model were studied. Because the error between the estimated and observed number of days for a certain soybean leaf stage was 0.4–1.9 (RMSE of 0.11–0.56), the model was approved as practical for determining the time of applications of

herbicides. In the fields where bentazon and glufosinate were applied at the 2- and 5-leaf soybean stages, respectively, the per-centages of area infested by Ipomoea coccinea or I. lacunosa tended to decrease in comparison with those where the herbicide appli-cations were delayed or not performed. The effects of sequential herbicide applications in two successive years to reduce the infested area were unclear, because 52–81% of the total area of the soybean fields was not treated at the scheduled time due to bad weather.

Ipomoea lacunosa was more difficult to control than I. coccinea

because it grew rapidly and were missed easily at the application time of herbicides. In particular, there was a greater percentage of area infested by morning glory species, in comparison to the previous year, with increase in delay of application of bentazon. Therefore, timely control of bentazon at the 2-leaf stage of soybean is important for control of morning glory.

Keywords: multiple soybean fields, timely herbicide application, soybean leaf age development model, red morning glory, pitted morning glory

1 Western Region Agricultural Research Center, NARO, 6-12-1 Nishifukatsu- cho, Fukuyama, Hiroshima 721-8514, Japan

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