【連絡先】〒557-0012 大阪市西成区聖天下 1-8-8 サンリットハウス 201 号 Tel: 070-4007-7998 e-mail: [email protected] 【キーワード】中国ごみ問題、生活ごみ、杭州市のごみ分別、ごみ分別行動
中国杭州市における生活ごみ処理についての研究
○(学)陳宇馳1) 1)中央大学大学院 1.研究背景および目的 1970 年代から環境問題が世界的に重視されるようになった。この時期の中国では 1978 年に改革開放が始まり、経 済高度成長と都市化による発展が求めらた。しかし、中国では経済成長は達成されたものの、大気汚染や環境破壊、 ごみ問題等の環境問題が続々と発生し、現在、大きな社会問題になっている。 中国は 1990 年代から、ごみ問題を解決するためにごみの分別を開始した。2000 年に、中国建設部による「パイロ ット都市における生活ごみ分別収集の試みに関する通知」の下で、北京、上海、杭州、南京など 8 つの都市において、 ごみの分別収集のパイロット作業を正式に開始した。しかし、その事業から数十年たったものの、効果は著しいとは 言えない。また、2013 年~2018 年の中国の大中都市の固形廃棄物・汚染防止と制御に関する年鑑報告書(全国大、中 城市固体廃物 汚染環境防治年報)によると、中国の都市ごとのごみ排出量のうち、上位に位置する上海市と北京市の 生活ごみ排出量は年間およそ 700 万トンから 900 万トンである。他の都市は 300 万トンから 600 万トンであるため、 上海市と北京市の生活ごみの排出量は明らかに多い。しかし、上海市と北京市の人口、面積及び経済発展の程度など の側面を見ると、この 2 つの都市は中国の一般的な都市を代表できるとは言い難い。その中で、杭州市のここ五年間 の年間ごみ排出量はおおよそ 300 万トンから 400 万トンで、排出量の平均順位は全国 7 位となっており、ごみ排出量 の年間増加率は他の 7 都市より低い。これらの要素を考量し、本研究では、パイロット事業の対象となった都市の中 で杭州市に焦点を当てて検討を行う。この研究では、杭州市のごみ分別に関する現状を把握するために、政府側が行 ったごみ分別検査について分析を行う。 2.杭州市のごみ分別現状杭州市のごみ分類は、資源ごみ(可回收物 Recyclable)、有害ごみ(有害垃圾 Harmful waste)、生ごみ(易腐垃圾 Kitchen waste)、その他のごみ(其他垃圾 Other waste)の 4 つに分類されている。
表 1 杭州市のごみ分別種類と処理方法 ごみ分類 ごみ収集箱の色 処理方法 ごみ分類の内容 資源ごみ 青 リサイクル 紙、ガラス、金属、プラスチックなど 有害ごみ 赤 無害化処理 電池、廃棄薬品、電球など 生ごみ 緑 バイオガス発電、肥料化 食べ残し、生ごみなど その他のごみ 黄色い、灰色 焼却、埋め立て 汚れた紙、おむつ、埃、陶芸用品、吸い殻など 表 2 2019 年 10 月杭州市生活ごみ分別作業の状況に関するごみ分別検査の得点 ランキング 地域 分類設備 分類質量 分類補導 分類清掃運送 成績換算 1 余杭 81.80 75.80 73.20 97.50 82.08 2 蕭山 79.60 77.15 75.30 94.30 81.59 3 江干 87.07 74.70 67.40 96.80 81.49 4 西湖 79.73 79.10 61.10 95.60 78.88 5 上城 80.33 73.95 61.50 93.10 77.22 6 銭塘 76.67 70.25 60.45 95.60 75.74 7 濱江 78.00 67.45 64.00 94.20 75.91 8 下城 78.17 62.30 59.70 91.60 72.94 9 景区 63.10 75.10 55.70 91.40 71.33 10 拱墅 77.63 59.70 61.95 93.00 73.07 11 臨安 79.47 59.80 59.05 89.60 71.98 12 富阳 73.77 56.00 56.45 92.40 69.65 13 建德 69.27 56.10 56.65 86.70 67.18 14 淳安 65.83 53.30 56.25 95.00 67.60 15 桐廬 54.60 56.80 56.25 85.00 63.16 第31回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2020
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杭州におけるごみ分別の現状を把握するために、2019 年 11 月 25 日から 28 日に、杭州の市城管理委員会(略称:城 管委)およびごみ処理所を対象に聴き取り調査を行った。2019 年 1 月から 10 月まで、杭州市政府が公布した「杭州市 生活ごみ分別作業の状況に関する報告」のデータを用いて、ごみ分別の正確率およびごみ分別検査の得点について分 析を行った。 3.データ分析の結果 ごみ分別に影響を与える変数に関しては、「経済状況」、「人口規模」、「都市化の程度」に関する変数を作成した。「常 住人口 1 人あたり GDP」「第一次産業」「第二次産業」「第三次産業」の 4 変数を総和して「経済状況」を,「人口密度」 は「人口規模」を,「街道数の数」「郷と鎮の数」「社区の数」「村の数」の 4 変数を総和して「都市化の程度」をを作 成している。1 月から 8 月までのごみ分別の検査のデータは、有意な独立変数がない。2019 年の城管委での聴き取り 調査から、1 月から 8 月までの検査はパイロットテストの段階で、区ごとの検査数が少ないという問題があるため、 分析の結果は上記のようになった可能性がある。2019 年 8 月に杭州市の人民代表大会常務委員会により、新「杭州市 生活ごみ管理条例」が公布されたため、9 月から新たな基準で評価することになった。9 月からごみ分類設備、分類質 量、分類補導、分類清掃運送という 4 つの項目の得点の合計でごみ分別の結果を評価している。ここでは、最新の 10 月のデータを用いて、重回帰分析を行った。 分析結果についてみてみると、表 3 に示すとおり、ごみ分別の成 績に 5%水準で影響を与えているのは、「社区の数」で、社区の数が多 くなるほど成績が高くなる。10%水準での影響では、「村の数」が多く なるほどごみ分別の成績が低くなる。 以上のことから、社区の数の多い地域が村の数の多い地域よりご み分別の成績が高い可能性があることがわかった。ごみ分別の得点 の高い地域をみると、上城区、下城区、拱墅区においては、第一次産 業および村の数がまったくない地域である。杭州市全体を見ると、 分別得点の高い区は上城区、下城区、江干区、西湖区であり、重回帰 分析の結果と城管委の曹氏への聴き取りから、社区の管理能力が高 い地域の方が得点高いという可能性があることが明らかになった。 このことは、村の数が 411 個あるにもかかわらず成績は悪くない簫 山区に関する分析結果とも関連すると考えられる。簫山区は住宅地に一軒家が多く、ごみ収集箱は他の区のサイズよ り小さい。さらに、ごみの排出方法も他の区域と異なり、自宅の前に出すため、記名式と同じ意味を持つことから、 「管理」のしやすさという意味でうまくいっていると解釈できる。 4.考察 これまでの分析から以下の傾向が示された。第 1 に、ごみ分別に関しては、中国は日本と同様に市町村各自で管理 している。そのため、ごみ分別行動は各区の管理システムおよび管理能力に大きく影響される。第 2 に、中国の行政 機関を見ると、市→区→街道→社区という順で管理を行っている。社区がもっとも小さい管理機関で、住民たちのご み分別を管理している部門である。社区のある地域のほうが政府からの管理もしやすいため、ごみ分別の成績も高い ことが分析から明らかになった。 ただし、2020 年 6 月に杭州市の「在水一方」という社区委員会の付氏にオンラインで聴き取りを行った結果、政府 側は清掃員にごみ分別特別給料を支払うことによって、清掃員たちが「定時定点(決まった時間と場所)」で収集した ごみを再分別を行うことが分かった。そのため、今後はごみ分別の評価基準が再び変わる可能性があり、新たな検査 データを用いて分析を行う必要がある。 表 3 10 月成績の分析結果に関する分布 標準化係数 常住人口 1人あたりGDP 1.22 第一次産業 .52 第二次産業 -.50 第三次産業 -.91 人口密度 .25 街道数の数 .36 郷と鎮の数 .54 社区の数 3.59 * 村の数 -3.68 † 調整済みR2:.86 †p<.10,*p<.05,**p<.01 第31回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2020