パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 研 究 会 論 文 誌 Vol. 28 (2003. 3)
論 文
JSPE-28-33
潜 熱 蓄熱 器 の熱 電 発 電 へ の応 用
○
加藤
将
津吉
彰
道平
雅一
尼子
邦之
神戸市立工業高等専門学校 電気工学科
Application
to the themoelectric
generation
of a
Latent
heat
accumulator
Sho Kato, Akira Tsuyoshi, Masakazu Michihira, and Kuniyuki Amako
(Kobe City College of Technology)
Abstract
In case of the waste heat recovery in a minor scale incinerator, there are the following problems. The waste heat of a minor scale incinerator has unstable amount of generating, temperature, and generating time, because the system is operated only in daytime.
In this paper, the themoelectric-generation system which has a Latent heat accumulator was proposed, so that these problems will be solved. The themoelectric generator is applicable to recovery of unstable waste heat. However, when a capacity of the themoelectric generator is set to peak amount of waste heat, the themoelectric generator has an excess of capacity. Latent heat accumulator can reduce the capacity of the themoelectric generator, so that the cost of the waste heat recovery system could be lowered.
キー ワー ド: 熱電発電器、廃熱利用、潜熱蓄熱器
Keywords thermoelectric generator, waste heat recovery, latent heat accumulator
1. 蓄熱器利用熱電発電器 の意義
熱電発電器 の対象源 としてあげ られ てい る廃熱源
の特徴 として、低温であることや、100か
ら200℃
以上 であって も廃熱の発生量や温度が不安定である
ことが考え られ る。一定時間に限って間欠的に発生
する廃熱 の場合 その発 生熱量全てを熱電発電器で賄
お うとする場合、 図1の 様 に利用す る廃熱の ピーク
量に見合 った熱電発電器 の容量を確保す る必要があ
り、イニシャル コス トが大 きくなる。そ こで図2の
よ うに蓄熱器 を有す る熱電発 電システムの場合、熱
電発電器 の定格 は図1の システムに比べて低減す る
ことができ、蓄熱器が安価であれば、イニシャル コ
ス トも低減可能 となる。また、設備全体の稼働率 も
高 くな り、その結果、蓄熱器 コス ト<発 電器 コス ト
削減分で あれば導入効果がある。
2. 潜熱 と顕熱の比較
潜熱蓄熱 を用いた場合、融点での熱 の授受(蓄 熱 ・
放熱)が 行われ るので、顕熱に比べ熱電発電器 にお
い て は有利 な面 もあ る。 図3に 示す よ うに顕熱 蓄熱
器では蓄熱器か ら取 り出 される熱媒体の温度が次第
に低下す るので、熱電発電器 の出力 は温度差に比例
す るため、急激な出力低下が予想 され る・そ こで、
本研 究では潜熱蓄熱器 を試作 し、その潜熱蓄熱器 を
用いた熱電発電システムの蓄熱実験な らびに放熱実
験を行った。
図1. 蓄熱 器 を持 たな いシステ ム 図2. 蓄 熱 器 を有 す るシステム-147-3. 試作 した蓄熱器 の蓄放熱試験
図4の よ うに接続 して潜熱蓄熱器 の蓄放熱実験 を
行 った。 この図は蓄熱時の熱媒体の流れを示 してい
るが、バルブ操作 により放熱時 と蓄熱時の切 り替え
ができるようになってい る。
蓄熱材 の挙動がわか らないので蓄放熱 を多数繰 り
返 してか ら蓄熱材 を出来 るだけ一様 になるよ うに し
てか ら実験を行 った。蓄放熱特性 は図5の よ うにな
った。 蓄熱 時、 熱媒 体加 熱 装 置 で加 熱 され た熱 媒 体
油によって蓄熱器 に熱エネル ギーを供給す る。この
とき蓄熱器 の出入 口温度の差が大きいほ ど大きなエ
ネル ギーが蓄熱 され てい ることを示 している。実験
では20分 か ら50分 の間に融点付近で安定 した。放
熱時 は熱媒体加熱装置 による加熱 をやめ蓄熱 器にた
まった熱 エネルギーを放熱 して熱電発電器 に熱媒体
油 を使用 して熱エネルギー を供給 してい る。実験で
は放熱 を開始 して5分 か ら10分 の間に潜熱放熱部分
がはっき りと現れ てお り、熱電発電器 にお ける電力
回収に非常に有効 な特性 を有 してい るこ とが確認 さ
れ る。
4. 潜 熱 蓄 熱 器 の シ ミ ュ レー シ ョ ン 前 章 で の 実 験 結 果 か ら も わ か る よ うに試 作 し た 蓄 熱 器 は 熱 電 発 電 器 や 周 辺 装 置 に 対 し小 規 模 あ っ た た め に 放 熱 を 開 始 後5分 か ら10分 の 間 しか 潜 熱 放 熱 特 性 が 現 れ な か っ た の で、 シ ス テ ム 全 体 の 十 分 な 評 価 をす る こ とが 出 来 な い。 そ こで、 前 章 の 実 験 で 得 られ た デ ー タ に 基 に熱 電 発 電 の 出 力 特 性 を シ ミ ュ レ ー シ ョン した。 図6に シ ミュ レー シ ョ ン結 果 を 示 す。 これ は 蓄 熱 器 が 放 熱 を 開 始 して か ら10分 間 の 熱 電 発 電 器 の 出 力 で あ る。 図5か ら も わ か る よ う に8分 で 約14 [Wh]の 電 力 が 回 収 で き る。 5. ま と め 潜 熱 利 用 蓄 熱 器 を用 い た 熱 電 発 電 シ ス テ ム は 性 能図3. 蓄熱方式の比較
図4. 実験装置の概要
一: 熱電対
○: ストップバルブ(開 ●=ス トップバルブ(閉) ■: ユニオ ンテイー図5. 蓄熱器の蓄放熱特性
+蓄 熱器入口温度 -○-蓄 熱器出 口温度図6. 熱電発電の出力特性
発電 器出カ -■-正 味 出 力 -■-ポ ン プ損失 --■-正 味発電 電力童-148-的 に は200℃ 前 後 の 中 温 度 域 以 上 で は廃 熱 の 有 効 利 用 に 適 用 可 能 で あ る こ とが 確 認 され た。 しか し、 現 段 階 で は 次 の よ うな 問 題 が あ げ られ る。 (1) 熱 交 換 性 能 の 問題 現 在、 一 般 化 して き た潜 熱 蓄 熱 器 で あ る氷 蓄 熱 で も見 られ る よ う に、 固 体 の 伝 熱 特 性 の 悪 さや、 固 体 ∼ 液 体 間 の 体 膨 張 変 化 が 大 き い な ど、 熱 交 換 器 を 構 成 す る 上 で 制 約 が 多 い。 氷 蓄 熱 で は 多 種 多 様 な 蓄 熱 ・熱 交 換 シ ス テ ム が 提 案 され て い る の で、 そ れ ら の シ ス テ ム に つ い て 利 用 可 能 も の を ピ ッ ク ア ッ プ す る こ とが 可 能 で あ る。 (2) 蓄 熱 材 コ ス トの 問 題 顕 熱 蓄 熱 で は低 温 で は 水 が使 用 で き、100℃ を 越 え る 温 度 域 で も砕 石 と熱 媒 体 由 を 併 用 す る こ とで、 あ る程 度 の コ ス トに 低 減 で き る こ とが 確 認 され て い る。 一 方、 潜 熱 蓄 熱 の 場 合、 水 を 媒 体 とす る氷 蓄 熱 以 外 で は、 コ ス トが き わ め て き び しい。 塩 化 カ ル シ ウ ム な ど安 い 塩 を 用 い た 共 有 塩 の 利 用 が で き な い か 検 討 中 で あ る。 6. 今 後 の 研 究 予 定 前 章 で 行 っ た シ ミュ レー シ ョン は 実 験 デ ー タ を基 に 潜 熱 放 熱 特 性 が 現 れ た5分 か ら10分 の デ ー タ が 出 る も の と して 行 っ た 簡 素 も の な の で、 実 際 に どの ぐ らい の 蓄 熱 器 容 量 が 必 要 な の か な どが わ か らな い。 そ こ で、 蓄 熱 器 を 再 設 計 す る た め の シ ミ ュ レー シ ョ ン ソ フ トの 開 発 を今 後 の 課 題 と して い る。 この 方 法 と して は 熱 流 体 シ ミュ レー シ ョ ン ソ フ ト ・フ ェ ニ ッ ク ス の 応 用 を検 討 して い る。 ま た、 潜 熱 蓄 熱 器 の 代 表 的 な 氷 蓄 熱 を 利 用 し た さ ま ざま な 蓄 熱 ・熱 交 換 シ ス テ ム を も とに 蓄 熱 器 を 改 善 す る方 法 も検 討 す る。 以 上 の こ と を ふ ま え て 潜 熱 利 用 蓄 熱 器 を 有 す る 熱 電 発 電 シ ス テ ム の 妥 当性 を 検 討 し て い く予 定 で あ る。