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教職科目「特別活動」において学生に実践的指導力を身に付けさせる試み アクティブ・ラーニングを意識して

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Academic year: 2021

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はじめに

 本稿は,筆者が担当する教員養成系A大学の教職課程科目「特別活動(初 等)」における授業の現状と課題を省察することにより,わが国における特 別活動の教育的な意義や役割を明確にするとともに,教員志望学生にいかに 実践的指導力を身に付けさせるかを探ることを期したものである。  実践的指導力の養成を目指した研究は,例えば,小学生が新聞を活用した 調べ学習をグループで行い,その成果をプレゼンテーションする体験活動か ら自主性を促す学習効果を調査・考察した下田(2011)の研究⑴や,大学生 が学校行事の指導計画作成から模擬行事実習を取り入れた林・長沼(2008) の実践研究⑵などが挙げられる。以下,これらの研究動向に注視しつつ,筆 者が担当する「特別活動(初等)」における試みについて紹介し,その成果 と課題を考察していくこととする。

1.アクティブ・ラーニング

 中央教育審議会答申『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向け て』(平成24年8月28日)では,「生涯にわたって学び続ける力,主体的に考 える力を持った人材は,学生からみて受動的な教育の場では育成することが できない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から,教員と学 生が意思疎通を図りつつ,一緒になって切磋琢磨し,相互に刺激を与えなが

教職科目「特別活動」において

学生に実践的指導力を身に付けさせる試み

――アクティブ・ラーニングを意識して―― 常葉大学

白鳥 絢也

●実践的研究論文 ③

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ら知的に成長する場を創り,学生が主体的に問題を発見し解を見出していく 能動的学修(アクティブ・ラーニング)⑶への転換が必要である」と指摘し, 従来のいわゆる「知識の詰め込み型」中心の教育から,学びの意味を学生に 分かりやすく理解させた上で,教員と学生が相互に知性を高めていく「学生 主体型」の学士課程教育に換えていくことが重要であることを示している。  福島(2015)は,「能動的学修は,大学の教職課程科目において,学生に 実践的指導力や授業力を育成する際にも重要なことであり,これらを育成す る一つの方法として,学生に①学習者である子どもと同じ学習過程を「体 験」させること,②学習における充実感・達成感や共に学ぶよさを「実感」 させることなどが考えられる」⑷と指摘している。また,具体的には「学生 が主体的に課題を見つけ,その解決を図り,学習の成果を振り返る「課題解 決的な学習過程」を取り入れて充実感や達成感を体験させたり,「グループ ワーク」や「相互評価」などの学習形態を取り入れて学習内容を深く理解さ せたり,「共に学ぶよさ」を体験させたりすること」⑸を挙げている。  西川(2015)はアクティブ・ラーニングの学習方法について,「教師は課 題を与え,子どもは子ども同士で教え合い,学び合い,自発的に学習してい く授業」であり,「一人も見捨てない」ことの重要性を指摘する。⑹また, 従前の学習方法との違いについて,「学修者の能動的な学修への参加を取り 入れなければならない」⑺ことをおさえ,その効果の一つに「成績・学力向 上」⑻を挙げている。これらの指摘は,国立教育政策研究所(2013)の「特 別活動の充実」による三つの効果(「いじめの未然防止」「学力向上」「自己 有用感」)⑼とも通ずるものといえよう。  また,特別活動は集団による実践的な活動を特質としており,児童生徒が 学級や学校生活の充実・向上を目指して,自分たちの力で諸問題の解決に向 けて具体的な活動を実践することを意味している。北村(2015)は「(特別 活動は)教科書やノートを用いた机上でのいわゆる「座学」とは異なり「な すことによって学ぶ(Learning by doing)」(デューイ)を方法原理とする 体験的,実践的な活動を行う学習活動である」⑽と指摘する。このことからも, 特別活動とアクティブ・ラーニングは相互に密接な関係があると指摘できる。

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 これらのことを踏まえたうえで,以下,学生の授業力の向上を目指しアク ティブ・ラーニングを意識的に取り入れている筆者の授業実践について紹介 していく。

2.アイスブレイク・自己紹介

 本科目「特別活動(初等)」は,「理論と実践の融合」を目指し,児童と教 師相互の視点から考えさせることを念頭に授業を展開することに留意してい る。  冒頭部には毎時「アイスブレイク」として,小学校現場で活用できるさま ざまなワークを学生に体験させている。例えば,「どうもどうも」という ワークは,学生が教室内を歩き回りながら目の合った人と「どうもどうも」 と握手をしながら挨拶をし,じゃんけんをするという単純なルールである。 第1回目の授業において実践することにより,初めて出会った学生同士の緊 張をほぐすことに効果が見られた。また,筆者の小学校教員時の経験から, 学級懇談会において実施しても効果があることを知らせている。保護者は当 初戸惑うものの,握手に挨拶,じゃんけんといった簡単な動作により笑顔と 安心感が生まれ,その後の懇談会においても話しやすくなる効果がみられた ことを学生へ伝えている。  その他にも,「人間知恵の輪」や「人間椅子」というワークを実践させて いる(図1・図2参照)。これらのワークは,小学校の実際のさまざまな場 面で行うことが可能であり,例えば4月当初の出会いの場面や,6月半ばの 中弛みの時期などが考えられよう。ここで重要なことは,子どもたちへワー クに取り組ませる際の「教師側の意図」であることをおさえ,さまざまな体 験活動の背景にある教師側の思いを子どもたちへ伝えることが大切であるこ とを,実践後に学生へ伝えている。また,発達段階を考慮した指導の留意点 (高学年では異性を意識して取り組みにくい,低学年では怪我をする危険性 が高い等)や,ワークの中で子どもたち一人ひとりの個性(リーダーシップ がある,素直に指示に従う等)が見えてくることをおさえ,それらを見取る 「構え」が重要であることを伝えている。

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 そのうえで,重要な「評価」を常に意識させることに留意している。学生 の多くは毎時,ワークに夢中に取り組み,子ども時代に戻っているようであ る。学生に「学習者である子どもと同じ学習過程を体験させる」ことを意義 あるものにするために,筆者自らが学生一人ひとりの言葉がけや動きを正確 に見取り,ワーク後に評価を行っている。このことは,学生にとって子ども の気持ちを体感できることに繋がっているようである。  さらに,右のような「自己紹介」 (折り句)を紹介し,学生に作成さ せている(図3参照)。折り句とは, 言葉遊びの一つであり,氏名を平仮 名で縦書きにし,上から一文ずつ作 成し,最後に冒頭の文字(氏名)を 消去し,相手に自分の名前を考えさ せるというものである。この「自己 紹介」作成も,学生にとって子どもの気持ちを体感できることに繋がり,同 時に教員側の視点をも考えさせる効果がみられた。  以下,「アイスブレイク」及び「自己紹介」を実践した学生の感想を数点 紹介する。これらから,筆者のねらいや思いが学生へ伝わっていることがう かがわれる。 図1 「人間知恵の輪」 図2 「人間椅子」 や きとりがすき ま あぼうどうふもすき ◯だ いこんもすき た いのおさしみもすき ろ おるけえきもすき う っ,たべすぎてくるしい 図3 折り句(例)

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・毎時始めに行うワークにより,今まで話したことのない人とも話せて,自 然と笑顔やコミュニケーションが生まれた。また,普段仲の良い友だちの 新たな一面が発見できた。 ・児童にとって学級が安心できる場となり,友だちとの仲がさらに深められ たり,他者を思いやる心をも育てられたりすることを体感した。 ・ワークはあくまで手段であり,目的ではないことを学んだ。 ・「人間椅子」の場面では,(筆者が)立ち上がるときが危険であることを事 前におさえ,きちんと一斉に立ち上がるように声をかけていた。安全面も 考えながら授業を行うことを学んだ。 ・「折り句」を児童が一生懸命考えて発言することで,自分の名前を覚えても らうことができ,達成感を味わわせることができると感じた。 ・特別活動においては評価の視点がとても重要であることを学んだ。子ども たちの表現・活動の過程において一人ひとりの取り組みや,表情,その姿 勢を評価することに留意すべきことを学んだ。

3.理論と実践の融合を目指して―理論編―

 ここでは,授業において主眼を置いて取り上げている「理論」的な箇所に ついておさえていく。ここでの筆者の主なねらいは,①特別活動の出発点を おさえること,②「評価」の重要性を認識させること,③自学自習への意欲 を持たせることである。  まず何よりも大切なことは,特別活動の出発点である。1947(昭和22) 年・文部省「学習指導要領・一般編(試案)」における,「自由研究」がそれ である。小学校では必修「教科」の一つであり,教科の発展やクラブ活動, 当番・学級委員の活動などが行われていたことをおさえている。  また,この最初の学習指導要領が刊行された経緯について,山口・高田 (2009)の論考を基に詳述している。⑾一般的な理解としては,アメリカGHQ

の部局であるCIE(Civil Information and Education Section:民間情報教育 局)によって文部省へ指令が出され,昭和21年9月,「文部省の中に学習指

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導要領を編集するための委員会が設けられ,作業が始められた」⑿ことが直 接の契機となっている。ここで重要なことは,CIEの指令が出る以前,昭和 21年4月に「文部省内に設けられた「教科課程改正委員会」によって,教科 課程の改革のための検討と作業が精力的に進められていた」⒀という事実で ある。「教科課程改正委員会の作業は,当然それに続く学習指導要領作成の 作業に引き継がれ,生かされていく」⒁ことになる。昭和21年9月に始まる CIEとの交渉は,「それに先立って日本側で独自に発足し進められてきた作 業の成果の上に立って行われたことを確認しておくことは,戦後の教育課程 改革が,アメリカによって一方的に押し付けられたものであるという単純な 見方を戒める意味でも,極めて大切なこと」⒂である。  これらの理解のうえにたって,特別活動の目標(小学校)及び内容,平成 20年度版の学習指導要領における特別活動の改善の基本方針について触れ, 「育てたい能力・態度」は明確化しているものの,「評価・指導方法」は不十 分であることをおさえ,その後の指導計画の作成へと繋げていくよう配慮し ている。特別活動の評価のあり方については,文部科学省(2008)が示す 「児童のよい点や進歩の状況などを積極的に評価するとともに,指導の過程 や成果を評価し,指導の改善を行い学習意欲の向上に生かせるようにするこ と」⒃をおさえ,「指導計画の作成,計画に基づく活動,活動後の反省という 一連の過程のそれぞれの段階で評価する必要がある」⒄ことを実際の指導に 生かせるよう配慮している。  授業においては毎時パワーポイントを使用し,穴埋め式のプリントを作 成・配付して臨んでいる。重要語句やポイントは画面上赤字で示し,学生は それをプリントへ書き込む作業を行うこととなる。書くことにより,学修す べき内容を確実に自身のものにしてもらうことを意図しているとともに,眠 気防止効果にも繋がっていることが学生アンケートから明らかとなった。  その他,学生は毎時,授業後に出席カードを提出することになっているが, 裏面を自由記述欄としており,学生自身の本時のふり返りや授業の感想,教 員への質問,その他日常生活の報告等,自由に記述させている(図4参照)。 筆者はこれらすべてに返信コメントを手書きし,次時に印刷・配付すること

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を課している。受講者数90名の内,ほ とんどの学生がコメントを書くため時 間はかかるが,このコメント集は大き な役割を果たしている。出席カードの 裏面であるため,無記名で学生は率直 な思いを記すことができる。学生に とって,このコメント集は筆者との対 話であり,また,共に学ぶ仲間との対 話でもある。学生は,自分と同じよう な思いを持っている者或いは真逆の考えを持った者がいることを知ったり, 誰か分からぬ同級生の鋭い指摘や深い考察に感心させられたりする。このコ メント集により,学生はいつでも学修をふり返ることができ,同時に自学自 習への意欲を持たせることへと繋がることが期待できる。さらに,大人数授 業における「双方向授業」を可能にする一つの展望を切り拓いたといえよう。  以下,理論的な内容に関する学生の感想を数点紹介する。これらから,筆 者のねらいや思いが学生へ伝わっていることがうかがわれる。 ・特別活動の前身が「自由研究」という名の「教科」であったことに驚きま した。 ・これまで学習指導要領は,戦後処理の過程でアメリカから多分に影響を受 けて構成されていると思っていたが,実際には「教科課程改正委員会」の 検討によるものが先行して,日本独自に検討された過去があったことはど こか誇らしく感じた。 ・特別活動の内容それぞれにねらいがあり,それを達成するよう計画が立案 されていたことを知った。そして,特別活動は,日常のさまざまな学習や 活動と結びついていることを理解した。 ・やはり「評価」が難しいと感じた。授業中に先生が紹介してくれた書籍を 購入し,学修しようと思う(国立教育政策研究所教育課程研究センター『評 価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料【小学校 特別活 動】』,教育出版,2012)。 図4 学生コメント集

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・穴埋め式のプリントのおかげで,最後までまったく眠くならずに集中して 聞けます。

4.理論と実践の融合を目指して―実践編―

 最後に,学校現場を想定した「実践」的な部分で,本授業において取り上 げていることをおさえていく。ここでの筆者の主なねらいは,アクティブ・ ラーニングを意識したうえで,①「対話」を通して聞く力・話す力を向上さ せること,②「話し合い活動」を通して子どもと同じ学習過程を体験させる こと,③共に学ぶよさを「実感」させることである。  特別活動の核となる「学級活動」においては,「対話」及び「話し合い活 動」が重要となることは周知の通りであるが,いきなりグループでの話し合 いをさせることは難しいことである。杉田(2009)は,「人間関係を築く態 度を形成するための段階の踏み方」について,「まずはバディ(1対1)か ら」とし,「幼保段階では子ども同士の横の関係がつくりにくい」という発 達段階をおさえ,「その後いかに三人以上にしていくかを工夫する」ことの 重要性を指摘している。また,「一般的な方法としては,当初のバディとバ ディを合わせて四人にするという方法がやりやすい」とも述べている⒅  さらに,毎時学生に書いてもらうコメントカードからも,以下のようなも のが複数見られた。 ・他の授業では,いつも急にグループワークをやれと言われて結構きつかっ たので,1対1は正直とても楽しかったです。 ・数人のグループだと孤立して話さない人がいるのに対し,1対1は話さな いといけない空間だから,たくさん話したいことが話せた。  そのため,第一段階として「1対1対話」を設定し,ここでの話し合い活 動を通して,「自分の意見を相手に伝えること」と「相手の意見を正確に聞 き取ること」の練習を位置付けている(図5参照)。

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 例えば,テーマとして冨岡(2014) の論考⒆を基に「小学校時に経験し た特別活動」とし,最も印象に残っ ているものを一つ思い出し,①その 内容を紹介することと,②その活動 にはどんな意義があったと思うかに ついて伝え合う場面を設定した。こ のテーマは,自身の子ども時代の経 験をふり返ることにより,子どもの視点を感じ,考えることに繋がり,さら にどんな意義があったかを考察することにより,教師側の視点をも感じ,考 えることに繋がっていくことを意図したものである。  学生には,注意事項として,①「1対1」での話し合いであること,②3 回実施すること(3名と話し合うこと),③「話し合いカード」に自分の話 す内容についてまとめ,それを基に相手に説明をすること,④テーマについ て,一人2分間で説明すること(タイムキーパーは筆者),⑤互いに説明し た後,互いのカードに感想を書くこと(相互評価)を伝えたうえで実施した。  「1対1対話」では,最初のペアでの話し合いでは,2分間も説明が続か ない学生が多く見られた(1分間で終わってしまう者が多数)。しかし,対 話の相手を代えながら2回目,3回目と回数を重ねるごとに,どの学生も2 分間での伝え方を体得できるようになっていった。同時に,聞き方について 考えている学生も多く見られた。また,互いに説明した後,互いのカードに 感想・評価を書くことを設定したことで,学生自身が後にふり返り,自学自 習へと繋がる資料を得ることにも繋がった。  この「1対1対話」(一人毎時3名と対話)を授業で5回実践(計15名と 対話)した後,6名グループによる「話し合い活動」へと意図的に移行して いった。「話し合い活動」において取り上げたテーマの一つである「自身の 所属したい委員会」について紹介する。  まず,「以下の6つの委員会から,あなたが所属したい委員会を一つ選び なさい(小学校6年生を想定)。①代表委員会(学級委員),②図書委員会, 図5 「1対1対話」

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③保健委員会,④放送委員会,⑤給食委員会,⑥体育委員会」と紹介し,学 生は自分の所属したい委員会を一つ選び,その理由を「話し合いカード」 (※「1対1対話」で使用したものと同じ形式)に記入していく。その後, 6名一組のグループ討議を踏まえ,それぞれがどの委員会に所属するか決定 するという流れである。もし同じ委員会を希望する者がいる場合,まずは 「自分こそがふさわしい立場で意見を主張すること」とした。また,注意事 項として,①6人グループでの話し合いであること,②司会進行役を1名決 めること,③タイムキーパー役を1名決めること,④まず,一人1分間で説 明すること,⑤全員が説明した後,「話し合い活動」により全員の委員会を 決定すること,⑥終了後,1名分の感想・評価を書くこと,を伝えたうえで 実施した。  「1対1対話」を踏まえていたこともあり,1分間での説明はスムーズに 進んでいた。また,6名グループは大人数ではあるが,一人1分間の説明を 課したことにより,発言をしないまま過ごす者を出さないことに繋がった。 同時に,学生のほぼ全員が互いの意見をしっかり聞き合うことができている ようであった。  最後に,すべてのグループの司会進行役が,それぞれのグループにおける 話し合い活動の様子を報告する時間を設定し,情報共有の場とした。すべて のグループに同じ委員会希望者がいたため,話し合いは盛り上がっていたよ うである。  「話し合い活動」の最初の頃は,解決に至らないグループも見られたが, これも2回目,3回目とグループメンバーを代えながら回数を重ねるごとに, どの学生も話し合い活動の進め方を考えながら体得しようとする姿勢がみら れた。最終的には,当人同士の話し合いだけではなく,周りの者も意見を出 し合いながら,協力して解決へ向けての話し合い活動を行うに至ったことは 大きな成果であったといえよう。  また,必ず一人分の感想・評価を書くことを設定したことで,これも学生 自身が後にふり返り,自学自習へと繋がる資料を得ることに繋がっていた。  これらの実践を通し,改めて学生に対して,特別活動の特質は集団活動で

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あり,自主的活動であり,実践的な活動であることをおさえる。また,その 教育的意義は,「自分たちで生活の諸問題を解決しようとするたくましい子 どもが育つこと」「子ども相互,子どもと教師との人間的な触れ合いが深ま ること」「友達と協力して,チームで活動しようとする子どもが育ち,いじ め問題等の未然防止に役立つこと」⒇等が挙げられる。そこには,「対話」が 欠かせないことは明らかである。これら特別活動の特質や意義とこれまでの 実践(対話)とのかかわりを考察させることが大切である。  以下,実践的な内容に関する学生の感想を数点紹介する。これらから,筆 者のねらいや思いが学生へ伝わっていることがうかがわれる。 ・3人の話を聞き,みんなそれぞれ意義を深く考えていて刺激を受けた。特 別活動には生きる力を培う意義があると思った。 ・3回の説明で,段々と話がうまくなっていくような気がした。また,自分 の話す力と聞く力が伸びる気がした。 ・他の人の体験を聞くと,小学校時代の活動がよみがえってきた。児童と教 師両方の立場から見ると,ねらいはたくさんあるのだろうと感じた。 ・話し合い活動,楽しかった。嫌な委員会の押しつけ合いもあったけど,マ イナスな言葉ではなく,「○○さんは,真面目だから」などプラスの言葉を 使用し,「あ,そう?」と気持ちが揺らいでいた。 ・今回の話し合い活動を参考にして,児童の考え方が広がるような良い話し 合い活動を目指していきたいと思います。

おわりに

 本稿では,筆者が担当する教職課程科目「特別活動(初等)」において, 教員志望学生にいかに実践的指導力を身に付けさせるかを念頭に,アクティ ブ・ラーニングを取り入れた授業のあり方について実践をもとにまとめてき た。学生の感想から,理論と実践の融合を目指した一定の授業スタイル(冒 頭部のアイスブレイク~理論的学修~対話・話し合い活動)を確立してきた ことへの肯定的な意見が多かった。特に,「1対1対話」の積み重ねから,

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「グループによる話し合い活動」への移行に関しては,「自分が教壇に立った ときにも意識したい」という意見が多くみられた。これらのことから,特別 活動に関する「対話」及び「話し合い活動」に意図的に取り組むことが,学 生の特別活動への理解,考察の深まりと,実践的指導力を身に付けさせる授 業スタイルについて展望を切り拓いたという点が指摘できよう。  課題としては,実践に対する検証の方法が脆弱な感が否めない。研究の理 論的枠組みをより緻密にすることや,実証的な裏付けを得るための方法を開 発すること等が求められよう。また,児童の発達段階についての認識を十分 に考慮できていなかった点も改善の余地がある。これについては林(2013) の論考が参考になろう。  今後も筆者自身が小学校現場の特別活動の実践に積極的に足を運びながら, 科目担当者としての資質向上及び教員志望学生の実践的指導力を身に付けさ せる方途を探っていくことを自身に課していきたい。  [キーワード]  特別活動,アクティブ・ラーニング,実践的指導力,教員養成 〈注〉 ⑴ 下田好行「知識基盤社会を生きる能力を育成する教材としての新聞の可能性 ―新聞を活用した市民性学習の試み―」『日本NIE学会誌』第6号,日本NIE学 会,2011,1-10頁。 ⑵ 林幸克・長沼豊「教職課程科目『特別活動の研究』の学習効果に関する研究 ―模擬行事実習の教員役と生徒役による差異に着目して―」『日本特別活動学会 紀要』第16号,日本特別活動学会,2008,53-63頁。 ⑶ 同答申の『用語集』によると,「アクティブ・ラーニング」とは,「教員によ る一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取 り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって,認知 的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成を図る。 発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教室内でのグ ループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクティ ブ・ラーニングの方法である」と定義している(※下線部筆者)。 ⑷ 福島紘「毛筆書写の授業を通して,学生に「共に学ぶよさや課題解決過程に

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おける充実感・達成感」を体験させる試み~小学校国語科~」『星槎大学附属研 究センター研究集録』Vol.9,2015,16頁。 ⑸ 福島紘,前掲書⑷,16頁。 ⑹ 西川純『すぐわかる!できる!アクティブ・ラーニング』学陽書房,2015, 32-33頁。 ⑺ 西川純,前掲書⑹,19頁。 ⑻ 西川純,前掲書⑹,68-71頁。 ⑼ 国立教育政策研究所『楽しく豊かな学級・学校生活をつくる特別活動(小学 校編)』(教員向けリーフレット),2013,20頁。 ⑽ 北村文夫編著『教科指導法シリーズ 指導法 特別活動』玉川大学出版部, 2015,12-13頁。 ⑾ 山口満・高田喜久司「学習指導要領の変遷」日本学校教育学会編『日本学校 教育学会創立20周年記念 資料解説 学校教育の歴史・現状・課題』教育開発 研究所,2009,161-184頁。 ⑿ 山口満・高田喜久司,前掲書⑾,164頁。 ⒀ 山口満・高田喜久司,前掲書⑾,165頁。 ⒁ 山口満・高田喜久司,前掲書⑾,166頁。 ⒂ 山口満・高田喜久司,前掲書⑾,166頁。 ⒃ 文部科学省『小学校学習指導要領解説 特別活動編』東洋館出版社,2008, 122頁。 ⒄ 文部科学省,前掲書⒃,122頁。 ⒅ 杉田洋『よりよい人間関係を築く特別活動』図書文化,2009,87-90頁。 ⒆ 冨岡勝「教職課程科目「特別活動の理論と方法」に関する考察」『近畿大学教 育論叢』(第26巻第2号)2014,72頁。 ⒇ 国立教育政策研究所,前掲書⑼,2頁。  林は児童の発達段階についての認識に基づいて教材研究を進めることを指摘 し,学校種等と発達の特徴について詳細にまとめている。林尚示「児童・生徒 の発達段階」日本教材学会編『教材事典―教材研究の理論と実践―』東京堂出 版,2013,509頁。

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