企 業
企
業
の
法
理
西
原
寛
一
一 企 業法 の 生成過程 二 企 業法 と 隣接法 域 三 法 的人格 者 としての 企 業 四 企 業維持 の 法的理 念 五 企業活動 の法的特性 六 企業生 活 にお ける 利益調和 一 企 業 法 の 生 成 過 程 資本 主 義 な るも のは 、 一 團 の人類 の營利 經 濟 的需 要 充足 が、 そ の需 要 の 何 た る かを問 わず 、企 業 と いう道 程 に おい て 行 われ る と ころ に存在 する ( マッ クス。 ウ ェ ー バ ー ) ( 1 ) 。 われ わ れは 、 いま ま さ に この環 境 の中 に生活 し て いる。 か よ う な組織 の中 に お いて は、 人 は、 商人 であ れ、 一 般 人 で あ れ 、企 業 と 交 渉 を もた な いでは 、 そ の經 濟生 活を 營 む こと が でき な い 。 人 々 の經 濟 生活 は、 深 く企 業 の中 に編 み込 まれ て しま つてい るの であ る。 企業 とは 、私 經 濟的 自 己責 任負 擔 主義 のも と に、 継續 的 意圖 を も つ て 企畫 的 に經 濟 行爲 を 實行 し 、 これ に よ つて國 民 經 濟 に寄與 す る とと も に ( 公共牲 ) 、 企業 自體 およ び そ の 構 成員 の存續 發 展 のため 、 收 益を 舉げ る ことを 目 的 とす る ( 營企 業 の 法理 利性) 、 一 個 の統 一 あ る 獨 立 の經 濟 的生 活體 で あ る ( 2 ) 。 このよ うな 企 業 の明 確 な存 在 は、 近代 資本 主 義 、 す なわ ち産 業 革命 を 起點 とす る産業 資 本 の 成 立 發展 によ つて認 めら れ る現象 で あ るが、 これ に向 う素 質 傾 向 は古 く から存 在 し て いた の であ り、 決 し て突 發的 な も の では な い。 け だし 、人 類 の歴史 と とも に古 い ﹁ 商 ﹂ 現象 が 、企 業 の原 初 形態 と見ら れ る から で あ る ( 3 ) 。 商 とは 、言 う ま でも な く、財 貨 の流 通轉 換 の媒 介 を す る こと で、 これを業 と す る者 が商 人 であ る、 商 人 の出 現 は、自 給 自 足經 濟 より交 換 經 濟 へ の推移 と發展 とを 促 す原動 力 とな っ た 。 な ぜな ら 、商 人 の 出 現 によ つて創 ら れ た道 徳的 ・ 習 俗 的 ・ 經 濟的 およ び法 的 雰圍 氣 は、 溌 溂 た る發 展 力 と深刻 な る影響 力 と を それ自 體 のう ち に包藏 し て いた から であ る。 す な わち 、彼 の對象 とす ると ころ は、 一 般 公 衆 の需 要、 いわゆ る市場 であ わ、 そ の活 動 は、市 場 の 情 勢 を洞 察 し て價格 の 場 所 的 お よび時 間 的差 異 を 利用 す るに あ る。 特 定 の財 貨を 取 得 した り讓 渡 し た りす る ことは、 彼 にと つ て は單 な る手 段 に過 ぎず 、 究 極 の目 的 は、 利 益 の獲 得、 す な わ ち貨幣 價 値 の増 殖 にほか なら な い 。 し たが つて、 そ れ は無限 に進展 す るも の で あ つて、 この點 にお い て、有 限 の 需 要 の充足 を 目 的 と す る 一 家 の生計 維 持 と は題 を異 にす る。 かよ う にし て、 營 利 の目的 は 、 そ の到達 手段 に反 作 用を 及 ぼ し、 目的 の無限 性 に應 ず る物 的 ・ 永續 的組 織 を 生 み出 し、 各 個 の行 爲 を企 畫 的 に 、 合 目 的 々に、 か つ 打 算前 に合 理 化し て、 統 一 あ る 一 體 たら し め るよ う にな る。 こ れ は、 す な わ ち、 企業 の形成 を 意 味 す る。 要す るに、 商 の發 展 が企業 を 成 立 せし め た の であ る。 のみ なら ず 、 この商 は、 みず から を企 業化 す るの み でな く、 進 ん で他 の 生産 を企 業 化 す る よう に な る。 は じ め、家 内 經 濟 ま た は 共 同 經 濟 中 に補 充 的 に現 れ はじ め た商 は、 や が て新 し い經 濟組 織 の基 礎 を 創 り、 次第 に從來 の秩 序 に對 して 分解 作 用 を及 ぼし た。 すな わ ち、 商業 およ び商 業 資本 の 發 展 は 、 到 ると こ ろ に 生 産 の 方 向を ま す ま す交換 價 値 に向 わし め 、 生 産 の範 圍 を増 大 し 、 生 産 を多 様 か つ 世界 的 に し、貨 幣 を 世界 貨幣 に發 展 せし め た。 か くし て 、商 業 は 、 主 とし て使 用 價 値を 目 的 とし た 既存 の生産 組 織 に對 し て 、多 か れ 少 かれ 解體 作 用 を及 ぼし た の であ る。 む ろ ん 、舊 生 産組 織 の 解 體 の程度 如 何 は、 新 し い生 産 技術 を 含 む生 産 力 と そ 115
企 業 の導 入 に對 す る抵 抗 カ によ つ て 一 様 では な い ( 4 ) 。 ま た、 十 八世 紀 末 以來 、 産業 革 命 によ つ て 招來 せら れ た産業 資 本 の 成 立 は、必 ず し も從 來 の商 業 資 本 そ のも の の發 展 推進 し た も の とは断 定 でき な い であ ろ う ( 5 ) 。 しか し 、市 場 を對 象 と し、營 利 本 位 に 行 わ れ る近 代 の生産 が 、 計 算本 位 の 經 濟 の最初 の擔 當者 とし て 現れ た商 の基 本 的態 度 方 法を 學 ん だ こ と は、 疑 のな いと こ ろ であ る。 要 す る に、 固有 の商 人 と貨 幣 の出 現 は 、 生産 企業 の獨 立 お よび 商企 業 自 體 の分 化 に大き な 影響 を 與 え た の であ る。交 換 經 濟 は、 す べ て の者 を商 人 とし た、 と言 つ て も差 支 な いであ ろ う ( ジー ヴ ェ キ ン ク )( 6 ) 。 以 上 に述 べた經 濟 の發 展 に照應 し て、 これ を規 制 す る 法 の方 面 に お いて も、 發展 を遂 げ た。 はじ め固 有 の 商 を 對象 と した 商法 は、 一 層 本 質的 な 企業 の法 に 發 展 し た 。 も と より 、 こ のよ うな 發 展 に は 、時 の經 過 が必 要 で あ る。 最初 は 、固 有 の商 と 不可 分離 の關 係 にあ つた各 種 の 補 助 的行 爲 、 た とえ ば銀 行 取引 ・ 運 送營 業 ・ 仲 立商 ・ 代 理商 ・ 問 屋 ・ 保 險營 業 な ど、 いわゆ る廣義 の商 が 獨 立 の營業 とし て成 立 し 、 これ ら は、 法 的 にも 固有 の商 と同様 に取扱 われ る に至 つ た 。 この こと は、 中世 にお け る商 事裁 判 所 や市 場 お よ び定 期市 の裁 判所 の管 轄權 が、 上 述 の業 務 から 生 ず る 爭 訟 に及 んだ こと に よ つ て 推 察 で き る ( 7) 。 つい で、 ﹁ 工 業 の商 化﹂ 現 象 ( 8 ) 、 す なわ ち企 業 の 工 業 部 門 へ の進 出 に伴 い商 法 は これを も 收容 し た。 しか し 、 はじ め は 固有 の商を 本 位 とす る 傳 統 に支 配 せら れ 、 原 料 の 少 く とも 一 部 の 購 入 と 製 品 の販賣 と いう關 連 の う ちに財 貨 の 轉 換 性 を 認 め、 これ によ つ て 固有 の商 と同 視 す る基 礎 を與 えよ う とす る態 慶 を と つた 。 それ は 立法 の 進 化 に 際 し て過渡 的 に現 れ る舊 要素 のさ さや かな 抵 抗 現象 に ほ かな らな い。 や が ては推 移 し た 基 本 的事 實 を率 直 に 認 めな けれ ばな ら なく な る。 このよ う にし て、 企業 の本質 的 同 一 性 の前 に は、 原 料を購 入 す るか自 給 す るか な ど と いう こ とは問 題 でな くなり 、 こ れま で 商 の 概 念 決定 の要素 とな つ て いた ﹁ 轉 換行 爲 ﹂な るも の は、 止揚 さ る べき段 階 に進 ん で 來 る。 近代 商 法 の元 祖 と い われ る 一 八〇 七年 の フラ ンス商法 典 に お いて も、 製 造 工 業 や演 劇 營業 など は 、 す でに商 行爲 の範疇 に入 れら れ て いる ( 六三 二 條) 。
企業 の 法理 ま た 、 ド イ ツ で は 、 普 通 ド イ ツ 商 法 に 對 す る 一 八 六 五 年 の ウ ュ ル テ ン ベ ル ク 州 施 行 法 が そ の 先 鞭 を 着 け て 、 自 己 の 生 産 し た 財 貨-原 料購 入 の有 無を 問 わな い -を營 業 的 に賣却 す る 場 合 に商 法 の適 用 があ る 皆 を 定 めた ( 四條 )( 9 ) 。 一 八八 一 年 の スイ ス 債 務法 は 、 さら に 数 歩 を 進 め、 ﹁ 商業 ・ 製 造 工 業 そ の他商 人 的 方法 に よ つて處 理 せら れ る 營 業 を經 營 す る者 は、 そ の本店 の所在 地 にお いて商 業登 記 簿 に登 記 す べき義 務 を負 う﹂ と 規 定 し ( 八六五 條四 項、現行 九 三 四 條 一 項 ) 、 營 業 の對 象 の如 何 に かか わら ず 、 そ の方 法 に目標 を お く彈 力 性 のあ る限 界 を定 め た の であ る。 一 八 九 七年 のド イ ツ商 法も ま た 、 同 一 傾 向を 發 展 さ せ、 ﹁ 營業 的 企 業 に して そ の種類 およ び範 圍 により 商人 的 方法 に 整 備 した 營業 經 營 を必 要 とす る も の﹂ を商 法 上 の商業 中 に包括 し ( 二 條) 、 さら に株 式會 社 ま た は株式 合 資會 社 のご とき は 、營業 目的 の如何 を間 わず 、 た だ そ の 企 業 形態 の故 だけ で、 商人 性 が 認め ら れ た の で あ る ( 二 一 〇條二 項、三二 〇條三 項 、六條 一 項) 。 この後 者 、す な わ ち ﹁ 形式 商 人﹂ ( F o r m k a u fle u te )を 認め る思想 は 、 現行 の株式 法 に も 承 継 され て い る ( 三條 、 二 一 九 條 三 項 ) 。 わが 商 法 にお いて も 、明 治 四十 四 年 の改 正 に際 し、會 社 の營業 目 的 を ﹁ 商 行爲 ﹂ から 解放 し ( 四 二 條二 項、 現行五二 條二 項) 、 ま た 昭和 十 三年 の改正 に 際 し ては 、 店 舖 設備 に よる物 品 販賣 業 者 そ の他 に 商 人性 を附 與 し ( 四 條 二 項 ) 、遲 れ ば せな が ら スイ ス 法 やド イ ツ法 の新 し い 主 義 に接 近 し た。 このよ う にし て、 現 時 の商 法 の對 象 は擴 大 發展 して 、企 業 一 般 に及 ん でい る。 し たが つて、鑛 業 者 の ごと き原 始 生産 業 者 を も 包含 す るの が 常 であ る。 個 人 た る農 業 者 や林 業 者 な どが な お除 外 され て い る のは 、農 林業 が商 法 と性 質を 異 に す る から と いう より は 、む し ろ そ の企業 化が い ま だ 普遍 化し な い間 の歴史 的 合 理性 に 過ぎ な い も のと 認 めら れ る。 要 す る に、今 日 の商 法は 、 そ の名 稱 の示 す よ うな ﹁ 商 の法 ﹂ では な く て、 高度 資 本 主義 を 形 成 す る ﹁ 企 業 の 法﹂ に發展 し て いる の であ る。 (一 ) M . W e b e r , W ir t s c ha f t s ge s c hi c ht e , 1 9 2 3 , S . 2 3 8 .
企 業 ( 2 ) 拙 著 ・日 本 商 法 論 ( 改 版 ) 一 巻 一八 頁 以 下 参 照 。 な お 、 企 業 の 經 濟 的 意 義 に 関 す る 諸 説 に つ い て は 、 拙 稿 。 ﹁ 企 業 の 經 濟 的 意 義 ﹂ 經 濟 學 雜 誌 一七 巻 五 ・六 號 參 照 。 ( 3 ) L e f m a n n , Z u r Le n r e v o n d e r U nt e r n e h mu n g , in Di e p r iv a t e Un t e r n e hmu n g u n d ih r e B e t a t ig u n g s f o r me n, H e f t 1 , 1 9 14 , S . 1 0 3 A n m . 1 1 , S. 1 2 0 . (4) M a r x , Da s K a p it a l, B d . I II , 1 , Ka p . 2 0 , Vo l k s a u s g a b e S. 2 7 4 f f . , in s b e s . S . 2 8 3 . ( 5) 産 業 資 本 形 成 の 構 成 的 主 體 的 推 進 力 を 通 説 の ご と く 商 業 資 本 の發 達 の う ち に 求 め ず 、 中 産 的 生 産 者 層 の商 品 生 産 者 と し て の規 定 性 に 求 め る 注目 す べ き 見 解 に つ い て は 、 大 塚 ・ ﹁ 近 代 資 本 主 義 發 達 史 に 於 け る 商 業 の 地 位 ﹂ 近 代 資 本 、主義 の 系 譜 (昭 二 五) 七 三頁 以 下参 照。 (6 ) Si e v e k i n g, E n t w ic kl u ng, W e s e n un d B e de u t u ng d e s H an de l s , in G r un d r is s d e r Soz i a lo k on om i k V , 1 , 2. A uf l . , 1 9 2 5, S. 4 . (7 ) イ タ リ ヤ お よ び ド イ ツ の 法 源 に 基 づ く 詳 細 な 論 證 に つ い て は 、 G o lds c hm idt , H a n db u c h de s H a nd el s r e c h t s , B d . 1 , 2 . A u f l. 187 4/ 7 5 , S. 4 21 . A nm . 7. 参 照 。 ( 8) H ir s c h , D e r mo d e rn e Ha n d e l, in G r u n d ri s s d e r S o z ia lo k o n o m iK V 2 , 2 . A u fl . 19 2 5 , S . 5 . ( 9 ) S c h ir r m e is te r , D e r K a u fma n n s b e g r if f n a c h g e lte n d e m u n d K u n f tig e m d e u ts c h e n Ha n d e ls re c h t , Z HR . B d . 4 8 . S. 4 2 9. 二 企 業 法 と 隣 接 法 域 現在 の商法 の 對 象 と す る生 活關 係 が、 上 述 の ごと く企 業 で あ ると す ると、 企業 法 と名 づ く べきも のは 、 實質 的意 味 の 商法 だ け であ るか 。 これ、 つぎ に検討 を要 す る問 題 で あ る。 問題 と な るの は、第 一 に 、 民 法も ま た企 業 に 關 す る法 では な いか とす る論 であ る ( 1 ) 。 すな わ ち、 近代 民 法 におけ る 人 は、 必 然 的 に契約 と結 び つく こ との 豫定 せ ら れ た 商品 の所有 權 者 、 言 い換 えれ ば資 本 の所 有 權者 であり 、 そし て資 本
企業 の 法理 は、利 潤 獲得 を 目的 と し て、 計 畫的 継續 的 な意 圖の も と に 結 合 し つつ 存 在 す る 一 の統 一 體 、 いわゆ る企業 であ る から、 民 法上 の 人 も ま た、 企業 の主體 的 表 現 であ る、 と。 な るほど 、 民法 の中 にも 企業 に適用 のあ る規 定 は少 くな いから 、民 法 もま た企 業 に 關 す る法 だ と言 えな い ことは な いゆ し か し、 民法 にお け る人 は、 た だ私 有財 産 の主體 とし て普遍 的 抽象 的 に捉 えられ て い るに 過ぎ な い。 私有 財 産 の主 體 は、 同時 に企業 の主體 とな り得 るが、 しか し常 に 必 ず し も企業 の主體 と な ると は限 らな い。こ の ことは 、民 法 の身 分 法 におけ る人 を老 えれば わ か る こと で あ る 。 身 分 法も 近 代民 法 に 包括 さ れ て い る 以 上 は、財 産 法 ととも に 統 一 的 な人 間型 を そ こに發 見 しな けれ ば なら な い 。 ま た、民 法 の 財 産 法 に した と ころ で 、 公 益法 人 や無 償非 營 利 の規 定 が、 企業 に 關 係 のな い こ とは明 ら か であ る。 歴史 的 に見 て も、 企業 の 高 度 の展開 は、 よ うや く近 代産 業 革命 以來 の こと であ るの に、民 法 の 體 系 は、 わず か に 一 部 商業 資 本 の存 す る に過 ぎな か つた古 代 ロー マ にお いて 、 す でに 高 度 の 發 展 を 遂げ て いた の であ る。 む ろ ん、 現 在 の民 法 は、 かな り の程 度 に ﹁ 商 化 ﹂ して は い る が ( 2 ) 、 それ に は性質 上 も限 界 が あ る。 ま た、 資 本 主義 が 發 展 し、 いわゆ る經濟 生 活 の商 化 を生 じ た時 代 に お いて、 一 般人 と いえ ども 、 そ の 經 濟的 精神 およ び 生活態 度 に ついて何 ら か の影響 を 受 け る のは事 賢 で あ るが 、近 代 法の 對象 と し た類 型 的人 間を 、 ラード ブ ル フのよ うに 、 こ とご とく ﹁ 商 人 ﹂ とし て把 握 す る のは ( 3 ) 、 いさ さか行 き 過 ぎ であ る。 これ は彼 が、 獨 特 の商 法 の存 在 しな か つた古 代 や、 一 部 の商 人階 級 の商法 の 存 す る に過 ぎな か つ た 中 世 と比 較 して 、企 業 が發 展 し か つ 一 般 人 も ま たそ の適 用 を受 け る商 法 の 成 立 し た近 代 私法 の 特 異 性 を 全體 とし て強 調 す る比 喩 的表 現 に ほ か なら な い、 と 解 す べき であ る。 決 し て民 法 だけ を 切離 して、 こ の 公 式 に當 て はめ る べき ではな い。 現 に、 生活 を動 か す營 利 的精 神 にし ても 、 商 法 にお いて は必 然 的 ・ 顯 在的 であ る に反 し 、民 法 に お いて は偶 然 的 ・ 潜在 的 であ り、 その顯 在 的 な場 合 にも、 個別 的 ・ 非 組織 的 で あ る。 さら に 、 そ の生活 の實 現 にお い ても 、 商法 の反復 継 起性 ・ 大量 性 に對 し、 民 法 は断 片 性 ・ 小 量 性を 包 容 して いる。 そし て商 法 のか よう な特 性 こそ、 ま さ に私有 財 産 の 主 體 一 般 のた め に 存 す る の では な くて 、企 業 に 特 有 な 法規 範 にほ かな らな い。 もし 商 法 上 の人 を權 利主 體 た る企業 とし て把 握 す る こと が不適 當 で
企 業 あ るな らば 、 論者 のよ う に、 商 法上 の人 を ﹁ 商 人 ﹂ と して 把握 す る こと も、 同 じ く疑 問 で あ ると思 う 。 あ る いは、 民 商 二法 にお け る人 は同 じ く ﹁ 經 濟 人﹂ であ り、 ただ 商 法上 の ﹁ 商人 ﹂ は 、 そ の性格 に量 的差 異 があ る、 と辯 明 さ れ る かも 知 れな い ( 4 ) 。 し かし 、 それ ではた だ實 定 商 法 の概 念 に從 い、 實 定商 法 の 性格 を與 えら れ たも のと して 受入 れ るだけ の こ と で 、何 故 に かか る性格 の量 的 差異 が生 じ た か の實質 的 根 據 は、 明 ら か にさ れ な い。 も し資 本 の集 中 や組 織 化 が この 差異 の 發 生 原 因 だ とす るな らば 、 これ こそ商 法 が そ の對 象 た る人間 型 を 企業 と いう構 造 にお い て捉 えて いる ため に ほか な らな い 。 かか る 構 造 の中 に編 入 され な い單 な る 一 般 個 人 の所 有 權を 個 別 資本 とか企 業 と か いう こと は、 經濟 學 的概 念 とし ても、 一 般社 會 的 概念 とし ても 、 と うて い支 持 を受 けな いであ ろ う 。 要 す るに、 商 法 だけ が企 業 に 關 す る法 で は な いが、 商 法 は企業 に 特 異 な 法 であ る 。 そ して 、 この企業 に特異 な 法を も つ て 一 の法 域を 形 成 す る こと は、法 體系 を 歴史 的 ・ 社會 的 に理解 す る以上 、 是 認 され る こと でな けれ ば な ら ぬ。 問 題 の第 二は、 企業 の生 活 關係 には流 通 ・取 引 の面 と 生産 ・ 勞 務 の面 とがあ るが、 企 業 法 は こ の兩面 を含 む か どう か 、 と いう こと で あ る 。 もし 企業 法 が企 業 の全 生活 面 を規 律 す べきも のとす ると、 當 然 に生 産 ・ 勞 務 の面 を も無 視 でき な い わけ で あ る。 そ の結果 は、 い わゆ る勞 働 法 をも 企業 法 の中 に牧 め な けれ ば なら な い こ と にな る。 し かし な がら 、 法 體系 の成 立を 歴史 的 ・ 社 會 的 に考 え 、 一 の法域 にお け る 原 理 に 統 一 性 を 求 め よ う とす る 立場 か ら は、 現在 の 勞 働 法 を 直 ち に 企 業法 の 傘 下 に收 め る ことは できな い。 な ぜな ら 、 企 業 法 は商 法 の 發 展 した も の で あ るの に 、 勞働 法 は そ の 異 質 性 の故 に、近 代 民商 法 の 體 系 か ら分 化 した も の だ から であ る。 經 濟事 實 とし ては 、企 業 の 規 模 が擴 大 す る に伴 い 、 その經 營 活動 のた め に、 多 く の補助 者 が必 要 と な つて來 る 。 し か し、 そ の法律 關 係 は、 内 容 上 二種類 に區別 され る 。 一 は、 補 助 者 の對外 的 法律 關 係 、 と く に代 理權 の問 題 で あ り、 他 は、 營業 主 と補 助者 との對 内 的法 律 關係 、 と く に雇傭 關 係 の問 題 で あ る。 こ の兩者 は 、本 來 そ の性 質 を異 にす る 。 前 者 は、 商人 的 活動 の 一 の具 體的 表 現 で あ り、 商 品流 通 社會 の要請 す る 取 引 法 的精 神 が支 配 す る。 こ れ に 對 し、後 者 は、 商
企業 の 法理 品流 通 と は直接 の關 係 がな く 、主 と して 被傭 者 の人身 的 な いし 生存 權 的關 係を 内 容 とし 、 特 殊 の 社 會 政策 的 精神 の影響 を受 け るも の で あ る ( 5 ) 。 も つとも、 被傭 者 の生活 關 係 に おけ る 二 つの面 の性 質 の差異 は、 當 初 は 立法 者 の意 識 す る と ころ となら ず 、雇 傭關 係 の 事 項も ま た、 商 法内 にそ の地 位を 占 め て いた。 た とえば 、 一 八 〇 七年 の フラ ンス商法 典 の船員 の 規 定 、 ド イツ新 舊 商 法 の 商 業 補助 者 な ど の 規 定 、 わ が明 治 二十 三年 の舊 商 法 の代 務人 お よび商 業 使 用 人 の規 定、 明治 三十 二年制 定 當時 の新 商 法 の海員 の規 定 など が、 それ であ る。 右 のよ うな 現象 は、 法 の發 展 す る歴 史的 經 過 と して 理解 でき る であ ろ う。 も と も と、 立法 は 、實際 的 必 要 の 一 番 大 き な 方 面 から 漸 進的 に 實 現せ られ 、 そ の 體 系 化 ・一 般 化 は、 これ に遲 れ る のが常 であ る。 し た が つて、 工場勞 働 者 の重 要 性 が今 日 ほど で な か つた資 本主 義 經 濟 の發 展初 期 には、 比較 的 ま とま つた集 團 を なし て い る商業 補助 者 に對 し、 個別 的 雇 傭 關 係 にあ る 一 般 の被傭 者 よ りも 、 そ の保 護 の 必要 が 強 く意 識 せら れ 、あ た か も商 人 な いし船 舶 と の 外 面 的關 連 性 の 故 に、 商法 中 に收 容 され る ことは 、自 然 の結 果 で あ る ( 6 ) 。 し かし な がら 、被 傭 者 に對 す る社 會 政策 的 保護 の必 要 は、 そ の被 傭 者 の 從 事 す る業 務 の種 類 如何 には關 しな い。業 務 の差異 は、 ただ 保護 の態 様 を異 にす る事 由 とな る ことが あ る に過 ぎ な い。 し た が つて、 資 本主 義 經 濟 の 發 展 に伴 う各 種 工場勞 働 者 ・ 鑛 業 勞働 者 な ど の激増 に より 、 これ ら 被傭 者 保護 の立 法 は、次 第 に實 現 せら れ るよ う にな つた。 そし てか つ て先 駆 者 的役 割 を勤 めた 商業 使 用人 およ び船員 に關 す る立法 は 、 か え つて時 代 遲 れ の状態 とな つ た 。 す で に被 傭者 一 般 に 通ず る 勞 働 法 の存 在 す る こと が自 覺 さ れ る に至 つた 後 は、 商 業 使用 人 お よび船 員 保 護 の規 定 は、 こ れ を商 品 取 引活 動 を規 制 す る 商法 典 中 よの 分 離 す る こと が、 規 制 上合 目 的 々であ り 、法 の 體 系 上 も適 當 であ る と言 わ な け れば な ら な い。 現 に、 そ の後 の諸 國 立 法 の趨 勢 は、 この 方針 に 從 つ て いる の で あ る ( 7 ) 。 かよう にし て、補 助 者 の 雇 傭關 係 の規 定は 商 法 よ り分 離獨 立 し 、 この結果 、 商 法 は そ の對 象 を 一 元 的 に 純 化 す る こと とな つた。 そし て 企 業 法
企 業 は、商 法 の こ の 發 展 を 継承 し て い るわ け であ る。 要 す る に、 これは 法域 の分 化 に よ る法 發 展 の 一 様 相 に ほ かなら な い。 た だ、 こ こに注 意 す べき は、 被 傭者 の地 位 の 向上 強 化 と とも に、 勞 働 關 係 の中 でも 問 題 が企 業 の組織 や活動 自 體 に 關 す る場合 を 生ず る こと であ る。 た とえ ば、 勞 働 株 や權 限 のとく に強 化さ れ た經 營協 議 會 な ど が、 これ で あ る 。 こ の 場 合 には 、勞 働 法 と企業 法 と の 境 界線 上 に位 す るも の とし て、 兩 法域 から そ れ ぞれ検 討 を 加 う べき で あ ろ う。 問 題 の第 三 は、第 一 次 大戰 後 ド イ ツ法 學界 に 現れ 、 こ れ に 附 與 せら れ る概 念 内容 がな お 一 致 し な い にも せよ 、 次第 に 普 遍 化す るに至 つた經 濟 法 ( 8 )な るも の が、 企業 法 と ど んな 關係 を も つか、 と いう こと であ る。 も と も と、近 代 の 商 法 . す なわ ち企 業 法 は 、個 人 主義 的 ・ 自由 主 義 的經 濟 環 境 のも と に生 成 し たも の で あ るが、 獨 占 經濟 の 進 行 と 大戰 の勃發 と により 、 ほ と んど 行詰 り の状態 にな つた。 す な わ ち、 大企 業 と中小 企業 間 、 各企 業 相互 間 、 企業 と 一 般 消費 者 間、都 市 と農 村間 、 國際 經 濟間 な ど、 あ ら ゆ る方 面 におけ る利 害 の對 立 が激 化 し、 從來 のよ うな 個別 本位 的 。 自 由 主義 的態 度 を 継續 し て いた の では、 根本 の經 濟組 織 自 體 が危 殆 に瀕 す る。 そ こ で、國 家 そ の他 の 社 會 な い し特 定經 濟組織 のよ うな 有機 的 構 成體 に内在 す る 自 衛 的 契機 が働 く まう にな る。 と ころ で、 社會 生 活 の變遷 に對 す る法 の 順 應 な いし指 導 は 、 通常 の 場 合 、 特 定 の法 の體 系 内 部 にお け る進 展 に よ つて行 わ れ る の であ るが 、生 活變 遷 が急 激 で あ つ て し かも そ の自 覺を 伴 う場 合 には、 一 方 にお いて、 法 的安 定感 の過 度 の 動 揺 防 止 に對 す る必 要 の ため 、他 方 にお い て、 從來 の法 體系 そのも のの 早急 な改 造 に 對 す る理論 的 な いし技 術 的 準備 不 足 のた め、 新 た に定立 さ れ る法 は、 これを 從來 の法體 系外 に置 き、 從來 の法 體系 内 にあ る法 律状 態 に實質 的 に 影響 せし め る方策 を 採 る こ とが稀 ではな い 。 近 年 に お け る 經 濟關 係 の立 法 の多 く が 民商 法 の體 系 外 で行 われ た の は、 ま さ にそ の例 であ つた。 そ し て こ の 種 の立法 の動機 が、自 由 經濟 の 弊 害 の 矯正 にあ る當然 の結果 とし て、 そ の目標 は、各 個 の企業 に超越 す る全體 的計 畫 調整 に置 かれ、 そ の實 現 の手段 には、 多 様 の國 家權 力 が背 景 と な つ た 。 した が つて、 かよ う な志 向 と態 度 とを 傅 続的 な 商 法 のそれ ら と對 立 さ せ、 そ こに 一 の 新 法域 を 設 定 しよ う とす る こと は、 法 部門 の 發 展 史 から 見 て、 決 し て理 由 のな いこ と ではな い。
企 業 の法理 た だ、 経濟 の 基 本 は 、現 在 で盗 依然 とし て私 的營 利 的企 業 であ つてみ れば 、 い わ ゆ る経濟 法 が傳 統 的商 法 な いし そ の 發 展た る企業 法 と將來 に お いても 絶對 に融 和し な い とす ,る こと には 疑問 が あ る。 あ るいは、 在 來 の姿 におけ る 個 人 主義 的 の 宮 由 主義 的 色彩 を 商法 に内在 す る 不 可變 的本 質 で あ ると 解 す る 説 があ る が ( 9 ) 、 商 品主 體 と 貨幣 主體 と の 問 に起 る べき關 係、 す な わ ち企業 生活關 係 を合 理的 に規 制 す るも のな らば 、時 代 によ ってそ の實 現 の 主 義 方法 に差異 を 生じ 得 る こと は、 紅 を 認め ても よ いであ ろ う。 あ るい はま た、 企業 を め ぐ る個體 の 經 濟的 利 釜 の調整 を 圖 る點 に傳統 的商 法 の本質 を 求 め み立場 に お いで も、 経 濟法 と商 法 と の峻 別 が、 そ の結 論 とし て出ざ れ る ( 10 ) 。 もか し、 各 企業 、 すな わ ち 経 濟學 者 の い わゆ る個 別資 本 が、 獨 占 の 進 行 と 經濟 危機 の到來 によ り それ 自體 の立場 か ら窮 境 を 打開 できす 、各 企 業 の 據 つて立 つ 國 民 經 濟、 すな わ ち いわゆ る社會 總 資本 め 立 場か ら 對立 を解 消 し て自 己保存 を し なけ れば な ら な くな つ た 段 階 に及 ん では、 個 體 と個體 との 集合 が 全體 經 濟 を形 成 し た時 代 と は異 なり 、 個體 と全 體 とは複 雑 に 有 機 的 に絡み 合つ て い るの で ,あ る。 個 體相 互間 の利 釜 を調整 す ると い つ て も、 こ の歴史 性 と經濟 秩 序 を捨 象 し てし ま つ て は、 現 實 の事態 に 應 す る 實 質 的解 決 は 不可 能 で あ ろ う。 な おま た、 企業 法 の 前 身 た る商法 を市 民 社會 の法 と し、 經 濟法 を 政治 國家 の法 と し て根 據 を分 け る ことも考 えら れ る。 し か し、 近 代 商法 が國 家 法 に探り 入 れら れ た後 にお いて は 、 こ のよ うな 區別 は、 観 念 的 に過 ぎ るよ う に思 わ れ る。 取 引界 の自釜 生 的な 法 に國 家 が 干渉 を避 け ると い つ て も、 そ れ に は限度 が あ り、 ま た 不 干渉 と いう こと自 體 も 、特 定 の時 代 の 經 濟 國策 に ほか なら な い。 現時 の 經 濟 法 は、 社會 主 義 経濟 の法 ではな く て、 個 別資 本 の 存 續 と調 和を基 盤 とす るも の であ るか ら、 經 濟 法 と商 法 とを 全面 的 に異質 のも のであ る、 と断 定 す る こと は でき な い。 も し 兩法 が全 く規 制 の 面 を異 にす るも のな らば 、 法 の効 力 に お いて 上下 の差等 のな い は す の兩 法 は、 あ た か も 平行 線 のご とき 關係 とな り、 一 般 法 と特 別法 と の 關 係 も存 在 す る に 由 な く、 經濟 法 によ る商 法 の變貌 な ど もあ り得 な い こと とな る。 こ れ は 、 はた し て事 實 の眞 相 と合 致 す るも の で あ ろ う か。 こ れ を要 す る に、 いわ ゆ る經 濟 法 と呼 ばれ るも の であ つても 、 そ れ が企業 を めぐ る商品 主 體な いし 貨幣 主體 の關 係 に
企 業 屬 す る規 範 であ る以上 は、 こ れ を 商 法 の 發 展 た る企 業 法 の中 に 攝 取 して 、 對象 た る生活 關 係 の有 機的 關連 を 無 用 に 分 解 せし めな い ことが、 今 後 の企業 法 學 の 課 題 であ ろ う。 む ろ ん、ど う言 つ た か ら とて 、 す べて の經 濟 法 が企業 法 と 融 合 す る とか、 この融 合 が 現實 に 與 えら れ た も の とし て す で に 、存 在 す ると か主 張 す るも の ではな い。 經 濟 法 に は、企 業 に 關 連 のな い個 人 の 消 費 生活 や、 原始 産 業 に 關 す るも のや、 單 純 な 行政 敵締 手續 に 過 ぎ な い 規 定 の少 くな い ことか ら見て も、 こ の ことは自 明 であり 、 ま た、 法 の體 系 化 に は、 學 的操 作 と法 的安 定感 と の關 係 上、 あ る 程 度 の 時 間 的 經 過を 必要﹂ とす る から であ る。 ( 1) 海 と えば 、 三藤 ・ ﹁ 商 人 ﹂ 法學 理 論 篇 八 六 ( 法律 學體 系 二部) 五 五頁 、 六 三頁 、 六六 頁参 照。 ( 2 ) 民 法 の 商 化 に つ いては 、 田中 ( 耕 ) ・ ﹁ 民 法 の 商 化 と商 法 の 自 主性 ﹂商 法研 究 二 巻 所 收 、 その 他 拙 著 。 前體 四 九 頁 所載 文 獻 参 照。 ( 3 ) R a db r uc h, D e r M e n s c h i m Rech t , 1 9 2 7 S. 7 f f . 參 照 。 (4 ) 三 藤 ・ 前 掲 五 六 頁 。 ( 5 ) つ と に 商 業 使 用 人 の こ の 兩 面 關 係 を 指 摘 し た も の と し て 、 田 中 ( 耕 ) ・ ﹁ 法 律 體 系 中 に 於 け る商一 法 の地 位 ﹂ 商 法 研 究 一 巻 一四 八 頁 以 下 、 同 ・ 改 正 商 法 總 則 概 論 六 頁 、 二 九 一 頁 以 下 参 照 。 な お ・ 拙 稿 ﹁ 商 法 の發 展 と 非 商 人 の地 位 ﹂ 法 協 五 一巻 五 號 三 六 頁 以 下 、 拙 著 ・前 掲 五 五 頁 以 下 參 照 。 (6) こ と に、 往 時 に お い て は 、 商 業 使 用 人 は 獨 立 の商 人 の 卵 で あ り 、 い わ ば 將 來 の商 人 で あ つ た 。 し か し 、 今 日 に お い て は 事 情 は 變 更 し 、 商 業 使 用 人 の過 程 的 意 義 は ほ と ん ど 失 わ れ て い る。 商 業 使 用 人 は 一 個 獨 自 の 社 會 的 地 位 を 構 成 す る に 至 り 、 こ れ と 使 用 者 と の間 の關 係 は 、 一 般 の 勞 働 關 係 に 著 し く 接 近 し た の で あ る 。 こ の點 に っ き 、 H ir s c h , De r mo d e r n e . H a n d e l , i n Gr u n d r is s d e r S o z ia l o k o n o m i k , V2 , 2 . Au f l. 19 2 5 , S. 2 7 . ; 芽 上 ・商 業 使 用 人 問 題 の研 究 ( 昭 一二 ) 二 七 頁 、 四 一 一 頁 以 下 参 照 。 カ ス ケ ル も 、 工 業 勞 働 者 と 工 場 主 と の蘭 係 に つ き 、 中 世 の 手 工 業 者 同 業 組 合 時 代 と 比 較 し て 、 観 様 の こ と を 言 っ て い る 。 ( Ka s k e l -De r s o h , Ar b e i t s r e c h t , 4 . Au f l. 19 3 2 , S . 2 .) ( 7 ) た と え ば 、 雇 傭 關 係 に 屬 す る 特 別 立 法 に よ り 從 來 の商 法 中 の關 係 規 定 を 無 用 な ら し め た も の と し て は 、 一 九 二 六 年 の フ ラ ン 弟 の 海 上 勞 働 法 ( c o d e d e t r a v a i l m a r i t i m e ) 、 わ が 昭 和 十 二 年 の 船 員 法 中 改 正 法 律 ( 昭 一二 法 七 九 ) 、 昭 和 四 十 三 年 の 商
企 業 の法理 店 法( 昭 一 三 法 二八) な どが これ であ る。 ( 8 ) こ こ には、 經 濟 法 そ のも のに對 す る論 議 は省 く。 經 濟 法 に つ いては 、峯 村 ・ 改 訂經 濟 法 の 基 本 問 題 ( 昭 二三) お よび同 書 巻末 所 掲 文 獻表 、 拙 著 ・ 前 掲 五 八頁 以 下參 照。 ( 9 ) 田 中 ( 耕 ) ・ 改 正商 法総 鋼 概論 四 頁 以 下、 同 ・ 商 法研 究 一 巻 一二九 頁以 下 、同 ・二巷 六 五 七頁 以 下參 照。 ( 10) たと え ば、 鈴 木 ・ ﹁ 經 濟 の變 遷 と商 法﹂ 杉 山 教授 還 暦祝 賀 論 文集 所 載 五頁 以 下 、 同 ・ ﹁ 經濟 統 制 法と 商 法 ﹂ 國 家 學會 雜 誌 五 七巻 一 號 八 六 頁 以下 、 石井 ・ 商 法 ( 上巻 ) 九頁 以 下、 二八 頁以 下 參 照。 三 法 的 人 格 者 と し て の企 業 企業 を 構造 的 に見 れ ば 、 それ は、 物 的 要素 す な わ ち 營 利 的 經 濟活 動 に向 け られ た 財産 と、 人的 要素 すな わ ち經 營首 腦 者 射 よ び經營 補 助 者 の兩 要素 か ら成 り 、 それ ら が有 機 的 に 組 織 化 され て活動 状態 にあ るも のであ る 。 と ころ で企業. 制 度 が各 人 の經 濟生 活 の調 和 的充 足 と い う法 の目 的 を達 成 す るた め そ の機能 を發 揮 す るに は、 企業 に對 し 法的 人格 者 と し て 法 の 世 界 に おけ る 存 在 を與 えな けれ ば なら な い ( 1 ) 。 それ は企 業 が法 秩 序 と して存 立 し得 るた め の技 術的 要請 であ る 。 これま で 實 定 法 とし て の商 法 は、 ﹁ 商人 ﹂ の概念 を 中 心 に 構 成 さ れ て來 た 。 し かし 、 この語 は、 あ まり に 往 時 の個人 商 人的 臭 味 があ つて、 物 化 ( V er s a c h lic h u n g ) され た今 日 の 經 濟主 體 ( 2 ) を 表 現 す る には不 適切 の 感 が深 い。 こ とに、 わ が商 法 の よう に、 ﹁ 商人 ﹂ 概 念 の基 礎 とし て ﹁ 商 行爲 ﹂ 概 念 を援 用 す る こと は、 ﹁ 商行 爲 ﹂ の定 め 方自 體 に 多 く の 難 點 があ る 結 果 とし て ( 3 ) 、立 法 技術 の點 から も 疑問 が あ る。 法的 人格 者 と し て企業 を 見 た場 合 、 そ れは 、 企業 化財 産 、 と く に固 定資 産 の所 有 者 で あ り 、 ま た企業 活 動 の權 利義 務 の歸 屬 者 で あ る。 實 定 法 の ﹁ 商 人﹂ 概 念 は 、 そ の表 現 が適 切 を缺 くけ れ ども 、 そ の意味 は、 企業 を 法 的人 格 者 の面 から 採り 上 げ たも の と 理 解 す べき で あ る。 し たが つて、 通論 のよ う に、 商人 と營業 とを 對 立的 に考 え、 權 利主 體 た る商人 が
企 業 客 體 た る 營 業 を所 有 す る と 解 す るご と には 賛 同 し難 い、 いわゆ る商 人 と營業 との關 係 は、 著 作 者 と そ の 著 作 物 と の關 係 、發 明家 とそ の發 明 品 と の 關 係 な ど と は異 な る 。 こ れ ら の場 合 には、 著作 物 や發 明品 は 、完 成 の 瞬 間 そ の 主 體 から 離 脱 して 客観 的 存在を 續 け 、 主體 との間 に所 有權 類 似 の 關 係 が 成立 し 得 る。 し か る に、企 業 の場合 にあ つ て は、 商 人 が經 營 を實 現し持 續 す る と ころ にそ の 存 在 が あ る の であ り、 商 人 は企 業 の 法的 統 一 のた め に 、 瞬 間 もそ の 地位 を空 し う す る こ とは でき ぬ。 すな わ ち、 企業 は、主 體 よ り分 離 獨 立 す ると いう時 が 少 しも な い。 シ ェ ー ンフ ェ ル トの いわゆ る ﹁ 永久 の未完 成 ﹂ ( e w ig e U n fe rt ig k e it ) であ る ( 4 ) 。 要ず るに 、 一 箇 の綜 合 的な 制 度 と して の 企 業 は 、權 利 主體 た る法 的人 格 者 の面 から これを 捉 え る こと が でき 、實 定 法 は、 これ を ﹁ 商 人﹂ と表 現 して、 いるも の にほか な らな いの であ る。 と ころ で、 法的 人格 者 とし て の企業 は、 いか な る場合 にそ の 存 在 が認 めら れ得 るか 。 實 定法 の 立場 とも ては、 法規 適 用 の明確 性 の要求 に 基 づき 、具 體 的 な限 界 を設 け る 必 要 が あ る。 この場合 、 法 的人 格 の 取 得 と企業 性 の發 現 と が 不可分 離 に 一 致 す るなら ば 、 企業 存在 の認 定 に は何 ら の問 題も 起ら な い。 それ は、 會 社形 態 によ る企業 の 場 合 であ る、 會 社 は、 企 業 の ため の み に生ま れ た純 粋 形象 であ つ て 、 そ の企業 性 は、 いわ ば先 天 的 性格 で あ る。 そ し て、會 社 は 法的 人格 者た る 存 在 に ほかな ら な いか ら、 會 社 の成 立 は、 同時 に企 業 の 成 立 で あ る 。 た だ、會 社 成 立時 期 の決 定 に ついて、 實質 的 に會 社 の物 的 お よび 人的 要素 の結 合 充實 の 時 期 を標 準 とす る か、 そ れ とも形 式 的 に設 立登 記 の 時 期 を標 準 と す るか に ついて 、立 法 主義 の差異 があ る に過 ぎな い 。 これ に反 し、 自 然人 ・ 國 家 三 地 方團 體 な ど のよ う に、 す で に 一 般 的 目 的 のた め に法 的人 格 を 認 めら れて い る 者 が、後 天 的 に企業 の 主 體 と な る場合 には、 何 ら か の明瞭 な 具 體 的徴 表 が必 要 で あ る。 し かし 、 ド イ ッ 舊 商 法や わ が 商 法 のよ う に、 ﹁ 自 己 の 名 を も つ で 商行 爲 を な すを業 とす る 者 ﹂ に 商 人 性 、す な わ ち企業 存 在 の徴 表 を 認め ること は、 ・商 人概 念 定 立 の基 礎 た る ﹁ 商 行爲 ﹂ 概 念 が弾力 性 を缺 く結 果 とし て 、 進 展 す る經 濟事情 に順 應 し得 な い缺 陥 があ る 。 また 企業 の 企 業 た る所 以 は、 そ の對象 とす る業種 の如何 によ る の ではな く て、 そ の 經 濟 的 志向 と機構 に あ る。 した が つて立法 技 術 の
企 業 の 法理 點 から い えば 、業 種 に 拘 泥 しな い で 、 營業 の形式 な いし範圍 を も商 人 概 念 の 基 準 に採 り入 れ る のが賢 明 で あ る ( 5 ) 。 法 的 人格 者 の存 在 は、 法 的 取引 の世 界 にお いて 明確 でなけ れば な ら ぬ。 無 形 の存 在 た る法人 は、自 然 人 の場合 とは 異 な り、 そ の存在 を 確 認 す る人爲 的 な形式 が必 要 であ る 。 登 記 は、 これが た め の制度 であ る。 法 人 企業 た る 會 社 にお いて 竜、 同 様 であ る 。 否 、頻 繁 な取 引活 動 の豫想 さ れ る會社 の性 質上 、登 記 の意義 は 一 層 重 要 で 診 る 。 わ が民 法 の法 人設 立 登 記 が 對 抗要 件 に とどま るに對 し 、會 社 の 設 立 登 記は 會 社 の成 立要 件 とな つて い るの は ( 民四五條二 項、 商 五 七條 ) この た め であ る。 な お、個 人 企業 にお いて も 、 そ の 存 在 は 、 民法 上 の人 と いう 普遍 的 人格 者 と異 なり 、特 殊 の 權 利 義 務を 有 す る商 人 と いう特 殊的 人格 者 であ る から 、目 的 た る經 濟活 動 の具 體 的發 現 自 體 によ つ て これを 認 定 す るよ りも 、 や はり 會 社 企業 の場 合 と同じ く 、登 記 制度 との結 合 を 必要 前提 とす る のが 、適 切 な 立法 措置 であ る。 法 的人 格 者 た る 企 業 ( 商 人)は 、法 的 取引 によ る權 利義 務 の 歸 屬 す る 法主 體 であ るが、 こ の 歸 屬 の 原 因 た る取 引 活動 は、 みず から な す のが 常 であ る。 法 人 企業 の場合 には、 機關 の行 爲を 通 じ てな さ れな け れば な らな いが、 それ も結 局 は 人 格者 全體 の行 爲 とし て妥 當 す る も の で み る。 しか し ず 企業 規 模 の擴 大 には 、 法 的人格 者 單 獨 の活動 をも つて は應 じ可 れ ず 、 經 營補 助 者 の必 要 性 が増 大 す る。經 營補 助 者 には 二種類 が あ る。 一 は、 生 産過 程 に參 加 し て對 内的 に活動 す る 技 術 的補 助 者 で あ り 、他 は流 通過 程 に參 加 し て 對外 的 に活 動 す る營業 的 補 助 者 であ る。後 者 は、 没 革 上ま す 法認 識 の對象 となり 、 實 定法 上 ﹁ 商業 使 用 人﹂ ( Ka u fm a n n is c h es P er s o n a l) と呼 ばれ る。 商 品流 通 の 面 か ら見 る と、 技 術 前補 助 者 が 主 と して事 費 の世界 に 終 始 す る に對 し 、營 業 的補 助 者 は、 代 理 關 係を 通 じ て企業 主體 の延 長な いし擴 充 の機 能 を果 し 、 企業 法 の世界 に現れ るも の であ る。 も ちろ ん、 企業 主 體 た る 法的 人格 者 と商業 使 用 入 とは 、嚴 密 に いえば 同 一 人格 者 で は な く、 兩 者 の 間 には契 約 關 係 が存 在 す る。 し かし 、 この契 約 は、 シ ュ ク イ ンバ ッ ハ の指 摘 も たよ う に、等 領 財 貨 の交 換 を 目 的 と す る 財 貨 交 換 契 約 ( G a te r a u st a u s c hv e r tr a g e ) で は な く し て 、 經 濟 主 體 の 創 造 な い し 補 充 を 目 的 と す る 組 織 へ 約 ( O r g a n is a ti o n s v e r tr a ㎎ e ) で あ り 、 忠 實 と 信 頼 と を 基 調 と す る 繼 續 的 關 係 た る と こ ろ に特 色 が あ る ( 6) 。 127
企 業 こ の故 に 、 商 業 使 用 人 は 、 代 理 關 係 を 媒 介 と は す る が 、、 企 業 主 體 の 人 格 の 延 長 と し て 、企 業 の 組 織 の 中 に 編 み 込 ま れ る の で あ る 。 こ の 代 理 權 は 、 民 法 上 の 代 理 權 の よ う に 具 體 的 個 別 性 を 帯 び な い で 、 抽 象 的 定 型 性 を 有 す る 。 も ち ろ ん 、 商 業 使 用 入 の 種 類 に よ つて 、 こ の 定 型 化 に も 差 等 が あ る が 、 最 高 級 に 位 す る 支 配 人 ( P r o k u ri st ) の 代 理 權 ( P ro k u r a ) に サ お いては 、 そ の定型 化は 完 全 であ つて、 それ は 、 商 號 およ び 營業 所 を單 位 と して 營業 の 全面 に 及 ぶ 包 括 的 なも のであ り 、 か つ 有 効 な制 限 を 許 さな い 劃 一 的 な竜 の であ る。 し か も 、 それ は、 登 記 と いう 公 示手 段 を通 じ て、 繼續 的 に企業 主 體 の人格補 充 の役割 を 完 全 に果 す の であ る。 最後 に、法 的 人格 者 と し て の 企 業 は 、 民法 上 の 人 な いし 法人 のよ うな 普遍 的 人格 者 では な くて 、營 利 的經 濟 的組 織 の 中 心た る特 殊的 入 ﹁格 者 であ る。 した が つ て 、營 利 經 濟 を表 現 す る計 算 の途 行 は、 企 業 の人 格 の特 殊 性 を維 持 す る不可 缺 の要 件 であ る。 企業 は 、 すな わ ち計 算單 位 の法 的 入格 者 に ほか なら な .い ( 7 ) 。 これ、 實 定法 にお いて 商業 帳 簿 の調製 が 商 人 の 重要 な 義 務 と され て い る 所 以 であ る。 こ の 故 に、 企業 は、 日 六の取 引 そ のほ か企業 財 産 に影響 を 及 ぼ す べき 一 切 の 事 項を 記載 す る日 記帳 の ほか に、 企業 成 立 の當 初 にお いて、 い わゆ る開 業 財産 目 録 お よび 開業 貸 借 對 照表 を作 成 し 、 これを 基 準 とし て、 いわゆ る年度 財産 帽録 およ び年度 貸 借 對 照表 を作 成 し、 そ の特 殊 的人 格 存在 の意 義 を明 瞭 にし な け れば な らな いの であ る。 (1) 法 的 人格 の技 術 的 ・實 務 的 性 格 、 な ら び に 、 制 度 の設 定 と 法 的 八 格 の承 認 と の 相 互 不 可 分 の關 係 に つ い て は 、 恒 藤 ・法 的 人 格 者 の 理 論 ( 新 版 、 昭 二 四 ) 一五 一頁 以 下 參 照 。 ( 2) S o m b a r t , Di e Or d n u n g d e s W ir t s c h a f t s l e b e n s , 2 , Au f l. 1 9 2 7 , S . 4 5 參 照 。 ( 3) 拙 著 ・日 本 商 法 論 第 一 、春 ( 改 版 ) 二 三 三 頁 以 下 參 照 。
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Re c h t s l e b e n , B d . II . 1 9 2 7 , S. 2 6 3 . ( 5 ) た と え ば 、 ド イ ツ 商 法 二 條 、 六 條 、 ド イ ツ 株 式 法 三 條 、 三 九 條 三 項 、 ス イ ス債 務 法 九 三 四 條 參 照 。 わ が商 法 も 、 昭 和企 業 の 法理 十 三 年 の 改 正 に お い て 、 こ の 方 向 に 前 進 し た ( 四 條 二 項 ) 。 ( 6 ) S t e i n b a c h , R e c h ts g e s c h a f t e d e r w ir t s c h a f t lic h e n O r g a n i s a t i o n , 18 9 7 , S . 2 f f . , 8 1f f . ; な お 、 國 歳 ・ ﹁ 組 織 契 約 の關 係 ﹂ 論 叢 三 二巻 四 號 五 號 參 照 。 ( 7 ) 一九 〇 五 年 、 一 九 〇 六 年 お よ び 一九 〇 七 年 の ス カ ン ヂ ナ ヴ イ ヤ 三 國 の 統 一 賣 買 法 の第 四 條 第 二 項 に ﹁ 本 法 に お い て 商 .八 と は 特 別 の規 定 に 基 づ き 断 業 帳 簿 を 調 製 す る 義 務 を 負 う 者 を い う 。 ﹂ と 定 め て いる の は 、 こ の 點 に 着 眼 ﹂し た 屯 の と 理 解 さ れ る 。
四
企
業
維
持
の
法
的
理
念
企 業 は、 現時 の經 濟 生活 の 決 定 的 な擔 い手 であ り、各 人 の 經 濟的 需 要 は、 あ ら ゆ る方 面 にわ たり 企業 を 通 じな け れば ほ と んど こ れ を 充足 し 得な い 實 情 にあ る。 のみ なら す、 企業 は、 そ の發 展 に伴 い、 その構 造 自體 の中 に 國 民 の 莫 大 な財 産 を 吸 收蓄 積 し、 多 様 な勞 働機 會 の 提 供 によ つ て 、 多 数 人 の 所 得 の 源 泉 と な つて い る。 か く して 、 企業 な るも のは 、 ﹁ 今 日も は や個 々 の關 係市 民 の利釜 追求 の外廓 た る にと どま る こと なく 、 それ 自 體 が特 殊 の性質 を 帯 び た法 的財 貨 であ り、特 殊 の使命 を 有 す る設備 であ る。 ﹂ ( 1 )す なわ ち、 それ は、 個 人 の所有 關 係 かち出 發 して 、強 度 の 社 會 的意 義 を も つ 存 在 とな つて いる。 い ま 、 も も成 立 し た企業 が 解 消 を餘 儀 な く され た と 假 定 すれ ば 、 それ が 個人 經 濟 上 およ び 國 民 經 濟上 に及 ぼ す損失 は 、測 り 知れ な い も のがあ ろ う 。 すな わ ち、從 來 の取 引關 係 は こ れ によ つ て断 絶 せられ 、 取 引 の相 手 方は 、 既存 の取引 關 係 の圓 滑な 決 濟を 求 め難 い場合 が少 くな いの みな らす 、將 來 にお け る需 要 の充 足 には 困難 を 感す るよ う にな る。 け だ し、新 た な る企業 の成 立 は、 それ ほ ど 容 易 ではな く 、假 に成 立 す ると もて も 、 完 全な企 業 能 力を 具備 す るま でには 、相 當 の時日 を必 要 と す るか ら で あ る。ま た 、企 業 財産 は解 消 に より使 用 領 値 より 賣却 領 値 、 すな わ ち清 算 價値 に變 化 し、 それ は多 く の 場 合 には、 極 端 な減 價 を 生す るβ こと に、從 來 獲 得 し た經 驗 や得 意先 關 係 の よう な無 形財 貨 は 、 全く そ の企 業 價値 を 失 い、 國 民經 濟 上 にお いて絶 對 的損 失 を 招 く ζ とに な る。 さ ら に、 考慮 す べ ぎ こと は、 こ れ によ つて多数 の使 用 人 お よび勞 働 者 が、 一 時 的 ま た は永 久 的 に勞 働 の機 會 を 失 う こ と であ る。 かよ う に、企 業 は、經 濟 生 活 上極 め て 重要 な 機 能 と地 位 とを有 す るも の であ る から 、 そ の形 成 を容 易 にし 、 こ れ を維 持 強 化 す る こと は、 企業 法 の 一 大 理念 と な るの で あ る ( 2 ) 。 さ て、 企 業維 持 の法 理 念 は、 具 體的 な 法 的手 段 によ つて、 そ の 實 現が期 せら れ な けれ ば なら な いつ そ の第 一 の手 段 は、 企業 存 立 の地 盤 を法 的 に保障 す る こ と であ る。 具 體 的 にい えば、 法 が 營利 性 ・ 資 本 の集 中 ・ 勞 力 の 補 充 ・ 危險 負 擔 の緩 和 な ど に對 して 支持 を與 え る こと であ る。 ます 、 營利 性 は企 業 の經濟 的自己 目 的 で あ り 、 そ の存 立 の基 礎 で あ る。 それ は、企 業 の生活 關係 の 一 切を 貫流 し、 行 爲 の具體 的内 容 の差 異 にか かわ らず 、 全 體を統 一 あ るも のたら し め るも の で あ る。 實 定商 法 の基 本 的概 念 と せら れ る商 行 爲 ・ 商 人 ・ 會 社 ・ 船 舶 な ど は、 いす れ も營 利 性 を そ の前 提 と して い る の で あ る。 そ し て企業 の活動 に對 し ては 、 一 般 入 の行爲 に比 し營 利性 が 強調 せられ る。 た と え ば 、 商 人 の行 爲 の有 償 性 ( 商五 一 二 條 ) 、當 然 の 法定 利息 請 求權 ( 商五 一 三 條 一 項) 、 法定 利率 の引 上 ( 商五 一 四條)な どが 、 それ であ る。 つぎ に、資 本 は企 業 の 物 的基 礎 とし て、 最 も 重要 な 地位 を 占 め るも の であ る。 し た が つ て 、 そ の集中 を促 進 せし め る 法 的 形態 は、 十 分 に準 備 せら れ て い る。 小 は匿 名組 合 に始 まり 、大 は會 杜 組 織 、 こ とに株 式會 社 組織 に至 るま で、 そ の 形 態 に は種 々 あ る 。ま た 、會 社合 併 制度 は、 資 本 の第 二段 の 集 中 で あ り、 さら に 各 種 の企業 合 同 形態 は、 集 中 の強度 の 發 現 で あ つて、 む し ろそ の獨 占 化 が憂 え ら れ る ,ほ ど であ る。 企 業 の要素 とし て、 資 本 と並 ぶ 勞 力 に ついて は、 商 業使 用 人 ・ 代 理商 ・ 仲 立 人 など の制 度 があ り 、ま た合 名會 社 も、 ある 意味 にお いて 勞力 協 同 の 一 面 を有 す る。 このほ か、 危險 負擔 の緩 和 は、 大規 模 にしで業 績の 豫測 の困 難な 企業 の域 立存 續 に對 す る必 要條 件 であ る。 こ れ が た
企 業 の法理 め には 、團 體 の形 成 、 とく に會 社形 態 に より 、あ る いは 保險 制度 に より、 さ ら にま た各 種 の物 的 人的 有限 責 任 の承 認 に より 、 あら ゆ る目 的 の企業 が、 危險 の無限 負擔 の壓 力を 被 らな いよ う配慮 せられ て いる。 第 二 に、 企業 維持 の法 理念 は 、企業 の獨 立 性 の保持 に對 す る努力 に現れ て いる。 す な わ ち、 生命 あ る 各 個 の具 體的 人 間 を超 越す る 獨 立 の經 濟 的組 織 體を 作 り上 げ 、各 個 の經 濟行 爲 の總 體 に 統 一 性を 附 與 し、 み ず から 權 利義 務 の主 體 と し て、 個 人 の生命 よりも 永續 的 な 生命 を享 有 せ し め る ごとが、 その 當 面 の課 題 で あ る。 企 業 に 對 す る 法 人 格 の附 與 は 、 會 社 組 織 の 形 式 に よ る の を 常 と す る が 、 そ れ は 實 に右 の 頃 的 に 照 應 し た 法 律 制 度 で あ る 。 も つ と も 、 會 社 の 中 で も 合 名 會 社 や 合 資 會 社 な ど は 、 人 的 會 社 ( P e r so n e n g e se ll sc h a ft e n ) と 呼 ば れ る だ け あ つて、 な お 社 員 の 個 性 よ り 完 全 に 解 放 さ れ る に は 至 ら な い が 、 株 式 會 社 に 至 つて は 、 資 本 會 社 ( K a p it a lg e s e lls c h a f te n ) の 名 稱 に ふ さ わ し く 、 純 然 た る 資 本 中 心 の 經 濟 的 獨 立 體 と な つ て い る 。 し た が っ て 、 株 主 の 立 場 と は 離 れ た ﹁ 企 業 そ れ 自 體 ﹂ ( U n te rn e hm en an shch , l' e n tr e p r is e e ll e -m eme ) の 思 想 は 、 株 式 會 杜 に お い て 最 も 強 調 せ ら れ る 根 據 を 有 す る の で あ る 。 し か し な が ら 、 か ぐ し て 社 員 の 個 性 よ り 獨 立 し て 完 全 に 物 化 し た 株 式 會 社 は 、 他 画 に お い て 、 資 本 と い う 物 的 要 、 素 に 依 存 す る こ と と な る 。 こ の依 存 性 の 強 化 こ そ 、 株 式 會 社 存 續 の 必 須 要 件 を 構 成 す る も の で あ り 、 株 式 會 杜 企 業 の 獨 立 性 を 實 質 的 に 保 障 す る も の に ほ か な ら な い 。 こ れ 法 が 、 株 式 會 社 の資 本 に つ き 異 常 な 關 心 を 示 す 所 以 で あ る 。 し かし な がら 、企業 の獨 立 性保 持 に 對 する法 の努 力は 、 會 社制 度 にお いて のみ 現 れ て いるも ので はな く、 個 人企 業 に 對も て も、 性 質 上許 され るか ぎ砂 は 、同 一 傾向 の 態 度 を 採 つて いる の であ る。 た と えば 、個 人 商人 の商業 帳 簿 も、 營業 財 産 本 位 に記載 す べき も の で あ るか ら、 私 用財 産 とは 少く と も計 算 上區 別 せら れ 得 る こ と に な つて おり 、 そし て こ の こ とは 、營 業 を所 有 者個. 人 よ り絶 縁 せ しめ て獨 立 體 と して 譲渡 す る こと の可能 な 地 盤を 形 成 して いる。 ま た 、個 人企 業 の 經 營 に代 理 權を 有 す る 補 助 者 の 存 在 す る場 合 、 そ の代 理權 が本 人 の生 命を 超 えて存 續 す る こと は ( 商五 〇六條 ) 、 間 接 に 個 人企 業 の獨立 性 を保 障 す るも の で あ る。 さ ら に、個 人 企業 の獨 立 性保 持 に 最 も 力 を 致す 塔 のは 、企 業 標章 とし て の商
企 業 號 の制度 であ る。 商 號 は、 法 文 上 の外観 から 見 る と、 商 人 の人 的 個性 に 附 着 せし めら れ た よう である が 、實 は抽 象 化 さ れ物 化さ れ た企 業 、 すな わ ち企業 の 獨 立 性 と 相表 裏 す るも の で あ る。 商 號 の中 に、企業 の 全信 用 と聲 價 と は包 含 され 、 得意 先 關 係 ・ 財 政的 およ び經 營 的優 位 は 化體 され 、 そ し て これ によ つて商 人 個 人 とは離 れ て 、企 業 の 價 値 の 獨 立的存 續 が企圖 さ れ得 るの であ る。 企 業 の維 持 強 化 の た め の 第 三 の 法 的 手 段 は 、 適 任 者 を し て 企 業 の 管 理 經 營 に 當 ら せ る こ と で あ る 。 た と え ば 、 典 型 的 企 業 形 態 た る 株 式 會 社 に お い て は 、 企 業 利 釜 の 事 實 的 歸 屬 者 た る 株 主 は 、 企 業 經 營 の義 務 を 負 う こ と な く 、 反 對 に 、 企 業 、 經 營 者 た る 取 締 役 は 、 株 主 た る こ と を 要 件 と し な い ( 商 二五四 條 ) 。 經 濟 學 者 の い わ ゆ る 企 業 所 有 ( U n te r n e h mu n g s b e si tz ) と 企 業 經 營 ( U n te rn e h mu n g s le it u n g ) と の 分 離 ( 3) が 、 法 律 上 も 完 全 に 實 現 し 、 適 者 管 理 の 實 を 擧 げ 得 る 制 度 的 支 柱 を 構 成 し て い る の であ る 。 人的 會 社 た る 合 名 會 社 お よび合 資會 社 に おい て は、 そ の無限 責 任 社員 が企 業 所有 者 と企業 經 營 者 と の兩地 位 を當 然併 有 す ると こ ろ に、 制 度 の 基 本 的構 造 が 存 す るの で あ るが、 しか もな お、 不適 任 者 に對 し て はそ の意 に反 して業 務 執行 權 ま た は代 表權 を 喪失 せし め る途 が開 かれ て いる ( 商 人 六條 、 一 四七條 ) 。 ま た匿 名組 合 の管 理經營 に つい ては 、匿 名 組合 員 は 全く 背後 に隠 れ 、こ れ を 適任 者 た る營 業 者 に專 屬 せし めて い る。 こ の 結 果 、そ れ は、 對外 的 には營 業者 の純 然 た る 單 獨 企業 と して 現れ る の で あ る 。 適 者 管 理 の 實 現 は 、 個 人 企 業 に あ つ て も 、 全 然 そ の 途 が 閉 さ れ て い る の で は な い 。 す な わ ち 、 主 人 た る商 人 は 、 適 任 者 を 支 配 人 に任 用 す る こ と に よ つ て 、 企 業 經 營 に關 す る 包 括 的 ・無 制 約 的 代 理 權 を 享 有 せ し め 、 これ を し て 賢 明 な ﹁ 第 二 の 自 己 ﹂ ( a lt e r e g o ) と し て 縦 横 に活 躍 せ し め 得 る の で あ る 。 か よ う な 適 者 管 理 の 思 想 は 、 た だ に 企 業 の 内 部 に 誌 い て の み で な く 、 企 業 對 企 業 の關 係 た る 企 業 集 中 の 現 象 の 中 に 為 いて も 、 明 ら か に 見 ら れ る 。 た と え ば 、 經 營 の 委 任 ( B e tr ie b s u b e rl as su n g ) ・ 企 業 の 賃 貸 借 ( P a c h t) の ご と き は 、 ま さ に
企業の法理 こ れ であ つて、 それ は 一 箇 の企業 が他 の有 能 な企 業 によ つて管 理經 螢 せら れ るも の にぼか なら な い 。 この場 合 に は、前 の企業 は後 の 企 業 に 對 し て は、單 な る企業 所有 者 的 地位 に 後 退 し て いる の で あ る。 企業 の維 持 強 化 のた め の 第 四 の法的 手段 は、 企業 金 融 の圓 滑 化を 圖 る こと であ る。 企 業 は、 そ の 威 立 に 際 し て、物 的 お よび 人的 設備 の有機 的結合 化 のた め に 資 金を 必要 とす る のみな らず 、 そ の 存 續 中 にお いて も、 勞働 力 の維 持補 給 およ び原 料 ・ 商 品 の取 得流 通 のた め、資 金 の必要 は 決 して 止 む こと がな い 。 し かも、 近代 にお いては 、競 爭 の激 化 と利 潤 確 保 の必 要 に基 づ き、企 業 設備 の擴大 、 す な わち 固定 資産 に對 す る資本 投 下率 の増 大 は必 須 の勢 とな るた め、 當 初 の自 己 資 本を も つて 一 切 を經 理す る例 は稀 とな り、 日常 經 螢 の流 道資 金 の大部 分 は勿 論 、 企 業 の固 定資 本 の部分 に ついてさ え も 、 こ れ を貸 付 資本 に仰ぐ 率 は 漸増 する 。 か かる状 態 のも と にお け る金融 の杜絶 は、企 業 の運行 の 停 止を 意味 す るも の に ほかな ら な い。 した が つて、 金融 の圓滑 に對 す る法 の關 心 は大 き く、 それ は金 融 手段 の多 様 化 およ び合 理化 と貸付 資 本 保護 の 強 化と の 二方 面 に現れ て いる。 まず 、 金融 の 一 般 的 前提 を な す擔 保 の問 題 に ついて は, 企業 の性 質 に應 じ た合 理 化 がな され て いる。 す な わ ち、有機 的流 動 的 な企 業財 産 の 分 解 を避 け、 企業 を 一 體 と して擔 保 の目的 に供 し、 企業 の經 營 を持 續 す る財團 抵當 の 制度 を 生じ て い る。 典 型 的資 本會 社 た る株 式會 社 にお い ては 、金 融 の 問 題 は 、 とく に 技 術 的發 展 を 遂け て いる。 集 團 的 ・ 對 公 衆 的債 務負 擔 方 法 た る社債 はそ の例 であ るが 、自 己資本 た る株式 も 、 一 般株 主 の債 権 者 的地 位 に 顧 み 會 社金 融 の點 か ら考 慮 され て いる。 優先 株 ・ 後 配 株 。 無 額 面株、 さ て は授權 資 本 ( a u th o r iz e d ca p it a l st oc k ) や 轉 換社 債 ( c o n ve rt ib l e b o n d s )な ど の多 彩 な制度 は、 か か る法 的關 心の 現れ で あ る。 金融 の 圓 滑 は、 また 投 下資 本 の 安全 を前 提 要 件 とす る。 民 商 法 中 の 一 般債 權 者 保護 の規 定 は枚 挙 に暇 が な いが 、も つ ば ら貸 付 資本 の保護 に關 す るも の とし て は、 社 債橿 者 保護 の強 化を 挙 ぐ べく、 とく に社 債權 者 集 會 に よる集 團 的劃 一 的 133
企 業 保 護 は、 特筆 に値 す る。 第 五 に、 ぞ して最 後 に、企 業 維 持 に 對 す る法 的關 心は 、企 業 解消 の危險 が急 迫 し た場 合 におけ る 可 及的 回 避の 努 力 に 現れ て い る。 た と え ば 、 解散 原 因 の 發 生 にか か わら ず 企業 の解體 を 阻 止 す る會 社 継續 の制度 、 企 業 の解 體 を伴 わ ず に複 数 企 業 の 單 一 化 を 生 ず る 會 社 合 併 の 制 度 、 和 議 な い し 破 産 に よ る 企 業 の 危 機 を 回 避 す る 株 式 會 社 の 整 理 の 制 度 の ご と き 、 そ の 例 で あ る 。 ( 1 ) Ent w u r f e i b e s G e s e t z e s ub e r AG . u n d K G aA . e t c . 1 9 3 0 , S. 9 4. (2 ) 企 業 維 持 の 法 思 想 に つ い て は 、 Le hm a nn, Sc hu t z u n d E r ha l t u ng K au f m a nn i s c he r U nt e r ne hm un ge n im d e ut s c he n H an d e l s r e ch t (Fe s t s c h r if t f u r G e o r g C oh n, 19 1 5 , S. 3 9 3 f f .) : M u ll e r Er z b a rc h, D ie E r h al tu ng d e s Unt e r n ehm e n s, NH R . B d. 61 S . 3 5 7 f f . : D e r s e lb e , D e r S cnu t z de r U nt e r ne hm e r a r be i t , ZH R . Bd 64 S. 5 3 0 f f . : N us s ba u m , Zu r ne ue r e n E nt w ic kl un g d e r -Le hr e v om U nt e r n e h m e n, Be i t rage z um w i r tsc ha f ts r ec ht , Bd . I I . S. 4 9 2 f f .: 田 中 ( 耕 ) . ﹁ 組 織 法 と し て の 商 法 と 行 爲 法 と し て の 商 法 ﹂ 商 法 研 究 一 巻 二 九 五 頁 な ど 参 照 。 (3 ) Li e f m a nn. D i e U nt e r ne h m u ng s f o r m e n , 4. Auf l. 1 9 2 8, S. 43 f f , i n s be s . S. 4 8 f f . 参 照 。 五 企 業 活 動 の 法 的 特 性 企業 の活動 は 、他 の經濟 主 體 と の断 の取 引 と して 現れ る。 法 は、 この取 引 を圓 滑 にし、 取引 が活 溌 にな る ことを期 し て いる。 け だし、 こ れ た よ つ て・ 企 業 の側 にお いて は、 存 立の目 的 た る 經 濟 的寄 興 と收 益 の 實 現が よ り多 く 期 待 せら れ 、消 費 者 の側 にお いても 、 そ の經 濟的 需 要 が より よく 充足 さ れ るか ら で あ る 。 取 引 の圓 滑 旺盛 化 の 需 要 は、 一 方 にお いて、 大 量取 引 の可 能 性 に對 す る要 求 で あ り "他 方 にお い て 、 取引 の頻繁 な 反
企 業 の 法理 復 の 可 能 性 に 對 す る 要 求 で あ る 。 これ ら の 要 求 は 、 取 引 態 様 ・ 取 引 客 體 お よ び 取 引 保 護 手 段 に甥 し て そ れ ぞ れ 法 的 影 響 を 及 ぼ し て い る 。 ま ず 第 一に 、 取 引 の大 量 反 復 性 を 保 障す る に は 、 契 約 の 定 型 化 が 最 も 重 要な 方 策 で あ る 。 契 約 が 一 定 の型 に 從 つて 實 現 せ ら れ 、 そ の内 容 が 相 手 方 や 締 結 時 期 の 如 何 な ど に 無 關 係 な こ と は 、 契 約 の 締 結 を 機 械 化 し 、 取 引 の 圓 滑 旺 盛 化 に 與 つ て 力 の あ る も の であ る 。 そ れ は 、 集 團 取 引 の 結 果 で あ る と と も に 、 そ の 前 提 で あ り 、 本 質 的 牽 連 關 係 に 立 つ て い る 。 わ が 商 法典 に お い て も 、 契 約 内 容 な い し そ の 効 果 の 書 一化 に 對 す る 努 力 は 、 随 所 に これ を 認 め 得 る が ( た とえ ば商 五 七 八 條 ・ 五 八○ 條 ・ 七 六 六 條、 そ の他各 種 商 業證 券 に 關 す る規 定) 、 生 き た 法 と し て こ の 思 想 が 最 も 明 瞭 に 現 れ て い る の は 、 か の 普 通 取 引 約 款 ( a ll g e me in e G e sc h a ft sb e d in g u n g e n ) ( 1) で あ る 。 そ れ 縁 契 約 の 相 手 方 を し て 契 約 内 容 を 一 括 し て 承 認 す る が 否 が の 選 擇 の み を な さ し め る も の で あ り 、 佛 法 學 者 は これ を 附 合 契 約 ( c o n tr a t d 'a d h e si o n ) ( 2 ) と 呼 ん で い る が 、 實 は 從 來 の 契 約 關 係 が 著 し く 變 質 し て 、 一 種 の制 度 ( In s ti tu t io n ) 的 地 位 に 移 行 し た も の で あ る 。 第 二 に、 取引 の圓 滑 旺盛 化 のた め には 、取 引 客體 が 流 通的機 能 に適 應す る ことが 必要 であ る。 この適 應 化 は、 客體 の 規 絡 統 一 と権 利 の證 券 化 とし て、 法的 に表 現さ れ て い る 。 企業 取 引 の客 體 とし て最 も 重 要 な地 位を 占 め る菟 の は、 商品 であ る。 そ れ は 、 一 般動 産 が市 場本 位 に、 すな わ ち流 通 を 目的 とし て企 畫 的 ・ 集團 的 に生産 さ れ た場合 、企業 法 の立場 から 把握 し た 名稱 であ る。 さ て、 特 定 の動産 が商 品性 を 發 揮 す るた め には 、品質 の優 秀 ・ 價 格 の 低 廉 な ど の 諸 點 に お いて何 ら かの 優越 的 地 位を 占 め 、 そし て それ が需 要 に 應 じ て、大 量 的 か つ 等質 的 に供給 され なけ れば なら ぬ。 か か る大量 的 生 産 品 の 特 異 性 . 等 質 性 を 現す も の が、 す なわ ち商標 制 度 お よび 商 品 の標準 化 。 規 格 統 一 制 度 で あ つて、 これ によ つて大 量 取引 も 極 め て迅 速確 實 に 實 行 し得 る のであ る 。 し たが つて、 商 標 の保護 ・ 約定 商 品 の規 格統 一 性 の保 障 は、 重 大 な法 的關 心 の對 象 とな る の であ る。 つ ぎ に、 財産 の商 品 化 の傾向 に關連 して 、權 利 の證券 化 の 現象 が 生 まれ る 。 近 代 經 濟 の 發 展 に伴 い 債 權 はま す ま すそ
企 業 の優 越 的地 位 を高 め るが ( 3 ) 、給 付 の講 求 と いう無 形 の権 利 を 意味 す る 債 權 本來 の姿 のま ま では 、流 通 の 對象 た る に適 しな い。 この無 形 の權 利 を 有 形 の 證券 であ る 紙 片 と結合 せ しめ る こ と によ つ て 、權 利 の 存 在 およ びそ の内容 は 明瞭 とな り、 権 利 の移轉 そ の他 の處 分 は迅 速 確 實 に行 わ れ得 る こと とな り 、ま たあ る 場 合 には、 權 利 行使 の上 に被 る 時 間 的 ・ 空 間 的 障 害 ( たとえば 、 寄託中また は運送中の 貨物 ・ 履 行期 未到來 の 金鏡債 權 )を超 克 し て、 利 用 を 全う し得 るの であ る。 この 故 に、 商法 にお いて は 、株 券 ・ 債 雰 ・ 貨物 引 換證 ・ 船 荷證 券 ・ 倉 庫證 券 な ど、 權 利 の 證 券 化 の制 度 は 、極 め て 發 達 し て いる。 第 三に、 取 引の 圓 滑 旺盛 化 のた め には 、 さら に取 引 の安 全が 保護 され な けれ ば な ら ぬ。 實 行 し た 取引 の 効 果 が後 日に 至 つ て動 揺 を 生 じ、 不測 の損失 を 蒙 る危 險 性 が多 く て は、 人 々 の取 引 の決 意 は鈍 化 し 、流 通 の旺盛 は 期 し難 い 。 そ こで 法 は 、取 引 の. 安 全保護 に多 大 の關 心 を拂 い 、 各 種 の法 技 術 の展 開 によ つ て 、そ の實 現を 期 して いる。 かか る法 技 術 の 一 は、 公 示 主義 であ る。 元来 、 法律 行 爲 を す る には、 相 手 方 の能 力 ・ 資 力 ・ 權 限 な ど種 々の事實 が、 そ の前提 とな り動 機 とな つ て いる。 取 引機 構 の複 雑 化 し た今 日、本 人 が 獨力 で これを 調 査 す る こと は、 極 めて 困難 で あ る。 そ こで法 は、 取 引上 關 係 の深 い重要 事實 に つい ては 、當 事 者 に そ の 翼 相 の 公 示を 要 求 し、 一 定 事 實 の存 不存 を 一 般 に 周 知 せし め る こと により 、取 引 安 全保護 の第 一 歩 を 踏 み出 し て い る。 商業 登 記制 度 ・ 各 種 商業 證 券 の最 小 記載限 慶 の 法定 ・ 株 式 會社 にお け る 一 定 事 項 の 公 告 お よび計 算 書類 の公 開 など は 、そ の 著 し い 例 であ る。 そ の 二 は 、 外 觀 主 義 で あ る 。 こ れ は 、 公 示 さ れ た 事 實 が そ の眞 相 に 合 し な い場 合 、 表 見 的 事 實 に 信 頼 し て あ る 行 爲 ・ 不 行 爲 を な し だ 者 を 保 護 す る 主 義 であ る 。 經 濟 の發 展 に伴 い 取 引 量 が 増 大 し 、 し か も 企 業 形 態 そ の 他 の 取 引 機 構 が 複 雑 と な り、 法 的 に意 義 あ る 事 項 の 把 握 が 困 難 で あ る と す る な ら ば 、 隠 微 な 眞 相 よ り も 相 當 な 外 觀 に優 位 を 輿 え る こと は 、 取 引 の 安 全 保 護 に 不 可 鉄 で あ る 。 こ の 主 義 は 、 獨 法 に お い て は ﹁ 外 觀 理 論 ﹂ ( R e c h ts sc h e in th e o ri e ) ( 4 ) と し て 發 展 し 、 英 法 にお い て は ﹁ 表 示 に よ る 禁 反 言 ﹂ ( e st o p p e l b y r e p r e s en t a ti o n ) ( 5) と し て 展 開 せ ら れ た が 、 わが 商 法 典 に お い て