ページ
109-124
発行年
2013-07-31
リアル・オプションを用いた外科医増員に関する
モデルの研究
佐 藤 大 輔
Ⅰ 現状分析
実務に携わる医師数の減少 日本の医療政策の中で、医師不足への対処は大きな課題である。確かに、2008年以降、 医学部定員増加政策が取られ、医師免許保持者数(届出医師数)は増加しているが、医師 需要に供給が追いついていない。何故ならば、医療の高度化・複雑化、高齢者人口割合の 上昇、現役医師の高齢化、医師の地域的・診療科的偏在、医療機関への accessibility 向上、 これらの要因より、医師需要増加の速度が供給速度を上回っていると考えられるからだ。 厚労省の「平成22年(2010)医師・歯科医師・薬剤師調査」1によると、平成22年12月31 日現在における全国の「届出医師数」は295,049人で増加傾向にあり、年齢階層別では 「40〜49歳」が68,064人(24%)と最も多く、次いで「30〜39歳」(23%)となっている。 これら50歳未満(46%)が「実務に携わる医師数」と考えられるが、平成10年と比べ大き な増加はがない(図)。 厚労省(2010) 医師・歯科医師・薬剤師調査を参照。 図1 厚労省 平成22年(2010)医師・歯科医師・薬剤師調査 統計表より制作女性医師割合を見ると、年々増加し、平成22年度では全体の18.94%となっている。ま た、年齢別に見ると「40歳未満」では、全体の9.7%が女性医師で(図C)、年齢が若くな るに連れて割合が増加し、「29歳以下」では35.9%となっている。これにより、医学生の B割以上を女性が占めていることが伺える。もし、女性医師の離職率や再就職率が悪化傾 向をたどるならば、女性医師率の上昇は、実務に携わる医師数の減少に影響を与えると考 えられる。以上より、医師免許保持者の増加ほど、「実務に携わる医師数」が増加してい ない。 図1 厚労省 平成22年(2010)医師・歯科医師・薬剤師調査 統計表より制作 外科医の減少 従事する診療科名が外科である医師数は、一見、横ばい傾向にあるが、中心的な役割を 果たす49歳以下の外科医は減少している(図B)。なお、ここで言う外科の内訳は、一般 外科、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺外科、気管食道外科、肛門外科、小 児外科である。 29歳以下の外科医は、平成A年度の13%から平成18年度のE%と減少傾向にある。平成 15年度までは、医学部卒業生の多くは、従事したい診療科に直接入職(入局)していたが、 診療科をまたぐ横断的な知識を持った医師の養成を目的に、事実上、医学部卒業生が必ず 受けるC年間の研修制度2が発足した。このため、平成16,17年度は、すべての診療科に おいて、従事する医師数は減少した。つまり、研修医と言う分類が統計上追加された分、 C 厚労省 医師臨床研修医制度の変遷を参照。
各診療科に従事する医師の加算がなくなった。これは、見かけ上の医師数減少だけに留ま らず、各診療科に、新入医師が一人もいない医師不足のC年間を作り出してしまった。そ して、制度発足からC年後の平成18年度になり、研修医が医師臨床研修を修了し、各診療 科に従事する医師として、統計上再び加算された。しかし、外科に従事する新人医師は、 制度発足以前に比べ減少した。修了医師に対する調査3から、外科研修を経験したことに よる興味以上に、興味をそがれた、辛かったことが影響していると推測される。 図1 厚労省 平成22年(2010)医師・歯科医師・薬剤師調査 統計表11より制作 また、49歳以下で外科に従事する医師数は、平成A年度と比べ、18903から16133人、そ の割合は67から58%と減少傾向にある。以上より、生命に直接関わる外科に従事する若手 中堅医師が減少している。つまり、外科を選ぶ研修医は減少し、一旦外科医になっても第 一線から退く年齢が、以前よりも早くなったと言える。以上より、外科医は減少している のだ。 外科医の労働環境 外科は、きつい・汚い・危険な診療科とし受け止められている。 日本外科学会が行った「平成23年日本外科学会会員の労働環境アンケート調査報告」4に よると、外科医の平均労働時間は77.1時間/週である。つまり、一週間あたりの時間外労 B 厚労省(2005) 厚労科研究費補助金研究を参照。 D 日本外科学会(2012)を参照。
働が37.1時間であり、過労死ラインの80時間/月をB日で超える時間外労働をしている。 医師が病院から課される当直とは、日中ならば日直、深夜ならば、当直または深夜当直 と呼ばれている。特別な手当てがある場合と、医師たちの自主的な輪番によって、無給で 行われる場合とがある。労働上は宿直に分類され、以下、厚労省の見解の一部抜粋(「 」) を記載する6。 「医師、看護師等の宿直の許可基準(一般的基準の取扱い細目)B ⑴通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。 ⑵夜間に従事する業務は、一般の宿直業務以外に、病院の定時巡回、異常事態の報告、少 数の要注意患者の定時検脈、検温等、特殊の措置を必要としない軽度の、又は短時間の業 務に限ること。 (応急患者の診療又は入院、患者の死亡、出産等があり、昼間と同態様の労働に従事する ことが常態であるようなものは許可しない。) ⑶夜間に十分睡眠がとりうること。 ⑷許可を得て宿直を行う場合に、⑵のカッコ内のような労働が稀にあっても許可を取り消 さないが、その時間については労働基準法第33条、第36条による時間外労働の手続を行い、 同法第37条の割増賃金を支払うこと。」 以上を満たす外科宿直は稀である。特に⑶の十分な睡眠をとることは出来ない。加え て、⑵を超える仕事が発生した場合も、⑷のような割増賃金を払う病院は、慣例的にない。 訴訟リスク 厚労省の第回死因究明等検討会(平成19年J月10日)参考資料7によると、民事の医 事関連訴訟は、平成18年で913件と増加傾向にある。また、医事関連訴訟事件の診療科別 既済件数は、外科関連が559件と61.2%を占める。ここで言う外科関連とは、外科、整形 外科、形成外科、泌尿器科、産婦人科、眼科を指す。 E 厚労省(2001)労働基準局長通達を参照。 A 厚労省(2005)医師の宿日直勤務と労働基準法を参照。 厚労省(2007)第回死因究明等検討会を参照。
Ⅱ 先行研究・先行事例
2035年の医師需給シミュレーション 2010年から2035年までの性別・年齢別人口、死亡者数、医師数、これらの予測、および 医師労働時間から、医師需給シミュレーションを行った湯地らの研究8では、2035年になっ ても医師不足が解消されないことが示されている。 この研究によると、2035年には、人口1000人あたりの医師数が2.00から3.14へ増加する。 これは、OECD 加盟国の2010年の平均値である3.00を2035年になり初めて日本が達成す ることを意味する。確かに、総医師数は27万人から40万人と46%増加するが、実務に携わ る医師数は微増に留まり医師需要を満たすことは出来ない。具体的には、60歳以上の医師 が2.55倍になり36%を占め、60歳以下の医師は1.18倍となる。また、男性医師は1.35倍、 女性医師はC倍に増加する。このように高齢医師と女性医師が増加し、さらに、医師労働 時間を欧州並みの週48時間に制限した場合、現在の医師定員の1.5倍必要だと試算されて いる。ただし、この研究では、医師需給バランスの評価として、医師あたりの死亡者指数、 医師勤務時間あたりの死亡者指数が利用されている。この死亡者指数では、需給バランス を適切に評価できない点に注意が必要だ。言い換えれば、小児科や産科、整形外科など、 患者死亡率が低い科に関しては、死亡者指数が需給バンスの指標には成り得ない。かつ、 この研究のシミュレート結果である超高齢化社会では、高齢者の自然死率が上昇するのは 当然であり、その結果死亡者指数は増加する。よって、真の需給バランスは、死亡者指数 ではなく、健康寿命の延長、患者満足度の上昇で評価されるべきである。 いずれにせよ、外科に関しては、超高齢化社会になればなるほど、癌患者が増加する。 それは、外科医供給が追いつかなくなる状態に繋がるだろう。よって、現行の医学部定員 増員政策だけでは、実務に携わる外科医は増加せず、外科医労働環境改善の必要性が高ま るであろう。 外科医の給与を上げる試み 労働環境改善項目の一つとして、外科医への給与を上げる試みがある。国が定める診療 報酬(Hospital Fee)を上げ、病院の売上を増加させ、外科医給与に反映させる政策だ。日本外科学会が行ったアンケートをもう一度見ると、外科関連の診療報酬が増額されて も、外科医の給与が上がらない結果となっている(図D)。つまり、病院を経由せず、患 者から専門医へ直接支払われる報酬(Dr. Fee)の検討も必要だ(図E)。 図 日本外科学会雑誌 第113巻 第号 2012年 図10,11より著者作成 図 著者作成 ࿖᳃⊝㒾
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Ⅲ リアル・オプションによる外科医増員モデル
Switching Option モデル リアル・オプションを用いて、Dr. Fee 制度の有無による診療科選択戦略をモデル化す る。 ⑴ モデルの構築 Dr. Fee とは、専門医が診療報酬として、患者に請求できる報酬である。しかし、日本 では設定されていない制度だ。このモデルでは、現在(t=0)は Dr. Fee 制度が出来てい ないが、将来の何処か(t=n)で、その制度が整備される外部環境の中、医師が診療科を 変 え る か(Switching)を 決 定 す る 価 値(Vn)を 考 え る。ま た、こ の モ デ ル で は、 Dr.Fee 制度が設定された場合、外科医だけが Dr. Fee を受け取ることができ、一方、他 科医師の収入は変わらないものとする。また、医師の一生をJ期に分けた(期=D年 間)。加えて、診療科を変える事ができる期間を≦ t ≦D、それ以降は変更不可とした。 なぜなら、他科に比べ外科のトレーニングは体力を必要とするため、年齢が高い段階での 外科への転科は事実上難しいからだ。以下の(図A)で、上向きの矢印上の node は Dr. Fee が設定された環境、一方、下向きの矢印上は未設定な環境を示す。D期までは Switching が可能な node、一方、EからJ期までは Switching が不可能な node である。図 著者作成 Dr.Fee ᐲߥߒ V1 V3 V4 ޓޓ ᄖ⑼orઁ⑼ V2 V2 V2 V8 V3 V3 V3 V8 V8 V8 V8 V8 V8 V8 V4 V4 V4 V4 V5 V5 V5 V5 V5 V5 Dr.Fee ᐲ ࠅ V0
Switching Op on Model
㨂㧠߹ߢࠬࠗ࠶࠴น⢻ V1 ⑵ 初期設定 割引率 期間の割引率は、医師の WACC とリスクプレミアムとの合計で R=0.2とした。 収入と Dr. Fee 日本においては、外科医と他科医との給与差は殆ど無い。正規雇用先からもらう勤務医 の給与は、多くの場合、卒業年時に依存する。言い換えれば、技術差ではなく、年功序列 で決まる。生涯賃金をD億円、期をD年、J期つまり32年間働くとして、他科医収入 Io=外科医収入 Is=5000万円/期(年収1250万円)と仮定した。初期設定では、Dr. Fee 制 度成立後の外科医収入 IS=5000万円/期とし、5000万円/期を超える差額を Dr. Fee とみな す。なお、「平成23年日本外科学会会員の労働環境アンケート調査報告」9によると、勤務外科医の平均年収が1500万円前後である。
継続コスト 医師は収入の割からC割を自己投資に使うと仮定して、継続コストを他科医師は Co =−500万円/期、一方、外科医は手技習得コストや肉体的精神的コストが高いので、Cs =−1000万円/期とした。 Switching cost 外科から他科に転科するコストは、期間が経つに連れて増えるので、Sos=−4000 t 万 円/期とした。一方、外科から他科へは−1000万円/期とした。 Dr. Fee 制度成立確率 成立確率を p とおき、初期値は p=0.5とした。 ⑶ モデルを解く このモデルでの最終期 t =8 の node にて、外科医または他科医の収入、継続コストを 計上し、期を遡る backward induction でモデルを解く。なお、このモデルで注意する点 はBつある。つ目は、t =0 の node では、Dr. Fee 制度がない状況下で、初めて入職す る状態からスタートする点。Cつ目は、スイッチ出来るのは≦ t ≦Dである点。Bつ目 は、Dr. Fee 制度が確立した場合、その制度は最終期まで続く点。これらを踏まえ、現在 価値 Vn を以下に示す。 変数 p Dr. Fee 制度成立確率 R 割引率 Is 外科医収入 IS Dr. Fee 制度下での外科医収入 Io 他科医収入 Cs 外科継続コスト Co 他科継続コスト Sso 外科から他科へのスイッチコスト Sos 他科から外科へのスイッチコスト
Vt(s) 外科医の現在価値 Vt(o) 他科医の現在価値 t =Oのとき V0=MAX
E[V(s)] 1+R ,E[V (o)] 1+R
E[Vt(x 科)]=[pVt(Dr. Fee 制度下の x 科)+(1− p)Vt(x 科)] ≦ t ≦D(スイッチ可能)のとき Dr. Fee 制度ありVt1(s)=MAX
IS+Cs+V1+R , Io+Sos+t(s) V1+Rt(o)
Vt1(o)=MAX
IS+Sos+Vt(s)1+R , Io+Co+V
t(o)
1+R
Dr. Fee 制度なしVt1(s)=MAX
Is+Cs+E[V1+R , Io+Sso+t(s)] E[V1+Rt(o)]
Vt1(o)=MAX
Is+Sos+E[Vt(s)]1+R , Io+Co+E[V t(o)] 1+R
E[Vt(x 科)]=[pVt(Dr. Fee 制度下の x 科)+(1− p)Vt(x 科)] E≦ t ≦J(スイッチ不可)のとき Dr. Fee 制度あり Vt1(s)=IS+Cs+V1+Rt(s) Vt1(s)=Io+Co+Vt(o) 1+R Dr. Fee 制度なし Vt1(s)=Is+Cs+EV1+Rt(s)Vt1(o)=Io+Co+EVt(o)
1+R
E[Vt(x 科)]=[pVt(Dr. Fee 制度下の x 科)+(1− p)Vt(x 科)]
初期設定値(Dr. Fee 制度後も Dr. Fee =Oである状態)を代入すると、t =Oにおける 外科医の現在価値 V0(s)は16900、一方他科医の現在価値 V0(o)は17300である。つまり、 Dr. Fee がOならば、研修医は外科を選ばない。さて、図は、V0にて外科医の現在価値 が高くなる条件をグラフにしたものだ。曲線の右上の領域で、V0が外科≧他科となる。 このグラフより、外科継続コストが同一ならば、Dr. Fee 制度成立確率が0.1より大きくな るに連れて、患者負担である Dr. Fee が急速に減少することを示している。また、Dr. Fee 制度成立確率が0.1、つまり、成立可能性が殆ど無いと予想されている場合、低コストで V0における外科医の現在価値を上げるには、Dr. Fee を高額にするよりも、外科継続コス トを減らす方が効果的であることを示している。 図 著者作成
Ⅳ 考察
Dr. Fee の限界 このモデルの結果は、Dr. Fee では外科医不足を解消することは出来ないという、漠然 とした予想と一致する。患者が支払う Dr. Fee は、そのコストに見合う効果を発揮しにく いからだ。それは、主にDつの原因がある。a:外科医の技量を評価するのは難しい b:外科はチーム単位で機能する c:後進の育成が評価されない d:成功報酬(Dr. Fee)と失敗報酬(患者保護の保険)とが未整備 たとえ、外科医の技量評価(a)が正しく行われたと仮定しても問題は残る。何より、外 科はチーム単位で機能する(b)。執刀医のみに Dr. Fee が支払われると、その執刀医には 自分の技術を独占する誘引が生まれる。つまり、ライバルを生み出す行為と後進を育成す る行為とが重なるため、Dr. Fee がなかった時代の後進育成体制は崩壊するだろう(c)。専 門医資格更新の条件に、後進を専門医に育てることを盛り込んでいる諸外国もあるが、日 本にはない。このような状況では、Dr. Fee を得る専門医に対する効用は増加するが、社 会全体に対する効用は減少する。専門医が技術を独占すれば、患者が利用できる専門医の 質と量が、未来において悪化するからである。以上を総合すると、Dr. Fee 単独での外科 医増員には限界がある。
Medical Team Fee による外科医増員の可能性
Medical Team Fee(以下 MTF)とは、外科チームに支払われる報酬と定義する。この 研究のモデルでは、外科継続コストを減らすような仕組みに利用される報酬だと想定す る。 ⑴ MTF の性格に近い報酬 外科チームに報酬を与える制度は、既に存在する。それは北海道庁の事業から、補助金 という形で出ている。 a:地域医療サポートセンター整備事業 この事業は、平成10年度から道が始めた。平成23年度より、医師派遣に重点を置いた事 業にシフトしている。具体的には、地方・地域センター病院が行う医師派遣、研修会の開 催に要する経費に対し助成する。ここで、地方・地域センター病院とは、第三次医療圏の 高度医療機関・第二次医療圏の中核医療機関である。それぞれE病院、25病院が道から指 定され、医師派遣元になった場合、助成金が受けられる。
助成金の内訳は、地方センター病院へ、日額122,000円(240日間まで)、一方、地域セ ンター病院へ日額61,000円/人(120日間)が派遣元病院に支払われる。年額に換算すると、 地方センター病院へ、地域センター病院へ278万円/年/人が支払われる。つまり、医師を 派遣すると派遣元は報酬を得られる。これを MTF とみなすことが出来る。 b:緊急臨時的医師派遣事業 この事業は平成20年度より始まった。その目的は、地域の医療機関にいて、退職等によ る医師の減少、勤務が過酷な医師の有給休暇取得等により診療体制の維持が困難になった 場合、北海道医師会、北海道病院協会の協力を得て、緊急臨時的に医師を派遣し、医師不 足が深刻な地域の医療を確保することである。 助成金の内訳は、派遣元病院へ、日額50,000円/人(半年間)、年額に換算して300万円/ 年/人が支払われることとなる。 いずれの事業に関しても、派遣元に報酬が支払われている。ただし、この補助金は、医 師に給与として還元される Dr. Fee 的経費、医療クラーク雇用経費に使われていると予想 される。現行制度では、医師の仕事を肩代わりできる看護師より上位の医療職が存在しな いため、チームに補助金が降りても効果的な利用ができない。
⑵ Nurse Practitioner(以下 NP)や Physician Assistant(以下 PA)の利用 アメリカでは、医師の指示なしに、ある程度の医療行為が許されている NP や PA と 言った医療職が存在する。日本でも NP や PA を利用した仕事の外部化による外科医継続 コストの軽減が検討されている10。今後、NP や PA が制度化されたら、それらの養成機 関の候補は専門職大学院であろう。ある一定の医療職経験を前提に、大学院で医療知識を 習得することが考えられる。ただ、そこで問題になるのは、医療者、特に、看護師不足で ある。一部の看護師が学生に戻ることで、一時的な看護師不足を加速させるだろう。ま た、より上位の医療職を目指す看護師は、現場でも有能な場合が多いと仮定すれば、その 欠員の影響力は大きい。しかし、長期的に見れば、NP や PA の活用は外科医継続コスト を減らすだろう。 10 坂本良平ら(2012)を参照。
Ⅴ 結語
外科医は減少している。特に49歳以下の「実務に携わる外科医」が減少している。同時 に、医学生の外科離れの結果、29歳以下の外科医が減少している。一般的に、産科、小児 科、救急科に携わる医師が減少していると広く知られている。しかし、「外科医不足」は 知られていない。不足と認識されなければ、対策を講じることは出来ないのだ。 外科医増員のためには、外科を選ぶ医学生を増やし、外科医を辞めない労働環境改善が 必要となる。そのためには、新たな報酬 Dr. Fee や Medical Team Fee の可能性を、リア ル・オプションを用いて検証した。新たな報酬の有効利用により、外科医の労働環境は改 善する。その改善とは、経済的時間的待遇の改善だけではなく、外科医本来の喜び、技術 の鍛錬に集中する喜びを取り戻す改善となるだろう。これらより、外科医が増員すると期 待される。参考文献
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