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RGB3色LEDの加法混色を用いた色変調可視光通信の提案と非常時通信への適用

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(1)情報処理学会論文誌. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). RGB 3 色 LED の加法混色を用いた色変調可視光通信の提案 と非常時通信への適用 塚田 晃司1,a). 岡 裕大1,†1. 受付日 2015年4月10日, 採録日 2015年10月2日. 概要:既存通信インフラが使用できない場合の代替通信手段の 1 つとして,免許不要で手軽に利用でき, 長距離を空間伝播する可視光通信に着目した.可視光を用いているので,目視によっても信号の発信源を 確認でき,さらに専用装置を用いることで詳細な情報を取得することができる.災害時の利用を想定した 場合,救援を求めていることに気付いてもらうことが重要であり,可視光通信の特性が活かせると考えら れる.そこで,RGB 3 色の LED 光源のみを使用し,加法混色により生成される 7 色の発光色変化により データ変調を行う可視光通信方式を提案する.そして,可視光通信の非常時通信への適用可能性を探るた め,提案方式を採用したプロトタイプシステムの実装とその実証評価を実施した. キーワード:可視光通信,非常時通信,イメージセンサ通信. Visible Light Communication Using Color Shift Keying with 3-Color LEDs and Its Application to Emergency Communication Koji Tsukada1,a). Yuta Oka1,†1. Received: April 10, 2015, Accepted: October 2, 2015. Abstract: We paid attention to Visible Light Communication (VLC) as an alternative communication tool in case that the existing communications network cannot be used. Since visible light is used, we can find out the source of a message signal without using any devices. Moreover, we can receive detailed message by using dedicated devices. It is important at the time of a disaster to tell that we are asking for help, so characteristics of VLC are effective. In this paper, we proposed the new simple color-shift keying using 7-colors formed by additive color mixing of RGB 3-color LEDs. Moreover we designed the emergency communication support system using VLC, which is expected as a useful tool in the case of a disaster. We implemented the prototype system and evaluated it. Keywords: visible light communication, emergency communication, optical camera communication. 1. はじめに. 機の導入を進めているが,住民が普段から手軽に利用でき る手段ではない.また,広く普及している携帯電話網は,. 日本は国土の 7 割近くを中山間地域が占め,災害時孤立. 東海・東南海・南海地震の広域連動災害では,輻輳やケー. 可能性集落が全国約 2 万カ所存在する [1].孤立集落で重. ブル切断だけでなく,長期停電にともなう通信設備の機能. 要なことは,被害報告や救援要請を迅速に外部に伝えるこ. 停止により利用不能になることが予想される.無線 LAN. とである.多くの自治体では防災行政無線,衛星携帯電話. によるアドホックネットワークを用いた非常時通信も注目. 1. †1 a). されている [2], [3], [4].しかし,アンライセンスバンドで 和歌山大学システム工学部 Faculty of Systems Engineering, Wakayama University, Wakayama 640–8510, Japan 現在,近畿管区警察局 Presently with Kinki Regional Police Bureau ktsukada@sys.wakayama-u.ac.jp. c 2016 Information Processing Society of Japan . あるため手軽に利用できる反面,広く普及してしまったた め,混信・干渉の問題は避けられない. そこで,代替通信手段の 1 つとして,免許不要で手軽に. 134.

(2) 情報処理学会論文誌. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 利用できる可視光通信に着目した.可視光を搬送波として 用いるので,目視によっても信号の発信源を視認すること が可能である.さらに,専用の受信装置を用いることで,. 表 1. CSK を用いた可視光通信の機能比較. Table 1 Functional comparison of visible light communication using CSK.. 重畳されている情報を取得することが可能となる.災害時 の利用を想定した場合,被災地上空を飛行するヘリコプタ に対して,広範囲の視野の中から救援を求めていることに 気付いてもらうことが重要である.特に夜間においては, 被災地のどこで救援を要請しているかを把握することが困 難であった.可視光の特性を活かすことで,これらの課題. は,無線 LAN のような高速な無線通信としての位置付け. の解決が可能であると考える.. であり,室内照明,交通信号機,航路標識などの光に情報. 本論文では,夜間における可視光通信の非常時通信への. を重畳させている.しかし,これらの方式は,単色光源の. 適用を前提として,被災地上空からの視認性を重視して. 点滅により情報を伝達しているため,人間の目には光源の. RGB の 3 色の LED 光源のみを使用し,LED の加法混色. 点滅,ちらつきとして知覚されてしまう.そこで,人間に. により生成される 7 色の発光色変化によりデータ変調を行. 意識させないような変調方式 [13] が提案され使用されてい. う可視光通信方式を提案する.そして,提案方式を採用し. る.また,Balloon Tag [14], [15] では,数 bps の通信速度. たプロトタイプシステムによる実用可能性の実験結果につ. であるが,赤外光の点滅を用いた ID タグを実現している.. いて報告する.. 2. 関連研究. 発光色の時間的変化を用いる CSK(Color-Shift Keying) の技術がいくつか提案されている.可視光通信の変調方式 として IEEE 802.15.7 がある [16].これは,XYZ 表色系に. 非常時通信には,従来から長距離通信が可能で,物理的. おける二次元の図として表される xy 色度図の座標値を用. なケーブルを敷設する必要のない無線通信が広く使われて. いて情報を伝達する手法である.しかし,IEEE 802.15.7. いる.多くの自治体では,孤立集落対策として防災行政無. は光ファイバなどを使用した光通信を対象にしたものであ. 線,衛星携帯電話機を整備している.しかし,これらは,. り,長距離の光無線通信を想定していない.また,xy 色度. 免許や認可が必要であること,また,導入コスト,運用コ. 図上の 4 値,8 値,16 値の多値変調であるため送信側の発. ストが高額であることから,非常時に備えて普段から使い. 光色制御,受信側の発光色判定処理ともに複雑となる.. 慣れておくことが困難である.. C-Blink は携帯電話のディスプレイを用いて,N 進数値. 免許が不要なアンライセンスバンドの無線 LAN を基盤. 列のデータを N + 1 色の色点滅で送信機能を実現してい. とし,アドホックネットワーク技術を応用した手法が注目. る [17].それらのデータを USB カメラで認識し,HSV 表. されている [2], [3], [4].しかし,これらは自由に利用可能. 色系における色相差からカメラ画像中での信号位置を検出. な無線 LAN を使用しているため,使用周波数帯が他の目. した後,データ信号を受信する.N = 2 の場合は RGB の. 的で使用されている通信と混信・干渉の可能性がある.こ. 3 色を用いている.これは,デジタルサイネージなどのディ. れらの周波数帯を避けた機材を使用している取り組み [5]. スプレイと携帯端末のインタラクションが目的である.. もあるが,実験試験局としての運用であるため一般利用は 困難である.. ピカピカメラはスマートフォンの動画撮影機能を用いて 可視光通信の受信機能を実現している [18].輝度の変化と. 無線通信を使用しない方式には,地上にサインを描. RGB の色変化を併用した色変調方式を採用している.ピ. く [6], [7],狼煙を用いるなど,人間の視覚を大いに活用し. カピカメラでは,スマートフォン上でソフトウェア処理. た伝達手段の有用性が見直されている.平成 16 年新潟県. により通信しているため速度が遅い.そのため,スマート. 中越地震,平成 23 年東北地方太平洋沖地震では,孤立し. フォンに直接コンテンツを送信するのではなく,コンテン. た住民が救援要請のメッセージを地上にペンキや消石灰で. ツの ID のみを送信し,その ID に基づいて携帯電話網など. 描き,上空を飛行する自衛隊や消防のヘリコプタに伝えて. を介して大容量のコンテンツにアクセスするサービスを実. いた.あらかじめ用意しているシートを地面に敷くだけで. 現している.. 情報を伝達できる救援要請シートを導入している自治体も ある [8].原始的な手法ではあるが,既存通信インフラが 使用できない場合の代替通信手段として有効である.しか し,周囲が明るい昼間は非常に有効である一方で,照明が. 以上の既存技術の特徴を整理したものを表 1 に示す.. 3. 提案 3.1 提案システム. ない暗い夜間においては使用できないという課題がある.. 図 1 に我々が提案しているシステムのコンセプトを示. 一方で,可視光を搬送波に用いた光無線通信方式の研究. す.本研究の目的は,夜間,地上に照明がなく目視による. 開発が進んでいる.たとえば,文献 [9], [10], [11], [12] で. 被災地の状況把握が困難な状況において,被災地の孤立集. c 2016 Information Processing Society of Japan . 135.

(3) 情報処理学会論文誌. 図 1. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 提案システムのコンセプト. Fig. 1 Basic concept of proposed system.. 図 3. bit パターンによる状態遷移. Fig. 3 State transition model.. で点灯させる変調方式であったが,本提案手法では R,G,. B の同時点灯も含めた ON-OFF 制御により,それらの加 法混色で生成される 7 色を用いた変調を行う CSK 方式で ある. 送信するデータは bit 列で表現されているものとし,長 図 2 システム構成図. Fig. 2 System architecture.. さ 2n の bit 列データ b1 b2 · · · b2n−1 b2n (1 ≤ n) があるとす る.先頭から順番に 2 bit ごとに区切っていくと,i 番目の. 2 bit のかたまりの並びは (b2i−1 b2i )2 (1 ≤ i ≤ n) となり, 落の住民が地上から上空の消防・警察・自衛隊などのヘリ コプタに救援要請のメッセージを伝えることである.. (00)2 ,(01)2 ,(10)2 ,(11)2 の 4 パターンのいずれかになる. 次に,右回りに頂点 p0 , p1 , · · · , p5 からなる 6 角形を考. 図 2 にシステム構成図を示す.地上に多色 LED を使用. える.そして,p0 を初期位置として,送信データの 1 番目. した送信機を設置し,ヘリコプタにカメラを備えた受信. の 2 bit のかたまりが (00)2 ならば右回りに 1 つ隣の頂点. 機を搭載する.そして,カメラで撮影した画像に映る多色. p1 へ,同様に (01)2 ならば 2 つ隣の頂点 p2 ,(11)2 ならば. LED の光色から,救援要請のメッセージを読み取る.. 3 つ隣の頂点 p3 ,(10)2 ならば 4 つ隣の頂点 p4 に移動する. 本提案では,単一の受光素子を用いた可視光通信ではな. (図 3 参照) .次に,その移動した頂点位置を基準に,2 番. く,カメラのような二次元撮像素子を用いた OCC(Optical. 目の 2 bit のかたまりのパターンに応じて同様に頂点を移. Camera Communication)であるので,画像中に複数の発. 動する.これを送信データの bit 列に対して順次すすめて. 光源があったとしても,並行して情報を受信することが可. いく.. 能である.. このとき,i 番目のかたまりに対して処理したときの頂 点の位置 P (i) は,. 3.2 要求条件 提案システムでは,被災地での利用を想定し,以下の要 件を満たすことを目標とする. (要件 1) 夜間にカメラで被災地を上空から撮影して,そ の中で発光している箇所から情報を受信できること (要件 2) 単純な単色光の ON-OFF 制御に比べて上空から 気がつきやすいこと (要件 3) 少なくとも短文のテキストデータを送信するの に十分な通信速度を提供できること (要件 4) 送信機は LED 懐中電灯などに組み込めるような 簡易な制御方式であること 以下,これらの要件をふまえた,変復調方式,発光色の 判定方式を提案する.. P (0) = p0. (1). P (i − 1) = pj ⎧ ⎪ ⎪ p(j+1) mod 6 ⎪ ⎪ ⎨p (j+2) mod 6 P (i) = ⎪ ⎪ p(j+3) mod 6 ⎪ ⎪ ⎩ p(j+4) mod 6. (2) if (b2i−1 b2i )2 = (00)2 , if (b2i−1 b2i )2 = (01)2 , if (b2i−1 b2i )2 = (11)2 ,. (3). if (b2i−1 b2i )2 = (10)2 .. で表される. 得られる頂点遷移列 P (1), P (2), · · · , P (n) に対して,頂 点 p0 を Red,頂点 p1 を Yellow(Red と Green の加法混 色) ,頂点 p2 を Green,頂点 p3 を Cyan(Green と Blue の 加法混色) ,頂点 p4 を Blue,頂点 p5 を Magenta(Red と. Blue の加法混色)と順番に割り当て,対応する R,G,B の 3 色の LED を点灯させることで,発光色を用いたデー. 3.3 変調方式 従来技術では R,G,B の 3 色の LED を 1 色ずつ単独. c 2016 Information Processing Society of Japan . タ変調を行う. また,3 色の LED すべてを点灯させた場合の加法混色. 136.

(4) Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 情報処理学会論文誌. 図 4 S と V の関係. Fig. 4 Relation between S and V .. 図 5 V の RGB 空間でのプロット結果. である White は,送信データの bit 列の送信開始と送信終 了を示すために使用する.. Fig. 5 The 3D graph of V in the RGB color space.. いるか)を求める.今回の使用環境は,3.2 節の(要件 1). この方式では,bit 列内に同じ 2 bit パターンが連続する 場合でも,発光色は順次変化していくため,送信側と受信 側とで同期をとる必要がなく,発光色が変化したことをト. で述べたように夜間を想定しているので E = 0 とすると,. S = L−1 C −1 V. (5). リガとして非同期に動作させることが可能である.そして,. となる.しかし,L,C は使用する機材によって異なるた. bit パターンの伝送に用いる 6 色(Red,Yellow,Green,. め正確に求めることは難しい.そこで,V から ON-OFF ˆ を求める手続き F を考える. 状態の推定値 S. Cyan,Blue,Magenta)とは別に White を送信データの開 始,終了として用いることで,送信データの区切りを容易 に判断可能である.さらに,3 色の LED の ON-OFF 制御 のみで実現できるため,実装する場合も制御が容易である.. ˆ = F(V ) S. (6). 実際に通信を行う環境において,あらかじめ R,G,B の基準となる色ベクトルをサンプリングし,V との比較に ˆ を推定する. より S. 3.4 発光色の判定方式 3.3 節の変調方式において,R,G,B の LED の ON-OFF 状態を表現するベクトル S = [Sb. Sg. Sr ]T を考える.. カメラで撮像した V を,RGB 空間上にプロットすると,. LED の色特性 L,カメラの色特性 C により斜交した平行. 各要素は LED の ON-OFF 状態を 1,0 で表現する.た. 六面体の頂点位置にサンプルが集まった形状となる(一例. とえば,Magenta は Red と Blue の加法混色であるので. を図 5 に示す).提案手法では,各基準ベクトルとの類似. S magenta = [1 0. T. 1] となる.この ON-OFF 状態に基づ. 度で推定するため,複数のベクトルが斜交して近接してい. いて制御された LED をカメラで撮影すると,加法混色さ. ると推定が困難となる.そこで,基準ベクトルが構成する. れた色がカメラから出力される.ここでカメラが出力する. 平行六面体を,各基準ベクトルどうしがなす角度がお互い. 色ベクトルを観測値 V = [Vb. Vg. T. Vr ] とする.. に直角になるように立方体に座標変換することで類似度に. 一方で,R,G,B の各 LED を単独で点灯した場合,そ. よる推定を行いやすくする.. れぞれ R 成分のみ,G 成分のみ,B 成分のみで発光する. まず,平行六面体を立方体に変形する前段階として,ア. わけではなく,LED ごとの色特性に応じて RGB 各成分を. フィン変換による回転処理を行う.ここでは,平行六面体. すべて含んだ色で発光する.また,カメラで撮像した場合. を回転させることで,平行六面体の B 軸(図 5 の辺 OB に. も,カメラの撮像素子の色特性に応じた出力となる.. 相当)と直交座標系の B 軸とを式 (7) を用いて一致させる. ⎡ ⎤ ⎡ ⎤ ⎡ ⎤ ⎡ ⎤ ⎡ ⎤ ⎡ ⎤ Bb Bb Bb Bb Bb B  ⎢ ⎥ ⎢ ⎥ ⎢ ⎥ ⎢ ⎥ ⎢ ⎥ ⎢ b⎥ ⎢ B  ⎥=X g⎢Bg ⎥, ⎢B  ⎥=X r⎢B  ⎥, ⎢B  ⎥=X b⎢B  ⎥ ⎣ g⎦ ⎣ ⎦ ⎣ g⎦ ⎣ g⎦ ⎣ g ⎦ ⎣ g⎦ Br Br Br Br Br Br. 本提案では,LED の ON-OFF 状態 S とカメラの出力す る色ベクトル V を以下の関係式でモデル化する.. V = C(LS + E). (4). ここで,L は各色 LED が発光する RGB 各成分を表す. ⎡. 特性行列である.LS により,点灯している LED の RGB. ⎢ Xg = ⎢ ⎣. 成分が加法混色された値が得られる.また,E は周辺の環 境光であり,LED の光と環境光とが合算されてカメラに到 達する.C はカメラで受像したときに出力される RGB 成 分を表す特性行列である(図 4 参照). この式から,撮像した V から S(どの LED が点灯して. c 2016 Information Processing Society of Japan . cos α. 0. 0. 1. sin α. ⎤. ⎥ 0 ⎥ ⎦ − sin α 0 cos α ⎤ ⎡ cos β − sin β 0 ⎥ ⎢ Xr = ⎢ cos β 0⎥ ⎦ ⎣ sin β 0 0 1. (7) (8). (9). 137.

(5) 情報処理学会論文誌. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). ⎤. ⎡ 1. ⎢ Xb = ⎢ ⎣0 0 α = tan−1. 0. ˆ とする.ただし,|V | の値が小さ となる基準ベクトルを S. 0. cos γ sin γ. ⎥ − sin γ ⎥ ⎦ cos γ. Bg Bg Br , β = tan−1  , γ = tan−1  Bb Bb Br. (10). と判定する.. (11). 次に,平行六面体の残りの軸(図 5 の辺 OR,OG に相 当)を直交座標系の R 軸,G 軸に一致させるように変形す る.この変換は,斜交座標系の単位ベクトルを i,直交座 標系に変換後のベクトルを j とすると, ⎡ ⎤ ⎡ ⎤ jb i ⎢ ⎥ ⎢ b⎥ ⎢ jg ⎥ =Y −1⎢ ig ⎥ ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ jr ir ⎡ ⎤ 1 cos φ cos ψ ⎢ φ cos η ⎥ ⎥ 0 sin φ cos ψ−cos Y =⎢ sin φ ⎣ ⎦ √ g 0 0 sin φ. い,すなわち,画素が暗い場合にはノイズの影響を受けて ˆ = [0 0 0]T 推定ができないため,その場合は全消灯 O 以上をまとめると,手続き F は. ˆ = F(V ) S

(6) =. ˆ O. if |Vˆ | ≤ ε,. ˆ arg maxZ∈{B, ˆ G, ˆ R, ˆ C, ˆ M ˆ ,Yˆ ,W ˆ}V ·Z. otherwise. (16). と表すことができる.. (12) 3.5 復調方式 3.3 節で述べたように,非同期の変調方式であるため,発 (13). ˆ を時系列順に記録す 光色が変化したことをトリガとして S ˆ ˆ ˆ る.その記録列 S t , S t+1 , S t+2 , · · · を図 3 に示した 6 角. g = 1−cos2 φ−cos2 ψ−cos2 η+2 cos φ cos ψ cos η (14). 形の頂点に対応させて,変調方式の逆の手順で 2 bit のパ ターンに逆変換し,元の bit 列に復元する.また,White. として表せることが知られている.ただし,ここでは,平 行六面体の辺 OB と辺 OG,辺 OB と辺 OR,辺 OG と辺. OR とがなす角度をそれぞれ φ,ψ ,η とする. 以上の変換を V に対して行うと,変換された観測値 Vˆ は,. を送信データの開始,終了の区切りとして処理する.. 4. 実装 提案方式のプロトタイプシステムでは,キーボードなど の文字を入力することが可能な装置と発光する装置を装備. Vˆ = Y −1 X b X r X g V. (15). した送信側装置,そして送信側装置の光を撮像できるカメ ラを備え,受信した信号を復調する受信側装置の組から構. となる.この変換後の座標系では,基準となる Red,Green, ˆ = [0 0 1]T ,G ˆ = [0 1 0]T , Blue の各ベクトルは,R. 成される.. 0 0]T となる.さらに,これらの加法混色で得ら ˆ = [1 1 0]T , れる Magenta,Yellow,Cyan,White は,C. 4.1 送信側装置. ˆ = [1 B. ˆ = [1 M. 0 1]T ,Yˆ = [0. ˆ = [1 1 1 1]T ,W. 1]T と. なる.. 送信側装置の構成概要を図 7 に,使用した機材を図 8 に 示す.R,G,B の 3 色の LED を搭載した舞台照明用 LED ライト(Alkalite LED Technology Octopod75)を使用し,. 最後に,Vˆ と上記の 7 色の基準ベクトルとの内積による. cos 類似度を使用して発光色を推定する(図 6 参照).. 舞台照明制御用の通信規格である DMX512 を用いて各色. LED の ON-OFF 制御を行った(表 2 参照).DMX512 に. 観測ベクトルと基準ベクトルとがなす角度が小さいほど. 対応した照明機材の多くは多機能であるが,実装時に使. cos 類似度の値は 1 に近くなることから,cos 類似度が最大. 用した機能は LED の ON-OFF 制御のみである.3.3 節で 述べた変調方式に従って bit 列を送信するソフトウェアを 独自に開発し,発光色の変化する発光時間間隔を 25 ms∼. 1,000 ms の間で変更できるようにしている.. 図 6. ˆ 7 色の基準ベクトルと観測値 V. ˆ. Fig. 6 Reference vectors of 7-colors and V. c 2016 Information Processing Society of Japan . 図 7. 送信側装置の構成. Fig. 7 Configuration of the transmitter.. 138.

(7) 情報処理学会論文誌. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 表 3. カメラ,レンズの仕様. Table 3 Specifications of the camera and the lens.. 図 8. 送信側装置の外観. Fig. 8 External appearance of the transmitter. 表 2. LED ライトの仕様. Table 2 Specifications of the LED light.. ス機能を無効にして使用している.これは,当該機能によ り撮像データの色が自動補正されてしまうのを防ぐ(特性 行列 C の変動を防ぐ)ためである.また,今回用いたカメ ラと LED ライトの特性の組合せにより,V の値は,B 成 分の値が大きく,G 成分,R 成分の値が小さく出力される 傾向があった.そのため,今回の実装では受信側装置のソ フトウェアで,G 成分,R 成分の値に補正係数をかけるこ とにより各成分の値の範囲を揃えている. また,カメラで撮像された 2 次元画像データの中で,画 像中央のピクセルの RGB 成分を V として処理をしてい る.ただし,中心の 1 ピクセルのみではカメラや LED ラ イトのわずかな揺れによりずれてしまうため,プロトタイ プシステムでは暫定的に中心のピクセルの周囲 8 ピクセル を含めた 9 ピクセルの中で |V | が最大となるピクセルの値. 図 9. 受信側装置の構成. Fig. 9 Configuration of the receiver.. を V として採用している.. 5. 評価 5.1 基準ベクトルの測定 ˆ を推定する カメラでの観測値 V から ON-OFF 状態 S 際に使用する行列 X r ,X g ,X b ,Y を算出(式 (7) 参照) するために,基準となる RGB 色ベクトルの値をサンプリ ングする.外乱のない暗室を用いて測定した. カメラから出力される各成分の値は符号なし 8 bit で値 域は 0∼255 である.LED ライトとカメラの距離を 2.6 m 図 10 受信側装置の外観. Fig. 10 External appearance of the receiver.. にし,LED ライトで White(Red,Green,Blue の加法混 色)の LED をすべて点灯させ,カメラで撮影した画像が 白飛び(RGB の各値が 255 になる)しないようにレンズ. 4.2 受信側装置 受信側装置の構成概要を図 9 に,使用した機材を図 10. 絞りで光量を調節する.そのレンズ絞りの状態で,R,G,. B の LED を各々単独で一定時間点灯させ,測定した値の. に示す.工業用 CCD カメラ(センテック STC-TC33)を. 平均を基準ベクトルとした.結果を表 4 に示す.前述のよ. 使用し,外部インタフェースとして USB2.0 を用いて,カ. うに,LED ライト,カメラの色特性により,単色 LED で. メラ制御,および,撮像データの読み出しを行った.レン. も各成分が含まれていることが分かる.. ズは,工業用 CS マウントレンズ(タムロン M13VM308). RGB の加法混色により得られる他の 4 色は,これらの合. を使用した(表 3 参照) .CCD カメラを USB で PC に接. 成されたベクトルとなる.3.4 節で述べたように,サンプ. 続し,Windows 上で動作する,前述の発光色の判定,復調. リングした値のままでは斜交した平行六面体の形状となっ. の処理をするソフトウェアを独自に開発した.. ている.2 色のベクトルのなすを角度 θ としたときの cos θ. 上記カメラを使用するにあたって,自動ホワイトバラン. c 2016 Information Processing Society of Japan . をすべての 2 色の組合せについて求めた結果を表 5 に示. 139.

(8) 情報処理学会論文誌. 表 4. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 基準ベクトルの測定結果. Table 4 Reference color vectors.. 表 7. 発光時間間隔と受信誤り率(暗室内). Table 7 Relationship between time interval of LED light emitting and receive failure rate (in darkroom).. 表 5 変換前の基準ベクトル間の cos θ. Table 5 cos θ between each of the raw reference vectors.. 一とし,各色の発光時間間隔(色の変化する時間周期)を. 50 ms∼200 ms の範囲で変化させて,受信誤り率を測定し た.発光時間間隔を短くすれば,時間あたりに送信できる. 2 bit のかたまりの個数が増えることになり,通信速度の 表 6 変換後の基準ベクトル間の cos θ. 高速化につながる.結果を表 7 に示す.本提案手法では,. Table 6 cos θ between each of the converted reference vectors.. 2 bit のかたまりごとに処理しているので,ここでの誤り率 は,BER(Bit Error Rate)ではなく SER(Symbol Error. Rate)に相当する. 発光時間間隔が 125 ms∼200 ms の範囲では誤りなく通 信ができることが確認できた.一方,50 ms で急激に誤り率 が増加しているが,これは使用した CCD カメラのフレー ムレートの影響と考えられる.使用したカメラの仕様上の フレームレートは 30 fps であるが,USB 接続した PC 上 で画像読み込みをソフトウェア処理するため,実質的な す.同様に,本手法の座標変換を行った基準ベクトルの場. フレームレートは 18∼21 fps 程度であった.20 fps のとき. 合の結果を表 6 に示す.. に 50 ms ごとに画像データを取得することになり,発光時. 表 5 の結果から分かるように,変換前の基準ベクトルを. 間間隔とほぼ同じになる.そのため,発光時間間隔と画像. 直接用いると,隣接する 2 色の基準ベクトルの cos θ が 0.9. データ取得間隔との微妙なタイミングのずれにより誤り率. 以上の値(たとえば,W と C は 0.980)となる場合があ. が急増したと考えられる.. る.式 (16) で示したように,本手法では cos 類似度を用い て推定しているため,ある 2 色の基準ベクトルが非常に近. 5.3 屋外夜間における測定. 接していると,観測ベクトルがそのいずれと類似している. 本研究が想定している災害時に上空を飛行するヘリコプ. か判定するために最大値を比較するにもわずかな値の違い. タに対して地上から情報を発信することの実用可能性を確. で判定せざるをえない.そのため,観測値のわずかな揺ら. 認するために,夜間に屋外において通信性能を測定した.. ぎで誤判定をしてしまう.一方,表 6 の結果では,隣接す. その際,法令により航空機の最低安全高度が家屋密集地域. る 2 色の基準ベクトルの cos θ は最大 0.816,データの区切 ˆ を除けば最大 0.707 となり,表 5 に比べ値が りを示す W. ならば地上 300 m 以上,開けた場所ならば地上 150 m 以上 と定められていることから,送信機と受信機との間の距離. 小さくなっている.すなわち,近接していた基準ベクトル. を,余裕を持って約 350 m 確保して実験した.. 間の距離を確保することが可能となった.. レンズ絞り,変換行列などの各種条件は 5.1 節と同一と し,発光時間間隔を 75 ms∼800 ms の範囲で変化させて,. 5.2 暗室内における測定. 受信誤り率を測定した.結果を表 8 に示す.. カメラで撮影する範囲内に外乱となる照明光がない状. 発光時間間隔 400 ms,800 ms では誤りなく通信できて. 況における通信性能を測定した.LED ライトとカメラの. いるが,表 7 の結果と比べて全体的に誤り率が大幅に増加. 距離,レンズ絞り,変換行列などの各種条件は 5.1 節と同. していた.これは,距離が離れたことにより,カメラが撮. c 2016 Information Processing Society of Japan . 140.

(9) 情報処理学会論文誌. 表 8. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 発光時間間隔と受信誤り率(屋外夜間). Table 8 Relationship between time interval of LED light emitting and receive failure rate (outdoors at night).. 6. 考察 6.1 通信性能 5.3 節の結果より,水平方向で 350 m ではあるが,通信可 能であることが確認できた.ただし,実際の利用状況では, 垂直方向の 300 m であり,雲などによる遮蔽,減衰が考え られる.また,今回の評価実験は,冬季の乾燥した日の夜 間に実施しており,非常に空気が澄んでいた状況である. 今後,降雨時,高湿度時などの気象条件が通信性能に与え る影響について評価が必要である.あわせて,5.4 節の結 果から明らかなように,気象条件が変化するのに追従して 随時変換行列も更新していく方式への改良が必要である. また,5.2 節の結果では,発光時間間隔が最短で 125 ms まで,5.3 節の結果では同じく 400 ms まで,受信誤りなし. 像した LED ライトの照度が弱くなった影響であると考え. で通信することができた.これをビットレートに換算する. られる.. と,暗室内は 16 bps,屋外夜間は 5 bps の通信速度に相当 する.この速度は無線 LAN など昨今利用可能な通信手段. 5.4 変換行列の対応可能範囲 本実装では,通信前にあらかじめ基準ベクトルを測定し,. に比べるときわめて低速であるといわざるをえない. 一方で,8 bit 文字コードを使用して通信すると仮定する. 変換行列を決定してから通信を開始している.ある条件下. と,毎分 37.5 文字∼120 文字を通信することができるビッ. で決定した変換行列で,異なる通信環境にどの程度対応で. トレートである.これは,第一級総合無線通信士に要求さ. きるのか測定した.. れる電気通信術のモールス電信のレベルが「1 分間 75 字の. まず暗室内で測定した基準ベクトルにより変換行列を決. 速度の和文,1 分間 80 字の速度の欧文暗語及び 1 分間 100. 定する.その設定値のまま,実験機材を暗室から照明のあ. 字の速度の欧文普通語によるそれぞれ約 5 分間の手送り送. る屋内に移動し通信性能を測定した.その結果,すべての. 信及び音響受信」 (無線従事者規則 第五条の一)である. 発光時間間隔において受信不可能となってしまった.ある. ことをふまえると,携帯電話など他の通信手段が使えない. 条件下で決定した変換行列では,他の条件では完全に通信. 非常時において,モールス電信術の技能がなくてもこの通. 不可能であった.. 信速度での通信ができるのであれば,非常時通信の一手段. この結果から,提案手法で受信誤り率を低減させるため. として十分利用価値があると考えられる.. には,通信中も随時,基準ベクトルの測定と変換行列の更 新をする必要がある.. 6.2 受信誤りの発生要因 提案手法で受信誤りが発生する要因には,以下の 2 点が. 5.5 低照度の光源の測定. 考えられる.. 低照度の光源をカメラで撮影した場合,光源の色が変化. (要因 1) カメラのフレームレートが発光時間間隔に間に. していなくても,カメラから出力される V の値はわずか. 合わず観測ベクトルに抜けが生じたことによる受信. に揺らいでいる.したがって,光源が暗くなると |V | の値. 誤り. が小さくなるため,相対的に |V | に対する変動の割合が大 きくなり,類似度判定の結果が不安定になることが想定さ れる. そこで,暗室内でカメラのレンズ絞りを絞ることで,低. (要因 2) カメラの露光時間の間に発光色が変化したこと で発光色を誤判定したことによる受信誤り ここで,発光時間間隔を Ti ,フレーム間隔を Tf ,露光 時間を Te とする.. 照度の状態を作り,R,G,B,C,M,Y,W の各色を 30 秒. (要因 1)は,Ti が Tf より小さい場合,および,Ti と Tf. 間連続点灯し,受信誤り率を測定した(各色 N = 1,000).. とが近い値の場合に該当する.前者の場合は観測ベクトル. その結果,低照度の場合でも受信誤りは発生しなかった.. の抜けが生じるのは明らかである.一方,後者の場合,本. このことから,V の揺らぎによる影響は小さいと考えら. 手法ではクロック同期を行っていないため,送信側と受信. れる.. 側のクロックの揺らぎにより,観測ベクトルの抜けが発生 する.5.2 節,5.3 節の両方の結果で発光時間間隔が短くな るに従って誤り率が増加しているのはこの要因によると考 えられる.. c 2016 Information Processing Society of Japan . 141.

(10) 情報処理学会論文誌. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). (要因 2)は,光源の明るさにより Te の大きさが変化す. 表 9 要件達成度. ることに起因する.カメラの撮像素子では,R,G,B の各. Table 9 Status of achievement of requirements.. 色のセンサが露光時間内に受光した光量の積算量が観測値 として出力される. プロトタイプシステムで使用したカメラには,自動露出 機能が備えられている.そのため,光源が明るい場合は, 観測値の白飛びを防ぐために Te が短く,光源が暗い場合 は,黒潰れを防ぐために Te が長くなる.光源とカメラの距 離が近く明るく映る暗室内の実験では Te が短くなる.逆 に距離が遠く暗く映る屋外夜間の実験では Te が長くなる.. Te が長くなると,露光時間中に発光色が変化する事象の 発生確率が高くなる.この事象が発生すると,発光色の変 化の前後の色を両方受光することになり,両者の加法混色 の色として観測される.評価実験の結果においても,たと えば,露光時間中に R から B へ変化するすると,R と B の加法混色である M として判定されている事例があり,発 光色が変化するタイミングで意図しない色判定をする事例 が多い.この結果,誤り率が増加することになる.5.2 節 の暗室内と比較して,5.3 節の屋外夜間の誤り率が増加し ているのはこの要因によるものと考えられる. 以上は,5.2 節,5.3 節の結果に基づく定性的な考察であ り,今後,Ti ,Tf ,Te の各パラメータを変えながら受信誤 り率を測定し,定量的な評価を行っていく.. 6.3 変換行列の較正 5.4 節の結果からも明らかなように,本手法では式 (15). この問題の解決には,画像内での送信光源位置の座標を. における変換行列が受信誤り率に大きく関与している.そ. 自動的に推定し,カメラ画像の揺動にあわせて受信対象領. のため,通信環境に応じて適切な変換行列を設定しなけれ. 域を追従させることが有効である.機能実装は今後の課題. ばならない,. である.. プロトタイプシステムでは,事前に変換行列の較正を行 い,その後に通信を開始する手順となっている.しかし,. 6.5 視認性. 本論文で想定している利用環境では,事前に較正すること. 単色の光源を点滅させる変調方式は,上空からでは,変. は困難である.また,事前に較正できたとしても,通信開. 調処理の結果として点滅しているのか,送信光源以外の連. 始から終了までの間に通信環境が変化して,変換行列が不. 続点灯している光源が遮蔽物に隠れて点滅しているように. 適切なものになる可能性もある.. 見えているのかの区別が難しくなる可能性がある.また,. この問題の解決には,通信中の観測値を利用しながら,. 都市部の広告物照明が非常に目立つのは,光源の色が頻繁. リアルタイムに変換行列を較正することが有効である.機. に変化するからであり,本提案方式の色変化による変調方. 能実装は今後の課題である.. 式も同様に上空から,人間の目で気が付きやすいと考えら れる.今後,定量的な検証が必要である.. 6.4 受信映像内での発光点認識. 一方で,光の点滅,色の変化などは人体に与える影響も. プロトタイプシステムでは,暫定的にカメラで撮影した. 考慮しなければならない.高速な点滅,輝度変化は光感受. 映像の中心点とその周囲を含む 9 ピクセルの観測値を用い. 性発作を誘発することが知られている.文献 [19],文献 [20]. て受信処理をしている.しかし,実際に上空を飛行するヘ. のガイドラインをもとに,慎重に発光時間間隔を検討して. リコプタから撮影した場合は,撮影した映像内で送信光源. いく必要がある.. の位置が揺動するため,この方式では実用上の問題がある. 受信処理の対象領域を 9 ピクセルより拡大することでも対 処可能であるが,送信光源以外の外乱光源がその領域内に 含まれてしまう可能性があり,受信誤りの増加につながる.. c 2016 Information Processing Society of Japan . 6.6 要件達成度 以上の結果を 3.2 節であげた要求条件と対応付けたもの を表 9 に示す.. 142.

(11) 情報処理学会論文誌. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 6.7 既存技術に対する優位性 既存技術に対する優位性として,以下の 3 点があげら れる.. 夜間における被災地上空からの視認性を重視した可視光 非常時通信方式を提案した.この方式では,RGB の 3 色. LED の加法混色により生成される 7 色を用いて色変調し. ( 1 )光ファイバ通信による高速通信,長距離通信は,通信. ている.そして,提案方式を採用したプロトタイプシステ. 媒体としてファイバを使用するため,本論文で想定してい. ムによる評価実験を実施し,当初設定した要求条件をほぼ. るような被災地にある固定局と,上空を飛行する移動局と. 満足していることを確認した.これにより,災害時におい. の間の通信に適用することは困難である.照明光通信に代. ての実用可能性が見込めると考えられる.. 表される多くの可視光通信では,これを光無線通信により. 一方で,いくつかの課題も明らかとなっている.. 実現を試みているが,受信素子として高フレームレートの. 1 点目は,利用環境の変化に応じて変換行列を随時更新. 特殊なカメラが必要となる. これに対して,本手法では,一般に入手可能な 30 fps 程 度のカメラで利用可能である. ( 2 )従来の可視光通信で使用されている OOK(On-Off. Keying)や PPM(Pulse Position Modulation)では送信側. する機能の追加が必要である.現状では,通信に先立って 基準ベクトルをサンプリングしているため,通信中の環境 変化に追従することができない.そこで,通信中の観測値. V の値も活用しながら変換行列をリアルタイムに較正する 手法を検討していく.. と受信側とでクロック同期が取れていることが必要になる.. 2 点目は,プロトタイプシステムでは,カメラで撮影した. ID タグとしての利用を想定している Balloon Tag [14], [15]. 画像の中心点 1 カ所のみでしか受信することができない.. では,データ送信用の LED とは別に同期用 LED も別に備. OCC の特徴である,複数送信光源から並行して受信でき. えることで同期を確保している.. る利点が活かせていない.そこで,カメラで撮影した画像. これに対して,本手法では発光色の変化をトリガとした. 内での光源位置の推定し,カメラ画像の揺動にも追従して. 非同期方式であるので,クロック同期機構が不要となりシ. 送信光源位置を追跡できる画像内光源位置の推定手法を検. ステムの実装が容易である.しかし,6.2 節で述べたよう. 討していく.. に,非同期であるために,送受信機間での微妙なずれが色. 3 点目は,本手法では非同期であるため,送信側の色変. 判定に悪影響を与えている.同期ずれに強い変調方式の検. 化のタイミングと,受信側のサンプリングのタイミングの. 討が今後の課題である.. ずれが色判定に影響を与えている.そこで,同期ずれに強. ( 3 )C-Blink [17],ピカピカメラ [18] は,R,G,B の 3 色 をシンボルとして用いた CSK を採用しているのに対し, 本手法では 7 色をシンボルとしている.シンボル数が多い と,シンボルあたりのビット数を大きくすることができる.. い変復調方式を検討していく. 今後,以上の課題解決に取り組み,実用性の向上をは かっていく. 謝辞 本研究は,JST A-STEP 課題番号 AS221Z02488A,. そのため,同一の変調速度(発光時間間隔に相当)であれ. および,JSPS 科研費 23650029,25242037 の助成を受けた. ばビット伝送量を増やすことができ,同一のビット伝送量. ものです.また,本研究の基礎技術の研究開発に協力して. であれば変調速度を遅くすることができる.光無線通信の. くれた原山拓士君,村吉翔大君, 田政裕君に感謝いたし. 場合,光源が人間の視野内に入る可能性があり,6.5 節で. ます.. 述べた人体への影響をふまえると,変調速度を遅く(発光 時間間隔を長く)できることは有利である. 一方で,IEEE 802.15.7 [16] の 16CSK のように 16 色を. 参考文献 [1]. シンボルに使用すれば,シンボルあたりのビット数を大き くできる.しかし,送信側では,16 色を正確に発光させ. [2]. るために RGB の 3 色 LED の輝度を PWM(Pulse Width. Modulation)などにより制御する必要があり,ハードウェ ア,ソフトウェアの両面で構成が複雑となる.また,受信. [3]. 側でも,判定すべき色数が増えるため,色空間上で各シン ボルが近接し,色判定の精度を確保することが困難になる. 本手法は.送信側は単純な LED の ON-OFF 制御のみで. [4]. 実現可能であり,また,受信側は変換行列により近接する シンボル間の距離を確保している.. 7. おわりに 本論文では,可視光通信の非常時通信への適用をめざし,. c 2016 Information Processing Society of Japan . [5]. 内閣府政策統括官(防災担当) :中山間地等の集落散在地 域における孤立集落発生の可能性に関する状況調査(都 道府県アンケート調査)調査結果,内閣府 (2005). 間瀬憲一,岡田 啓,大和田泰伯:中山間被災地復興へ 向けた無線ブロードバンド提供の実践的取組み,電子情 報通信学会誌,Vol.91, No.10, pp.857–861 (2008). Urakami, M., Innami, S., Kamegawa, M., Shigeyasu, T. and Matsuno, H.: Wireless Distributed Network System for Relief Activities after Disasters, Proc. 2010 Int’l Conf. Broadband, Wireless Computing, Communication and Applications, pp.260–267 (2010). 大瀧 龍,重安哲也,浦上美佐子,松野浩嗣:自律的無線 ネットワークを用いた被災情報提供システム,情報処理 学会論文誌,Vol.52, No.1, pp.308–318 (2011). 情 報 通 信 研 究 機 構:地 域 分 散 ネ ッ ト ワ ー ク NerveNet ( ナ ー ブ ネ ッ ト ),入 手 先 http://www.nict.go.jp/outpromotion/other/case-studies/itenweb/nervenet.html (参照 2015-4-10) .. 143.

(12) 情報処理学会論文誌. [6]. [7] [8] [9] [10] [11]. [12] [13]. [14]. [15]. [16]. [17]. [18]. [19] [20]. Vol.57 No.1 134–144 (Jan. 2016). 此松昌彦,中村太和,北村元成,今西 武:災害時におけ るヘリコプター用救難サインの提案,地域安全学会梗概 集,Vol.23, pp.39–40 (2008). 池田吉男:集落の孤立防止対策について,日本災害情報 学会第 13 回研究発表大会予稿集,pp.389–394 (2011). 中央防災会議:孤立集落対策について,地方都市等にお ける地震防災のあり方に関する専門調査会 (2010). 中川正雄:可視光通信の世界,工業調査会 (2006). 可視光通信コンソーシアム,入手先 http://www.vlcc. net/ (参照 2015-4-10). 飯塚宣男:可視光イメージセンサ通信技術の動向と展 望,マイクロメカトロニクス,Vol.54, No.202, pp.26–37 (2010). 春山真一郎:可視光通信の現状,照明学会誌,Vol.98, No.10, pp.538–541 (2014). 杉山英充,春山真一郎,中川正雄:可視光通信に適した 変調方式の実験的検討,電子情報通信学会技術研究報告, SANE2005-7, pp.35–38 (2005). Aoki, H. and Matsushita, S.: Balloon Tag: (In)visible Marker Which Tells Who’s Who, Proc. 4th IEEE Int’l Symp. on Wearable Computers, pp.181–182 (2000). 青木 恒:「見えない」ビジュアルタグ Balloon Tag,イ ンタラクション 2001 論文集,pp.129–130, 情報処理学会 (2001). IEEE Standard for Local and metropolitan area networks, Part 15.7: Short-Range Wireless Optical Communication Using Visible Light, IEEE Std 802.15.7 (2011). 宮奥健人,吉田悠一,東野 豪,外村佳伸:C-Blink:携帯 端末カラーディスプレイによる色相差光信号マーカ,電子 情報通信学会論文誌,Vol.J88-D-I, No.10, pp.1584–1594 (2005). 飯塚宣男,菊地正哲:ピカピカメラ—カメラを用いた 可視光通信スマホアプリ,照明学会誌,Vol.98, No.10, pp.546–549 (2014). 日本放送協会, (社)日本民間放送連盟:アニメーション 等の映像手法について (2006). ITU-R: Guidance for the reduction of photosensitive epileptic seizures caused by television, ITU-R BT.1702 (2005).. 岡 裕大 2013 年和歌山大学システム工学部情 報通信システム学科卒業.同年近畿管 区警察局に入庁,和歌山県情報通信部 に配属.2014 年から同所属の機動通 信課にて和歌山県内各署における機器 保全業務に従事.. 塚田 晃司 (正会員) 1996 年慶應義塾大学大学院理工学研 究科後期博士課程所定単位取得退学. 同年(株)日立製作所システム開発研 究所.2003 年より和歌山大学システ ム工学部助教授.現在,准教授.博士 (工学) .ネットワークサービス,減災 情報システム等の研究に従事.電子情報通信学会,日本災 害情報学会,システム制御情報学会,IEEE,ACM 各会員.. c 2016 Information Processing Society of Japan . 144.

(13)

Table 1 Functional comparison of visible light communication using CSK. は,無線 LAN のような高速な無線通信としての位置付け であり,室内照明,交通信号機,航路標識などの光に情報 を重畳させている.しかし,これらの方式は,単色光源の 点滅により情報を伝達しているため,人間の目には光源の 点滅,ちらつきとして知覚されてしまう.そこで,人間に 意識させないような変調方式 [13] が提案され使用されてい る.また, Balloon Ta
図 1 提案システムのコンセプト Fig. 1 Basic concept of proposed system.
図 4 S と V の関係 Fig. 4 Relation between S and V .
表 6 変換後の基準ベクトル間の cos θ
+3

参照

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