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西南日本の起震応力

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(1)

西南日本の起震応力

   木村 昌三1・岡野健之助2

(l理学部附属高知地震観測所.2高知大学名誉教授)

Seismotectonic Stressesin Southwest Japan

 Shozo Kimura' and Kennosuke Okano^

'Kochi Earthquake Obseruator^i, Faculty o/ Science;

’Pro∫essorEmeritus, Kochi Uniuersiり

Abstract: Crustal and mantle earthquakes occur with approximately mutually perpendicular P axes, in the east-west and the north-south directions respectively, in Southwest Japan. Although the crustal earthquakes occur in the whole region. the mantle ones occur in a northward inclined focal distribution layer, mainly in the region to the south of the Median Tectonic Line(MTL). A few of mantle earthquakes occur also in the region to the north of MTL, whose foci are approximately horizontally distributed with several kilometers in thickness just beneath the Moho. The great part of them have nearly the same north-south direction P axes as the mantle earthquakes in the region to the south of MTL. Based on these characteristics we propose the

following view: a pressure of the north-south direction putting on the mantle in Southwest Japan causes the mantle earthquakes with P axes in the north-south direction. Crustal earth-quakes with P axes in the east-west direction are induced by occurrence 0f large magnitude mantle earthquakes in the region from MTL to the Nankai Trough. However stress generating the crustal earthquakes is given by gravitation from rocks loading on the focal fields. Mantle earthquakes of large magnitudes have been observed in the region to the south of MTL, but not observed to the north of MTL. 0n the contrary, large crustal earthquakes have occurred in the region to the north of MTL, but not occurred to the south of MTL except aftershocks of great earthquakes in the mantle such as the 1944 Tonankai or 1946 Nankai earthquakes. We infer that it is due to the difference between inclination angles of the Moho in both regions and effect of the MTL which forms the boundary between the inner and outer regions of Southwest Japan. In addition, it is inferred that prediction of great Nankai earthquakes is more possible than the one of large crustal earthquakes in the inner region, because the focal region of the Nankai earthquakes is identified, whereas the large crustal ones are difficult to predict their focal locations.

Key word: 西南日本の起震応力,地殻地震,マントル地震,プレート運動.

      はじめに

(2)

AB S 図1 西南日本におけるマントル地震(H>30km)の震央分布(八,)と=深さ分布(B). JMAデータの 期間は1985∼1993年,Mは2.5以上である. 34 高知大学学術研究報告 第48巻

て発生するという解釈が定説となっている.一方√西南日本の内陸部に発生する地殻地震はP軸の

方向がほぽ東西であることから,これらの地震の起震応力をに太平洋ブレードの沈み込みによる西

方への圧縮,またはアムールプレートの東進に起因する東西方向の圧縮に求める考えが一般に受け

入れられている.

1995年の兵庫県南部地震が発生すると,:そめP奮の方向が東西であることから西

南日本内帯に働く起震応力についての議論が活発とならだ=jしか=しこ:=の東西方向の応力と前記フィ

リピン海プレートの北西方向への圧縮応力がどのようレに関連を:も/らて]西南日本に働くかについては,

それらの応力の和を考える程度であってほとんど議論されて.いないレこの点については,瀬野

(1995)が,東北一中部一西南日本の東西圧縮の原因を,太平洋プレニトの押しに帰着させて議論

しているが,横ずれ断層を生み出すためにはフィリ△ピノン海プレートが西南日本を南北に押していな

いことが必要であると述べている.しかしそうするとこの場合,南海地震を起こす応力がフィリピ

ン海プレートの北西方向への沈み込みによるとする従来の考えとどのように調和させるのかという

疑問が起きる.筆者等[岡野・木村(1996)]は四国地方のマントル最上部と地殻に発生する,それ

ぞれ南北,東西方向のP軸を持つ地震,そして地表で測地測量によって観測される北西一南東方向

の水平変動等を総括して,定性的ではあるが矛盾め少ない説明を与えているレ

 筆者等は今回中央構造線北側の内陸地域に発生する震源の深い地震の起震応力について調べたと

ころ,四国と類似した特徴を持つと考えられる結果をト得たので,西甫日本全体に対する応力場の統

(A)

(B)

  N

  0  5 莽胎こ lOOKM JMA(1985-1993) 30<H<100!匿△Mヤ2・し5    | 132. 5E - 36N ……Sバ cb°心   Q や鰐犬 尚1-32N 13:7E∧

(3)

一的な解釈について報告する.

西南日本の起震応力(木村・岡野) 35

       西南日本内帯に発生する地震の震源分布

 西南日本におけるM>=2.5の地震の震央分布と南北断面に投影した深さ分布を図1の(A),(B)

に示す.ただし震央分布には深さが30km以上のマントル最上部の地震だけを示してある.震源デー

タは気象庁(JMA)のもので,分布図は綴緻・吉井(1986)作成のソフド‘micro

SEIS"

を用い

て作られた.地殻地震については多くの研究があるのでここでは問題となる点は少ないが,マント

ルに発生する地震については研究が進んでいないので疑問点が多い.

 図1(A)を見るとマントル最上部に発生していると考えられる,いわゆる地殻底下地震(ここで

はマントル地震と呼ぶ)としては,西では九州の下に沈み込む梢深発地震があり,四国および紀伊

半島地域では主に中央構造線以南に活動が見られる.近畿地方では琵琶湖の東部に南よりつながる

活動があり,この活動は東海地方に続いている.しかし琵琶湖の西部ではマントル地震は殆ど観測

されていない.このようなモホ面直下の地震は中国地方南部においても見られる.図2は高知地震

観測所が観測した,四国中央部から中国地方にかけた地域の震源分布である.中央構造線まで北下

がりに分布するマントル地震が,構造線以北ではほぼ水平に分布している.それらの数は多くない

けれども震源決定精度を考慮すると,35∼50kmの深さに収まるので,やはりモホ面直下のマントル

地震が中国地方においても発生すると考えてもよいであろう.

 今回は主としてこの深さ領域の地震を対象とした.ただし,九州の下に沈み込む地震については

現在充分には研究が進んでいないので,また紀伊半島の下に観測される北傾斜のマントル地震は起

震力の方向が複雑であって一定の解釈が得られないのでここでは扱わなかった.

(A) ︹ E > 1 ︺   M ^ d S D

 Apr.01,

1985∼

川Oω

HTL よ 31, 1094 (M!l.Z) 図2 地図(B)の枠内で発生した地震の深さ分布(A).MTLは中央構造線を表している

(4)

36 高知大学学術研究報告 [1999年])自然科学

P波の初動分布から求めた最大主応力方向め分布

 地殻に発生する地震については多くの研究,例えば中国地方では大倉(1988),四国では岡野・

木村(1996),近畿北部にはK八TAOet

al八1997),そし七紀伊半島には中村(1996)の研究がある.

そしてそれらの地震のP軸の多くが東西方向であるレごとぱ周知のに=ぐとでこある.し

 一方マントル地震については,

Ok八回収

「バ1980)と許斐ほかレ(1992)によって,四国地域で

はほぼ南北方向が卓越するP軸が得られでいる.また近畿地方北部め琵琶湖北東部のマントル地震

については伊藤ほか(1978)の観測結果によると,これ:ちの地震はP軸が北西一南東ないし南北に

なり,やはり地殻地震とはメカニズムが全く違っているというレ報告が出されている.

HURUK人w人

(1981)もまたこの地域の地震を取り上げて,沈み込むプイリゼン海プレートのリーディング・エッ

ジに平行なT軸をもつ正断層のメカニズムを与えでいる√いずれにしてノもこめ地域においては,マ

ントルと地殻は異なった応力場にあることは明らかである.\

 今回あらためて求めた,中央構造線以北のマントル地震のpレ波初動の押し引き分布とそれらの震

STR1KE=……43・.・D・IP=90ニSTR1KE=193しD1P=85STR1KE= 53 STRIKE°13ト吋帥0ニSTRIKE=105 DlP=6g STRIKE=-35

STRIKE=157 DIP=45 STmKE=2t】8 D1P=83

STRIKE= 53 DIP=76 SIR!KE=-60 D1P=74

STI(IKE=115 STRIKE=197  ̄`'/叉 lxJ,バ ユ DIP=60 DIP=76 図3 中央構造線より北側に起こったマントル地震でのメカニ   押しは黒丸で示す.横棒のついた丸印は初動か明瞭でな   近の地震とを実線で分けて示している.  1………j:  ヶjj…… トSTRIKE= 40ダD1P=8O STR1KE=133 DIP=73 STRIKE=306 DIP=69 STRIKE= 34 DIP=85 DIP=85 STRIKE= 40 DIP=75 STRIKE=131 D1P=86 ① STR1KE=211 DIP=85 STRIKE=122 DIP=79 ①

SIRIKE= 65 DIP=89 STRIKE=-35 DIP=80

しSTRIKひ155 DIP=68 ■■ I 。・・・・ ● STRIKE= 56 DIP=84 ① P波初動が引きの場合は白丸で, ある.\中国地方南部と琵琶湖付

(5)

37 西南日本の起震応力(木村・岡野) 覧 凶 f r E T = 3 ) l i a i S a   = 3 X i a i s   ︼ 貿 ← い 一 一 4 C コ C コ a 冨 自 自 E L S   = 3 X I ! I 1 S i s i = a x i ≫ i s -.Q4ぶ心石喩4y∼夕う一y々如 E S E ; l J r = d i a     6 1   = 3 X I H 1 S E r5 菱 1 ・ ・ 4 c コ 弓 l 卜 4V i M μ   t f r = d i a 一 s i = a i a ㎜ 皿 l E n   = m u s o o z = a x i H i s i f l   = a ) i i a i s i s i = a ) i i a i s E 愛 凶 E C − 9 Z . I = a ) ! I H l S f r 8 z = a x i a i s o o i = i i ( i a i s g 6 T = a x i a i s 0 * I = 3 J i I H X S O W = 3 X I H 1 S ・≪'7Y-=t︵.Y^a>m'^'^ヱ八卜々Qり親2犀羽ごH諧刈弊裾廿 E E E E E 8 9   = 3 X i a i S 6 9 Z = a ) ( I ! U S O E I = a H I H I S 8 £   = a ] I I H X S 9 9   = 3 ! i i m S e g z ^ a M i H i s 2 C コ 吠 ) f - 4 白 t ; ; 茜 i ○ 劈 : 1 ! ; 1 ! ] C い ー H `i`応 詔&岩 寸 図 § 9 1 3 = a x i a i s 8 Z T = 3 X I 1 1 1 S - − M = a i a O 9 T = 3 X I H 1 S

(6)

38

(A)

        す ぺ ・ ゛ ’ r t . ’ ‘ づ 。 / (B)   N3 0°W 0   5 0 Hidaa lOOKM 高知大学学術研究報告 第48巻 (1999年) -

自然科学

TOKAI

JMA(1985-1993)・並皿公皿匯)〉=2√5

サBflf ト BIW AB S 3 0°E 図5 東海地方から琵琶湖北側の地域におけるマントル地震(H>30km)の震央分布(A)と深さ分布(B).   データ期同等は図1と同じ.      ◇ \ \ し… …… C

央分布を図3と図4に分けて示すが,震央位置は両図に併せて示ぎれている.それらのほとんどが

Mが4.0に満たないために初動か不明瞭のものが含まれていると思われるので,メカニズム解は必

ずしも確かなものが得られているわけではない.それ故一応節線め引けるものについては引いてあ

るが,かなり任意性のあるものが含まれている.しかしこ=れらのマントル地震のP軸は全体として

南北方向が卓越している.

 ここで対象とした範囲は東側を137°Eまでとしているが,.マント歩地震の

ていて,それらの地震のP軸は南北方向のものが卓越していることが,野口

て明らかにされでいる.マントル地震は東海地方においでもまた北ぺ傾斜す

分布は東海地方に続い

(1996)の研究によっ

る深さ分布を示してい

て(図5

(A),

(B)),琵琶湖東部の地震はこの分布の延長上に含まれるよ=うに見える.しかし図5

(B)の断面図を見ると,琵琶湖東部では水平な分布をしてい]るごとから,\マントル地震は中国地方

と同様に水平なモホ面直下に発生していると考えるのが妥当である.……結局ごの地域においてもまた

マントル地震の分布は南海トJラフから北に傾斜し中央構造線を越えるが,深さ分布が平行になると

共に活動が低下していることは四国から中国地域と伺様であるLレ: ::j=

 このように西南日本内帯ではP軸の方向から,)地殻=には東西眠そしてマントル最上部には南北

方向の最大主応力がそれぞれ働いていると考える

た地域だけにしか地震が発生していないので,こ

はいえないけれども,四国地域においてはそのよ

ただしマントル最上部には限られ 当てはめることは必ずしも適当と あるごと[Okano et al.(1980)]

(7)

西南日本の起震応力(木村・岡野) 39

は疑問がないので,中央構造線より北側の内帯においてもまた同じ応力状態にあると考えて考察を

進めていくことにする.

 以上のように,地殻には東西の,その直下のマントル最上部には南北の,互いに直角方向の最大

主応力が働いていることについての解釈を考えてみる.この点については,地殻地震とマントル地

震を別個に対象として扱った議論は数多くあるが,両者を同時に扱ってテクトニクスを議論した論

文は殆ど見当らない.

 先ず地殻地震を起こす応力については,太平洋プレートの沈み込みによる西方への圧縮力による

とする考え[例えば藤田(1985)]が主流となっているが,アムールプレートの東進によるとする

主張[例えば石川・于(1984)]も出されている.最近,瀬野(1995)は1995年兵庫県南部地震のP

軸の方向が東西であることについて,この地震を起こした応力の原因をやはり太平洋プレートに求

めているが,フィリピン海プレートによる南北方向の圧縮の存在は都合が悪いとしているので,太

平洋プレートの西方への圧縮によるという考えを受け入れるにはかなり困難がある.

 さて木村・岡野(1995)によると,四国地方ではマントルに発生する地震は地殻の地震に比べて

エネルギーが二桁ほど大きいことから,起震力の主役はマントルに加わる応力であるとし,地殻の

地震はその応力の影響を受けて誘発されるという考えを出している.この場合地殻地震そのものを

起こす応力の原因は上載岩圧にあると推測している.そうすると両者のP軸が互いに垂直であるこ

の意味も理解できるとしている.

 しかしこの理屈は西南日本内帯地域については当てはまらない.すなわち内帯ではマントル地震

が非常に少ないし,またそれらの地震はMが小さい.それに比べて地殻内の地震にはMが7を超す

ような大きなものまであって,四国とは逆になっている.これに対して納得のいく説明を与えるこ

とは大変むずかしいが,手がかりを求めて両地域の違いを見てみると,地殻とマントルの接触面で

あるモホ面の傾斜角の違いがその一つであることに気づく.すなわち,四国ではモホ面が傾斜して

いるので大陸と海洋の衝突によって作用し合う応力が両者の接触面に歪の蓄積を生じさせることが

期待できる.一方内帯では接触面(モホ面)が水平に近いので歪の蓄積は極めて小さいと考えれば,

マントルに地震の発生が少ないことが一応理解できる.このことについては東海地方についても同

様で,傾斜する深さ分布の部分では活動が高く,水平の部分では活動が低い(図5(B)).ただし

大陸と海洋の接触面には圧縮作用によって脆性を持つ層が生じることが必要と考えなければならな

い.そのメカニズムについては不明である.この場合最大の疑問は起震応力の方向が東西である地

殻地震が発生するために,最大主応力がいかにして東西方向を取るかを知らねばならないことであ

る.

 ここで再び太平洋プレートの西方への圧縮とアムールプレートの東進による東方への圧縮を考え

てみよう.前述のように原動力を日本海溝から深く沈み込む太平洋プレートの運動に帰する考えが

一般的であるが,もしそれが事実であるならば,プレートに最も近い東北地方を強く圧縮して東西

方向に大きな歪を与えるはずにもかかわらず,観測される歪は西南日本に比べて大きいことはない.

多田(1996)はこの点について,

1993-1883年の期間における測地測量の結果から,東北地方特に

その東部においては太平洋プレートによる圧縮から期待される東西圧縮歪は見られないとして,太

平洋プレートの押しがそれ程遠くへは伝わっていないと述べている.たとえ圧縮するにしてもその

力がなぜ薄い地殻だけに加わって西南日本を東西方向に圧縮し,マントルには東西方向の力が働か

ないのかという説明が与えられない限り説得力がない.またアムールプレートの東進についても原

(8)

40 高知大学学術研究報告 第48巻 (1999年) - 自然科学 -動力が明瞭でない.もしその原動力を直下のマント歩に求めるならば,\この場合もまたその力はな ぜマントルを東西方向に圧縮しないのかという疑問が残るレ  ノパ‥  ‥‥‥  次に西南日本の内帯と外帯に見られる違いとして地殻に起きる地震の規模に大きな差がみられる. 中央構造線より北側にはMが7を超えるような大きな地震が最近でもしばしば発生しているのに, 南側では7を超える地震はほとんど起きていない.これらの事実から何:か手掛りを得られないもの かと考えてみた.       \  \    ト  ここで一般的な考えに従って地殻内部には上載岩圧にデグト土ソクな=力が加わった応力が働くも のと考える.上載岩による応力については鉛直方向の応力が水平方向の応力より大きい場合と,小 さい場合が考えられる.地震のメカニズムは前者で正断層,:……後者=サさ逆断層となる.ところや西日本 では東西方向のP軸をもつ横ずれ断層の地震,すなわち鉛直方向jに中=間主応力を持つメカニズムの ものが多い.それ故上述の上載岩による応力についでの二づの場合に加わるテクトニックな力を考 えればよいわけである.      ……=j……… ………:  \  中間主応力が鉛直方向にあるためには,まず第一一の場合√東西方向にテクトニックな力が加わっ て,東西方向が最大主応力になればよいわけである.:……これが太平洋プレートまたはアムールプレー トによる圧縮であるとする考えである.しかしこの考えが妥当でないことは先に述べた.そこで第 二の場合を考えてみる.この場合は南北方向の応力が減少しで鉛直応力より小さくなれば,東西方 向が最天主応力そして鉛直方向が中間主応力となる慨で横ずれ○レメカニズムの条件を満たす.この 解釈は木村・岡野(1995)が四国における地殻地震に与えたもめである.今回取り上げた内帯の地 震についてもこの解釈をあてはめてみる.まず大陸基盤と=海洋基盤との間に南北方向の力が働くと する.この力がマントル地震の起震力となる.そし七こめ応力は,内帯では二つの基盤の接触面で あるモホ面が水平なので地殻に及ぼす作用が小さいが,外帯にお\いて但モホ面が傾斜しているので モホ面を介して働く南北方向の応力の地殻に及ぼす作用が大きいjその作用は内帯にも及ぶはずで あるが,ゆっくりと働くのでその応力は申央構造線にょっケで吸収されでその影響が内帯では小さく なると考える.ただ東海・南海両地震の発生の場合のよう〉な急激な応力変化があると,内帯の地殻 への作用が外帯の地殻と同様に働いて,内帯の地殻におい=てぱ南北方向の応力の減少が生じる.そ の後ゆっくりと加わる南北方向のテクトニックな力は√中央構造線によ/つて緩和されて内帯には伝 わることが少ないので,内帯の地殻に蓄積された東西方向の応力は外帯よりも大きくなる.したがっ て内帯の地殻に発生する地震は総エネルギーも規模心大きゾいと考くえる.……:ところが中央構造線がこの ような性質を持つものかどうかが問題である.この点にづいては, 1995年兵庫県南部地震の発生に よって四国,和歌山地域の地殻地震の活動が低下したことト[木村……・岡野(1996),木村(1998)]が みられるが,中央構造線の北側の兵庫県南部地震の発生によって急激に低下した東西方向の応力が 中央構造線を介して構造線の南側地域の東西方向の応力を]低ずさせたと考えれば理解できるのでは なかろうか.      ノ  \ ここで筆者らの議論についてより理解が得られる;ように↓Po比ITz and S人CKS (1997)の提出し たスペキュレーションに触れておきたい.彼等は南海ノトプレツ沿いに起/きた,北西一南東方向のP軸 を持つM=8クラスの巨大地震(南海・東海地震卜によって北西一南東方向方向の応力が減少し, その応力変化が内陸に拡散するために,クーロン破壊応力]に変化を生じて内陸地域に北西一南東方 向のすべり面をもった,すなわち東西方向のP軸をもっか地殻地震が発生すると考える. 1944年東 南海・1946年南海地震の発生によって1995年兵庫県南部地震が発生したとい]う考えを出している. これに対して筆者らは,四国・東海地域のマントルに働く……力はマ=ントル地震のP軸の方向からして 北西一南東方向ではなく南北方向でなければならなソいと考えているので,応力の減少は南北方向で あると主張する.したがってこの場合,内陸の地殻地震を起こす原因となるのはクーロン応力の変

(9)

西南日本の起震応力(木村・岡野) 41

化ではなくて,南北方向の最小主応力の減少であると考える.また応力の拡散の時間的な遅れにつ

いては,彼らが弾性と粘弾性をもつ水平二層に加わる応力の拡散を考えるのに対して,筆者らは,

南海・東海地震の発生による急激な応力の減少は内陸地域に伝えるが,常時加わるゆっくりした応

力は内陸に伝えないという中央構造線の働きにその原因を求めている点が異なっている.そしてこ

の南北方向の応力の減少は内陸全域に拡散するので,内陸全域に広がって地殻内の地震を誘発する.

この場合内陸の何処に地震が誘発されるかは応力の分布状態によって決まるのではなかろうか.

 このように,地殻地震を起こす原動力を上載岩圧に求めるという筆者等の考えはかなり唐突では

あるけれども,応力が加わるという点では実際的である.ただこの封圧的な圧縮力がどのようにし

て方向性を待った起震力を地下の部分に生じるのかということについては説明ができていない.し

かし地震が発生する深さの圧力場では,地震発生による圧力降下は通常30∼60bar程度とい

うNuR

(1974)の報告がある.またSholtz

and Kranz

(1974)によると,長い時間テクトニック

な作用を受けていると,低い差応力で地震が起きる可能性があると述べている.さらに小出

(1976)は,R八lヽJ八LLI

and CH人NDLER(1975)の測定データの集積から,世界中における応力場と

造構運動との関係を議論している.この場合の例のように,地殻地震のメカニズムはプレートのよ

うなグローバルな運動によって支配されるものとは考えられない.

 さてそこで,西南日本における地殻地震はP軸の方向が東西の横ずれが多いということから,東

西方向のP軸に着目するならば起震原動力として太平洋プレートを考えることになるが,T軸の方

向に注目するならばマントルに働く南北方向の応力が考えに入ってくる.この場合は圧縮ではなく

て引っ張りなので島弧と海洋との圧縮そのものを直接の原動力として考えることはできない.筆者

等はここで再び前述した南海・東海両地震の発生によって生じる,応力の急激な低下を考える.こ

の低下=は地殻に作用して地殻に働く南北方向の応力を低下させ,東西方向の相対応力を増加させる.

この考えは中央構造線にスプリングとダッシュポットを直列につないだモデルを仮定すれば理解で

きる.ただし中央構造線がそのような性質を持つものなのかどうかは問題である.P軸の方向が何

処でも東西というわけでなくて,地域的な違いがあり[例えば塚原・小林[1991)],またメカニズ

ムも横ずればかりでなく縦ずれがあって[MiZOUE

et al.(1983),伊藤・渡辺(1977)],最大と最

小の圧縮方向に局地的に微妙な違いがあることをみると必ずしも納得できないことではない.

 さらに,地殻地震が地表より2∼3km以浅では通常観測されないことも上述の岩圧による圧力場

の大きさ,差応力,空隙,含水量そして摩擦等を考慮していけば理解できるのではないだろうか.

地殻地震とマントル地震(南海地震)の発生の予測

 以上の議論をふまえて,マントル地震と地殻地震について発生の予測を考えてみる.

 南海地震の震源域(断層面)は厚さが5km程度の薄い層であって,その上面は延性を持つ大陸下

部地殻とその下面はマントルのアセノスフェアと接する.したがってその上下両領域には地震の発

生がなく,また上下両接面には大きな地震を起こすような歪の蓄積は期待できないので,地震断層

のすべり面は層内の脆性領域以外には考えられない.したがって断層面すなわち震源位置の特定は

できているわけである.次に地震の大きさについては,過去にたびたび起きた南海地震のMがいず

れも8前後と史料から推定されているので,次の南海地震もまたMは8前後と予測してよかろう.

このように考えると次に発生が予想される南海地震は位置と大きさが既に予測されているといって

よい.

 そこであとは発生時を予測すればよいのであるが,これもまた100∼150年という繰り返しの時間

が史料から知られているので,その繰り返しの時間を考慮すればよい.ところで破壊が起きるため

(10)

42 S 4 3 2 5 噂 2 i 高知大学学術研究報告 第48巻(1999年)ふ自然科学

]Hyoeo・ken Nanbu Earthq.

\………:: ダ ↓

  図6 四国付近における地震発生回数の年変化.Mが2j以上め:地震=の年当た=りの積算回数である.上     図は地殻地震,下図はマントル地震に対応し,矢印は1995年兵庫県南部地震の発生年を示す. には破壊する部分に歪の蓄積が必要なので,この歪の蓄積を測定できればよい訳である.といって 地下深くの地震発生場所における測定は不可能であ=る/そごでこ/め歪の蓄積を反映する変動を地表 で測定することを考えなければならない.その変動量と犬して筆者等寸木村・岡野(1995)]は,四 国の中央構造線以南の地域に発生する地殻地震の活動の低下を取り上げた[詳細にっいては前記の 論文参照].図6に示すように,この活動の低下は予想通りに微小地震の観測開始以来続いている が,どの程度の低下が南海地震発生の危険を示すかはけ地震が確率法則に従う破壊現象なので決定 論的に掴むことは困難である.=確率を高めていく工夫が必要=である/ 尚… …  一方,規模の大きな地殻地震は先ず震源を予測することが1むずかしい√最近活断層の調査が進ん で一つの断層についての地震発生に対する繰り返し時間が見積もられ,その多くは1000年程度とい われている.しかし地殻地震の震源断層はマントル地震のように孤立しでいるわけではなく,上部 地殻はどこでも脆性を持っていて地震発生の可能性:を否定やノきなyいめで/各断層に定常的に歪が蓄 積していくとは考えられないし,また破壊の大きさノも予側か困難=であるレ上したがって地震の発生場 所や大きさを予想することは現在極めて困難である.ま七で繰カソ返し時間を単純な積算によって求 めることには同意できない.地殻地震はマントル地震に比ぺて予測はより困難であろう.       おわりニに\ \二‥ ‥‥

 以上述べた考察は定性的で明快でない部分が多いこと]は承知しているのであるが,西南日本には,

地殻には東西方向の,マントルには南北方向の応力が働いているミとには疑問がないので,現在定

説となっている,地殻の地震は太平洋プレートやアノムールプレごトに,そしてマントルの地震(東

(11)

西南日本の起震応力(木村・岡野) 43

海・南海地震を含む)はフィリピン海プレートに原動力を求めるという,実際の現象に合わない考

えには納得できないので,試みに本稿を提出したのである.

謝辞

 この研究を行うにあたって気象庁及び隣接観測所のデータを使わせて頂きました.これらの観測

所の方々に厚く御礼を申し上げます.気象庁のデータは綴織・吉井(1986)作成のソフド‘micro

SEIS”により作図しました.綴織助教授と吉井教授に心から感謝申し上げます.なお年を追う毎

に観測データが増加し,技術的に高度化していく当観測所の観測およびデータ整理に対して,研究

を進める上で有効に処理をしていただいた当観測所の川谷和夫技官の努力は極めて大きいものであ

る.

藤田和夫:変動する日本列島, 200-206,岩波書店(岩波新書),東京(1985).

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平成11(1999)年10月5日受理 平成11(1999)年12月27日発行

参照

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