■■巻頭言■■ 我が国の原子力発電は、1963 年(昭和 38 年)に初めて発電に成功して以来、40 年間にわ たってエネルギーを安定的に供給してきました。この間、我が国のエネルギー利用におけ る原子力発電の割合は着実に高まっており、2001 年度(平成 13 年度)には、総発電量の 35% を占めるに至っています。この結果、1973 年(昭和 48 年)に発生した第一次石油危機から 今日までに、国内総生産は 2.3 倍、乗用車の保有台数は6倍に増加しているにもかかわら ず、原油輸入量は驚くなかれ13%も減少しています。これは、LNG・石炭火力の拡大や省 エネルギー技術の開発の成果でもありますが、原子力発電の果たした役割が最も大きいと いえましょう。 また、原子力発電は、二酸化炭素等の温室効果ガスの発生量が石油火力発電の約30 分の 1 と極めて少なく、地球温暖化防止の観点からも、環境負荷の少ないエネルギー源といえ ます。 このような状況の下、政府は、安全確保を大前提に原子力政策を推進してまいりました。 しかしながら、昨今の原子力を巡る状況には、大変厳しいものがあります。東京電力の 不正問題に端を発し、今夏には、東京電力の全17 基の原子力発電所を停止させざるを得な い状況となりました。結果として記録的な冷夏のせいもあり、大停電といった不測の事態 は避けられましたが、エネルギーの安定供給に深刻な陰を投げかけるものでした。また、 停止した原子力発電を火力発電により代替したことにより、温室効果ガスの排出量は1年 間で4000 万トン以上、3.4%増加しましたが、これは、京都議定書で我が国に課せられて いる「5年間で6%削減」という目標と比較しても膨大なもので、地球環境への影響が懸 念されます。 以上は、原子力にまつわる事実関係のほんの一端でありますが、原子力には考慮すべき さまざまな側面があります。これらについて国民の皆様ひとり一人が自分の問題として捉 え、議論を深めていただくことが重要です。残念ながら、これまでは、「これさえあれば、 原子力の全体像が解る。議論の材料となる。」という資料が少なく、原子力について批判的 な方々と肯定的な方々が同じ土俵で議論する環境が十分に整備されていなかったのではな いかと懸念しておりました。 このため、原子力について理解と議論を深めていただくための手がかりとして、また、 あらゆる国民の皆様の疑問に答える材料として、各界の有識者の先生方に、「原子力のすべ て」を取りまとめていただきました。 この「原子力のすべて」をきっかけとして、読者の皆様から疑問・意見のメールをいた だきそれに答えるという「読者と執筆者との対話」を通じて、原子力に対する国民の皆様 の理解がさらに深まることを期待しております。 平成15 年 9 月 科学技術政策担当大臣 IAEA 総会にて
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