優秀論文賞受賞講演
小児再発・難治 T細胞性リンパ性白血病・リンパ芽球性リンパ腫のネララビン耐性
群馬大学大学院医学系研究科小児科学 金 澤 崇 小児 T 細胞性リンパ性白血病 (T-ALL) ・T リンパ芽 球性リンパ腫 (T-LBL) は治療抵抗性, 再発率が高く, 予 後不良な疾患である. 近年, 再発難治 T-ALL/LBL に対 して新規ヌクレオシドアナログ製剤であるネララビン (NEL) が上市された.我々は小児再発難治 T-ALL/LBL の有効な治療開発を目的として, 本研究において, 小児 再発難治 T-ALL/LBL の臨床検体での NEL 耐性を in vitro 細胞毒性試験にて検討し, さらに NEL 耐性細胞株 モデルを作成し, 耐性機構について基礎的検討を行った 臨床検体 8例を用いて MTT 法による細胞毒性試験を 行ったところ, 半数が NEL 耐性をもっていると判定し た.引 き 続 き, T-ALL 細 胞 株 Jurkatよ り NEL 耐 性 株 (Jurkat+C) を樹立し, 基礎的検討を行った. ヌクレオシ
ド代謝経路の変化が耐性獲得の一因と え, 類似薬であ る AraC の細胞内取り込み機構において重要な役割を果 た し て い る Equibarative nucleoside transporter-1 (ENT-1) が NEL 代謝, 耐性獲得においても関与してい ると え, 検討を行った. 定量的 RT-PCR 法による検討 では, ENT-1 mRNA 発現量は Jurkat+C と野生株の間 で差は認められず,ENT-1特異的阻害剤を用いた機能解 析においても Jurkat+C においても ENT-1は機能して いることが示された事により,Jurkat+C の NEL 耐性へ の ENT-1の寄与は重要でないと えられた. また NEL の細胞毒性は ENT-1阻害剤によって完全に抑制はされ ないことから, NEL 代謝経路において ENT-1は細胞内 取り込みの一部には関与するが, 別の細胞内取り込み機 構が存在することが示唆された. 363