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JAIST Repository: 自然科学系を専門とする女性大学教員のキャリアパス分析

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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 自然科学系を専門とする女性大学教員のキャリアパス 分析 Author(s) 加藤, 真紀; 星越, 明日香 Citation 年次学術大会講演要旨集, 25: 1059-1062 Issue Date 2010-10-09

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/9471

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

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2I21

自然科学系を専門とする女性大学教員のキャリアパス分析

加藤 真紀(文部科学省 科学技術政策研究所), ○星越明日香(文部科学省 科学技術政策研究所) 1. 研究の背景と目的 「科学技術創造立国」を目指す我が国にとり,「理科離れ」,「少子高齢化」といった課題が浮上する 中で,次代の科学技術を担う優れた人材の確保は急務である。第 3 期科学技術基本計画(平成 18 年 3 月閣議決定)においても,次代の科学技術を担う人材の裾野の拡大を謳っている。 女性は,科学技術人材としてその活躍や増加を期待されている一方で,数は容易には増えない。また, 大学等研究機関において,所属機関や専攻分野に偏りがあること[1],自然科学系分野における高職位の 女性教員の割合が圧倒的に低いことが指摘されている[2]。 このような状況において,欧米では,自然科学系分野の女性研究者のさらなる増加や活躍を目的に, 彼女らのキャリア形成に関する分析が盛んに行われている。例えば,米国で 1980 年代末に提案された 「パイプラインモデル」では,自然科学分野により多くの女性学生を送り込むことで,有能な女性研究 者の割合の向上を実現しようとした。パイプラインモデルaでは,自然科学系分野における女性の脱落を 防ぐことを目的に様々な支援策が生み出された[1]。また,欧州においては,欧州委員会によって 1999 年に設置されたヘルシンキグループが,女性研究者に関する種々の統計調査bを行い,自然科学分野にお ける女性研究者のキャリア形成の動向把握に努めている[4] 。 我が国においても,「女性研究者支援モデル育成事業」や「女性研究者支援システム改革加速事業」, 「女子中高生の理系進路選択支援事業」といった支援策が取り組まれており,大学等研究機関単位での 女性学生や教員の研究環境やキャリア形成に関する具体的な支援活動の実施とともに,これらに関連す る調査研究の成果が散見される。しかしながら,国内の女性研究者全体を対象とした基本的なデータの 整理はされておらず,キャリア形成の実態把握や,女性研究者支援策の評価は困難な状況である。 そこで本研究は自然科学系分野の学生ならびに大学教員を対象とし,大学の学位課程別の女性学生割 合,大学教員の職階別女性教員割合の分析を通じて,特に理学,工学,農学,医(保健)学分野におけ る女性の段階別,性別別,国籍別の構成の推移を把握することを試みる。その際,コホートや留学生, 外国人教員区分に留意し,どの段階において各分野の女性学生ならびに女性教員の割合が大きく低下す るのかを明らかにすることで,自然科学系分野における女性人口の増加と,女性教員の高職位への進出 について考察する。 2. データの出典 本研究では,性別に加え,コホートや留学生,外国人教員についても,可能な限り,それらの構成を 把握することを目指したc。このため,大学教員について現在入手可能で最新の情報である文部科学省学 校教員統計調査(平成19 年度)dの結果を使用し,大学教員の現状を把握した。また,博士課程修了者 から大学教員への接続の推定のためe,学生については文部科学省学校基本調査(平成12 年度,平成 14 年度)の結果ならびに「我が国の博士課程修了者の進路動向調査データ」fを使用した。文部科学省学校 基本調査では,それぞれ大学学部卒業時点,大学院修士課程修了時点,進路データからは大学院博士課 程修了時(博士号取得者のみ)の分野別,性別別,国籍別の情報を得た。なお,平成 12 年度の大学学 部卒業時点ならびに平成 14 年度の大学院修士課程修了時の外国人学生の割合は,当該年度の大学学部 ならびに大学院の分野別性別別国籍別在籍者の割合を算出して推定した。 3. 分析結果 (1)データの概要 平成12 年度の大学学部卒業者 545,512 人のうち,自然科学系分野の卒業者は 165,292 人であり,その うち女性学生は38,269 人,男性学生は 127,023 人であった。外国人学生は,6,376 人と推定され,1,085

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人が自然科学系分野,そのうち女性学生は273 人,男性学生は 812 人と推定された。平成 14 年度の大 学院修士課程修了者67,412 人のうち,自然科学系分野の修了者は 41,424 人であり,そのうち女性学生 は6,960 人,男性学生は 34,464 人であった。外国人学生は,9,869 人と推定され,4,867 人gが自然科学系 分野,そのうち女性学生は1,450 人,男性学生は 3,416 人と推定された。H17 年度の博士課程修了者 15,582 人(性別・国籍・専攻分野不明者229 人を含む)のうち,自然科学系分野の修了者は 11,704 人であり, そのうち女性学生は2,498 人,男性学生は 9,124 人であった。自然科学系分野の外国人学生は 2,071 人で あり,そのうち女性学生は640 人,男性学生は 1,431 人であった。 H18 年度の新卒採用者 1,659 人のうち,自然科学系分野の採用者数は 1,238 人であり,そのうち女性 は347 人,男性は 891 人であった。自然科学系分野の外国人採用者数は 28 人であり,そのうち女性は 9 人,男性は19 人であった。 (2)全分野と自然科学系分野の比較 図 1 a),b)に全分野(人社系含む)と自然科学系分野合計の学生の国籍別・性別別割合を示した。 また,新卒採用以後の本務教員の構成についても職階別に国籍別・性別別割合に示した。 図1 a),b)いずれにおいても,全ての段階で男性の割合が半分を超える。図 1 a)の全分野の学部 卒業者,修士課程修了者,博士課程修了者,新卒採用者,教員合計(助教~教授)の女性割合はそれぞ れ38.4%,27.1%,26.3%,31.9%,17.1%である。自然科学系分野に限定すると,それぞれ 23.2%,16.8%, 21.3%,28.0%,14.1%である。全分野,自然科学系分野いずれにおいても男性の割合は高いものの,① 修士課程あるいは博士課程進学時の外国人学生の増加,②新卒採用時の女性割合の増加が認められた。 また,全分野と自然科学系分野の女性割合では後者が低いが,減少の幅は相対的に小さい。 全分野,自然科学系分野いずれにおいても外国人学生は学部卒業時よりも修士課程・博士課程修了時 の構成割合が高いことが認められる。全分野の外国人学生の学部卒業者に占める割合は1.2%,自然科学 系分野に限定すると0.7%だが,修士課程修了時にはそれぞれ 14.6%,11.7%,博士課程修了時にはそれ ぞれ18.3%,17.7%である。新卒採用者に占める外国人の割合それぞれ 3.6%,2.3%で,博士課程修了者 に占める割合よりも低下するものの,いずれも教員に占める外国人の割合よりも高い。 (3)自然科学系分野間の比較 図 2 a)~d)に,自然科学系分野ごとの学生の国籍別・性別別割合を示した。また,新卒採用以後 の本務教員の構成についても職階別に国籍別・性別別割合に示した。 自然科学系分野の女性学生の割合は分野によりばらつきがあるが,工学の博士修了者を除き,いずれ の分野でも,学位課程が高度化するにつれて女性学生の割合は低下する。一方,外国人学生の割合は, 医(保健)学を除き,男女とも学位課程が高度化するとともに増える。新卒採用については,農,医(保 健)学で女性の博士課程修了者割合よりも採用割合が高くなっているが,いずれの分野においても外国 図 1 学位課程別・職階別の性別別・国籍別構成 a) 全分野の構成(人社系含む) b) 自然科学系分野 (理学,工学,農学,医学(保健含む)) 206,656 14,157 3,056 505 7,139 4,915 6,859 7,276 3,006 4,101 1,049 25 169 492 407 281 332,480 43,386 9,442 1,094 25,012 13,789 31,350 59,006 3,370 5,768 1,806 35 456 1,025 1,310 1,359 0 0 229 0 0 0 0 0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 学部卒業 N=545512 修士修了 N=67412 博士修了 N=15582 新卒採用 N=1659 助教 N=32776 講師 N=20221 准教授 N=39926 教授 N=67922 37,996 5,510 1,858 338 6,575 2,485 2,216 2,234 273 1,450 640 9 123 25 50 24 126,211 31,048 7,693 872 23,952 10,247 19,112 29,242 812 3,416 1,431 19 393 134 374 226 0 0 82 0 0 0 0 0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 学部卒業 N=165292 修士修了 N=41424 博士修了 N=11704 新卒採用 N=1238 助教(参考) N=31043 講師 N=12891 准教授 N=21752 教授 N=31726 日本人・女 外国人・女 日本人・男 外国人・男 不明

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人学生の割合は低下する。 理学では学部卒業,修士課程修了,博士課程修了の女性学生の割合はそれぞれ27.6%,22.5%,20.9% であるが,新卒採用では 8.9%に低下する。工学においては,それぞれ,10.6%,9.0%,11.1%で,自然 科学系分野の中で唯一女性学生の割合が増える。しかし,工学においては博士課程修了者の日本人女性 学生と外国人女性学生の割合がそれぞれ5.5%,5.6%であり,日本人学生に限定して男女割合をみると, 女性学生の割合は学部卒業時点の 10.6%から,修士課程修了時で 7.7%,博士課程修了時の 7.6%に減少 している。農学においては,それぞれ41.4%,33.8%,25.2%と,医(保健)学に次いで女性学生の割合 が高い。また,新卒採用時には博士課程修了者よりも女性の占める割合が高い。医(保健)学では,そ れぞれ57.8%,51.6%,29.2%であり,いずれの学位課程においても自然科学系分野でもっとも女性学生 の割合が高い。 また,医(保健)学は,他の自然科学系分野と異なり,修士課程では女性学生が男性学生よりも多い。 博士課程修了者についても,修士課程修了者よりも多いが,博士課程修了者数では学生の男女比は逆転 し,他の自然科学系分野と同様,男性学生が多くなる。 4. 結論と考察 本研究では,学校教員統計調査,学校基本調査,「我が国の博士課程修了者の進路動向調査データ」 を使用して大学の学位課程別女性学生割合ならびに大学教員の職階別女性教員割合の分析を行うこと で,自然科学系分野における女性人口の増加と,女性教員の高職位への進出について考察することを試 みた。分析の結果,自然科学系分野では,学部卒業時から博士課程修了にかけて,女性学生の割合ほぼ 全ての分野において低下していくことが把握された。また,博士課程修了後,教員の割合についても, 図 2 分野別・学位課程別・職階別の性別別・国籍別構成 a) 理学 b) 工学 c) 農学 d) 医(保健)学 日本人・女 外国人・女 日本人・男 外国人・男 不明 日本人・女 外国人・女 日本人・男 外国人・男 不明 5,268 1,157 318 7 290 171 260 245 18 131 79 0 10 1 5 4 13,824 4,180 1,334 69 2,250 908 3,819 6,110 47 254 140 3 32 29 67 57 0 0 30 0 0 0 0 0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 学部卒業 N=19157 修士修了 N=5722 博士修了 N=1901 新卒採用 N=79 助教 N=2582 講師 N=1109 准教授 N=4151 教授 N=6416 10,887 1,978 216 9 249 137 263 163 132 595 218 3 35 6 25 6 91,876 23,796 2,640 176 3,934 1,840 6,803 11,337 618 2,129 818 9 157 37 239 130 0 0 28 0 0 0 0 0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 学部卒業 N=103513 修士修了 N=28498 博士修了 N=3920 新卒採用 N=197 助教 N=4375 講師 N=2020 准教授 N=7330 教授 N=11636 6,715 890 192 10 123 69 125 74 33 284 114 1 5 2 4 2 9,491 1,788 672 13 830 433 1,881 2,685 46 509 235 0 14 12 24 14 0 0 2 0 0 0 0 0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 学部卒業 N=16285 修士修了 N=3471 博士修了 N=1215 新卒採用 N=24 助教 N=972 講師 N=516 准教授 N=2034 教授 N=2775 15,126 1,486 1,132 312 5,913 2,108 1,568 1,752 90 439 229 5 73 16 16 12 11,019 1,284 3,047 614 16,938 7,066 6,609 9,110 102 524 238 7 190 56 44 25 0 0 22 0 0 0 0 0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 学部卒業 N=26337 修士修了 N=3733 博士修了 N=4668 新卒採用 N=938 助教 N=23114 講師 N=9246 准教授 N=8237 教授 N=10899

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職階が高度化するにつれて女性の割合は低下していく傾向が見られた。以上から,自然科学分野におけ る女性割合は,ある特定の時点で大きく変動するのではなく,学位課程ならびに職階の高度化と連動し, 漸減していくことが示唆された。また,増減の傾向は分野間で差があることが明らかになった。今後は 各分野のの特徴に注目しつつ,他国における女性学生,女性教員のキャリア形成の動向についても分析 を追加し,女性研究者の育成に関わる国際比較を行う予定である。 5. 参考文献 [1] 内閣府男女共同参画局,女性研究者,女子学生の現状,第 2 部第 8 章,男女共同参画白書平成 22 年度版,99-104(2010)。 (2010 年 7 月 28 日参照 http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/pdf/H22-1-3.pdf)

[2] National Science Foundation, Gender Differences in the Careers of Academic Scientists and Engineers: A Literature Review, Special Report,1-22(2003).

[3] L. シービンガー(小川眞理子,東川佐枝美,外山浩明訳),ジェンダーは科学を変える!?:医学・

霊長類学から物理学・数学まで(Has Feminism Changed Science?),工作舎,1-305(2002)。 [4] Camilla Gidlöf Regnier,Statistics on Women in Science: Examples from the European Union,Chapter 2,

Women in Scientific Careers: Unleashing the Potential,OECD,53-60(2006).

[5] 小林信一,プロフェッショナルとしての博士―博士人材の初期キャリアの現状と課題,日本労働研 究雑誌,594,70(2010)。

a ただし,パイプラインモデルでは,職務上の地位を獲得した女性たちが自然科学系分野を去ることや,

一定以上の期間を経ても高職位に占める女性研究者の割合が向上しないことから,1994 年に国家研究

審議会の報告において,無効であるとされた[3]。小林(2010)[5]は,Human Frontier Science Program と欧州科学財団における議論を紹介し,パイプラインモデルは少数の学術的リーダー育成に偏重して おり,また一方向的であることから,「ツリーモデル」による多様化した博士やポスドクのキャリア パス構築について分析を行っている。

b European Commission. She Figures 2003, 2006, 2009

c 編入,転入,退学,卒業後数年経過してからの進学者等もいるが,一定以上の割合で卒業・修了直後

に次の学位課程への進学者がいることを想定し,時点ごとの男女割合を使用した。

d 教員移動調査は平成 18 年度間に採用・転入又は離職した本務教員を対象としている。

e 博士課程修了者が新卒採用者と一致するとは限らず,たとえば新卒採用者の中には修士号取得時点で

の採用者が含まれると考えられる。

f 文部科学省科学技術政策研究所,NISTEP REPORT No. 126 平成 20 年度科学技術振興調整費調査研究

報告書 第3 期科学技術基本計画のフォローアップに係る調査研究 「大学・大学院の教育に関する

調査」プロジェクト 第2 部 我が国の博士課程修了者の進路動向調査報告書』,科学技術政策研究

所1-95(2009).

参照

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