工芸教育の実践的研究(2) : 江差陶石の採集
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(2) . 工芸教育の実践的研究 ( 2 ) -江差陶石の採集- 小. 1, は. じ. め. 平. 征. 雄. に. 1 )工芸教育の実践的な内容について 特に陶芸教育を事例として 全般的な制作 プロ 前稿では* , , セスを中心に述べてきた, それは, 工芸教育のなかでも, 特に教員養成を前提として考 える場合, 陶芸の工芸全体における位置付けの確認をする必要上から導き出されたものである, 教員養成の工 芸教育を実践的に考える場合, 必ず, そこには, 実技による制作の教育的, 美術的観点からの問題 が介在する.. 本稿は工芸教育の実践的研究として陶芸教育を事例として述べるものである, その中でも, 特に 今回は, 陶芸教育の素材化に関して, 原料から素材への過程を, 北海道江差町に産出する陶石を事 例として, 考察を進めるものである. 現在では工芸教育において, 原材料からの実践教育を行う機 会が少なく, 陶芸教育においても原材料の陶石からの素材化に関する実践例を資料として記録され たものが見当たらず, 江差陶石の具体的資料の記録を行うことが, 教員養成課程の陶芸教育の実例 として, ひとつの手がかりとなると考えられる.. 2. 陶 石 に つ い て. ( ) 陶石の性質について 1 陶芸教育 において, 原材料の吟味, 選択は, 陶芸作品を制作する上で, 重要な制作要素のひとつ である. また原材料の陶右を作品制作に使用するのに充分な条件を満たす素材 づくり が制作方法や. 完成予想のイメージを形成することに, 造形的にも物理的にも関連を深めてくる, 粘土, 磁土, 長 石などに関連して, 陶石についての一般的規定については, 陶芸の実践的教育 においても, 触れる. 機会が少ない, それは教員養成課程においても, 制作技術や表現技法に関する教育 に時間を要する という現実的な問題からも生ずることである, そこで, 改めて, 陶石についての規定を述べると, いくつかの物性からの定義 づ けが見られる. 陶石の一般的な化学的成分からの定義づけとして次のように記されている. 「陶磁器の素地は非 可塑性原料として, ケイ石, ケイ 砂など石英を主とする原料, 可塑性原料としてカオリソなどの粘 土質原料, 融剤原料として長石など, 3種類の原料を混合して使用するのが普通である. しかし,. たとえば有田焼の素 地のように, 原料として天草陶石1種類のみを使用する場合もある. 天草陶石 は可塑性成分および融剤成分としてセリサイ ト (K を含む3層構造の粘土鉱物で, 化学成分の上で. 157.
(3) . 小 平 征 雄. はカオリソと長石の両者の性質を示す)と非可塑性成分として石英から構成されている原料である, 1種類の原料の中 に, 磁器の原料に必要な3成分をす べて含んでいるため, 天草陶石のみで磁器を つくること が可能である, 陶石とは本来天草陶石のみに使用された原料名である が, 現在では天草 陶石と類似の鉱物組成o組織・性質を持つ他産地の原料も陶石と呼ぶようになった. 陶石は普通, 石 英 60~70%, 粘 土 鉱 物 40~30%[主 と し て セ リ サイ ト で あ る が, ほ か にカ オ リ ソ 鉱 物, パ イ ロ フ ィ. ラ イト, 混合層粘土鉱物 (雲母-モソモリロナイ ト) などを含む場合もある] 程度の組成を持つ が, 変質の弱い場合には長石を含むこともある. また不純物として鉄鉱物や Ti02を含むこと が多く, 2 ) これらの不純物の少ないものは高品位の陶石として, 白色陶磁器の原料として利用される,」注 また, 岩石としての成分, 性質として 「岩石中の長石類が後火山作用による熱水液のため絹雲母. 化を受 け, 石英およ び絹雲母を主成分とし, ときに他の粘土鉱物をも主成分として伴い, 単味焼成 3 )としている O 内外) により磁器化する岩石をいう」注 (SKI . ( 2 ) 陶石産出の分布状況. 陶石原料は, 工業用としての消費量 が, 工芸制作用としてよりもかなり大きいのが実状である,. b Q. 湯の沢. o. “. ′ / ‘. lo . 蟻渓. ◇. 湯の川. . . ,r 。 ′ 0. . 大久保. ー キ ≧ 燕 が図の ≦凄艶 ’ 服部 罪責 。. そ. . . 0. ′ ′. o/. 砥部, 万年, 川登. 天草. oo. 図 1 日本における陶 石の分布図 158.
(4) . 2 工芸教育の実践的研究 ( ). それは, 近年の上級陶石の需要の増加を促し, 資源の 劣質化が進んできている, そのため低品位で 4 ) ここでは工芸制作として 作品と素 未利用の陶石の利用のための研究 がすでに進められてし・る注 . , 材との関連が陶石原料の性質とも関係があると考えられるので, 工芸作品の素材として現在, 利用 されている陶石の状況について, 分布図 (図1 ) を例として, 記しておく,. 3. 江差陶石の分布と採集 前述の陶石の分布状況からも解るように, 北海道におし・ても, 江差の陶石は数少ない貴重な末利 用の地下資源であると予想される, 今後, セラミ ックス製品の発展や, 工業用の陶製品の需要, さ らには, 地場産業の確立, 工芸作品の制作や社会教育の振興といった, 様々 な観点からも, 江差陶 石の素材化を検討する価値は高いと思われる,. ( 1 ) 江差陶石の概略 本稿では, 江差町の3地区, 円山, 樋の沢(中歌) , 田沢と乙部町の 鳥山地区を含む4地区から産 出する陶石 (鳥山地区は粘土) を江差陶石と総称して取り扱う, 江差陶石は, 現在では4地区から産出している が, 戦前からは樋の沢, (中歌) 地区, 田沢地区,. 鳥山地区はすでに発見され, 一時期試掘された. しかし, 3地区ともほとんど現在ま で未利用の状 ▼ ・ ′ 、 態 あ 円山地区に関 して は 発見 が新 し で. る,. ,. \. 熊. く, 昭和 灘 年に陶石の存在 が確 認されている.. 、-「. 国 ・. 4 地 区 の 地 理 的 条 件 は 採 集 に 関 し て, 非 常 に 良. 1. 醜. 茄 ) 好である圭 ,. . - っ . 号 線. ) 江差陶石の分布状況 ( 2. = 突 符i. 江 差 陶 石 は, 江 差 町 を 中 心 と して 現 在, 4 カ. ′. ミ鐙当- , . i 1 - -・. 所の陶石が発見されてい . 図 の よ う に, 円 山地区, 樋の沢地区, 田沢地区, の3ヵ所が江. 、、. 差町にあり, 鳥山地区が乙部町にある, それら 4ヵ所の陶石の産出状況を記す. \. ◎円山地 区. 円山地区は江差町の市街地の近く に位置し,. 近年, スキー場の開発に際して発見された場所 である, 産出状況は非常に好条件であり, なだ らかな丘状のほ ぼ頂上からすそ野にか けて露出. . 上の国. )露頭している陶 採集することができる. (図3 石は爽雑物 がほとんど含まれておらず, 陶石と しての純度が高いと考えられる. また, 露出部 分は, 風化が進んでいるので, 採集は容易であ. 図 2 江差陶石の分布図 159.
(5) . 小 平 征 雄. り, 母岩の硬度も低く, 粉砕を効率的に行うことができる. (図4 ) ,6 ,5 ,7 ゞ三 【‐ ノ ;~- 勺 臥 :三森き鴇き 一 きざ/. 図 4 円山地区陶石露出部分その1. 図 3 円山 地区陶 石産出状況. 騨縄雫鞭琵轟ききミミニ ニ もぎ螺 蒸 * おミミト重 三 、 ミ. き 凝議僻 き孝幸鳩憲数等 そ さ対戦ギ『濠漉. 義. …“ 碧鱗」ない; -. 三塚; 誰 謝辞電老齢メドできニメ響 き「繁華 , 図 5 円山地区陶 石露出部分その2. 図 6 円 山地区陶石露出 部分その3. 図 7 円山地区陶石 ◎樋の沢 (中歌) 地区 樋の沢地区も江差の市街地の近く に位置している. 国道228号線にも近く, 交通の便は良い. 江 差陶石のなかでも比較的早く発見された場所である, 現在のところ, 陶石の産出される場所は, 雑 ) この地区の胸石は, 20~30cm の表 草に覆われているが, 採集は比較的簡単な状況にある. (図8 土に覆われている. 硬度は, 軟質ではあるが円山よりも硬い, 成分として鉄酸化物に汚染されてい ) る状況が肉眼にて判別できる. (図9 , 10 160.
(6) . 2 ) 工芸教育の実践的研究 (. 図 9 樋の沢地区陶石露出部分. 図 8 樋の沢地区陶石産出状 況. キギ デ三. . ト A ・. }”ォ 三 ,ノ. ー. ’. 図10 樋の沢地区陶石. ◎田沢地区. 田沢地区は江差町の郊外北方約4km に位置し, 国道228号線のす ぐ近くであ る. 田 沢川の河口. 図11 田沢地区陶石産出状況. 図121 田沢地 区陶 石露出 部分 161.
(7) . 小 平 征 雄. ¥凋萎轟き瞥 醍聾唖瞳 議響瞳 戴 き 、警 醒 轟き , ,. 欄霊園潮騒 麟 図13 田 沢地区陶石露出部分. 図14 田沢地区陶石露 出部分. の 区の中で最も高い‐ (図1 2 3 4 ,1 ,1 , 饗 瀞 ,. 5 田沢地区陶石露出部分 図1. が浅識 ぎ マ 釈 まぶり なさ斌き ふき. 図16 田沢地区陶石. 0鳥山地区 鳥山地区は江差町に隣接する乙部町にあり, 市街地より北方約3km に位置し, 国道2 28号線か ら約lkm 山側に入 った丘である. 更に, 粘土の産出場所までは200m 位入る必要があ り, 現在の. 道路状況のまま では, 採集には, やや整備を要する. (図17 ) この地区の陶石 は, 一般 には 鳥山粘 土と称されているが, 本稿ではこの地区の粘土をも含めて, 江差陶石として含めて考えている. 産 出状況は, 表面は露出して いる部分が少なく, 大部分は堆積物に覆われているが, 露出部分の風化 はかなり進んでおり, 顎粒状に近い状態で肉眼 では黒色の爽雑物が含まれて いること が解る. (図. 162.
(8) . 2 ) 工芸教育の実践的研究 ( 18 , 19 , 20). J \ . . 》\ .. 図18 鳥山地 区粘土露出部分. 図17 鳥山地区粘土産出状況 〆.. 鰹. ,. ・ に鴇● ・ ● .・謙 譲轍 i .. 鱗 海 滋 総 議 滋講義 菱 滋 謙 締 き参議滋養≧ 一 ≧凝議滋薫蒸 豪滋疑義ま 影 墓参 嫌 菟 三! 擬. イ ー, 年二 言 ギーギー , むきなどノロメ. 図20 鳥山地区粘 土. 図19 鳥山地区粘土露出 部分. ( ) 江差陶石の成分 3 表1は, 江差陶右4地区の化学分析値と耐火度を天草陶石, および服部陶石と比較したものであ る. 天草陶石, 服部陶石は, Fe 203と Ti02が成分のなかでも少なく, 磁器の原料と して最適であ 表 1 江差陶石, 天草陶石, 服部陶石の化学分析値と耐火度 i02 S. A1 203. Mgo. 1g os s ,l. 耐火度. 4.21. 6.05. SK 16. 0.99. 0,48. 16,73. SK 31. 0,28. 0.40. 0.30. 17,19. SK 32. 1.08. 0.37. 3.43. 3.27. 1.61. SK 10. 0,12. 0,31. 0.13. 1.15. 3.23. 4.86. SK I9. 0.34. 0,02. 0,53. 0.19. 0.i9. 2,92. 2.75. SK 26. 0.66. 0.12. 0.32. 0.73. 0.38. 2.91. 3.32. Fe203. Ti02. CaO. Na 20. 中 歌 陶 石 (樋の沢). 72.65. 14.59. 0,34. 0,06. 0.30. 0.41. 1.38. 鳥 山 粘 土 (原土). 47,72. 31.02. 1.93. 0.18. 0.50. 0.35. 鳥 山 粘 土 (水ひ物). 44.16. 35,52. 1,99. 0.15. 0.10. 田 沢 陶 石. 75.26. 14.71. 0,42. t r. 円 山 陶 石. 73.33. 16,38. 0,49. 天 草 陶 石. 78.79. 14.39. 服 部 陶 石. 71.54. 19.97. K2〇. 163.
(9) . 小 平 征 雄. り, 世界的に高品質な陶石として知られている. これら2種の陶石の成分と江差陶石の成分を比較 してみる必要がある, 江差陶石の円山, 樋の沢, 田沢の3地区は, 成分表から見ると, いずれも天 草陶石, 服部陶石の成分に極めて近し・組成を示している. また, 円山陶石は Tiα に関して は天草 陶石より は多い が, 服部とは同じ量であり, また, Fe 203に関しては天草よりは多いが, 服部より は少なくなっている. 従 って円山陶石は呈色の面から言えば, 天草陶石と服部胸石の中間に位置す ると考えられる,. 4. 江差陶石の工業生産と工芸制作 江差陶 石は現在のところ, 工業用の原材料として, また, 工芸作品の素材と していずれも試作 的, 試験的に行われている段階である, 胸石の工業用材料としての可能性の幅は, セラミ ックス製 品の開発に伴 って, 拡大されると考えられる. また, 工芸作品としての素材は, 地域の地場産業の. 振興などにも関連する が, 純粋に造形的側面だけから考えるなら ば, 他の粘土等の調整, および素 材に適した造形方法を考慮することにより利用可能であると思われる. ( 1 ) 江差陶石の工業生産化の現状 江差陶石の原材料として工業用の利用 が北海道立工業試験場野幌分場において試験的に行われて. ぉ E ) 試 作 さ れ て い る も の は 現 在 の と こ ろ 建 築用 タ イ ル で あ り プ レス 成 形 に よ る も の で あ い るi , , , ,. る. 材料となる陶石は, 円山陶石100%のものと, 鳥山粘土を混合したもの である. このことで, 円山陶石は単独に使用すること が可能であることが明らか になっている. 図21 , 22 は プ レス成形. されたタイ ルの表面である, 油薬の付着状況は良好であり, またその色も, 透明粕から色紬まで広 範囲に使用することが可能である. 図23は図2 2のタイルの裏面である. 白色の素地から判断する. と, 呈色状況は非常に良好である. この白色は単に工業用に利用するだ けでなく, 工芸作品として の利用も多様性をもっと考えられる. 図24はタイル成形用の プレス機であり, 図25の金型による. 1 建築用 タイ ルの試作品 (表) 図22 建築用タイ ルの試作品 (表) 図23 建築用タイ ルの試作品 (裏) 図2 164.
(10) . 工芸教育の実践的研究 ( 2 ). 図25 タイ ル成形用金型 図24 金型 プ レス成形 機 る,. 江差陶石による工芸作品の実例 在まで, 江差陶石を造形素材として工芸作品の制作を行 っている例がいくつかある, それらは , 試作の段階であり, 制作の規模も小さし・試験的なものである. その主な作業は北海道立工業 場と江差町技能開発センターおよ び江差陶石研究会によるも のであり, 成形方法として は, 手 り, ろくるによる成形, 鋳込みによる成形 がと られている. 図26~29は手びねりによる作品. り, 板 づく りも 含 んでい る. 図30~34はろく る に よる 成形 で 制 作 さ れ たも の で あ る. 図 9は鋳込みによる成形で試作されたものである.. 図26 江差陶石 による試 作品. 1. 図27 江差陶 石による試 作品. 2. 165.
(11) . 小 平. 正 雄. . )で) .こ ご ー ノノ. 図28 江差陶石 による試作品. 図29 江差陶 石 による試作品. 3. . ・. 166. ′ ′. ′. 4. ノ ~. ●・ ・ ●● ー ′ 、 ,. 図30 江差陶 石による 試作品. 5. 図31 江差陶 石による試作品. 6. 図32 江差陶石による 試作品. 7. 図33 江差陶石による試作品. 8.
(12) . 工芸教育の実践的研究 ( } 2. 図34 江差陶 石による試 作品. 9 図35 江差陶石による 試作品 10. 図37 江差陶 石 による 試 作品 12. 図38 江差陶 石による 試作品 13. 図36 江差陶 石 に よる 試作品 11. 図39 江差陶 石による 試作品 14. )王. ) -陶芸教育を事例として-」 北海道教育大学紀要第37巻 ) 小平征雄, 福田隆昌 「工芸教育の実践的研究( 1 1 第1号1部C I 98 6年 2 ) セラミックス材料技術集成編集委員会 「セラミックス材料技術集成」 産 業 技 術セ ンタ ー 1979 年 P.509 ) 窯業協会 「窯業工学ハンドブック」 技 報 堂 1973 年 P.1074 3 4 ) 通商産業省工業技術院九州工業技術試験所 「要覧」 最近発行された資料による 5 ) 江差町経済部商工観光課商工労働係 「江差陶石研究開発事業経緯」 江差町の報告による, 6 ) 図21~25 は北海道立工業試験場野幌分場において, 試作されているタイル成形の資料である,. 参考文献 ◎松下 亘 「北海道のやきもの」 北海道新聞社 1977年 ◎北海道立工業試験場 「桧山地方良質原料による陶磁器の製造試験」 1985 年 167.
(13) . 小. 平. 征. 雄. 0名古屋工業技術協会 「日本の窯業原料( 19 8 )」 1978 年 7 0皿井博美, 菊池博男, 遠藤三男, 尾形修一, 中里一英 「江差産中歌陶石と乙部産鳥山粘土の窯業的基礎性状」 8 3 19 84年 北海道立工業試験場報告 No .2 0河村責太朗 「やきものをつくる」 美術出版社 1 965年 0粘土ハンドブック編集委員会 「粘土ハンドブック」 技報堂 1967年. 付記 本研究の陶石採集に関して, 江差 町町長木村義信氏をはじめ, 玉山純一氏, 若山昭夫氏に御尽力 いただきました. また, 北海道立工業試験場野幌分場の中里-英氏には試料分析等の資料を提供し ていただきました. 写真資料の整理について は, 本分校美術工芸科教育研究室福田隆員氏の協力を 得ました, ここに感謝の意を表します.. (本 学助 教授. 168. 函 館 分校).
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