小規模校における「器械運動」授業の充実・改善
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(2) N(149. 1995.3. 小規模校における「器械運動」授業の充実・改善 北海道教育大学教育学部旭川校 三浦 裕. 富良野市立布札別中学校. 相蘇 倫朗. DevelopmentandImprovementof”GymnasticLessons” −A Case ofSma11Scaled SchooIsin LocalArea−. YutakaMIURA(HokkaidoUniversityofEducation,AsahikawaCampus). TheachingMethodsofHealthandPhysicalEducation MichirouAISO(FurebetsuJuniorHighSchool,Furano,Hokkaido). HealthandPhysicalEducation. ABSTRACT Thepurposeofthisstudywastodevelopandimprovegymnasticlessonsofsmallscaledjuniorhigh SChoolinlocalarea,Hokkaido. Inordertodothis,gymnaSticlessonsatFurebetsujuniorhighschooIwerepickedupandrecorded byVTR,andthenanalyzedbyALT−PEmethod.. Themainresultsmaybesummerizedasfollows:. Thebigining,nOtOnlygymnasticlessonsbutalsophysicaleducationitselfwillbetakenafavorable turnaCCOrdingtothechanglngOfsocialenvironments,incaseofsmallscaledjuniorhighschooIsinlocal area,tOO.. Andit,sdirectionwi11movetowardlifelongphysicaleducation/sports. ThevaluationofgymnasiticlessonsbyALT−PEwasalmostlybetterforallgroups,COmparedwith OtherALT−PEstudy. Theeffectsofstudybyvideotapesrecordedone’sexerciseformwerefavorableforalmostpupils. Butsomeproblemshavebeenrest. Those were methods of elective system,COmpOSing ofgroup members,Setting of subjects and practicemethods,guidance/supportforpupils,andevaluation.. Considering above,Wehadto think better oftheidea onphysicaleducationlessons andbetter. gymnasiticlessonswi11behopedforthebestuseofsmallscaledschooIsinlocalarea.. ー31一.
(3) 三浦 裕・相蘇 倫朗. 目 次 Ⅰ 問題の所在 ⅠⅠ研究の手順と対象・方法 ⅠⅠⅠ学習指導計画の作成 ⅠⅤ 授業の実際. V ALT−PE観察法からみた授業の実際 ⅤⅠ生徒による自己評価 Ⅵl他授業とのALT−PE値の比較 †ⅡlVTRの活用 ⅠⅩ まとめ. Ⅹ おわりに 引用・参考文献. 授業の充実・改善を目的として,「生涯体育・スポー. Ⅰ 閉居の所在. ツを目指す学習指導」のあり方についての研究を推. 昭和62年,教育課程審議会は教育課程全体の改善. し進めるため,「器械運動」授業を事例として,これ. をねらいとして答申を行った。その中で,保健体育. からの新しい体育授業づくりに向けた基礎的研究を. 科(体育)については,「生涯体育・スポーツと体力. 試みるものである。. の向上を重視する観点から,生徒自らが進んで運動 に親しむ態度や能力を身に付け,心身を鍛えること. ⅠⅠ研究の手順と対象・方法. ができるよう,生徒の心身の発達的特性と運動の特 性との関連を考慮して内容の改善を図る」,「その際,. 1.研究の芋版. 中学校においては,生徒の運動能力や運動技能を高. これからの体育授業について検討を行っていく場. めることに重点を置く」とされ,そのほかさらに4. 合には,まずこれまでの体育授業についての整理や. 点が特記されている1)。. 分析・検討を踏まえた上で,今後のあり方や特色に ついて方向づけることが必要不可欠な作業である。. 現行の新「指導要領」はこれらの趣旨を踏まえて 作成されたものであるが,「器械運動」の領域につい. そして次には,設定された「これからの体育授業」. ては大きく「技能」および「態度」の項目しか設定・. の枠組みに沿って,「器械運動」領域のおさえが明確. 説明されておらず,この項目の内容だけでは実際に. 化され,実際の学習指導計画が立案・作成されるこ. どのようにして上記のような趣旨を反映させてい〈. とになる。対象とされた授業は,ALT−PE観察法2)・3). のかなど,具体的な内容については不十分である。. により分析が行なわれ,さらに検討・考察が加えら. つまり,実際に授業を実施していく上で,「生涯体. れた。. 育・スポーツを目指す学習指導」とは一体どのよう. 2.研究の対象と方法. な授業であるのか,あるいはそのような授業におけ. 研究の対象とされたのは,北海道富良野市立布礼. る学習とはどのようにとらえればよいのかなど,検. 別中学校における「器械運動」授業である。布札別. 討されなければならない課題も多く潜んでいる。し. 中学校は,前富良野岳の麓に位置し,周囲を畑作・. たがって,授業にかかわる具体的なことがらについ. 酪農地に囲まれ自然環境に恵まれた小規模校であ. てはあまり研究が進んでおらず,模索しているのが. る。このため,畑作に従事している家庭の生徒が多. 現状であると言えよう。特に僻地小規模校において. い。生徒数は1年生7名,2年生8名,3年生3名,. は,生徒(教員)数,施設・設備,そして地域の特. 合計18名であった(表1)。地理的にみてみると,同. 色などの関係から,これらのことがより一層深刻な. 中学校は富良野市の中心から東方へ約20km,海抜. 閉居としてとらえ直されなければならない。. 345mに位置しているため,他校との日常的な交流. このため本研究においては,僻地′ト規模校の体育. が難しく,主体性に欠けたり自己表現力が乏しい面 −32−.
(4) No.49. 小規模校における「器械運動」授業の充実・改善. 1995.3. 表1学年別生徒数と選択種目. (単位:人). 半 種 目 名. 1年生. 2年生. 後. 合 計. 3年生. 1年生. 半 2年生. 合 計. 3年生. 男 女 男 女 男 女■ 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女. マット運動 3. 4. 鉄棒運動 跳び箱運動. 3. 小 計. 4. 2. 2. 4. 4. 7. 4. 3. 3. 3. 3. 3. 3. 3. 平均台運動. 合 計. 3. 4. 4. 8. 2. 3. 8 10 18. 2. 5. 4. 3. 4. 4. 4. 4. 7. 2. 8. 8 10. も見られるが,反面明るく素直で勤労意欲も旺盛で. 第3次元に進み,その従事行動の「困難度」につい. ある4)。. て3段階(成功/どちらとも言えない/失敗)で評. 今回対象とされた授業は13時間単元として構成さ. 18. 3. 価し,記録することとした。 このようにして記録きれた各カテゴリーのイベン. れ,実施期間は平成5年10月から11月であった。こ のうち本研究では,効果的な指導と生徒の種目選択. ト数を授業全体の単位数(授業時間/12秒)に対す. の実態を探るために,生徒が課題に慣れ親しみ授業. る割合で表示し,「困難度」の次元の「容易に成功」. がまとめの段階に入る11時間目が対象とされ,ALT. の項削こ該当するイベントの割合をALT−PE値と した。また,ALT−PEの下位カテゴリーとして「運. −PE観察法による分析が行なわれた。 授業の学習場面は,図1のように設定きれた。ま. 動のALT−PE」と「主運動のALT−PE」も同時に算. た,生徒の活動のようすを収録するため,体育館の. 出した。さらに,「器械運動」の授業全体に対する生. 隅に1台のビデオカメラが設置され,授業が記■録され. 徒の意識を調査するため,授業終了後には生徒自身. た。観察の対象とされたのは,各グループごとに1. による自己評価を行ない参考資料とした。. 名づつ無作為に抽出された合計4名の生徒である。. 本研究で用いられた方法は,MetzlerとBirdwell ロ. によって説明されている観察法に基づくものであ. ステージ. ロ. り,3次元21カテゴリーからなる観察項目にしたが 挑琵雑 談測. って,6秒間隔(インターバル)で授業中の生徒の 患雄編鵜翁完鑑低遡瞞 酢蛸耽檻厳封高瀾鄭戯. 活動が観察・記録された。つまり12秒が1単位とさ れるため,最初の6秒間で生徒の活動が観察され,. ●−●−●岬●輔I 口. 次の6秒間でそれが記録されることとなる。このた. 棚彬芽; 坊琳彬預勅願雄. ロ. △. □:モニターテレビ △:ビデオカメラ(授業記録用). め,1分間では5つのイベント,1授業時間全体(50 分)では総計250のイベントが記録されることとな. 国1 学習場面の設定. る。なお,最初の6秒間に2つ以上のイベントが観 察された場合には,ALT−PE観察法に有利なイベン トが優先的に記録されることになる。. ⅠⅠⅠ学習指導計画の作成. 具体的な観察手順としては,まず1インターバル. ′. の間に「内容次元」について観察し,それが「一般. 1.これまでの体育. 的内容」か「体育的内容」かを判断し,記録する。. これまでの体育について概括してみると,いくつ. そして「体育的内容」に該当する場合にのみ,第2. かの特徴を上げることができる。そのうち学習指導. の次元の「生徒の学習行動(従事/非従事)」につい. 計画の作成にあたって特に関連が深い「体育観」に. て観察記録することとした。さらに,この次元で生. ついては,これまでの体育の場合,運動教材を手段・. 徒の学習行動が「従事」と記録された場合には次の. 方法としてとらえる傾向が強かったと言うことがで ー33−.
(5) 三浦 裕・相蘇 倫朗 きよう。このため,身体活動を通して,あるいは身. という考え方だとしている。つまり,体育授業の目. 体活動によって体力の向上を図ることに偏向し過ぎ. 的を「運動」の「教育」とし,運動それ自体が子ど. たり,評価も技能のできばえをよりどころとする授. もたちにとって意味をもつものでなければならない. 業などが数多くみられた。このような特色をもつ体. とするとらえ方である。しかしこのためには,「運動」. 育は,からだづくりのための「からだの教育」,ある. の「何」を教育するのか,またその「何」が子ども. いは運動を手段・方法としてとらえる「運動による. にとってどのような意味をもつのかなどについて,. 教育」と呼ばれている。. 事前に整理されていなくてはならない。 その「何」に関して杉山6)は,「運動が内包してい. しかし,技術革新にともなう余暇時間の増大や生 活空間の拡大,情報化社会への移行など,社会のさ. る独特の楽しさ・喜び」とし,またそのための重要. まぎまな変化が個人生活に大きな影響を及ぼすよう. なポイントとして「生活の質を向上きせ,豊かにす. になってきた現在では,教育に対する価値観も多様. ること,自分で自分を育てること,すなわち”自己. 化してきている。もちろん教育の一領域を担う体育. 啓発”が重視されなければならない」としている。. も例外ではない。. したがって,生活の質を向上させるための自主的・ 自発的な学習への取り組みを行うためには,対象と. つまり,余暇時間の増大に伴うスポーツなど身体 活動の経験とそれに費やす時間の増加,生活空間の. きれる運動の領域特性や一般的特性などがどのよう. 拡大による多種多様な運動の形式や方法などを獲得. な楽しきや喜びを内在しているのかについて明確に. する必要性,マスコミニュケーションによって伝達. しておくことが必要とされる。これらのことは一般. されるスポーツ情報の量と質の判断力および自己状. に「運動の機能的特性に基づいたとらえ方」と言わ. 況との認識・調和,さらには身体活動の価値や生命. れている。. の尊厳に対する態度など,変化する個人の生活状況 についても考慮せぎるを得ない社会となってきてい. 3.「器械運動」のとらえ. る。. 器械運動は,これまで(運動手段・方法論では). このような内容は,次代を担う子どもたちにとっ. どちらかと言えば「克服型」の運動として取り扱わ. て深刻な問題であると同時に,教科としての体育の. れてきた経緯がある。しかし,実際には体操競技な. 意義や役割までをも改めて問い直さぎるを得ないと. どに見られるように,他とできばえを競い合う「競. いう基本的かつ根本的な問題を内在しているにもか. 争型」の運動として,また技のできばえをめざす「達. かわらず,これまであまり表立って意識されてこな. 成型」の要素をもつ運動としてとらえることもでき. かったばかりか,中心的な問題とされてもこなかっ. る。. この種の運動ではマット,鉄棒,平均台,とび箱. た。. しかし,上述のようにこれからの体育を考えてい. などの器械・器具を用い身体を操作することによっ. く場合には,従来のように個々の運動・スポーツ領. て,懸垂,倒立,回転,バランスなどそれぞれ独自. 域における指導の改善・充実のみでは対応しきれな. の運動や数多くの扱が生みだされる。このため「器. いことになる。つまり,子どもたちが生きていくこ. 械運動」は,目標とする技などに挑戦してできるよ. のような社会環境を考慮した上で,体育授業そのも. うになったときやその努力の過程,またより高度な. のに対する基本的な考え方が問われていると言って. 捜に挑戦するとき,あるいはいろいろな技を組み合. も過言ではないだろう。このためには,体育授業の. わせたり,状況に応じて使い分けたりすることがで. 基盤としての体育科教育からのアプローチが必要不. きるようになったとき,つまり「技の達成」や「技. 可決とされる。. の獲得」が経験されたときなどに大きな「楽しさ」 や「喜び」が見い出され,それらが一段と深まって. 2.これからの体育. い〈ことに特色がみられる身体活動である。. そこで,これからの体育授業のあり方について考. またそのほかに,身体を支える(支持),振る(振. えてみる。 宇土5)は,これまでの体育を総括したう. 動),回る(回転),とぶ(跳躍),バランスを保つ(平. えで,これからの体育に向けて現在主流となってい. 衡)などの運動により,空間における全身的な身体. るのは「生涯スポー、ソ」を基盤とした「運動の教育」. 支配能力が高まるなどの特性を上げることができ ー34−.
(6) 小規模枚における「器械運動」授業の充実・改善. N瓜49. 1995.3. る。さらに,計常生活にはあまりない経験として, 頭部の相対的な位履側係が逆になる(顕が逆になる). 4.■元日糠の設定. 姿勢も多いので,不安感や恐怖感を伴う運動でもあ. 単元目標は,新「学習指導要領」における器械運. る。このため,運動会椴についての判断力や集中九. 動の目標に沿って,稔括目標および具体計標を設定. 決断力や想像力・持続力などが求められる。. した。このうち具体目標は「関心・意欲・態度」,「思. なお,不安感や恐怖感を取り除いたり,あるいは. 考・判断」,「技能」,「知識・理解」の4項目から構. 危険を予測・察知・回避したりするために,お互い. 成されている。「器械運動」単元は13時間構成とした. に協力したり補助したり,また器械・器具の点検・. が,単元を通して全月が2種目を学習するため,そ. 整備やきまりを遵守するなど,安全に留意する態度. の道筋が見通しやすいように授業は前半(1−7時. の育成も重視される。このように自己や他者の動き. 間)と後半(8−13時間)とに分けられ,学習が進. を観察しながら動きのよさや美しさを見分ける能力. められた。. や共同で学習する態度などを身につける。. その内容は,1時間目を「オリエンテーション」,. 表2 学習指導計画 (稔括目標). ●自分の能力に適した課題をもって次の運動を行い,その技能を高め,扱が円滑にできる。. ア.マット運動 イ.鉄棒運動 り.平均台運動 エ.跳び箱運動 ●お互いに協力して,計画的に運動ができる。 ●器械・器具を点検し,安全に留意して運動ができる。 (学習指導計画). 前半 後半. 学. マ ット 運 動. 時 時. 習. 鉄 棒 運 動. 内. 容. 跳 び箱 運 動. 平 均 台 運 動. オリエンテーション ●器械運動についての意識調. 査. ●希望種目の選択・学習内容,方法について知る. 2田. ね ら. ●基本的技能の練習 ね ら ●今できる技の確認 ね. ら. ●今できる技の確認 ね ら. ・きる技の確認. 捜. する技の決定. い ロ 後転,開脚前 い ロ 使用方法の確 い 使用方法の碓 い ロ の見通しをも 転,開脚後転) 認 認 口. ●伸膝後転の練習と. ●できる技のレベル. ね. 3 9 ね. 技の練習① ら. ら. ね. い. ら. 田. ね 走・跳眉技の. 捜の練習① ら. い 2. 習 2. 続技を考える. 5 田 ね. ね. ね. ら. ら. 技の練習③. R). ら. 用の連続技を. 完成. い. 完成. 3. 3. 3. (VTR). 7 田. せる(VTR). 田. 発 表 会. ●一人づつ,身につけた技のでき映えを全員の前で発表する。 ー35−. (VTR). R).
(7) 三浦 裕・相蘇 倫朗 3.「ねらい2」の段階. 2時間目(他グループは8時間目)を「ねらい1」,. 3・4時間目(同,9・10時間目)を「ねらい2」,. 「ねらい2」の段階では,今自分がもっている力. 5・6時間目(同,11・12時間目)を「ねらい3」,. に新しい創意・工夫を加えて,いかに自分にとって. 7時間目(同,13時間目)を「発表会」とした(表. 適切な課題を設定することができるかが中心的な要. 2)。今回本研究で対象とされた授業は11時間目であ. 素となるため,ここでは主として「できる捜」の質. り,後半の種目における「ねらい3」の段階にあた. 的向上と連続技の洗練化を学習内容とした。 この段階では今もっている力をさらに伸ばすこと. る(鉄棒運動については「ねらい2」の段階)。. が求められるため,できばえなどに対する適切な自 5.種目の選択. 己評価と力を伸張させるための主体的・積極的な取. 1年生男子は「マット運動」と「鉄棒運動」,同女. り組みの姿勢が重視される。 このため,「体育科副読本」や「学習プリント」の. 子は「マット運動」と「平均台運動」を必修とし, 指導要領に基づき種目の選択は行なわずに課題選択. 活用,学習プリントに記入された教師の「アドバイ. のみとした。2−3年生については,生徒による種. ス」,授業中の「コミュニケーション」などが重要な. 目選択の方法として「マット運動」,「鉄棒運動」,「平. 要素となる。このように資料などを用いて自主的・. 均台運動」,「とび箱運動」の中から,男子は「平均. 自発的な学習を進め,生徒の主体的な活動を助長す. 台運動」を除く 3種目,女子は全4種目からそれぞれ. るため,学習活動の観察や指導・助言のほか,学習. 2種目を選択することのできる自由選択とした。そ. の場の設定や利用方法,また学習計画の調整と仲介,. の内訳については,表1に示した通りである。. そして適切な学習資料の作成などに留意した。 4.「ねらい3」の段階. ⅠⅤ 授業の実際. 「ねらい3」の段階は「まとめ」の段階として位. 1.オリエンテーション. 置づけ,生徒自身が身につけた技の完成を目指して. オリエンテーションでは単元全体の学習について. 自主的に学習に取り組むことを主たる学習内容とし. の見通しをもたせることを目的として,学習の進め. た。このためここでは,VTR機器を用いた学習活. 方や資料の活用方法,器械・器具の配置や設置,安. 動を取り入れることとし,収銀された技の学習場面. 全面の配慮などについて説明することとした。また,. を振り返ることによって,そのできばえに対する自. 選択制のためのグルーピングを行うにあたっては,. 己評価と相互評価を行うこととした。. 生徒個人の希望をできるだけ優先させた。なお,効 率的・効果的な選択制授業の展開のためには器械運. V ALT−PE観察法からみた授業の実際. 動についてのレディネスを事前に把握してお〈必要. 1.「教授内容の次元」について. 性があることから,既に生徒に対する意識調査は実 施済みである(表3を利用)。. 表4は,今回対象とされた単元中11時間目の授業 について,ALT−PE観察法により分析を行なった結. 2.「ねらい1」の段階. 果についてまとめたものである。. 「ねらい1」の段階では今もっている力を十分生. まず「教授内容の次元」についてみると,「待機」,. かして特性に触れることが強調されるため,ここで. 「移動」,「マネージメント」,「休憩」などのイベン. は今自分ができる技の確認や基礎的・基本的な技の. トから構成される「一般的内容(学習内容以外の内. 確認と取り組み,器械・器具の取り扱い方などを主. 容)」に配当された時間(平均)は,全授業時間の7.6. な学習内容とした。技の確認には資料(表3)の「学. %であった。最も割合が多かったのは「マット運動」. 習ノート」を利用し,捜の内容などで不明な点につ. のグループであり10.4%を占めたのに対し,最も少. いては教師が各グループや個人を巡回するなどして. なかったのは「鉄棒運動」グループであり約半分の. 説明を行うこととした。. 5.4%であった。. 下位カテゴリーについてみてみると,「マネージメ ント」が平均で5.3%と最も多くなっており,すべて ー36−.
(8) 1995.3. 小規模校における「器械運動」授業の充実・改善. Nq49. 表3 学習ノート. 3/13. 土倉腫訝‘のク●ン碓′・、−・ニグ湖戚;於∴冴此ノ威ピー.ゲ. 剋カ、らフ㌢′ごノヾイスニフーコーー. ●跳び箱の高さは.最高でも軋殴で士分です。 6段の嗣で.′. 〝為ケご〃炉. 〟都/ できるようになろうl ●お械運動は技のつながりに添って練習することがポイントとな りよ・れ.義一脱正でド向島炊げ】IJ−′ット迎鋤の州毎ができなけれ. ば難しいと考えられます∩ したがって.円分に合った技に挑戦し 〔卜さい。. r ̄ ̄− ̄− ̄−− ■ −−●●−−−−■−−・−−■−−ヽ. じ村1抑挑こド 灯コレができれば合栴!. :1.しっかり戯く踏み切る : : 2.手を遠くにつく :3,薗地が助かない. じ村脚斜め挑こド. この技は.開脚跳びを少し発展させた技です。 l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄− ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄一 ̄一●−■■ ̄−−■■■■−−−. :l.跳び箱を縦に置き.台上から¢岬阜. 練習方法は. : 練習をする :2.助走から台卿: 回もできるまで練習する. ・3.跳び箱を械にして.数歩肋走をして実際に挑んでみる− : α. 手を着いてからの飛躍を大きく・しかも伸身で…. ;4.跳び箱を縦に.して.助走をして実際に挑んでみる . 1. l ● −■ 一 ■−・−■・− − − − − − − ■− − − − −− ●− 一 一 − − − −・・−・■− ■■ − ■ −■ ■− ■− − − − −・− − ■ ■ ■■ ■■ − ■ −. 汀セーフティマットを使用しよう! ※腕立て「水平開脚跳び」は.「開脚斜め跳び」をマスターしてからチャレンジを!. ∼「開脚斜め跳び」をレベルアップしていくと「水平開脚跳び」になります。. 銘勿親ウ児戯雛功〝 技の名前. どのようにレベルアップしたかというと… ■■ ■ − −− ● − 一 一 ■− −・−■・一 一■ 一− 一 一− − − − ●− −・■− −一 一一 一 − ▲− ■− −−−・■− − t− − − −・−− − −− ■− − − 一 一一 一− − ■− −・−− − −・■■ −・− ■■ ■一 −− − − − ■■ − ■− −■. − ●− ■・■− ■● − ■− ■一 一一 一一 一一 一− −一 一− ■− ■− ■− −− ■− →一 一− ●■一 一− 一 一− − − ■− 一 一一 一一 一−− −− 一− ■− ■一 一− −,−■ −− − − ■− −・−■■ 一− − ■− − ■− − − ■− ■ ■■ ●− ■− 一 一− ■− ■■ ■− ■■ ■− ■.  ̄ ■■− − ● ■■ − − − ■−・■−・■− ■− − −− ●− − ●− 一 一− 一 一− − −■− − ■− − ●■− − − − 一一 −− ■一 一− − −一 一−・−・− −一 一− ■一 一− −■− −■ 一 一■■+一− − − ●■ 一 ■■■ ■■ ■一 一 −■ − ■● ■ − − − ■●. t− ■ −■ − ■ 一− − − →一 一− − − − − − − 一 疇− − − ■−・−■ 一− − ■− ■−・−・−− 一 一− −・−■ − ■一 − 一 一− ●一 一− − −● ●− ■■− ■− − ■− − − − − − − −・■ 一 ●− ■− ■− ■ − ■■ ■● ■− − −. ■ − ■ ■ −・■■− − − − −一 一− − − − 一 −− −■■ − −・■− ●■一 一− −■ 一− −・− 一− −■ ■一 一−・■− ■一・■−−・■− ■一 一・−− − − ■− 一− − −■・−■・■− 一− − ■− −■ 一− ■−− 一■ − ■一 −・■→ − ■■ ■− −■ 一− − ■− ■■. −37−. 「.
(9) 三浦 裕・相蘇 倫朗 のグループで5.0%以上を占めていた。この授業にお. ゴリーでの割合が最も多かったのが,すべてのグル. ける「マネージメント」の具体的な内容は,「学習の. ープで「個人的技能練習(平均で61.8%)」となって. 進め方についての説明」や「学習課題の確認」など. いた。この理由としては,器械運動としての種目特. であったこととから,「一般的内容」としては他のカ. 性を上げることができよう。 次にグループ別に見てみると,「とび箱運動」のグ. テゴリーと比べてこれらに多くの時間が費やきれて いたことが分かる。なお,「休憩」,「学習課題に関係. ループが最も多く65.0%を占めているが,「平均台グ. のない指導」は観察されなかったため,0.0%となっ. ループ」では55.8%に留まっていた。続いて多かっ. ている。. たのは,グループにより差異はあるものの,平均で みてみると「体操・トレーニング(15.7%)」であっ. 次に「体育的内容」についてみてみると,平均で 全授業の92.4%となっており,すべてのグループで. た。また,3位はわずかな差で「知的活動(14.9%)」. おおよそ90%以上を占めていた。このうち下位カテ. となっていた。. 表4 ALTPE分析結果 項. 目. 一 般 的 内 容 待 機 教 授. マネージメント 休 憩. 内 容. 体 育 的 内 容. の 集団的技能練習 次. TC. ケ’− ム. 体操・トレーニング 知的活動 社会的全動. その他の運動活動. 学習課題に非従事 学. 合 間. 習. 待 機. 行. A マット. 単位 %. B 跳び箱 C 平均台 D 鉄 棒. 平均値. 10.4. 7.0. 7.6. 5.4. 7.6. 1.4 移 動3.0 6.0 0.0 0.0. 0.0 2.0 5.0 0.0 0.0. 0.0 2.6 5.0 0.0 0.0. 0.0 0.4 5.0 0.0 0.0. 0.3 2.0 5.3 0.0 0.0. 89.6. 93.0. 92.4. 94.6. 92.4. 62.0 0.0 0.0 15.0 12.6 0.0 0.0. 65.0 0.0 0.0 15.0 13.0 0.0 0.0. 55.8 0.0 0.0 17.0 19.6 0.0 0.0. 64.1 0.0 0.0 15.8 14.7 0.0 0.0. 61.8 0.0 0.0 15.7 14.9 0.0 0.0. 23.6. 42.5. 12.2. 37.8. 29.0. 0.4 23.2 0.0. 0.0 40.0 2.5. 2.5 9.7 0.0. 3.8 34.0 0.0. 1.7 26.7 0.6. 66.0. 50.5. 80.2. 56.8. 63.4. 23.0 5.4 37.6. 33.0 0.0 17.5. 37.1 16.1 27.0. 27.8 0.0 29.0. 30.2 5.4 27.8. 63.7 1.7 0.6. 36.0 2.0 12.5. 51.0 22.8 6.4. 34.1 11.6 11.1. 46.2 9.5 7.7. 63.7. 36.0. 51.0. 34.1. 46.2. 20.5. 17.2. 29.7. 17.0. 21.1. 6.8. 1.7. 9.6. 1.2. 4.8. 動 の. 学習課題に従事. 次. フ⊂ 間接的活動 認知的活動 の困 容易に成功(ALT・PE) 次難 どちらともいえない 元度 大きな困難・失敗 ALT・PE. A L. T 主運動のALT. −38∼.
(10) 小規模校における「器械運劇」授業の充実・改善. Nα49. なお,今回取り組まれた学習の内容が器械運劇で. 1995.3. その割合は最も少なくなっていた。. あることもあり,「集団的技能練習」,「社会的行動」. 「学習課用の次元」の下位カテゴリーの内訳をグ. については観察きれなかった。また,「その他の運動. ループ別にみてみると,「平均台運動」グループでは. 活動」も観察きれなかったことから,授業中生徒は. 3つのカテゴリーの善が最も少なくなっているが,他. 集中して課題に取り組んでいたものと考えられる。. の3グループではその善が大きくなっていることが 分かる。したがって,この次元を観察することによ. 「教授内容の次元」は「一般的内容」と「体育的 内容」とから構成きれる。この両者の割合は「体育. り「教授内容の次元」だけでは分からなかった生徒. 的内容」が75%,「一般的内容」は25%であるという. の「学習行動の次元」が分かると同時に,種目特性. のが標準と言われている。ふつう,この「一般的内. による練習の方法や「学習資料」の活用,補助の有. 容」は学習の成果と直接的に結びつかない無駄な活. 無などが,グループの学習方法により異なることが. 動であるとされているため,その割合は少ない方が. 分かった。. 「学習課篤に非従事」の下位カテゴリーについて. よいときれている。. しかし,今回対象とされた小規模枚における器械. みてみると,「合間」,「待機」,「課題からはずれてい. 運動と冬季の代表的な学習内容であるスキー授業な. る」の3つのうち,「待機」が平均で26.7%と最も多. どを例に上げ比較してみても分かるとおり,これら. くなっていた。特に「とび箱運動」グループでは40.0. には学習課題の種類や内容と施設・設備,生徒数と. %,「鉄棒運動」グループでも34.0%にも昇っていた。. の関係などが大きく影響を及ばすことを理解してお. この結果は,「平均台運動」のグループと比較して. く必要がある。このため,この数値を固定的にとら. かなり大きな差があることから(種目特性の違いが. えることは確かに現実的ではないが,ALT−PEから. あるため「学習課題への従事」の比率を一様に高め. みた場合,同じ条件,同じ状況の授業であれば「一. ることは難しいにしても),この時間を0.0%である. 般的内容」の割合が少ないほうがよいとされている。. 補助活動などの「間接的活動」に振り分けるなどの 工夫・改善が求められよう。. 2.「学習行動の次元」について. 次に,「教授内容の次元」とは別の視点に基づく生. 3.「困難度の次元」について. 困難度の次元は,「容易に成功」,「どちらともいえ. 徒個人の学習の取り組みを表す「学習行動の次元」. ない」,「大きな困難・失敗」の3項目から構成され. についてみてみる。. ている。その値は「とび籍運動」グループを除いて,. 表4にまとめられているように,「学習課題に従. 上の順番に割合が高くなっていた。. 事」は平均で63.4%,「学習課題に非従事」は29.0% であった。「学習課題に従事」のうちで最も割合が多. 種目ごとにみてみると,まず「容易に成功」につ. かったグループは「平均台運動」のグループであり,. いては,「マット運動」のグループが最も高い割合 (63.7%)を示し,次いで「平均台運動」のグルー. 80.2%を占めていた。最も少なかったのは「とび箱. プ(51.0%),「とび相違動」のグループ(36.0%),. 運動」のグループであり,50.5%であった。. 最後に「鉄棒運動」のグループ(34.1%),となって. これらを下位カテゴリー別に見てみると,「平均台 運動」グループではお互いに補助し合って練習して. いた。. いたことを示す「間接的活動」が16.1%であるのに. 「どちらともいえない」は,「マット運動」と「と. 対し,「とび箱運動」,「鉄棒運動」グループでは補助. び綺運動」のグループでは1∼2%台であるのに対. なし練習のためか0.0%であった。. して,「平均台運動」と「鉄棒運動」のグループでは 11−22%台にも昇っていた。この差は,設定された. また,「認知的活動」では「マット運動」グループ. めあての内容によるものと考えられる。. が37.6%を占めているのに対して,「とび箱運動」グ ループでは半分以下の17.5%であった。. 「大きな困難・失敗」では,「マット運動」グルー プが0.6%と最も低い値であったが,「とび相違動」. 「マット運動」のグループが他のグループより大. きな値を示したのは「学習資料」を活用して課題の. では12.5%,「鉄棒運動」では11.1%,「平均台運動」. 運動を確認している時間が多いことに起因してお. では6.4%と,大きな催を示していた。これは「マッ. り,「とび箱運動」は瞬間的に終了してしまうためか. ト」運動では他の3種目と比較して,どちらかと音 −39−.
(11) 三浦 裕・相蘇 倫朗 えば運動中の動作の修正が比較的可能な場合もある. 台運動」の51.0%,「とび箱運動」の36.0%,「鉄棒. ためと考えられる。. 運動」の34.1%と続いている。「マット運動」と「鉄 棒運動」では約2倍の善があることから,この授業. これらを平均値でみてみると,「容易に成功」の割 合が最も高く,「大きな困難・失敗」が最も低い数値. の場合,「マット運動」での成功が評価される。. を示していることから,「困難度の次元」全体で見れ. 「運動のALT」については,「平均台運動」が29.7 %と食も高い値を示し,「マット運動」が20.5%,他. ば,比較的成功した授業であったと考えられる。. の2種目が17%程度となっていた。この結果より, 4.ALTの結果. 実際の運動全体では「平均台運動」での成功が評価. 表4の最下段が,ALT−PEの結果について表した. される。. 「主運動のALT」については,「平均台運動」と. ものである。ALTは「ALT−PE」,「運動のALT」, 「主運動のALT」の3項目から構成されている。示. 「マット運動」のグループで6−9%と比較的高い. された値は,どのグループにおいても上の順番に割. 数値を示しているのに対して,「鉄棒運動」と「とび. 合が高くなっていた。. 箱運動」のグループでは1%台と低い数値に留まっ. まず,「AqT−PE」についてみてみると,「マット. ていた。. これは取り組んだ運動への単位時間あたりの各自. 運動」で63.7%と最も高い値を示し,次いで,「平均. 表5 生徒の自己評価 単位:人(%). ー40−.
(12) Nα49. 小規模枚における「器械運動」授業の充実・改善. 1995.3. の試行回数も関係するため,比較的高い数値を示し. 目,学習内容やめあてのもち方,学習者の意欲・関. た「平均台運動」と「マット運動」は他の2種目よ. 心・態度・技能レベルなどに影響を受けるため,数. りも一回の試行に時間がかかること,また「鉄棒」. 値のみで授業全休を一律に評価することは非常に難. と「とび箱」運動はパリスッテックな運動要素を含. しいと言わぎるを碍ない。. むことなどが考えられる。. このため,本研究の位置づけ(妥当性)を明らか にするため,本研究で対象とされた授業と高橋らが 行なった報告7)を比較検討することとし,その結果. ⅤⅠ生徒による自己評価. を表6に示した。. 単元終了後,生徒の自己評価による授業に対する 意識調査を行なった。その結果は,表5に示す通り. 表6 ALT・PE価比較表. である。. 項. これらの項目のうち,「友達と協力して学習を進め. 33.5. 7.6. 3.1. 0.3. 移 動. 6.7. 2.0. 22.8. 5.3. 授. 休 憩 0.0. 0.0. 内. 0.8. 0.0. 66.5. 92.4. 37.5. 61.8. 1.5. 0.0. 一 般 内 容. 「もっと技ができるようになりたいと思いますか」 教. マネージメント. 種目によって協力の仕方や内容は異なっていても 「協力関係」に基づいた学習が進められたこと,ま た,VTRによる視覚情報が有効であったこと,そし. 体 育 的 内 容. て今以上のめあてをもとうしていることから,生徒. 容. 項人的技能練習. は意欲的な学習態度をもっていたことなどが推察さ の. れる。. 2.1. 0.0. 8.8. 15.7. 16.0. 14.9. 社会的行動. 0.7. 0.0. その他の運動活動. 0.0. 0.0. 31.4. 29.0. 7.2. 1.7. 習. 22.2. 26.7. 行. 2.0. 0.6. 35.1. 63.4. 16.7. 30.2. 1.6. 5.4. 16.8. 27.8. A 容易に成功(ALT−PE). 32.3. 46.2. L 運動のALT. 13.8. 21.1. 7.5. 4.8. 次 ゲ ー ム. 残りの項目においても,ほぼ金具が「はい」と回. 体操・トレーニング. 答したことから,全体として評価は高かったと言え. フ亡. るが,しかし表の中段の項目で,「いいえ」と回答し. た生徒も1∼2名いることから,それらの生徒に対 しては自主性や積極性,あるいは創造性などの観点. 知的活動. 学習課題に非従事. から,指導のあり方を改善する必要があろう。 学. 最後の設問である「学習の中で一番楽しかったこ とは何ですか」という項目に対しては,全体で15の 回答があった。これらはすべて「技」に関する内容. 合 間. 動. であり,生徒がいかに「捜」に対して関心をもって. の. 学習課題に従事. 次. いるか,またその達成や完成に意欲的であるか,な. 元 間接的活動. どについて何い知ることができる。. 認知的活動. しかし,指導計画の作成において設定された目標 は「技能」項目のみではないので,それ以外の項目 についての検討が必要とされるであろう。. T 主運動のALT. これらの結果を考え合わせれば,生徒の自己評価. 高 棟 本研究. 待 機. られましたか」,「VTRの使用は役立ちましたか」, の3項目については仝月が「はい」と回答しており,. 目. は概ね良好だったと考えられる。 1.「教授内容の次元」. ⅥⅠ他授業とのALT−PE値の比較. まず,「教授内容の次元」のうち,「一般的内容」 に配当された時間は本研究が7.6%であったのに対. 以上のように,器械運動授業の結果をもとに分 析・考察を行なってきたが,ALT−PE観察法による. して.高橋らの研究では33.5%となっており,両者. 各カテゴリーの数値は,対象とされる運動領域や種. には大きな差が見られた。下位カテゴリーをみてみ −41−.
(13) 三浦 裕・相蘇 倫朗. ると分かるように,この差は「マネージメント」か. 「学習課膚に従事」については,本研究の方が2. ら生じたのもであり,本研究においては指導者側か. 倍近く大きな数値を示している。そのうち本研究で. らの指導書が少なかったことが分かる。. の「間接的活動」の数値は,高橋らの研究の6−7 倍にもなっており,その原因についての詳細な検討. 「マネージメント」について,これまでの体育で. はどちらかと言えば,指導者が子どもたちに対して. が必要とされるものの,この結果は学習の進め方に. 精一杯分かりやすい説明やいろいろな指示をするこ. よって「間接的活動」の数値には大きな善が生じる. となど,「指導」そのものの色彩が漉かったが,これ. ことを示唆している。. からの体育では「指導」ということばはなお残るに しても,その性格や意味内容は「指導」から「援助」,. 4.「ALT価」について. 最後に「ALT値」については,「容易に成功(ALT. 「支援」へと変化してきていることを考えれば,指 導者が常に口を開いている授業は改善を余儀なくき. −PE)」,「運動のALT」が本研究ではそれぞれ46.2. れてきている。しかし,指導貢が少ないからといっ. %,21.1%と高橋らの報告の約1.5倍になっているの. て,それだけですぐによい授業と判断することには. に対して,「大きな困難・失敗」の割合は4.8とかな. 当然無理があるため,授業全体の内容などとの関連. り少な〈なっていることから,最終的なALT値の. についても総合的に考慮する必要がある。. 比較では本研究の方が全体的にプラス面での数値が 高くなっていたことが分かる。ただし本研究での数. 2.「体育的内容」. 値は4種目の平均値であることから,種目間での差. 「体育的内容」は「一般的内容」と相対的な位置. をどうとらえるかが間者となり,ひいては今後の選. づけにあるため,「一般的内容」が増加すればそれに. 択制授業自体の課題ともなってくるであろう。. 伴って「体育的内容」は減少することとなる。高採 らの研究と比較して,本研究で対象とされた授業に. Ⅷ VTRの活用について. おける「体育的内容」は92.4%にも昇ることから, この授業のほとんどが「体育的内容」で占められて. 最近,体育授業においても映像と音声を利用した. いたことが分かる。特に,「個人的技能練習」の割合. いわゆるビデオ(視聴覚)教材が利用されるように. が高くなっていた。. なりはじめ,その有用性が注目されてきている。「器. 運動そのものの特性について学習するためには,. 械運動」についても各種のビデオ教材が市販されて. 必然的に「体育的内容」の割合が高くならぎるを得. おり,いくつかの学校で利用されている。. ないが,授業である以上すべての時間がこの内容に. 確かに,今回のような選択制授業の場合,個々の. よって占められるのではない。指導計画のねらいが. 領域において子どもたちが考える「技」のイメージ. 生かされるよう,バランスを取りながら適切に位置. 化を図ったり,あるいは練習方法のしかたを把握し. づけられることが重要である。. たり,また「捜」の確認をしたり,つまずきなどを 解決する方法の一つとして利用する場合には,極め. 3.「学習行動の次元」. て有用な教材であると言える。 しかし,その前提として,子どもたちが自己の状. 「学習行動の次元」のうち「学習課題に非従事」. についてみてみると,両者には大きな差は見られな. 況を正確に把握していなければ,せっかくの有用な. い。本研究においては,下位カテゴリーの「合間」,. ビデオ教材もただの見せ物に終わってしまうことに. 「課題からはずれている」の割合は少なくなっては. なりかねない。つまり,このことは,子どもたちに. いるものの,「待機」の割合が高揺らの研究の約1.5. 問題意識が存在しなければ,ビデオ教材も家庭で見. 倍ほどあり,このことは学習形態によるものか,あ. ている単なるスポーツ番組になりかねないことを示. るいは方法の差によるものと思われる。この時間は. 唆している。. できるだけ減少させたいが,その前提としては学習. つまり,数多くある「技」やすべての種目,ある. の道すじがしっかりと子どもたちに把握され,また. いは全領域のビデオ教材を購入し,それらすべてを. 自主的・意欲的に授業に取り組む態度が子どもたち に身についていなければならない。. 授業で利用することは現実問題として無理があろ う。また,仮にそうできたとしてもその場合には, ー42−.
(14) N(149. ′ト規模校における「器械運動」授業の充実・改善. 子どもたちをビデオにあわせてしまう結果になりか. きを十分生かすことのできる学習内容の設定が必要. ねない。そのような場合にほ,主役になれない子ど. とされてこよう。このための一つの試みが,一般的. もがどうしても存在することになり,子ども不在の. には3年生以上で行なわれる種目選択制授業を2年. 授業になってしまうであろう。. 生から導入し,全学年男女共習,異質グループ学習,. 今回の授業では,撮影された自分の動き(良い点. そして合同で行う今回の授業であった。. やつまずきなど)を生徒自身が確認することによっ. しかし,このような地域の中学生の多くは小学校. て,より自主的な学習活動が展開できることをねら. の時にも異学年合同体育を受けており,年長者と同. いとして,各グループに1台づつVTR機器を設置. じようになりたいと思う子どもがいる反面,年少者. し,グループ内で決められた生徒が一人ひとりの動. はできなくて当たり前というような風潮になってし. きを撮影することとした。場面としては,授業開始. まっては,せっかくの選択制のよきも生かしきれな. 後25分前後である。前述の結果に見られるように,. いことになってしまう。そのためには,1年生につ. 全体の「ALT値」は多かったものの,しかし「主運. いては小学校時における学習内容との関連,また2. 動のALT値」はそれほどでもなかったことから,. 年生では基礎・基本の位置づけと個の意欲・関心・. VTRの活用についてはまだまだ工夫が必要である. 態度との関連,などについて事前に十分検討するこ. と考えられる。特に今回のように僻地校の特色であ. とが必要とされる。また,「個」の状況やめあてなど. る小規模=少人数の授業の場合には,40入学級では. について,より明確に把握できるようにするための. 行うことができないようなVTRの効果的かつ有効. 指導計画や学習過程,指導のあり方などの工夫も必. な利用が望まれよう。. 要とされてくるであろう。. 「個」を伸ばす授業形態の1つが選択制授業であ るとするならば,子どもたちが意欲的に取り組むこ. 2.グループ編成について. とができるように学習環境を整備し,その子どもた. 器械運動における選択制授業の場合,安全に留意. ちの自主的・自発的な活動を指導者として見守りな. し,なおかつ学習効果をより高めるためには,グル. がら,必要に応じて適切な支援・援助をしていく指. ー70の編成方法やグループの力の育成などの点につ. 導計画が必要である。つまり,子どもたちの実態を. いて考慮しなければならない。特に僻地校では,グ. 十分考慮した学習内容の設定が重視されなくてはな. ループ内の成見として1−3年生までが混在する場. らないであろう。その意味で,子どもたちが有効に. 合もあるわけで,個人差の大きなグループをいかに. 利用できるビデオ教材の作成や利用のしかたが今後. して効果的な学習グループとして育成し,その力を. 一層工夫されなくてはならない。. 高めていくのかなどについては,あらかじめ見通し をもったグループ編成が必要である。また,グルー プ学習の理解を深めたり,リーダーの育成と協力な. lX ま と め. ど,学習のスタイルに応じた方法も選択・洗練され なければならない。. 本研究においては,僻地小規模校における体育授 業の充実・改善を目的として,ALT−PE観察法によ る器械運動を事例とした種目選択制授業の効果的な. 3.課題と練習方法の設定. 導入に関する基礎的研究を行ってきたが,残された. 選択制授業の趣旨の1つは,自ら学ぶ意欲を向上. 課題も多い。以下では,その概略について述べる。. させることにある。つまり,「やらされる授業」から, 「自ら進んで行う授業」への移行である。このため. 1.種目選択の方法について. には,生徒自身がいかに自分の興味・関心・能力に. 器械運動の学習においては,1−2年生は必修種. 見合った適切な課題を設定できるかが大きなポイン トになってくる。. 目のみの履修とし,3年生になってから種目選択す るというケースが比較的多い。しかし,僻地枚の場. 今回対象とされた授業は,自己評価の結果に見ら. 合には主として生徒数の関係から考えた場合,この. れるように,ほとんどの生徒が選択制授業に対して. ような実施方法は現実的であるとは言い難い。却っ. 好意的にとらえていることが分かる。しかし,主運. て,生徒一人ひとりの状況に応じた少人数教育のよ. 動のALT値が少なかったことから,中心とされる −43−. 1995.3.
(15) 三浦 裕・相蘇 倫朗. 前述したように,「指導」の意味内容は変化してき. 課題に明確な目的意識をもって積極的に取り組んで. いたかどうか,あるいはVTRの利用のしかたはよ. ているが,教育における「指導(援助・支援)」の意. かったかどうか,などについて再度検討の余地があ. 義がなくなってしまったわけではない。このため,. ろう。. どうしてもついつい個人的技能に目が行きがちな器 械運動の場合などにおいては,特に,「指導」から「支. 4.教師の指導性. 援・援助」へといった授業のとらえ方や指導者の位. 一般的に指導性とは,「所与の知識や技能,あるい. 置づけなどについても見直すことが必要である。. は態度などをいかにうまく教え,分からせることが できるか」,というように解釈することができる。し. 5.評. かし,教師の指導性については,最近いろいろな雑. 価. 今回の授業のように異学年合同授業,全学年男女. 誌などで特集が組まれるなど,にわかに脚光を浴び. 共習,しかも領域内種目選択制授業となってくると,. はじめてきているものの,その意味はさまぎまに解. 当然のことながら,評価とその方法が難しくなって. 釈されているのが実情である8)。そこでここではそ. くる。. の一つの見解として,永島の報告9)を参考にする。永. 本研究では,生徒自身による「自己評価」などを. 島は,以下の3点を上げている。. 手がかりとして,生徒一人ひとりの伸び具合を測定 し,評価の手助けにしようと試みたが,一人ひとり. 1)自発的な学習を引き出し,スタートさせるた. 異なった学習課題への取り組みを評価するために. めの指導性. は,これまでのような相対評価では基本的に対応す. (1)自発的な学習の保障をめぎす単元計画の作. ることができず,絶対評価などの新たな評価方法が. 成. 求められることになる。このためには,「個」に応じ. (2)自発的な学習をとりあえずスタートさせる. た適切な到達・達成(度)目標が事前に,しかも明. ための指導. 確に設定されていなければならないことになる。そ. 2)自発的な学習を維持し,発展させるための指. して,そのことが生徒自身にも正確に把握されてい. 導性. なければならない。. (1)間塔を発見するための指導. (2)問題を抱えている個人やグループへの直接. したがって,学年や種目,あるいは男女差など「個」 に応じた適切な評価基準について検討を行ない,学. 的指導あるいは間接的指導. 3)自発的な学習を整理し,反省することへの指. 習指導と評価の一体化を図ることが重要である。紙 幅の関係上,ここでは評価の4観点について詳細に. 導. この中で永島は具体的に,単元における教師の指. 検討することはできなかったが,評価とは目標と密. 導性の70%を「単元計画」の作成が占めるとしてい. 接な関連をもった授業を構成する大きな要素でもあ. る。したがって,これを参考とするならば,今回対. り,また常に学習者にとって遭元きれるべき意味を. 象とされた授業の成否については,ALT値を一つ. もつものであることを確認したい。. の参考にしながらも,基本的には教科教育の立場に 立ち返り,もう一度「単元計画」なり,「指導計画」. Ⅹ おわりに. にまで遡って再検討する必要があろう。 つまり,器械運動を指導するためには,当然それ. 生涯にわたって運動やスポーツの楽しさを味わ. に関する専門的な知識や技能は最低限必要とされ. い,また運動によって心身の健康を維持・増進させ. る。しかし,その指導がいかにうまくても,あるい. てい〈ことをねらいとしたいわゆる「生涯体育・ス. は上手であるばかりに,子どもたちの自主的・自発. ポーツ」は,今後のわれわれの生活をより豊かにす. 的な活動を抑制・疎外したり,また間者意識をもた. る源泉であると同時に,現在の体育授業に課せられ. ずに「技」のみの「指導」に偏向したり,さらには. た大きな課題の一つであるとも言えよう。. 子どもたちの学習が的はずれの方向へ進んでいるも. 本研究では,このような視点に立ちながら,小規. のであったりしては,授業として成功したとは言え. 模僻地校におけるこれからの体育授業のあり方を探. ない。. るための基礎的研究として,ALT−PE観察法による −44−.
(16) N(149. 小規模校における「器械運動」授業の充実・改善. 授業分析を行い,その結果を中心として教科数青学. 1995.3. うせい,p.27,1993。. 的観点から器械運動授業の充実・改善を試みた。. 7)高橋健夫・岡沢祥訓・大友智,「体育のALT観. このための方策としては,本研究のような手法以. 察法の有効性に関する検討一小学校の体育授業分. 外にも,さまざまな内容が考えられるが,例えば現. 析を通して−」,体育学研究,34,pp.3ト43,1989。. 在注目されている新しいシステムとしての選択制や. 8)雑誌「学校体育」1993−94年を参照。. 男女共習,異学年合同授業や異質グループでの学習,. 9)永島惇正,「単元計画での教師の指導性」,学校. あるいはスパイラル型の学習過程,そしてTT方式. 体育,45−4,pp.14−16,1992.. などは,既に小規模校では実践済みであり,ことさ ら目新しいシステムでもない。 つまり,表面的なシステムに惑わされる授業改造 ではなく,ましてやシステムに生徒をあてはめる形 式的な授業づくりでもない。重要な点は,そのよう なシステムの背後に横たわる教育学的な意味につい て,まず理解を深めることである。これまで小規模 僻地枚における体育授業は,どちらかと言えば,マ イナス面での評価が多かったが,しかし小規模僻地 校であるが故のよさを十分に引き出し,状況に適切 に応じた授業づくりが今後とも望まれよう。. 註および引用・参考文献 1)文部省,「中学校指導書(保健体育編)」,大日本. 図書,pp.1−3,1988。4点とは,①「体操」の領 域については,体力を高めるための運動の学習が 一層効果的に行なわれるよう内容を改善するこ と,②「格技」の領域については,名称を「武道」 に改め,我が国固有の文化としての特性を生かし た指導ができるようにすること,(卦自然とのかか わりを深める観点から,地域や学校の実情に応じ, スキー等を積極的に取り扱うなどの改善を図るこ と,⑥集団行動については,基本的な行動様式を 重視し,その取扱いについては,各運動領域にお いて一層効果的に指導できるようにすること,で ある。 2)高橋健夫,「生徒の体育学習行動の観察」,学校 体育,42−9,pp.133−139,1989。. 3)高橋健夫,『新しい体育の授業研究』,大修館, pp.177−184,1989。. 4)富良野市立布礼別小学校・中学校,『研究紀要』, Pp.63,1991。 5)宇土正彦,『体育科教育法講義山芋土正彦他(編. 著),大修館,pp.3−4,1992。 6)杉山重利,「2体育科教育の新しい方向」,『新・ 体育科教育』,杉山重利・園山和夫(編著),ぎょ −45−.
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