• 検索結果がありません。

<資料紹介>大西家蔵番外謡本について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "<資料紹介>大西家蔵番外謡本について"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

-114-資

西

は     じ     め   に 番外謡曲の研究-特に資料の発掘 - については'丸岡桂'斎 藤香村'田中允民らによって精力的におし進められてきた。わたく し白身も番外曲に対して興味を抱いてお-'そこに見られる引用詩 歌についての調査を発表したことがあるが'このたび'大阪におけ る能楽界の名門大西家1同家は、中興の宗明が岩井家の門人であ ったところから'岩井派の芸銃を伝えてお-'その文書の重要なも の を も 所 蔵 し て い る と の こ と で あ る 。 -  の 謡 本 を 一 見 す る こ と が で き た の で ' そ れ を 紹 介 す る こ と に し た い と 思 う 。 も っ と も ' 披 見 を許されたのは番外謡曲のみであ-'しかも零本ばかりではあるけ れども'番外曲の研究にい-ぶん資するところがあるように思われ る の で ' こ こ に ' そ れ を 取 -上 げ る こ と に し た の で あ る 。 1   第   一   種 二番綴二十四冊四十八番'茶色表紙' 中央に短冊型の題算があ -'六行書である。内題もあり'一部は原本に存在した奥書を転写 している。その曲名を示せば次のとお-である。(番号は仮に筆者 が附した) -  飛 鳥 寺   悪 涼 太 2   座 論     小 林 3   鄭 懸 山 4   御 崎 5   連 獅 子 6※法海寺 7※程々前 泣不動 吉野琴 文学 五 筆 橋弁慶前 8※笠 9   蛙 1 1 ・ : 」 龍 〓※経盛 1 2   香 椎 1 3   岡 崎 14 吉野 ※明静 玉津島 和国 神崎 逆 鉾 鈴 木 真名井原 I n ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ : ・ ・ ・   一 . I .       ・ 雷 一

(2)

-115-5 1 / 0 1 7 1 8 I 9 =   H 武 文     馬 融 住吉詣※貴布繭 空 蝉     総 角 満 仲     女 沙 汰 草 薙     飛 雲 0 2 1 2 2 2 3 2 雪 鬼       恋 松 原 侍従重衡※小倉御幸 鞠         北 山 馬 乞       真 田 この中には'現行曲 - 「逆鉾」 2 4※雪頼朝  降魔 「橋弁慶前(智之巻)」 「住吉 詣」 「満仲」 「草薙」 「飛雲」 - も交ってお-、その他も比較的 近い番外曲が多-、僅かに※印を附した曲が稀曲としで見出される に過ぎない。(※印を附した曲は ﹃古典文庫﹄に'その他の曲は ﹃謡曲叢書﹄などに翻印されている) 書写年代について述べると'その奥に' 明和五子十一月中旬御本写(「飛鳥寺」) 明和五子十一月仲旬御本写(「鄭懸山」 「小林」) 明和五子十一月下旬御本写之(「橋弁慶前」■連獅子」) 明和五子十一月下旬に御本写(「法海寺」) 観茂公御秘本ニテ明和五子十一月下旬御本写(「御崎」) 明和五子鹿月上旬御本写之(「五筆」) 明和五子臓月上旬御本写(「笠」) 明和五子鹿上旬御本写(「遅々前」) 明和五子鹿月上旬御本写(「蛙」) と あ -' ま た ' あ る 本 の 奥 に は ' 明和六丑正中旬御本写之(「和国」) 明和六丑正月仲旬御本写之(「龍」) 明和六丑正伸旬写之(「神崎」) 明和六丑正下旬御本写(「逆鉾」 「岡崎」) 明和六丑二月上旬御本写(「真名井原」) 明和六丑如月上旬御本写(「武文」 「馬融」 「吉野」) 明和六年二月中旬御本写(「玉津島」) 明和六丑二月下旬御本写之(「貴布爾」) とあるから'これらの書の成立は明和六年以後であることは明らか であ-'「観茂公御秘本」もし-は「御本」を写したものが'現在 の大西家本第一種ということになる。観茂公というのは、素謡の創 始者たる服部宗巴(福王茂兵衛盛親)か、その子息なる服部宗碩(宿 王茂兵衛盛信)かのいずれかと考えられるがへ この本の書写年代も しくは血脈関係(後述)から推して'おそらく後者のことであろう と思われる。 それでは'「御本」 というのはいかなる書物を指すのであろう か。「観茂公御秘本」を指してかく呼称する場合ももとよりあり得 るが'次のような奥書によればTかならずしもそうとは限らないよ うである。 観佐公観茂公伝授正本 安 一 写 之 ( 「 総 角 」 ) 観佐公同茂公御秘伝正本之写 千時宝永二年四月廿一日 安三公御本ニテ写之 ( 「 小 倉 御 幸 」 ) 観茂秘本写  安一改清(「岡崎」) 観茂正本写  安藤氏改之(「雪鬼」) 右観茂公正本以写之  又安一本ニテ見合改(「飛雲」)

(3)

-116-ここでいう安藤氏もしくは安三公'安1と称せられている人物は 誰かというに'多分「福氏門人録」(野々村戒三氏著﹃近畿能楽記﹄ による)に見える安藤一融(通称三郎兵衛) のことではなかろうか と思われる。また'観佐(左)公というのは'十一代観世大夫左近 重清もしくは十二代左門重賢のいずれかであろうが'重賢は隠居後 京都に居住していた、ので'後者の方によ-蓋然性があるように思わ れる。 安一本もし-は安三本というのは'「観佐公同茂公御秘伝正本之 写」なのであ-'「総角」 「小倉御幸」はそれを更に転写したもの であろうLt 「岡崎」 「雪鬼」は観茂正(秘)本の写しを'安藤氏 (安こが攻めた本の'また'「飛雲」はそれに安一本によって校 合を加えた本の'同じく転写本だと考えられる。 では、原本の書写された時代はいつ頃の事であろうか。 「小倉御幸」は前掲の奥書に続けて マ マ 又永禄十二年丁丑 (筆者註'永禄は元禄の誤か'また丁丑は元禄十年にあた る)十二月中旬竹村甚公ニテ広茂 又享保十乙巳十月中旬命子息之通令書写 教献 とあり'「悪源太」には' 右観茂公秘本ヲ以テ元禄十一年戊寅葉月上旬写之  奏広茂 又享保六年丑辛六月甘九日改之  釈教献 又同年八乗卯中村氏改清之 又観世織部公ノ正伝卜見合セ また'「鈴木」には、 観左観茂正本ニテ写之  元禄十四歳巳壬五月甘二日祐富書 さ ら に ' 「 五 筆 」 に は ' 観世弥公 観佐公観弥大夫公同茂公正本伝授  享保十二年九月甘二日習 之 と記されている。 広茂'教献ならびに祐富はどういう人物かよく分らない。観世弥 公もしくは観弥大夫公と称せられている人物も'いずれ観世家もし -は福王家の血統に繋がる者であろうが、これも誰を指しているの か明らかではない。中村氏は竹村定勝の門人であった中村六右衛門 とも'小川高徳(服部宗項の弟子) の門下たる中村登仙(弥三右衛 門) とも考えられるが'おそら-前者のことであろう。観世織部公 というのは十三代観世大夫織部重記(治章また滋章とも) のことで あるし'また'竹村甚公は上記の竹村定勝(甚左衛門) のことであ ろう。 これらの奥書によると'原本は江戸中期に書写せられていたこと にな-'観佐正本もしくは観茂秘本'ないしはそれに基づ-写本 に依拠、もし-は参看しっつ'後人が書写したものが'現在の大西 本第一種であろうと推察される。 かように'大西本第一種は'曲によってその性質を異にしている けれども'いずれにしても京観世の系統を引いていることは確かで あ-、零本群ではあるが'「御本」の本文を比較的忠実に伝えてい る点が貴重だといえる。 書写した人物の不明な点が残念であるが'臆測を迂しうすれば'

(4)

117 既述のごと-'岩井家の伝書の一部が大西家のものとなっているか ら'あるいは岩井家の人によって書き写されたのかも知れない。ま た'大西家の中興の祖が岩井家の門人であったことから'あるいは 大西家の誰かが写したものかも知れない。これらの詞章は'﹃謡曲 叢書﹄'﹃古典文庫﹄の本文と比較すると'まま小異が見出される が'それほど大きな異同はないように思われる。 2   第     二     種 二番綴二冊四番 卜 薄     露 2   隠 岐 院   安 之 字 黒表紙で、中央に曲名を記した退寮があ-(題寮の用紙は両者異 な っ て い る ) ' 七 行 書 。 か つ ' 薄 白   露 白 ' 隠 岐 院 赤   安 之 字 白 と いうふうに内題がある。而してへ白'赤が何を意味しているかはよ -分らない。これらは江戸末期の筆写と考えられ'まま校合が加え られているが'﹃謡曲叢書﹄の本文と比較してほとんど相異は認め られない。 3   第     三     種 一番綴六冊六番 浜 平 均   鞠   小 倉 御 幸   大 木   稲 舟   松 浦 鏡 左肩に曲名を記した題算があ-(「浜平均」'「鞠」の二曲と「小 倉御幸」'「大木」'「稲舟」の三番とは超寮の大きさが異なって いる)'六行書である。いずれも内題はない。ただし'「松浦鏡」 はひどく汚損している。そして'「大木」の奥に 元文三歳四月十五日写 とあるから'この一群の謡本は恐ら-元文三年頃の成立と考えてよ さそうに思われる。活版本(﹃謡曲叢書﹄'﹃古典文庫﹄)と比較す るとき'「鞠」'「小倉御幸」'「大木」の三番は小異が認められ るに過ぎないが'「浜平均L t 「大木」の二番は相当違っている。 すなわち、前者は詞章がかな-省略され'また'後者は問答の部分 (ワキの名ノリあとのワキと狂言との問答'申人後における狂言と ツレとの問答)が記載されているところが活版本とかな-相違して いる。 4   第     四     種 一番綴五十二番五十二冊'他に曲舞一冊。(「久世」と超し'湖 の 八 景   源 氏 目 録   座 敷 飾   浜 荻   高 野 巻   明 ば の   地 主   五 常 の 八曲が収められている」) 左肩に題算があ-、本文は七行書で'内題も存する。書写年代は 近世末期のように思われる。 ○明石上 △足引 ○生捕盛久 ○石神 □市原小町 ○雲林 院 小 町   ○ 猿 通 寺   ○ 小 倉 御 幸   △ 御 騎 乗   △ 景 季   ○ 笠 寺 ○革袴 ○久米 △黒池竜神 □恋妻 ○小式部 ○小侍従 ○ 金 毘 羅   ○ 鷺 之 前   ○ 更 科   ○ 島 廻   □ 十 番 切   口 上 官 太 子 □西岸居士 d先帝 ○袖の湊 ○卒都婆流 ◎高安小町 ○

(5)

-118-龍 崎   ○ 誕 生 寺   □ 華 自 然 居 士   ○ 横 切 曽 我   □ 三 日 主   ○ 人 丸 ○富士見小町 〇二本杉 ○豊原寺 ○星降 ○細谷川 ○法華会 ○母衣 △湊川 ○夢想松風 ○娘之草茎 山吹 ○ 山 本 小 町   口 八 幡 弓   ○ 幽 霊 小 町   ○ 雪 女   ○ 良 弁   口 六 角 堂 □和国 右の五十二番のうち'○印を附した三十五番は﹃古典文庫﹄に' △印を附した五番は﹃新謡曲百番﹄に'□印を附した九番は﹃謡曲 叢書﹄に'また'◎印を附したl番は﹃謡曲評釈﹄に翻刻されてい るから、「山吹」だけが未刊曲ということになる。(﹃古典文庫﹄に おいては、「石神」は「石上」'「市原小町」は「清水小町」iJし て見え,「星降」は 「明星山」 に一致し'「山吹」 は ﹃新謡曲百 番﹄所収﹃疑冬﹄とは別曲である)なお、「山吹」を除く五十一番 の曲名はすべて 「吉田本外題集」 (古典文庫﹃未刊謡曲集三﹄所 収) に見えてお-'それを示すと'次のようになる。 六百番目 -上官太子 2 鷺 之 前   雲 林 院 小 町   小 倉 御 幸   猿 通 寺 3高安小町 4 山 本 小 町   革 袴 6二本杉 8島廻 那須(母衣) 富士見小町 9卒都婆流 川八幡弓 倭国 ‖六角堂 1 2 湊 川 1 3袖湊 横切曽我 1 7 夢 想 松 風 七百番目 -先帝 更科 四季(雪翁) 2人丸 小侍従 5花自然居士 8西岸居士 ‖一言主 八百番目 2金昆羅 3法華会 5 恋 妻 . る笠寺 7景季 9豊原寺 川朗弁 〓幽霊小町 市原小町 生捕盛久 1 2 小 式 部 13鵜之草茎 黒池龍神 14久米仙人 石上 15騎乗(御駒乗) 誕生寺

(6)

-119-\ ! ・ . -I -・   ー     ト ー ー ・ 1 ▼ -, . -I ・ ・ ・ モ ー -・ ・   -・ t     . 2 0 十 番 切 九百番目 1 6 細 谷 川 20明星山 竜崎 これによると'第四種本は零本ではあるが'「吉田本外題集」にい うところの六百番目ないしは八百番目に属する曲を主として書写し たもののように思われるから'もとはそれぞれ百番ずつ纏っていた ものが後に散逸したのかも知れない。さらに、第一種本の大部分が 三百番目もし-は四百番目の中に見出されるのに対し'第四種本は 稀曲が多い。﹃未刊謡曲集﹄の解題によるに'元文写本を除いて' 伝本が'「笠寺」および「豊原寺」においては僅か一本、「石上」 および「細谷川」が二本'「良弁」 「娘之章茎」 「幽霊小町」が≡ 本'「竃崎」が四本'「革袴」 「鷺之前」 「明星山」は五本'「誕 ● 生寺」は六本に過ぎないから'これらの曲を含む第四種本は資料的 に重要な存在だと言うことができよう。 以上で大西家本の紹介を終えるが'零細な写本群であ-'しか も'「山吹」を除いて'未翻刻の曲を有しないとはいえ'由緒正し い京観世の本文を伝え'かつ'稀曲をかな-包含している点、番外 曲の研究資料として - 特に京観世の伝統を探るうえに - 重要な 位置を占めるのではないかと思うのである。 次に'大西本番外謡曲第四種のうち'「山吹」 (未刊曲)'「市 原小町」'「雲林院小町」'「高安小町」'「富士見小町L t 「山 本小町」'「幽霊小町」の七番を原本通-に覆刻することにする。 節附や特殊記号は省略したが'詞の所は「'節の所は「を付けて区 別した∵(原本は\のみであり'それが原本にない場合もあるが' すべて「または「を附しておいた) 山       吹 次 第 「 山 よ -し ら む 朝 ほ ら け ' -\ ' 春 の 心 そ の と け き ワキ詞 「是は五条の三位俊成卿のゆか-の者にて侯'去子細有ッてか様の メ L ク 一 姿と成りて候'我此程ハ南都に侯ひて'霊仏霊社を拝-廻-て侯'

,

F

h

,

,

,

,

の斜鷹雲端にきへ'二月の余花ハ野外に飛'芙やのとけき旅の 空'遠山霞む詠迄'麓ハそこと兄へわかて色の千種も白砂に'芳野 の山を跡に-て 下寄「雲井や遠き雲井坂'はるかに鳥の鳴音か ト ヾ ロ な   上 帝 「 轟 き の 橋 の ゆ き け た 名 に し お ふ ' -\ 、 水 の 流 も い さ ヱ ヒ ト ツ きよき'いくたひぬるゝ墨染のむかひの見詠の一松'夕いる雲の絶 とや井手の里にも着にけり-\It 詞「急候程に'是ハはや井手の 里に着て侯'此のあた-に暫休らハはやと思ひ候'や、荒ふしきや イ ク . ン 岸の山吹春風ふきて異香薫す立よ--れハ'色香妙にして常の山吹 タ に あ ら す ' よ し あ る 花 と 見 へ た -' 一 枝 手 折 ハ ヤ と 思 ひ 侯   シ テ 詞 々 / ア マ 「なふ-1其山吹ハ何しに手おらせ給ふそ ヮキ「さん候余-に色 香妙に兄へ侯程に一もと御ゆるし侯へかし シテ「是ハ楯にて候へ ム ゲ 共'それハ金しべ銀しへとて名ある花そかし無下になおらせ給ふな メ イ よ ヮキ「拐ハ隠れなき名草を; 只いたつらにおらん事のつたなさ よ去なから'なべてならきる女人の御身として、上「此花の謂をの

(7)

-120-ト イ   ( ト へ セ ト モ )       ( マ マ )                     タ 給ふふしききよ シテ詞「今更問給ふもおろかなれ'能と案して手 ト シ ナ リ おらせ給へ ヮキ上カ、ル「実今思ひ出した-'俊成世にまし/\し 折からも'弥生の比ハ朝なく'此玉川に駒とめて'御詠寄様∼有 しとなり シテ「中Nなれや其山吹ハ'朝日にむかへハ金んへと名付 ヮキ「桜をさそへハ銀しへとなん'名付給ふと聞しなりーシテ「そ れに付ても猶と深さ心あれとも、あらく謂を中也 「芙ゝ、それハ 去事なれ共'此春ハ都恋し-思ひ立'上「此玉川に立寄て シテ→長 チ リ 閑き水の春風に'敬う-花にあこかれて ヮキ詞「心ならすも手折 な -' ゆ る さ せ 給 ひ て 1 も と ゑ さ せ 給 へ か し   ( シ テ )   「 い や / \ 猶 もつたなさ御言の撃や'桜にまさる山吹の'色香も深-有物を ヮキ上カ、ルヘムしきや桜に増る七の、謂ハいか成事やらん シテ詞「山 セ イ ( マ マ ) 吹の寄ハ代との帝の御製にも又其後定家の苛に'下「匂ふ之春ハ暮 行山吹の ヮキ詞「花こそ花の中につらけれと読たれは シテ上へ匂 ひも色ハ桜に限るへからす 上苛「桜にも増る匂ひの山吹ハ'く' こかねましりのいやよひや、中JV見るに朝日影'金しへと詠むもこiJ アカツキ ハりや'まして暁の'露分おふる白露に色香うつろひて銀しへと見 る も お と ら ぬ ' 心 哉   -    ら キ 詞 「 如 何 に 中 へ き 事 の 候 東 に 当 っ て森の木立の兄へ候ハ'如何成所と申候そ シテ「あれこそ多賀の山 候 ワキ「又こなたに当-て見へたるハ承及たるつ∼さの原にて侯 か   シ テ 「 申 ≧ の 事 つ ゝ さ の 原 に て 候 ' 是 に は 三 つ の 名 あ -つ ゝ さ の 原 ' 又 岡 と も 山 と も 申 侯   ワ キ 「 さ ら ハ 御 物 語 侯 へ   シ テ 「 語 -カ リ 一 り まいらせ候へLtまつ家隆此原を詠めて'下「たが里につゝきの原 の夕霞'詞「煙も兄へハ宿はからましとなん、又光俊の御詠に'い かにせんつゝさの岡のくすの葉の'うら-て後ハ又も帰らす山と詠 メ イ カ せし名寄もあり'かの後九条の内大臣よみ給ふハ'上「あら磯のつ ヲ チ カ タ ゝさの山は風越て'遠方人にか-る白浪'詞「かやうの名寄も聞参 らせ候よ ヮキカ、ル上「やさしやな女性の御身として'か程委き物 語'詞「又左。ノに見へたる流れハいかに シテ「此玉水のなかれの すへなれハ'玉川のなかれと申とかや ヮキ上「猶ときけハ面白や' 原 と 岡 と   シ テ 「 山 も 層 っ ゝ さ の 里   上 岡 「 風 通 ふ っ ゝ さ の 里 の 水 底ハ' -'なかれも春の夕闇暮'匂ひも同し梅か香の'詠ことな ∫ る気色かな'きなきたに御僧よ'夢まほろしの井手の里t Lはし休 ら ひ 給 へ と て 範 が -れ に ' 成 に け -く     中 人 シ カ -    ワ キ 上 司 チ 「夜もすから塵のもとに旅寝して'-'散る山吹も妙なれや'法 のはなぴらかすむ夜に月諸共に此経を'読詞するこそ'有難き/\ 言イ不遇 シテ下「荒有難の御経やな' 荒有難の御経やな (ママ) 上「此御経にひかれて'悲情無心の草木迄も'法の心を悟-つゝ' 悉皆成仏の粧なるへし  上ノル「されハにや'今宵の月は晴もや ワビ らぬ'花にうつろふ下影ハ'申∼俺しき草のときLt篠のうちに詠 シ ン カ ウ る事の恥かしきよ  ヮキ上カ、ル「夜も深更の春の空'まとろむ隙 もなかりし内に'御経たつとむ声す篭り'如何成人にて有哉覧 シテ 「今ハ何をかつ∼むへき'我山吹の精成か'読詞の声の有難さに' 御僧にま兄へ申さんと'是迄顕れ釆-た- ヮキ「扱ハ山吹の精に てましますかやへ 詞「それに付ても俊成の'此玉川にて御遊の有 様'上「委-語-おはしませ シテ詞「実・∼昔を恩へハなつかしや' 歌の心も世にこえて'御齢も弥増-て ヮキ「なべて都の人・∼に

(8)

- 121一・・・・・一 シテ○化ものいわぬ習ひなれ共 ワキ「謂を語る シテ「春のそら 上岡「長閑しな流れす∼しき玉川の' -'俊成の御在世の昔を 語る恥かしや'凡心なき'草木迄も今さらに',御法をとなふち-の 縁'夢はし覚し給ふなよ夜と共にやすらひおはしませ  上ロンギ地 「月影霞む春の夜の'-1'まかきしハ - あれ増る'流れにうつ l ヽ ヽ る花かつら花山吹の御姿を シテ上「恥かしや我かふるもの姿とハ、 有しに替る章の魔t Lはし休らひ給へかし 上地「玉川の詠絶せぬ 折とハ シテ下「きしの蛙も心せよ 上地「水底す-て面白さ、花の 姿よ我ならん シテ「さらハお僧にまみへつゝ仏采をゑんや井出の 里 下同「詠めつ∼-1見るに心もあこかれて'霞隠れのうす衣袖 ヨ ソ ホ もつゆけ-ぬるゝ粧ひ  クセ下「弥生すき春もなかはに暮ゆけハ、 きそふさくらハ'ちり過て草の庵や夜の雨'山郭公待貝に'空なつ かし-鳴渡'卯の花さけるしら波に'打よする気色迄春の名残とお も は ゆ る ' き し の か き ほ に 咲 乱 れ ' こ か ね ま し -の 山 咲 ハ ' い わ ぬ 色とやとふ人も'なき山影もしたハれて'大宮人も心あらハ'此夕 -れ ハ い か な ら ん   シ テ 上 「 来 て も 見 よ ' 春 風 ふ か ハ ち -ぬ へ き ナ ハ シ ロ 同「駒のあしな-す∼し-も'浪がくれ鳴蛙なさけを知るや苗代の、 水 せ き あ へ す と -  に ' 花 を ' 手 折 り く ル と 行 き て 見 よ や 井 手 (ママ) のさと'俊成の詠こそ今に恋しき姿な-'又秋の詠には'道こそな け れ 思 ひ い る ' 山 の 奥 に も 鹿 鳴 キ て ' 峯 の も -ち の 日 に そ ひ て ' も ろ-なり行な-たとも、か様の御詠寄迄心に訂かせ口にいふ シテ上 「後鳥羽の院の御字かとよ'同「ためしもまれ/\の年のよハひ も'よにこえて九十のかきん給ハる山人の'折袖にはふ菊の露、打 払ふにも'千世も八千世もへにけな物とゑい-よにも'有難かりし 行 末 を ' 今 ま ほ ろ し に こ た へ つ ゝ ' 苗 し へ を 思 ヘ ハ そ ゝ ろ に 灯 る ゝ 訣 か な   下 地 「 駒 と め て   マ イ   シ テ 上 ワ カ 「 駒 と め て ' 猶 水 飼 ん 、 山吹の花  上岡「花の露そふ井出のしから-井手のしからミいて のしから- シテ下「夢の範もほの - と、下同「夢のまかきもほの く と   シ テ 上 「 山 吹 も ま ほ ろ し も   上 岡 「 入 相 の か ね の 音   シ テ 下 「夕日ものとやかに 上岡「鳥もねくらをあらそふ折から'つきせ ぬ詠めや敷嶋の'遺しるへせん、御僧よ、遺しるへせん御僧とまた まかきに立より'夢の苦に、成にけ-市原小町 音羽小町トモ ムネ 次 第 「 摺 り の 外 の 心 を ハ ' -' 胸 な る 月 や 澄 す ら ん   ヮ キ 詞 「 是 ハ陸奥衣の関より出たる僧にて候'我末都を見す侯程に'此度思ひ 立 都 に 上 -候   道 行 蒜 路 よ -猶 旅 立 や 乱 が け く , 此 夕 碁 の 草 カ ウ ロ 枕'鐘をしるへに起馴て行路進に隔来て'名にの-聞し是そ此,清 水寺に着にけり-∼' 詞「急候程に'清水寺に着て候,心静に参 詣申さハやと思ひ候  サシ「夫救世観音の御誓ひ'慈悲第1と聞 物を'増てや多年の願望空しからんや、-ち-なき世を御意-,栄 有難や候,詞「又是成は承及たる音羽山の滝なるへし,芙恥鮎rG カ シ コ サ ス ラ イ 小野の小町'笈彼処を待得此滝を詠居て'下「何をして身の徒に老 ズサミ ぬ覧'滝の気色ハ替らぬ物を'詞「か様に口号給ひし事'今の様に 思ひ出られて候,下(fVE痛ハしや侯 シテ詞「禦あれ成御僧ハ何 事を仰候そ ヮキ「是ハ遠国方の僧にて侯'此所始て1見仕候,古

(9)

覗 の 詞 水 〝\ の し

妄哀ら

l r 共 せ 一差蔓

三二三

'C'思 世 ひ -122-=         -    =   1       1                     ズ サ へ小野の小町の此滝にての詠苛を'思ひ出られ口号-侯 ヤ サ 試しの旅人や'苛の心の奥深き'小野小町の古へを、忍ぶ草の露の コ ナ ツ カ 世 に 、 住 か ひ も な き 身 な か ら も ' 去 り 来 し 跡 ハ 懐 し や     ヮ キ カ 、 ル 「けに理-や誰連も'哀をそふる夕間碁に シテ「露置ク草の ヮキ カ 〓 ノ ソ メ 「 仮 初 に   シ テ 「 お 僧 に ま -へ 申 事   ワ キ 「 是 も 一 樹 の   シ テ 「 縁 な らすや 上岡○哀宋音の花の香をとめて'-∼'匂ハぬ袖を歎-身の ウ ヅ ミ ノ ボ 胸の埋火消やらす'富士の煙と立登-'行ゑも知ぬ我力思ひ忍ふ姿 アタ も 、 恥 か し や -\     ヮ キ 詞 「 い か に 女 性 に 尋 申 へ き 事 の 候 ' 此 辺 ム -に市原野と申所'又小町の墓所なと知。し召候ハ∼'委-教へて 袷-侯へ シテ「童も市原野辺に住侍ふ'又是よ-北山本に小町の シルベ 墓所の侯'御道指南帝へLt上「此方へ御出おハしませと、野を分ケ 衣日も既に ヮキ「暮ると思ふ シテ「松かねの  上岡「市原野辺 の露深き'くIt跡のしるしの名さへ世に'消果しなき跡を'人に 語らせ給ふなよ、小野の小町ハ我也と'夕への空もかき暮て有し姿 ハ ' 矢 に け -\     ヮ キ 詞 「 拐 ハ 唯 今 の 遺 し る へ せ し 女 性 ハ ' 小 野の小町の幽霊成そや'上「いざや御跡弔ハんと  上寄「幾年月 を吉塚の'く吹キ来る風も身にし-て'裏を添る旅枕重ねて夢を 待 居 光 -く     後 シ テ 下 「 秋 風 の ' 吹 に つ け て も あ な め -ト 、 小 野とハいはし'薄生け-  サシ上「荒有難の御弔ひやな'恩へハ 深き宿縁也、猶も法味に引れつ∼'罪障をまぬかれん其為に'今又 (ママ) か様に見∼ゆる也  ワキ「不思儀やなそれなから'見しに替れる ネ ハ ン ト ク ダ ツ マ サ 英姿、拐ハ小町の幽霊威かや'本来成仏ッ生死淫楽'得脱正に疑 サ ン ゲ ひなし'詞「去なから苗への御事俄悔に語-給へ'猶N御跡を弔ひ シテ「荒 . サ カ 侯へし  クリ同「それ若-盛ん成し時ハ色深-'人の思ひを身に 講て'文玉マ章の数∼に'心を尽す'其中に  サシ「殊に思ひ深 草の四位の少将の'同「其熱心の身に報ひ'物の化と成り狂気せし ア サ マ シ ナ カ バ 事 t L バ く 語 る も 浅 猿 や     ク セ 「 比 ハ 弥 生 の 半 に て ' 梅 の 名 残 ア ラ ソ に桜木の'色香静ふ栴よ-'春風誘ふこすのひま、深草の少将ハ' 小町の粧をかいまみしよ-玉の緒も'消なん物を乱れ髪ゆひよるへ くもよすがなく'シテ「責て思ひを現にも' ひよ-'便-求て玉章のいつ迄迫か墨衣' ヅ ヨ 沈む身を'心強-も偽を'誠と思ひ九十九夜'1夜 待 タ と思 の'はかなく消し少将の'其怨念の今更に身を苦しむる浅猿や 下地「去にても マイ シテ上「去にても'何か款かん露の身を ア ン ヤ 上岡ノル(,心とむるゆへ迷ひの雲霧に、真如の月も闇夜そかし'今又 ウ テ ナ お僧の鹿遇に引れ'胸の蓮の開-る花の、台に至るや極楽の、-∼' サ ア ト 歌舞の菩薩と成にけり 雲林院小町 ヮキ詞「是ハ文屋の康秀にて侯'籾も小野小町ハ過し比父良美にお イ ン くれ、中陰の程ハ紫野雲林院にか-に居所をかまへ'物わびし-冒 を お く り 申 さ る ゝ 由 承 侯 間 , 立 越 と ふ ら ひ 申 さ ハ や と 存 侯     道 行 ト 「行末も同じ都の内外にて'-1、かげ物ぶかき今宮も猶よそにし てしめのゆき'紫野行程もな-、はや日ぐらしのさためなき雲の林 に着にけ-く  詞「急候程に'雲の林に着て侯'是成腐りにて 有げに侯'いかに誰か有 トモ「御ン前に侯 ワキ「康秀か参りたる

(10)

・.・・ 123 -由案内を申候へ トモ「いかに案内申候'文屋の康秀の御参-にて 侯 そ れ / \ 御 申 候 へ     シ テ サ シ 「 さ の ふ も く れ け ふ も む な し -杉 の イ ヲ ウ ト 庵 に ' あ す 又 か -て や あ -ぬ ら ん ' 世 を さ る 者 ハ 日 々 に 疎 し と か や'我は夢にも現にも'なき人こふる'滑かな'詞「や'外面に人 ヲ ト 音の聞え侯'誰にても出て見て来り侯へ ッレ女「畏て候'誰にて イ 御入候そ ヮキ「是ハ文屋の康秀にて候か'御住居とふらひの為に イ 参-て候'とく - 御申候へ ッレ女「いかに中上侯'御ン住居御ン とふらひの為康秀の是迄御ン出にて侯 シテ「何と康秀の御ン参りと や ' は や こ な た へ と 申 侯 へ   ッ レ 女 「 さ ら ハ 此 方 へ 渡 -侯 へ   ヮ キ ゲ ン 「久し-見参にいらす侯'籾も良夫卿の御事世の習とハ申なから' シ ウ シ ヤ ク 御愁傷きつして侯 シテ「其御事にて候'遠さ雲ゐを隔て侯へハ' スム 下クドキ「いたハ-給ふもいきしらず'此年のくれ程には'必上-袷 ふ へ さ と ' 長 さ 月 日 を か ぞ へ し に ' 世 を さ -給 ひ し 音 信 よ -' い せ ナ ガ をの海士の徒に'舟流したる心地にて'よるべなき身のわひしきよ ヮキ詞「御歎尤にて侯'我等も落涙仕-て候'拐此程苛をハ御 ヨ ミ ヽ ン読候ハぬか'一首承度ク候 シテ「此比ハうさにたへたる忘れ草' モ ミ チ いふことの葉もなけれとも'思ひをのぶる便りそと'庭の紅葉にた く へ つ 三   下 「 あ ハ れ い か に 紅 葉 ち -行 跡 も な し ' 雲 の 林 の ' 夕 -れの風 ワキ上つ衷いかに'もみち散行跡もなし'雲の林の'タ タイ 碁の風'詞「あら珍らしの御心ばえや'花もこの-の対して候よ' (ミセケチ) 我等も思ひ寄りて候程にノ吟して候へしそれにて御聞候へ'下「色 ナ ミ ダ に出ヅる雲の林のもみちばに'詞「露を滑のをきまがひけん シテカ ナ -ダ 、ル「実おもしろき心詞'もみちにおける露よ-も'袖の滑ハ紅に (ママ) ヮ キ 「 夕 日 き し 入 ル 窓 の 内   シ テ 「 こ の は ら る く る 色 々 に   ヮ キ ヱ ン ジ 「常なき世ぞと人をいさむる シテ「遠寺のかねのつけ渡-て サ ビ ヲ 上 岡 へ つ -ぐ -と 詠 淋 し き 秋 の -れ ' -\ ' 庭 の 小 薄 そ よ / \ と 吹 キわた-行風の音'心をくだく紫の'雲の林の夕烏ねぐら悲しき' 気 色 哉   -    シ テ 詞 「 い か に 申 候 ' 今 こ そ 月 の 出 て 侯   ワ キ 「 実 -月 の 出 て 候 そ や ' さ ら ハ 御 ン 暇 申 き う す る に て 侯   シ テ 「 こ よ ひ ハ 月も-まな-侯程に'暫ク是に御ン入侯イて'心閑に月を御覧候へ ヮキ「御ンとゞめ候程に'今しばし月を詠メ候へし ク-同「夫浮世 フ ユ ウ の無常を観ずるに'蝉嫉ハ朝に生じて夕へをまたず'又夏の蝉の春 オ ノ ツ カ ラ ル 秋 を し ら ぬ も ' 自 な る 理 の 今 身 の 上 に 知 ら れ た -  サ シ 「 然 れ ハ 無 常 の 習 ひ と て ' き の ふ に か ハ り け ふ に さ め ' 夢 幻 の あ だ し 身 を'頼ム命のあるハなく 下シテ「なきハ数そふ世の中カに'同「何 スム れ の 日 迄 ' 歎 か ま し     ク セ 下 「 う さ な が ら は や 住 ミ な る ゝ 草 の 庵 に'日数ふれとも色かへぬ正木のかづら-る人も'稀なる夜半にこ と と ふ は ' 風 に さ き 立 チ て ' 散 -る 四 方 の 紅 葉 ば ' 又 ハ 遠 里 に ' う サ つも手にとる狭衣の'つづ-させよと鳴虫の'むすぼぬ夢を破るら ん'実や此程ハ'身に思ひあ-ぬれハ、春の夜とてもねられぬに' ましてや長き秋の夜の'ふけ行鐘をかぞへつゝTかへらぬ年を忍ふ なり シテ上「徒に'うつ-にけ-な花の色'同「我身世にふる秋の サ 一 F t                     ( マ マ ) 露桐の葉落ッる比なれや'よし更ハさハ-なく夜と共月を詠めん' テ ン ベ ン 月もはや山のはに'雲が-れする粧はうゐ転変のあ-さまの'常ネ なきをしめす也'あらあぢきなの浮世や  ヮキ詞「秋の夜の長物 語に'はや月も人がたに成て候 シテ「仰のこと-月も入しぼに成

(11)

-124-て侯'連の御事に夜を明して御ン帰り候へ ヮキ「心得申て候'何と フ 2 やらん今の折から似合ぬ申事にて侯へ共'亡父良美卿ハ常は大和舞 (ミセケチ) に御すき候間'手向にも成候へし一さし御舞候へ シテ「手向の為 と 承 侯 へ ハ わ -な -候 程 に ' 1 さ し ま ひ 候 へ し   ヮ キ 「 い か に 誰 か アキ 有 ' ゑ ほ し 狩 衣 を ま い ら せ 候 へ   モ ノ キ   シ テ 言 イ 上 「 穂 の 声 ' い づ -よ -く る 出 て 見 よ ' 雲 の は や し の も -ぢ が さ ね ' 同 「 う す も の 匂 ふ ' か ざ し か な   マ イ   上 シ テ 「 月 の 色 ' 風 の お と づ れ お の づ か ら'秋は夕へ七㌧誰かいひけん  上岡「去程に - 月をめぐらす 舞の決もなび-や雲の絶まよ-t Lの∼めの空も'ほの左′ーと明行 ハ ' あ さ ま に や な -な ん と ' い と ま 申 て 康 秀 ハ ' 都 の か た に 帰 -け れ ハ     シ テ 下 「 小 町 は 只 ひ と -' ( 同 ) つ れ な き 軒 に 立 そ ひ て ' う ス し ろ か げ を 見 お く -' 行 ク ハ な く さ む か た も あ -' と ま る や う き み な る ら ん -( 1

高安小町

キ ノ フ ヮキ詞「是ハ当今ンに仕へ奉る樽口の伺某にて侯、掬も昨日月見の御会 シ ユ ギ ハ ン 御座候所に'帝の御ン寄をも衆議判と御定め候去間小野の小町も其 セ キ ッ ラ ナ ザ ン ギ ヨ ス サ 席に連-て御入り侯を'有人議をかまへ'帝の御製を小町様と号-たると葵聞す'君此由を聞召人レられ'急き河内国高安の里へ寓居 コ シ ノ させよとの勅定に任せ、痛ハしなから輿に乗せ'唯今河内の国へと急 候  道行「諸共に出し月社忘られね'く'都の空を立隠す'淀 ス ダ レ ア ジ ロ の川霧晴やらぬ思ひもか∼るあや簾'網代の輿のこし方も'夢や現 (ママ) と隔来て'笈そ関戸の宮ならむく シテ詞「いかに滝口に申候 ヮキ「何事には候そ シテ「向ひに拝まれさせ給ふハ'聞及し石清 水にて御ン入候か ヮキ「きん侯あれとそ石清水八幡宮にて御ン入候 \'帰洛の祈-に御参詣侯へ'某案内申侯へし  シテ下「南無や ガ ウ シ ツ ゼ ゴ シ ノ ウ イ ク ゴ 八幡大井'本地ハ救世の如来'三界我有悉是吾子'能為救護の御誓 ス シ ツ ( マ マ ) ひ空しからす'無実の難ンを暗し給へと  下同○俣と共に念諭し ナ ギ サ ィ サ て'又立出る道の末'渚の森を早過て'勇む心ハあらね共、伊駒の 山の麓なる高安の里に着にけ-く' ワキ詞「急候程に'高安の 里に着キて候'此里の長か方へ御ン入候へ'さらハかう御通-候へ カ タ . く 、 シテ「拐御身ハ是よ-御ン帰侯か'此程の御名残と申労使なふ候 ス ム ト マ ヮキ「さの-御欺き侯そ'我等も此所に留-痛ハ-申せとの御事に て候'御心易-思召侯へ'何事をも某に御頼有ふするにて侯 シテ イ 「去にても思ひもよらぬなき名をおひ'からき憂目に逢事よ' 下「秋風にあふたの-こそ悲しけれ'我身空敷成ぬと恩へハ 下同 「思ひ慰む方もなき'伊駒の山の峯の雲'晴間なき涙のヾ雨と降な イ ホ ん露の身ハ'いかなる草に結ふらん'庵寒き秋の風'有し雲井のつ フ ル ス タ レ て を ハ ' わ た る 偏 に や 問 へ き ' い つ 迄 か ∼ る 古 簾 都 に ハ な き ' 詠 イ ニ シ め 哉 -1     ヮ キ 詞 「 い か に 申 侯   シ テ 「 何 事 に て 候 そ   ヮ キ 「 古 へ 在原の業平'ならの京よ-此高安の里へ'忍ひ妻にあ-がれ通ひ給 ふと承及て候'かゝる折ならてハ承がた-候程に'御物語有ッて御 ハ ル カ ヘ ン聞せ候へ シテ「夫ハ迄に年を経し事にて侯へハ'委くハしらす ツ レ 人 ′ \ ー 候へ共'徒然の御慰に語-参らせ侯へし  シテクリ上「夫在原の業 フ サ イ 平ハ'平城天皇の御孫'同「阿保親王の五男'風月の才に長じへ帝 コ ト の御覚へも他に異にして'今ハ背にならの京'春日の里に紀の有常 r f = . -才 7 -I . ヾ 1 . l l . 1 ' -. † 、 . 葺 . -. ⋮ ・ ・ ▲ 王 上 ヽ 一 1 . も ホ ヤ L F ・ = 八 . H = = 引 . -. 日 日 割 引 . . 1 -r " J l l . . 上 、 、 . . . . -. . 一 一 . 一 訂 . L I . 7 1 . t . I / I ∼ t I ∫ . 1 r . r  

(12)

-125-ア ダ ウ タ テ の娘と契-住給ひしか'時めく花に移-行'虚し心の転手きよ サシ「花紅葉何れの色にめでぬ覧'同「此高安の忍ひ妻に'いつの カ イ マ ハ タ ア ク ガ レ 比にか垣間見て'雲の旗手に物を思ひ'明ぬ暮ねと狂浮て妻木こ-イ モ セ カ タ ラ ヒ にし片岡の'ふかき山路と成にけん  クセ「妹背機関Lt有常の フ リ ワ ケ カ ミ サ ナ ヘ ダ チ 娘ハ'放髪の磯の上'井筒によ-て水鏡tr竹田の早苗ふし立て' ケン 包有秋の天つ空'牽牛織女の替らぬ中と誓ひっ∼'よしや吉野川' モ ト 老と成迄結ひぬる'契を余所の夕碁と'此高安に惜しる'女の元へ ホ ノ メ キ 通路の'沖つ白波立田越鬼一口も何ならて'閃屍あへる初にハ'女 エ ナ ラ ヌ キ ヌ タ キ も 粧 ひ て 、 殊 勝 衣 の 色 々 に ' 薫 物 す と ハ 知 な か ら ' な べ て な ら さ る移香の身にそふま∼に月日経て シテ上「稀に高安に来てみれハ、 ツ ク イ ツ シ カ ト ケ ケ ハ イ ヲ ロ ソ カ →初め社心憎-も作-けれ'何鹿打解て物の仮粧も疎に'いひがひ ゴ ト ス 取りて折毎に'かれひす∼めしすさみにぞ'程な-秋の風立チて' ハ ギ フ タ もとあ'らの萩二度'花咲芙なる世の例'終の-を忘て'時の花を愛 ヱ ゝ カ シ コ モ ト ヅ ス ク ナ するハ'人間皆酔-誰か色に引かへて'賢さに元-浮世の人そ少JT, ア ダ 上。ンギ地「実や化なる物語'か∼る折ならて、か程委くしらま 弓'引かへるさを朝夕に頼-て閏や松の声 シテ「立チ別れいなば の名残や惜まれん'去迫は高安の'安からぬ身の置所 上地「理-過る身の欺き、暫しハ村雲の'か∼るなき名をおふとても終にハ晴 ん本の月 シテ下「今ハ秋の未、菊の宴も早過ぬ'紅葉の賀もや有 ヲ ゝ ナ ツ カ モ レ つらん'大内の様ぞ懐敷 上岡「実大内の御遊に'洩ぬ人のいかな イブセサ れハ部の住居の妨嫌も'松の柱に竹の垣'柴といふ物折焼キて'つれ ホス く 侍 る 涙 を 何 れ の 時 か 千 へ き く   シ カ ′ \   ワ キ 詞 「 や ' 何 と 申 リ ン シ ナ フ ぞ'都よ-帰洛の輪旨下されたると申か'こハ有難き勅設哉'噂急 \ カウ て御ン拝み候へ シテ「荒有難や侯'下「神ハ正直の頭べに宿-給ふな れハ1是と申も石清水の'御利生にて社候へ ヮキ詞「芙・V御ン身の メ イ 正直故'神ン明の加護顕れて候'此悦に舞を舞'神を涼しめ給ふへ ト ク し'折節是に烏帽子の侯疾≧召れ候へ 物着 シテ上「嬉しさを何 々′ヲヤカ に包まん袖の色'烏帽子けたか-輝絹に'和讃を上ゲつ∼舞とかや カ 一 フ 上「唐国の'聖の代にも越ぬへし 上地「五日の風や十日の雨' 枝 を 鳴 き ぬ ' 千 代 の 秋   マ イ   上 ワ カ ○ 向 き 屋 に 、 上 -て み れ ハ 煙 カ マ ド ニ ギ 立'民の竃ハ'賑ハひて  上キリ同「去にても此里に移-し時ハ' ネタ 君をも身をも恨-葛の葉の'妬き心も今ハ早'風の前の'木の葉の ア ミ ハ ラ イ サ 散 ル ご と -' 大 津 の 舟 の ' 網 と く こ と く に ' う さ を 晴 し て ' 勇 む 心 フ 々 . ⋮ ソ 一 フ ハとやの鷹の'二度雲井に立帰-'同し御空の月をも詠め'雪をも カ ザ 廻らす'舞の曲'左右楓との裸を挿して'都に帰るそ'有かたき 富士見小町 ト コ ヨ シテ男三人 次第「英名もしるき富士の雪'く.'常世消ぬを尋ん グ ン ジ ヨ シ サ ネ -男詞「か様に候者ハ'出羽の郡司小野良実の御内に仕へ申者にて候' シマ(ママ︺ 又是に渡-候御方ハ'御ン息女小町御前にて候'掬も帝敷数の道に ∴御情深-'花の朝月の夕何れの御歌合にも召れ'玉鉢雲ン上に近 ツ ク 付、叡虞に叶ふ歌もやと御心を尽され侯'きれハ召人ンハ居なから メ イ             ( マ マ )                 ホ マ 名所をさとすとハ申せ共'誉れ名高さ富士山を御覧せ度由仰候程 ア ヅ マ ヲ シ に'某御供申唯今吾妻に下-候  サシ立衆「夫落花の春に名残を惜 コ ウ ケ イ ア カ ツ キ -'紅閏の暁には'シテ「郭公の初音を待チ'一葉散秋の月に裏 モ ヨ フ テ イ セ ウ ヒ ト を催し 立「庭松の雪に詠め等しく シテ「四つの時四つの海 立衣

(13)

-126-モ レ コ ガ ル →洩ぬハ広さ敷嶋の'道の心の深みと-'空に焦る恋路迄'実情し る和寄とかや  上寄「思ひ立廻るも早さ小串の'-\'丑ミつ比 シ ゲ に都出'夕附ケ烏の空寝にも'関路ゆるして逢坂や杉の-繁る守山 フ ム ナ ル ミ ガ タ を ' 跡 に 美 濃 路 と お よ ひ の 橋 踏 に と ゞ ろ と 鳴 海 渇 く '   下 「 浪 社 袖に懸川の'浦風音に菊川のあた-を越て造JVと清見か関に着にけ フ モ ト り -   男詞「急候程に'是ハ早富士の根に着キて侯'いかに申 上侯'弓ン手にそびえし山こそ'世に聞えたる富士の獄にて御座候、

御ン滝癌髭ハきれ侯へシテ「漕譜て聞及しよ-,感

詠め異成名山ンかな、実や消ぬが上に降積富士の白雪ハ 上「神代 ヨ こ ヽ の雪や猶残る覧 上岡「又ハまじろ成ル田子のうらハと読つるも' り -' 今 更 お も ひ 白 雲 の ' た な び -上 ハ い か な ら ん ' 見 え ぬ る 程 ヤ ウ く ナ カ バ シ タ ハ'高さ山哉漸行ハ足引の、山の半に成ぬれハ'余の山を'下に駿 河の富士の根に'詠めハ多-三保の浦'浪にさらすか衣川'流れ清 見の関路迄間.ぢかき富士の,配軒哉/\ ヮキ詞「是ハ当社戯酢 シ ヨ ラ ウ セ ン ゲ ン に仕へ中神ン主シにて侯'此間ハ所労仕浅間へ参らす侯程に'唯今 禅定申さハやと存侯'又あれに見馴ぬ上東の'其様由∼敷粧ひに ケ ン ソ タ ゝ ズ ミ マ ヨ て、かゝる喰姐のふじの獄に才給ふハ 道に迷ひ給ふと存侯'噂々 夫なる御ン方ハ何かたへ御通-侯そ シテ「是ハ都万の者にて侯か、 名にの,∼聞し富士の獄を'多年願ひ深くして'思ひ立にし旅衣、き て増菅とかめ給ふ'御身ハいか成人やらんシ"キ「是ハ当社の 宮仕也'抑此富士の頴と申ハ'道ハするどに草木茂-'寒ン風常に はげし-吹キ、御覧のことく雪の常住成故に'信心深き男の身さ マ シ イ ハ へ'水無月朔日ならでハ禅定申事なし'増てや云ん不浄多き女の スム 身、形ち粧ひ社さもあらんかし、心の雲の晴せすハ'道をそこ共白 ト ク 雪8,- ㌧憂目を見させ給ふへし'疾・∼御ン帰-侯へ シテ「おろかの 人の楯やな'水無月ならてハ禅定成かたしとハ心得す苛に'下「富 フ モ ト ハ ル ナ ビ 士の根の'高き方よ-秋の来て'詞「楚遥かに扉-朝霧と読るも 有又'下「駿河成富士の高根を来て-れハ'麓にか∼る'花の白 サ ス ガ カ シ コ 雲、詞「然らハ何逆春夏秋の隔あらん ヮキ「流石都人達賢さ苛の タ ト                             ジ ヤ ク ジ ヤ ウ                                       ノ ガ 縦へ哉'とにか-に着情深さ女人の身' ヲ ロ 是よ-御ン帰-侯へ シテ「猶も愚かの仰 アルジ の主'伊勢天照皇太神も'本地ハ女性にて シ ヅ づ-当山ン権現も、元ハ焼しき機の女の' 今更何と遡るへき'只と コ ン ゲ ン や な     ク リ 「 夫 我 朝 根 元 お ハ し ま す     サ シ 「 申 ん ヤ シ ナ 同「翁か情に養ハれ'終 精勤立ッなよ竹の,世に井ひなき,美文とかや ㌃下「されハ皆 ナビ 人の'思ひのはむら消やらぬ'富士の煙の風に廓-'行ゑもしらす まどひして'見ま-ほしきと夕碁の'鐘に驚き暁は'烏の鳴ク音を イ サ フ ミ マ ヨ 恨みつゝ'親の諌め世のそし-、しらぬ恋路に踏迷ひ'心を尽す蟹 ナ ン ダ イ ム ス 小船三つの難題かなひなはとけんと云し下紐の結び兼たる折からに ヱ イ モ ン . 上「泰も大君'叡聞あ-て余所にの-' 同「見てやや-なん白 アヅマ 雲の'隔てつらき舟橋や'親しさげすハ東路の'さの-ハいかてつ ジ ユ タ イ ミ コ ト ノ ボ ン らからん'入内なすべき詔-'宣旨下されましませ共'此姫凡人ン ならされハ'天の羽衣稀にきて'人のうらみハよしなしと'本の都 タ レ ア ヲ グ 卒に行水の措き姿のかくや姫 今此山に跡垂て仰となとか知さらん ( マ マ )                                   ノ タ マ 上。ンギ地かゝる不思儀を木綿四手の'神の昔を宣ふハいか成人 イ ハ 地 ニ モ にてましますそ. 77上「伝ず共それぞと色に出船の'引手数多の シ テ ニ モ 色好む'小野小町ハ我也 地「身をうき草の根を絶て'誘ふ水あら

(14)

-127-ア ダ . ア ダ ハいなんとハ芙虚人の虚し夢 シテ上「ぬれハや人の見へつらん サ メ ア カ ツ キ 地 「 覚 ざ ら ま し を   シ テ 「 暁 の   下 同 「 し の ∼ め 東 迄 ' 我 詠 じ っ る チカキ(ママ) 尋の道t Lるや白玉か'何そと問し都鳥'都に遠き富士の根の'人 カ タ フ の情ハ有明の'傾く影に我なから'其言の葉の色に出語るそよしな か -け る     ヮ キ 詞 「 拐 ハ 小 町 に て ま し ま す か や ' 然 ら ハ 苛 を よ -舞曲をなし'神ン虞をすヾしめ御申候へ  シテ上「大かたハ'月を も め で L t 是 そ こ の   上 地 「 積 れ バ 人 の ' 老 と な る     ハ ノ マ イ 上岡「い-よ語ると名残は尽し'月弓の シテ上「引帰らんと'思ひ 立 上同「麻衣の蒔きえにLt うら紫か葛の葉の、吹返し吹返す、 舞の裸に落くるハ'松の風滝の水山彦の-に答へさせ'それかあら フ モ ト ヲ ユ ル ぬか秋霧の'藤に生る村ず∼き'ほのぐの空晴て'雲井の都に帰 hノけhソ

山本小町

次第「秋の野深き山かけて'く'千種の花を尋ん  ヮキ詞「是ハ ス ヘ ナ ガ 摂州山本の何某季長にて候'我葦り花に心をよせ色との草花を数多 持て候へ共'猶珍敷草花を求ん為'只今山野に出ハやと存侯 ウ タ カ 道行「野狩する人の心ハさま-\の'鵜鷹に身をややつすらん我ハ (ママ) そ れ に も 引 か へ て ' 露 に 越 居 の 袖 の -か ' 露 に も ぬ る ∼ す そ 野 を り 一 フ ハ た と -ト も 専 行 ク く     ヮ キ 詞 「 い か に 誰 か 有 、 あ れ な る 藁 屋 ホ ト の 辺 -に 白 ふ 見 ゆ る ハ 何 な る そ ' 急 き 見 て 釆 -侯 へ     シ カ ′ 、 何と白菊と中か'さらハ立寄なかめうするにて侯  ワキ上サシ「実 カ ノ コ マ ダ ラ や時しらぬ山はふしの根いつとてか'康子斑に雪の降といへ-' 所せきなる山陰の'雪かと見ゆる白菊は'富士の根よ-もいやます マガキ そ や ' 荒 う つ -し の 花 や 侯     シ テ 老 女 詞 「 な ふ / 1 其 笛 へ は 何 と て 立寄せ給ふそ ヮキ「是成白菊のあま-に見事に咲乱れて候程に' 詠入て休らひ候、拐御身ハ花札お...&て候か シ÷きん候此庵にし ア ル ジ ハし心をとむる共'心を花になさ∼れハ'花の主といひかたし去な から'昔の秋を残すの-な- ヮキ「実や伊勢物語にも'心の色は 紅ゐに'匂ふか上の白菊の'上カ、ル「枝もとを∼にふるかとも見ゆ ヨ こ ヽ ヨ ⋮ シテ「男ハしらす読に読ける ヮキ「匂ふか上の白菊ハ シテ「折 ける人の袖の番と ヮキ「此方にうつろふ色そとハ シテ「花物いは ね 草 の 庵 の   ヮ キ 「 主 を い か て   シ テ 「 と ふ へ き ゃ     上 葛 岡 「 む か し 男 の 心 を は ' く ' 見 ん と て 菊 の う つ ろ へ る ' 枝 に 苛 を ハ 掛 帯 の 唐衣袖朽て,枯≧になる申となり昔恋しき和讃の友/十 ワキ「如 何に主に申侯'最前よ-の言葉の未'只人のおちふれ.たるとは見え カ 申さす候'又昔恋しき和歌の友と承侯'其歌人の品∼を語り給へ シテ「童ハ和苛の道ハ知す侯らへ共'人の語-つる事をあら-∼申 フ ウ フ ヒ ケ ウ ガ セ ウ 侯 は ん     上 ク リ 地 「 夫 風 賦 比 興 雅 領 ハ ' そ へ か ぞ へ な ず ら へ ' た と へ た ゞ こ と い は ゐ と て ' 六 義 の 様 は か -の こ と し   シ テ サ シ 「 彼 在原の中将ハ'同「心あま-て詞たらす、しはめる花の色なふて匂 ひ残るに異ならす シテ下「遍昭ハ苛の様ハえたれ共'同「誠す-な し た と へ ハ ' 絵 か け る 女 の 姿 に め て ∼ い た つ ら に ' 心 動 す こ と く な-  下クセ「小野小町ハ衣通姫の流なれハつよからぬ苛の風情 にて春風の吹乱れたる青柳のいとよハ∼\と読とかや 上「大伴の 里主ハ  (同)「山人の薪ハとらて徒に花に心をとゝめて木陰に日

(15)

-128-をや暮すらん恋の心の何とてか苛の種とは成ぬらん  ヮキ詞「か 様に委-語-給ふ'御身ハいか成人やらん シテ「荒むつかしの仰 ヲ ト ロ やな'表へはつる老か身の' 上カ、ル「わか身を何といえばえに ヮキ「何かさの-つゝみ給ふ'唯∼名乗おはしませ シテ「芙此上は ▲ イ ナ ム シ ロ ワ ラ 儲造 ワキ「藁屋の床に敷嶋の シテ「道を忘れぬおのか身の、小 町といはんも恥かしや  上岡「斑ハ小町の果なるか'芙痛ハしの サ ソ ア ハ 御事や身を浮草の根をたへて シテ上「今ハ誘はん水なくハ'泡と 消つゝ栄もせで 上岡「なからへ釆ぬる年月を送り迎へて老か身の' クチ 今ハいつしか朽果る袖にたまらぬ白玉は人を見ぬ目の'涙かなく ヮキ詞「如何に老女へ申侯'伝へきく五節の舞まなふて御見せ ジ 侯 へ   シ テ カ 、 ル 「 と か -辞 す る に よ し そ な き   ヮ キ ヘ 音 に か へ す 有 ト ヨ ヲ カ ヒ メ 様 ハ     シ テ 「 豊 岡 姫 の 舞 の 袖   ワ キ 「 返 ∼ も   シ テ 「 舞 と か や   地 ホ ギ ケ イ 「視てのたまハ-序ノマイ 上ワカ「ほざて宣く宝鏡を見るに  地上 ミ ア 一 フ カ 「我を見ますがことくせよ共に御殿をひとつにして'いはゐの鏡と なすへしとな-.tLカ、ル「雲の上なる音楽をまなふ 上岡「姿ハ空 お そ ろ し や ' 語 る と も 尽 し     シ テ 下 「 松 の 葉 の 散 つ も る     下 同 「 スヘナガ -'わら屋の軒にたゝすめハ'名残つきせぬ季長も'暇申てかへ ア ト りけれハ シテ下「小町ハ跡に 上岡「只ひとりひとつ世に'拾られ

たる有様かなすてられてひとり残-け-幽霊小町

ヮキ詞「是ハ諸国一見の僧にて侯'抱も我大和路の名所旧跡拝,∼廻 り'今日は竜田の明神に参り侯'是よ-河内越へにかゝ-'都へ上 らハやと思ひ侯  正行「竃田山いかに時雨の染分て'/\'青葉 にましる下紅葉分暮しっつ行程に'墨の衣の袖寒さ'嵐の音も高安 の里にむ早着にけ-く -詞「急候程に'是ハはや河内の国高安 とやらん申侯'彼在原の業平此里に通ひ給ひしを'夜半にや君か独 -行らんと詠しけんも'此所の事成へし'人来りて侯ハゝ'委-尋 ハやと思ひ侯  シテ「噂∼御僧ハ何事を仰候そ ヮキ「是ハ諸国一 ア タ リ 見の僧にて侯か'竃田の明神に参-初て此所に釆-て侯'辺の人に ス ミ カ てましまさハ'業平の古へを語って御聞せ候へ シテ「いや我力栖 イ ヅ ク ハ何国共定めなき世の中に' 下「か-表ふる姿と成て候'詞「然 れ共我も故有身にしあれハ'其なき跡の恋しさに'是迄参りて候也 (ママ) ヮキカ、ル「不思儀やなさしも老女の御事なるか'其業平のなき跡 モ ゝ ト セ ヒ ト ト セ を ' 是 迄 尋 給 ふ 事 '   詞 「 抱 ハ 御 身 ハ 百 年 に 一 年 た ら ぬ つ -も 髪 と'詠せし人にてましますか シテ詞「夫ハよしなき昔男を'思ひ ス 染 に し 色 好 -  ヮ キ カ 、 ル 「 実 其 女 歎 き ぬ と て   シ テ 下 「 き む し ろ に 衣片敷今宵もや'恋数人にあハでの-ねんと  下同「恨侍ぬる言 カ リ ト ヨ の葉を'裏と思ひ仮枕、1夜の夢そはかなさ  上岡「きれハ彼業 平ハ'く・'思ふを思ひ思ハぬ人も思ふなる'情の道も浅からぬ' ズ -実や有し世を'忍ふもぢ摺誰故に'心の乱れ'成らん -  ヮキ詞 ツ ヽ 「いかに老女、御ン身の風情詞の末'唯人とハ見え給ハす候'包ま タ レ ト モ ず名を御名乗侯へ シテ「恥しや我を何とか岩代の'待事もなき浮 身 な か ら     ク -「 枕 よ -跡 よ -恋 の 責 -れ ハ ' 同 「 心 の 外 な る 音 ア マ タ 譜へ現もなやな浅ましや  サシ「凡小町に心を懸Lt 人の数多の ツラ 恋衣'同「恨-の数の重-て'滑だに果ぬ身そ怨き  クセ下「在原 . r I 一 . 。 . ゝ 一 . t T ・ . 一 1 -、 ' ・ r ・ ・ 1 . -. ・ -' ・ -∼ . 1 1 笥 J I H ・ /T I L I 一 事 ■ 一t ■ , < y ヽ . 1「 ・ ・ 1 -■ I l、 . ・

(16)

-129-〟 T ・ ・ t . ヽ .   ヽ 7 . . . 一 瞥 ■ r ー _ . -シ ボ の業平ハ'凋める花の色なふて'匂ひ残れる寄夕人トの'心詞の奥 スム 深く 秋の野に篠分し朝の袖よりも'達てぬる夜ぞひち増-ける サスガ と'読おこせたりけれハ'流石に我も梓弓'いかにといはん方もな ス ム ス ス く 誰 大 方 の こ せ -さ に   シ テ 上 「 見 る め な き ' 我 力 身 を う ら と し ら ツ レ ナ キ ねはや、同「かれなで海士の足たゆ-'通ふ心を荒磯の松ハ難面色 ア ダ 見えて'終に虚なる申な-と'憂名に立し古へを'語るも昔男我名 ス ハ い ほ じ つ ゝ ま し や     上 。 ン ギ 地 「 今 ハ 疑 ふ 所 な -' 英 名 に ふ れ し (ママ) 小野の小町'夫ハ去にし世語を今見え給ふ不思儀きよ シテ「包め 共'袖にたまらぬ白玉ハ'昔恋敷キ涙の雨やしくるゝ竜田山 上同 「夜半に通ひし跡とめて'此高安に来て-れハ シテ.「里ハ荒レに し松風の 地「音の-残る シテ「草の陰に 下同「誰かつゐに行ク、 道とハ兼て知へきゃ'今ハ是迄そ御僧'今宵ハ夏に待給へ'重ねて 姿 を 見 ゝ え ん と 小 ふ か と -れ ハ 、 矢 に け り -1     ヮ キ 詞 「 扱 ハ 唯 今の老女ハ'疑ひもなき小野の小町にて候'表や実も百モ年々迄' ゴウ 輪廻の業をまぬかれ給ハぬ事の痛ハしきよ  上帝「いざ弔ひて浮 メ ヨ モ ス ガ ラ へんと'-1'葦の定を敷妙の'枕の月の終夜'此御経を'読涌す る-1 後シテrl J171モ⊇宥難の御弔ひやな,妙なる法を身に受 て'仏栗に至る此上ハ'何をか今ハ慣-の'小町か姿を顕すなりrt 去にてもなき跡を'小野とハいはじ薄生け-と'問れし我も英人 も'友に昔に業平の'其面影にうつ-舞の'老の姿ハ恥かしや、 下「よし夫逆も報謝の舞'(同)「紅葉を挿す,挟哉 マイ 上ワカ →心さへ'誘ハれ行か竜田の山風に  同「妄執の雲晴て'真如の 月の,明らけさ有様是-見給へ有難や 下キぺけに今よりが、璽 サト に'迷ひの里を立出て'本の覚-にかへる人' れと'心の奥を尋ねれハ'回し蓮に至るへき' く かぞへすよまず多け ぞ ニ モ 遊ひハ嬉しか-ける

原   田 久     保 西     畑 嘉   部 竹   内   美 山   本 竹   島 芳   起 重 芙 嘉   隆 千   代 和   子 智   子 本   学   教   授 本   学   教   授

本   学   講   師 本 学兼教 授 本   学   講   師 本   学   助   手

(

)

西   村 佐   野 本学国文科学生 本学国文科学生

参照

関連したドキュメント

[r]

②立正大学所蔵本のうち、現状で未比定のパーリ語(?)文献については先述の『請来資料目録』に 掲載されているが

震動 Ss では 7.0%以上,弾性設計用地震動 Sd では

This study examines the consciousness and behavior in the dietary condition, sense of taste, and daily life of university students. The influence of a student’s family on this

〇なお、令和4年度以降、ミラサポ

鉄)、文久永宝四文銭(銅)、寛永通宝一文銭(銅・鉄)といった多様な銭貨、各藩の藩札が入 り乱れ、『明治貨政考要』にいう「宝貨錯乱」の状態にあった

添付資料 4.1.1 使用済燃料貯蔵プールの水位低下と遮へい水位に関する評価について 添付資料 4.1.2 「水遮へい厚に対する貯蔵中の使用済燃料からの線量率」の算出について

添付資料 4.1.1 使用済燃料貯蔵プールの水位低下と遮へい水位に関する評価について 添付資料 4.1.2 「水遮へい厚に対する貯蔵中の使用済燃料からの線量率」の算出について