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精神障害者の個別的就労支援方式(IPS)の導入をめぐる課題(三) : 高齢・障害者雇用支援機構のモデル事業を手がかりに

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(1)

精神障害者の個別的就労支援方式(IPS)の導入をめ

ぐる課題(三) : 高齢・障害者雇用支援機構のモデ

ル事業を手がかりに

著者

宇野木 康子

雑誌名

社会関係研究

15

2

ページ

43-93

発行年

2010-03-26

URL

http://id.nii.ac.jp/1113/00000494/

(2)

精神障害者の個別的就労支援方式(

IPS

)の導入

をめぐる課題(三)

―高齢・障害者雇用支援機構のモデル事業を手がかりに―

宇 野 木   康 子 

目 次 はじめに

1 

ACT

Assertive Community Treatment

)とは 第

14

巻第2号掲載  1) 脱施設化政策対応プログラム   ⑴ 沿革   ⑵ 

ACT

の前身   ⑶ 

ACT

NAMI

組織の関係  2) 

ACT

の特徴   ⑴ 継続ケアを達成するための4つの機能と主担当者の責務   ⑵ チームサイズとケースロードに関する重要な要因   ⑶ サービス提供の体制   ⑷ 

ACT

の運営費  3) 

ACT

の対象者と加入基準、ゲートキーピング機能   ⑴ 対象者と加入基準   ⑵ ゲートキーピング機能  4) 適合度評価尺度(フィデリティ尺度)を活用した

ACT

の評価  5) 

ACT

の中の

IPS

の役割

2 

IPS

Individual Placement and Support

)とは 第

15

巻第1号掲載  1) 障害者就労支援政策としての援助付き雇用プログラム

  ⑴ 援助付き雇用プログラムの中の個別的就労支援モデル   ⑵ 援助付き雇用プログラムの費用

(3)

 2) 精神保健機関での

IPS

の実施方法   ⑴ 対象者の資格要件   ⑵ 契約と援助のための関係づくり 3) 

IPS

の「就労」と「就労支援」の考え方   ⑴ 

IPS

の「就労」の考え方   ⑵ 

IPS

の「就労支援」の考え方 4) 

IPS

ユニットと援助チームとの協働   ⑴ 

IPS

ユニットとスタッフ   ⑵ スタッフ育成のガイドライン   ⑶ 援助チームとの協働  5) 

IPS

における原則と雇用に良好な成果をもたらす援助手法   ⑴ 

IPS

における原則   ⑵ 雇用に良好な成果をもたらす援助手法 ⑶ 職業サービスの効果的な原則と「援助付き雇用フィデリティ尺度」 の関係 3 「訪問型個別就労支援」のモデル事業に見る有用的効果と日本で実現す るための課題への検討 以下、本号(第

15

巻第2号)掲載 1) 事例からみる「訪問型個別就労支援」の有用的効果とは 2) 日本で実現するための課題への検討

⑴ 「

train then place

」から「

place then train

」への体制転換および 最低賃金の保証された労働契約と多様な就労形態の必要性の問題 ⑵ 日本のジョブコーチ制度のもとでの

IPS

プログラムの特性を踏まえ た援助付き雇用の展開と雇用支援専門家の育成・確保の問題 ⑶ 現在の医療保健福祉体制での多職種チームによる

IPS

プログラムに よる就労支援展開の課題 おわりに

(4)

要 旨

第1章( 宇 野 木,

2009

)83)は、 ア メ リ カ に お け る 精 神 障 害 者 の「 包 括 型 地 域 生 活 支 援 」(

Assertive Community Treatment, ACT

) を 紹 介 し た。そして第2章(宇野木,

2009

)84)では、「個別的就労支援」(

Individual

Placement and Support: IPS

)を紹介した。

本章では、日本でも

ACT

IPS

を取り入れた地域支援・就労支援が必要 であるとの問題意識のもと、高齢・障害者雇用支援機構のモデル事業を手 がかりとして、以下の3点に着目し日本における

IPS

導入の試みの検証をす る。

⑴ 「

train then place

」から「

place then train

」への体制転換および最 低賃金の保証された労働契約と多様な就労形態の必要性 ⑵ 日本のジョブコーチ制度のもとでの

IPS

プログラムの特性を踏まえた 援助付き雇用の展開と雇用支援専門家の育成・確保 ⑶ 現在の医療保健福祉体制での多職種チームによる

IPS

プログラムによ る就労支援展開 3 「訪問型個別就労支援」のモデル事業に見る有用的効果と日本で実現す るための課題への検討 アメリカでは包括的な支援体制として

ACT

が位置づけられ、

ACT

利用者 への就労支援プログラムとして

IPS

がある。だが残念ながらわが国において は、この双方ともまだ試行的な段階であり政策としての構築はなされていな い。 そのような中で、

2004

(平成

16

)年7月から

2006

(平成

18

)年3月にか けて、高齢・障害者雇用支援機構により、アメリカの包括型地域生活支援 チームを参考とした「訪問型個別就労支援」のモデル事業85)が愛媛県宇和島 圏域を対象に行われた。これは現在、欧米で取り組まれている

ACT

の中の 就労支援にスポットを当てた、相談からフォローアップまでの訪問型個別的 就労支援方法を取り入れているものである。しかしアメリカの包括型地域生

(5)

活支援・個別的就労モデルとは多少違う条件で、わが国の既存の資源を活用 するという趣旨の取り組みを行っている。それは日本の状況を考え、都市部 とは異なる地域の社会資源の現状での効果的な就労支援の方法とシステムを 検討するためである。そのため今回のモデル事業は、①医療面の支援は精神 保健チームとして構成されない担当医が担当している、②訪問型個別的就労 支援チームは

IPS

が意味する精神保健チームではない、③

IPS

コーディネー ターと就労支援専門家の明確な役割分担がなされていない、などの条件で 行われている。だが

ACT

IPS

の特徴を取り込んだチーム編成での実践は、 今後の精神障害者への就労支援を考えるに当たっての大きな指針となるであ ろう。 そこで、本論文では高齢・障害者雇用支援機構が行ったモデル事業から明 らかになった有用的効果と課題、

IPS

プログラムを日本の精神障害者の就労 支援にどのように位置づける(導入する)か、という点に関して挙げられて いる4つ(ここでは3つの課題に分けている)の問題点などに視点をおき検 討してみたい。 このモデル事業の目的は、宇和島圏域の条件で訪問型個別就労支援が実践 できれば、日本の多くの地域での実践が可能になるのではとの仮定のもとに 行なわれたものである。宇和島圏域は1市2町で人口約

10

万人、社会資源 (数)は、精神科病院⑴、精神科診療所⑴、地域生活支援センター⑴、生活 訓練施設⑴、グループホーム⑵、小規模作業所⑷、保健所⑴、ハローワーク ⑴などである。この地域では、就労の専門機関はなく、就労支援経験者もお らず、就労支援実践が殆どされていない。1つの精神科病院機関で社会復帰 施設・医療機関の運営や支援が行われている環境である。そこで精神科の病 院を中核とする財団法人に「訪問型個別就労支援」チームを編成し、実践活 動を通した事例を継続的に収集した今回のモデル事業が行われた。 対象者は、

2004

(平成

16

)年7月から

2006

(平成

18

)年3月にかけて訪 問型個別就労支援を行った

55

名の精神障害者86)の中から、訪問型個別就労支 援プログラムの効果を明らかにする目的で、

2004

(平成

16

)年7月(事業

(6)

開始)の時点で対象者の中から今回の7名を無作為に抽出し、その後の2年 間の支援経過を分析した。訪問型個別就労支援は

55

名の精神障害者に行って いるが、支援経過の分析は7名に限定されているために、ここではこの7名 の報告を参考として検証を行う。 このモデル事業の対象者7名の中には大卒および大学院修了の高学歴者や 就職歴のある者もおり、社会資源のジョブコーチ、トライアル雇用、社会適 応訓練事業、就労体験などを活用した上で、事務、草刈等の作業、電気部品 製作、清掃などの仕事先に就職し1年以上の就労継続ができているものと、 就労体験をしたが就労につながらなかった者とがいる。 支援方法は、精神病院を中核とする財団法人の傘下にある職員を訪問型個 別支援チームとして編成、地域生活支援センターを拠点とし、支援は訪問 (アウトリーチ)で行なうことを原則としている。チームメンバーは、精神 保健福祉士4名、看護師3名、スーパーバイザー1名の8名での体制である。 しかし、就労支援経験者はおらずスーパーバイザーは外部の雇用支援専門家 をチームに加え、月に2回、個別スーパービジョン及びグループカンファレ ンスを実施している。 支援は月曜日から金曜日の昼間を原則とするも、利用者や関係機関・企業 の都合に適宜対応する。スタッフミーティングは毎日実施し、孤立感や燃え 尽きの防止の環境を作る。スタッフは個別担当制とし利用者

10

15

名を担当 し、サブ担当もつけている。 また、毎月1回、スーパーバイザーによるスタッフへの指導を行う。個別 スーパービジョンはスタッフ1人当たり

30

分で、グループカンファレンスで は全員で意見を出し合い、それへの助言を得るようにし、スタッフの自信に つなげるとともに燃え尽きの防止を行っている。 支援内容は、就労に関わる支援(インテーク、アセスメント、支援計画作 成(ケア会議))と医療・保健・福祉の課題などの全般で、アセスメントは 職場を活用し、就職準備は利用者の「働きたい職場」「働きたい職種」での 実施を原則とし、「個別支援」「訪問による支援」「自己決定の保障」「ニーズ

(7)

に基づく支援」「本人主導の支援」「エンパワメントの促進」を重視した支援 を行なっている。

質 の 評 価 と し て は、 フ ィ デ リ テ ィ 尺 度 と

MOS36

Item short -Form

Health Survery

SF-36

を用いた評価を試みている。しかし、フィデリティ 尺度を用いたサービスの質の評価と健康関連の

QOL

評価に限界が生じてお り、評価を提示するまでには至っていない。 図表

13

:宇和島圏域の資源と訪問型個別就労支援チームの構造 出典:高齢・障害者雇用支援機構『障害者の職業的自立に向けた訪問型個別就労支援の方 法に関する研究調査Ⅱ』平成17年度調査研究報告書通刊258号平成19年3月の内容 をもとに、宇和島圏域の資源と訪問型個別就労支援チームの構造を筆者が図示した ものである。

(8)

1)事例からみる「訪問型個別就労支援」の有用的効果とは 高齢・障害者雇用支援機構のモデル事業の報告書によれば、7事例の結果 から以下のような「訪問型個別就労支援」の有用的効果があったとしている。 ① 利用者に対する効果 ⅰ 利用者のニーズに応じた支援を行うことで利用者との信頼関係が構 築でき、利用者がより主体的に行動できている。 ⅱ 就労への不安や 藤については適宜相談等で対応することで、就職 前後を通じて利用者の不安が解消され自信の回復につながり、利用者 の就労意欲の維持・向上に役立っている。 ② 訪問型個別就労支援プログラムの効果 ⅰ 支援者側の効果としては、企業を訪問あるいは家庭を訪問すること により、色々な事への迅速な対応でき、企業で利用者に職場実習させ ることにより、実際に即したアセスメントができる。 ⅱ 職場開拓から就業体験、雇用調整、フォローアップに至るまで継続 して同じスタッフが担当することで企業との信頼関係がスムーズに構 築でき、企業担当者の不安への対応や利用者への迅速な対応ができる ため離職防止につながる。 ⅲ 毎日のミーティングで利用者の情報を共有できるため、対応方法の 検討ができ、機会を逃さずに支援ができる。 ⅳ 就労支援専門員にスーパーバイザーとして支援してもらうことで、 スタッフは自信を持って利用者への支援が行える。 ③ 本人・家族への効果 ⅰ 家族への効果は、精神障害の一般的な特性と利用者の実習状況を説 明することで、障害者(利用者)への家族の理解が深まる。 ⅱ 精神障害者の場合は、生活支援と就労支援の一体的な支援が必要と されるが、その部分への支援方法を考え対応していくことで、障害が あっても就労できる。

(9)

④ 資源活用による効果 社会適応訓練事業の登録企業を訪問し、精神障害者の就業収集を行なっ たことが職場開拓につながった。 これら①∼④の結果87)は、利用者を主体とした個別的支援をベースとし、 毎日のミーティングによる情報交換、必要時の早急な対応、スーパーバイ ザーによる指導、家族への援助など、個別対応の細やかさが良い結果として 表れているものであろう。しかし、既存の社会資源のみの活用での課題も多 くみられるので以下で検討したい。 2)日本で実現するための課題への検討 宇和島圏域のモデル事業では、既存の社会資源のみを活用する取り組みを 行なっているが、その目的は地域の資源を活用し、日本の多くの地域で訪問 型個別就労支援の実践を可能にするための手がかりとするためである。 そこで、ここでは宇和島圏域で行われた事例研究をもとに、7事例から 見える課題と高齢・障害者雇用支援機構が

IPS

プログラムを日本の精神障害 者の就労支援にどのように位置づける

(

導入する

)

か、という問題を検討す るための課題として挙げている、⑴「

train then place

」から「

place then

train

」への体制転換および最低賃金の保証された労働契約と多様な就労形 態の必要性の問題、⑵日本のジョブコーチ制度のもとでの

IPS

プログラムの 特性を踏まえた援助付き雇用の展開と雇用支援専門家の育成・確保の問題、 ⑶現在の医療保健福祉体制での多職種チームによる

IPS

プログラムによる就 労支援展開の課題、⑷雇用支援専門家をどのように確保し、育成するかとい う問題、の4点に視点を置き、日本への

IPS

の導入について検証したい。

(10)

事例 項目 事例1 事例2 事例3 事例4 事例5 事例6 事例7 年齢・性別 同居の有無 32家族と同居歳男性 501歳男性人暮らし 35家族と同居歳男性 家族と同居36歳男性 31家族と同居歳男性 29家族と同居歳男性 28家族と同居歳男性 疾患名 統合失調症 統合失調症 統合失調症 ・非定型精神病・知的障害あり統合失調症 ・統合失調症・言語障害あり統合失調症 学歴 大学卒 高校卒 大学卒 中学卒 大学院修了 大学卒 高校卒・簿記の専門学校卒 本人の希望 ・将来はフルタ イ ム の 仕 事 が したいが、パー ト タ イ ム の 仕 事 か ら 始 め た い ・経済的不安が あ る の で 仕 事 を し て 収 入 を 得たい ・自営の経営状 態 が 悪 い の で 就 職 を し て 経 済 的 に 親 か ら 自立したい ・経済的余裕が な い の で 仕 事 がしたい ・体力と自信を 取 り 戻 し ア ル バ イ ト か パ ー ト の 仕 事 に 就 きたい ・短時間労働 ・小規模作業所 に通い、体力・ 生 活 リ ズ ム 調 整 後 に 就 職 し たい 職業能力 (就労経験) ・大学卒業後、 事務職に就く ・ コ ン ピ ュ ー タ ー 関 係 の 資 格あり ・技術・経理関 係の資格あり ・大学卒業後い く つ か の 職 に 就く ・就労意欲は高 い ・医療事務の勉 強 を し て い た が 医 療 事 務 は 諦めている ・発病後も会社 員 と し て の 就 労経験あり ・自営のみかん 農業の手伝い ・郵便配達のバ イト ・履歴書書き、 面 接 の 経 験 な し ・障害を開示せ ず、いくつかの 就 労 を 経 験 し たが、長続きし ない ・ ホ ー ム ヘ ル パ ー の 経 験 あ る も 嫌 な 体 験 に 不 安 を 訴 え る ・大学卒業後に 服 薬 し な が ら 4年 間 本 屋 に 勤務 ・ ホ テ ル 従 業 員・駅員などの 就労経験あり 就労前の状況 ・ハローワーク を 利 用 し て1 人 で 就 職 活 動 を 行 っ て き た が、就職につな が ら ず 限 界 を 感 じ 相 談 に き た ・本人と母親の 入 院 費 滞 納 に 経 済 的 不 安 が あり支援へ ・父親は威圧的 言動あり、本人 と 病 気 を 受 入 れていない ・整体の仕事を 自 宅 で や っ て い る が 経 営 状 態悪い ・障害開示への 迷いあり ・地域障害者職 業 セ ン タ ー で の 職 業 評 価 は 7割以上 ・地域障害者職 業 セ ン タ ー で の 職 業 評 価 で は 職 業 能 力 が 低いが、自尊心 が高い ・ハローワーク で 求 職 活 動 を 続けてきた ・就労グループ 参加 ・働く意欲が弱 い ・小規模作業所 通所 ・精神科病院入 院 経済基盤 障 害 者 基 礎 年金2級(申請に より受給) 障 害 厚 生 年 金 3級 障 害 者 基 礎 年 金2級(申請に より受給) 障 害 者 基 礎 年 金2級(療育手 帳 の 申 請 を す る) 障 害 者 基 礎 年 金2級 障 害 者 基 礎 年金2級 障 害 厚 生 年 金3級 今回活用した 社会資源や 制度 ・ 職 業 訓 練 校 (6ヶ月) ・ ハ ロ ー ワ ー ク(ジョブコー チ に つ い て 企 業 に 説 明 し て も ら い 採 用 と なった) ・社会適応訓練 事 業 登 録 企 業 の活用 ・就労支援自助 グ ル ー プ・ ハ ローワーク・ト ライアル雇用・ 市役所(住宅探 し) ・ 小 規 模 作 業 所・ハローワー ク の 障 害 者 求 職登録・療育手 帳の申請 ・ハローワーク ・障害者求職登 録 ・ハローワーク ・障害者求職登 録 ・訪問看護 ・障害厚生年金 3級申請 生活面への 援助 ・ 就 労 自 助 グ ル ー プ に 参 加 し て い る こ と が 不 安 緩 和 や 自 信 に つ な がっている ・金銭的不安へ の対応 ・住居探し:人 暮 ら し は し1 なかった ・小規模作業所 が 心 の よ り 所 になっている ・家族との調整 ・服装の身だし なみの指導 ・服薬管理・障害者年金支給 就労準備および今回 の就労までに受けた 就労体験・訓練など ・エンクレープ 方式(半分隠れ た 場 所 で 部 長 に 直 接 指 示 を もらい作業) ↓ ・1ヶ月の就労 体験後に採用 ・社会適応訓練 事 業 で1ヶ 月 の 就 労 体 験 後 に採用 ・日給7000円の 警 備 の 仕 事 を し な が ら 求 職 活動する ・電気部品製造 は4日 の 就 労 体 験 後 に 採 用 (トライアル雇 用) ・本人の作業量 不 足 に 対 し て 企 業 は 経 験 者 を 回 し て 遅 れ を 取 り 戻 す 配 慮あり ・SSTでの面接 練習 ・3日の就労体 験(小売店の野 菜係り) ・ハローワーク を 通 じ て18社 の 面 接 や 就 労 体 験 を や る も 就 労 に つ な が らず ・就労意欲は持 続している ・職場見学 ・清掃業務を5 日 間 の 就 労 体 験する ・指示に従った 行動ができる ・仕事の飲み込 み が 早 く 作 業 も ス ム ー ズ に できる ・労働意欲はあ る が 失 敗 へ の 不安がある ・今回は生活支 援 が 中 心 で 医 療 的 な 関 わ り になっている。 支援で得た 仕事の内容 ・エノキ栽培企 業 の 梱 包 作 業 (作業能力の高 さ を 評 価 さ れ る) ・ゴルフ場での 草刈、トイレ掃 除など ・ 警 備 の 仕 事 3ヶ 月 ほ ど で 辞める ↓ ・電気部品製造 へ ・駐車場の清掃 ・就労にはつな がっていない ・企業側にトライ ア ル 雇 用 の 説 明 を し た 後 に 活 用 を 提 示 されたが、再発 や 失 敗 へ の 不 安 が あ り 就 労 に至らず ・現在は就労よ りも、入院回避 の 支 援 が 必 要 であった 就労形態 週3日、1日1 時間から始め、 13時 ま で に 伸 ば す こ と が で きた 週5日、1日3 時間30分 パート雇用 まで7:30∼9:00なし なし なし 賃金 最低賃金以上 (月最 低 賃 金 以 上万円程) 月 に 8万 円 程不詳 なし なし 該当せず 訪問回数 月1∼4回 月1∼2回 月1∼8回 月2∼10回 月5∼10回 月3∼9回 月1∼7回

(11)

今回の支援内容 ・ハローワーク で の 求 職 活 動 に同行 ・本人の望む仕 事への支援 ・経営責任者へ の 説 明 で 雇 用 につながった ・障害年金の受 給申請 ・ハローワーク で の 求 職 活 動 に同行 ・就労支援と経 済 的 不 安 へ の 包括的支援 ・母親の入院費 へ の 対 応 に 多 職種と連携 ・企業訪問での 継続的支援 ・職場体験を通 し て の 職 業 能 力 の ア セ ス メ ン ト と 職 場 で の集中支援 ・ハローワーク で の 求 職 活 動 に同行 ・無理のない仕 事環境作り ・経済的不安へ の対処 ・障害年金受給 申請 ・ハローワーク で の 求 職 活 動 に同行 ・知的障害者と し て 職 探 し を する ・ジョブコーチ で 支 援 に 入 る 事 を 企 業 側 に 説明 ・ハローワーク で の 求 職 活 動 に同行 ・就労体験同行 ・障害者求職登 録同行 ・ハローワーク で の 求 職 活 動 に同行 ・自宅訪問 ・企業訪問 ・退院前から関 わ り を 持 つ こ と で 信 頼 関 係 を築く ・保健所 ・作業所同行 ・多職種、家族 を 含 め た 生 活 支 援 と 精 神 安 定 ・障害年金受給 申請 今回の支援計画 ① 本 人 が 希 望 す る 職 種・ 時 間 帯 を 考 慮 し た 仕 事 探 し(ハ ローワーク、企 業訪問) ② 企 業 に 障 害 の説明、就労へ の 環 境 作 り と 適 切 な 対 応 へ の 理 解 を 求 め る ① 就 労 体 験 へ の依頼 ② 体 験 を 通 し て 職 業 能 力 の ア セ ス メ ン ト を行う ③ 職 場 で の 集 中支援 ①職業能力、障 害 観 の ア セ ス メント ② 家 族 と の 距 離の調整 ③ 家 族 に 障 害 へ の 理 解 を 求 める ① 地 域 障 害 者 職 業 セ ン タ ー での職業評価 ② 仕 事 の イ メージ作り ③ 障 害 者 休 職 登録・職業体験 を 行 い 就 職 活 動へ移行する ① 具 体 的 に 何 が で き る か を 明 確 に す る た めに職場体験、 ア セ ス メ ン ト を行う ② 自 分 の 実 力 を知り、自信を 回 復 さ せ た と き 能 力 に 応 じ た仕事を探す ① 就 労 に よ る 再 発 へ の 不 安 へのあり、就労 体験を行う。 ② 自 信 を 深 め た 後 に 職 場 開 拓をする ① 作 業 所 や デ イ ケ ア を 活 用 し、対人能力・ 作 業 能 力 を ア セ ス メ ン ト す る。 ② 訪 問 看 護 を 併 用 し 医 療 的 な か か わ り を 持 つ こ と で 再 入 院 を 防 止 す る 事例から 就労への障害につな がると考えられる要 因とは ・試用期間中の 賃 金 支 払 の 有 無 が 確 認 で き て お ら ず 不 安 があった ・勤務時間の確 認不足 ・支援者が職場 開 拓 の 経 験 が なく、十分な支 援ができない ・職業能力評価 を 基 準 に 就 職 先を探しても、 実 際 に は 生 活 場 面 や 職 業 場 面 で な け れ ば わ か ら な い 評 価がある。 ・家族が障害を 理 解 し て い な い ・周囲が障害へ の 理 解 に 乏 し い ・ハローワーク 担 当 者 に 障 害 者 の 就 労 や 就 労 支 援 に つ い て の 理 解 が な く、企業の人事 担 当 者 に 伝 わ らない ・やる気があっ て も 障 害 者 で あ る こ と で 断 られる ・本人は一般雇 用 を 目 標 と し ており、体力・ 持 続 性 に は 問 題 な い こ と が 証 明 で き て い るが、支援者は 正 社 員 に 求 め ら れ る 能 力 と に 隔 た り が あ るとし、障害を 受 け 入 れ る た め に 一 般 企 業 で の 就 労 体 験 をさせている ・企業側がトラ イ ア ル 雇 用 な ど の 制 度 を 知 らない ・精神病である こ と を 知 ら れ て 仕 事 を や め ている ・企業側からの 1年 間 の 就 労 体 験 の 希 望 あ る ・企業側から支 援 者 へ の 注 意 を 本 人 の 前 で する ・企業側と支援 者 と の 連 携 が 不 十 分 で 本 人 の 不 安 要 因 に つながった ・経済的不安が 利 用 者 の 精 神 的 不 安 を 引 き 起こす ・支援者の未熟 が 利 用 者 の 不 安につながる どのような支援が 必要か ・試用期間中の 賃 金 支 払 が あ る か は 不 安 の 要因となる。支 援 者 は 事 前 に 確認しておく ・企業側が求め て い る も の を 把 握 し て 本 人 の 希 望 と 合 致 す る か を 検 討 する ・本人の希望に 沿った支援 ・事前に職業ス ペ シ ャ リ ス ト か ら 多 様 な 就 労 方 法 を 学 ん でおく ・実際の現場で 実 際 の 状 況 を み て 具 体 的 な 評 価 を す る こ とで、本人と支 援 者 の 評 価 が 一 致 し 雇 用 に つ な が り や す い ・家族が病気 ・障害について 理 解 で き る よ う説明する ・ハローワーク 担 当 者 や 企 業 の 人 事 担 当 者 に 支 援 者 か ら 十 分 な 説 明 を 行い、障害者の 就 労 と ジ ョ ブ コ ー チ に つ い て の 理 解 を 促 す ・障害者への理 解 を 企 業 に 求 める ・本人に失敗体 験 を さ せ な い 職 場 開 拓 と 職 場 の 意 向 を 確 認 し て か ら の 支援を行う ・ハローワーク の み に 頼 り す ぎ ず 多 方 面 か ら か ら の 情 報 を得る ・IPSでは一般 就労が目標。支 援 者 は 障 害 を 受 け 入 れ さ せ る の で は な く 「仕事に就きた い」という気持 ち を 大 切 に し た 就 労 支 援 が 必要である ・支援者が企業 側 に ト ラ イ ア ル 雇 用 な ど 制 度 の 情 報 提 供 を行う・支援者 自 身 が 本 人 が ど れ く ら い 働 け る か を 把 握 しておき、企業 に説明する ・支援者への注 意 や 要 望 は 場 所 を 選 ぶ よ う 企 業 側 に は 事 前 に お 願 い し ておき、本人の 不 安 に つ な が る 洋 な 対 応 は 避ける ・企業側との連 携を図る ・経済的保障制 度を活用する。 ・就労支援を行 うにあたって、 生 活 面 の 支 援 も同時に行う ・本人の状態悪 化 時 は、 支 援 チ ー ム に よ る 検 討 や 主 治 医 への連絡、薬の 変 更 な ど に よ り 危 機 介 入 を し 入 院 防 止 に つなげる ・スーパーバイ ザーの活用 図表

14

:宇和島地域訪問型個別就労支援チームによる支援事例 出典:高齢・障害者雇用支援機構『障害者の職業的自立に向けた訪問型個別就労支援の方 法に関する研究調査Ⅱ』平成17年度調査研究報告書通刊258号 平成19年3月の7 事例の内容を筆者が表にしてまとめたものである。

(12)

[就労への障害につながると考えられる要因] [どのような支援・対策が必要か] (賃金) ・試用期間中の賃金支払について試用期間 に入る前に確認しておらず、本人に伝え ていないために不安の要因になった。 ➡ ・賃金や勤務時間は就労意欲にも関係 してくる。試用期間の賃金や就労形態 の確認を行い、利用者の納得を得る。 (勤務時間) ・勤務時間の確認をしておらず不安を与えた。 ・企業側が求めているものを把握し、 本人の希望と合致するかを検討し、 本人の希望に沿った支援をする。 (支援者側の問題) ・支援者が職場開拓の経験がないために十 分な支援ができず、利用者が不安になる。 ➡ ・本人に失敗体験をさせない職場開拓が必要。 職場の意向を確認してから支援につなげる。 ・支援者がハローワークのみを頼りすぎ ているために、就労先がみつからない。 ・事前に職業スペシャリストから多様な就労方法を学んでおく。また多職種や仲間から情報を得る。 ・支援者が未熟なために、支援者が企 業側から注意を受ける。 ・支援者を本人の前で注意したりしな いことを企業側に伝えておく。 ・支援者は企業の仕事を事前に調べ知 識をもつようにしておく。 ・本人は雇用後は一般職員と同程度に働きた いという目標を持っており体力・持続性には 問題ないことが証明できているが、支援者は 正社員に求められる能力とに隔たりがあると し、障害を受け入れるために一般企業での就 労体験をさせている。また、企業訪問時に障 害者雇用の可能性があるかの確認もしておら ず、職場開拓にいたっていない上に、利用者 の気持ちに寄り添うことができていない。 ・IPSでは一般の地域社会で精神疾患を持 たない人たちと一緒の職場で共に働くこ とが、生活の質を高め、健康を増進させ、 スティグマを軽減させるという考え方を 前提としている。支援者は障害を受け入 れさせるための支援ではなく、「仕事に 就きたい」という気持ちを大切にした就 労支援が必要であり、利用者本人との信 頼関係を築くことが基本である。 (能力評価) ・職業能力評価を地域障害者職業セン ターでの評価を基準にしたが、実際 には生活場面や職業場面でなければ わからない評価がある。 ➡ ・アメリカのIPSでは標準化されたテスト、 ワークサンプル、職業適応訓練などの評 価・査定方法はプロセスには含まれてい ない。代わりに本人との会話や家族の情 報、臨床記録などから収集した情報に基 づきプランを作成し、仕事に就くのに最 善と思われるプラン作成をする。関係作 りをしっかりと行い、本人のニーズに応 じた仕事を探し、実際の現場で実際の状 況をみて具体的な評価をすることが重要。 (ハローワーク) ・ハローワーク担当者に障害者の就 労や就労支援についての理解がない と、企業の人事担当者に伝わらない。 ➡ ・支援者により、ハローワーク担当者 や企業の人事担当者に十分な説明を 行い、障害者の就労とジョブコーチ についての理解を促す。 (障害者) ・本人にやる気があっても、精神障害 者であることを理由に断られる。 ➡ ・障害者への理解を企業に求め、本人に 失敗体験をさせない職場開拓と職場の 意向を確認してからの支援を行う。 ・精神病であることを知られて仕事を やめた。 ・支援者自身が本人がどれくらい働け るかを把握しておき、人事担当者に 説明し理解を得る。

(13)

(企業側の問題) ・企業が1年間の就労体験を要望。 ➡ ・支援者自身が本人がどれくらい働け るかを把握しておき企業に説明する とともに、制度の説明と活用を促す。 ・企業側がトライアル雇用などの制度 を知らない。 ・支援者が企業側にトライアル雇用な ど制度の情報提供を行うとともに制 度の利用を提示し就労につなげる。 ・訪問先の人事担当者が精神障害者へ の正しい知識をもっていない。 ・障害者への理解を企業に求める。 ・職場開拓時に支援者から人事担当者に精 神障害者について説明を行い理解を促す。 (経済的問題) ・経済的不安は精神的不安につなが る。 ➡ ・就労支援をするにあたって、生活面の支 援も同時に行う必要がある。就労を考え られる環境を作ることが必要である。 (社会資源の問題) ・人的資源の面で、日常の就労支援ス タッフがNSとPSWのみで就労支援 の経験がない。 ➡ ・就労支援をするにあたっては、就労支援未 経験者のみの援助チームでは利用者に十分 な援助ができない。就労支援担当者として 就労支援者研修を修了した者かジョブコー チ研修修了者を配置すべきである。 ・就労支援に関するプロの支援者がい ない中での、スーパーバイザーによ る月に1度の個別スーパービジョン である。 ・スーパーバイザーは最低でも週に1 回の話し合いを持ち、支援サービス プランのあらゆる面についてグルー プとして意見を提示すべきである。 図表

15

:7事例からみる就労への障害の要因と必要な支援 出典:高齢・障害者雇用支援機構『障害者の職業的自立に向けた訪問型個別就労支援の方 法に関する研究調査Ⅱ』平成17年度調査研究報告書通刊258号 平成19年3月の7 事例の内容について筆者の検討を表にしたものである。

⑴ 「

train then place

」から「

place then train

」への体制転換および最低 賃金の保証された労働契約と多様な就労形態の必要性の問題

IPS

プログラムは「

place then train

」アプローチが基本だが、精神障害 者への就労支援には「

train then place

」モデルも否定できないとし、体制 転換にあたっても福祉的就労の場の充実、アルバイトや短時間就労を一般雇 用の場で確保するなどの多様な対応が必要であること、また、「

place then

train

」を可能にするには最低賃金が保証された労働契約に則った多様な就 労形態が必要であることが挙げられている。ここでは、この2つの点につい て検証する。

(14)

① 「

train then place

」から「

place then train

」への体制転換

筆者は、「

train then place

」から「

place then train

」の体制転換は有効 かつ推進すべきであると考えている。第2節の「

IPS

の有効性」で述べたよ うに、アメリカの研究では

IPS

の有効性が証明されており、実際の仕事に 必要とされるスキルの指導をその場で受けることが一番効率がよいと考え る。しかし現在の日本においては、アメリカの就労支援スペシャリストに位 置する指導者が不足している。つまり、わが国の個別的状況・訓練内容にも よるが、訓練してからの就労が有効と考えられる場合には、本人に最も適切 と思われる方法を採用すべきと考えている。しかし、今後は「

place then

train

」の体制が整うような政策が必要と考える。

現在の日本の就労支援は、「

train then place

(訓練してから就労)」とい うのが一般的であり、職業リハビリテーションは従来通りの就職前の相談・ 評価・準備訓練・就職斡旋などに重点が置かれ、フォローアップなど就職後 の援助は短期間に限定されている。この事に関して小川浩他88)は、この方法 では①職業適性や就職可能性を予測することが困難、②職業訓練は実際の職 場で必要とされるスキルとの関連が少なく応用することが困難、③職場の環 境要因は常に変化するために就職後の継続的な援助が不可欠である、などの 問題が生じていると述べている。また、このような問題を踏まえ、援助付き 雇用でのジョブコーチは具体的な仕事を通しての直接援助を行うが、その中 には仕事への援助の他に通勤訓練、休息時間の過ごし方、対人関係の調整、 権利擁護などが含まれているとしている。そのような意味では、宇和島の事 例では

IPS

の職業サービスの効果的な原則に準じた援助が行なわれたと考え る。 図表

14

に示す事例では全員が就労経験者であるが、7名中4名が企業での 就労体験から雇用へとつながっている。2名(事例5・6)に関しては、ハ ローワークを活用し就労体験を行っているが就労にはつながっていない。し かし就労体験や就職活動は経験としての実績として今後につながることは間 違いないであろう。この経験こそがリハビリであるとともにリカバリーであ

(15)

り、そこに継続的な支援を行うことで就労につながると考える。 なお1名(事例7)は、就労よりも入院回避の支援が必要とされる事例 であるが、服薬管理への援助という医療的な関わりが迅速に行われたこと により入院に至っていない。この事は重要な事であり、モデル事業が

ACT

IPS

の特徴を取り込んだチーム編成となっていることにより、訪問看護ス タッフが迅速に対応し、医師への連絡、服薬管理がスムーズに行われた結果 だと考える。 しかし、チームは看護師(

Ns

)と精神保健福祉士(

PSW

)からの編成で あり就労支援経験者がいない。事例ではこれらのチーム編成が示唆する多く のことが見えてくる。そこで図表

15

に、この事例から見る「就労の障害に つながると考えられる要因」と、それに対して「どのような支援・対策が必 要か」についてまとめてみた。そこには就労体験に関わる賃金問題や就労時 間への不安、支援者側の力量不足からくる問題、能力評価に関する問題、ハ ローワークや企業側の障害者への理解不足の問題、障害者への社会の理解不 足、企業側の就労支援制度への知識不足などが浮き彫りとなった。 宇和島の取り組みでは、地域の資源活用という事で就労支援を行っている スタッフは経験や知識のない

Ns

PSW

である。この事から考えると、アメ リカで取り組まれている

ACT

IPS

による就労支援に比べてスタッフの偏 りが否めず、利用者への適切な援助ができていない部分もみられる。また、 スーパーバイザーが外部からの月1回の関わりでは就労支援スタッフの負担 が相当に大きい状況にあると考える。なぜならばアメリカでの就労支援に おける

ACT

の職業訓練専門員は、職業開発、職業配置(

Job Placement

)、 職業指導(

Job Coaching

)と患者の働く職場の雇用者と被雇用者について の専門的知識を必要とされる89)。さらに

IPS

による就労支援スペシャリスト は就労を専門とした援助を行うのであり、スタッフが援助付き雇用を提供す ることに自信をもつには約1年かかると述べられている90)。その点から考え ても宇和島の既存の資源(

PSW

NS

)による代替では、支援への無理が生 じることは想定できることであり、最低限の対応としてもジョブコーチの研

(16)

修を終えた職員の配置は必要だったのではないかと考える。だが、この取り 組みから、わが国で「

place then train

」の体制をとるには、就労支援スペ シャリストとスーパーバイザーの充実の必要性が見えてくる。

また、事例4で

SST

Social Skills Training

)の面接訓練を行い効果が 出ていることを考えれば、日常生活面での訓練は必要な場合がある。だが就 労に関しては事前の訓練が必ずしも必要とは限らず、仕事に必要とされるス キルを就労した時点で学ぶことの方が効果的であろうと考える。 ② 最低賃金の保証された労働契約と多様な就労形態の必要性 宇和島のモデル事業は、基本的に既存の資源利用という趣旨で行われてお り、主軸としてはハローワークを活用した就労支援活動で、多様な就労形態 を開発するまでには至っていない。ここで就労支援を行っているスタッフ自 身は就労支援の経験がないことから、ハローワークの活用が主となってい る。 種 類 内 容 実施先 宇 和 島 で 活 用 さ れ た 就 労 支 援 制 度 ・職業能力評価 ・職業指導 ・障害者手帳の有無を問わず、就労したい障害者が対象。 職業能力評価として、ワークサンプル作業検査、心理検 査、職業適性検査などの就職や職場適応のための職業評 価を実施し、職業への適応性を高め適切な職業選択が行 えるように相談等を実施。 地域障害者職業センターが窓口 ・ジョブコーチによる支援事業 ・就職または職場適応に課題のある知的障害者等の雇用 の促進および雇用の継続を図るため、センターに配置す るジョブコーチ等を事業所に派遣し、障害者及び事業主 に対して、雇用の前後を通じて障害特性を踏まえた直接 的、専門的な援助を行う。期間は1∼7ヶ月 ・地域障害者職業センターに所属する配置型ジョブコー チや第1号ジョブコーチ、第2号ジョブコーチが支援す る。 ・平成17年10月より、支援を行う社会福祉法人等及び事 業主の職場適応援助者を対象とする助成金として、職場 適応者助成金が設けられた。 地域障害者職業センターが窓口 ・精神障害者社会適応訓練事業  (職親制度) ・都道府県が協力事業所と委託契約を結び、現状では直 ちに企業に雇用されることが困難な精神障害者を対象 に、協力事業所での訓練を通じて、集中力、対人能力、 仕事に対する持久力及び環境適応能力等を養い、社会復 帰の促進と社会経営活動への参加促進を図ることを目的 とした事業。事業主への委託料1日2000円が大部分、訓 練生への手当て制度はないが、県によっては制度がある。 事業主が委託料を手当てに充当している例が多い。 ・対象者:通院治療中で病状が安定し主治医が訓練受講 を了承している者。 ・訓練期間:6ヶ月だが、3年を限度に延長できる。 市町村が窓口で保健所が連携協 力先の制度

(17)

宇 和 島 で 活 用 さ れ た 就 労 支 援 制 度 ・職場適応訓練事業 ・都道府県知事が事業主に委託し、身体障害者、知的障 害者、精神障害者等の能力に適した作業について6ヶ月 (重度障害者は1年以内)の実施訓練を行い、それによっ て職場の環境に適応することを容易にし、訓練終了後は 事業所に引き続き雇用してもらおうという制度。事業主 へは、訓練委託費が、訓練生には訓練手当が支給される。 ・短期職場適応訓練制度(1ヶ月以内)もある。期間は 2∼4週間、訓練生に日額960円の支給あり。 公共職業安定所が窓口 ・トライアル雇用 ・日本経営者団体連盟(日本経団連)が窓口となり実施 した緊急雇用対策プロジェクトに始まり、地域障害者職 業センターで実施していた「障害者雇用機会創出事業」 (平成13∼14年)を実施主体と名称を変更したもの。 ・事業主に障害者を短期間(3ヶ月間)試行的に雇用し てもらい(トライアル雇用)、障害者雇用に対する理解 を深めることにより、本格的に繋げていこうとするもの。 ・トライアル雇用の期間中(3ヶ月を限度)は、障害者 には賃金(月1人につき4万円)、事業主には出勤日数 に応じたトライアル雇用奨励金が支払われる。 公共職業安定所が窓口 (障害者施行雇用事業) 宇 和 島 で は 活 用 さ れ な っ た 就 労 支 援 制 度 ・就労移行支援事業 ・福祉施設から一般就労への移行を進めるための事業。 一般就労を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し 等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる65 歳未満の者を対象とする。基礎訓練後に職場見学・実習、 休職活動、職場開拓、トライアル雇用にて就職につなげ る。期間は2年 市町村障害者自立支援法第5条 の14 ・就労継続支援事業 ・通常の事業所で働くことが困難な障害者に、就労の機 会の提供や生産活動その他の活動の機会の提供、知識や 能力の向上のための訓練を行う。利用者が事業所と雇用 契約を結ぶA型「雇用型」とB型「非雇用型」がある。「雇 用型」は養護学校や離職者を対象とし、雇用契約に基づ きながら一般雇用を目指すもの。「非雇用型」は雇用契約 は結ばず就労機会の提供をするもので、賃金は事業所毎 に定める。期間の制限はA・Bともになし。 市町村障害者自立支援法第5条 の15 ・雇用継続支援 ・職場の人間関係などで悩んでいる精神障害者の相談に のる。 ・雇用を継続したいが、作業能率が一定しないなどの悩 みなどへの助言・援助。 地域障害者職業センター ・雇用促進支援 ・企業で働きたい、就職に必要な力を身につけたい人に、 社会生活技能等の向上のための支援(精神障害者自立支 援カリキュラム)。 ・職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援。 ・精神障害者を雇用した事業主へのアドバイス。 地域障害者職業センター ・職場復帰支援(リワーク事業)・職場復帰を希望する人への支援。・休職中の精神障害者の職場復帰に向けての取組み方を 事業主に指導する。 地域障害者職業センター ・職業準備支援 ・センター内で、作業支援を通じた就職等を目指すため の基本的な労働習慣の体得のための支援や、事業所見学 や職業講話等を通じた職業に関する知識の習得のための 支援を個々の課題等に応じて総合的に行う。 地域障害者職業センターが窓口 図表

16

:精神障害者への就労支援制度 出典:高齢・障害者雇用支援機構『障害者雇用ガイドブック平成19年版』雇用問題研究会、 平成19年、pp.408‐448の内容を筆者が一覧表に作成したものである。 このモデル事業で利用された社会資源は図表

13

16

に見るように、ハロー ワーク、社会適応訓練事業、職場適応援助者(ジョブコーチ)事業、職業訓 練校、就労体験、トライアル雇用、地域(愛媛)障害者職業センターの職業 評価、障害者求職登録、小規模作業所、職場見学、訪問看護で、社会保障等

(18)

では障害者基礎年金受給、障害厚生年金受給、療育手帳申請の活用などの公 的制度を利用している。 事例の障害者らは、障害者求職登録企業での就労体験やトライアル雇用後 の短時間労働から就労につないでいる。事例6では、企業側がトライアル雇 用(週5日

20

時間以上で3ヶ月の期限)を活用してみたいとの希望を示した が、本人は最初から1日4時間の仕事に就くことに自信が持てなくトライア ル雇用を活用するに至っていない。このような場合、支援者は社会適応訓練 事業を企業側に紹介し、短時間でも就労経験につなぐなどの工夫が必要では なかったかと考える。トライアル雇用も社会適応訓練事業も正式な雇用では ないために最低賃金は保障されていないが、就労経験は本人が次のステップ につながる階段だと考える。また、今回の事例以外ではあるが、障害者雇用 助成金制度を利用していない事により最低賃金以上の賃金をもらうことがで きている例が紹介されていた。

2007

(平成

19

)年に高齢・障害者雇用支援機構が全国重度障害者雇用事 業所協会員事業所に障害者雇用状況に関するアンケート調査91)を行ってい る。全国重度障害者雇用事業所協会員事業所では、約半数の事業所が精神障 害者への雇用を考えているとともに、健常者と同一の賃金制度を取ってお り、障害者自身にも障害と共存しながら就労するための努力を望んでいる。 アンケート結果では、精神障害者の雇用を「前向きに考えて行きたい」事 業所

22.3

%、「条件が整えば検討したい」事業所

32.2

%、「今の所考えられない」 事業所

45.5

%である。つまり精神障害者の雇用を受け入れる準備がある所が

54.5

%と半分以上の割合を占めている。ここで前向きな返事があった事業所 の約半数は「できるだけ雇用していくようにしたい」と答えている。そして、 それらの事業所が雇用するにあたって福祉施設に指導してほしいと望んだも のには以下の項目がある。  ①働く習慣・意識をもてるようにする       

85.5

%  ②生活の自己管理・身辺処理ができるようにする  

63.6

%  ③職場での人間関係に適応できるようにする    

44.5

(19)

 ④雇用について家族の協力を得られるようにする  

30.0

%  ⑤ひとりで通勤できるようにする         

26.4

% また全般の障害者を対象とした数値ではあるが、障害者の賃金制度につい ては、「障害者も健常者も同一の賃金制度」の事業所が

49.7

%あり、「印刷・ 製本・紙製品」、「ゴム・プラスチック・装飾品」、「電気機器」、「卸・小売業、 飲食店」、「情報処理サービス」の分野で割合が高い。「健常者と障害者は別々 の賃金制度」の事業所は

30.2

%で、「栽培飼育・食品」、「窯業・土石製品」、 「マッサージ・清掃・リサイクル」の分野での割合が高い。「障害者の一部は 健常者と同一の賃金制度をとっているが、障害者によっては別の賃金制度を とっている」事業所は

20

%で、「繊維・衣服」で割合が高い。 これらの調査データから、精神障害者への雇用の機会が多岐にわたってい ることが窺えるとともに、企業側の雇用意識があまり高くないことも理解で きる。精神障害者が就業できない状況にあるのは精神障害者への就労の機会 の少なさ、雇用義務対象外という制度が要因している可能性は高い。今まで の政策は、障害者を囲い込む父権主義的な政策を行ってきたために就労への 意識づけが不十分であり、障害者への就労教育なしに就労のみを促進してい るのが実状である。就労するという意識づけも教育の一環として考えなけれ ばならない課題であろう。 最低賃金(法)制度が

2008

(平成

20

)年7月1日に改正されたが、この 改正では、すべての労働者について最低限度の賃金水準を保証する役割を地 域別最低賃金92)が担うこととし、その決定基準や罰則の見直しを行うととも に、産業別最低賃金93)の在り方や派遣労働者への適用関係などについて改正 を行ったものである。しかし「最低賃金の減額特例」においては、いままで 適用除外となっていた対象(①精神又は身体の障害により著しく労働能力の 低い者、②試の使用期間中の者、③基礎的な技能等を内容とする認定職業訓 練を受ける者のうち省令で定める者、④軽易な業務に従事する者、⑤断続的 労働に従事する者)の労働者については、一般の労働者とは労働能力が異な るとし、使用者が都道府県労働局長の許可を受けた時は、労働能力その他の

(20)

事情を考慮して、個別に最低賃金の減額の特例が認められるとしている。つ まり最低賃金法は改正されたものの、障害者など能力の低い者や時間給によ る仕事の場合には最低賃金以下であることが法的に定められたものであり、 法制度的には障害者の労働能力に準じた賃金設定で、障害者にとっては今ま でと変らないのである。これは障害者の雇用促進を促す傍らでの賃金制限で あることを理解し、これら対象者が就労を希望した場合の賃金保証と多様な 就労形態は大きな課題といえよう。  では最低賃金が保証された労働契約での就労を実現するためにはどうした らよいのであろう。障害者の制度の中では賃金や期間の制限が設けられてい るものが多い。であるならば最低賃金での仕事ができる所の開拓を行うのも 1つの方法ではあるまいか。過去に職場体験や就職依頼した事業所に協力を 求めたり、その事業所と取引のある他の事業所に求人情報を教えてもらうな ど、地元の事業所や経営団体に協力を依頼するなどの就労支援者自身での開 拓も必要であろう。その際は、地域特性を活かした農・林・漁業などの仕事 を視野に入れた雇用先の開拓も今後は必要である。現在の日本は、高齢者人 口の増加により農業人口は減り、土地の有効利用がなされていない地域もあ る。だがその割には自然食嗜好ブームも加わり、自然食品の通信販売等が好 まれている。使われていない土地を有効利用し、高齢者の有償ボランティア による農業指導、障害者による農業などは、今の時代に望まれる仕事ではあ るまいか。 また、東京の「

JHC

板橋」や北海道浦河の「べてるの家」が取り組んで いるような、地域を巻き込んだ障害者による事業の立ち上げなども必要と考 える94)。社会状況に即した就労形態を考え、そこに最低賃金の保証を付加し、 自分たちが必要とする多様な就労形態を自分たちで作ることも今後は必要と 考える。そして、そのような事業への支援制度を確立することが望まれる。 精神障害者の就職希望は年々増加の一途を辿っている。図表

17

は厚生労働 省が

2008

(平成

20

)年5月に発表している「精神障害者の就職件数及び新 規求職申込件数の推移」である。精神障害者の求職申込みが著しく、新規求

(21)

職申込件数は毎年

20

%∼

30

増の伸びとなっており、平成

19

年度では平成

16

年 度に比べると2倍強の増加で、急増傾向にあることが理解できる。なお就職 件数も平成

15

年度から着実な増加がみられ、

18

年度には前年に比べ約

2000

人多く就職している。これは

2006

(平成

18

)年4月施行の障害者自立支援 法で、障害者の就労支援を抜本的に強化することとし、関連する障害者雇用 (件、人、%、%ポイント) ①新規求職申込件数 ②有効求職者数 ③就職件数 ④就職率(③/①) 前年度比 前年度比 前年度比 前年度比 平成

11

年度

4,255

0.5

8,040

15.6

1,384

1.8

32.5

0.4

12

年度

4,803

12.9

9,342

16.2

1,614

16.6

33.6

1.1

13

年度

5,386

12.1 10,885

16.5

1,629

0.9

30.2

3.4

14

年度

6,289

16.8 12,553

15.3

1,890

16.0

30.1

0.1

15

年度

7,799

24.0 14,333

14.2

2,493

31.9

32.0

1.9

16

年度

10,467

34.2 16,667

16.3

3,592

44.1

34.3

2.3

17

年度

14,095

34.7 19,149

14.9

4,665

29.9

33.1

1.2

18

年度

18,918

34.2 24,092

25.8

6,739

44.5

35.6

2.5

19

年度

22,804

20.5 27,101

12.5

8,479

25.8

37.2

1.6

20

年度

28,483

24.9 31,655

16.8

9,456

11.5

33.2

4.0

図表

17

:「精神障害者の就職件数および新規求職申込件数の推移」 出典:厚生労働省ホームページ 報道発表資料 アクセス、2009年5月15日ハローワーク における障害者の就職件数、横ばい(平成20年度における障害者の職業紹介状況 等) のp5 就職件数及び新規求職申込件数の推移 から引用。

(22)

促進法が改正され、精神障害者に対する雇用対策の強化を図るために、精神 障害者を障害者雇用率の算定対象にしたことによる影響が大きいものと考え る。 図表

18

−1∼3は

2008

(平成

20

)年1月に厚生労働省が発表したデータ である。図表

18

−1は一般に労働年齢といわれる

15

64

歳までの年齢およ び障害別の就業状況をまとめたものである。ここで障害別の就業状況をみる と、精神障害者の就業者割合は

10

20

%台で他の障害者と比べると極端に低 く、不就業者割合は

70

90

%と高い比率になっている。だが図表

18

−2にみ るように、不就業者の中で就業を希望しているものは

62.3%

と高い結果がで ており、障害の等級に関わりなく就業機会があれば就業したいと考えている 者が6割いる。図表

18

−3の就業者(

25

%)の就業時間別の雇用割合では、 約7割の精神障害者が週に

20

時間以上働くことができている。これらの情報 からしても、就労の機会と障害の程度に応じた就労形態(有期雇用契約によ るステップアップ雇用、短時間労働・機能対応型就労95)など)、就労支援制 度の整備が必要であり、その事により精神障害者の就労率は高まるであろう と考える。

(

単位:千人、%

)

障害の種類 身体障害者 知的障害者 精神障害者 区分 就業者 不就業者 無回答 就業者 不就業者 無回答 就業者 不就業者 無回答 就 労 年 齢

15

19

26.5

(%)

73.5

(%)0(%)

24.4

(%)

73.6

(%)

2

(%)

25

(%)

75

(%)

0

(%)

20

24

50

50

0

70

28.5

1.5

26.3

71.1

2.6

25

29

52.5

44.3

3.3

62

35.9

2

18.8

80

1.3

30

34

58.7

38.9

2.4

63.6

32.3

4.1

20.8

78.6

0.6

35

39

54.6

42.9

2.6

56.8

40.8

2.4

19

79.3

1.7

40

44

58.5

40.7

0.8

52.5

45.1

2.5

16.5

81.9

1.6

45

49

55.3

41.2

3.5

52.1

44.8

3.1

19.7

78.9

1.3

50

54

52.4

44

3.6

44.1

52.9

2.9

18.2

79.4

2.4

55

59

41.1

55.2

3.7

47.4

50

2.6

10.7

84.2

5.1

60

64

28.6

67.8

3.6

16.4

83.6

0

8.2

91

0.7

無回答

25.6

63.5

10.8

30.8

61.5

7.7

33.3

61.5

5.1

総数(千人)

1,344

355

351

図表

18

−1:年齢階級・障害別就業状況

(23)

54.2 58.9 75 62.3 41.7 36.2 20 33.1 4.2 4.9 4.3 4.6 0 10 20 30 40 50 60 70 80 就職希望あり(%) 就職希望なし(%) 無回答(%) 割合(%) 1級 2級 3級 全体の割合 障害程度 就職希望あり(

%

)就職希望なし(

%

) 無回答(

%

) 1級

54.2

41.7

4.2

2級

58.9

36.2

4.9

3級

75

20

4.3

全体の割合

62.3

33.1

4.6

図表

18

−2:精神障害者の不就業者の就業希望有無の割合 (単位:%) 就業者 (

25

%)の就 業時間割合 常用雇用

30

時間以上

20

30

時間以上時間未満

20

時間未満 無回答

32.5

40.5

27

29.7

2.7

図表

18

−3:精神障害者の就業者における就業時間別の雇用割合 出典:図表18−1∼3は厚生労働省2008(平成20)年1月18日発表の「身体障害者、知的 障害者及び精神障害者就業実態調査結果について」より抜粋し筆者が表にしたもの である。 さらに障害者の雇用に深く関わってくるのが法定雇用率である。精神障害 者は雇用義務対象にはなっておらず、精神障害者保健福祉手帳保持者を雇用 している場合のみ雇用率に算定することができるとなっている。実雇用率と して算定されるようになったのも

2006

(平成

18

)年からであり、それまで 精神障害者は障害者雇用施策の対象となっていなかった。この事は、就労す

(24)

る機会の制限と就労職種の制限に関わってくると考える。つまりは多様な就 労形態の実現には、制度条文に障害者の一般雇用の促進を掲げるだけではな く、実雇用につながる政策を行わなければ精神障害者の一般雇用の実現化は 難しい。 そして今後、障害者には学習・教育(障害をもちながら働くためにはどう したらよいか、自己管理はどのようにしたらよいかなど)の機会を設けると ともに、制度的には精神障害者が働けるような就労形態の制度化を促進し、 企業には障害者理解の促進、指導者育成などの人的環境の調整を行う、と いった多方面からの改善が必要である。障害者・制度・企業の改善などによ り、最低賃金の保証された労働契約や企業の多様な就労形態への実現につな がっていくものと考える。 ⑵ 日本のジョブコーチ制度のもとでの

IPS

プログラムの特性を踏まえた 援助付き雇用の展開と雇用支援専門家の育成・確保の問題 ここでは3つの検証を行う。1つは日本のジョブコーチの現状、2つめは 日本のジョブコーチ制度で

IPS

プログラムの特性を踏まえた援助付き雇用の 支援展開ができるかについて、3つめは雇用支援専門家の育成・確保の問題 である。  ① 日本のジョブコーチの現状 職場適応援助者(ジョブコーチ)事業は、障害者の雇用の促進等に関する 法律の一部を改正する法律(平成

14

年法律第

35

号)により、障害のある人 の職場での適応を容易にするため、また職務を円滑に遂行するために必要な 技能に関する指導や職場における支援対象者の特性に関する理解の促進など の支援を行うことを目的に、

2002

(平成

14

)年5月7日に施行された。そ の後

2005

(平成

17

)年

10

月の法改正で、従前の「職域開発援助事業」から 発展名称変更されたものである。ジョブコーチ支援事業は、職場適応援助者 (ジョブコーチ)が障害者や事業主・家族に対して職場適応に関する支援を

(25)

実施するものであり、精神障害者には非常に有効であるとされている。

2005

(平成

17

)年9月までのジョブコーチ支援事業は「配置型ジョブコー チ」「協力機関型ジョブコーチ」で、「配置型ジョブコーチ」は地域障害職業 センターに配置され職業カウンセラーの指示の下に社会福祉法人等の協力機 関と連携し、専門的な支援を行っていた。また、「協力機関型ジョブコーチ」 は地域障害者職業センターと連携して支援を行う福祉施設に所属し、職業カ ウンセラーや配置型ジョブコーチと連携して支援を行っていた。 協力機関型ジョブコーチ 専門特化 助成金に移行 (法改正前) (H17年9月まで) ジョブコーチ支援事業 配置型ジョブコーチ ジョブコーチ助成金を創設 (H17年10月から) (法改正後) ジョブコーチ支援事業 ジョブコーチ(地域センター型) ジョブコーチ助成金 第1ジョブコーチ(福祉施設型) 第2号ジョブコーチ(事業所型) 図表

19

−1:法改正によるジョブコーチ状況 出典:http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/pdf/28.pdf (職場適応援助者 (ジョブコーチ)支援事業の見直しについて)の資料を筆者が一部変更したもので ある。(2009/8/25アクセス) だが図表

19

−1に示すように、

2005

(平成

17

)年の法改正後は「配置型ジョ ブコーチ」は「地域センター型ジョブコーチ」となり、支援が必要な障害者 (精神障害者、発達障害者、高次脳障害者)を中心に支援を行うことで高度 な専門性を発揮するシステムとなった。また「協力機関型ジョブコーチ」は ジョブコーチ助成金に移行され、第1号ジョブコーチとなった。第1号ジョ ブコーチは福祉施設型で、福祉施設が行うジョブコーチ支援に助成金を支給 するものであり、障害者の身近な福祉施設の支援者が生活面の支援と合わせ て支援を実施するものである。第2号ジョブコーチは事業所型で、事業主が 自らジョブコーチを配置する場合に助成金が支給されるものであり、職場や

(26)

業務内容を熟知し、指導経験豊富な企業内の人材が支援を実施する。 これら障害者雇用促進法の改正による「職場適応援助者助成金」の創設に 伴い、職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成が

2006

(平成

18

)年4月よ り厚生労働省が定める研修として指定した民間機関で行われるようになっ た。これは従来行われていた高齢・障害者雇用支援機構による養成研修に加 え指定機関でも行われるようになった制度である。この養成では、第1号職 場適応援助者(福祉施設型ジョブコーチ)と第2号職場適応援助者(事業所 型ジョブコーチ)の双方の養成研修が行われる。研修開催地域は千葉県、大 阪府、東京都、広島県、福井県、三重県、静岡県、福岡県などである。研修 実習機関は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の他に民間機関で行わ れており、研修日数は千葉にある障害者職業総合センターでは本部研修5日 間、地域障害者職業センターでの地域研修4日の計9日の研修となっている が、民間機関では6日間となっている。 図表

19

−2は、

2006

(平成

18

)年から

2009

(平成

21

)年までの職場適応 援助者(ジョブコーチ)配置数の変化である。

2009

(平成

21

)年3月現在 では、地域センターと第1・2号職場適応援助者を合わせて

970

人で、

2006

(平成

18

)年4月からの約3年間で

244

人の増加となっている。しかし、第 2号職場適応援助者(事業所型ジョブコーチ)の配置数は、3年間で

37

人の 増加はあるものの

52

人と極端に少ない状況にある。平成

21

年度の職場適応援 助者養成研修の募集(厚労省の障害者雇用対策の概要から)は、第1号職場 適応援助者が

252

人、第2号職場適応援助者が

60

人の募集定員となっており、 第2号職場適応援助者は募集人員に比べて応募人員が少ない状況が窺える。 因みに第1号職場適応援助者の要件は、高齢・障害者雇用支援機構が行う 第1号職場適応援助者養成研修、又は厚生労働大臣が定める第1号職場適応 援助者養成研修を修了した者であって、就労支援等を実施する機関、医療・ 保健・福祉・教育機関、障害者団体、障害者雇用事業所等において、障害者 の就労又は雇用の継続のために①職業指導、作業指導、②社会復帰、職場復 帰の支援、③障害者の雇用管理等に関する業務を1年以上行った経歴がある

(27)

者である。 0 100 200 300 400 500 600 700 人 2006年4月 2007年3月 2008年3月 2009年3月 地域センター型 第1号(福祉施設型) 第2号(事業所型) 種類 年 地域センター型(福祉施設型)第1号 (事業所型)第2号 合計

2006

年4月

304

407

15

726

2007

年3月

304

515

23

842

2008

年3月

304

567

31

902

2009

年3月

304

614

52

970

人 図表

19

−2:ジョブコーチ配置数 出典:厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課の報道発表資料に ある「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援について」の項目の各年度の数 値をもとに筆者が表にしたものである。(2009/8/25アクセス)    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/06/dl/h0601-1a.pdf(2006年4月)    http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/pdf/13.pdf(2007年3月)    http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/pdf/28.pdf(2008年3月)    http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/pdf/13.pdf(2009年3月)

参照

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