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東北大学遺伝生態研究センター通信 No. 29

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東北大学遺伝生態研究センター通信 No. 29

著者

東北大学遺伝生態研究センター

発行年

1995-07

(2)

遺伝生態研究センター通信 No.29

泉九九苧

A@遺碩砕畑

旧〔

1995. 7. No.29 ィi

8年目を迎えた遺伝生態研究

東北大学・遺伝生態研究センター 服 部   勉 私どもの研究センターが発足して7年の歳月が流 れ、今年は8年目ということになります。この機会 に私なりに、これまでの経過を振り返り、将来への 展望について、述べさせていただきたいと存じます。 1.本センターの目指してきたもの 行政改革の荒々しい嵐の中で誕生した本センター が、 「生態系における(生物)種の(生活の)追 伝的基礎」 (カッコは筆者)の解明を目指した背 景については、本通信1号で菅初代センター長が、 2号で私自身が書きました。一方では、それには 「良き品種の作出と環境に適した育成法」という 農学の基本課題の現代化という、改組前の学問的 伝統の継承の側面があります。しかし他方では、 「二垂らせん」に象徴される現代分子生物学が、 生命の基本原理を目指し、情報がよく整備された 少数のモデル生物への研究集中化を極度に進めて 8年目を迎えた遺伝生態研究 水環境の変化と植物 イネの出穂期を支配する遺伝機構の解明について いる中で、野外の生物での分子生物研究の可能性 を追求、拡大するというチャレンジの側面を秘め ているのであります。 こうした二側面について、私自身は次のような 意味を感じてきました。第一に、とかくするとス クラップ・アンド・ビルドの掛け声の下に、古き ものを投げ捨て、新規のものを偏重するわが国の 世相の中で、古きものの価値を最大限生かす試み として、歴史的意味があり、是非何ものかを生み 出したい。第二に、分子生物学でモデル生物から 離れることが、どんなに的難な賭けであるか、誰 もが考える中で、野外生物からでなければ探りあ てられない真実に迫る大冒険の可能性を、是非と も浮かび上がらせたい。こうしたこともあって、 私はセンターの研究方向に、大きなロマンを感じ てきました。 吹 東北大学・遺伝生態研究センター 服部  勉 1 東京農工大学・農学部 平沢  正 3 一一京都大学・農学部附属農場 井上 博茂 5

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遺伝生態研究センター通信 No.29 2.全国共同利用のもつ可能性の探求 センター発足当時、全国共同利用という制度の もっ可能性が、余り明瞭には理解していませんで した。しかし、遺伝生態というかなり思い切った 新方針に、多くのスタッフが戸惑っている中で、 新しい方向での研究活動を軌道に乗せるために、 全国共同利用活動を生かそうとしました。初期の 時点で、特に重視した試みは、毎年2-3回開か れるワークショップでした。これには、 3つのタ イプを設定しました。すなわち、 (1)特定分野の最 新の研究法の紹介と可能性の追求、 (2)野外生物と 関連した諸研究の成果とそのモデル化、そして(3) 遺伝生態についての新しい可能性の探求でした。 これらのワークショップの成果は、主として出版 物IGEシリーズに纏められました。現在、 20冊 を越えようとしています。これらのワークショッ プを通じ、私たちは多くのものを学ぶと同時に、 いろいろな得難い共同研究者を見出してきました。 こうして生まれた共同研究や協力関係が、センター の研究活動に奥行を加え、具体的成果を拡大して もくれました。 共同利用研究はさらに、研究者の人事交流や大 学院生の交流をも生み出してきました。今ではこ うした研究者や大学院生の交流を、さらに組織的、 かつ効果的に進める工夫に取り組みはじめていま す。たとえば、各地の大学研究室との間に、共通 の研究課題で強く結ばれたネット・ワークを作る ことを考えています。 3.生みの苦しみと新人の参加 とはいえ初期のセンターでは、これまでの研究 の延長線上に、遺伝生態的要素を加味することは 至難の業でした。そのような加味の試み自身を、 新しがり屋のすることとする冷たい目もありまし た。今から見ると不思議に思えるかも知れません が、生物の研究で分子生物学はやがて無力になる だろうという強い信念も、周囲にかなり多く存在 していました。そんな中で各部門の責任者を中心 に、遺伝生態的研究を軌道に乗せる手がかりを得 lJPIJn…∩ るための苦闘が、続きました。 この時期、農学研究所時代の蓄積から、紫外線 効果と関連した臨界環境分野、地球外生物分野で の新しい研究が生まれました。幸い前者を対象と した新部門も増設され、一層本格的な取り組みが 開始されました。また土壌細菌群の系統的解析の 基礎となるエココレクション構築も開始されまし た。困難の中にも、開拓者精神を貫くこと、それ は生き甲斐でもありました。 研究組織に新人を導入して活性化する手法は、 現在ではごく一般的になっています。本センター も、当然この手法に強い関心をもち、できるだけ ユニークな形で実現したいと願ってきました。私 たちの選んだ道は、各部門の責任者とは対照的な 研究背景をもつ若手研究者の導入でした。こうし て現在では、分子生物など新科学的教養で育った 若手を、どの部門でも迎えることができました。 経験や思考法が全く異なるこれら若手と、どのよ うな討論、摩擦をえて、新分野を開拓できるのか、 まさにこれからが正念場だと、考えています。 4.新しく生まれた可能性と将来計画 私たちの研究活動は8年目で、まだ最終的に総 括する段階ではありませんが、これまでの期間の 活動を通じ、将来に夢を託すいくつかの研究方向 も生まれてきました。そのひとつは、臨界環境下 での遺伝生態という問題です。臨界環境下では、 正常環境では認められない一連の遺伝子発現が起 こり、生物生活に新しい影響が生ずる可能性もあ りえます。また臨界環境は、紫外線量が圧倒的に 多かった原始生命環境の解明にも手がかりを与え てくれましょう。一方、地球外環境の生物たちは、 地球上では経験もしないスペクトル構成をもつ光 環境にさらされる上、重力の影響が極端に小さく なりもす。ここでもまた、地上とは違った遺伝子 発現の可能性が生まれます。こうした問題意識に よる諸研究は、地球型生物の特徴を、一段と明確 にしてくれるに違いありません。 また、人間にとって身近で、これまでブラック・

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遺伝生態研究センター通信 No.29 ◎㊤◎◎◎◎◎㊤脚 ボックスとされてきた地圏環境、とくに地圏微生 物の解明でも、新しい展望が生まれてきています。 まず複雑で掴みどころがないとされる地圏微生物 は、土の団粒構造を中心に解析することにより、 より微小な細菌群とより大きい糸状菌群く原生動 物群の間の住み場所、活動空間の分化が、より的 確に把握できること、多様な種から構成される細 菌群を増殖速度グループ(平板上でのコロニー形 成過程により識別される)に分解することにより 系統的解析が可能なこと、さらに薬剤耐性遺伝子 の地圏環境中での分布、拡散現象の解明が、耐性 ′ ■、 ′ 、 菌問題の根本的対策を可能とし、その実現のための 共同プロジェクトは国際的緊急課題であることなど です。 以上のような経験、蓄積を基礎に、私たちは今、 本センターの時限到来後、新しく建設されるべき新 センターの構想を作成しはじめました。全国各地の 研究者の方々に、これまでのご支援を感謝するとと もに、残る3年の本センター設置期間の引き続くご 支援をお願いする次第であります。

水環境の変化と植物

東京農工大学・農学部 平 沢   正 1.はじめに 水は植物の生育にとって不可欠で、欠乏すると 植物は種々の影響を受ける。体内水分の不足は、 土壌水分が減少した時だけでなく、蒸散の多い条 件では土壌水分が十分あってもおこる。体内水分 欠乏の程度は土壌水分の絶対量や蒸発散条件によっ て一義的には決まらない.植物が生育してきた条 件などによって、現在おかれている土壌水分や大 気環境が等しくても植物の受ける影響は著しく異 なる。このため、降雨が少なく土壌水分が著しく 減少する地域だけでなく、降雨の多い湿潤な地域 でも植物の水分欠乏が問題となる。これについて 筆者の所属する研究室で行ってきた実験や筆者の 体験を中心に簡単に紹介したい。 2.土壌水分が生育の初期から減少する場合 土壌水分が徐々に減少していく時は植物はこれ にかなりよく対応できる。水分が多く残っている 土壌で生長を開始した植物は、土壌水分の減少に 伴って根系を土壌深くまで、そして密に伸ばすと ともに、茎葉の繁茂を抑制し、さらに茎葉からの 蒸散が根からの吸水を大きく上回る時には、気孔 を閉じるなどして水分の消費を抑制する。土壌水 分の減少による乾物生産や子実生産の低下程度は、 蒸発散量、土壌の有効水分量と根系の密度や広が り(深さ)などが関係する。土壌水分は土壌の表 層から減少していくので、土壌水分の減少よりも 根の生長がはやく、根系がはやいうちに土壌の深 くまで届くことができれば、土壌表層の水分の減 少の影響を受けにくいことになる。本学の実験圃 場(砂壌土)でダイズを出芽直後から降雨を遮断 し、潅水も行わない状態で生育させたところ、生 育の初期の晴天日には葉の萎凋が認められた。し かし、生育の後期には根が水分の多く残る土壌深 層に達するため、萎凋は全く認められなくなり、 子実重は十分潅水したダイズの約30%少ないだけ であった。生育期間中の降雨が著しく少なく、蒸 発散量の多い半乾燥地でも、濯水なしでも通常多 くの植物は地上部の生長は著しく抑制されても、 途中枯死することなく子実をつけることができる。

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遺伝生態研究センター通信 No.29 3.生育期間中に水分条件が急激に変化する場合 (1)畑作物におこる干ばつ害 わが国は一年を通 してみれば降雨量が蒸発量を上回り湿潤である。 しかし、夏の畑作物は数年に一回の割合で干ば つが問題となる。これには作物の生育期間中に 水環境が湿潤から乾燥へと急激に変化すること が関係している。すなわち、盛夏の直前の梅雨 期が夏作物の旺盛な栄養生長期に当たり、湿潤・ 低口照条件で茎葉は大きく繁茂するが、根系は 発達が悪く浅くなる。この直後に比較的乾燥す る夏がきて、茎葉からの蒸散は多くなるが、浅 い根系では水分は土壌の比較的表層からしか吸 収できない。その結果、土壌の深いところに水 が多く残っていても、作物は大きな水ストレス を受けることになる。 (2)植物の脱水枯死 湿潤土壌に生育していても、 高温乾燥条件におかれると植物の器官あるいは 個体全体が短時間に水を失って枯死することが ある。たとえば、水稲においては出穂開花期に フェーンがおこると穂が水分を急激に失って穂 全体が枯死し自穂が発生する。フェーンが到来 すると短時間のうちに高温、低湿度、強風の高 い蒸発散を引きおこす条件となる。この時に白 穂は穂首の導管の水の通導機能が著しく低下す ることによっておこる。この水の通導機能の低 下は気泡による導管の閉塞によっておこるらし い。自穂はフェーンが昼よりも夜におこった方 が多く発生することが知られている。昼よりも 夜間にフェーンがおこった方が水環境の変化は 大きいので、白穂の発生には穂の蒸散が多くな るだけでなく、穂の蒸散が短時間に急激に増加 することが関係しているかもしれない。キュウ リで問題となっている急激な萎凋,枯死は茎の 導管がチロシスによって閉塞されることによっ ておこるが、これも曇雨天が数日続いた後の暗 天日に発生しやすい。 (3)水ストレスに対する気孔の反応 水ストレス が急激におこるとゆるやかにおこる時よりも葉 tNlズIlメヽヽメ1、〆ヽ の水利用効率(蒸散速度に対する光合成速度の 比)が低下することがある。葉内水分が徐々に 低下する時は葉全体にわたって均一に閉じる気 孔が、葉が急激に水分を失う時には均一に閉じ なくなるためである。ヒマワリでは、気孔閉鎖 の不均一の程度は空気湿度の高い条件に生育す ると大きくなる。また、空気湿度の高い条件に 生育したヒマワリの葉は水ポテンシャルの低卜 に対する閉鎖反応が鈍くなり、土壌水分が減少 すると、枯死しやすくなる。 4.おわりに このように乾燥条件に対する植物のいろいろな 反応を観察してくると、植物は徐々に乾燥する条 件ではきわめて粘り強い対応を示すが、これに比 べて湿潤から短期間に急激に乾燥する条件では、 それほど厳しい乾燥条件でなくても著しく大きな 影響を受けることがある。これには、すでに述べ たように湿潤条件に生育することによって、乾燥 耐性に関与する最も重要な性質の一つである根系 の発達程度が劣ることがあげられる。さらに、根 だけでなく茎の導管の閉塞や気孔反応の鈍さや不 均一性から推察されるように、湿潤から乾燥へと 急激に変化する水環境に十分に対応できる機構が 茎や葉に備っていないことも関係しているようで ある。葉や茎が形成される過程で、水環境は導管 の閉塞や気孔反応に関与する性質にも大きな影響 を及ぼしているかも知れない。以L紹介した現象 にはまだ明らかでない点が多い。これら七は種間 差とともに品種間差が認められる場合も多いので、 耐性を示す種や品種の性質を検討することによっ て、発生機構や耐性に関わる性質を明らかにでき ると考えている。乾燥地域だけでなく湿潤地域で おこるこのような水ストレスの実態を明らかにし、 水スト/レスの耐性機構を解明していくことが、植 物の水環境に対する反応に関する理解を深め、水 ストレス耐性植物の育成にとっても重要であると 考えている。

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遺伝生態研究センター通信 No.29 ㊦㊤000㊤◎㊤⑳¢⑳㊤

イネの出穂期を支配する遺伝機構の解明について

′ \ はじめに イネにおいて出穂期は、品種の地域適応性に直 接関与する重要な農業形質である。このため、多 くの研究者らが、出穂期を支配する遺伝機構の解 明というテーマで、様々な研究を行ってきた。筆 者もその一人である。これらの研究によって、出 穂期の遺伝機構に関する重要な知見が数多く得ら れてきた。これらの研究では、いずれも既存品種 を主要分析対象としており、従来の遺伝子分析法、 すなわち形質の異なる品種・系統間で交雑を行い、 その後代F2およびF3において分離分析を行い、 分離に関与する遺伝子座を検出・同定するという 方法が用いられている。 筆者も、出穂期の遺伝解析に上記のような方法 を主として用いているが、同定された遺伝子座の 遺伝子座間相互作用を解析するために、 1品種よ り人為的に誘発した出穂期突然変異系統をわが国 既存品種とともに分析材料に用いている。ここで は、イネ出穂期に関する筆者のこれまでの研究に っいて、今までに得られてきた有用な知見も含め て紹介させていただく。 播種      移植 京都大学・農学部附属農場 井 上 博 茂 出穂期を決定する要因 イネは、 1年性の短日植物であり、限界暗期よ り良い継続した暗期を含む光周期が与えられると、 幼穂分化(花芽分化)を開始・促進する。イネの 生育ステージを模式的に表すと、図1のようにな る。生育ステージのうち、幼穂分化開始∼出穂 (生殖生長期間) ∼登熟(登熟期間)までの期間 の長さは品種・系統間で概ね同じである(図1参 輿)。違いが生じるのは、播種∼幼穂分化開始の 期間(栄養生長期間)の長さである。品種・系統 の出穂期の違いは、栄養生長期間の違いと捉える ことができるのである。 栄養生長期間は、さらに、基本栄養生長期間

(Basic vegetative phase : BVP)と感光性期

間(Photoperiod sensitive phase : PSP)の

2つに分けられる(図1参照)0 BVPは、短日 日長条件下での播種∼幼穂分化まで日数で、また p s pは、短lH]長条件下と長日日長条件下での 播種∼幼穂分化まで日数の差で、それぞれ定義さ れている。実際には、短日日長条件および長日日 長条件として、便宜的にそれぞれ10時間日長およ 幼穂分化開始     出穂     豊熟 栄泰生長期間 i ) i+xッィュB 豊熟期間 30-35日     35-40日 基本栄養生長期間 亅HマY クッィュB 図1.イネの生育ステージの模式図 基本栄養生長期間(BVP) :短日日長条件下における幼穂分化まで日数。 感光性期間(P S P) :長日日長条件下および短日日長条件下における幼穂分化まで日数の差0

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遺伝生態研究センター通信 No.29 び14時間日長を設定し、 2日長条件下での到穂日 数(播種∼出穂まで日数)を幼穂分化まで日数と して、 BVPおよびPSPを推定する。 わが国イネ品種のBVPおよびPSPを推定す ると、品種の地理的分布とBVP、 PSPとの間 に明らかに関係があることが判った。すなわち、 わが国品種群の地理的分布を、北海道地域、東北・ 北陸地域、西南暖地地域および沖縄・台湾地域の 4地域に大きく分けたところ、 BVPおよび PSPに関して表1に示したような傾向があるこ とが判った。このことと、出穂期を支配する遺伝 子座との間に、密接な関係が認められた。 出穂期を支配する遺伝子座 出穂期を分析するための検定系統は、現在のと ころ3種数ある.これら3種類の検定系統群とは、 品種銀坊主を中心とした出穂期遺伝子座El、 E2、 E。に関する検定系統5)、品種藤坂5号を中心と した出穂期遺伝子座Se-1に関する検定系統6)およ び品種台中65号を中心とした出穂期遺伝子座Ef11 に関する検定系統4)である。これら3系統群を検 定系統に用いることによって分析が可能な5遺伝 子座は、いずれも連鎖関係になく、独立の遺伝子 座である。これら5遺伝子座のうち、わが国品種 群の地理的分布と特に関係が深いのは、 El座、 Se-l座および旦f11座の3遺伝子座である。わが国 品種について遺伝子分析を行い、 3遺伝子座の遺 伝子型を推定したところ、 3遺伝子座の遺伝子型 表1.わが国品種群の地理的分布とBVP ・ PSPとの関係 地域\形質 BVP PSP 北海道地域       小       小 東北・北陸地域     やや大      小 西南暖地地域     やや小      大 沖縄∼台湾地域      大      やや大 ◎㊤QO㊦㊤◎OQO と、地理的分布との関係が、概ね図2に示したよ うになることが明らかにされた。このことと、先 のBVPおよびPSPの傾向を重ね合わせると、 3遺伝子座の作用特性は、表2に示した通りと考 えられる。すなわち、 E.座およびSe-J座は主と してPSPに、またEfl1座は主としてBVPに関 与する遺伝子座であると考えれば、地理的分布を 遺伝子型で説明することができるのである1・2・3,6)0 突然変異系統の有用性 出穂期は、量的形質であり、環境の影響を受け やすいばかりでなく、供試した材料の遺伝的背景 の違いによって、分析がかなり困難になる場合が ある。先の3検定系統群の遺伝的関係は、すでに 明らかになっているが、それは主働遺伝子座につ いてのみであり、微働遺伝子座については明らか にはされていないのが現状である。 1品種より人為的に誘発された突然変異系統は、

遺伝的背景が原品種に近く、出穂期に関する遺伝

子分析には好適な材料である。しかも、出穂期は、 突然変異によって比較的容易に突然変異系統を得 ることができる。筆者が有している突然変異系統 は、品種銀坊主をのガンマ線種子照射後代より得 られた固定型出穂期突然変異系統であり、原品種 銀坊主との交雑後代においてきわめて明瞭な分離 を示す、いわば銀坊主の準同質遺伝子系統とでも いうべき系統である。これらの突然変異系統の中 には、 El座、 Se-1座あるいはEfl1座において突 然変異を起こした系統が含まれている。 'tれらの 系統のBVPおよびPSPを推定することによっ て、品種銀坊主の遺伝的背景のもとで、 El座、 Se-1座およUEf-J座の3遺伝子座の作用特性が、 確かに表2のようであることが明らかにされた。 突然変異系統を用いることによって、遺伝的背景 の複絶さを取り除いて分析することが可能となっ た。 これからの課題 3遺伝子座でわが国品種の出穂期に関する変異

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遺伝生態研究センター通信 No.29 tW州〆ヽ /ー を説明することができたことは、出穂期を支配す る主働遺伝子座の数がそれほど多くないことを示 唆している。新たな遺伝子資源の探索を行う必要 があるであろう。野生種より探索してもよいし、 突然変異系統の中から探索してもよい。突然変異 系統より検出・同定された突然変異遺伝子の中に は、既知の主働遺伝子座とは座を異にすると考え られる遺伝子が数多く含まれている。これらの突 然変異遺伝子の作用特性並びに座乗する染色体上 の位置を決定することも必要であろう。 また、主働遺伝子座間のl二位(下位)性といっ た、遺伝子座間の相互作用について明らかにして いかなければならない。 F.ハイブリッドを育成 北海道地方品種群         、○

e.e. se-Iese-Ie lf-JEfl1

e.e. se-InSe-Jn Ef-IEflJ

西南暖地品種群

E.EI Se-JnSe-)n Ef-lEf-1

i-J' イ

齢棚

:oO した際に、出穂がかなり晩生側にずれるといった 現象は、まさに遺伝子座間の上位(下位)性によっ て説明できると考えられる。 引用文献 1)奥本ら(1991)育雑41:135-152. 2)奥本ら(1992)育雑42:121-136. 3)奥本ら(1992)育維42:415-430. 4) TSAI. K. H. (1976)JAPAN. J. GENETICS 51 : 115-128. 5) YAMAGATA′et.al. (1984) 氏.G.N. 1 : 100-101. 6)横尾ら(1980)農技研報D31 : 95-126. 東北・北陸地方品種群

EIE, Se-JeSe-Ie Ef-JEf-)

/ ・♂沖縄・台湾日本型品種群 ( EEl・EE.I se-IeSe-Je ef-Jef-I se-Inse-In ef-Ief-I 図2.わが国品種の地理的分布と出穂期遺伝子座との関係 表2.わが国品種群の地域特性を決定する3遺伝子座の特性 遺伝子座      対立遺伝子      作用特性 e, (早生劣性) El (晩生優性) Se-/' (早生不完全優性) ∫eJn (晩生不完全優性) EfLJ (早生優性) ef-I (晩生劣性) ㍗ SPを減少させる P S Pを増大させる P S Pを減少させる P S Pを増大させる BVPを減少させる BVPを増大させる

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遺伝生態研究センター通信 No.29 …l〆ItN 出 版 物 の お 知 ら せ 遺伝生態研究センターでは、海外の研究者向けの出版物としてNewsletter、ワークショップの成果をま とめた出版物としてIGEシリーズを発刊しております。昨年度発刊した両著の目次をご紹介します。多少 残部がありますので、ご希望の方は共同利用掛までお申し込みください。 Newsletter No.7 Contents :

Climate change research at the Institute of

Terrestrial Ecology, Bangor, Wales, UK Treuor W. Ashenden

The effects of elevated CO2 0n a SubtroplCal scrub oak-palmetto plant communlty

Dauid Veiglas, C. Boss mnhle, and Bert

Drake

NASA's CELSS Biomass Production Chamber

Raymond M. Wheeler

Non-gravitational factors affectlng plant

growth in spaceflight

Christopher S. Brown

Features of the Biocritron facility at IGE Tadashi Kumagai IGE News IGEシリーズ20 遺伝生態の諸問題 Ej次 ワークショップ開会の挨拶に代えて 菅   洋 植物の形質発現と集団分化 -その進化生態学的意義一 河野 昭一 編 集 後 記 遺伝生態研究センターは設立して8年目を迎えました。 これまで遺伝生態研究センターでは,このセンター通信

だけでなく、 IGEシリーズ、 Newsletter及びISK SerleSを

出版してまいりました。センター通信だけでなくこれら もご利用いただけますように、今回は昨年度発刊した出 版物の紹介を掲載いたしました。ご利用ください。 また、センター通信へ、遺伝生態にかかわる研究の紹 介、意見、書評などお寄せください。 環境適応への発育制御 佐野 芳雄 植物の遺伝生態学:宇宙実験からのアプローチ 高橋 秀幸 光形態形成研究の最近の進展 松井  南 高等植物の葉緑素DNAの構造と系統解析 菅野  明 マイコクローム系からみた稲ゴマ棄枯れ病菌の生態型 熊谷  忠・木原 淳一 兵核微生物における環境応答反応の遺伝学的解析 大瀧  保 高等菌類の系統進化:形態と分子から探る 杉山 純多・西田 洋巳 CryptococczLS neOformanの形態,超微形態,遺伝生態 竹尾 漢治・西村 和子・宮治  誠 gyrB遺伝子塩基配列を用いた細菌の検出と分子系統分類 山本  敏・原山 垂明 土壌細菌の挿入因子 南沢  究 ゲノムDNAから見た土壌細菌の群集構造 服部  勉 東北大学遺伝生態研究センター通信No.29 平成7年(1995年) 7月 編集・発行 東北大学遺伝生態研究センター 〒980-77仙台市青葉区片平二丁目1 - 1 TEL 022-217-5706 (共同利用掛) FAX 022-263-9845 0研究センター通信の題字は、元東北大学長 石田名春雄先生の自筆です。

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は、東北大学遺伝生態研究センターのシンボルマークです。

参照

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