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「学び」の場としての仏教寺院 ──寺子屋活動の展開を事例に

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「学び」の場としての仏教寺院 ──寺子屋活動の

展開を事例に

著者

門脇 郁

雑誌名

東北宗教学

16

ページ

215-245

発行年

2020-12-31

URL

http://hdl.handle.net/10097/00131072

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「学び」の場としての仏教寺院

──寺子屋活動の展開を事例に

門脇  郁

キーワード:仏教の社会参加、宗教の社会貢献、青少年教育、体験活動 1.はじめに  本稿の目的は、仏教寺院でおこなわれる児童を対象とした体験活動への参与 調査を通して、その教育的役割について考察することである。仏教寺院を会場 とした体験活動は、参禅会及び合宿などの名目のもと各地域でおこなわれてい る。たとえば、『河北新報』に1991(平成3)年から2019(令和元)年の間に 紹介された児童を対象とした体験活動のうち、会場となっている仏教寺院が企 画した事例または特定の寺院を会場としながらも寺院外部の組織が活動を企画 した事例が13件あった(〈表1〉参照)。その内容は、修行や規則正しい生活を 体験させることで精神の鍛練を期待するもの、地元の消防士や人権擁護委員会 などによる講習を通して社会教育をおこなうものや学生ボランティアやほかの 参加児童との交流を主な目的にしているものなど、多岐にわたる。このように、 寺院でおこなわれている活動が地方紙に紹介されていることから、仏教寺院で おこなわれる活動が、特定の宗派のための教化活動にとどまらないことは明ら かである。  しかし、児童らを対象とした体験活動を、教化の側面から取り上げた研究は あるものの、仏教の社会貢献という側面から取り上げた研究は決して多いとは 言えない。要因としては、教化活動と社会活動の線引きの難しさや、少子化が 進む中で青少年教育の実践そのものが減少傾向にあることなどが考えられる。 それだけに、仏教と青少年教育の関係を考察するための報告には意義があると 言えよう。

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〈表1〉仏教寺院でおこなわれる児童を対象とした体験活動の事例1 ①夏休み子供大会  鹿野小学校 PTA:宮城県仙台市太白区 滝沢寺(曹洞宗)で8月下旬に開かれた1泊2日の合宿活動。対象者は鹿野小学校児 童1~6年生。住職による法話、早朝のお勤め、本堂の掃除のほかに、キャンプファ イヤー、肝試し、映画鑑賞、工作などがおこなわれた。 ②坐禅会  洪龍寺(曹洞宗) :宮城県気仙沼市(旧本吉郡)唐桑町 8月下旬の3日間にわたりおこなわれた坐禅会。夏休み中に「気が緩みがちになる子 供たちに活を入れ」ることを目的に1978(昭和53)年からはじめられた。対象者は唐 桑町の地区内の小学生児童。 ③夏休みお泊まり会  称名寺(浄土宗):宮城県亘理町 7月下旬または8月上旬に催される1泊2日の合宿活動。対象者は町内外の小学生。 境内の散策、ゲーム、紙芝居、肝試し、読経、清掃などがおこなわれる。1998(平成 10)年より毎年催されている。亘理町は東日本震災の被害を受けたが、2011(平成 23)年も子どもたちの要望を受けて活動が継続された。 ④親子ざぜん会  県曹洞宗第7教区寺院:宮城県黒川郡大郷町 黒川郡内の小学生及びその保護者を対象に開かれた坐禅会。3回の坐禅のほかに「薬 石(夕食)」や打ち上げ花火などもおこなわれた。 ⑤夏休み子ども禅の集い  登米曹洞宗青年会:宮城県登米郡中田町 報恩寺(曹洞宗)で催さわれた合宿活動。対象者は登米市内在住の小中学生。坐禅指導、 かるた大会、人権教育を目的とした講話がおこなわれる。2005(平成17)年時点で33 回目の開催。 ⑥ふれあい寺子屋  岩手県奥州市(旧水沢市)教育委員会:岩手県奥州市 夏休み期間中の3日間、寺や神社、教会を会場として、坐禅や勉強会、流しそうめん 大会等が催される。対象者は市内の小学生。「リーダー」として中高生も参加した。 岩手県水沢市姉体町にある龍徳寺(曹洞宗)や同市東町の願立寺(浄土真宗本願寺派) など水沢小学校学区にある4つの寺社が会場となった。青少年の社会参加と健全育成 を目的として1981(昭和56)年に開始した。 ⑦夏休み坐禅会  栗原市民会議花山地区会:宮城県栗原市 夏休み期間中に城国寺(曹洞宗)で開かれる坐禅会。対象者は花山地区の小中学生と 保護者。坐禅を通した情操教育を目的としている。 ⑧ 寺子屋サマースクール  清林寺(浄土真宗本願寺派)の檀家から成る実行委員会: 宮城県白石市 1泊2日の合宿活動。対象者は白石市内の小学生。礼儀作法の指導や肝試しなどがお こなわれる。スクール自体は2006(平成18)年から日帰り活動として開催され、2008(平 成20)年より合宿活動がなされた。 1 会場となった寺院が属する宗派名については、筆者が()内に補った。

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⑨浄法寺ユネスコ寺子屋教室  浄法寺ユネスコ協会:岩手県二戸郡浄法寺町 福蔵寺(曹洞宗)でおこなわれる1泊2日の合宿活動。対象者は地元の小学生。坐禅 や写経、作法の指導、住職の法話などがなされる。地域の大切さなどを伝えることを 目的として2006(平成18)年より開催された。 ⑩くりはら夏休みこども寺子屋  通大寺(曹洞宗) :宮城県栗原市 毎年8月上旬におこなわれる1泊2日の合宿活動。対象者は市内外の小学生。坐禅体験、 礼儀作法の指導や口演童話のほかに、いじめ防止をテーマにした演劇、動物地蔵づく り、いのちに関する法話などが企画された。 ⑪寺子屋塾  文京教育サポーターズと角田地区子ども会育成会:宮城県角田市 長泉寺(曹洞宗)で、東京都文京区と角田地区の小学生とその保護者を対象に開かれ た1泊2日の合宿活動。坐禅のほかに、宇宙航空研究開発機構の技術者の講話や東京 大学出身者による学習指導がおこなわれた。 ⑫サマー探検隊  記事からは不明:宮城県角田市 対象者は角田市児童クラブに通う小学1~5年生。角田消防署への見学後に児童が長 泉寺を見学。参加者は寺院内で坐禅を体験した。 ⑬寺子屋  妙頓寺(浄土真宗大谷派)子供会:宮城県柴田郡村田町 毎年7月下旬の3日間開かれ、9時から12時頃まで、自主勉強やレクリエーショのた めに境内が開放される。対象者は小学校1~6年生。生涯学習施設の館長の講話や消 防士による AED の使い方に関する講習などもなされた。 (「河北新報データベース」をもとに筆者作成)  そこで本稿では、宮城県栗原市築館に位置する通大寺で開催される「くりは ら夏休み寺子屋」2への参与観察及び参加者保護者・スタッフへの聞き取り調査 の報告を、以下の手順でおこなう。まず関連する先行研究を検討し(第2章)、 次いで調査対象と調査方法を説明する(第3章)。それらを踏まえた上で、当 の寺子屋活動の実態を記述し(第4章)、最後に、現代社会における仏教寺院 の教育的役割について考察を試みる(第5章)。その際、子どもたちが体験を 通して価値観を形成するまでの過程を「学び」として捉えた上で、寺子屋活動 の教育的役割を分析していく。 2 この活動は運営スタッフの間では「寺子屋」と呼ばれたり、2010(平成22)年の『河北新 報』の記事では「こども寺子屋」(『河北新報』2010.8.11朝刊,3県版)、2016(平成28)年 の記事には「くりはら寺子屋合宿」(『河北新報』2016.8.24朝刊,宮城4県版)として紹介さ れていたりするなど名称が一貫していない。活動の主催者やスタッフの認識に沿うならば、 活動の名称を「寺子屋」と表記すべきであるが、本稿では近世の寺子屋と差別化を図るため 「寺子屋活動」と表記する。

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2.先行研究の検討  本章では、調査報告に先駆けて、仏教の社会参加に関する研究の概観を示し ておきたい。  寺院でおこなわれる児童を対象とした活動を取り上げた報告書やルポルター ジュは近年、複数みられる。たとえば、大谷編『ともに生きる仏教──お寺の 社会活動最前線』では、子どもの貧困を背景に供物の菓子を全国の寺院が NPO団体や子ども食堂などに寄付する「おてらおやつクラブ」の活動が紹介 されている(大谷編 2019: 49─76)。そのほかにも、児童虐待に関する相談件数 の増加を受けて、里親制度を利用し子どもを保護する活動をおこなう仏教寺院 (水谷 2011: 443─8)や長期休暇中の子どもたちに自主学習や遊戯ができる場 を提供する寺院の活動(松本・遠藤 2019: 122─30)についても報告されている。  児童の貧困や虐待への対策を目的とした仏教寺院の取り組みが注目されるよ うになった背景には、宗教及び仏教の社会貢献に関する研究の展開がある。 1990年代には仏教徒や仏教団体による積極的な社会活動への参加を意味する 「エンゲイジド・ブッディズム」が欧米の宗教学者を中心に注目され、日本の 仏教寺院の取り組みを分析する上でもこの概念が導入されている3。また、2006 (平成18)年の「宗教と社会」学会の成立を契機として、「宗教者や宗教団体 の社会への自発的な関わりへの意志」(稲場・櫻井編 2009: 5)を宗教の「社 会貢献」として捉え、宗教団体がおこなう社会貢献活動の実例を取り上げ、宗 教の公益的役割を見直す動きがみられる。そして、近年では宗教の制度や組織 にかかわることで互恵性・信頼が醸成され社会参加や市民社会の形成が進展す るとするソーシャル・キャピタル論(櫻井 2011: 27)や宗教と広義的な幸せを 意味するウェルビーイング(櫻井 2018: 18)との関連についての研究が展開を みせている。  しかし、仏教の社会参加に関する研究が展開される中、先に事例に挙げたよ 3 「エンゲイジド・ブッディズム」の概念を日本に導入した代表的な研究としては、阿満(2003) や、ムコパディヤーヤ(2005)などが挙げられる。

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うな体験活動に対してその実態を分析した先行研究は多くない。その理由とし て、寺院内でおこなわれる体験活動は各教団の教化活動として捉えられ、教団 内で活動の特徴と課題について議論されていたことが考えられる。たとえば、 曹洞宗の教化活動の実例を取り上げた先駆的な研究として皆川広義のものが挙 げられる。皆川は駒澤大学曹洞宗青年会らから始まった「禅の集い運動」を取 り上げ、全国で広くおこなわれているこの青少年を対象とした伝道活動の運動 の発展要因について考察している4  教団内で児童の教化方法について試行錯誤がおこなわれる中、寺院の教化活 動と地域社会との関連について言及したのは、稲本琢仙の研究である。稲本は 櫻井らのウェルビーイング研究を受けて、「次世代養成としての寺院がどのよ うに地域社会とかかわるのか、またそれが子どもたちにとってどのような意味 を持ち、ウェルビーイングにつながっていくのか」(稲本 2018: 220)という視 点から三重県の寺院でおこなわれる「子ども禅の集い」について調査した。こ の調査から、参加した児童らは坐禅や写経などの宗教的な要素が強いものを 「楽しくない」ものとして捉えるのに対して、保護者は宗教的要素を禅の集い に求めていることが明らかになった。この結果に対して稲本は、「しつけ」5 概念に着目し、家庭の教育力の低下などにより家庭内の「しつけ」が困難とな る中、保護者たちは禅の集いを通してなされる「しつけ」に期待が寄せている と指摘している。そして、禅の集いを通して保護者たちの期待に応えたり、子 どもたちに学校外の集団を形成する機会を与えたりしていることから、仏教寺 院が地域内の子どもに対して貢献する要素が複数あるとしている(稲本 2018: 236─9)。 4  皆川は禅の集い運動の発展理由として、①実施しやすい伝道活動の内容であったこと、② 生活規範が青少年への教育において求められ、それの修練の場として禅の集いが期待されて いること、③従来の曹洞宗の組織運営とは異なるヨコ割りの体制で運動が普及することによ り独自の活動が可能となったこと、④禅の集いがそのリーダー達にとって伝道法を学びなが らほか者に教化育成をおこなう場となったこと、⑤こうした禅の集い運動に対して宗務庁は 助成をしながらも干渉はおこなわなかったこと(皆川 1973: 109─10)を挙げている。 5 ここで言及される「しつけ」とは「日常生活における基本的な社会的ふるまいや習慣、価値、 道徳などの型を身につけさせることに重点を置いた」(稲本 2018: 221)社会化の一類型であ るとしている。

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 被災地支援や貧困対策など、いわゆる「心のケア」への宗教者の奉仕的活動 に焦点を絞った研究が多く報告される中で、稲本の研究は、宗教は子どもの教 育にも貢献できるということを示唆している。ただ、稲本は坐禅や写経を通し ておこなわれる「しつけ」に注目する一方、レクリエーションやほかの参加者 との交流など、参加者が「楽しい」と感じている要素にはあまり言及していな い。曹洞宗僧侶として本山での修行を経験している稲本が、活動の修行的な要 素に意義をみいだすのは不思議なことではないが、保護者の活動に関する期待 が「しつけ」への期待に集約されるかどうかについては疑問が残る。実際、稲 本が保護者を対象におこなった「行事を通した子どもに対する影響・効果」に 関するアンケートで、「しつけになる」という項目と「家庭で教えないことを 学べる」という項目それぞれにおいて「そう思う」と回答した人数を比較する と、後者の方が多い(稲本 2018: 233)。とすれば、「しつけ」が「家庭で教え ないこと」に値するとはこのアンケート結果からは言い切ることができないは ずである。この点を踏まえると、保護者が期待する「家庭では教えないこと」 が具体的にいかなる内容を示しているのか、稲本の研究では充分検証されてい ないと言えよう。本稿においては、活動の修行的な要素だけではなく、レクリ エーションなどの参加者が「楽しい」と感じている要素も視野に入れつつ、仏 教寺院の活動の役割について考察をおこないたい。 3.調査対象及び方法 3−1.通大寺の概要  本節では寺子屋活動の概要を示すのに先立ち、主催寺院の概要を紹介する。 通大寺は、宮城県栗原市築館に位置する曹洞宗大源派の仏教寺院である。曹洞 宗宮城県宗務所第17教区に属し、現在約750軒の檀家を抱えている。同寺は 1505(永正2)年に龍雲寺2世松庵文徹師6によって開山され、開山当初の本 堂が全焼した後、1835(天保6)年に再建される。しかし、再び火災に見舞わ 6 以下、本稿においては宗教者に対する敬称を師、非宗教者への敬称を氏とする。

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れ、1862(文久2)年に現存する本堂(耕雲閣)が建てられた7  調査をおこなった2019(令和元)年の時点では、金田諦應師 (以下諦應師と 表記する)が26世住職を勤めている。通大寺は地域内外を問わず多様な活動に 取り組んでおり、たとえば、2003(平成15)年には築館中学校 PTA 西町地区 生徒会が取り組んだミャンマー難民に衣類を送る活動8に協賛していた。また、 2005(平成17)年から毎年開催されているどんと祭9や、2011(平成23)年か ら始められた西馬音内の盆踊り10など、地域の祭典の会場として住民に境内を 開放している。あるいは、2009(平成21)年には自殺防止をテーマとしたコン サートや講話11が企画されており、2011(平成23)年の東日本大震災後には、 諦應師を中心とした読経ボランティアや鎮魂行脚がおこなわれ、傾聴喫茶「カ フェ・デ・モンク」12が被災した地域で開かれた。こうした活動の多くは各種 メディアで報じられている。 3−2.通大寺の寺子屋活動の概要  本研究の調査対象である寺子屋活動は毎年8月上旬に1泊2日の日程でおこ なわれる。通大寺の寺子屋活動は1987(昭和62)年に開始され、2019(令和元) 年までに40回以上催されている。活動当初から現在に至るまでの活動の日取り 及び参加人数の推移は〈表2〉の通りである。 7 1976(昭和51)年に発行された『築館町史』には通大寺の本堂について「文久3年全焼、 天保6年新築」(築館町史編纂委員会,1976:806)と記載されている。しかし、文久3年と天 保6年はそれぞれ西暦に直すと1863年と1935年であり、記載内容の矛盾が確認される。正確 な本堂の再建時期については、2019年11月27日に諦應師より教示を得た。 8 この点については、『河北新報』(2003. 7. 18朝刊,3県 A 版)を参照されたい。 9 この点については、『河北新報』(2009. 1. 16朝刊,4県版 ; 2011. 1.13朝刊,4県版 ; 2011.1.17朝刊,4県版 ; 2011.9.24朝刊,3県版 ; 2012.1.13朝刊,3県版)を参照されたい。 10 この点については、『河北新報』(2011.9. 24朝刊,3県版 ; 2012.8.4朝刊,3県版 ; 2012.8.13朝刊,特集版,20面)を参照されたい。 11 この点については『河北新報』(2009.8.7朝刊,3県版 ; 2009.8.18朝刊,4県版 ; 2009. 11. 27朝 刊,4 県 版 ; 2011.5. 14朝 刊,4 社 版 ) 及 び『 大 崎 タ イ ム ス 』(2009.8.8 県 北 NEWSグローカル版,6面)を参照されたい。 12 この点については、「宮城県復興応援ブログココロ プレス」(2018年2月28日取得, http:// kokoropress.blogspot.jp/2012/02/1.html)及び『河北新報』(2011.5.14朝刊,4社版)を参照 した。

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〈表2〉1987(昭和62)年以降の寺子屋活動の日取り及び参加人数 日時 人数 備     考 1987(S62)/3/27~29 45   1988(S63)/3/29~31 40   1988(S63)/7/23~25 22   1988(S63)/12/26~27 27   1989(H1)/3/25~27 55   1989(H1)/12/23~24 33 会場:花山自然の家 1990(H2)/3/30~31 23 墓地改葬のため夏の寺子屋活動はおこなってい ない 1990(H2)/12/25~26 不明   1991(H3)/3/26~27 23   1991(H3)/7/30~31 30   1991(H3)/12/26~27 18   1992(H4)/3/26~27 22   1992(H4)/8/18~19 22 会場:満照寺(雄勝町) 1993(H5)/3/25~26 25   1993(H5)/7/28~29 27 会場:満照寺(雄勝町) 1993(H5)/12/23~24 33   1994(H6)/3/25~26 23   1994(H6)/8/2~3 24 会場:満照寺(雄勝町) 1994(H6)/12/26~27 32   1995(H7)/3/28~29 17   1995(H7)/8/1~2 16 会場:満照寺(雄勝町) 1995(H7)/12/27~28 10 男子の人数のみ記載 1996(H8)/3/27~28 10   記録が一時途絶える 2009(H21)/8/4~5 34 2009(平成21)年12月25日にも行事がおこなわ れ た が、 台 帳 に 記 録 は 残っていなかった 2010(H22)/8/4~5 35   2011(H23)/8/4~5 49   2012(H24)/8/4~5 50  

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2013(H25)/8/4~5 65   2014(H26)/8/4~5 61   2015(H27)/8/4~5 76   2016(H28)/8/4~5 94   2017(H29)/8/4~5 105   2018(H30)/8/3~4 95   2019(R1)/8/1~2 86   (参加者名簿より筆者作成)  過去32年間に、年に3回活動があった時期や活動が中断された時期があるが、 2010(平成22)年度から年に1回の合宿が8月上旬におこなわれるようになっ た。参加人数は、活動の開始当初は30名前後で推移していたが、2011(平成 23)年以降増加傾向にある。また、参加者のほとんどは築館に住む児童である が、大崎市や仙台市からの参加者が一定数存在する(〈表 3〉参照)。2010(平 成22)年から参与調査をおこなう前年までの活動日程は〈表 4〉の通りである。 坐禅や読経などの宗教的活動のほかに、花火や劇などのレクリエーションもお こなわれている。  参加者は小学校1年生から6年生の児童で、参加費として保険料や布団代を 含めて1000円、日帰りの参加者からは500円を集めている。参加者の募集は当 初は口コミでおこなっていたが、近年は前年度の参加者に案内状をダイレクト メールで送信したり、『河北新報』や『大崎タイムス』を介して活動内容を周 知したりしている13  2015(平成27)年度からは、小学生のほかに、かつて寺子屋活動に参加した 中学生がボランティアとして参加している。「小学校を卒業しても寺子屋に参 加したい」という一部参加者の要望に応えて、ボランティアとしての参加を受 け入れるようになったそうだ14。また、30年以上にわたる活動であるため、か つての寺子屋活動の参加者が保護者として自分の子どもを寺子屋活動に参加さ 13 この点については、2018年6月7日に諦應師から口頭で教示を得た。 14 この点については、2018年7月12日に諦應師から口頭で教示を得た。

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せたり、スタッフとして活動に参加したりするケースもある。 〈表3〉9年間の寺子屋活動の参加人数及び参加者の居住地 実施年度 参加人数 栗原市内 栗原市外 県    外 不    明 築 館 町 若 柳 町 栗 駒 町 高 清 水 町 一 迫 町 瀬 峰 町 金 成 町 志 波 姫 町 花 山 村 鶯 沢 町 一 関 市 登 米 市 大 崎 市 仙 台 市 加 美 郡 柴 田 郡 2011(平成23)年度 48 35 0 0 0 5 0 0 2 0 0 2 2 0 1 0 0 1 0 2012(平成24)年度 62 44 0 0 1 1 0 0 3 0 0 0 1 5 5 0 0 2 0 2013(平成25)年度 60 42 1 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1 3 9 0 0 2 0 2014(平成26)年度 63 42 0 0 1 0 0 0 7 0 0 2 2 3 6 0 0 0 0 2015(平成27)年度 75 55 0 0 0 0 0 0 9 0 0 0 0 6 5 0 0 0 0 2016(平成28)年度 93 57 0 0 2 1 0 4 16 0 1 0 0 1 7 0 2 1 1 2017(平成29)年度 106 61 0 16 4 0 0 1 12 0 0 0 0 2 7 3 0 0 0 2018(平成30)年度 103 59 0 16 4 0 0 1 11 0 0 0 0 2 7 3 0 0 0 2019(令和元)年度 86 46 1 18 6 0 0 3 5 0 0 0 1 0 6 0 0 0 0 (参加者名簿をもとに筆者作成) 〈表4〉2010(平成22)年から2017(平成29)年までの寺子屋活動の日程   時刻 2010(平成22)年8月4~5日 2011(平成23)年8月4~5日 2012(平成24)年8月4~5日 2013(平成25)年8月4~5日 一日目 13:30 集合 集合 集合 集合 14:00 作法の練習 作法の練習 作法の練習 作法の練習 14:30 読経(14:15~14:45) 読経(14:15~14:45) 読経(14:15~14:45) 坐禅 15:00 坐禅(14:45~15:30) 坐禅(14:45~15:30) 坐禅(14:45~15:30) 15:30 お茶の時間 お茶の作法 お茶の作法 お 茶 の 作 法(15:15~15:45) 16:00 読経 読経 読経 読経(15:45~16:30) 16:30 坐禅 坐禅 坐禅 坐禅 17:00 休憩 休憩 お数珠づくり 法話 17:30 18:00 夕食 夕食 夕食 夕食 18:30 入浴 入浴 入浴 入浴 19:00 19:30 劇「ライチと柿」 花火 怪談 怪談 20:00 20:30 入浴 花火 21:00 21:30 就寝 就寝 就寝 就寝

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6:00 起床 起床 起床 起床 6:30 読経 読経 読経 読経 7:00 朝食 朝食 朝食 朝食 7:30 休憩 休憩 荷物の整理 休憩 荷物の整理 休憩 8:00 写経 写経 写経 写経 8:30 9:00 坐禅 縄文土器の制作 ペット地蔵の制作 お数珠づくり 9:30 (解散時刻の表記なし) 10:00 10:30 11:00 解散 解散 解散   時刻 2014(平成26)年8月4~5日 2015(平成27)年8月4~5日 2016(平成28)年8月4~5日 2017(平成29)年8月4~5日 13:30 集合 集合 集合 集合 14:00 作法の練習 作法の練習 作法の練習 作法の練習 14:30 坐禅 坐禅 坐禅 坐禅 15:00 15:30 お茶の作法(15:15~15:45)お茶の作法(15:15~15:45)お茶の作法(15:15~15:45)お茶の作法(15:15~15:45) 16:00 読経(15:45~16:30) 読経(15:45~16:30) 読経(15:45~16:30) 読経(15:45~16:30) 16:30 坐禅 坐禅 坐禅 坐禅 17:00 お話の会 お話の会 お話の会 お話の会 17:30 18:00 夕食 夕食 夕食 夕食 18:30 入浴 入浴 入浴 入浴 19:00 19:30 怪談 夜ばなし 夜ばなし 夜ばなし 20:00 20:30 花火 花火 花火 花火 21:00 21:30 就寝 就寝 就寝 就寝 6:00 起床 起床 起床 起床 6:30 読経 読経 読経 読経 7:00 朝食 朝食 朝食 朝食 7:30 荷物の整理 休憩 荷物の整理 休憩 荷物の整理 休憩 荷物の整理 休憩 8:00 写経 写経 写経 写経 8:30 9:00 お数珠づくり お数珠づくり お数珠づくり お数珠づくり 9:30 10:00 10:30 11:00 解散 解散 解散 解散 (日程表より筆者作成) 3−3.調査方法  本研究では、2018(平成30)年8月3~4日、2019(令和元)年8月1~2 日に1泊2日の日程で開催された寺子屋活動への参与観察をおこなった。この

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参与観察と並行して、参加児童の保護者6名及び副住職を含めた参加スタッフ 5名に以下の項目を中心とした半構造化インタビューをおこなった。 ① 寺子屋活動に参加した契機。 ② 寺子屋活動に関する知見。 ③ 寺子屋活動において重要であると考えている要素。 ④  寺子屋活動に関する情報共有の仕方(どのような人物にどのような活動と して寺子屋活動について紹介しているか)。  インフォーマントである保護者6名は A から F まで、スタッフ4名は G か ら J までアルファベット順に従い匿名処理を施した。なお、副住職である金田 諦晃師(以下諦晃師と表記する)に関しては、臨床宗教師としての活動が複数 のメディアで取り上げられていることから匿名化が難しいと判断し、本人の了 承を得て実名で表記している。調査対象者の内訳は〈表5〉の通りである。 〈表5〉インフォーマント一覧   話者 年齢15 性別 所在 同寺との関係 保護者 A 30代 女性 栗原市高清水 通大寺檀家 B 30代 女性 栗原市栗駒 特になし C 30代 女性 栗原市栗駒 栗駒の PTA で通大寺を会 場 に 坐 禅 会 を お こ なった際に参加した D 30代 女性 栗原市栗駒 特になし E 60代 女性 仙台市 諦晃師とボランティアで知り合う F 30代 男性 栗原市栗駒 特になし 15 今回聞き取り調査をおこなうにあたりインフォーマントの正確な年齢を聞き取ることがで きなかった。表内の年齢はインタビューの内容から推測したものである。

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スタッフ G 30~40代 女性 栗原市築館 実家が通大寺檀家 H 15歳 男性 栗原市築館 母方の実家が通大寺檀 I 50代半ば 女性 栗原市築館 通大寺檀家 J 40代半ば 男性 栗原市一迫 J寺で働いていた師の父親がかつて通大 諦晃師 30歳 男性 仙台市 通大寺副住職 (2019年11月12日までの情報をもとに筆者作成) 4.寺子屋活動の実態 4−1.近年の行事内容  本節では、2018(平成30)年と2019(令和元)年に開催された寺子屋活動の 行事内容の詳細を記述する。  当該年度の寺子屋活動の行事日程は〈表6〉の通りである。先に〈表4〉で 示した前年までの日程とのあいだに大きな違いはみられず、1日目の13時半か ら受付を開始し、翌日の11時に解散するというタイムスケジュールだった。以 下では、作法の指導や読経、坐禅、講話、レクリエーションの各概要と参加児 童の様子を、〈表6〉に記した通し番号順に叙述していく。 〈表6〉2018(平成30)年及び2019(令和元)年の寺子屋活動の日程   時刻 2018(平成30) 年8月3─4日 2019(令和元)年8月1─2日 13:30 集合 集合 14:00 ⑴作法の練習     ⑴作法の練習     14:30 ⑵坐禅 ⑵坐禅 15:30 お茶の作法(15:15~15:45) お茶の作法(15:15~15:45) 16:00 ⑶読経(15:45~16:30) ⑶読経(15:45~16:30) 16:30 坐禅 坐禅 17:00 お話の会 お話の会 17:30 夕食 夕食 18:00

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18:30 入浴 入浴 19:00 19:30 ⑷「いのちとこころ」のお話 ⑷「いのちとこころ」のお話 20:00 夜ばなし 夜ばなし 20:30 花火 花火 21:00 21:30 就寝 就寝 6:00 起床 起床 6:30 読経 読経 7:00 朝食 朝食 7:30 荷物の整理 休憩 荷物の整理 休憩 8:00 写仏 写仏 8:30 9:00 ⑸お数珠づくり ⑸お数珠づくり 9:30 10:00 10:30 昼食 昼食 11:00 解散 解散 (日程をもとに筆者作成) 1 作法の指導  スタッフと通大寺護持会16会長による開会のあいさつが終わると、本堂で作 法の練習が始められる。まず、諦應師は本尊を指しながら「お釈迦様を中心に いろんなものがあるけれど、その次に偉いのは和尚さんだ」と話し、本尊と住 職という立場について説明をする。続いて、「正座をするときは絶対に足を崩 してはだめだ」「視線は90センチに落とす」「顎を引いて、法ほっ界かいじょう定印いん」17など座 16 ここで言及する護持会は寺院の檀徒及び信徒からなる「寺院の護持発展に協力する」(曹 洞宗宗務庁教学部,2001: 22)ための組織のことを指す。 17 法ほっ界かいじょう定印いんとは、右の手のひらを空に向けその上に左の手のひらを乗せ両手の指先が自然 と合わさるように手を組むことを指す。これは本来、坐禅の時になされる手の処置であるが、 寺子屋活動では正座をする際にも法ほっ界かいじょう定印いんを結ぶよう指示していた。

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り方に関する指導がおこなわれる。その後、移動の際には「絶対に走らない。 走ったらお仕置き部屋だぞ」など、寺子屋活動中に守るべきルールが参加者た ちに伝えられる。諦應師は、「お仕置き部屋」が本尊の裏側に設けられており、 そこに「幽霊をたくさん入れといた」と冗談を交えながら話していた。ちなみ に、実際に参加児童がこの部屋に入れられている様子はみられなかった。 2 坐禅  寺子屋活動では、坐禅をおこなう時間が1日目の2時半と4時半頃に設けら れている。坐禅をおこなう時間は1回当たり25~30分間。低学年の児童は本堂 に、高学年の児童は位牌堂に集まり坐禅をおこなう(〈写真1〉、〈写真2〉参照)。 参加児童たちは、中学生ボランティアや諦晃師から坐禅の際の足の組み方や姿 勢について教わった後、坐蒲や紐でくくられた座布団に腰をおろして坐禅をお こなう。その際、僧侶や一部の中学生ボランティアが警きょう策さくを持って会場内を巡 回するが、児童の肩を打つことはなく、警策を背中に当てて姿勢を正していた。 3 読経  高学年、中学年、低学年の3グループに分かれ、読経の指導がおこなわれる。 グループごとに1人の僧侶が指導にあたり、『十じゅ句っく観かん音のん経きょう』『四し弘ぐ誓せい願がん文もん』『地 〈写真 1〉本堂での坐禅の様子 (2018.8.3 筆者撮影) 〈写真 2〉位牌堂での坐禅の様子(2018.8.3 筆者撮影)

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蔵真言』『消しょう災さいみょう妙吉きちじょう祥陀だ羅ら尼に』のほかに、烏う枢す沙さ摩まみょう明王おうの真言や藤本幸邦18 の詩『はきものをそろえる』が読まれた。これらのうち、招福の経とされる 『消しょう災さいみょう妙吉きちじょう祥陀だ羅ら尼に』は「しあわせがくるお経」、『地蔵真言』は「おじぞう さまのお経」、あらゆるものを清浄にする存在として東とう司す)(便所)に安置され る烏う枢す沙さ摩まみょう明王おうの真言は「お便所を清めるお経」として紹介されていた。また、 2019(令和元)年度には、僧侶だけでなく中学生ボランティアも読経の仕方を 教えている場面がみられた(〈写真3〉参照)。 4 「いのちとこころ」のお話  入浴後に子どもたちは本堂に集められ、諦應師らによる講話を聞く。この講 話は「『いのちとこころ』のお話」という名目でおこなわれており、その内容 も年度ごとに異なる。参与観察をおこなった年度では、地元の産婦人科に勤め る看護師 T 氏、諦晃師、諦應師の順番で生と死をテーマとした講話がおこな われた。  T 氏は2018(平成30)年度の講話では、胎内音や胎児の写真を用いながら、 受精卵から誕生までの過程を説明した。翌年の2019(令和元)年度には、母親 18 藤本幸邦は戦災孤児の救済運動や国際ボランティア活動などに尽力した曹洞宗の僧侶であ る。藤本によって書かれた『はきものをそろえる』はしばし公立学校の校長の講話や学年だ よりの中で取り上げられることもあり、その一例が以下の URL である。(2020年1月6日 最終閲覧,https://chigasakinishihama-h.pen-kanagawa.ed.jp/pdf/hakimono.pdf) 〈写真 3〉読経の時間の一場面 (2019.8.1 筆者撮影)

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の視点を中心に妊娠から出産までのプロセスについて語っている。講話の締め くくりには「これまでもこれからもたくさんの愛情をもらって大きく成長す るわたし ありがとう」や「たくさんの特別にありがとうを言える子どもで いてね ママとパパより」などの言葉が添えられていた。  いのちの誕生についての T 氏の講話が終わると、次に登場した諦晃師は、 臨床宗教師としての経験を交えながら、死にゆく過程について語り始める。人 は死にゆく過程の中で、少しずつ身体の自由や大切な人・ものを失う。この苦 しい経験をした多くの患者は、「あたりまえ」の生活ができることの有難さや「ひ とは人に助けられていきている」ことに気づかされる。だから、寺子屋活動が 終わったのちも「いまここで僕、私、あなた、いきているってどういうこと なのか」、自分たちにとって「あたりまえ」の生活はどのようなものなのかに ついて自分たち〔子どもたち〕なりに考えてほしい、と諦晃師は語った。  「いのちとこころ」のお話は、諦應師の講話によって締めくくられる。2018 (平成30)年度に語られたのは、例年寺子屋活動内で童話の語り聞かせをおこ なっている「やまぼうし」についてであった。「やまぼうし」とは、通大寺の 檀家である N 氏によって立ち上げられたボランティア団体のことである。発 起人の N 氏は白血病のため既に亡くなっているが、生前 N 氏は寺子屋活動で 口演童話をさせてほしいと諦應師に伝えており、その遺志を継いだ「やまぼう し」のメンバーが2014(平成26)年から寺子屋活動に参加するようになった。 このエピソードから諦應師は「人は死んでも終わりじゃない、人は死んで もその人のあったかいこころは残っている」というメッセージを子どもたち に伝えた。また、2019(令和元)年度には東日本大震災で幼い息子を失ったあ る母親のエピソードが語られた。母親は、息子を救うことができずに生き残っ たことに自責の念を抱きながらも、諦應師との対話が重ねるにつれて、いつ死 が訪れるかわからない人生の中で「いま与えられた命を精一杯生きなければな らない」ことに気がついたという。諦應師は「生と死っていうのは裏と表だよ。 この大切な人生を大切に人のために使って、それぞれの人生の意味を全うして ください」という言葉で「いのちとこころ」のお話を締めくくっていた。

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 講話中の参加児童の様子をみると、私語をかわす児童に対してほかの参加者 が「静かにして」「シー!」と注意を促す場面もあった。また、2018(平成 30)年度からは参加児童の保護者も招待しており、同年は5~7名の保護者の 参加があった。そして2019(令和元)年には、見学に訪れる保護者の人数は10 名以上にまで増え、講話の内容に涙する保護者も何名か見受けられた。 5 お数珠づくり  ビーズとゴム紐を用いてブレスレットを参加児童たちが作る。〈写真4〉か らわかるように様々な色、模様、形のビーズが用いられている。檀家の女性ス タッフである I 氏が中心となって、ブレスレットの作り方を指導し、中高生ス タッフはブレスレットを完成させる際に手首にビーズが通されたゴム紐を結ん であげるなど、参加者の作業を補助していた。  参加者全員がブレスレットを完成させると、僧侶らが「パワーを入れるぞ」 と言いながら参加者のブレスレットを握ったり、拳を掲げたりするパフォーマ ンスがみられた(〈写真5〉参照)。  以上の1泊2日の活動内容からわかるように、寺子屋活動にも坐禅や読経な ど一般的な参禅会の要素はある。しかしその一方で、お数珠づくりと称される ブレスレットづくりのように既存の宗教文化にアレンジを加えたレクリエー ションや、僧侶らの「パワー」をブレスレットに込める演出などの工夫も確認 〈写真 4〉完成したブレスレットの一例 (2018.8.4 筆者撮影) 〈写真 5〉お数珠づくり終盤の様子(2019.8.2 筆者撮影)

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された。また、「いのちとこころ」のお話が寺子屋活動の中で重要な位置を占 めており、生のかけがえなさや、死を通して自分の生についてみつめなおすこ との大切さを、参加児童も理解している様子がうかがわれた。そして、坐禅や 読経の練習、ブレスレットづくりにおいては、中高生ボランティアが年少者ら の指導に積極的にかかわっていることが明らかとなった。 4−2.保護者及びスタッフの声  本節では聞き取り調査をもとに、保護者が子どもを寺子屋活動に参加させた りスタッフとして活動に参加したりするまでの経緯や、寺子屋活動に対して寄 せられている保護者の期待についてみていく。 4−2−1.活動への参加経緯  まず、活動に子どもを参加させたりスタッフとして参加したりする契機につ いて記述したい。今回の聞き取り調査では、寺院-檀家のつながりを契機に寺 子屋活動に子どもを参加させた保護者がいる一方で、PTA や子供会など学区 を中心としたコミュニティから情報を耳にし、参加に踏み切った保護者も多 かった。たとえば、栗原市栗駒に住む B 氏は、同じ地区内の子供会でほかの 保護者に誘われたため、今回初めて寺子屋活動に子どもを参加させたと話す19 それ以前は通大寺や寺族と関係を持っておらず、寺子屋活動の具体的な内容も 知らない様子であった。同じ栗駒から訪れた C 氏は、PTA の学年行事として 通大寺でおこなわれた坐禅会に親子で参加した経験があり、この時に寺子屋活 動の存在を知り、子どもを参加させるようになったと語る。そして、聞き取り をおこなった2019(令和元)年度には友人である D 氏に寺子屋活動を紹介し、 ともに子どもを参加させていた20。学校を中心としたコミュニティが参加の動 機につながるケースは、スタッフにおいてもみられる。檀家でありながらスタッ フとして活動に参加する I 氏は、参加の経緯について以下のように語る。 19 2019年8月1日のB 氏への聞き取りより。 20 2019年8月1日のC 氏への聞き取りより。

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Yさん(寺庭婦人)と子ども同士が同級生なの。保護者会も一緒だし、育 成会も一緒で、しかもお寺だし、うちが檀家なので、こうゆう行事がある よっていうときは、だいたい声をかけられてから参加していた21  寺院-檀家という既存の関係から、保護者会や育成会を通して寺族との交流 を深め、檀那寺の行事にも頻繁に参加する関係に発展した様子がうかがえる。  そして、かつての参加者であり現在はスタッフとして寺子屋活動に参加する G氏は、寺子屋活動について情報を共有することがあると話す。 学校の父兄の集まりの中で、うちは寺子屋さん楽しみにしていっている よーって言うことはあった。自分がちっちゃかった頃は、お寺に行くと面 白いことがいっぱいあるんだよーって。いろんな人いるし、いろんなこと もできるし、肝試しもあるんだよーって楽しさを子どもの頃は伝えてて、 大人になってからは、ちょっと自分の手元を離すけれど、いろんな親じゃ 教えられない行儀作法とか、お寺としての非日常を体験できるから面白い よーって。楽しさはベースにあるけども、いろんな縦割りの世代交流もあ るし。〔中略〕しかも、いろんな経験もしたいし、誰かの役に立てるんだよっ て言うと、ああそうなんだってわからなかったお母さんが〔寺子屋活動に〕 行かせるようなったし、一泊でも親元から離して楽しそうに帰ってくるか ら行かせるメリットあるよねってお返事いただけるので。〔中略〕少なか らず子どものために何かしてあげよう、かかわろうという思いが強い人だ と、そうゆうのがあるんだねってすごく来てくれます。反応がいいです。 いい反応がある人は子どもとか学校への関心が高いお父さんお母さんだと、 私の中にあります22 21 2019年8月2日の I 氏への聞き取りより。 22 2019年8月1日のG 氏への聞き取りより。

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 以上の話から、参加児童の間では「楽しい」という感想が共有されるのに対 して、保護者の間では活動を通して得られる経験やそのメリットについての情 報が共有されていることがわかる。G 氏によれば、こうした情報に触れて実際 に子どもを参加させる保護者の多くは、教育的活動に対して普段から高い関心 を持っているという。  また、栗原市外でも口コミや地方メディアを介して寺子屋活動を知り、参加 する人もいる。栗原市内の参加者が多い中、仙台市に住む E 氏は寺子屋活動 に孫を参加させていた。E 氏はボランティア活動を契機に諦晃師と面識を持つ ようになった。同師が副住職を勤める通大寺で寺子屋活動がおこなわれている ことを知り、小学校に進学した孫を参加させるようになったとのことである23  地域内の口コミを中心に参加者を集める一方で、寺院同士のつながりから参 加したケースもある。栗原市一迫の副住職である J 師の父親は通大寺で働いて いたことから、J 師の寺院と通大寺との結びつきが強まり、J 師も小学生の頃 から寺子屋活動に参加するようになった。現在では僧侶として活動の中で読経 の仕方や坐禅の仕方を教えている。また、J 師の寺院は里親として何名かの里 子を迎え入れており、その中には寺子屋活動に参加したりスタッフとなったり した方もいる。しかし今回の調査では、ほかの寺院からの参加者は、J 師以外 にみられなかった。寺子屋活動においてほかの寺院との交流が限定的である点 について、J 師は「通大寺さんの〔寺子屋活動の〕場合は長年蓄えてきたものと、 ずっと単体でやってきたので、宮城県〔宗務庁などの組織〕とのかかわり24 あまりない。ひとりでやれるってすごいことですよね」25と語る。  まとめると、寺院-檀家または寺院-寺院など曹洞宗の組織的なつながりの ほかに、学区内の保護者同士のネットワークや地方紙などのメディアが、参加 者の拡大において大きな役割を果たしていると言えるだろう。 23 2019年8月1日の E 氏への聞き取りより。 24 通大寺では、かつて曹洞宗宮城県宗務所第17教区の寺院として教化を目的とした合宿活動 がおこなわれていたが、参加者が集まらず、継続しなかった。この点については、2018年6 月7日に諦應師より口頭で教示を得た。 25 J 師が副住職を勤める寺院では約30年前にも合宿活動がおこなわれていたが、地域内の少 子化などを背景に現在ではおこなわれていない。聞き取りは2019年8月4日におこなった。

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4−2−2.活動に寄せられる期待  次に、参加者保護者及びスタッフの活動に対する期待や認識のあり方につい てみていく。  まず、活動の中で礼儀作法が教えられたり、規則正しい生活ができたりする ことに期待をよせる保護者が何名か見受けられた。栗原市高清水に住む檀家で 子どもを寺子屋活動に参加させた A 氏は「やっぱり、礼儀作法みたいなのが ね……ここでしか〔教えてもらえない。〕家では〔指導が〕難しいところがあ るので」26と、礼儀作法を家庭内で指導する難しさについて語る。E 氏は読経の 時間に読む『はきものをそろえる』について、孫たちは「『はきものをそろえる』 を〔日常の中で〕また忘れてしまうけど、ここ〔寺子屋活動〕にきてまた思い 出す」27と、詩が孫たちに与える影響が印象に残っていると話す。また、スタッ フである G 氏は、小学生として活動に参加していた時の感想を次のように述 べた。 夏休みでも、子どもってラジオ体操でもないとずっと寝てるじゃないです か。〔寺子屋活動の時に〕規則正しい生活ができるのと、自分のうちでは ない、しかも親族のうちでもないところにみんなで寝泊まりして、お寺で しか得られない作法、知らなかったこと、行儀作法を教えてくれるところ とか、お経を教えてもらったり、写経を体験させてもらったりっていうの は、すごい新鮮だったんですよね。大人でいったらちゃんとした時間の使 い方ができる、非日常的な体験ができるっていうのが、すごく楽しくて28  こうした G 氏の口ぶりからは、礼儀作法を教えられたり生活の中に規律が 与えられたりすることが、参加者にとっては新鮮で非日常的なものとして捉え られていたことがうかがえる。 26 2019年8月1日の A 氏への聞き取りより。 27 2019年8月1日の E 氏への聞き取りより。 28 2019年8月1日の G 氏への聞き取りより。

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 礼儀作法の指導や生活に規律を与えること以外に、家庭外で活動をさせるこ とそのものに期待を寄せる声もあった。たとえば A 氏は、子どもは「家にい てもゲームとか〔してしまうが、寺子屋活動では〕しなかったり」29と話して おり、子どものゲーム離れを期待している。C 氏は「親元を離れて活動するこ とはいい機会だと感じている。親として坐禅などよく黙ってやるなあ、よくやっ たなあうちの子は、て感じ」30と子どもの様子に感心していた。  また、子どもたちを親元から一時的に離すことだけでなく、様々な学年・世 代間での交流があることにも意義を感じているという声が、主にスタッフから 聞かれた。G 氏は息子(H 氏)が中学生ボランティアとして参加し続ける理由 を以下のように語る。 〔H 氏は〕明日、県大会なんですね。それでも〔寺子屋活動に〕来たいっ て言ったのは、ちっちゃい子たちへのお世話を自分たちもしてもらったか らしてあげたいし、ずっとお寺にかかわって Y さんや諦應さんにお世話 になっている。お世話になっているから、お世話はしたいし、自分も楽し いし、何か学べるものがあるから、いろんな経験ができるから行きたいっ ていう感じ31  当の H 氏は、「教えられる内容は同じでも、年ごとに人が変わるし、立場も 変わるし、そうゆうのは新鮮みがあります」32と話す。長年参加し続けている からこそ、周りの参加者の変化や、自分自身の成長を実感し、それを楽しんで いるようであった。  寺子屋活動の中でブレスレット作りの指導や怪談の読み聞かせを担当する I 氏は、長年スタッフとして参加する理由について以下のように話す。 29 2019年8月1日の A 氏への聞き取りより。 30 2019年8月1日の C 氏への聞き取りより。 31 2019年8月1日の G 氏への聞き取りより。 32 2019年8月1日の H 氏への聞き取りより。

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子どもたちが集まるから、その中で一緒に活動することが楽しいのかもし れない。お手伝いの人たちとか和尚さんたちと一緒に活動することが楽し いから、たぶんお手伝い続けているんだと思います。〔中略〕一緒に「活動」 するって感じ。子どもたちが集まるっていうのは楽しい行事ですから。大 変だけど。お数珠だけだったらそんな意味がないと思う。あと、夜のお話 だけしてくれっていうのでも意味がない33  つまり I 氏は、自身が担当する活動そのものではなく、ほかのスタッフや参 加児童との交流に楽しさや意義を感じているために参加し続けているのである。 I氏と同様に長年スタッフとして寺子屋活動に携わってきた J 師も、「何より一 番楽しみなのは、やっぱり〔子どもたちの〕成長ですよね」34と語っていた。  さらに、寺院が持つ雰囲気の中で活動をおこなうことに意義があるという意 見もあった。I 氏は、寺子屋活動の中では参加者同士が衝突することがないこ とについて以下のように話す。 めったにけんかってないのよね、不思議なことに。学校なんかだと、とっ くみあいのけんかなんてあるはずなのね。そういうのがみられないのは、 やっぱり雰囲気が違うのかな。別の緊張感なんて持ってくれるのかなっ て35  参加している子ども同士のけんかがみられないのは、寺院という場所の「雰 囲気」が、彼ら彼女らに緊張感を与えているからではないか、という意見であ る。諦晃師は「いのちとこころ」のお話について、「お寺のお堂の雰囲気の中で、 お坊さんであったり、看護師さんとか学校の先生じゃない人が教えてるってい うあの空気感っていうのは、やっぱり特別だ」36と語っている。 33 2019年8月2日の I 氏への聞き取りより。 34 2019年8月4日の J 師への聞き取りより。 35 2019年8月2日の I 氏への聞き取りより。 36 2019年11月12日の諦晃師への聞き取りより。

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 以上をまとめると、一部の保護者やスタッフは作法の指導や規則正しい生活 などに対する教育的成果を期待すると同時に、親元を離れて普段できない経験 や世代間の交流ができることに対しても楽しさや意義を感じていると言える。 また、運営側は、仏教寺院が持つ雰囲気が子どもたちの態度に影響を与えてい ると考えていることも判明した。 5.寺子屋活動からみた「学び」の場としての仏教寺院  前章までで、寺子屋活動の概要と参加児童の保護者及びスタッフへの聞き取 り調査の結果を紹介した。以上を踏まえて、本章では仏教寺院の教育的役割を 考察していく。 5−1.「学び」の場の礎  まず、活動主体が禅系宗派の寺院であることを念頭に置きながら、寺子屋活 動の内容を振り返っておきたい。3-2で示した〈表4〉からは、坐禅や読経、 お茶の作法を指導する時間が一貫して設けられる一方で、レクリエーションの 内容は年度ごとに変化してきたことがわかる。おそらく、坐禅や読経などの教 化的要素を維持しながら、参加児童に受け入れられやすい活動内容のあり方を 試行錯誤し、マンネリ化を防いでいるものと思われる。  次に、主催寺院と保護者及びスタッフとの関係に着目するとどうか。檀家へ の広報活動、過去の参加者からの口コミ、地方紙に掲載された活動紹介の記事 など、保護者やスタッフが寺子屋活動の情報を入手する経路は複数存在する。 その中でも、保護者同士のネットワークが活動の拡大に大きな影響を与えてい るということが、聞き取り調査で明らかとなった。I 氏のように、保護者会を 通して寺族との交流を深めたことが寺子屋活動の参加につながった事例や、B 氏のように、保護者同士の集まりで得た情報を頼りに参加に踏み切る事例があ ることから、そうしたネットワークの影響力の強さがうかがわれる。  以上をまとめると、こうなる。子どもたちが体験を通して価値観を形成する 場、すなわち「学び」の場を支えているのは、直接的には、曹洞宗仏教寺院の

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間で蓄積されてきた教化活動のノウハウや、子どもたちを飽きさせないための 主催寺院の工夫である。しかしそれはさらに、地域的なネットワークという寺 院外にまで広がる基盤によって支えられている。そのような重層的・複合的構 造を持つ礎の存在により、寺子屋活動の「学び」は可能となっているのである。 5−2.寺子屋活動で期待される「学び」  では、仏教寺院は子どもの「学び」においていかなる役割を果たしうるのだ ろうか。調査の結果を分析すると、活動の役割は以下の3つにまとめることが できる。 1 型を身につける  まず、今回の聞き取り調査では、寺子屋活動を通して「しつけ」がなされる ことを期待する声が一定数聞かれた。これは稲本が指摘したように、家庭内の しつけの困難さを認識している保護者が少なくないことを示しているものと思 われる(稲本 2018: 236─9)。また、中学生がボランティアとして年下の参加 者たちの世話をする場面も多々みられた。これは、年長者が年少者の前でどの ようにふるまうべきか学ぶ機会を寺子屋活動が与えていると言えるだろう。 2 非日常を体験する  「しつけ」への期待のほかに、親元から離れる体験をさせたり、ゲームから 距離を置かせたりしたいという声が保護者から聞かれた。また、子どもたちに 楽しい思い出をつくってほしいという思いを抱く保護者や、子どもたちと活動 を共にすることを楽しみにしているスタッフも多かった。このことから、子ど もたちが成長する中で、家庭や学校などの日常的な空間の中から一時的に離れ る経験が必要であるという考えが、保護者やスタッフの間で共有されているこ とうかがえる。家族や同級生以外の人々と交流したり、普段できないレクリ エーションを体験したりできる寺子屋活動は、家庭や学校にはない非日常を体 験できる場として、子どもたちの「学び」に貢献していると思われる。

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3 リアルな生と死を共有する  「いのちとこころ」のお話の内容からわかるように、諦應師と諦晃師は実際 にあったエピソードをもとに、人の生と死について語っている。子どもたちや その保護者の反応から、僧侶らの語りが聞き手に強い印象を与えていることは 想像にかたくない。通大寺の住職、あるいは臨床宗教師として死の現場を目の 当たりにしてきた僧侶にしか語れないことがある。病院死の増加や葬送儀礼の 変化により死のリアリティが失われる中で、僧侶らの経験にもとづいた生と死 に関する講話を聞くことは、「いのち」の大切さや人生の意味について子ども たちなりに考える上で重要な役割を果たしていると言えるだろう。 6.おわりに  本稿では、寺子屋活動を事例に、仏教寺院が子どもたちの「学び」にいかな る役割を果たしうるかについて考察してきた。子どもたちが礼儀作法を習得す る場としてだけでなく、家庭や学校では出会えない人々や文化に触れる場所を 提供したり、僧侶らの実体験をもとに人の生と死に関して熟考する機会を与え たりする場として、仏教寺院は子どもたちの価値形成に大きな影響を与えうる ことを指摘した。  もちろん、今回取り上げた寺子屋活動は特殊事例に過ぎず、通大寺以外の寺 院にはこのような活動を実施できないという指摘もあるだろう。実際に、今回 聞き取り調査に応じた J 師も、合宿活動に対する関心は僧侶の間にある一方で、 少子化や宗教離れ、子どもを預かることに対するリスクを背景に活動に踏み切 ることが難しいと語っていた37。しかし本稿の目的は、一寺院の活動が有する ノウハウを全国の寺院に普及させることではない。家庭や学校にはないオルタ ナティブな空間や、宗教者が肌身で感じた生と死に関する体験を共有する場へ のニーズが、子どもを育てる人々の間に存在すること。この事実を指摘するこ とに本稿の意義がある。そして、そうしたニーズに応えることと、各仏教寺院 37 2019年8月4日の J 師への聞き取りより。

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が持つ歴史や文化を再評価することや宗教者としての活動をみつめなおすこと は無縁ではないだろう。 謝辞  本稿の調査を進めるにあたり、通大寺住職・副住職のお二方及びご寺族の皆 様には大変お世話になりました。そのほかにも、スタッフの皆様、参加者と保 護者の皆様、『大崎タイムス』の記者様など、多くの方々にご協力いただきま した。皆様のお力添えがなければ本研究を完成させることはできませんでした。 ここで改めて、すべての方に厚く御礼申し上げます。 引用・参考文献一覧 青井和夫,1987,「しつけ研究への社会学的アプローチ」小山隆編『現代家族 の親子関係──しつけの社会学的分析』培風館,17─47. 阿満利麿,2001,『社会をつくる仏教──エンゲイジド・ブッディズム』人文 書院. 稲場圭信,2011,『利他主義と宗教』弘文堂. 稲場圭信・櫻井義秀編,2009,『社会貢献する宗教』世界思想社. 稲本琢仙,2018,「寺院は子どもの成長をどう助けられるか」櫻井義秀編『し あわせの宗教学──ウェルビーイング研究の視座から』法蔵館,220─41. 大谷栄一編,2019,『ともに生きる仏教──お寺の社会活動最前線』 筑摩書房. 大谷栄一・藤本頼生編,2012,『叢書 宗教とソーシャル・キャピタル2 地域社 会をつくる宗教』明石書店. 門脇郁,2020,「「学び」の場としての仏教寺院──寺子屋活動の展開を事例に」 『日本民俗学』(302): 180─1. 苅谷剛彦・濱名陽子・木村涼子・酒井朗編,2000,『教育の社会学──「常識」 の問い方、見直し方』有斐閣. 栗原郡教育会,[1918]1998,『栗原郡誌』栗原郡. 櫻井義秀,2011,「ソーシャル・キャピタル論の射程と宗教」『宗教と社会貢献』

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1(1): 27─51. ────,2018,「日本人の幸福感と宗教」櫻井義秀編『しあわせの宗教学─ ─ウェルビーイング研究の視座から』法蔵館,14─44. 櫻井義秀編,2019,『宗教とウェルビーイング研究──しあわせの宗教社会学』 北海道大学出版会. 曹洞宗教学局,[1953]1979,「児童の教化」『曹洞宗布教指導叢書』三宝書院, 3(7): 3─121. 曹洞宗広報室,1973,『昭和48年版曹洞宗寺院名鑑』曹洞宗宗務庁. 曹洞宗宗務庁教学部,2001,『僧堂読本 曹洞宗を知る』曹洞宗宗務庁. 曹洞宗宗勢総合調査委員会,2017,『曹洞宗宗勢総合調査報告書──2015年(平 成27)』曹洞宗宗務庁. 築館町史編纂委員会,1976,『築館町史』築館町. 永井政之,1982,「曹洞宗の仏具」岡崎讓治『仏具大事典』鎌倉新書,616─36. 中村元・福永光司・田村芳朗ほか編,[1989]2002,『岩波仏教辞典 第二版』 岩波書店. 西村明編,2018,『いま宗教に向き合う2 隠される宗教、顕れる宗教 国内編』 岩波書店. 松本紹圭・遠藤卓也,2019,『地域とともに未来をひらくお寺という場のつく りかた』学芸出版社. 水谷幸寛,2011,「現代版寺子屋の探求──こどもの寺の実践を中心として」『曹 洞宗総合研究センター学術大会紀要』曹洞宗総合研究センター,12 : 443─ 8. 皆川広義,1973,「禅の集い運動における問題点──集団運営とタテ・ヨコの 変化」『教化研修』,16 : 99─110. 宮城縣,1959,『宮城縣史 11(教育)』宮城縣史刊行会. 宮下陽祐編,2008,『2005(平成17)年──曹洞宗宗勢総合調査報告書』曹洞 宗宗務庁. ムコパディヤーヤ・ランジャナ,2005,『日本の社会参加仏教──法音寺と立

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正佼成会の社会活動と社会倫理』東信堂. 蓑輪顕量編,2014,『事典日本の仏教』吉川弘文館. 参考ウェブページ 河北新報データベース(2019年4月16日最終閲覧,https://t21.nikkei.co.jp/g 3/ CMNDF11.do). 神戸秀巳,2013,「はきものをそろえる」(2020年1月5日最終閲覧,https:// chigasakinishihama-h.pen-kanagawa.ed.jp/pdf/hakimono.pdf). NPO法人 JORTC,2017,「緩和ケア病棟における臨床宗教師の実践」(2019年 12月16日最終閲覧,https://www.jortc.jp/video_seminar20161203_ 3.html). 宮城県復興応援ブログココロ プレス(2018年2月28日取得 ,http://kokoropress. blogspot.jp/2012/02/ 1.html).  

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The Buddhist Temple as a Place for Learning:

A Case Study on

Terakoya

Activity

Iku Kadowaki

 The main purpose of this paper is to describe the social roles of Buddhist temples at which experiential learning activities are held. These days, many temples have learning activities for elementary school students, who can experience zazen, shakyo, or some recreational activities. However, very few attempts have been made to observe such activities from the standpoint of “Engaged Buddhism.” Therefore, it may be helpful to research about learning activities at temples in terms of Engaged Religion.

 In this study, I have observed terakoya activity, which has been held at Tsudaiji temple since 1987, and interviewed staff and parents of participants in 2018 and 201 9. Tsudaiji, which is in Miyagi Prefectureʼs Kurihara City, has more than 80 participants in this activity.

 The results indicate that some parents expected this activity to teach manners to their children while others needed alternative places for their children to learn through experience. In addition, the observation showed that Buddhist priests gave children the opportunity to consider their lives. This is not to say that many temples need to provide social activities in the same way. The point of this paper is that reviewing the culture of temples and Buddhist priestsʼ experience can lead to valuable insight.

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