日英の受動表現比較とθ役
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(2) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) (7)a.?ジ. ョン はそ の 手 紙 を メ ア リー に よ って 送 られ た。. b.?そ. の 手 紙 は ジ ョン に メ ア リー に よ って 送 られ た 。. 「に よ っ て 」 句 は 主 語 の 次 に お くの が も っ と 自 然 で あ ろ う 。 (8)a.ジ. ョ ンは メ ア リー に よっ て そ の 手 紙 を送 られ た 。. b.そ. の 手 紙 は メ ア リー に よっ て ジ ョンに 送 られ た 。. (3b)が. 容 認 不 可 能 な の は,(4b)か. ら 分 か る よ う に,criticizeは. 第4文. 型 を取 らな い か らで あ. る。 (4b)の. 訳 を 第4文. (9)?メ. 型 的 に 訳 し た(9)も 少 し 不 自 然 で あ る 。. ア リー は ジ ョ ンに彼 の論 文 を批 判 した。. し た が っ て,(9)が ま た,間. 正 し い か ら(3a)が. 接 受 動 文 の 助 詞 を 入 れ 替 え た 文 は,非. ⑩*ジ. ョ ン圏. 言 え る 「批 判 す る 」の 場 合 と 異 な り,「 人 」の 場 合 が 目 的 語 名 詞 句 に な. ら な い(11)文の 場 合 も,(3a)に qD*ジ. 文法的である。. 自分 の 論 文 圖 メ ア リー に批 判 され た 。. 更 に,(la)と(2a)が. ⑫. 言 え る とは 断 言 で きな い の で あ る。. 対 応 す る文 が 存 在 す る。. ャ ック を 盗 む 。. ジ ャ ッ ク は 自転 車 を盗 まれ た。. ⑫ に 対 応 す る 英 語 は,や. は り非 文 で あ る 。. (13;)*Jackwasstolenhisbicycle. た だ し,次. の よ う に 構 文 を 変 え た り,主 語 を 変 え た りす る と 容 認 さ れ る 。. (14)a.Jackhadhisbicyclestolen. b.HisbicyclewasstolenfromJack." 最 後 に 「AのB」(英 ⑮a.ジ. 語 で はA'sB)と. い う形 の 主 語 を用 い る と受 動 態 は可 能 と な る。. ョ ン の 論 文 は 批 判 さ れ た 。[ニJohn'spaperwascriticized.]. b.ジ. ャ ッ ク の 自転 車 は 盗 ま れ た 。[eJack'sbicyclewasstolen.]. 以 上 の よ う に,日. 本 語 と英 語 で は,受. 動 表 現 に 構 造 的 な 違 い が あ る が,生. る 原 理 的 な 説 明 の 可 能 性 を 探 る こ と が,本. 1.日 1.1.文. 成文法の枠組み によ. 稿 の 目的 で あ る 。. 英 の 構 造 差 とPP の成 り立 ち に お ける 日英 の根 本 的 違 い. (ユ6a)の 英 文 を,前 置 詞 を用 い て名 詞 化 をす る と (17a)の. よ う に な る。. 一42一 窟.
(3) 日英 の受 動 表現 比 較 と θ役 (16)a.JohngaveMaryadoll. b.ジ. ョ ン が メ ア リ ー に 人 形 を あ げ た 。[(16a)の. 訳]. ⑰a.thegiftofadolltoMarybyJohn b.ジ. ョ ン が メ ア リ ー に 人 形 を あ げ る こ と[(ユ7a)の. ⑰ を 観 察 す る と,英 (18)a.by→. 語 の 前 置 詞 が 日本 語 の 助 詞 に 対 応 し て い る こ と が 分 か る 。. 「が 」:主 格. b.to→. 「に 」:与 格. c.of→. 「を 」:対 格. 日 本 語 文 で は,(16b)と(ユ7b)に お い て,名. 訳]. あ る よ う に,文. で も 句 で も 「助 詞 」を 用 い る 。 一 方,英. 文に. 詞 句 に全 て前 置 詞 を用 い る と非 文 に な る。. ⑲a.ジ. ョ ン 囲 メ ア リ ー 囮 人 形 圏 あ げ た 。[(16b)]. b.*ByJohngavetoMaryofadoll. つ ま り,英. 文 の 場 合 は,主. 型 に お い て は,toの. 動 詞 の 場 合ofの. 省 略 が,ま. た,第4文. が,第3文. 型 で は 与 格 を 示 すto句. が 現 れ る 可 能 性 が あ る が,一. 般 に英 文. 置 詞 が な くな る傾 向 が 強 い の で あ る 。. 日本 語 で は,対. 格 の 助 詞 の 省 略 は,少. 主 格 の 助 詞 の 省 略 は 容 認 度 が 更 に 落 ち,与 も,省. 省 略 が,他. 省 略 が 義 務 的 で あ る。. 受 身 構 文 で は,by句 で は,前. 語 位 置 で はbyの. し 容 認 度 が 落 ち る も の の 一 応 可 能 で あ る と 判 断 で き る が, 格 の 助 詞 は 省 略 で き な い 。 基 本 的 に は,口. 語 で あ って. 略 を促 さな い傾 向 が 見 られ る 。. ⑳a.?ジ. ョンが メア リー に人 形 あ げ た 。. b.??ジ c.*ジ. 1.2.受. ョン メ ア リー に人 形 をあ げ た 。 ョンが メ ア リー 人 形 をあ げ た 。. 身 表 現 と省 略 現 象. 1.ユ.で 考 察 し た 省 略 現 象 を 忠 実 に,日 前 置 詞,日 ⑳Pを a.ジ. 本 語 の 助 詞(=後. 置 詞)を. 英 の 受 身 表 現 に 当 て は め て み る 。 た だ し,Pと. 示す。. 省 略 しな い場 合 ョンが メ ア リー に批 判 され た 。. b,*ByJohnwascriticizedbyMary. (22)受身 の 主 語 のPを. 省 略 す る場 合. 一43一. は英 語 の.
(4) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部紀 要4巻2号(2004・12) a.?ジ. ョ ン メ ア リー に 批 判 さ れ た 。. b.JohnwascriticizedbyMary. ㈱ 動 作 主 格 のPを a.*ジ. 省 略 す る場 合. ョ ンが メ ア リ ー 批 判 さ れ た 。. b.*ByJohnwascriticizedMary. ⑳ 全 て のPを a.*ジ. 省 略 す る場 合. ョ ンメ ア リー批 判 さ れ た。. b.*JohnwascriticizedMary. ⑳ ∼ ⑭ か ら分 か る こ と は,日 (=屈. 折 句 の 主 要 部)に. 本 語 は 名 詞 句 がPに. よ り,動. よ り 認 可 さ れ て お り,英. 作 主 格 がP(eby)に. 英 語 に お け る 受 身 構 文 の 主 語 の 認 可 に つ い て,確. 語 は 受 身 の 主 語 が1. よ り認 可 さ れ る と い う こ と で あ る 。2} 認 してお こ う。. (2励a.criticizeJohn b.becriticizedJohn D構 造 が(25a)の. 状 況 で あ れ ば,Johnはcriticizeか. ま ま 認 可 さ れ る が,受. 身 構 文 で はD構. 造 が(25b)の. 与 え る こ と が で き な い と さ れ,Johnは る 。 主 語 位 置 で は,1に. よ りJohnが. 以 上 を 踏 ま え て,(3)の ㈱a.ジ. ら 目 的 格 を 授 与 さ れ る の で,Johnは 形 に な っ て お り,こ. の 形 はJohnに. その. 目的格 を. 格 を受 け る ため に 主 語 位 置 に 強 制 的 に移 動 され るの で あ 認 可 さ れ る の で,文. 法 的 文 が 派 生 す る。. 間接 受 動 につ い て 考 察 し よ う。. ョ ン は 自 分 の 論 文 を メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。[(3a)]. b.*JohnwascriticizedhispaperbyMary.C(3b)] (26a)は,「. 自 分 の 論 文 を 」 と い う 表 現 が 入 っ て い る か ら 問 接 受 動 と 呼 ば れ,そ. 英 語(26b)は. 非 文 で あ る と され る。. (26b)文. が 非 文 で あ る 理 由 は,hispaperが. あ る 。 一 方,(26a)が. れ に対 応 す る. どの 範 躊 か ら も格 を受 け る こ とが で きな い か ら で. 文 法 的 な の は,「 を 」 が 名 詞 句(=「. 論 文 」)に 対 し て 格 を 与 え て い る か ら. で あ る と言 え る。 し た が っ て,英 る,即. ち,適. 語 の 場 合 は,構. 造 的 に 格 を 与 え ら れ な い な ら ば,語. 当 な 前 置 詞 を 名 詞 句 の 前 に 置 く こ と に よ っ て,そ. る 。criticizeの 場 合 は,forが. そ の 適 切 な 前 置 詞 とな る。. ⑳JohnwascriticizedforhispaperbyMary.. ii. 彙 的 に格 を与 え る よ う にす. の 名 詞 句 が 認 可 さ れ る と類 推 で き.
(5) 日英 の受 動 表現 比 較 と θ役 1.3.日. 英 の 発 想 の 違 い とPP. 日英 のPP(preposition/postpositionphrase)の ら の 日英 の 発 想 の 違 い に つ い て,少 ㈱a.神. 特 性 と θ役 の 関 係 を 述 べ る 前 に,PPの. 視点か. し触 れ る 。. 戸 団 大 き な地 震 が あ っ た。. b.Therewasabigearthquake圓Kobe. ⑳a.私. の兄 は戦 争 団. 目 を失 った 。. b.Mybrotherlosthiseyes匠thewar. ⑳a.彼. は ハ ン カ チ 団 口 を拭 い た 。. b.Hewipedhismouthwithahandkerchief.. ⑳a.彼. 女 は ドアマ ッ ト団 足 を拭 い た 。. b.Shewipedherfeetonadoormat.. (32)a.彼 は掃 除 機[固 部屋 を掃 除 した。 b,Hecleanedhisroomwiththevacuumcleaner.. ㈱a.彼. 女 は洗濯機[司服 を洗 った。. b.Shewashedtheclothesinthewashingmachine.. 鱒a.私. は ミ シ ン 団 ドレス を縫 っ た。. b.Isewedthedressesonthesewingmachine. 「で 」 と い う 助 詞 は,大 を,⑳. 雑 把 に 分 類 す れ ば 「場 所 」 と 「道 具 」 を 表 す 。 ㈱ と(29)の例 は,「 場 所 」. ∼eのの 例 は 「道 具 」を 表 す と思 わ れ る 。. (28a)と(29a)の. 「で 」 は,英. 語 で も 同 じinを. 用 い る か ら と い っ て,全. い る と 断 言 す る こ と は で き な い 。 と い う の は,(29a)の で あ る 。 そ れ が 証 拠 に,英 「道 具 」の 「で 」 は,英. 語 で はduringthewarと 語 で は 常 にwithと. の で あ る 。 洗 濯 機 は,洗 一方 を示 す. ,ド. 「で 」 は 時 聞 的 な 側 面 を 持 っ て い る か ら 置 き換 え る こ とが で きる。. は 限 ら な い 。 自 分 の 手 で 持 ち 上 げ て,あ. トロ ー ル 可 能 な 道 具 を 表 す 場 合 の み,withを ド ア マ ッ トや 洗 濯 機. く 同 じ機 能 を 持 っ て. 用 いる。. ま た ミ シ ン は 手 で 持 ち 上 げ て 使 う わ け で は な い の で,withを 濯 物 を 洗 濯 槽 に 入 れ て 洗 う の でinを. ア マ ッ ト と ミ シ ン は,onを. る程 度 コ ン. 用 い る が,事. 「で 」 と の 共 通 点 が あ る 。 と い う の は,次. 用 い ない. 用 い る。. 情 が 異 な る 。 ドア マ ッ トの 場 合 は,「 場 所 」. の よ う に言 え るか らで あ る。. ㈲ 彼 女 は ドア マ ッ トの 上 で 足 を 拭 い た 。 し か し,ミ. シ ン の 場 合 は,ミ. シ ン の 機 械 の 針 と 縫 い つ け る 布 と の 接 触 面 を 強 調 し てonを. 一45一. 用い.
(6) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部紀 要4巻2号(2004・12) て い る の で あ る。 い ず れ に せ よ,日. 本 語 と 英 語 で は 発 想 が 異 な る こ と が,同. じ こ と を 表 す の に,Pが. 異 な る点 か. ら明 白 な の で あ る。. 1、4.θ. 役 とPの. 関係. 1.3.で 挙 げ た 「道 具 」や 「場 所 」 と い う の は 意 味 役 割(=θ 日本 語 で はPが. 異 な り,ま. 1.3.で 論 じ た こ と をPと ㈹a.with,on,in→ b.in→. た,Pと. θ役 は 必 ず し も1対. 役)で,こ. れ を 表 す の に,英. 語 と. ユ対 応 を す る わ け で は な い こ と が 分 か る 。. θ役 の 視 点 で ま と め る と 次 の よ う に な る 。 「で 」:道 具. 「で 」:場 所. 勿 論,「 場 所 」 と い う 意 味 役 割 を マ ー ク す るPに,日. 本語 では. 「に 」 も あ り,英. 語 で はonやat. もあ る。 同 じPで. も2つ. の θ役 を 担 う こ とが あ る た め に,意. 味 が 曖 昧 に な る こ とが あ る 。 ⑳ を 見 て み よ. う。 ⑳ 研 究 室 に電 話 が あ った 。 eのの. 「に 」 は 元 来. 表 す 場 合 は,文 (38)a.名 b.名 な お,名. 2.項. 詞が. 「もの 」 と 「こ と 」 を. 詞が. 「も の 」 の と き,「 に 」 は 「場 所 」 を 表 す → 研 究 室 に 電 話 機 が あ っ た 。. 詞が. 「こ と 」 の と き,「 に 」 は 「着 点 」 を 表 す → 研 究 室 に 電 話 が か か っ て き た 。. 「に 」 は 使 え ず,「. b.運. の θ役 を 担 う の で,名. が 曖 昧 に な る。. 詞が. (39)a.*運. 「場 所 」 と 「着 点 」 の2つ. 「こ と 」 の と き,そ. の こ と が あ る 場 所 で 行 わ れ る と い う 状 況 を 表 した い 場 合 は,. で 」が 用 い ら れ る 点 に 注 意 し た い 。. 動 場 にス ポ ー ッ大 会 が あ った 。 動場 でスポーツ大会があった。. 構 造 の 日英 差. 2.1.受. 動 態 の 背 景 の 類 似 と項 構 造. 「は じ め に 」 で 示 し た 受 動 態 を項 構 造 の 視 点 か ら,再 (40)a.ジ. ョ ン は メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。[=(1a)]. b.JohnwascriticizedbyMary.[=(ユb)] (41)a.彼. の 論 文 は メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。[=(2a)]. 一46一. 度 考 察 す る こ と にす る。.
(7) 日 英 の 受 動 表 現 比 較 と θ役. b.HispaperwascriticizedbyMary。[=(2b)] (4?Ja.ジ. ョ ン は 自 分 の 論 文 を メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。[=(3a)]. b.*JohnwascriticizedhispaperbyMary.[_(3b)] (40)か ら,日. 本 語 の. 「批 判 す る 」 も,英. 「経 験 者 」(Experiencer)の2つ (43)a,日 b.英 ま た,ω. 本 語:「. 語 の"criticize"も,と. も に,「. の 項 を 取 る こ と が 分 か る 。 経 験 者 はExpで. メ ア リ ー 」(ニAgent),「. 動 作 主 」(Agent)と 示 す 。. ジ ョ ン 」(=Exp). 語:"Mary"(=Agent),"John"(ニExp) で 分 か る よ う に,日. 英 共 に. 「動 作 主 」 と. 「主 題 」(Theme)の. る。. θ役 も担 う こ と が で き. 職 鱒a.日 b.英. さ ら に,働 を 全 て1文. 本 語:「. 作 主),「. 彼 の 論 文 」(=Theme),. 語:"Mary"(=Agent),"hispaper"(=Theme) か ら 理 解 で き る よ う に,日. 本 語 の 受 動 態 で は,「 動 作 主 」,「 経 験 者 」 お よ び 「主 題 」. に 取 り 入 れ る こ と が 可 能 で あ る 。 し た が っ て,日. よ う に な る 。(た ㈲a.日. メ ア リ ー 」(=動. だ し,下. 英 の 受 動 態 に お け る 項 構 造 は,次. の. 線 部 は 外 項 に 現 れ る θ役). 本 語:第1型[Exp,Agent] 第2型[Theme,Agent] 第3型[Exp,Theme,Agent]. b.英. 語:第1型[Exp,Agent] 第2型[Theme,Agent]. (45b)か. ら,英. 語 は,第3型,す. な い と 思 わ れ る 。 し か し,前. な わ ち,ExpとThemeとAgentが 置 詞 を 駆 使 す れ ば,こ. の3つ. す べ て現 れ る形 は存 在 し の θ役 が 存 在 す る 点 に 注 目 し た い 。. (46)a.*JohnwascriticizedhispaperbyMary. b,JohnwascriticizedforhispaperbyMary.[_(27)] ま た,各. θ 役 は,日. い 。 た と え ば,by句 ⑳a.ジ. 英 と も に,各. 型 に つ い て,義. 務 的 に生 じな け れ ば な らな い とい う こ とは な. は 省 略 可 能 で あ る 。. ョ ンは批 判 され た 。. b.Johnwascriticized. (48)a.彼. の 論 文 は批 判 され た 。. b.Hispaperwascriticized. し か し,義. 務 的 要 素 も あ る 。 た と え ば,英. 語 で は 主 語 は 省 略 さ れ な い の で,外. 一47一. 項 に 現 れ る θ役.
(8) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) は,日. 本 語 に 比 べ,義. (49)a.?メ. 務 的である。. ア リー に 批 判 され た 。. b.*WascriticizedbyMary. な お,時. や 場 所 を 表 す θ役 は,完. 全 に 任 意 で あ る 。 つ ま り,前. 置 詞 を 用 い て 時 や 場 所 を,. criticizeを 用 い た 受 身 構 文 に 添 え る こ と が で き る 。 偏①a.ジ. ョ ン は,3月5日. に 彼 の 家 で,メ. ア リー に論 文 を批 判 され た。. b.JohnwascriticizedforhispaperonMarch5inhishomebyMary. 以 上 の こ とか ら,項 と も に 共 通 し て,3種 主)で. 構 造 は 若 干 異 な る も の の,受. 類,す. な わ ち,「Exp」(経. 身 構 文 に 特 定 的 に 用 い ら れ る θ役 は,日. 験 者),「Theme」(主. 題)お. よ び 「Agent」(動. 英 作. あ る と言 え る こ とが わ か る 。. 2.2.受. 動 態 の条 件. 日 英 の θ役 の 種 類 と 数 が 受 身 構 文 で 共 通 し て い る と い う こ と を,2.1.で り方(Pを. 用 い る か ど う か,主. 日 英 共 通 して,受. 語 の 省 略 を 容 認 で き る か ど う か な ど)は. 論 じ た が,項. 構 造のあ. 明 らか に異 な る。. 身 構 文 に な り に く い θ役 が 存 在 す る こ と も あ る 点 に 触 れ て お く。. (51)a.JackleftOsaka. b.ジ. ャ ッ クは 大 阪 を 発 っ た 。. (52)a,*OsakawasleftbyJack. b.*大. 阪 は ジ ャ ック に発 た れ た。. (53)a.Jackleftthejob. b.ジ. ャ ッ ク は そ の 仕 事 を 残 した 。. 6のa.ThejobwasleftbyJack. b。 仕 事 は ジ ャ ッ ク に 残 さ れ た 。3) な ぜ,(52)と6の の 差 が 出 る の で あ ろ う か 。 こ れ に は,主 階 層 と は,θ. 題 階 層 が 関 係 して い る と 思 わ れ る 。 主 題. 役 に よ り階 層 が 異 な る と い う 発 想 で あ る 。. ㈲ 主題 階 層 a.高:動. 作 主(Agent). b.中:起. 点(Source),着. c.低:主. 題(Theme). そ し て,主. 題 階 層 の 視 点 か ら,受. 点(Goal),場. 所(Location),経. 身 の 条 件 は,次. i・. 験 者(Experiencer). の よ うに 考 え られ て い る 。.
(9) 日英 の受 動 表現 比 較 と θ役 ㈲ 受 身 の 主 語 に 与 え ら れ る θ役 は,そ. の 他 の 名 詞 句(ま. た はP句)に. 与 え ら れ る θ役 よ り. も階 層 が 低 くな け れ ば な らな い。 働 で は,日. 英 と も に 受 身 の 主 語 に 「場 所 」(中)が. 来 て お り,by句. のJackは. 「主 題 」(低)で. あ る 。4) 一方. ,(54)で. は,仕. 事 は 「主 題 」(低)で,Jackは. 「動 作 主 」(高)な. の で,受. 身 が 可 能 なの で. あ る。. 2.3.格. 付 与 の 日英 差. 受 身 構 文 と項 構 造 の あ り方 に 触 れ る 前 に,格 V(=他. 動 詞)ま. た はP(=前. 付 与 の 日英 差 を確 認 し て お く 。 そ も そ も 名 詞 句 は,. 置 詞 ま た は 後 置 詞)に. よ り格 を 受 け な け れ ば な ら な い 。 英 語 で は,. 次 の よ う な格 付 与 が 行 わ れ る。 6のa.V:直. 一方. 接 目 的 語 に 対 し て 「対 格 」,間 接 目 的 語 に 対 して. b.P:目. 的 語 に 対 し て 「斜 格 」 を 与 え る 。. c.1:外. 項 に 対 し て 「主 格 」 を 与 え る 。. ,日. 本 語 は,次. の よ う な 一 般 式 が 言 え る か ら,す. 「与 格 」 を 与 え る 。. べ て の 名 詞 は 格 をPか. ら受 け て い る と考. えて よい 。 (58)日 本 語 の 文=Vグ Pが. ル ー プ[ニModV]+P句. な い 場 合 で も,受. 身 構 文 の 主 語 の 場 合,1(=屈. 性 が あ る と 考 え られ る の で,容 ま た,目. 的語の. グ ル ー プ[=Σ(NP+P)]+副 折 句 主 要 部)か. 詞類. ら 「主 格 」 を 受 け る 可 能. 認 度 が そ れ ほ ど低 く な い 。. 「を 」 を 省 略 して も完 全 な 非 文 に な ら な い の は,日. 本 語 の場 合 は受 身形 の動 詞. で も 格 を 与 え て い る 可 能 性 が あ る か らで あ る 。 し か し,動. 作 主 を示 す. 「に 」 の 省 略 が 不 可 能 な の は,格. 受 身 形 の 動 詞 は 動 作 主 格 をNPに (59)a.?ジ b.?ジ. ョ ン,論. 3.受 3.1.態. ョ ン は,論. 与 え る 能 力 は な い と 考 え られ る の で あ る 。. 文 を メ ア リー に批 判 さ れ た よ。. ョ ン は,論. c.*ジ. を 受 け る 環 境 に な い か ら で あ る 。 即 ち,. 文,メ. ア リー に批 判 さ れ た よ。. 文 を メ ア リ ー 批 判 さ れ た よ。. 動 態 の 日英 差 と そ の 原 因 とPお. よび 統 語 的位 置 の 関係 の 日英 差. 前 節 で,日 英 共 に 「批 判 す る 」(criticize)と い う動 詞 が 要 求 す る θ役 が 共 通 し,そ れ は,「動. 一49一.
(10) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) 作 主 」(Agent),「. 経 験 者 」(Exp),お. よ び 「主 題 」(Theme)の3つ. 担 う 範 躊 の 現 れ 方 が 異 な る こ と を 論 じ た 。 ま た,θ 造 上 の 位 置 に お い て,1対1対. ㈹. ⑳. 動 態 と 受 動 態 の 両 方 に お い て,総. 役 を 担 う範 疇 を 構 成 す るPや,そ. し た 場 合 の,日 整 理 してみ る。. 日本 語 の 能 動 態 a.メ. ア リー は ジ ョ ン を 批 判 し た 。. b.メ. ア リ ー が ジ ョ ン を 批 判 した 。. c.メ. ア リ ー は 論 文 を 批 判 した 。. d.メ. ア リ ー が 論 文 を 批 判 した 。. e.メ. ア リ ー は ジ ョ ン の 論 文 を 批 判 した 。. f.メ. ア リー が ジ ョンの 論 文 を批 判 した 。. g.ジ. ョ ン は メ ア リ ー が 批 判 した 。. h.論. 文 は メア リー が 批 判 した 。. i.ジ. ョ ンの 論 文 は メ ア リー が 批 判 した 。. 日本 語 の 受 動 態 a。 ジ ョ ン は メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。 b.ジ. ョ ンが メ ア リー に批 判 され た 。. c.論. 文 は メ ア リー に批 判 され た 。. d.論. 文 が メ ア リー に批 判 され た 。. e.ジ. ョ ンの論 文 は メ ア リー に批 判 され た 。. f.ジ. ョ ンの論 文 が メ ア リー に批 判 され た 。. g.ジ. ョ ンは論 文 を メ ア リー に批 判 され た 。. h.ジ. ョ ンが 論 文 を メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。. i.論. 文 を メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。5). j.*ジ. か も,そ. の θ役 を. の範 躊 の構. 応 が 見 られ る わ け で は な い こ と を 示 し た 。. MaryをAgent,JohnをExp,paperをThemeと を,能. で あ り,し. ョ ン を メ ア リ ー に 批 判 さ れ た 。6). ㈹ 英語の能動態 a.ManycriticizedJohn. b.Marycriticizedthepaper. c.MarycriticizedJohn'spaper.. 一50一. 英 に お い て,生. 成 される文.
(11) 日英 の受 動 表 現 比 較 と θ役 d.John,Marycriticized. e.Thepaper,Marycriticized. f.John'spaper,Marycriticized. (63)英語 の 受 動 態 a.JohnwascriticizedbyMary. b.ThepaperwascriticizedbyMary. c,John'spaperwascriticizedbyMary. な お,日. 英 共 にAgentで. あ る 「メ ア リ ー に 」やbyMaryは. 省 略 可 能 で あ る 。 ま た,日. は 「ジ ョ ン は 」 な ど 「∼ は 」 と い う話 題 を 示 すAgent,ExpやThemeは θ役 とPと ㈹. 動 態lAgent… Exp…. 「を 」 「は 」 「を 」「は 」. 動 態:Agent… Exp…. 「に 」 「が 」「は 」. Theme…. 「が 」 「を 」「は 」8). ㈹ 英 語 の 態 の 差 に よ る θ役 とPの a.能. 動 態:Agent…Pな Exp…Pな Theme…Pな. b.受. 関係. 「が 」 「は 」7). Theme… b.受. 省 略 可 能 で あ る。. の 関係 を整 理 して み る。. 日本 語 の 態 の 差 に よ る θ役 とPの a.能. 本語で. 関係. し(主 し(目. 語 位 置). 的 語 位 置)ま. し(目. た はPな. 的 語 位 置)ま. し(文. た はPな. 頭:話. し(文. 題 化 位 置)9). 頭:話. 題 化 位 置). 動 態:Agent…by Exp…Pな Theme…Pな. 日 本 語 は,Pが. し(主. 語 位 置). し(主. 発 達 し て い る の で,Pの. 語 位 置) 種 類 を 使 い 分 け る こ と に よ り,受. 役 を 担 う名 詞 句 を 同 時 に 表 現 で き る の で あ る が,英 で き な い の で,3つ. 語 で は,同. 動 態 で は,3つ. の θ. じ主 語位 置 を同 時 に 占め る こ と は. の θ役 を 担 う 名 詞 句 を 同 時 に 同 じ文 に 導 入 す る こ と は 理 論 的 に 不 可 能 で あ る 。. 日本 語 文 の 生 成 に 関 し て は,次. の ル ー ル が 存 在 し て い る と 考 え て よ い 。1°). (66)文 の 生 成 に 必 要 な θ役 を 全 てS構. 造 に 表 出 す る に は,そ. て 異 な っ て い な け れ ば な ら な い 。11》. 一5ユ. ー. の θ役 を 担 う 名 詞 句 が 伴 うPは. 全.
(12) 近畿大学語学教育部紀要4巻2号(2004・12) だ か ら,日 本 語 で は,Pが. 豊富 に存 在 す るか ら 聞接 受 動 が 可 能 で あ る と言 え る 。 一 方,英 語 に. お い て 間接 受 動 が不 可 能 な の は,こ れ を可 能 とす る た め の統 語 上 の位 置 が存 在 しな い か らで あ る。. 3.2.英. 語 に よ る 間 接 受 動代 替表 現 の 生成. 3.1.で,英. 語 は 原 理 的 に 間 接 受 動 表 現 が 不 可 能 で あ る こ と を 論 じ た が,問. 3つ の θ役 を 同 時 に1つ. 接 受 動 で な け れ ば,. の 文 に 導 入 す る し く み が 英 語 に も存 在 す る 。 そ れ は,以. 下 の3つ. が考え. ら れ る 。12) ㈲a.Pを b.所. 用 い る。 有 格 を用 い る。. c.haveを. 用 い る。. そ れ ぞ れ 具 体 例 を 挙 げ て み よ う。 (68)a.JohnwascriticizedforhispaperbyMary.[_(27)] b.John'spaperwascriticizedbyMary. c.JohnhadhispapercriticizedbyMary. 日 本 語 で は,(68b)に. 相 当 す る 表 現 は,「 の 」 と い う 助 詞 を 用 い る 表 現 と 一 致 す る が,こ. 文 法 的 で あ る 。 しか も,所. 有 格 を 用 い る と,日. 英 共 に,能. 動 態 に お い て も3つ. れ も. の θ役 を 表 出 で き. る点 を注 目す べ きで あ ろ う。 (69)ジ ョ ン 回 論 文 が メ ア リ ー に よ っ て 批 判 さ れ た 。13) (70)a.メ. ア リ ー は ジ ョ ン 回 論 文 を批 判 し た 。. b,Marycriticizedohn'spaper. 英 語 で 間 接 受 動 的 構 造 が 発 展 し た 動 詞 も存 在 し て い る 点 に も注 意 す べ き で あ ろ う 。 ⑳a.Iwasrefusedadmittance(bythem)[鷲 b.私. 尾 他(1997)]. は彼 らに入 場 を拒 否 さ れ た。. (72Ja.Theyrefusedmeadmittance. b.?彼. らは私 に入 場 を拒 否 した。. い わ ゆ るSVOO構 し か し,(72b)に. 文 の 受 動 態 が,日 見 ら れ る よ う に,能. 本 語 の 間 接 受 動 構 造 に 対 応 す る も の で あ る と考 え ら れ る 。 動 態 に す る と 日本 語 が 若 干 不 自 然 に な る の で,完. し て い る と は 言 い 難 い 。 次 の よ う に,特 (73)彼 ら は 私 に 囮 た だ し,全. て のSVOO構. 殊 な表 現 を加 え る と自然 と な る。. 入場 を拒 否 した 。 文 が 日本 語 と 全 く対 応 し な い わ け で は な い 。. 一52一. 全 に対 応.
(13) 日英の受動表現比較 と θ役 ㈲a.IwastoldthestorybyJack. b.私. は ジ ャ ック に そ の話 を告 げ られ た 。. ㈲a.Jacktoldmethestory. b.ジ. 3.3.自. ャ ック は私 に そ の話 を告 げ た。. 動 詞 と受 動 態. 日本 語 で は,自 ㈹a.妻 b.私. 動 詞 で も受 身 表 現 が 存 在 す る 。. は死 ん だ。 は妻 に死 な れ た。. 英 語 で は,(76b)に. 相 当 す る 表 現 が で き な い 。 何 故 な らdieは. 自動 詞 だ か ら で あ る 。14). ㈹a.Mywifedied. b.*工wasdiedbymywife. dieと い う 動 詞 は,自. 動 詞 な の で,与. で あ る 。 と こ ろ が,dieと. い う現 象 に は,ExpとCauseの2つ. こ こ で 確 認 で き る の は,あ よ っ て,そ. れ を 直 接,文. え る こ と が で き る θ役 はTheme(dieす. 限 個 で あ る が,動. 詞 に. 中 で表 出 で きる数 が 決 ま っ て い る とい うこ とで あ る。. の θ役. の よ う に示 す こ とが で きる。 下 線 部 は外 項 で あ る 。. →Theme. b.survive:2つ. の θ役. →Exp,Theme. c.bereave:3つ. の θ役. →Cause,Exp,Theme. た だ し,bereaveに. み. の θ役 も大 き な 役 割 を 果 た す 。. る 事 象 に 対 し て 想 定 で き る θ役 の 数 は,有. 動 詞 と θ役 の 数 と 種 類 に つ い て は,次 (78)a。die:1つ. る 当 事 者)の. つ い て は,Themeはof句. に与 え られ る。 そ れ ぞ れ の 例 を挙 げ て み る。. Cl9)a.Mywifedied.[(77a)] b.Isurvivedmywife. c.Theaccidentbereavedmeofmywife. dieを 用 い て,同. 時 にExpの. 項 を も表 出 し た い と き は,haveを. 用 い な けれ ば な らない 。. (80)Ihadmywifedie(intheaccident). 間 接 受 動 の 代 替 表 現 と 共 に,自. 動 詞 の 受 身 構 文 の 代 替 表 現 と し て もhaveが. 割 を果 た して い るの が 分 か る。. 一53一. 有 効 で,大. き な役.
(14) 近畿大学語学教育部紀要4巻2号(2004・12) 4.受. 動 態 と使 役 の 間. 4.1.移. 行 現 象 と 日英 差. 受 動 態 の2形 式,即. ち,直 接 受 動 と間 接 受 動 は,日 本 語 で は同 じ形 式 で 表 せ る。. (81)a.ジ ョン は メア リー に批 判 され た 。[直接 受 動] b.ジ. ョンは 論 文 を批 判 され た 。[間接 受 動]. しか し,(8ユb)の. 「さ れ た」 を 「させ た」 にす る と 「使 役 」の形 式 に な る。 日本 語 で は,受 動. か ら使 役 に対 して 形 式 が 移 行 す る の で あ る 。 一 方 ,英 語 で は,間 接 受 動 自体 が 存 在 しな い が,聞 接 受 動 代 替 表 現 と して のhave受. 動が存在. す る。 つ ま り,直 接 受 動 か ら間接 受 動 代 替 表 現へ の 形 式 の 移 行 が 見 られ る 。 さ ら に,have受. 動 の 形 式 は 同 時 に使 役 を も表 す こ とが 可 能 で あ る。 こ の 点 が,日 英 の 移 行 現. 象 に お け る違 い で あ る 。 表 に して ま とめ て み よ う。 (82」 受 動 ・使 役 構 造 に お け る 日英 の移 行 現 象 の 差 日本語. 英語. ジ ョ ンは メ ア リー に 批 判 され た 。. 直接受 動. 間接受動. JohntivascriticizedbyMary. HispaperwascriticizedbyMary.. 論 文 は メア リー に批 判 され た 。 ジ ョ ンは 論 文 を批 判 され た。. *Johnwascriticizedhispaper .. 論 文 を メ ア リー に批 判 され た 。. Johnhadhispapercriticized. *HadhispapercriticizedbyMary. ジ ョ ンは 論 文 を批 判 させ た。. 使役. ジ ョ ンは論 文 を メ ア リー に批 判 させ た 。. 英 語 の場 合 は,日 本語 と異 な り,間 接 受 動 代 替 表現 に お い て も,主 語NPは. 4.2.have構 have受. .. Johnhadhispapercriticized. JohnhadhispapercriticizedbyMary.15' 必要である。. 文 の受 動 と使 役 の意 味 を決 定 す る要 因 動 の 形 式 が 同 時 に 使 役 を も 表 す こ とが あ る と4.1.で. 述 べ た が,そ. の 原 因 を 考 えて み る. こ と にす る。 (83)JohnhadhispapercriticizedbyMary. a.ジ. ョ ン は メ ア リ ー に 論 文 を 批 判 さ れ た 。[have受. 動]. b.ジ. ョ ン は メ ア リ ー に 論 文 を 批 判 さ せ た 。[have使. 役]. 同 じ形 式 な の に,同 (83a)と(83b)の. 時 に2つ. の 意 味 に解 釈 で き る 。16). 意 味 の 差 を 決 定 す る の は,haveの. 表 で ま とめ て み る。. 一54一. 外 項 に 与 え ら れ る θ役 の 種 類 の 差 で あ る 。.
(15) 日英 の 受 動 表 現 比 較 と θ役 ㈱have受. 動 とhave使. have受. 役 の θ役. 動:JohnhadhispapercriticizedbyMary.. [Exp][Theme] have使. [Agent]. 役:JohnhadhispapercriticizedbyMary.. [Causer][Theme]. つ ま り,受 の 場 合 は,θ. 動 と 使 役 の 差 は,have構. 文 の 主 語 の θ役 の 差 に 帰 着 す る の で あ る 。 し か も,英. 語. 役 が 変 わ るだ け で 形 式 まで は変 化 しない 。. 一 方 日本 語 で は な く,Expが. CAgent7. ,(83a)の. 「ジ ョ ン 」はExpで,(83b)の. 外 項 の 場 合 は 「受 身 」,Causerが. 「ジ ョ ン 」 はCauserで. あるだ けで. 外 項 の 場 合 は 「使 役 」の 助 動 詞 を 伴 い,形. 式上 も. 変化 す る の で あ る 。. 4.3.聞. 接 受 動 と 第4項. 日本 語 で は,間 ㈹a.メ. 接 受 動 の 構 文 に 第3者. を 導 入 す る こ とが で き る。. ア リー は ジ ョ ンに 子 供 を ほ め られ た 。. b.メ (85a)は. ア リー は ジ ョ ンに ナ ン シー の 子供 をほ め られ た 。 通 常 の 間 接 受 動 で,こ. 造 的 に 同 じ で あ る が,(85b)は1つ (85b)は,例. え ば,ナ. れ まで に 論 じた 項(=「. 「ジ ョ ン は メ ア リ ー に 論 文 を 批 判 さ れ た 」 と 構. ナ ン シ ー 」)が 増 え て い る 。. ン シ ー が メ ア リー に とっ て 子 育 て に お け る ラ イバ ル で あ る 場 合 に 意 味. を成 す 文 で あ ろ う。 ナ ン シー の 子 供 が ほ め られ る こ と は メ ア リー に とっ て は屈 辱 で あ る 。 した が っ て,第4項. が 入 っ た(85b)文. に お け る 「メ ア リ ー 」はExpと. い う よ り もPatient(被. 害 者). の θ役 を 担 っ て い る と 考 え て よ い 。17} (85a)を. 英 語 に す る と,have受. 動 に し て(86)の形 に な る 。. (86)MaryhadherchildpraisedbyJohn. だ か ら,(85b)もhave受. 動 で 表 す と ㈱ の よ う に な る が,英. 日 本 語 と 異 な る 。(87a)文. は(85b)の. 語 で は,使. 意 味 で は な く,(87b)の. 役 の意 味 しか 出 な い 点 が. 意 味 な の で あ る。. ⑱のa.MaryhadNancy'schildpraisedbyJohn. b.メ. ア リー は ジ ョン にナ ン シー の 子 供 を ほめ させ た。. こ の 主 張 を 意 味 論 の 視 点 か ら 論 じ,か を 挙 げ て い る 。 第4項. が 入 ら な い(つ. つ,統. 計 的 に も 証 明 し て い る 中 川(2000)は,次. ま り,Bob'shorseな. 意 味 が 主流 とな る傾 向 が あ る こ と を示 して い るの で あ る。. 一55一. ど と は な ら な い)場. 合 で も,使. の例 文 役 の.
(16) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) (88)a.Hehadhishorseshotbyhiscrazyson. b.彼. は,彼. c.*彼 さ ら に,㈱. の 気 が 狂 った 息 子 に 自分 の 馬 を撃 た せ た 。. は,彼. の 気 が 狂 っ た 息 子 に 自 分 の 馬 を 撃 た れ た 。[(88a)の. は 被 害 を 与 え そ う な 名 詞 句 がby句. な る の が 自 然 と 思 わ れ る が,英 と に か く,第4番. に 現 れ て い る の で,文. 益 者)と. が 被 害 を表 す 受 身 構 文 と. 語 で は や は り使 役 の 意 味 に な る の で あ る 。. 目 の 項 が 導 入 さ れ る こ と に よ り,日. る 。Beneficiary(受. 意 味 で]. い う 意 味 役 割(本. 英 で 主 語 の θ役 が 異 な る と い う こ と に な. 論 で はBeneと. 省 略 す る)を. 用 い て,次. の ように. 分 析 で き る も の と 考 え ら れ る 。'8) (89)第4項. 導 入 構 文 の 日英 の θ役 の 差. 日本 語:メ. ア リー は ジ ョン に ナ ンシ ー の子 供 を ほ め られ た 。 [Patient][Agentコ[Bene][Theme]. 英 語:MaryhadNancy'schildpraisedbyJohn.. [Causer][Bene][Theme]. 以 上 の こ と か ら,英. 4.4.関. 語 で は(85b)の. [Agent?. 日 本 語 をhave構. 文 で は表 す こ とが で きな い こ とが わ か る 。. 与 受 動 文 と排 除 受 動 文. 次 の 文 を 考 察 し て み よ う。 ⑲① メ ア リ ー は ジ ョ ン に 自 分 の 子 供 を ほ め られ た 。 (9① 文 で,「. 自分 」の解 釈 が. 「メ ア リ ー 」 で あ る か,「 ジ ョ ン」 で あ る か に よ り,意. 味 の み な らず. ニ ュ ア ン ス が 大 き く異 な る 。 ㊦1)a.[自 b.[自 一般 に. 分eメ. ア リ ー]→. 分=ジ. ョ ン]→. ,第4項. メ ア リ ー は[Bene](受. 益 者). メ ア リ ー は[Patient](被. 害 者). 導 入 間 接 受 動 構 文 は,そ. の 主 語 が 常 に 被 害 者 で あ る と さ れ る 。 と い う の は,. (9ユa)の 解 釈 に お け る(90)は,通 常 「 自分 」 を 略 し て,(85a)の こ こ で,次. の文 を考 察 した い。. (92)a.メ b.メ ㈱a.メ b.メ (92a)に. 形 に す る か らで あ る 。. ア リ ー は ジ ョ ン に 子 供 を ほ め ら れ た 。[(85a)] ア リー は ジ ョ ンに子 供 を け な さ れ た。 ア リ ー は ジ ョ ン に ナ ン シ ー の 子 供 を ほ め ら れ た 。[(85b)] ア リー は ジ ョ ンに ナ ンシ ーの 子 供 を け な され た。 お け る メ ア リ ー は 受 益 者 で,(92b)に. 一56一. お け る メ ア リ ー は 被 害 者 と 言 え る の に 対 し,.
(17) 日英 の受 動 表 現 比 較 と θ役 (93a)も(93b)も (93a)の. と もに メ ア リー は 被 害 者 とい う含 み が あ る 。. 状 況 で は,ナ. た の だ が,(93b)の. ン シ ー は メ ア リ ー に と っ て 子 育 て の ラ イ バ ル(=あ. ナ ン シ ー に そ の よ う な 含 み は な い 。 つ ま り,(93b)文. で あ る ナ ン シ ー が 子 育 て を 批 判 さ れ て い る の で,)メ. る 意 味 で 敵)で. あっ. に 対 し て,「(ラ イ バ ル. ア リー は気 分 が よか っ た 」 と い う意 味 の 文. をつ な ぐの は不 自然 で あ る。 ㊤の??メ. ア リ ー は,ジ. しか し,次 ㈲. の よ う に 間 接 受 動 構 文 を 用 い な け れ ば,自. メ ア リ ー は,ジ. (93b)が. ョ ン に ナ ン シ ー の 子 供 を け な さ れ た の で,気 然 で あ る。. ョ ン が ナ ン シ ー の 子 供 を け な し た の で,気. 暗 示 す る 状 況 は,ナ. 分 が よか っ た。. 分 が よか っ た 。. ン シ ー が メ ア リ ー と 仲 の よ い 友 達 で,そ. の ナ ンシーの子 供が. ジ ョ ン に よ っ て け な さ れ て い る と い う 状 況 で あ る 。 だ か ら,② のと 対 照 的 な 次 の 文 が 自 然 で あ ろ う。 (96)メ ア リ ー は,ジ. ョ ン に ナ ン シ ー の 子 供 を け な さ れ た の で,気. 受 動 文 の 主 語 と 直 接 関 係 付 け られ な い 名 詞 句 がThemeと 文 」 と 呼 び,㈱. が そ の 例 で あ る 。 こ れ に 対 し,受. 分が悪かった。. して 用 い ら れ る 受 動 文 を 「排 除 受 動. 動 文 の 主 語 とThemeを. 担 う名 詞 句 が 関 係 付 け. ら れ る 場 合 を 「関 与 受 動 文 」 と 呼 び,(92)が そ の 例 で あ る 。 排 除 受 動 文 と 関 与 受 動 文 に 関 し,次 働a.排 b.関. 4.5、. の よ うな 傾 向 が あ る こ とが わ か って い る。. 除 受 動 文 は,常. に そ の 主 語 が 被 害 者 と い う θ役 を担 う 。. 与 受 動 文 は,そ. の 主 語 の θ役 の 選 択 は 動 詞 に よ る 。. 直 接 受動 文 と関与 受動 文 の 関係. 直 接 受 動 文 を考 察 す る。 ㈱a.メ b.メ. ア リー は ジ ョ ンに ほ め られ た。. (98a)文. ア リー は ジ ョ ンに け な され た。 に お け る メ ア リ ー は 受 益 者 で,(98b)文. に お け る メ ア リー は被 害 者 で あ る こ と は明 白. で あ る。 (98a)文. に お い て ほ め ら れ る 対 象 は も ち ろ ん メ ア リ ー で あ る 。 し た が っ て,こ. メ ア リ ー はThemeと か し,こ. い う θ役 とExpと. い う θ役 を 同 時 に 受 け て い る と い う 考 え 方 が で き る 。 し. れ は θ基 準 に 違 反 す る 。19). こ れ は,次. の よ う に 考 え る こ と が で き る 。(98a)文. を 例 に と っ て 考 え て み よ う 。(98a)文. 造 は(99)文で あ る と 想 定 す る 。「自 分 自 身 」 が 基 底 生 成 し て お り,こ 後 で,S構. の 文 に お い て は,. れ にThemeが. 造 へ 派 生 す る 際 に 「自 分 自 身 」 が 削 除 さ れ た と考 え る の で あ る 。. 一57一. のD構. 与 え ら れ,そ. の.
(18) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) 削 除 さ れ る 理 由 と し て,そ. の あ い ま い 性 が 挙 げ ら れ る 。LF(論. 理 形 式)で. 解 釈 さ れ る 場 合 に,. あ い まい性 排 除 が 起 こる もの と考 え て よい 。 (gg}メ ア リ ー は ジ ョ ン に 自 分 自 身 を ほ め ら れ た 。 (99)文に お け る 「自 分 自 身 」 が 削 除 さ れ ず,S構 あ る 。 次 の2つ QOO)a.メ b.メ (100b)の. 造 ま で 残 っ た と考 え る と,こ. の 文 はあ い ま いで. に あ い まい だ か らで あ る 。 ア リ ー は[ジ. ョ ン が メ ア リ ー を ほ め る]ら. ア リ ー は[ジ. ョ ン が ジ ョ ン を ほ め る]ら. れた。. れた。. 解 釈 を も つ(99}文は,「 自 分 自 身 」 が メ ア リ ー と 関 係 付 け ら れ な い の で,排. 除受動文 で. ある。 し か し,(100a)の. 解 釈 を 持 つ(99)文は,Themeを. 担 う名 詞 句 は メ ア リ ー 自 身 な の で,ま. ア リ ー と 関 係 付 け ら れ る こ と に な る 。 だ か ら,こ ま た,メ れた. ア リー と関 係 付 け られ るの で. の 間 接 受 動 文 は関 与 受 動 文 と い う こ とに な る。. 「自 分 自 身 」 の 省 略 形 で あ る 直 接 受 動 文 も ま た,省. 「自 分 自 身 」 が メ ア リ ー と 関 係 付 け ら れ る の で,関. 動 文 は,関. 4.6、. さにメ. 略 さ. 与 受 動 文 で あ る。 一 般 にす べ て の直 接 受. 与 受 動 文 で あ る と言 え る。. 直 接 性,関. 与 性,他. 動 性,被. 害性の関係性. 日 本 語 の 自 動 詞 の 受 動 態 と そ の 主 語 とTheme名. 詞 句 との 関係 につ い て考 察す る。. (101)ボブ は トム に 気 絶 さ れ た 。 (101文の 項 構 造 は 次 の よ う に 分 析 で き る 。 (102)ボブ は トム に 気 絶 さ れ た 。 [Exp][Theme] 〔10D文 は,ボ. ブ が 被 害 者 で あ る こ と を 暗 示 す る 。 た と え,ト. ム が ボ ク シ ン グ な どの 相 手 で あ っ. て も,ω 文 自 体 は 被 害 を 含 意 す る 。 (103)a。??試 合 の 直 前 に,ボ b.試 (103b)の (103a)の. 合 の 直 前 に,ボ. ブ は トム に 気 絶 さ れ て,ボ. ブ は トム に 気 絶 さ れ て,ボ. ほ う が 自 然 で あ る 。 気 絶 す る こ と で,不. ブ は内 心 喜 ん だ 。. ブ は内 心 困 った 。 戦 勝 と な り,ボ. ブ に 有 利 で あ っ て も,. よ う な 言 い 方 は で き な い の で あ る 。(10Dの表 現 が ボ ブ に 対 す る 被 害 を 暗 示 す る か らで あ. る 。 し か し,受. 動 態 に し な けれ ば きわ め て 自然 な文 と な る。. qoの試 合 の 直 前 に,ト さ て,(10D文 に お い て. ム は 気 絶 し た の で,ボ. ブ は 内心 喜 ん だ 。. 「ト ム が 気 絶 す る こ と 」 に 主 語 で あ る ボ ブ は 関 与 で き な い の で,こ. 一58一. の文.
(19) 日英 の受動表現比較 とθ役 は排 除受 動 文 と言 え る。 こ こ で も働 の 法則 が働 い て い る の が わ か る 。 こ こ で,直 接 性(直 接 受 動 文 か 間 接 受 動 文 か とい う視 点),関 か と い う視 点),お. 与 性(関 与 受 動 文 か 排 除 受 動 文. よび 他 動 性(他 動 詞 か 自動 詞 の ど ち らが 受 身 に され て い るか と い う視 点),さ. ら に,被 害 性(主 語 に受 益 者 か被 害 者 の どち らの θ役 を 与 え る か とい う視 点)の4つ. の 関 係性 を. 例 文 と と も に,表 に して整 理 して お く。 (105)直 接 性,関. 与性,他. 直接性. 他 動性. 直接受動. 他動 詞. 間接受動. 他動詞. 間接受動. 他動詞. 間接 受動. 自動詞. 注:[±. 被 害]と. 動性,被. 害性 の 関 係 性 例文. 関与性. 被害性. メ ア リー は ジ ョンに ほ め られ た 。. 関与受動. ±被 害. メア リー は ジ ョンに 子 供 を ほめ られ た 。. 関与受動. ±被 害. 排除受動. +被 害. 排 除受動. +被 害. メ ア リー は ジ ョ ンに ナ ン シー の 子 供 を ほ め られ た 。. ボ ブ は トム に 気絶 され た 。. は,動 詞 に よ り被 害 性 の 有 無 が 決 定 され る こ と を意 味 す る。. 5.e理. 論 の枠 組 み に よ る 日英 の 受 動 態 の 差 の原 理 的 説 明 の 新 提 案. 51.日. 本 語 受動 態 の特 殊 性. 次 の 文 を比 較 して み る。 〔 ユ06)a.ル ー シ ー は 勉 強 さ せ ら れ た だ ろ う 。 b.Lucymayhavebeenmadetostudy. (106)は 受 身 と使 役 が 組 み 合 わ さ れ た 構 造 に な っ て い る が,日. 本 語 と 英 語 で は 大 き く構 造 が 異 な. る。 日 本 語 の 場 合 は,受 身 はbe+p。p.の. 身 も 使 役 も 助 動 詞 で あ る の に 対 し,英. 構 造,使. 日 本 語 の 場 合 は,「. 語 で は,こ. の 複 合 的 構 文 生 成 に,受. 役 は動 詞 自体 が 大 きな役 割 を果 た して い る。. た 」 も 「だ ろ う 」 も助 動 詞 で あ る の で,い. 数 の 助 動 詞 の 連 合 体 で あ る の に 対 し,英. わ ば,「 さ せ られ た だ ろ う 」 は 複. 語 で は,「 た 」 に 相 当 す る の は 完 了 と い うhave+p.p.の. 構. 造 で,「 だ ろ う 」 の み が 助 動 詞 と な る 。 し た が っ て,日. 本 語 はIPの. 主 要 部1が. い る と考 え ら れ る の に 対 し,英. 「さ せ 」「ら れ 」「た 」 「だ ろ う 」 の 一 大 融 合 体 か ら 成 っ て. 語 は 基 本 的 に は 助 動 詞mayが. 受 身 の 構 造 を 取 り 出 し て も,日. 主 要 部 を埋 め て い る と思 わ れ る 。. 英 で 大 き く異 な り,英 語 に お け る 規 則 が 当 て は ま ら な い と 考 え. て よ い と思 わ れ る。 英 語 で は,受. 身 形 態 素(受. 身 に お け るp.p.の. 形)は. 59. 格 付 与 能 力 を 持 た な い 。 そ れ ゆ え,Vの. 右.
(20) 近畿大学語学教育部紀要4巻2号(2004・12) に 生 じた 目的 語 は θ役 を得 る もの の,対 格 は与 え られ な い の で,格 とに な る 。 そ こで,IP主. 要 部 か ら主 格 を得 て,格. を求 め てIP指 定 部 に入 る こ. フ ィ ル タ ー を満 た し,派 生 は正 し く収 束 す る 。. 私 は,英 語 と同 じ仕 組 み が 日本 語 に は言 え ない の で は ない か と考 え,日 本 語 の受 身 は,目 的語 位 置 に生 じたNPが. 主 格 を得 る た め に主 語 位 置 に移 動 す る とい うの で は な く,は じめ か ら,主 語. 位 置 に基 底 生 成 す る もの と考 え る。 こ の 主張 の 基 本 的 な根 拠 は,⑯ の例 文 解 説 で 論 じた よ う に,日 英 の基 本 構 造 の 違 い で あ る が, こ の主 張 の理 由 は,2つ あ る と考 えて い る。 この 理 由 は,1節 か ら4節 まで で 論 じた 日本 語 の 統 語 現 象 に深 く関 わ っ て い る。. 52.日. 本語の間接受動の存在理由. 英 語 の 受 身 で は,Vの. 右 に生 じたNPにThemeと. い う θ役 は与 え るが,対 格 は与 え な い。 しか. し,日 本 語 で は 対 格 を与 えて い る と思 わ れ る現 象 が あ る。2°) ㈲a.ジ. ョ ン,論 文批 判 され た よ。. b.ジ. ョ ンは,論 文 を批 判 さ れ た よ。. (107a)文 は 「批 判 す る 」 とい う動 詞 の左 に生 じた 「論 文 」とい うNPに. 対 格 を与 えて い る と考. え られ る。 とい うの は,そ の 前 の 「ジ ョ ン」 に は主 格 が 与 え られ て お り,「論 文 」 に主 格 を与 え て い る と は考 え に くい か らで あ る。 日本 語 は,先 に 論 じた よ うに,格 し て,同. をPに. よ り与 え る こ と も可 能 な の で,「 を」 とい うPを 利 用. 様 の 意 味 を 表 す こ とが で き る は ず で あ る。 そ こ で,対 格 を 与 え る 「を」 を 用 い て. (107b)の. よ う な文 を派 生 す る こ と もで き,し か も(107a)と(107b)は. 基 本 的 に は 同意 なの で,. こ の こ とが,日 本 語 の 受 身 構 文 にお け る動 詞 が 対 格 を与 え て い る証 明 とな る。 日本 語 にお け る 「間接 受 動 」 の 形 式 の 存 在 自体 が,日 本 語 の対 格 授 与 可 能性 を証 明 して い る わ け で あ る。 Expを 担 うNPが,受. 動 態 で は外 項(主 語 位 置)に 現 れ る の は,動 詞 がExpを. る か らで あ る。 だ か ら,そ して,こ. のExpを. 担 うNPは. 外 項 に与 えて い. は じめ か ら外 項 の 位 置(即. 置)に 基底 生 成 して い る もの と考 え られ る 。 も し,同 じNPが. 目的 語 位 置 に現 れ る と,Themeと. い う θ役 を動 詞 が 与 え るの で,意 味 は 異 な る もの と な る。 姻a.ジ. ョ ンは批 判 され た 。[動詞 が 主 語 位 置 の ジ ョン にExpを. 与 え て い る]. [Exp] b.ジ. ョ ン批 判 され た。[動詞 が 目的語 位 置 の ジ ョ ンにThemeを [Theme]. 一60一. ち主 語 の 位. 与 えて い る].
(21) 日英 の 受 動 表 現 比 較 と θ役 (108a)の. 状 況 で は,ジ. 状 況 で は,ジ. ョ ン と 関 わ っ て い る 人 の ほ う が シ ョ ッ ク を 受 け て い る と い う含 み が あ る 。 例 え ば,. 「私 と ジ ョ ンが 親 友 で,そ 文 脈 で(ユ08b)は. 53.日. ョ ン が 批 判 を 受 け た 結 果 シ ョ ッ ク を 感 じ る 可 能 性 が あ る が,(108b)の. の ジ ョ ン が 誰 か に 批 判 さ れ て,私. が シ ョ ッ ク を受 け る 」とい う よ う な. 自然 な文 とな るの で あ る 。. 本 語 の排 除受 動 の存 在 理 由. 日 本 語 の 受 身 構 造 に お け る 動 詞 の 対 格 授 与 説 の も う1つ. の 理 由 は,英. 語 に は な い排 除 受 動 の存. 在 そ の もの で あ る。 一 般 に 「ほ め る 」 と い う 動 詞 は. ,受. 与 え,「 け な す 」 と い う 動 詞 は,同 る 。 し か し,(93a)と(93b)の 場 合 も,主. 語 名 詞 句 は,同. じ構 文 で,Expの. 中 で もBeneと. 中 のPatientと. い う θ役 を 主 語 名 詞 句 に. い う θ役 を 主 語 名 詞 句 に 与 え. よ う な 「排 除 受 動 」の 場 合 は,「 ほ め る 」の 場 合 も,「 け な す 」 の じPatientと. 特 に 「ほ め る 」 がPatientと 動 」の 場 合 は,こ. 身 構 文 で はExpの. のPatientと. い う θ役 が 与 え ら れ て い る 。. い う θ役 を 与 え る の は,ど い う θ役 は,1(受. う も不 自 然 で あ る 。 そ こ で,「 排 除 受. 身 の 助 動 詞)が. 与 え る と考 え るの で あ る。排 除. 受 動 の θ役 に 関 す る 原 則 が 次 の よ う に 想 定 で き る も の と提 案 す る 。 ㈲. 同 定 関 係 優 位 の 法 則 そ の1 日 本 語 で は,主 詞 はExpと. 語NPと. 目 的 語NP内. い う θ 役 を 主 語NPに. 勿 論,q⑲ を 満 た す 場 合,Expは,「 釈 さ れ る 。 だ か ら,同 Patientと. のNPの. 聞 に 同 定 関 係 が あ れ ば,そ. の 場 合 に 限 り,動. 与 え る。. ほ め る 」 の 場 合 はBeneで,「. 定 関 係 が な け れ ば,動. 詞 は 主 語NPに. け な す 」の 場 合 はPatientと. 解. θ役 を 与 え ら れ な い の で,1か. ら. い う θ役 を 受 け る こ と に な る 。2D. 次 の(UOa)は. 同 定 関 係 が あ る 関 与 受 動 の 場 合 で,(110b)は. 同 定 関係 の な い排 除 受 動 の場 合. で あ る。 図式 で示 して お こ う。 q1①a.メ. ア リ ーiは ジ ョ ン に(自. 分iの)子. 供 を 圃. [Bene][A騨][T剰. 一61一. ら れ た 。22).
(22) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) 54.英. 語 のHave構. 文 が 受 身 と使 役 の 両 方 の 機 能 を持 つ 理 由. 4。3.と4.4。 で 論 じ た よ う に,日 have受. 動 で 表 せ ず,次. 本語の. 「排 除 受 動 」 に 相 当 す る 英 語 構 文 が 存 在 せ ず,(85b)を. の(ma)を(mb)の. よ う に 翻 訳 し よ う と す る と,(IUc)の. よ う な使. 役 の 意 味 に な る の は何 故 で あ ろ うか。 (1ωa.メ. ア リ ー は ジ ョ ン に ナ ン シ ー の 子 供 を ほ め られ た 。. b.MaryhadNancゾschildpraisedbyJohn. c.メ. ア リー は ジ ョ ンに ナ ンシ ー の子 供 を ほ め させ た。. こ れ は,α⑲の 法 則 と酷 似 し た 次 の 法 則 が あ る も の と考 え ら れ る 。 ql2同 定 関 係 優 位 の 法 則 そ の2 英 語 で は,主. 語NPと. 目的 語NP内. こ ま れ た 動 詞 は,Expと. 中 身 がBeneで. め. 与 え る。. あ る かPatientで. は 同 定 関 係 が な い の で,q吻 の 法 則 は 当 て は ま らず,主. ら は も ら え な く な る 。 そ こ で,主. 語NPに. と に な る の で あ る 。 だ か ら,(111b)文. Beneと. の 場 合 に 限 り,埋. あ る か は 埋 め 込 み 動 詞 に よ り,. よる もの で は な い 。. (lllb)に. 一 方. 間 に 同 定 関 係 が あ れ ば,そ. い う θ役 を 主 語NPに. 日 本 語 の 場 合 と 同 様,Expの haveに. のNPの. ,同. 定 関 係 が あ る 文,例. 構 造 的 に 近 いhaveか. 語NPは. θ役 を 埋 め 込 み 動 詞 か. らCauserと. い う θ役 を も ら う こ. は 使役 の 意 味 しか 出 な い の で あ る 。 え ば"MaryhadherchildpraisedbyJohn."は,praiseか. ら. い う θ役 を 優 先 的 に 受 け る こ と に な る の で あ る 。 図 式 で 示 し て お く。. (11鋤.塑yihadherichild[亟]byJo㎞.[同. [Bene ↑][T剣L讐 b。 迦. 画. 定 関 係 あ り]. 副. 璽'schild函byJo㎞.[同. 定 関係 な し]. [c捌[B割L堅 6.結. 語. 本 稿 は,英 語 と 日本 語 に お け る受 動 態 の構 造 を比 較 して,共 通 点 と相 違 点 を洗 い 出 し,生 成 文 法 の θ理 論 の枠 組 み で論 じた。 共 通 点 と して,日 英 共 に 同 じ意 味 の動 詞 に は θ役 の種 類 と数 が 一致 して い る可 能 性 を挙 げ たが, 相 違 点 は,特 に,聞 接 受 動 と排 除受 動 の存 在 が 日本 語 に 際立 っ て い る こ とを概 観 した。. 一62一.
(23) 日英 の受動表現比較 とθ役 日本語 は,受 動構 文 で 動 詞 の 対 格付 与 が 可 能 で あ る とい う新 解 釈 を提 案 し,そ の 根 拠 が,間 接 受 動 と排 除 受 動 の 存 在 自体 に あ る こ とを 論 じた 。 ま た,英 語 にお い て,何 故,排 除 受 動 が な く,have構. 文 が 受 身 と使 役 の 両 方 を行 き 来 す る の. か に 対 す る 解 決 策 を,日 本 語 に お け る 「受 動 構 文 対 格 付 与 可 能 説 」 を論 じた と き と同 等 の 発 想 (=「 同 定 関 係 優 位 の 法 則 」)で 提 示 す る こ とが で き る こ と を示 した 。 本 研 究 を通 じて,今 後 の検 討 課 題 も多 く明 ら か に な っ た。 例 え ば,本 稿 で 導 入 したExpと, そ の下 位 区分 と仮 定 したBeneやPatientの. 関 係 は も う少 し詳 し く検 討 す べ きで あ ろ う。. 次 の文 を観 察 して み る。 鵬a.ジ. ョ ンはい じめ られ た。. b.ジ. ョ ンは批 判 さ れ た。. (114a)文 は 聞接 受動 文 を作 れ な い が,(U4b)文. は 間接 受 動 文 を作 れ る。. (ll5)a.*ジ ョ ンは∼ を い じめ られ た。 b.ジ. ョ ンは∼ を批 判 さ れ た。. 一 般 に 聞接 受 動 文 が 作 れ る構 造 に お け る 直接 受 動 文[ニ(114b)]は. ,問 接 受 動 文 のTheme名. 詞 の 省 略 型 で あ る と も考 え られ る た め,D構. 造 が 問接 受 動 文 の形 で あ る と,4.5.で 推 論 した が,. そ の 考 え方 に よれ ば,(114a)文. は ま っ た く違 っ た構 造 か ら派 生 して い る こ とに な る. と(114b)文. が,そ れ は正 しい推 論 か ど うか を検 討 す る必 要 が あ る。 また,同 時 に,日 本 語 にお け る受 動 文 はす べ て 間接 受 動 文 の形 がD構 文 の よ う な純 然 た る 直接 受動 文 は,S構. 造 で 生 じて お り,(114a). 造 へ 派 生 す る と きに 「自分 自身 」 が 強 制 的 に削 除 さ れ た. と見 る こ とが で き るか ど うか も検 討 課 題 で あ ろ う。. 注. 1)「 強 奪 さ れ た 」 と い う 感 じで あ れ ば,次. の表 現 にな る。. (i)Jackwasrobbedofhisbicycle. 2)名. 詞 句 の 認 可 条 件 は,格. フ ィル ターの満 足 に他 な らない。. (i)格 フ ィ ル タ ー 全 て の 名 詞 句 は 格 を1つ 日本 語 の 名 詞 句 は常 にPに は 必 ず,1に らい,そ 3)こ. よ り格 を 受 け,格. よ り主 格 を も ら い,他. の 他 の 名 詞 句 はPに. の 文 は,次. 与 え られ なけれ ば な らない。. の2つ. フ ィ ル タ ー を 満 た す の に 対 し て,英. 動 詞 の 目的 語 名 詞 句 は,そ. よ り格 を 受 け,格. に あ い まい で あ る 。. 一63一. の 他 動 詞(=V)に. フ ィ ル タ ー を満 た す の で あ る 。. 語 は,文. の主語. よ り 目的 格 を も.
(24) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) (i)そ の 仕 事 が ジ ャ ッ ク に よ っ て 残 さ れ た 。[本 文 中 で の 意 味] (ii)そ の 仕 事 が ジ ャ ッ ク に対 し て 残 さ れ た 。 この 原 因 は,「 に 」 が 「動 作 主 」[=(i)]と 4)移. 動 し た り,影 響 を 受 け る も の は,一. 「着 点 」[=(ii)]の2つ. の θ役 を 担 うか らで あ る 。. 般 に主 題 で あ る。 意 志 を 特 に 持 た な い の で 「 動 作 主」 と考. え な い の で あ る 。 た と え ば,(i)は,[1]と[2]の2つ. に あ い ま い で あ る。. (i)Johnhitthecar. [1]ジ. ョンは車 にぶつ か った。. [2]ジ. ョンは車 を殴 った。. [1]の 解 釈 で は,ジ Location,[2]の. ョ ン は 移 動 し て い る の でThemeで,車. は 動 か な い 場 所 と考 え ら れ る の で. 解 釈 で は ジ ョ ン は 行 為 者 な の でAgentで,車. で 影 響 を 受 け るThemeで (i)の[2]の. は 殴 られ て へ こ む か も し れ な い の. あ る 。 主 題 階 層 が 低 い 名 詞 句 が 受 身 の 主 語 に 来 る の で,(ii)の. 解釈は. 受 身の意 味 のみ に対応 す る。. (ii)ThecarwashitbyJohn.. 5)日. [1]*車. は ジ ョ ン に ぶ つ か られ た 。. [2]車. は ジ ョ ン に 殴 られ た 。. 本 語 で は,主. 語 の 省 略 は 随 意 で あ る が,主. 向 が あ る た め,こ 6)ジ. ョ ン がExpの ば,ス. 語 の な い 文 は 第1人. 称 が 主 語 で あ る と解 釈 さ れ る傾. の 文 は 「私 は 論 文 を批 判 さ れ た 」 の 意 味 に な り う る。 状 況 で は,こ. の 文 は 非 文 で あ る が,ジ. ョ ン がThemeで. あ れ ば 可 能 で あ る。 例 え. ー ザ ン と ジ ョ ンが 恋 人 同 士 で,「 そ の 恋 人 で あ る ジ ョ ンが 批 判 さ れ た 」 と ス ー ザ ンが 漏 ら す. 場 合 に は 自然 で あ る。 7)「. 話 題 」 とい う二 次 的 意 味 役 割 は,日 第 一 次 的 意 味 役 割(=θ 曖 昧 に な る が,他 お,英. のPす. 視 点,即. ちAgent,Exp,そ. してThemeの. どれ を意味 す るのか が. な わ ち 「を 」 や 「が 」 と の 組 み 合 わ せ に よ り,曖 昧 さが 解 消 さ れ る 。 な. 語 の 場 合 は,「 話 題 」は統 語 的 位 置 に よ っ て 示 さ れ る。. 8)Themeが 9)話. 役)の. 本 語 で は 「は 」 で マ ー ク さ れ る。 こ の 「は 」 を 用 い る場 合,. 「を 」 を伴 う 形 が 間 接 受 動 に 他 な ら な い 。. 題 化 位 置 に 現 れ たExpの. 例 を挙 げ て お く。. (i)John,Marycriticized. 10)Pが. 同 じで あ れ ば,複. 数 の θ役 を一 文 内 に導 入 で き な い とい う こ とで あ る 。. (i)*メ ア リー は ジ ョ ン を 論 文 を批 判 した 。 (ii)*ジ ョ ンは 論 文 は メ ア リー に 批 判 さ れ た 。 11)た. だ し,こ. れに は条件 がつ くよ うであ る。. (i)「は 」 と 「 が 」 が 共 起 す る と き は,「 は 」「が 」の 順 番 に な る 。 例 え ば,次. の よ う な例 が 挙 げ られ る 。. (ii)[ユ]ジ [2]*メ. ョ ン は,メ. ア リー が 論 文 を批 判 した 。. ア リー が,ジ. (111)[ユ]ジ ョ ン は,論 [2]*論. 文 が,ジ. ョ ン は 論 文 を批 判 した 。. 文 が メ ア リ ー に批 判 さ れ た 。 ョンは メア リーに批 判 され た。. (ll)[1]に お い て,「 ジ ョ ン は 」 は 「ジ ョ ン に つ い て は」 に し た ほ うが,容 思 わ れ る 。 な お,「 は」 はExpと. い う θ役 を 示 す 傾 向 が あ る が,こ. れ は,人. 認 度 が さ ら に上が る と を話 題 に す る こ とが 多. い と い う現 状 が 反 映 した もの で あ る と考 え られ る 。 12)こ. の よ う な し くみ は,3つ. の θ役 を1文. に 組 み 込 み た い とい う 自然 の 欲 求 が 言 語 の 世 界 に 影 響 を与. 一64一.
(25) 日英 の受 動 表 現 比 較 と θ役 え た 結 果 の 産 物 と言 え る 。 13)こ. の(69)およ び(70a)文. は,{66)の 制 約 を 満 た す 。. 14)英. 語 の 自動 詞 が 受 動 表 現 を持 つ の は,動. 詞 とPの. 組 み 合 わ せ が 他 動 詞 と再 分 析 さ れ た 場 合 の み で. あ る。 (i)Thecatranaftertherat. (ii)Theratwasrunafterbythecat. 15)have受. 動 の 形 式 は,使 役 と 同 じ形 式 で あ る が,一. 般 に 受 動 と使 役 の 意 味 は,被. 害 と受 益 に 相 当 す. る のが 自然 であ る。 (i)受 動 → ジ ム は財 布 を 盗 ま れ た 。 → 被 害 (ii)使 役 → ジ ム は 財 布 を 盗 ませ た 。 → 受 益 (i)に お い て は,財 布 は ジ ム の もの で あ り,(ii)に お い て は,財. 布 は ジ ム の も の で は な い と い う解. 釈 が 普 通 で あ る 。1 被 害 と受 益 で は 意 味 的 に対 照 的 な 概 念 だ か ら,通 例 文 脈 か ら状 況 が 判 断 で き,混. 乱が 生 じる こ と. が な い と い う 点 か ら,受 動 も使 役 も 同 じ形 式 と な っ て い る も の と思 わ れ る 。 16)㈱. は 「ジ ョ ン は メ ア リ ー に 論 文 を批 判 して も ら っ た 」 とい う解 釈 も成 立 す る 。 こ れ は,使. 法 と 考 え ら れ,受. 益 の 意 味 を 強 調 し た 形 で あ る 。 こ れ は,日. 役 の用. 本 文 化 的 な 上 下 関 係 に 基 づ く訳 で あ. る と考 え る こ とが で き る 。 欧 米 人 は,「 批 判 させ る 」と 「 批 判 して も ら う」 の 差 が そ れ ほ ど な い も の と考 え て よ い だ ろ う。 (i)ジ ョ ン は メ ア リ ー に 論 文 を批 判 させ た 。[上:ジ. ョ ン/下:メ. (ii)ジ ョ ン は メ ア リ ー に論 文 を 批 判 して も ら っ た 。[上:メ 17)厳. 密 に は,「 ほ め る 」 と い う動 詞 が 与 え る θ役 は,義 [Beneficiary](ほ. め られ る 対 象 者)の2つ. あ る 。 だ か ら,第4項. 務 的 な[Agent](ほ. と[Reason](何. め る と い う行 為 者)と. 故 ほ め る か と い う理 由)の. 合 計3つ. で. 後 の 課 題 と した い 。. 供 を ほ め ら れ て 嬉 し い の は そ の 親 で あ り,子 供 自体 で は な い の で,受. ん(85b)の. ョ ン]. を導 入 し た 聞 接 受 動 構 文 の 主 語 に 与 え な け れ ば な ら な い θ役 を ど こ か ら得. る の か に 関 す る理 論 構 築 は,今 18)子. ア リ ー]. ア リ ー/下:ジ. 益 者 は親 であ る。 もちろ. 状 況 で は ナ ン シ ー の 子 供 を ほ め る と い う行 為 が メ ア リ ー に対 し て な され て い る の で,. ナ ン シ ー は そ の こ と を 盗 み 聞 きす る な ど し な い 限 り,実 際 の 喜 び は 感 じな い の で あ る が,自 子 供 の 行 為 を ほ め ら れ る こ と 自 体 は 「益 」 な の で,[Bene](受. 益 者)と. 分の. し た 。 次 の 点 も確 認 し て. お く。 (i)そ の 子 供 は ほ め られ た 。[受 益 者 は 子 供] (ii)ナ ン シ ー の 子 供 は ほ め られ た 。[受 益 者 は ナ ン シ ー] (111)ナン シ ー は子 供 を ほ め ら れ た 。[受益 者 は ナ ン シ ー] ㈹ 19)θ. メ ア リ ー は ナ ン シ ー に 子 供 を ほ め られ た 。[受 益 者 は メ ア リー]. 基 準 と は 次 の よ う な条 件 で あ る 。 (i)意 味 を担 う項 は,[+v]の (i)に お い て,[+v]の. 範 疇 か ら θ役 を1つ 受 け な け れ ば な ら な い 。. 範 曉 と は,v(=動. 詞)とA(=形. 範 躊 に 次 の よ う な 素 性 を 設 定 し て い る 。 な お,[-Nコ 置 詞)は. 格 を 付 与 で き る範 疇 で あ る と され る 。. (ii)[1]N:[+N-V] [2]V:[-N+V] [3]A:[+N,+V]. 一65一. 容 詞)で の 範 躊,す. あ る 。 生 成 文 法 で は,語. な わ ち,V(=動. 詞)とP(前. 彙.
(26) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要4巻2号(2004・12) [4]P[-N,-V] 20)日. 本 語 で は,パ. 21)同. 定 関 係 が あ る 場 合 は,1は. ラ メ ー タの 違 い に よ り,Vの. 左 に 生 じたNPに. 対 格 を与 え る と 考 え る 。. θ役 を与 え る こ とが で き な い が,こ. の は,θ 基 準 は,「 意 味 の あ るNPが. れ は θ基 準 に違 反 しな い 。 とい う. 受 け な け れ ば な ら な い 」 の で あ っ て 「あ る 範 躊 が θ を 必 ずNP. に 授 け な け れ ば な ら な い 」 と い う こ と で は な い か らで あ る。 だ か ら,動 詞 な ど の 範 躊 が θ役 を 与 え な い か らNPが. 生 じな い こ と が あ っ た りす る し,ま た,NPが. 生 じ る と必 ず,ど. こ か か ら θ役 を. 受 け なけ れ ばな らない ので あ る。 22)NPの. 右 横 のiはindexの. 略 で,同. 定 関 係 を 表 して い る 。. 参考文献 Chomsky,N.(198ユ)LecturesonGovernmentandBinding.Dordrecht:Faris. 井 上 和 子(1995)「. 他 動 性 と使 役 構 文 」徳 永 美 暁(編)『. 言 語 変 容 に 関 す る 体 系 的研 究 お よ び そ の 日本. 語 教 育 へ の 応 用 』 神 田 外 語 大 学. 益 岡 隆 志(ユ979)「 日本 語 の 経 験 的 間 接 関 与 構 文 と英 語 のhave構 一教 授 還暦 記念 論文 集』 くろ しお出版 . 中右. 実(ユ991)「 経 験 のHAVE」. 中川. 昭(2000)「. 大 庭 幸 男 ・島. 高 見 健 一(1995)『. 『 現 代 言 語 学 の 歩 み 』 開 拓 社.. 迷 惑 受 け 身 と経 験 受 動 態 」『 大 阪 経 済 大 学 教 養 部 紀 要 』 ユ8.. 越 郎(2002)『. 柴 谷 方 良(1982)「. 文 に つ い て 」『英 語 と 日本 語 と:林 栄. ボ イ ス:日. 左 方 移 動 』 英 語 学 モ ノ グ ラ フ シ リ ー ズ10,研 本 語 と英 語 」 『 講 座 日本 語 学 』 第10巻,明. 機 能 的 構 文 論 に よ る 日英 語 比 較. 受 動 文,後. 究 社 出 版. 治 書 院.. 置 文 の 分 析 』 くろ し お 出 版.. 鷲 尾 龍 一 ・三 原 健 一(ユ997)『 ヴ ォ イ ス と ア ス ペ ク ト』 日英 語 比 較 選 書7,研. ・・. 究 社 出 版..
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