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犯罪被害者支援の現場に学ぶ

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Academic year: 2021

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私のフィールドワーク   ESSAY

-59- 犯罪被害者支援の現場に学ぶ 佐藤 恵  筆者は1999年1月以降、犯罪被害者(被害者家族・遺族を含む)を対象とした聞き取り調 査を、社会学の見地から行っている。犯罪現象を扱う犯罪社会学の分野では、従来、加害者 に関する知見が蓄積されてきたが、被害者についての主題的検討はほとんど行われてこな かった。これに対して本調査は、被害者の「回復」とその支援をテーマとして、日常生活に おける相互行為のレベルに注目した社会学的考察を実証的に行うことを目的としており、 苦しみの経験を抱える人々とその支援者の方々から現場でさまざまなことを教えていただ くという取り組みである。  筆者が調査を開始した1999年頃まで、犯罪被害者に対する社会的支援は長らく欠如した 状態が続いていた。全国被害者支援ネットワークの「犯罪被害者の権利宣言」(1999年5月 15日)によれば、「我が国の犯罪被害者は、生命身体等に重大な侵害を受けた事件の重要な 当事者でありながら、長い間刑事司法制度からも社会からも『忘れられた存在』であった」。 「忘れられた存在」である被害者たちは、自助努力によって被害からの「回復」を図るしか なかったのである。  ストーカー規制法、児童虐待防止法、犯罪被害者保護二法(刑訴法等改正法・犯罪被害者 保護法)が成立した2000年以降、被害者支援の施策・制度は、徐々に整備されてきている。 とりわけ2004年に成立した犯罪被害者等基本法は、被害者の権利を明文化した上で、被害 者支援の基本理念を定め、被害者支援を国・地方公共団体・国民の責務と位置づけたもの である。  しかしながら、被害者支援に関する議論は、現状では刑事的な制度・しくみや貨幣的サー ビスの問題に集中しており、被害者の生活再建を支える福祉的な理念・サービスの充実が 喫緊の課題である。社団法人・被害者支援都民センターでのヒアリングによれば、「法律が できたからよいではないか」というように、法制度整備がかえって配慮の欠如を生む可能 性もある上に、現状でなされている法制度整備は被害者の「回復」に必要な「環境」「中身」 の整備にまでは至っていない。たとえば犯罪被害者が刑事裁判に参加する被害者参加制度 (2008年12月に導入)をとってみても、事件直後から支援者がつき、十分な情報も提供さ れた上で不安なく参加できるといった「環境」が整っているとは言えない。被害者の「回復」 (被害を忘れるということではなく、悲しみや苦しみを抱えつつも日々の生活を再建して いけること)のためには、「箱」のみならず、その「中身」として必要なものを詳細に分析す る必要がある。  「環境」「中身」の整備の必要性については、施策や制度の分析からはなかなか見えてこ ず、むしろ現場での支援実践からこそ学ぶべきことである。制度的支援による「解決」に議 93241法・政治・社会_3校.indb 59 2010/03/06 15:43:00

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-60- 論が特化すると、苦しみを生きる人々の困難経験やその支援ニーズがともすると置き去り になり、制度的支援のみでは支援が行き届かない被害者の苦しみが等閑視されることにも なりかねない。現場の支援実践から離れないことによって、実際に制度やしくみの中で生 活する被害者たちの苦しみの経験、支援ニーズ、「回復」プロセスのリアリティに接近する ことが可能になる。  これは、制度的支援が重要ではないということではなく、施策や制度の意義をふまえた 上で、しかし、制度的支援による「解決」のみで被害者の「回復」が達成されるととらえる 傾向のある「常識」的な議論の一面性を問い直す必要があるということである。そのため にも、どのような「環境」「中身」が被害者支援に求められているのかに関して、支援現場 との対話を積み重ねる中で探究を続けていくことが不可欠であると思われる。法制度レベ ルではなく、日常生活における相互行為レベルに注目するという本調査のパースペクティ ブも、こうした方向性に即したものとして設定されている。  苦しみを生きる人々の困難経験が置き去りにされかねない社会は、私たち一人一人に とって決して生きやすい社会ではない。犯罪被害者支援の現場から学んだことは、苦しみ を生きる人々の困難経験と支援実践について、「常識」的な見方を相対化し、私たち自身の 問題として位置づけ、考えていかなければならないということである。 93241法・政治・社会_3校.indb 60 2010/03/06 15:43:00

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