IRUCAA@TDC : 重度の骨量不足症例におけるインプラント治療のメインテナンスの重要性について
21
0
0
全文
(2) 重度の骨量不足症例におけるインプラント治療のメインテナンス の重要性について. 馬場里奈 1,2),清住沙代 1,2),高柳奈見 1,2),奥井沙織 1,3),前田 愛 1,2), 藤平弘子 1,2),山根源之 2,3,4). 1)千葉県歯科衛生士会 2)東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科 3)東京歯科大学口腔がんセンター 4)東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座. Importance of maintenance in implant therapy in patients with marked alveolar bone mass reduction. Baba Rina, Kiyosumi Sayo, Takayanagi Nami, Okui Saori, Maeda Ai, Fujihira Hiroko, Yamane Gen-yuki. キー・ワード:インプラント治療,歯科衛生士,メインテナンス,頬骨インプラント Key words: Implant therapy, Dental hygienist, Maintenance, Zygoma Implant. 1.
(3) 【和文抄録】 近年,インプラント治療において,さまざまな外科的手法を用いることにより,著明な 骨量不足を呈する歯槽堤萎縮症例においても対処が可能となり,その適応範囲が飛躍的に 広がってきている。当科は,総合病院の歯科・口腔外科という特性により,難症例のイン プラント治療に携わることが多い。このような症例におけるインプラント上部構造や周囲 粘膜は,通常のインプラント症例と比較し,複雑な形態を呈している場合が多い。今回は 3 症例を呈示し,その経過,留意事項,メインテナンスの詳細について報告する。 歯科衛生士による術前からの徹底した口腔衛生指導を行うことにより,セルフケアの向 上,インプラント治療後の口腔衛生に対するモチベーションを高めることが必要である。 また,その構造形態を患者に十分に理解させ,インプラントの長期生存率を高めるために は,症例に適した歯科衛生士による厳密なメインテナンスを行っていくことが重要である と思われる。 【Abstract】 Recently, the application of various surgical procedures to implant therapy has facilitated treatment in patients with marked bone mass reduction and atrophy of the alveolar ridge. Implant therapy has been indicated for an increasing number of patients. As our Department of Dentistry/Oral Surgery belongs to a general hospital, we have performed implant therapy in many refractory cases. In such cases, the morphologies of the supra-implant structure and peripheral mucosa were complex in comparison with routine cases. In this study, we present 3 patients, and report their courses, precautions, and maintenance.. 2.
(4) It is necessary to improve self-care and increase patients’ motivation for oral hygiene following implant therapy by preoperative oral hygiene guidance from dental hygienists. To increase the long-term implant survival rate by the patients’ understanding of the structural morphology, close dental hygienist-managed maintenance is important. 【緒言】 近年,重度の骨量不足症例に対し,様々な外科的技術を応用しインプラント治療が行わ れるようになってきた 1)。しかし,このような症例は重度歯周疾患や全身的な基礎疾患に よる口腔症状が原因で多数の歯牙喪失に至った場合が多く,口腔衛生状態は不良であるた め,的確な口腔衛生指導が必要と考えられている。さらに,長期的に安定した状態で維持 していく上で,メインテナンスは必須条件であり,それを担う歯科衛生士の役割は非常に 重要であると言える 2,3)。今回,このような症例に対する歯科衛生士によるメインテナンス の重要性について症例を提示,メインテナンスの方法,経過観察の留意事項を検討したの で報告する。 【対象および方法】 東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科では,インプラント治療目的の骨移植,1998 年より年間約 50 症例,上顎洞底挙上術は年間約 30 症例,Zygoma Implant は,1998 年以降, 現在までに 25 本の症例があり,重度の骨量不足を認める難症例に対してインプラント治療 を行っている。 対象は,東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科を受診し,インプラント治療を施行 した患者のうち,骨移植後のインプラント治療症例 1 例,多数のインプラントによる咬合. 2.
(5) 再建症例 1 例,Zygoma Implant 応用症例 1 例の計 3 例を対象例とした。 患者との信頼関係の獲得を目的に,担当歯科衛生士制を取り入れ,術前からメインテナ ンスに至るまで,基本的に担当歯科衛生士がオーラルケアや手術,補綴処置のアシスタン ト業務を担当し,総合的に患者の口腔内および全身状態を把握した。手術前の期間に関し ては,術中・術後の感染予防を目的とし,特にモチベーションの向上,セルフケアとして のプラークコントロールの確立に重点をおいた。なお,口腔衛生状態の評価には O’Leary の Plaque Control Record(以下 PCR と略す)を用い判定した。 上部構造装着後のメインテナンスは,歯科衛生士が主体となって進めた。リコール間隔 は,口腔内の状況,個々の生活環境に応じて,1 ヶ月後,3 ヶ月後,6 ヶ月後,その後 1 年 ごとに設定した。 メインテナンスの際は,プラークコントロールの状態,インプラント周囲粘膜の状態,上 部構造の緩み・破損・脱離の有無,咬合状態の変化,残存歯の状態,骨吸収の有無などに 着目し,前回との状況の変化を比較し,異常がある場合は歯科医師に報告した。 上部構造の形態上ブラッシングが不良となりやすい部位においては,プラスティックスケ ーラーにて上部構造頚部を損傷しないよう注意し,除石を行った(図 1) 。また,必要に応 じて,上部構造を一旦撤去し,上部構造の洗浄,ポリッシングを行った。その際,患者の モチベーションを向上させるために,上部構造の染め出しを行い,清掃不良部位を明示し た上で口腔清掃指導を行った。 【症例】 症例 1. 3.
(6) 患者:43 歳,女性 初診:平成 10 年 3 月 9 日 主訴:義歯の違和感,咀嚼障害 口腔内所見:4−7 欠損 X 線所見:4−7 部歯槽骨の重度吸収 治療および経過:平成 11 年 9 月 17 日、腸骨移植による絶対的歯槽堤形成術,その 7 ヶ月 後にブローネマルクシステムインプラントの埋入手術を施行。さらに 10 ヶ月後,スクリュ ー固定による骨結合型ブリッジの上部構造を装着し,メインテナンスに移行した。 初診時口腔清掃状態は比較的良好であったが,3−3 歯頚部に歯ブラシを当てることで歯 肉退縮するのではという不安があり同部位への積極的なブラッシングが不良であり, PCR42.7%であった。担当歯科衛生士によりバス法を中心としたブラッシング圧,ストロ ークなどの口腔衛生指導を中心としたオーラルケアを施行し,術前 PCR12.6%と口腔清掃 状態の改善を認めた。 骨移植後のインプラント治療であり,インプラントのスレッド部の露出,インプラント 周囲粘膜の退縮による広い鼓形空隙の存在が問題となった。口腔清掃指導として,広い鼓 形空隙部に対してはタフト型ブラシとプラスティックコーティングされた歯間ブラシを使 用する(図 2)よう勧めた。現在では 1 年ごとのメインテナンスで対応している。 症例 2 患者:55 歳,女性 初診:平成 11 年 5 月 20 日. 4.
(7) 主訴:義歯の違和感 口腔内所見:7−2 7. 2−7 7 欠損. X 線所見:上顎歯槽骨の重度吸収 治療:平成 11 年 7 月 19 日、腸骨移植による絶対的歯槽堤形成術および上顎洞底挙上術, その 7 ヶ月後にブローネマルクシステムインプラント埋入術を施行。 さらに 1 年 2 ヶ月後, スクリュー固定による骨結合型ブリッジの上部構造を装着し, メインテナンスに移行した。 初診時口腔清掃状態は,PCR80.8%と高値を示し,下顎前歯部叢生により清掃状態は不 良だった。担当歯科衛生士により口腔清掃指導を中心としたオーラルケアを施行し,イン プラント治療におけるセルフケアの重要性を促したため,術前 PCR19.2%と口腔清掃状態 の改善を認めた。 多数のインプラントによる上部構造(図 3,図 4)が装着され,ポンティック部および 上部構造頚部へのプラーク付着が多く認められたため,上部構造頚部に対しタフト型ブラ シを併用した(図 5) 。頬粘膜を圧排しながらのブラッシングの習得に時間を要したが,現 在ではセルフコントロール状態も良好で,6 ヶ月ごとのリコールでメインテナンスを継続 している。 症例 3 患者:54 歳,女性 初診:平成 11 年 11 月 16 日 主訴:義歯の違和感,咀嚼障害. 5.
(8) 口腔内所見:74. 7. 7-52-367 欠損 X 線所見:上顎歯槽骨の重度吸収 治療:平成 12 年 4 月 10 日上顎両側臼歯部に Zygoma implant2 本を含めたブローネマルク システムインプラント埋入術,上顎前歯部に腸骨移植による絶対的歯槽堤形成術を施行。 平成 12 年 8 月 11 日下顎にブローネマルクシステムインプラント埋入術,平成 12 年 11 月 1 日上顎前歯部にブローネマルクシステムインプラント埋入術を経て,全顎的インプラン ト治療を行った。約 1 年後,スクリュー固定による骨結合型ブリッジの上部構造を装着し (図 6,図 7) ,メインテナンスに移行した。 30 歳代に歯周炎にて歯牙を多数喪失し,初診時には,残存歯 6 本でいずれも要抜歯であ った。口腔衛生に対する認識は低く,口腔清掃状態は,PCR100%と劣悪な状態であったた め,口腔衛生指導とオーラルケアを施行し,インプラント治療におけるセルフケアの重要 性を促し,モチベーションを高め,口腔清掃状態の改善を行った。 本症例は,Zygoma Implant の応用により骨移植を回避したことから,骨吸収により生じ るチタン面の露出の問題は少なかった。しかしながら,解剖学的な構造上,アバットメン ト結合部周囲(図 8)および上顎結節部の埋入部位に対してタフト型ブラシの併用が必要 となった(図 9) 。また,前歯部においては,スポンジ素材のフロスを用いた定期的なプロ フェッショナルケアを施行した。現在においても 3 ヶ月ごとのリコールにてメインテナン スを実施している。 【考察】. 6.
(9) 骨吸収量が多くなると口腔前庭が浅くなり,プラークコントロールが困難となり,その 重要性も増す。そこで,症例 1 における口腔清掃として,広い鼓形空隙部に対してはタフ ト型ブラシを軽く押し当てるように使用して清掃した後,インプラント表面に損傷を与え ないよう芯のワイヤーにプラスティックコーティングされた歯間ブラシを使用することが 必要であると考えた。セルフケアとしてタフト型ブラシは問題なく使用できたが,インプ ラントのスレッド部の露出の懸念から,積極的な歯間ブラシの使用は困難であった。その ため,メインテナンス初期では,リコール期間を短くして,徹底したプロフェッショナル ケアとより丁寧で厳密なブラッシング指導を行うことが必要と思われた。 症例 2 は,インプラントの埋入位置による上部構造の形態上,少数のインプラントによ る症例と比較して,カントゥアが強くなるため,上部構造頚部の清掃性が損なわれてしま うことが多かった。そのため,歯間ブラシやタフト型ブラシを使用してのセルフケアの指 導に重点をおき,患者にカントゥアが強い部分を明示し,その形態を理解させ,上部構造 頚部にタフト型ブラシを軽く押し当てて清掃するように指導する必要性があると考えた。 症例 3 は,解剖学的な構造上,Zygoma Implant のアバットメントが歯列弓から口蓋側に位 置するため,口蓋側においては,アバットメント結合部周囲の清掃性が困難であった。そ のため,口腔清掃指導としては,アバットメント結合部の位置と形態を患者に明示し,十 分理解させ,アバットメント結合部に対して,タフト型ブラシを側面に沿わせるようにし て動かすよう指導することに重点をおくことが好ましいと考えた。また,前歯部において は,審美性への配慮と構音障害を防ぐために鼓形空隙が狭い上部構造となり,歯間ブラシ によるセルフケアが困難となったため,スポンジ素材のフロスを用いた定期的なプロフェ. 7.
(10) ッショナルケアの施行が必須であると思われた。インプラント周囲に角化歯肉が不足して いることにより, ブラッシング時に疼痛を訴え, 十分なブラッシングが行えなかったため, より質の高いプラークコントロールが求められた。さらに,上顎結節部の埋入部位は,近 遠心的に口腔清掃状態が不良となりやすく,歯ブラシのみでの対応は難しく,タフト型ブ ラシの併用が必要と考えた。 インプラントの予後を左右する一因として感染があげられる。インプラント治療におけ るメインテナンスにおいてインプラント周囲炎の早期発見は重要である。Ericsson ら 4)は, プラークとインプラント周囲粘膜の炎症との間に相関があることを報告し,Rosenberg ら 5). は,感染性に分類されたインプラント失敗症例のインプラント頚部周囲の炎症性組織に. は,歯周病菌とされている細菌が多く含まれていたと報告している。また、積極的なメイ ンテナンスにより、セルフケアに対する患者の意識向上が天然歯ならびにインプラントの 長期的な経過を良好にさせると考えている 6)。これらのことより,インプラント手術前か らの残存歯のクリーニングを含めた継続的なプラークコントロールが必須であるといえる。 今回は症例別に呈示したが,全症例において,歯科衛生士が手術前よりオーラルケアに 介入することで,手術前の PCR は初診時と比較して著明に減少し,口腔衛生状態は改善し た。また,重度の骨量不足症例では,上部構造の歯頚部は天然歯に比べて根尖側に位置し, 歯冠形態や鼓形空隙も異なり,複雑な形態を呈する場合が多いため,患者にその形態と清 掃不良となりやすい部位を明示し,理解させる必要がある。セルフケアにおいては,歯ブ ラシを基本とし,個々に応じた必要最低限の補助清掃用具を選択し,その使用方法を指導 するとともに,歯科衛生士による定期的なプロフェッショナルケアを施行することで不足. 8.
(11) 部分を補い,プラークコントロールを継続させることが重要であると考えられた。 【結論】 重度の骨量不足症例におけるインプラント治療は,さまざまな外科的手法を用いる。そ のため,インプラント上部構造および周囲粘膜は,通常のインプラント症例と比較し,複 雑な形態を呈している場合が多いことから, 患者によるセルフケアが困難となる。そこで, 歯科衛生士による術前からの徹底した口腔衛生指導を行うことにより,インプラント治療 後の口腔衛生に対するモチベーションを高めることが必要であり,そのインプラント上部 構造の形態を患者に十分理解させるとともに,症例に適した歯科衛生士によるより厳密な メインテナンスを行ってゆくことが重要である。 【引用文献】 1) 木津康博,山根源之:上顎骨量不足の難症例におけるインプラント治療,DENTAL Implantology 別冊,究極のインプラント治療への挑戦,クインテッセンス出版株式会社, 第 1 版,東京,2006,22-25. 2) 岩崎美和,藤平弘子,岡崎雄一郎,高田篤史,木津康博,小澤靖弘,外木守雄,山根源 之:下顎腫瘍切除後再建におけるインプラント治療のメインテナンスについて,顎顔面補 綴,27(2):63-64,2004. 3) 馬場里奈,岩崎美和,藤平弘子,佐藤一道,高田篤史,岡崎雄一郎,森崎重規,渡邊裕, 蔵本千夏,木津康博,小澤靖弘,森本光明,外木守雄,山根源之:著明な歯槽堤萎縮症例 におけるインプラント治療のメインテナンスについて,第 8 回日本顎顔面インプラント学 会学術大会抄録集,37,2004.. 9.
(12) 4)Ericsson I,Berglundh T,Marinello C,Liljenberg B,Lindhe J:Long-standing plaque and gingivitis at implants and in the dog.Clin Oral Implants Res 1992;3(3):99-103 5)Rosenberg ES,Torosian JP,Slots J.Microbial differences in 2 clinically distinct types of failures of osseointegrated implants.Clin Oral Implants Res 1991;2(3):135-144. 6)岡崎雄一郎:歯周病を有したインプラント症例のリスクについて,歯科学報, 107(4):40-42,2007.. 著者への連絡先:. 馬場 里奈. 〒272-8513 千葉県市川市菅野 5-11-13 東京歯科大学市川総合病院 歯科・口腔外科 TEL047-322-0151㈹. 内線 2800. FAX047-324-8577 e-mail [email protected]. 10.
(13) 図1. プラスティックスケーラーによる除石.
(14) 図2. 症例 1 プラスティックコーティングされた歯間ブラシの使用.
(15) 図3. 症例 2 上部構造装着後の X 線写真.
(16) 図4. 症例 2 上部構造装着後の口腔内写真.
(17) 図5. 症例 2 タフト型ブラシの使用.
(18) 図6. 症例 3 上部構造装着後の X 線写真.
(19) 図7. 症例 3 上部構造装着後の口腔内写真.
(20) 図8. 症例 3 アバットメントの位置.
(21) 図9. 症例 3 アバットメント結合部周囲へのタフト型ブラシの使用.
(22)
図
+6
関連したドキュメント
CKD 患者のエネルギー必要量は 常人と同程度でよく,年齢,性別,身体活動度により概ね 25~35kcal kg 体重
および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値
・ 継続企業の前提に関する事項について、重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認
■使い方 以下の5つのパターンから、自施設で届け出る症例に適したものについて、電子届 出票作成の参考にしてください。
福島第一廃炉推進カンパニーのもと,汚 染水対策における最重要課題である高濃度
性能 機能確認 容量確認 容量及び所定の動作について確 認する。 .
性能 機能確認 容量確認 容量及び所定の動作について確 認する。 .