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IRUCAA@TDC : 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(hrc8 プロジェクト)上皮からみた口腔機能の特異性基盤の解明と疾患制御「唾液,歯周病,個別化予防・治療の最前線」

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(hrc8 プロジェ

クト)上皮からみた口腔機能の特異性基盤の解明と疾患

制御「唾液,歯周病,個別化予防・治療の最前線」

Author(s)

四宮, 敬史; 国分, 栄仁; 林, 丈晴

Journal

歯科学報, 113(3): 302-307

URL

http://hdl.handle.net/10130/3104

Right

(2)

1.hrc8−1 上皮機能研究グループ

「なぜ唾液は大切か」 四宮敬史 口は災いの元というが,口は「病は気から」にか けて「病は口から」と言い換えても良いくらい口腔 機能が全身機能と密接な関係にあることが明らかに されている。「噛むこと」,「しゃべること」,「感覚 を楽しむこと」は病気から体を守る抵抗力,回復力 であり,コミュニケーションを成り立たせる精神活 動であり,精神に安らぎと活力を与えるアメニティ として,人が生きていく上で切り離すことが出来な い。このように見ていくと「口」は「病は気から」 の,「気」すなわち精神活動の元になっていると考 えられる。 それでは,口腔機能を円滑にさせる力となってい るのはなんであろうか。それが唾液である。唾液は 一般的に「粘っこい液体」というイメージである。 唾液は古くから道具,呪い,治療,感応,教訓とし ていろいろな意味に使われている。これらのイメー ジから唾液が単なる水ではないことは容易に想像が つく。現在では,唾液には約1,200種類の蛋白質が 含まれていて,実に多様な働きをしていることがわ かっている。誰でも良く知っていることは唾液の消 化作用であろう。デンプンをブドウ糖に変えるアミ ラーゼという酵素が含まれていることは小中学校の 理科,高校の生物で繰り返し教えられる。しかし, 抗菌作用,細胞成長作用などは一般にはあまり知ら れていない。このようにそれ自体が重要な役割を持 ち,かつ口腔の機能の補助的な役割を持っているの が唾液である。 この唾液が出なくなると,たちまち口の中は乾燥 し,舌の動きはもつれ,粘膜は炎症を起こし,歯茎 は腫れ,カビが生えて口腔カンジダ症になる。痛み と精神的苦痛は集中力をなくし仕事に差し支える。 口の痛みは食事を遠ざけ,感覚,生活の楽しみを奪 い去る。強い口臭は人との関わりを遠ざけ,精神活 動の低下をきたす。このように唾液の供給が狂うと, 口腔のみならず,体の他の内臓機能に影響が及ぶの である。 唾液は口腔内の三大唾液腺(耳下腺,顎下腺,舌 下腺)と小唾液腺から産生される。腺細胞から産生 された唾液が原唾液で,血漿とほぼ同じ浸透圧でイ オン組成が似ている。口腔内に分泌される唾液の浸 透圧は低張でありイオン組成も比率も変化する。こ れは原唾液が導管を通る間に分泌と再吸収との修飾 を受け,再吸収量が大きいので唾液は低張性となっ て口腔に分泌される。導管部細胞の主な役割は Na+ と Cl− の再吸収であり,水分は再吸収されない。K+ と HCO3−が導管部細胞から分泌される。 この分泌, 再吸収に関与する Na+ /K+ ポンプ,Na+ /H+ 交換輸 送体,Cl− チャネル,K+ チャネル,K+ /H+ 交換輸送 体,Cl− /HCO3−交換輸送体が導管細胞膜に存在する (Fig.1)。 唾液が出なくなる病気として認められているもの にシェーグレン病や癌治療の放射線障害があって,

――― 講演記録 ―――

東京歯科大学口腔科学研究センター

公開講座

平成24年10月20日(土) 東京歯科大学千葉校舎第2教室

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(hrc8 プロジェクト)

上皮からみた口腔機能の特異性基盤の解明と疾患制御

「唾液,歯周病,個別化予防・治療の最前線」

302

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治療の対象となっている。糖尿病ストレスにより耳 下腺への脂肪沈着が生じ,唾液量減少がおこる1) 。 ベンゾジアゼピン系薬物を服用している場合でも, 副作用である唾液分泌量減少がみられる2) 。ホルモ ンの変化,ストレス,老化などが原因となって唾液 分泌機能が低下した場合に積極的な治療は認められ ていない。 唾液腺に機能低下による対処法としては催唾剤な どがあるが,唾液腺細胞の分泌機能の長期的な回復 を目的としたものではない。そこで,米国国立衛生 研究所ではシェーグレン症候群患者に対して唾液腺 の水分泌タンパクであるアクアポリン1遺伝子の導 入がおこなわれており,他の疾患の治療に対しても 応用が期待されている3) 。 唾液が出難くなることは全身疾患の誘発・悪化に 深く関わることから,予防医学の重要な役割を担っ ているのは明らかである。

2.hrc8−2 免疫機能・トランスレーショ

ナル研究グループ

「口腔内上皮細胞に対する歯周病原生菌の侵入」 国分栄仁 口腔は摂食,呼吸等により外界から病原体の侵入 の門出となっている。そのため外界からの感染に対 し,粘膜上皮による物理的バリア,および唾液中に 含まれる抗体および抗菌物質による防御,さらにバ リアを超えて侵入した病原体に対しては免疫担当細 胞による病原体の排除によって感染を防いでいる。 しかしながら口腔内は700種を超える細菌の住処に なっており,その一部によって引き起こされる齲蝕 は15歳で半数,歯周炎3割弱の成人が罹患している。 歯周炎は歯周組織の疾患と歯の喪失を主徴とする 慢性疾患であり,その作用は口腔内にとどまらず細 菌性心内膜炎や糖尿病,動脈硬化,誤嚥による呼吸 器感染症,細菌性心内膜炎さらには早産や低体重出 産などの疾患に影響を与えることが明らかにされ ている1)。歯周炎の始まりは歯肉溝に存在する細菌 に起因し,口腔細菌の多くが菌体表層にリポ多糖 (LPS)をもつグラム陰性菌である。この LPS のリ ピドAと呼ばれる脂質構造が宿主細胞の TLR と結 合してインターロイキン等の炎症性サイトカイン産 生を引き起こす等の生物活性を示す2) 。慢性歯周病 巣から高頻度に検出されるTreponema denticola,

Porphyromonas gingivalis および Tannerella forsythia

の3菌種は,その歯周病の症状との強い関連から Red complex と呼ばれており,これらの歯周病原 性細菌の病原性としては,線毛等の付着因子による 歯肉溝内への定着,上皮細胞への侵入,プロテアー ゼによるサイトカインの分解3,4) ,補体活性化による 免疫応答のかく乱,および組織傷害,あるいは免疫 抑制および増殖抑制5) など挙げられ歯周炎の発症に 関与している(Fig.2)。このうち上皮細胞への侵入 についてはP. gingivalis では解析が行われている が,T. denticola の組織内の侵入性についてはいま だ不明な点が多い。今回の目的はT. denticola の単 独感染あるいは Red complex の混合感染による細 胞侵入の観察,そして感染に対する上皮細胞の反応 文 献 1)渡辺正人,川口 充,石川康子:唾液腺と糖尿病ストレ ス.日本薬理学雑誌,127⑷:273−277,2006. 2)川口 充,澤木康平,大久保みぎわ,坂井隆之,四宮敬 史,小菅康弘:薬物治療と口腔内障害.日本薬理学雑誌, 127⑹:447−453,2006.

3)Zheng, C., Shinomiya, T., Goldsmith, C. M., Di Pasquale, G., Baum, B. J. : Convenient and reproducible in vivo gene transfer to mouse parotid glands. Oral Dis., 17⑴:77− 82,2011.

Fig.1 唾液腺導管部におけるイオンの再吸収機構

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をラット口腔粘膜上皮およびブタ由来マラッセ上皮 遺残細胞を用いて検索した。 培養したラット口腔粘膜上皮に Red complex を 感染させ,1時間後に標本を作製して走査型電子顕 微鏡(SEM)にて観察を行った。また,ブタ由来マ ラッセ上皮遺残細胞を培養してT. denticolaの野性株 (ATCC35405),表層プロテアーゼ(PrtP)あるいは Major outer sheath protein(Msp)欠損株を感染させ た。感染後に培養細胞から mRNA を採取し,PCR 法 に て Interleukin(IL)6,IL-1,β-defensin-2, heat shock protein70(HSP)および NOD-1 mRNA

発現量を検索した。また,試料は固定後,SEM に て形態観察を行い,さらに蛍光免疫法にて IL1,IL 2,ERK,HSP70タンパク発現を共焦点レーザー 顕微鏡にて観察した。さらにT. denticola の感染を リアルタイムで観察する為,GFP ラットから採取 した培養口腔粘膜上皮に感染させて蛍光顕微鏡にて 観察を行った。

SEM による組織学的観察では,Red complex が 互いに凝集して培養上皮細胞へ侵入する像が認めら れた。T. denticola による感染では,30分後から細 胞内に取り込まれている像を認め(Fig.3),共焦点 レーザー顕微鏡を用いて細胞内に存在する像を認め た(Fig.4)。また,蛍光抗体法および mRNA 発 現 量の解析結果では,IL6の発現量がT. denticola の 感染後1時間をピークに減少し,IL1は6時間後に ピークとなる陽性像を示した(Fig.5)。ERK は3時 間後より発現が増加し,HSP70はコントロールと比 較して感染後3時間から24時間例まで増加した。 NOD-1発現は感染により増加し,表層プロテアー ゼおよび Msp 欠損株では発 現 量 が 増 加 し た。ま た,リアルタイムによる観察では,細胞から一部の T. denticola の脱出が認められた。 T. denticolaによる細胞侵入は本菌のプロテアーゼ (dentilisin)が関与していた。さらに本菌の感染に より,マラッセ上皮残遺細胞のストレスタンパクお よびサイトカイン産生が認められた。これらの結果 はT. denticola の侵入により,上皮細胞がその排除 に向けた反応を示していることが明らかになった。 これらの結果より,T. denticolaの感染によってMAP 経路が ERK を介して上皮細胞の増殖に影響を与え ると考えられ,ストレスタンパクおよびサイトカイ ン産生を引き起こし,そのプロセスに Msp および PrtP が関与する事が示唆された。今後の研究課題 Fig.3 感染30分後からT. denticola が細胞内に侵入する像 を認めた。また,細菌が互いに凝集しながら細胞内 へと侵入する Fig.4 細胞内に存在するT. denticola の写真像 Fig.5 IL-6のタンパク発現を観察すると,感染1時間後 から発現量は増加し,6時間例で最大量となった Fig.2 Red complex の3菌種。左からTreponema denticola,

Tannerella forsythia および Porphyromonas gingivalis の SEM 写真像

東京歯科大学口腔科学研究センター公開講座 304

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として,上皮細胞に起こった反応が,どのようにバ リアの破綻と炎症に結びつくかを明らかにし,その 阻止による歯肉炎や歯周病の予防,さらには全身の 健康への寄与を目指して研究を展開する。 「次世代早期診断,個別化予防,治療に向けて」 林 丈晴 世界的な高齢化,生活習慣病の増加を背景に,が ん,心血管疾患,肺炎が主な死亡原因となっており, 管理,予防,早期治療は個々の生命予後と直結して います。急性心筋梗塞などの虚血性心疾患の管理向 上,治療の進歩の中にあっても心不全は全世界的に 更に増加傾向にあります。心不全を急性増悪させる 大きな要因として,肺炎があげられます。近年,高 齢化を背景に嚥下性肺炎が増加し,心不全に合併し て生命を脅かすケースが著明に増加しています。つ まり嚥下を含めた口腔疾患管理の重要性は個人の生 命予後に深く関与しているといえます。心肺疾患管 理予防に口腔疾患管理を関連させ,口腔−心肺管理 予防治療を行っていく上で,個々の患者や疾患に対 して他分野連携によるバランスのよいチームでの診 療が必要です。また基礎及び臨床を問わず,トラン スレーショナルな研究も必要となります。PF ド ラッガー博士は『明日の組織モデルはオーケストラ である。』と述べていますが,各専門家によるバラ ンスのとれた,きめこまやかな様々な配慮が個人の 生命予後に深く影響すると考えられます。 これまでの小生の仕事に,遺伝性の心不全を示す 特発性心筋症という疾患があります。特発性心筋症 には,心肥大や拡張障害による心不全を示す肥大型 心筋症(HCM)と,心室の拡張や収縮障害による心 不全を示す拡張型心筋症(DCM)の大きく二つのタ イプがあります。HCM は疫学調査で500人に1人 ほど存在し,実は多く存在する疾患ですが,若年性 突然死の1番の原因疾患です1) 。当初,原因遺伝子 として HCM では心筋ミオシン重鎖や心筋トロポニ ンTといった,心筋収縮構造蛋白群であるサルコメ アを構成する蛋白をコードする遺伝子変異,DCM では心筋Z帯の構成蛋白の遺伝子異常,つまり異な る場所の蛋白群の異常によるものとして報告されま したが,その後,HCM,DCM の双方でサルコメア 構成蛋白,Z帯構成蛋白,のみならず,細胞膜,核 膜,筋小胞体,ミトコンドリアといった心筋細胞内 の様々な箇所の蛋白をコードする新たな原因遺伝子 が報告され,我々も様々な新規の原因遺伝子を報告 して参りました。HCM,DCM は肥大,拡張と,形 態的には一見大きく異なりますが,HCM,DCM の 双方に原因遺伝子が共通のものもあり,病因論的に は一部オーバーラップがあるのではないかと考えま した。例えば,Z帯構成蛋白であり互いに結合して いる,Tcap,タイチン,MLP はそれぞれ HCM と DCM の双方に変異を認めますが,変異蛋白に伴う 機能変化を解析してみると,HCM の変異では,お 互いの結合能を増加させる傾向にあり,DCM では, お互いの結合能を低下させる傾向になりました。つ まり同じ原因遺伝子の変異でも,結合蛋白同士の変 異による機能変化の違いにより,肥大型(HCM)と なったり,拡張型(DCM)になったり,異なる表現 系を示すと考えられました2−4) 。これは,遺伝子変 異による機能変化を調べる事により,今後の疾患の 表現型予測が可能となることを示唆します。 肥大型心筋症ではサルコメア蛋白である,心筋β ミオシン重鎖,心筋トロポニンT,心筋ミオシン結 合蛋白Cをコードする遺伝子で全原因の約4割を説 明できます。日本人集団において,この3つの遺伝 子に変異を持つ方々の,それぞれの特徴や予後解析 の他施設研究を行ったところ,心筋トロポニンTの 変異を持つ方々は他の2つの変異にくらべ,肥大は 文 献

1)Godovikova V, Wang HT, Goetting-Minesky MP, Ning Y, Capone RF, Slater CK, Fenno JC. : Treponema denti-cola PrcB is required for expression and activity of the PrcA-PrtP(dentilisin)complex. J Bacteriol. 2010 Jul;192 ⒀:3337−44.Epub 2010 Apr 30.

2)Enioutina EY, Bareyan D, Daynes RA. : TLR-induced local metabolism of vitamin D3 plays an important role in the diversification of adaptive immune responses. J Im-munol. 2009 Apr 1;182⑺:4296−305.

3)Fenno JC, Lee SY, Bayer CH, Ning Y. : The opdB locus encodes the trypsin-like peptidase activity of Treponema denticola. Infect Immun. 2001 Oct;69⑽:6193−200. 4)Ishihara K. : Virulence factors of Treponema denticola.

Periodontol 2000. 2010 Oct;54⑴:117−35.

5)Taichman NS, Klass JE, Shenker BJ, Macarak EJ, Boehringer H, Tsai CC. : Suspected periodontopathic or-ganisms alter in vitro proliferation of endothelial cells. J Periodontal Res. 1984 Nov;19⑹:583−6.

(6)

比較的弱いが早期に拡張が進み,予後が悪い事がわ かりました。そして臨床的に問題なことは,トロポ ニンTの変異を持つ人が一番発見が遅れる傾向にあ りました5) 。つまり一番予後の悪い集団の発見が遅 れる傾向にあるため,ここに遺伝子診断を利用し て,疾患を予測し,個別化早期予防を行う有用性が あると思われます。米国フラミンガム地方の集団で は原因のはっきりしない心臓肥大の方の16%にサル コメア遺伝子変異が見つかっています6) 。突然死や 心不全リスクの高い集団であると考えられますが, 現在米国では,予後の悪い家系内で変異を持つ方々 へ,発症前からの心不全予防薬の投与がトライアル として行われ始めています。 遺伝子変異モデル動物では,心不全や心肥大のよ うな表現型を示すかなり前から,心筋の超微構造が 変化していることを確認できます。遺伝子変異に よって予後の悪い可能性のある方々は,早期に治療 の開始を検討し,発症予防や予後の改善をめざすべ きと考えます。遺伝子異常と3次元超微形態変化 を,生化学的,分子生理学的に病型と関連づけてコ ンピューターシュミレーションモデルを構築させる ことで,遺伝子別,疾患別に進行予測してゆくこと が今後可能になってくると考えられます7,8) 。 近年の遺伝子解析技術は著しい勢いでコストダウ ンが進んでいます。そのため,個別化医療への利用 が急速に広がることが予測されています。その利用 法について様々な議論が進んでおり,倫理体制とと もに早期の整備が望まれます。抗がん剤のような薬 剤は,遺伝的に薬物感受性が異なる場合の適応や薬 物量の調整について,既に臨床利用が始まっていま す。次に,遺伝因子の強い疾患が対象になると思わ れますが,疾患別,遺伝子変異別の詳細なデータ ベースの構築は各分野で急務となっています。 心不全ハイリスクと判断された方々への増悪因子 の除去は大変重要な点であり,高血圧,脂質異常な どの直接的な循環器疾患管理のみならず,動脈硬化 や敗血症増悪因子として,厳格な歯周病(感染症)管 理が必要です。細菌感染に対する感受性は個人差が あり,遺伝要因が深く関与することがわかってきて おります。また,心不全増悪因子としての肺炎,と くに不顕性誤嚥予防のためのプラークコントロール や嚥下能の評価が必要です。今後は,嚥下筋群の筋 組成,状態を遺伝的要因により分類して評価を行い, 嚥下筋群や嚥下に関わる骨の状況を合わせて,個々 にコンピューターシュミレーションモデルを構築し ていくことが必要です。そのモデルを利用して状況 を予測し,機能的口腔ケアやその他の口腔疾患のか かりやすさに応じた早期個別化管理を行っていくべ きだと考えます。 全身管理の中では,口腔領域の役割が個々の予後 を決める重要な要素となります。蓄積された遺伝情 報に基づいたデータや,様々な生理情報から得られ る体質情報に応じて疾患予測を行うこと,早期から の積極的な個別化予防医療や治療計画を科横断的に 構築すること,そしてきめ細やかな配慮が安心を与 え,健康寿命をより延長することに繋がるでしょう。 本稿を書くにあたり,大変お世話になりました, 東京医科歯科大学難治疾患研究所 木村彰方先生, ハーバード大学 Kenneth R Chien 先生,カリフォ ルニア大学サンディエゴ校 星島正彦先生,Mark Ellisman 先生,John Ross Jr 先生に深謝致します。 文 献

1)Maron BJ, Gardin JM, Flack JM, Gidding SS, Kurosaki TT, Bild DE. : Prevalence of hypertrophic cardiomyopa-thy in a general population of young adults : echocar-diographic analysis of 4111 subjects in the CARDIA Study. Circulation 92:785−89,1995.

2)Satoh-Itoh M, Hayashi T, Nishi H, Koga Y, Arimura T, Ueda K, Hohta S, Nouchi T, Takahashi M, Hiroe M, Mar-umo F, Imaizumi T, Yasunami M, Kimura A. : Titin mu-tations as the molecular basis for dilated cardiomyopathy. Biochem. Biophys. Res. Commun. 291:385−393,2002. 3)Knöll R, Hoshijima M, Hoffman HM, Person V,

Lorenzen-Schmidt I, Bang ML, Hayashi T, Shiga N, Yasukawa H, Schaper W, McKenna W, Yokoyama M, Schork NJ, Omens JH, McCulloch AD, Kimura A, Gregorio CC, Poller W, Schaper J, Schultheiss HP, Chien KR. : The cardiac me-chanical stretch sensor machinery involves a Z disc com-plex that is defective in a subset of human dilated cardio-myopathy. Cell 111:943−955,2002.

4)Hayashi T, Arimura T, Itoh-Satoh M, Ueda K, Hohda S, Inagaki N, Takahashi M, Hori H, Yasunami M, Koga Y, Nakamura H, Matsuzaki M, Choi BY, Bae SW, You CW, Han KH, Park JE, Knöll R, Hoshijima M, Chien KR, and Kimura A. : TCAP mutations in hypertrophic cardio-myopathy and dilated cardiocardio-myopathy. J. Am. Coll. Car-diol. 44:2192−2201,2004.

5)Kimura A. : Molecular etiology and pathogenesis of he-reditary cardiomyopathy. Circ J. 72 Suppl A:A38−48, 2008.

6)Morita H, Larson MG, Barr SC, Vasan RS, O Donnell CJ, Hirschhorn JN, Levy D, Corey D, Seidman CE, Seid-man JG, Benjamin EJ. : Single-gene mutations and incre-ased left ventricular wall thickness in the community : 東京歯科大学口腔科学研究センター公開講座

(7)

the Framingham Heart Study. Circulation. 113:2697, 2006.

7)Hayashi T, Martone ME, Yu Z, Thor A, Doi M, Holst M, Ellisman MH, Hoshijima M. : Three-dimensional elec-tron microscopy reveals new details of membrane sys-tems for calcium signaling in the heart. J. Cell Sci. 122: 1005−1013,2009.

8)Lu S, Michailova A, Saucerman J, Cheng Y, Yu Z,

Kai-ser T, Li W, Banks RE, Holst M, McCammon JA, Hayashi T, Hoshijima M, Arzberger P, and McCulloch AD. : Multiscale Modeling of Ventricular Myocytes : Contribu-tions of structural and functional heterogeneities to excitation-contraction coupling in the normal and failing rodent heart. IEEE Eng. Med. Biol. Mag. 28:46−57, 2009.

Fig. 1 唾液腺導管部におけるイオンの再吸収機構

参照

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