白熱電球を発明したのはトーマス・エジソン,蒸気機関を発明したのはジェームス・ ワット,飛行機の発明者はライト兄弟と誰でも知っている。しかし,コンピュータを発 明したのは誰 と訊かれて,正しく答えられる人はほとんどいない。コンピュータの発 明者は,最初に電子的に計算できる機械をつくった人か,あるいは,いわゆるフォン・ ノイマン型のコンピュータを最初につくった人か。しかし,その両者とも,これまでの コンピュータの歴 では間違っていた。次の 3点は,米国計算機学会が 1969年に調査 して発表したコンピュータの歴 の一部である。 (1) 最初の電子計算機は ENIAC。 (2) プログラム記憶方式はフォン・ノイマンのオリジナルアイデア。 (3) 最初のプログラム記憶方式コンピュータは EDSAC。 現在では,これらはすべて誤りであり, (i) 最初に電子的に計算ができた計算機はジョン・アタナソフのつくった ABC マシ ン。 (ii) プログラム記憶方式は EDVAC の設計チームが え出したもので,フォン・ノ イマン個人ではない。 (iii) 最初のプログラム記憶方式のコンピュータは英国マンチェスター大学の Mark-1,通称 Baby。 と訂正された。 古学などと違って,資料文献がたくさん残されている 20世紀のこと であるにもかかわらず,コンピュータの歴 にはこのようにいろいろと間違いがあっ た。今でも新聞や雑誌にはしばしば,「世界最初のコンピュータ ENIAC は云々」など と,誤った記事が載る。 コンピュータは,今日の高性能を有する形に進歩発達するまで,何人もの天才を必要 とした。コンピュータの とよばれている人が世界中に少なくとも 3人いる。英国では チャールス・バベッジ,ドイツではコンラッド・ツーゼ,米国ではジョン・アタナソフ である。本書の目的は,これらの天才たちおよび計算機科学者たちがどうコンピュータ
はじめに
を開発してきたかを述べ,いくつもあったコンピュータの歴 の誤りをただすことにあ る。そして,最初にプログラムというものを えた人,最初に電子的にデジタルに計算 した人,最初のプログラム記憶方式のコンピュータなどと,「最初」にこだわり,歯車 の計算機から,いわゆるフォン・ノイマン型のプログラム記憶方式のコンピュータが実 用になるまでを述べている。 本書の特色としては,写真を数多く取り入れたことである。90葉もあり,半 以上 はカラー写真である。そして,これらの写真の半数近くは,自 が外国に行くたびに大 学や博物館に寄って撮りためてきたものである。こういう種類の本にカラー写真をたく さん載せるのは手間やらコストやらが大変なのであるが,敢えて挑戦してみた。読ん で,見て,楽しめる本にしたかった。 もうひとつの本書の特色は,索引である。かねてから,どの本の索引にも不満をもっ ていた。不十 だったり間違いがあったりして,なかなか索引から必要な本文記事にた どりつけなかったからである。そこで本書では,自前で索引作成用のプログラムをつく り,抜け落ちや間違いがないようコンピュータを って原稿から直接,索引を作成し た。見た目にはとくに変わりはないが,こういった本の索引作成のサンプルのつもりで ある。 最後になったが,本書の執筆には,ずいぶんと大勢の方々のお世話になった。ドイツ アーヘン工科大学の Dieter Haupt 名誉教授,Hermann Kassubek 氏,Walter Ullrich 氏,Bernd Keitemeier氏,ヒュンフェルド市立コンラッド・ツーゼ博物館の Irmgart Topat 女 には,いろいろな資料を提供していただいたり,こちらの都合で開館時間 以外の博物館に入れてもらったりした。ベルリン工科大学の Horst Zuse博士,アイオ ワ州立大学 John Gustafson 教授およびペンシルバニア大学 Jan Van der Spiegel教授 には,写真を提供していただいたり,写真の掲載許可をお願いしたりした。 さらに,本書には先述のごとく写真がたくさん載っているが,これらの写真のうち, インターネットから取り込んだものについては掲載許可が必要で,共立出版編集部の浦 山毅氏にその面倒な手続きをすべてお願いした。 本書は,これらの方々の支援により,ようやく完成できた。あらためて深甚なる謝意 を表する。 2005年 9月 著 者 はじめに